2014年1月25日

風と土の自然学校 取材リポート第2弾!
「できるところから取り組むことに意味がある」

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンは、前回に引き続き、「風と土の自然学校」の取材リポートをお送りします。山梨県都留市にある古民家を拠点にする風と土の自然学校は、環境教育のスペシャリスト・梅崎靖志さんが2011年に立ち上げた自然学校です。梅崎さんは古民家で家族3人仲よく暮らしながら、自然学校の運営はもちろん、すぐそばの畑で土を耕さない“自然農”に取り組むなど、自分たちの手で生活を作る“循環型”の田舎暮らしを実践してらっしゃいます。今回は、風と土の自然学校の取材リポートの第2弾ということで、パーマカルチャーのお話をうかがうほか、廃材の缶で作ったかまどと、もみがらで焼くピザ作り体験の模様をお送りします。

廃材の缶でピザを焼く!?

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●今回も山梨県都留市にある「風と土の自然学校」に来ています。今回も代表の梅崎靖志さんにお話をうかがいます。よろしくお願いします。

「よろしくお願いします。」

●私たちは今、学校前のスペースにいますが、庭の方を見ると、半割りの竹がありますね。

「これは何だと思いますか?」

●恐らく、夏頃にそうめんを流したんじゃないですか?

「そうなんです。近くにある竹を使って流しそうめんをしました。」

●その後ろにはティピーみたいなものもありますね。

「ティピーに棚を付けていますけど、周りにビニールハウス用のビニールをかけることで温室になるんですね。この温室の中で春先に苗を育てたりしています。」

●その後ろに大根を干していますね。

「あれは、たくあんを作るために大根を干しています。」

●この庭を見ると、ここでは色々な体験ができるんだろうなって想像できますね。今回も色々と体験させていただいてよろしいでしょうか。

「はい。今回は“ペール缶ぬかくど”という、もみがらで煮炊きをする道具を使って、ピザ作りをしたいと思います。」

●ピザ作りですか!? それは楽しみです!

※まずは“ペール缶ぬかくど”の作り方を教えていただきました。

●今、ドラム缶のようなものに穴がいっぱい開いているものが目の前にあるんですけど、これが“ペール缶ぬかくど”ですか?

「そうです。ペール缶というのは、車のエンジンオイルといったオイルが入った20リットルの缶なんですね。その缶をもらってきて、空気の通り道となる穴を開けるんですね。そして、このペール缶の中に穴を開けた業務用のトマト缶を入れます。その大きなペール缶と小さなトマト缶の隙間にもみがらを敷き詰めるように入れます。その状態で真ん中で火を焚くと、もみがらの中から燃焼ガスが出てきます。
 もみがらは、くん炭になるんですけど、そのもみがらが持っているエネルギーでご飯が炊けたり、ピザが焼けたりするんですね。もみがらやペール缶たちって、普段は捨てられてしまうものですよね。それにもう一度光を当てることによって、循環する暮らしを作っていくんですね。」

●どうやって作るんですか?

「大きなペール缶の中に小さなトマト缶を入れて、トマト缶に蓋をします。そして、近くのコイン精米からもらってきたもみがらを中に入れます。」

●では中に入れます。こんなにもいっぱい入れていいんですか?

「いいですよ。大体トマト缶と同じぐらいの高さまで入れます。次は中で火を焚きます。トマト缶の中に細い枝を入れてください。」

●入れ方にコツってありますか?

「敷き詰めるように入れると火がつかないので、空気が通るように隙間を作りながら入れてください。では、付けてみますか?」

●はい。あ、付きましたね。

「そうすると、火が段々と大きくなっていくと思います。」

●日が落ちてきているので寒かったんですけど、火が付くと暖かくなりますね!

「最初は枝が燃えるんですけど、そのうち、周りのもみがらに熱が伝わっていって、もみがらが持っているエネルギーで煮炊きができるんですね。」

●このパチパチっていう音がいいですね。

「そうですね。火を見ていると、気持ちが落ち着きますよね。」

●そうですよね。どのぐらいの火力になったら大丈夫なんですか?

