2014年3月8日

東日本大震災から3年〜南三陸ミシン工房のうた〜
「あんだもがんばっぺし!」

 2014年3月11日。あの東日本大震災から3年になります。最も被害の大きかった東北の復興はまだまだこれからだと思います。改めてお見舞い申し上げるとともに、1日でも早い復興を祈らずにはいられません。そのためには息の長い支援活動が必要だと思いますが、今回のNECプレゼンツ・ザ・フリントストーンは、シンガー・ソングライターのHARCOさんの活動にフォーカスします。

 HARCOさんはエコや環境に対する意識の高い方で、環境gooでコラムを連載している他、半年に一度のペースでエコと音楽のイベント「きこえる・シンポジウム」を開催されています。そんなHARCOさんが先日、チャリティ・ミニ・アルバム『南三陸ミシン工房のうた』をリリースしました。タイトルにある“南三陸ミシン工房”は宮城県・南三陸の“ミシンでお仕事プロジェクト”から誕生した団体であり、ブランド名です。
 今週はHARCOさんに工房との出会いなどうかがう他、NPO法人「南三陸ミシン工房」の代表理事「熊谷安利(くまがい・やすとし)」さんに電話でお話をうかがったときの模様もお送りします。

ミシンから希望の光が・・・

※チャリティ・ミニ・アルバム『南三陸ミシン工房のうた』を先日リリースされたHARCOさんに、アルバムのことをうかがう前に、“南三陸ミシン工房”がどんな工房なのかを、NPO法人・南三陸ミシン工房の代表理事・熊谷安利さんに電話でうかがいました。

熊谷さん「震災直後に設立された大きなボランティア団体の中の1つのプロジェクトで“ミシンでお仕事プロジェクト”というものがあります。これは、南三陸町の女性たちにミシンをお届けして、『そのミシンで何かお仕事をしていただけたらいいな』という想いで始めた活動なんですね。現在はそのミシンで色々な布製品を作って販売しています。 震災直後から色々な支援物資が現地に来たんですけど、その中には洋服もあったんですね。でも、家族のサイズに合う洋服がなかったりするので、被災した女性たちから『ミシンがあれば、丈直しができるのになぁ』と言われていたので、ご支援いただいたお金からミシンを(買って)お渡しして、仕事に繋げられればいいなという想いから始まりました。」

●ということですが、HARCOさんが南三陸ミシン工房と出会ったキッカケは何だったんですか?

HARCOさん「2011年の秋ぐらいに糸井重里さんと“ふんばろう東日本支援プロジェクト”というボランティア団体をやっていた西條剛央さんのトークショーを聞きにいったんですね。そこの受付で南三陸町のおかあさんたちが一つ一つ縫ったものが売っていたんですね。そこで“この売り上げのほとんどはお母さんたちに渡って、支援になります”と書かれていたんで、買い物に使えそうな大きなトートバッグを買ったんですね。そこで販売していたお姉さんとお話をしたんですけど、そのときのお話が気になっていたんですよね。
 ミュージシャンって、ライヴ・グッズを作ると思いますけど、あるときに『僕のライヴ・グッズをおかあさんたちに作ってもらえないかな?』と思って、コップを乗せるコースターを作ってもらうように依頼したんですよ。それが、実は外部からの初めての仕事の依頼だったみたいなんですよね。それまでは自分たちで作っていただけだったみたいなんですけど、全然知らなかったんですよね。」

●お母さんたち喜んだんじゃないですか?

HARCOさん「そうだと思いますね! 同時にビックリもしたと思いますけどね(笑)」

HARCOさん

●(笑)。その後も継続しているんですか?

HARCOさん「そうですね。今年の初めにミシン工房が竣工されたんですけど、それまではなかったので、おかあさんたちは住んでいた仮設住宅で作業をしていたんです。でも、今はミシン工房ができたので、そこにみんな集まって楽しく作業しているみたいですね。」

●HARCOさんはまだミシン工房がないときにお邪魔したんですね?

