2014年6月14日

白石康次郎“リビエラ 大人の海洋塾”取材リポート
「白石さん、つらいです・・・(涙)」

白石康次郎さん

 今週は、海洋冒険家・白石康次郎さんの海洋塾の取材リポートをお送りします。先日、神奈川県の三崎にある「シーボニア・マリーナ」で“リビエラ大人の海洋塾”が開催されました。今年も4月から“海洋塾の親子編”を開催していますが、「ぜひ大人だけの海洋塾もやって欲しい」という要望があり、今回初めて“大人の海洋塾”が開かれる、ということで、取材に行ってきました。ところが、「せっかく行くなら体験もしよう!」ということになり、熱いハートで指導される白石さんの海洋塾の1泊2日のプログラムの2日目の途中からながら、長澤も体を張って参加してきました。そのときの模様をお送りします。

海洋塾は“海の幕の内弁当”

●今回は神奈川県三崎にある「シーボニア・マリーナ」に来ています。私の隣には白石康次郎さんにいらしていただいてます。お久しぶりです!

「よろしくお願いします! ご無沙汰ですね!」

●今回、“リビエラ 大人の海洋塾”開催中に、お時間をいただき、ありがとうございます。

「“リビエラ海洋塾”はいつも親子を対象として行なわせていただいているんですが、今回初めて“大人のための海洋塾”を行ないます。ただ、“海洋塾”といっていますが、教育よりも日頃仕事や家事で忙しいと思いますので、この間だけは童心に帰っていただいて、体は疲れますが、心を軽くして帰っていただければと思って、やっています。
 私はこの海洋塾を“海の幕の内弁当”といっているんですよ。大体、ヨットはヨット、カヌーはカヌーという感じになると思いますが、それだけじゃなく、全部やります。初日はアクセスディンギー、シーカヤック、釣り、タコ網漁、魚のさばき方、カッター訓練、テント張りをして、ご飯を食べた後の焚き火をやりました。ダッチオーブンでシチューを作って食べましたね。なので、初日だけでものすごい数の種目をやっています。」

●2日目の今日も、さらにたくさんの種目をやるんですか?

「そうですね。昨日のおさらいとしてカッター訓練をやったあと、“カタマラン”というタイプの豪華なヨットに乗って、セーリングをしながら、洋上でストレッチをします。種目が多いでしょ?」

●確かに幕の内弁当ですね!

「今回、長澤さんにも体験していただきますよ。」

●私もいいんですか?

「もちろんです! 女に磨きがかかります。」

●それは楽しみです! 具体的には何をするんですか?

「申し訳ないんですが、いきなり“地獄のカッター講習”です。今って、地獄をなかなか見ないじゃないですか。ただ、これは志願者に限ります。もし、やるのであれば、やりましょう。」

●うーん・・・。やります! せっかく来たんですから、やらせてください! そして、それが終わった後には、天国が待っているんですよね?

「待ってますよ。カタマランというタイプのヨットに乗って、洋上でストレッチをしますので、気持ちいいですよ。海って、人間が作り出したものじゃないじゃないですか。潮風浴びるだけでも非日常なので、ストレスが発散できるので、日頃の嫌な想いを全部出して帰ってください!」

●はい! よろしくお願いします!

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長澤ゆき、“地獄のカッター講習”に挑戦!

※ここからいよいよ“地獄のカッター講習”です。カッターとは、“オール(日本語で「櫂」)”を漕いで進む手漕ぎボートのことで、海洋大学の学生さんたちが訓練で漕ぐ、あの大型のボートです。今回は白石さんを入れて13名で乗船。うち、女性は長澤を含め3名。漕ぎ手は両舷に5名ずつ配置されました。

●これからカッター講習です。

「カッターのポイントは簡単です。“私の指示に従ってください”。それ以上も以下もないです。命令を聞いて、的確に行動してください。全員揃えないと船は進みません。僕の命令どおりに動けば、この船は縦横無尽に動きますので、僕の命令を聞いて、的確に動いてください。早くても遅くてもダメです。いいですね?」

●分かりました!

「はい、櫂前へ! 2、そーれ! 1! もっと前出して! ブレード合わせて! 1! 2!」

●そーれ!

「体全体を使って、櫂を引っ張ってください。腕だけでやろうとすると、腕の力が小さいから、足で蹴って、背筋を使ってください。“櫂止め、よーい!”と言ったら止まって、“櫂止め!”で入れてください。“櫂上げ!”で櫂を上げてください。“櫂組め!”で隣の人のところまでブレードを上げていきます。これは休むときですね。そして“櫂たて、よーい!”で櫂を立ててください。櫂たて、よーい! 櫂たて! 一気に持ち上げてください! 足でしっかり押さえてください! これをミスすると、他の人が怪我してしまいますから、ミスしないでくださいね。はい、櫂そなえ! これでゆっくり下ろしてください。今、ものすごく不安な目でこっちを見ましたよね?(笑)」

●白石さん、大丈夫ですかね?