「火が回ってくると煙が出なくなってきますので、そうなると大丈夫ですね。大丈夫になったら鉄板を乗せますが、今日はダッチオーブンの蓋を鉄板代わりにして、鍋本体を蓋にします。」

●あ、ピッタリですね!

「今、鉄板を温め始めましたので、温まるまでの間にピザの生地を伸ばして、上にトッピングをして焼きたいと思います!」

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これが廃材の缶で作ったかまど。もともとはペンキが入っていた缶で、
空気を取り込む丸い穴をたくさんあけてある。
真ん中に同じく穴をあけた小さめの缶をいれ、
そこに火種になる木っ端をいれて火をつける。
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もみがらをかまどにいれているところ。意外に火力がある。
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※それでは、ここからピザ作りに入ります。

「今回は、全粒粉を使ったピザの生地を用意していますので、生地を手で伸ばすところから始めたいと思います。」

●親指と人差し指で押すような感じで伸ばしていくんですね。

「そして、今回はトマトソースを使ったピザとリンゴを使ったデザートピザを用意しています。まず最初に、トマトソースを生地に塗ります。トマトソースを塗ったら玉ねぎとしめじをトッピングします。」

●これを親子でやったら楽しいですよね!

「楽しいですね! 子供はもちろん、大人の方も喜びますね。そして、チーズを上からかけます。かけたら、鉄板に乗せます。乗せたら蓋をします。」

●この蓋はダッチオーブンの鍋の部分なんですよね?

「そうですね。普通のダッチオーブンは鍋の部分が下にあって蓋が上に来ると思いますが、今回はダッチオーブンの蓋をピザを焼く鉄板にして、鍋の部分を蓋にして使います。それでは、お水を入れますので、蓋をしてください。水を入れて蒸気をあげて、上の方まで火が通るようにしてあげます。火力が安定すると2、3分で焼けますので、しばらくお待ちください。2、3分経ったら様子を見て、できてたら食べましょう!」

●ピザって、ピザ釜が無いと焼けないと思っていたんですけど、無くてもできるんですね! ジュージューっていう、いい音がしてますね。最初に薪を入れたじゃないですか。最初に入れた量だけで大丈夫なんですか? 後から追加することはないんですか?

「そうですね。薪が火種になって、あとはもみがらのエネルギーで火が強くなりますので、薪だけでやるのと比べると、薪の量がすごく少なくて済みます。」

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火をつけて落ち着いてきたところで、プレートの代わりに、
なんとダッチオーブンのふたを逆さにして代用!
かまどとサイズがぴったり!
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かまどの準備ができたところで、ピザの生地作り。
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生地の上に具材を置きます。
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逆さまにしたダッチオーブンのふたにピザを置き、水を少したらして・・・
ダッチオーブンの本体をふたにします。GOOD IDEA!
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ピザの焼き上がり!

※ついにピザが焼けました

「焼けましたね。」

●おおーっ! いい感じに焼けてますね! あっという間にできるんですね!

「それではまず、一切れ食べてみてください。」

●いただきます! んー! サクサクで、チーズがとろとろですね! 美味しいです!

「ピザって簡単に作れるんですよ。でも、普段作る機会がないし、そもそもピザの作り方を知らない人もいると思うんですね。でも、自分で生地をこねるところから始めて、トッピングも夏なら畑で作ったものを取って、それを乗せたり、収穫したトマトを使ってソースを作ったりして、自分が育てた作物でピザを作ると、ピザを買ってくるのとは違った楽しみがありますよね。」

●いつも食べるピザとは一味も二味も違います!

「しかも、これを焼くのに使ったのって、ペール缶やトマト缶、もみがらや薪など、全部もらってきたものじゃないですか。今使われていない資源を利用することで、すごく楽しい暮らしが自分の手で作れるんですね。」

●そう考えながら食べると、循環型の味がしますね!

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美味しくいただきました!