HARCOさん「そうですね。でも、お邪魔したのは仮設住宅じゃなくて集会場だったりカフェだったりと、毎週末に集合して、“お茶っこ”してますね。」

●“お茶っこ”ですか?

HARCOさん「簡単にいえば、休憩を取ることですね。そこに入ってお話を聞いたりしていましたね。やっぱり家に一人でじっとしているより、みんなで集まった方がいいですし、しかも手仕事という何かに集中できることがあるというのは、すごく大切なことだと思うんですね。特に、震災から間もないころになればなるほど、寂しさとか色々なことを思い出しちゃったりするじゃないですか。そういう時間を埋めてくれたのは、すごく大切だったんじゃないかと思うんですね。みんなが集まっている場もそうですし、集まっている時間もかけがえのないものだと思いますね。」

●今回のチャリティ・ミニ・アルバム『南三陸ミシン工房のうた』も、そういった出会いを通じて生まれたものなんですか?

HARCOさん「そうですね。僕が今話したことが全部詰まってます! ちょっと大げさな言い方ですけど、遊びに行かせてもらって、ミシンを縫っている手元を見ると、そこから希望の光が見える気がするんですよね。おかあさんたちの代表的な作品として“あんだもがんばっぺし!!バッグ”というものがあるんですけど、それを見ると、逆におかあさんたちから『がんばっぺ!』って言われている感じがするんですよね。そういうメッセージがミシンとおかあさんたちの手によって作品に込められて、そこから色々なものがミックスされて全国に届いていると思うと、まさに奇跡のようなものだと思うんですよね。だからこそ、それを歌でちゃんと表現したいと思って作りました。」

※ここで、放送ではチャリティ・ミニ・アルバム『南三陸ミシン工房のうた』からタイトル・ソングを聴いていただきました。

“歌津の森”の定置網!?

●チャリティ・ミニ・アルバム『南三陸ミシン工房のうた』からタイトル・ソングを聴いていただきました。ミシンの音が最初に入っていて、途中にもリズムよく入っていますけど、ミシンの音って、ホッとしますね。

HARCOさん「そうですよね。ミシンって、お母さんがほつれたところを縫ってくれたり、雑巾を縫ってくれた思い出って誰にもあると思いますけど、そういうことを思い出すと、温かい気持ちになりますよね。」

●心のふるさとを思い出させてくれるような曲でした。

HARCOさん「ありがとうございます。僕もこういった“生活の音”がすごく好きなんですよね。」

●そういう音も聴いてみると面白いかもしれませんね。HARCOさんは南三陸町に何度も行っているそうですが、震災直後と今とでは状況もかなり変わっているんじゃないですか?

HARCOさん「ガレキ撤去とかでもできればいいなと思って、2011年の夏にネットで民間のボランティア団体に申し込みをして、現地に初めて行ったんですね。そのときもたまたまなんですが、南三陸町に行ってたんですね。南三陸町って色々な地域があるんですけど、その中でも“志津川”と“歌津”という地域が大きいんですね。ただ、大きいだけに津波の被害をたくさん受けてしまったところなんですけど、僕は歌津の方にボランティアで行かせていただきました。
 海岸の傍の森に行ったんですけど、海に張ってあった定置網が津波によって森に流されていて、木に巻きついていたんですね。それを処分しようにも、購入しようとすると1000万円ぐらいする縦横100メートルぐらいのすごく大きなものだからできないんですね。なので、1つも傷つけることなく網を取り外して、別のところに持っていってから1つ1つ掃除してキレイにする担当だったんですね。その作業は知恵の輪のようでした。土とかが混ざり合って重いので、みんなで『せーのっ!』って息を合わせつつ、途中で絡まったりするので、頭と体を同時に使って、ヘトヘトになりながら作業をしましたね。今回のアルバムに“歌津の森”という曲が収録されているんですが、この曲はそのときのことを思い出しながら作りました。」