「できる・できない、大丈夫・大丈夫じゃないのは関係ないです。私が言っていることをやればいいです。それがポイントです。」

●分かりました! いよいよ出発です!

「1、2!」

●そーれ!・・・

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※白石さんの号令の下、順調に沖に出ていきます。

「・・・どうでした?」

●つ、辛いです・・・。

「辛いことをしているんです。我々は楽をしに来ているんじゃないんです。」

●水の力って、こんなにも強いですね!

「では、今度、艇指揮をしましょう。立って、号令をかけてください。全部の櫂を見て、“短く・明確に”号令をかけてください。命令は“短く・明確”なんです。それがポイントです。では、お願いします。」

●分かりました。櫂前へー。

「もっと元気よく!」

●櫂前へー! 1! 2!

「そーれ!」

●1! 2!

「そーれ! あ、櫂上げー!」

●櫂上げー! ここ、気持ちがいいですね!

※順調にカッター講習が進み、次第に終わりへと近づいてきました。

「1、2!」

●そーれ!

「左舷、櫂たて、よーい、櫂たて! 右舷前へ! 右舷、櫂とめ、よーい、櫂とめ! 素晴らしいですね。かっこよかったです。」

●ちゃんと止まりました! 楽しかったです!

「これがカッター訓練です。これで甘い顔をしていたら怪我してしまうので、厳しかったですが、次のセーリングはやんわりとした感じですよ。これはスパイスです。ちゃんとデザートを用意してますよ(笑)」

●このスパイスも、達成感があってよかったです!

「初めてなのにお見事でした。」

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地獄のあとは、優雅なセーリング

※“地獄のカッター講習”のあとは優雅にセーリング。今回は船体が二つある双胴船“カタマラン”というタイプの豪華なセーリング・クルーザーで、ちょっとVIPなセーリングを味わいました。

●これからセーリング体験に行きます。私たちが今乗っているのは、47フィートの双胴船“カタマラン”という船なんですけど、中にはキッチンがあったりして、ここで何泊か過ごせるぐらいの大きさです。これから沖に出ていきます。出発!

セーリング講習で乗船した47フィートのカタマラン(双胴船)。キャビンにはキッチンにテーブル、ソファー、客室もある豪華クルーザー。
セーリング講習で乗船した47フィートのカタマラン(双胴船)。
キャビンにはキッチンにテーブル、ソファー、客室もある豪華クルーザー。

※長澤たちを乗せ出発した“カタマラン”。まずはセイルを上げます。

「これがメインセイルで、前にあるのがジブセイルです。この2枚で走ります。まずはメインセイルをみんなで上げます。はい、上げてー!」

●・・・さっきの疲労がきてますね(笑)。

「はい、ストップ! せーの!」

●せーの! 重い! さっきのカッター講習に続き、きついですね。もう腕に力が入らないです(笑)。セイルが上がるとキレイですね。白い帆が風を受けてユラユラと揺れています。

※セイルを上げてどんどん進む船。快適なセーリングが続きます。

「2ヶ月もすればサンフランシスコですね。気持ちいいでしょ?」

●気持ちいいです!

「風のパワーでこれだけの大きな船を動かすんですよ。」

●風を何度の角度で受けるといいんですか?

「風に対して真正面の方向へは進めないので、45度の角度で受けます。そしてタッキングで方向を変えて、逆向きに45度で受けて進みます。ジグザグに進みますので、倍の距離を走ることになりますので、大変なんです。逆に下りは風が帆の背で受けて走るので、そのまま走ることができるんですよ。エンジンの音がしなくて、波の音しかしないのがいいですよね。」

●あと、鳥の鳴き声が時々聞こえてきますね。気持ちがいいですね。

「こんな風にいい日ばかりだといいですね。」

●もし風が強かったりして、セイルが絡まったりすると、どうするんですか?

「後ろにロープがあるんですけど、それを使ってセイルを縮めていきます。それを“リーフ”というんですが、風が強いとこのままではひっくり返ってしまうので、風の強さに応じて我々は適切なセイル面積を調節する必要があるんですね。今はフルセイルなんですけど、風がこれ以上強くなったら少しずつ縮めていきます。逆に風が弱くなったら、セイル面積を広くしないといけないので、メインセイルを上げていかないといけないんですよね。それもまた大変です。」

●今こうやっている数分間でも風が結構変わるじゃないですか。頻繁に様子を見ているんですよね?

