2013年11月9日

空は“一瞬の奇跡”!

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、HABUさんです。

HABUさん写真

 “空の風景”をテーマに写真を撮り続けてらっしゃる写真家のHABUさんは、オーストラリアをはじめ、ヨーロッパや日本国内を巡って、空の写真を撮ってらっしゃいます。そんなHABUさんの最新の写真集が、「空を巡る旅」という集大成ともいえる作品なんです。今回はそんなHABUさんに、国内外の旅で出会った空のお話をいろいろうかがいます。

初めて“地域性”を出した写真集

●今週のゲストは、写真家のHABUさんです。よろしくお願いします。

「よろしくお願いします。」

●HABUさんは先日、PIE Internationalから「空を巡る旅」という写真集を出版されました。このタイトルには、どんな意味が込められているんですか?

「“空”をテーマに今まで色々な写真集を作ってきましたけど、東京に暮らしていてもオーストラリアにいても、空は繋がっているイメージがあったので、これまでは地域性を出さないようにして、写真を見た人が昔見た空とシンクロして想像力を広げてもらえるようにしていたんですね。でも今回は、2012年の11月に初めてデジタルカメラだけを持って、オーストラリアに旅をしてきたんですけど、一人で旅をしていることが多かったので、寂しい思いをしながら旅をしていたんですよね。そのときに慰めてくれたり驚かせてくれたりしてくれた空がたくさんあったので、そのときの想いを広げようとして、以前行ったヨーロッパやインドネシアなどの風景を交えつつ、各国のイメージを出して、“空を巡る旅を味わってもらおう”と思って作りました。
 それと、2011年と2012年の2年連続で、大きなフィルムカメラを持って旅をする仕事がいくつかあったんですけど、そのときも1ヶ月ぐらい一人で旅をしていたんですね。そうなると寂しいので、もっと人に会いたいんだけど、なかなか会えないんですよ。そのときに、空が慰めてくれるんですよね。旅をする孤独さも写真集に入れてみました。」

HABUさん写真

●その中でも、特に表紙の写真がすごくステキだなと思いました。

「この夕焼けの写真なんですが、オーストラリアに1ヶ月滞在していたんですけど、夕焼けになったのは2日だけなんですよ。この写真のときも写真を撮りにきたんですが、雨が降って嵐がきたから、夕日が沈んだと思って引き上げたら、嵐だから風が強いので雲の流れが速いから、太陽が沈む直前のギリギリの瞬間に西の空が開いたんですよ。すると、いきなりこの色なんですよね。もう慌てて飛び出して、撮りまくりました。」

●私もこの写真を見て、すごく興奮しました! 夕焼け空と雲のバランスがすごく美しいですし、色がピンクとパープルとオレンジとグレーなど、色々な色が混ざっているんですよね。

「これは地平線に太陽があるときなんですけど、もうあと数秒で太陽が沈むんですね。その最後の瞬間だけ、この奇跡の色が出たんですよ。その日もそれまでかなり撮影していたんですが、この写真に全て持っていかれましたね。こういうことがあるから、楽しくてやっているんですよね(笑)。何日もいい空に出会えずにイライラしていても、こういう日が1日でもあると、それまでの苦労が全て吹っ飛びますね。嬉しくてしょうがなくて、ニヤニヤ笑いながら車を運転して帰るんですよね(笑)」

“考えて撮る写真”は面白くない

※いつも美しい写真を撮っているHABUさんですが、シャッターを切る瞬間はどんなことを大切にしているのでしょうか?

「“考えて撮る写真”は昔から面白くないと思っているんですね。風景と自分の気持ちがシンクロしたときに、自分の感情を封じ込める気持ちで、気合いでシャッターを切りますね。それがうまくシンクロして気合いが写真の中に入り込んだときに、初めて写真で人が感動するんじゃないかと思うんですよね。まず“自分が感動すること”ですね。」

●私にも、写真からその感動が伝わってきました。

「写真集を作ろうと決めたときから、表紙はこれだと決めていました。でも、それってすごく珍しいことなんですよね。最初にテーマが決まって、核となる写真がいくつか決まって、そのテーマに沿った写真をこれまで撮ってきてストックしていた写真の中から探すんですね。大体500枚ぐらい集まって、そこからさらに選別していくんですけど、今回の写真集にも何ヶ所か言葉が入っているかと思いますが、その言葉というのは一つのキーワードになっていて、一つのグループのイメージになるんですよね。そこで全体のコンセプトと組み合わせるんですね。そういう風に言葉とコンセプトが組み合わさって、1冊の本になるんですよね。」

HABUさん写真

●その言葉は後から浮かんでくるんですね?

「そうですね。今回の写真集の中で一番古いのは25年前のもので、ここ10年で撮影した写真がメインとなっていますけど、グループを組み合わせるパーツをストックの中から探すんですよ。そして、絵の順番を決めるときは、音楽を流しながら決めていくんですけど、その音楽って普通はクラシックだったり写真展で流れているようなしっとりした曲だったりするんですけど、今回はスパニッシュギターだったんですよ。ちょっとロックっぽいスパニッシュギターでドライブ感があって、車を飛ばしながら旅をしている感じがする曲だったんですよ。それがはまって、今回の写真集の順番が決まったんですよね。」

空と気持ちがシンクロ!?