HARCOさん

●HARCOさんにとって、東北の夏は歌津の森なんですね。

HARCOさん「そうなんですよね。漁師さんのおばあちゃんがアイスを持ってきてくれたりしてくれたんですけど、そういうのがすごく嬉しかったですね。」

●南三陸ミシン工房以外にも色々なところで復興支援のお手伝いをされてるんですね。

HARCOさん「でも、1・2回だけだったので、たくさんは行けなかったですね。」

●チャリティ・ミニ・アルバム『南三陸ミシン工房のうた』に入っている曲に“さんさんきらきら”という曲がありますが、この曲も南三陸のことを歌っているんですか?

HARCOさん「そうですね。南三陸町に“さんさん商店街”という仮説商店街があるんですけど、そこの名物として“キラキラ丼”というのがあるんですよ。それをこの前行ったときも食べたんですけど、そのときはイクラが山盛りで、サーモンの刺身も乗ってましたね。時期によっては、イクラじゃなくて違う刺身だったりするらしいんですけど、とにかくキラキラしてますね。さんさん商店街のキラキラ丼を食べたので、この曲を作りました。この曲にもおかあさんたちのミシンの音や喋り声を入れています。」

※ここで、放送ではチャリティ・ミニ・アルバム『南三陸ミシン工房のうた』から『さんさんきらきら』を聴いていただきました。

音楽が僕にとってのボランティア活動

※南三陸ミシン工房の代表理事・熊谷安利さんからHARCOさんにメッセージをいただいています。

熊谷さん「震災から3年が経とうとしていて、都会のほうでは記憶がかなり薄れてきていると思うんですね。その中で声高に『忘れないでください!』と叫んでも、なかなか伝わらないときに伝える手段として、HARCOさんは歌で発信されているので、私たちは感謝しています。歌を通じて色々な方が南三陸町の被災した東北の人たちに想いを馳せていただけたらありがたいなと思っています。」

●というメッセージをいただきましたが、いかがですか?

HARCOさん「嬉しいですね! 先ほど話した震災後の力仕事のボランティアって初めて体験したんですけど、『これからそういうことをしてみたいな』と思っていましたけど、僕は“音楽を使ったボランティア”もできると思ったんですね。例えば、ライヴで現地に行くことも大切だと思いますし、僕は普段、コマーシャル・ソングを作ったり歌ったりしていますし、ナレーションもやったりしているんですけど、そういう風に商品を歌で知ってもらう仕事を長くやっていたので、特にこのプロジェクトのことなど、現地のことを歌で分かりやすい形で広められれば、それが僕にとってのボランティアになればいいなと思ったんですよね。震災から3年が経とうとしていますけど、当初は継続してできるとは思っていなかったので、それは僕にとっても嬉しいですし、こうやって熊谷さんに言ってもらえるとすごく嬉しいですね!」

●これからも南三陸町のために歌い続けますか?

HARCOさん「歌い続けますし、おかあさんたちの“あんだもがんばっぺし!!バッグ”をツアーグッズとして売ることも続けていきます。」

●実は、チャリティ・ミニ・アルバム『南三陸ミシン工房のうた』には、南三陸ミシン工房で作られたトートバッグが付いてくるんですよね! このバッグですけど、すごくかわいい色合いですよね。この色合いはHARCOさんが決めたんですよね?

HARCOさん「そうですね。生地のセレクトをさせていただきました。実際に、僕もこれを作ったことがあります。家庭科の成績が悪かった僕でも、教えてもらいながら作ったらバッグが縫えましたからね(笑)。バッグの大きさはCDのサイズよりちょっと大きいぐらいで、財布と携帯電話を入れてランチに出かけたり、車を運転するときにCDを3枚ぐらい聴きたいと思って入れてきたりするときに便利なバッグですね。今回のCDは、おかあさんたちが作ったバッグとセットで購入することができます。むしろ、そのセットで買っていただきたいと思います!」

●2つ合わせて買っていただきたいですね! ちなみに、バッグにタグが付いているんですが、そこに“おらほも あんだほも がんばっぺし”って書いてあるハンコが押してあるんですよね。そして、お名前も書いてあるんですが、この名前は誰の名前なんですか?