「そうですね。例えば、低気圧が通過しているとかスコールが発生したりすると、頻繁に風が変わるので、そのときは休むことができないですね。」

●白石さんはこれで世界一周をしたじゃないですか。夜とか寝むれたんですか?

「1時間以上寝ないですね。」

●大変ですね!

「楽をしにいっているんじゃなく、大変なことをしにいっているんで、大丈夫ですね。そんな大変の向こうには幸せが待ってるんですよね。」

●どんなときに幸せを感じましたか?

「船と自分と風と地球が一体になる瞬間があるんですよね。海を渡っていて、渡ったさきには家族や仲間が待ってるんですよ。それってすごく嬉しいことなんですよね。なので、海渡っていると、行く前の地球と行った後の地球はちょっと違っているんですよね。より輝いて見えるんですよ。そういう苦難がなければ、輝かないんですよ。モノって、磨かないと輝かないじゃないですか」

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※セーリングを楽しんでいると、徐々に天候が変わってきました。

●海上が霞んできました。湿度がすごく上がってきた気がします。海上の天気って一気に変わりますね。

「もう200メートル前は見えないですね。こういうときに船と衝突したりするので危険ですね。」

●私たちが出てきたシーボニア・マリーナも見えないですね。目印がないって怖いですね」

「これだと方向を失ってしまいますよね。皆さん、ヨットが突然出てくるかもしれないので、周りをよく見てくださいね! 何かあったら教えてください!」

●こういうときには、どういう風に対処するのがいいんですか?

「見張りを厳重にすることですね。発見が遅れると当たってしまいますからね。」

●あまり動かない方がいいんですか?

「いや、よく見ていればいいんです。」

●世界一周をしているときも、色々な天候の変化に対応してきたんですよね?

「そうですね。ガスったり、雨が降ったり、風がなかったり、嵐が何日も続いたりしましたが、自然って人間が作り出したものじゃないので、“何が起こるか分からないのが常”なんですね。それにどう対処するのかが問われるんですよ。『こうあってほしい』という希望は海にはないんですよ。でも、絶望もないんですよ。楽観もないし、悲観もないんです。だから、そのときそのときで適切な対応を的確に対処すればいいんです。だから、どんなことが起きても冷静に対処できるように、日頃訓練を積むんですよ。」

マリーナ近くで投錨。クルーザーの上で洋上ストレッチ。先生は安井智夏さん。
マリーナ近くで投錨。クルーザーの上で洋上ストレッチ。先生は安井智夏さん。

*今回の海洋塾では、参加者のみなさんにリフレッシュしていただこうと、セーリング・クルーザーの上で洋上ストレッチのプログラムもありました。ユラユラと揺れる洋上で深く呼吸をしながらストレッチは海との一体感が感じられて、リラックスすることができました。先生は鎌倉でトレーニング教室を開いてらっしゃる安井智夏さん。安井さんのレッスンを受けたい方はオフィシャル・サイトをご覧ください。

◎安井さんのHP:
http://www1.m.jcnnet.jp/chinatsu-matsuzawa/about_us.html

海ではいつでも真剣勝負

※洋上ストレッチを行なってリラックスした後、シーボニア・マリーナにもどり、“リビエラ大人の海洋塾”もエンディング。閉校式の後、参加者の方に感想などうかがいました。答えてくださったのは埼玉から参加された井手智子さんと、練馬からいらしたお友達の東垣内夏子さんです。

●実際に受けてみてどうでしたか?

井手さん「シーカヤックはやったことがなかったからすごく楽しかったですし、普段ヨットに乗っていたりしたんですが、普段乗っているヨットと違っていたので、それもすごく楽しかったです!」

東垣内さん「私はシーカヤックをやったことがあったんですが、ヨットをやったことがなかったので、すごくドキドキでしたが、すごく楽しかったです!」

●東垣内さんは白石さんと一緒にヨットに乗ったんですよね?

東垣内さん「最初、行きたい方向に行けなかったので、それを見かねて乗ってくれました(笑)」

●(笑)。ヨット経験者からしたら、すごくうらやましいことです!

井手さん「ヨットに乗れないフリをすればよかったです(笑)」

東垣内さん「乗れない私は必死でしたけどね(笑)」

●(笑)。白石さんに色々と教えてもらったり、2日間一緒に過ごしてみてどうでしたか?

