2013年6月15日

ソーラー電力で楽器を鳴らすと、感激するくらい音がいいんやで!

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、佐藤タイジさんです。

佐藤タイジさん写真

 今年結成27年目を迎えた日本最強のロックバンド「シアターブルック」の中心メンバーとして、ロック・シーンのフロント・ラインを走り続けているロックスターの佐藤タイジさんは、昨年12月に、目標としていた、ソーラーの電気だけで武道館ライブを行なう「THE SOLAR BUDOKAN」を大成功させました。その後も、ソーラーの電気にこだわった活動を精力的に行なってらっしゃいます。今回はそんな佐藤タイジさんにソーラー電気と音楽に対する熱い想いをたっぷり語っていただきます。

ソーラーだけでライブはできる!

●今回のゲストは、ロックスターの佐藤タイジさんです。よろしくお願いいたします。

「よろしくお願いいたします。」

●ロックスターなんですね?

「確定申告をするときや駐車禁止の切符を切られるときでも、職業欄には“ロックスター”と書いてます(笑)」

●今日初めてお会いして、「ロックスターだな!」ということを一番感じたのは、タイジさんが背負ってこられたリュックが、普通のリュックじゃないですよね?

佐藤タイジさんのリュック

「あれはソーラーパネルがついていて、携帯ぐらいのサイズのリチウム電池がリュックの中に入っているんですね。その電池で携帯やタブレットPCが充電できるんですよ。」

●そうなんですね! 黒光りのカッコいいリュックを背負っていたので、「あれは何なんだろう?」って思っていたんですが、ソーラーパネルなんですね! そんなタイジさんは、2012年12月20日にライブの電力を100パーセントソーラー電力で賄う“THE SOLAR BUDOKAN”を成功されたんですよね?

「そうですね。ソーラー電力だけでできましたね。」

●そもそも、THE SOLAR BUDOKANをやろうと思ったキッカケって何だったんですか?

「実は、僕はTHE SOLAR BUDOKANが初武道館公演だったんですよ。2010年に自分のバンドのTheatre Brookでツアーをしているときに、『武道館でやりたいよねー!』っていう話を楽屋でしてたんですよ。そのときに詳しく話を聞いていると、僕以外のメンバーは、なんらかの形で武道館で演奏をしていたんですね。なので、僕だけ武道館ヴァージンだったので、『じゃあ、武道館やるぞ!』って2010年末に言ってたんですよ。そうしたら2011年3月11日に東日本大震災が起きたんですよね。
 それによって、武道館公演をやるためのプロジェクトが動いていたんですが、それが頓挫して、その後に“LIVE FOR NIPPON”という復興支援ライブをUSTREAMでいち早くやったんですね。それがメンタル的にはよかったですね。結局僕たちって、音楽をやってないと生きていられないんですよね。自分が自分であるためには、やっぱり音楽をやってないと無理なんですよ。だからミュージシャンをやっているんですよね。そこで、『武道館公演自体を取り下げることはなんじゃないか? でも、東日本大震災が起きてからは、状況は一変したから、それ以前に考えたものと同じでいいわけがないよな』と思って、そこから2秒ぐらい考えて、『電気をソーラーにすればいいんじゃん!』って思ったんですよね。」

●そんな瞬間的に思いついたんですね!

「本当そのぐらいすぐ思いつきましたね。このタイミングなら再生可能エネルギーを応援するようなライブとかあってもいいと思いますし、僕らの曲って、太陽についての曲が多かったので、そういうことがすぐ思いつきましたね。それに“ソーラーだけでロックコンサート・ロックフェスができる!”という前例が、ロック界には必要だと思ったんですよね。確かに、最初は“タイジ君の初武道館公演”っていうものでした。でも、もはやそういうのはどうでもいいから、“ソーラーだけでできました!”という事実が大事なんですよね。」

「電気は屋根で作られてます」!?

※ソーラーの電力だけで武道館公演をするということにあたり、最初は“できなくて当然”という気持ちから始めたそうです。自らの力で、色々な人に声をかけ、みんなで初めてのことに挑戦しながら作り上げていったそうですが、実際、どんな風に100パーセントソーラーだけで武道館公演を行なったのでしょうか?

「まず、ステージにあるギターアンプやベースアンプ、シンセサイザーなどといったものの電源、車や船などで使われている鉛の電池を60台ぐらい用意して賄いました。そして、映像と照明はリチウム電池を使いましたね。メインのスピーカーは“グリーン電力証書”を使いました。ここの説明が難しいんですが、実際は東京電力の送電所から来ている電気でスピーカーを動かしたんですが、その電気がグリーン電気で賄っているということを証明するのが、グリーン電力証書なんですね。」

●その“グリーン電力証書”のことを、もう少し詳しく説明していただけますか?

「この説明がすごく難しいんですよ。風力や地熱なども含めれば、再生可能エネルギーって各地にあるじゃないですか。“どこで作られたエネルギーをどのぐらい購入するか”を、グリーン電力証書で指定することができるんですよね。」

●そういうことができるんですね!