楽しみながらやるのが大事

●私たちは学校の2階に戻ってきました。ペール缶をかまどにして、もみがらを燃料にするのを体験して、循環する生活を体験することができました。

「“パーマカルチャー”という考え方が僕のベースとなっているんですね。“パーマカルチャー”というのは、オーストラリアで体系化されたものなんですけど、“ビル・モリソン”と“デビット・ホルムグレン”の二人がまとめたんですね。これは1960年代後半から70年代にかけて環境への関心が高まって、その流れの中で生まれてきた運動の一つなんですね。『自然環境を守る』といったときに、全てを反対するのではなくて、『イエスと言おう!』という考え方の中で生まれたのが、“パーマネント(永続可能)”と“アグリ(農業)”と“カルチャー(文化)”という3つの言葉を1つに合わせたのが“パーマカルチャー”なんですね。
 パーマカルチャーというのは、自然の循環の中に自分の暮らしを入れることが大事だと思うんですね。例えば、自分が食べるものを自分で作ることだったり、エネルギーを自然の中から得ることがそうだと思うんですよね。具体的にいうと、先ほど田んぼから出たもみがらでピザを焼きましたよね。それに、今だと山に木がありますが、それを伐採して、そのまま捨てられるものがありますよね。そういったものをもらってくれば、薪として使えるじゃないですか。それに、私の家の屋根には手作りの太陽熱温水器があるんですけど、夏は太陽の熱でお風呂が沸かせるんですよね。そういう風にして、自然の色々な恵みを自分の暮らしの中に生かしていくのもそうですし、薪をいただくとき、『それが必要なんです』とお願いしていたりすると、近所でお世話になっている造園業の方から大きな木の伐採を頼まれたりするんですよね。その際に薪をお願いすると、切って持ってきてくれたりするんですよ。その方にとっては産業廃棄物なので、お金を払って処分しないといけないものを有用物としていただくことができるんですよね。そういったところでの人との繋がりも大事だと思うんですね。

 なので、パーマカルチャーは『これをしないといけない』っていうことはなくて、100人いれば100通りのパーマカルチャーの考え方があって、それを完璧にするのは大変かもしれないですけど、できることは都会暮らしだとしても必ずあるので、できるところから取り組んでいくことに大きな意味があると思うんですね。」

●私が普段都会に暮らしていても、できることってあるんですね。

「都会の人たちはよく“区民農園を借りて、自分の食べるものを自分で作る”ことをしていますね。私の友達で夏の間はほぼ自給していたりしている人がいますので、都会に住んでいてもそういうことはできると思いますし、ダンボールコンポストを使えば、米ぬかと生ゴミを混ぜることで発酵分解していくんですね。そうすれば、生ゴミの量が減らせるだけじゃなくて、できた堆肥をプランターに入れるとか、地面があるところに返していくこともできますよね。」

●そういったことだったら、ハードルも高くないし、自分が楽しみながらできそうですよね!

「自分が楽しみながらやるのってすごく大事だと思うんですね。楽しいから続くと思うんですよ。だから『環境のために!』っていうより、どうやって自分の暮らしを自分の手で作りながら楽しむのかを考えながらやることが大事だと思いますね。」

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廃材の缶などで作ったロケットコンロ!
手前に木っ端をいれて点火。
あっという間に強い火力を得られる優れもの。

人と人、人と自然を繋ぐ

※梅崎さんは、“エコツーリズムで地域を元気にする”をテーマに活動しているNPO法人・日本エコツーリズムセンターの共同代表も2013年から務めています。その日本エコツーリズムセンターが今、力を入れているイベントについてうかがいました。

「日本エコツーリズムとしては、“エコツアーカフェ”というイベントを月に1回開催しているのと、“教育と刃物”というテーマで様々なゲストに来ていただいてお話をしていただく連続セミナーを行なっています。刃物はすごく危ないものということで、子供たちからなるべく遠ざける流れがあるんですけど、そうではなくて、刃物の使い方や便利さを体験的に学ぶことによって、刃物での犯罪防止に繋がると思いますし、自分たちが人として生きていくときに道具が的確に使うことで、必要なものを作り出したり、それをやることによる教育的な意味がものすごくあると思うんですね。なので、そういったことの重要性を学んでいこうということで、そのセミナーをやっています。」