井手さん「一緒に話す機会がたくさんあって、海のことを学ぶというより、“これからの人生を学ぶ”感じでした。参加されていた方も皆さんいい方で、色々と話せてよかったです」

コメントをいただいた井手智子さん(中央)と東垣内夏子さん(左)、ありがとうござました。
コメントをいただいた井手智子さん(中央)と東垣内夏子さん(左)、ありがとうございました。

※最後に白石さんにお話をうかがいました。

白石さん「今日はありがとうございました。どうでしたか?」

●半日だけでしたが参加させていただきましたが、最初のカッター講習がビックリでした! 最初に櫂を持った瞬間「重っ!」って思いました。

白石さん「あれはラジオをお聴きの皆さんには分からないと思いますが、皆さんが思っている3倍重いです。あれは男でも重いですよ。」

●木製の櫂ですからね。これで漕いで沖まで行けるのか不安で、怯えた目で白石さんを見ていたと思いますが、やっていくうちに「水をつかんでいるときは、ちゃんと前に進むんだ」ということがなんとなく分かりました。

白石さん「見ていても立派にできていたと思いますよ。最初は『できるかな?』って心配していたんですよね。でも、『うまくやってくれ』とは言っていなくて、ただやってくれればいいんですよ。うまくやってほしいと思わないし、自分の範囲内でできることをやってくれればいいんですね。そういう体験をしてもらえればよかったなと思っています。」

●そして、海上での白石さんは、今の優しい白石さんとは一味違う、ピリっとした感じでした。

白石さん「そうですか。最後、セーリングをやってもらいましたが、海は人間が作ったものじゃないから、何が起きるか分からないし、いつ怪我するか分からないんですよ。だから、海では真剣勝負だし、1つ1つこなしていかないといけないんですね。でも、ちゃんとやれば乗り越えられます。カッター講習はこのプログラムのスパイスでしたね。」

●その後のセーリング体験はデザートでしたね!

白石さん「気持ちよかったね!」

●気持ちよかったです!

白石さん「ヨットは音がせずに海上を滑るように走るので、あれは爽快感を楽しんでいただければいいなと思っています。」

●海上でストレッチをやったことで、より海や自然と一体化できた感じがしました

白石さん「それはよかったです。でも、洋上で霧がでてきましたね。あれは100メートル以上先は見えなかったですね。ここでは珍しいことなんですけど、ああいうこともあるんですね。そういうときは『何で? どうして?』と考えるんじゃなくて、すぐにセイルを下ろしたりして、運命に対する態度が大事なんですね。これは他の自然界でも同じで、どうなったかが問われるんじゃなくて、そういう事態になったときにどう対処したのかが問われるんですよ。この海洋塾は、そういうトレーニングにもなるんです。」

●参加者の皆さんもそういったところをたくさん感じたんじゃないでしょうか。

白石さん「だと思います。そういうものを感じてもらえたらよかったなと思います。」

操船中の白石さん、海が似合う男です!
操船中の白石さん、海が似合う男です!

(この他の白石康次郎さんのインタビューもご覧下さい)

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 “大切なのは運命に対する態度。どうしてそうなったのかではなく、それに対してどう対処したのかが大事”。そんな風に白石さん最後におっしゃっていましたが、私も実際の海の上で天候の急変という、どうにもならない事態に遭遇して「なんで?どうして?」と考えるよりも、いかにそれに対応していくかが大切なのかを、身をもって実感しました。海の上で人生においても大切なことを学ばせていただいた気がします。

白石康次郎さん情報

リビエラ海洋塾

 「シーボニア・マリーナ」で開催される、親子を対象にした“リビエラ海洋塾”。プログラムは小型ヨットのディンギー、シーカヤック、クルーザーヨットのセーリング体験ほか、ロープワーク教室に釣り体験、そして近くの森の散策に、森の生き物講座等、盛りだくさんです! 白石さんがいう“海の幕の内弁当”的な多彩なプログラムをぜひお子さんと一緒に体験してください。

◎日程:7月26日(土)から27日(日)、8月30日(土)から31日(日)、
    9月27日(土)から28日(日)のいずれも1泊2日
◎参加費:親子のペア・49,800円(食事代込み)
◎詳しい情報:リビエラ海洋塾のオフィシャルサイト

オフィシャル・サイトとブログ

 白石さんの近況や今後の予定などは、オフィシャル・サイト内のブログを見てください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. GOOD VIBRATIONS / THE BEACH BOYS

M2. NOTHING'S GONNA STOP US NOW / STARSHIP

M3. BLOW / 山下達郎

M4. SAILING / CHRISTOPHER CROSS

M5. THE REASON / HOOBASTANK

M6. SAILING / ROD STEWART

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」