※今や“空の写真家”と呼ばれるHABUさんですが、なぜ空の写真を撮るようになったのでしょうか?

「最初のころは、外国の色々な風景や野生動物、建物など何でも撮っていたんですけど、気がついたら広いところに出て、空を見上げている自分がいたんですよ。そんな中、あるとき写真のグループ展をやったときに、見にきた人が『この人のテーマは“空”だね』って言ったんですよ。それを聞いて『そうか! 僕の写真のテーマは“空”なのか!』って気がついたんですよね。そこから“空”を意識するようになって、今では空がよくないと撮影しないんですよね。『今日の空はよくないから、写真を撮りにいくのは止めよう』って思っちゃうんですよね。」

●ということは、空中心になっているということなんですね。

「そうですね。どこか旅行に行っても、周りの風景とかあまり見ていなくて、空ばっかり見て、周りの風景と空がマッチしたときだけ写真を撮る感じになっていますね。」

●その分、空に対して敏感になって、ちょっとした変化も見逃さないようになるんじゃないですか?

「そうですね。『これ、あと数時間経てばよくなるな』って分かりますね。あと、一番気になるのは、“台風の日の空”なんですよね。風が強くて雲がどんどんと流れていって、空の景色がどんどん変わっていくんですよ。それと夕日の時間がうまくマッチすると、表紙の写真みたいな風景になるんですよね。逆に、青空ですごく気持ちがいい日は『今日は雲が出ないな』と思って、撮影に行かなかったりするんですよね。」

●雲が出ないとダメなんですか?

「そうですね。絵にならないんですよね。毎日の犬の散歩のときにはカメラを持っていきますけど、雲がないとダメですね。」

●空って、まさに“一瞬の奇跡”ですよね。

「空の風景に同じものはないですからね。なので、同じものがない空と目の前にある何かと組み合わせて写真を撮るんですよね。今回の本にも書きましたけど、万に一つの偶然で、目の前に今の空があって、その空の一部と自分の気持ちがシンクロしてシャッターを切るんですよね。その繰り返しです。ただ、それもハズレのときもあるんですよね。一番大事なのは、“空を見たときに感動できる自分の精神状態を維持する”ことですね。
 旅をしているとき、最初のころは東京での忙しさや思いを引きずっているので、空がなかなか笑いかけてくれないんですよ。それが何日か空を見ながら旅をしていると、いつの間にかそういう思いとかが抜けていて、ちょっとした違いも気づくようになるんですよね。そうすると、コンディションもよくなっていって、空が見えてくるようになるんですね。本当は最初からあるのかもしれないんですが、気がつかないんですよね。」

●どんなに美しい空がそこにあっても、自分にそれを受け入れる体制が整っていなかったら、見えてこないということなんですね?

「そうですね。無理矢理撮ろうと思うと、レンズを色々と換えたり焦点距離を変えたりして、色々なポイントで撮影したりするんですけど、その場合は、大体撮りたいものが写っていないですね。逆に、ファインダーを見ながら興奮して、水平とか無視して、何がなんだか分からない状態のまま撮った写真の方が撮りたいものが写っていることが多いですね。」

●最後に、みんな空の写真を撮ろうと思ってチャレンジしたかと思いますが、自分がイメージした写真って撮れないんですよね。どうやったら上手に空の写真が撮れますか?

「ちょっと暗めに撮ってください。そうすると、空の青が深くなるし、雲の白に立体感が出るんですよね。アンダー気味に撮影するんです。撮影するところを探っていると、画面が明るくなったり暗くなったりするじゃないですか。そのときに、ちょっと暗めのところを選んでシャッターを押すと、立体感のある写真が撮れると思います。」

HABUさん写真

(この他のHABUさんのインタビューもご覧下さい)

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 “自分が感動できるコンディションでないと空が笑いかけてくれない”というHABUさんのお話にハッとしました。もしかしたら、普段もせっかく美しい空があっても、自分のコンディションのせいで見逃しているかもしれないですよね。できるだけ空が笑いかけてくれるような、そんな心の状態でいたいものだと思いました。

INFORMATION

「空を巡る旅」

写真集『空を巡る旅

 PIE International/定価1,680円

HABUさんの最新の写真集となるこの本はオーストラリア、ニュージーランド、イタリア、ギリシャ、インドネシア、石垣島、久米島などで撮った空の写真が満載! まさに集大成的な作品集です。HABUさんならではの空の写真を見てみてください。

写真展情報

 今回の写真集の発売を記念して、写真展が来月12月に青山ベルコモンズ10階のコミュニティ・ルームで開催されます。今回の写真集「空を巡る旅」から約50点が展示されます。

◎開催期間:12月14日(土)から23日(月)まで
◎入場:無料
◎詳しい情報:青山ベルコモンズのHP

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. TO THE SKY / OWL CITY

M2. ロンサム・ロードムービー / 細野晴臣

M3. 血潮 / 吉井和哉

M4. A MI MANERA(MY WAY)/ GYPSY KINGS

M5. SHAPE OF MY HEART / STING

M6. 空はまるで / MONKEY MAJIK

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」