●いざというときに使えるといいですよね。

「特に、最近は大きな災害が多いですけど、そのときにナイフが使えるか使えないかで生死を分けることもあると思うんですね。なので、“普段から安全に刃物を使うにはどうしたらいいのか”ということがすごく大事なテーマだと思うんですね。日本エコツーリズムセンターは“エコツーリズムを通じて、地域を元気にする”ことをテーマにできた団体なんですね。全国に100人以上の世話人がいて、その世話人が色々なところとネットしながら色々な仕事をしています。また、エコツアーガイドやコーディネーターの育成の授業もしています。今、色々なことが大きく変わる時期なので、『こんな風な社会にしたい』というイメージがあると思うんですね。それを色々なコミュニケーションを通じて、よりいいものを作っていくためにも、人と人、人と自然を繋ぐことができるんじゃないかと思っています。」

●それに通じるものがあるかもしれませんが、風と土の自然学校として、これからどんなことをやっていきたいと思っていますか?

「ベースになるのは“農的な暮らし”“循環する暮らし”ということで、自分たちも実践しながら、それを題材として、年間講座を始め、色々な方たちに体験を通して、その面白さを伝えていきたいと思っていますし、そういう仲間がどんどん増えていってほしいなと思いますね。私たちは参加者というより、仲間が増えるような感じでやっています。」

●今回ピザを作らせていただきましたが、単純に「楽しいな」と思いました。これが自然にもよくて、自分にもいいことであれば、もっとやっていきたいという気持ちになりました。

「色々な本を読んだりして興味を持ったとしても、何から始めたらいいのか分からない方も結構いるんですね。そういう方に来ていただくと、『こんなに簡単なことでいいんですね。早速やってみます!』って言ってくれることが多くて、すごく嬉しいんですね。なので、気軽に参加できるものでいえば、3月8日(土)と23日(日)に自然農の体験会がありますので、そういったところに参加していただければ、小さな一歩じゃないかと思いますね。」

●前回・今回と素敵なお話と体験をさせていただき、ありがとうございました!

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 自分たちの手で自分たちの暮らしを作るって本当に素敵ですよね。特に私は身近にできる循環型生活として“ダンボールコンポスト”が気になったので少し調べてみました。作り方は色々ありますが、新聞紙を敷いたダンボールにピートモスや、スミ、おが屑などを入れて布で蓋をするだけで作れるそうです。生ごみが自分で処理できるし、それを再利用できるなんて最高ですよね。私も今度作ってみたいなと思います。ちなみに千葉市のホームページにも詳しい作り方などが載っているので、興味がある方はぜひ参考になさって下さい。

INFORMATION

風と土の自然学校情報

 風と土の自然学校では「自然農と手づくり循環生活」の実践講座を、年間を通して行なっていますが、3月に自然農の基本がわかるミニ講座と年間講座の紹介を兼ねた体験会が行なわれます。

◎開催日時:3月8日(土)と23日(日)のいずれも午前10時から午後3時半まで
◎定員:12名
◎参加費:1,500円
◎アクセス方法:新宿駅から高速バスで90分、車の場合は中央道・都留インターからすぐ、電車の場合は富士急行の都留市駅から徒歩18分
◎詳しい情報:風と土の自然学校のブログ

日本エコツーリズムセンター情報

トークショー

 アジアを旅するシンガー・ソングライター「輪」さんと、丹沢自然学校の「吉田直哉」さんのトークショーがモンベル渋谷店の5階サロンで開催されます。輪さんのギターの弾き語りもあります。

◎開催日時:2月26日(水)の午後7時から
◎参加費:500円

セミナー

 連続セミナー“教育と刃物”シリーズの第9回目が日本エコツーリズムセンターで行なわれます。ゲスト・スピーカーはボーイスカウト連盟の「佐久間宣吉」さんです。

◎開催日時:2月28日(金)の午後5時半から
◎参加費:1,500円

それぞれの詳しい情報などは、日本エコツーリズムセンターのオフィシャルサイトをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. WINDY / THE ASSOCIATION

M2. PINE APPLE RAG / THE STING オリジナルサウンドトラックより

M3. IT'S SO EASY / LINDA RONSTADT

M4. WHEN WILL I SEE YOU AGAIN / THE THREE DEGREES

M5. BLOWIN'IN THE WIND / BOB DYLAN

M6. WHY CAN'T WE BE FRIENDS? / WAR

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」