HARCOさん「そのバッグを縫ったおかあさんの名前ですね。それに、お一人お一人の似顔絵のようなものも書かれているんですが、それぞれ顔が違うんですよね。ただ、それは、実は髪型が違うんです。今、20名ほどいらっしゃるんですけど、全員髪型が違うんですよ。しかも、みんな特徴的な髪型なんですよね。南三陸町の美容師さんの腕はすごいですね!」

●確かにそうですね! それぞれ似合った髪型にしてるんですね。こんな風に誰が作ったか分かるというのもいいですよね! 是非ともセットで購入していただけたらと思いますが、購入していただけると、販売金の一部が支援金になるんですよね?

HARCOさん「経費を除いたお金が全ておかあさんたちの支援金になります。」

●是非ともHARCOさんのホームページをチェックしていただけたらと思います!

HARCOさん

(この他の HARCOさんのインタビューもご覧下さい)

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 HARCOさんのCDと一緒に販売される南三陸のお母さん達が作った「あんだもがんばっぺし!!バッグ」には“Hang in there!”というコトバが刺繍されているんですが、このコトバには「全国のみなさん、応援を本当にありがとう。私たちは震災で失ったものも多いけど、笑顔でがんばっていたら、嬉しいことも、素敵な出会いもたくさん起きました。だから、あんだもがんばっぺし! あなたはあなたの場所で。それぞれの毎日を、それぞれの場所で一緒にがんばっていけますように」という想いが込められているそうです。震災から3年経ちますが、まずは忘れないということ。そして継続して支援をしていくことが大切なんだと改めて感じます。バッグを買うことで支援に繋がり、お母さんたちから元気をもらえる「あんだもがんばっぺし!!バッグ」。私も早速HARCOさんのCDと一緒に買わせていただきました。

INFORMATION

チャリティ・ミニ・アルバム『南三陸ミシン工房のうた』

「南三陸ミシン工房のうた」

 HRLT-0006/定価1,260円

 HARCOさんのオフィシャル・サイトかライヴ会場で購入できるこのチャリティ・ミニ・アルバムは、全6曲収録。このミニ・アルバムの売り上げは、諸経費を清算後、宮城県・南三陸の“ミシンでお仕事プロジェクト”から誕生した団体であり、ブランド名である「南三陸ミシン工房」に寄付されます。そして、南三陸ミシン工房とHARCOさんのコラボで誕生した“がんばっぺし!!バッグ”がミニ・アルバムとセットになって販売されることになっています。

ライヴ情報

 HARCOさんのチャリティ・ミニ・アルバム・リリース記念ライヴが3月22日(土)に南三陸・ホテル観洋のロビーで開催されます。このライヴには南三陸ミシン工房のお母さんたちもトーク・ゲストとして登場する予定となっています。
 また、4月21日(月)には「HARCOの春フェス2014」が渋谷DUO MUSIC EXCHANGEで行なわれます。

 それぞれ詳しい情報はHARCOさんのオフィシャル・サイトをご覧ください。

NPO法人・南三陸ミシン工房情報

 熊谷安利さんが代表理事を務めるNPO法人・南三陸ミシン工房では 活動資金のための支援金を募っています。ぜひご協力お願いします。詳しくはオフィシャル・サイトをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. 世界でいちばん頑張ってる君に / HARCO

M2. 南三陸ミシン工房のうた / HARCO

M3. さんさんきらきら / HARCO

M4. I RUN TO YOU / LADY ANTEBELLUM

M5. SOMEBODY TO LOVE / QUEEN

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」