「そうなんですよ。そこで僕らは、長野県飯田市にある“おひさま発電所”に注目したんですね。そこは、市民からの出資で運営されているソーラー発電所なんですよ。」

●そういうところがあるんですね。

「最近は結構増えてきましたよ。これは市民ファンドにしているので、出資している人は配当金がもらえるんですよ。それについてビックリしたことがあったんですよ! 長野県のおひさま発電所の代表をやっている原さんという白髪の丸いおっちゃんがおるんやけど、その原さんが一番最初にソーラーパネルを置いたのが、地元の保育園の屋根なんですよ。」

●それはどういった理由で置いたんですか?

「どうしてかと思うじゃないですか。その理由は行ってみればすぐ分かるんですけど、そこの子供たちは、『電気は屋根で作られてます』って言えるぐらい、ソーラーで電気が作られていることを知ってるんですよね。これはすごいなと思いましたね。」

●そういったところから電力を買ったんですね。例えば、私たちが食べ物を買うときに産地を見るじゃないですか。そういう感じで電力も買えるんですね。

「そういうことですね。東日本大震災がなかったら、こういう知識を得ることがなかったので、あれが大きなキッカケにはなっているんですよね。」

●そのグリーン電力証書で購入された電気以外は、全てソーラーで蓄電された電気を使用されたんですね。パネルを武道館に設置したんですか?

「基本は、別の場所で、ソーラーで蓄電した電池を持ってきたんですけど、当日も設置したんですよ。でも、ライブ当日晴れていたので、用意していた電力がかなり余った状態で終えることができました。」

●ということは、ソーラーの電気でライブの電力が賄えるということなんですね。

電気が天気に左右されるのは普通じゃない?

※タイジさんはもちろん、バンドメンバーにとっても、太陽から生まれた電気だけで楽器を鳴らすというのは、はじめての体験だったそうですが、実際に音を鳴らしてみて、どんな感じだったのでしょうか?

「ロックバンドが一時間演奏したら、どのぐらいの電力を使っているのかって、知らないじゃないですか。THE SOLAR BUDOKANをやるにあたって、使用電力量って大事じゃない? だから、一時間演奏したときの使用電力量のデータを取るために、当日使う機材を事前にスタジオに持っていって、実験してみたんですよ。それまではコンセントから来ている電気でギターアンプを鳴らしてたんですよ。実験した日も、まずはコンセントからの電気で鳴らしたんですね。その後、電池に差し替えたんですね。すると、音が全然違くて、すごく音がよくなってるんですよ!」

●そんなに違うんですか!?

「『うそ!? こんなに違うの!?』って思うぐらい感激しましたね。低音がそれまでより出て、高音が抜けるように出るんですよ。コンセントに来てる電気って、発電所からかなり遠いじゃないですか。変電所通って送電所通ったりと、色々なところを経由してくるから、プラスマイナスの波長に若干の乱れがどうしても出てくるんですよね。近所に工場や工事現場があったりしたら、さらに乱れるんですよ。でも、全ての家電製品は、そういう乱れがある電気でも大丈夫なように設計されているから、問題はないんだけど、そこに全く乱れていない電気が来ると、アンプって素直に反応するんでしょうね。そのことにすごく驚きましたね。」

●それって、やってみるまで分からなかったことなんですか?

「知りませんでした。やってみて初めて分かりましたね。そんな状態でスピーカーもPAも全て使えたら、すごくいいんだろうなって思いましたね。絶対に実現したいですね。」

●それを実現するには、どのぐらいの電力が必要なんですか?

「武道館クラスPAだと、1,000キロワットぐらいは必要ですね。そう言われても分からないんじゃないですか?。」

●確かに分からないです(苦笑)。蓄電すればそれが溜まるのかも分からないです。

「とにかくたくさん必要です。」

●そうすると、天気もかなり重要になってきますよね?

「そうですね。当日は晴れていたから、かなり発電したみたいですからね。そもそも、天気によって電気の状況が左右されてもいいと思うんですよね。『今日は天気が悪いから、音がちょっと小さいです』って言っても、本当は普通だと思うんですよね。むしろ、そっちの方が自然なことだと思うんですよね。」

震災後、高校生バンドの創る曲がすごくいい!

佐藤タイジさん写真

※今後のTHE SOLAR BUDOKANのビジョンについてうかがいました。

「THE SOLAR BUDOKANを続けていきたいという意思はずっとあって、今後もTHE SOLAR BUDOKANをやるために、武道館の方に、この名前を使っていいか、お伺いをたてたんですよ。すると、『英語表記であればいいですよ』と、許可をいただいたんですよ。なので、ケミストリーの堂珍君と一緒に、先日渋谷で、“THE SOLAR BUDOKAN IN SHIBUYA”をやったんですよ(笑)」

●それはなんか不思議な感じがして面白いですね(笑)。そんな感じで、THE SOLAR BUDOKANが色々なところに行って、子供たちにワークショップみたいなことをされているんですよね?

「そうですね。THE SOLAR BUDOKANで少し収益が得られたんですけど、その収益を渡すのって、もうそのタイミングじゃないと思ったので、“子供たちと一緒にソーラーパネルを作って、それで得た電気でエレキギターを鳴らす”という企画を南相馬市でやってきました。そのときは『おじちゃんなんでモジャモジャなのー?』とか『それカツラ?』とか言われましたね(笑)。結局、子供たちは遊んでて、僕が一人でパネルとかを作ってたわけですけどね(笑)。それで作った電気でギターを鳴らしたら、子供たちが喜んでくれて、すごく楽しかったですね。
 僕は福島県いわき市のライブハウスとかによく行くんですけど、そのライブハウスの店長が『最近、東日本大震災の前からやっている高校生バンドとかが震災以降に書き出した曲を聴くと、すごくいい曲がいっぱいあるんだよ』っていうんですよ。それを、震災後にいわき市に行ったときにすごく感じましたね。“家族がいるから、自分もここにいる”という中・高生の覚悟と自分にかかってきているプレッシャーがすごく伝わってくるんですよ。どうやって吐き出せばいいのか分からない想いというのを、音楽が好きな子たちは、それが曲として一気に出てくるんですよね。だから、大人が聴いても『いい曲だな』と思う曲っていっぱい出てくると思うんですよね。そういう曲って、東北だけじゃなく、日本中から出てくると思うんですね。それに、若い人も含め、クリエーターたちが結束して爆発しようとしてる力が見えるんですよね。

 久しぶりに会った知り合いのミュージシャンに『ソーラーでやると、音がいいんでしょ?』って聞かれるんですよね。でも、ミュージシャンはみんな気になりますよね。ミュージシャンって、音がいい方がいいんですよ。ってか、音楽好きなら、誰も音がいい方がいいんですよね。そこには、政治的議論とか全く入ってこないんですよ。それが“音楽の力”だと思うんですよね。それが最終的に、未来への責任みたいなことも、楽しく果たせる気がするんですよね。これって、コロンブスのような感じで、大発見したような感じなんですよ。未来への道が一気に照らされて、『タイジ君、こっちですよー』って言われてる感じがするんですよね。
 知り合いのミュージシャンの方からの質問に対して、『なるべく大きいアンプを使うと、差が歴然ですよ』って教えたら、斉藤和義さんも奥田民生さんもCharも、自分が持っている中で一番大きなアンプを当日持ってきたんですよ。あのギターアンプがズラッと並んでいる様子と、みんなで演奏したときのやかましさはすごかったですね(笑)。自分のギターの音が聴こえないぐらいでしたからね(笑)。それでも楽しかったですね。」

●(笑)。みなさん、それだけソーラーで作られた電気で鳴らす音を楽しみにしていたということなんですね。そういう活動を、今後も続けていくんですよね?

「そうですね。ホームページでは既に発表になっているんですが、9月21日と22日で、岐阜県の中津川で“中津川 THE SOLAR BUDOKAN”をやります。これは野外でやりますので、電力は100パーセントソーラー電気で賄うのはもちろん、キャンプもできるようにしましたし、環境もすごくいいんですよね。」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 ソーラー電力で演奏した方が楽器の音がよかったというのは本当に驚きました。オーガニックや有機野菜が身体にいいように、100パーセント太陽で作られたエネルギーが音楽にいいって、なんだか素敵ですよね。私も、ぜひ一度ソーラー電力の力で奏でられた音楽を聴きにいきたいです。

INFORMATION

ライブ情報

 佐藤タイジさんがヴォーカルを務めるTheatre Brookは、6月21日(金)より「SEASON REVOLUTION TOUR」と題した全国ツアーを行ないます。

【東京公演】
◎日時:7月15日(月・祝)の午後6時開演
◎会場:shibuya duo MUSIC EXCHANGE
◎チケット代:5,250円(別途ドリンク代500円)

 また、佐藤タイジさんの想いから生まれたロックフェスティヴァル「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」が開催されます!現在、公式サイトで第一弾出演アーティストが発表されています。)

中津川 THE SOLAR BUDOKAN

◎日時:9月21日(土)(初日):開場・15時、開演・16時
    9月22日(日)(2日目):開場・10時、開演・11時
◎会場:中津川公園東美濃ふれあいセンター内特設ステージ
◎詳しい情報:THE SOLAR BUDOKANのホームページ

Theatre Brookオフィシャルサイト

 その他、詳しい情報はTheatre Brookのオフィシャルサイトをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. イージューライダー / 奥田民生

M2. (最近の)ありったけの愛 / THEATRE BROOK

M3. YOU ARE THE SUNSHINE OF MY LIFE(LIVE)
       / ELLA FIZGERALD & STEVIE WONDER

M4. YOU ARE THE SUNSHINE / STINE J

M5. キミを見てる / THEATRE BROOK

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」