今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、濱口祐自さんです。
濱口祐自さんは和歌山県の那智勝浦を拠点に音楽活動を続けてらっしゃるギター弾きです。那智勝浦は海と山に囲まれた自然豊かな所。そして世界遺産に登録されている熊野エリアにあります。そんな場所に暮らす濱口さんはミュージシャンとしての活動のほか、野鳥のメジロや、竹に詳しいという横顔も持ってらっしゃいます。特に竹に関しては、竹林に行って竹を切り出し、細工してお店の内装を作ったりと、職人顔負けの知識と技術の持ち主。最近は竹で作ったスピーカーを使ったライヴを行ない、濱口さんが奏でる、アコースティック・サウンドとの愛称が素晴らしいと評判になっています。今回はそんな濱口さんに那智勝浦の暮らしや竹のお話をうかがいます。
●今回のゲストは、ギター弾きの濱口祐自さんです。よろしくお願いします!
「よろしくお願いします」
※アコースティック・ギターを手にする濱口さん、ここで名刺代わりのギターの生演奏!
●ステキな音色を奏でていただき、ありがとうございます! これはどんな曲ですか?
「ブルージーなイメージやね。こんな感じで家の前とかで弾いてるね。なんでか分からんのやけど、外で弾くと音がええ気がするんよ。空気に振動するんかな? 特に夏の夕方はええな」
●そんな濱口さんは現在、和歌山県の那智勝浦に住んでいるんですよね。那智勝浦といえば、熊野古道ですよね。
「今年で世界遺産に登録されて10年目らしいの。こないだ登録されたばっかりやと思っとったのに、もう10年なんやね。とにかく、那智勝浦は山と川、海もあるええところやね」
●勝浦というと、千葉にも勝浦があるので、なんとなく馴染みがあるんですよね。
「そうみたいやね。漁師の人たちが(地形や海が)似ているからという理由で付けたっていう説があったり、醤油が関係していたりと、色々説があるんよな」
●だから、文化的な面などの繋がりがあるんでしょうね。
「なんらかの交流があって、そうなったんやろうね。僕もいずれ千葉の勝浦には行ってみたいんよね。『景色が似てる』というのは聞いたことあるんやけど、行ったことないんよ。那智勝浦にも小さな入り江が多くて、磯があって、小さい湾が多いね」
●そんなロケーションで濱口さんはどんな風に暮らしているんですか?
「適当に暮らしとるな(笑)。背後には山があるんやけど、そんなに高い山やないんですね。里山みたいなところが多いんですよ。それがええなぁ。その山までの距離も全然あらへんのよ。背中が山っていう感じやで! 前向いたら浜があるっていう感じなんよ。僕はそういうのが好きやね。海辺なんやけど、春になるとウグイスが鳴くし、それがええね!」
●生き物もたくさんいるんじゃないですか?
「そうやね。那智勝浦では、イノシシが海泳ぐんやで!“イノシシは島を渡る”っていう伝説があるんやけど、あれホンマやね。それが実証されたのが、伊勢エビ網漁があるんやけど、その網に大きなイノシシがかかったんよ。伊勢エビ網漁は、伊勢エビを獲るために岩の端に網を張るんよ。それにかかるということは、島を渡るとき、上陸する際にちょっと潜ってから陸に上がるんやろうな」
●初めて聞きました!
「しかも、その網を張ったのが鉄砲撃ちの男で、普段は山に入ってイノシシ獲ろうとしとるんやけど、みんなから『山でイノシシをよう獲らんのに、海で獲りよった』っていわれとったよ(笑)」
●すごい話ですね!(笑)
「だから、昔の人からの言い伝えってホンマのことが多いなって思ったね」
●濱口さんは竹にも精通されていて、お店の内装を竹で作ったんですよね?
「僕独特の作りやけど、孟宗竹(もうそうちく)という日本の中で一番太い竹と和歌山特産の黒竹とを組み合わせて、自分なりのセンスで作っていきましたね」
●そもそも、竹にハマったキッカケって何だったんですか?
「竹で色々なものを作ってきて、全部が好きやけど、節が好きかなぁ。知れば知るほど神秘的なんよね。竹の子はよく伸びるしな。一日ですごく伸びるよね。みんな知らんと思うけど、直径13〜14センチぐらい孟宗竹を切って、切ったところから汁を吸ってみると、どえらい甘いで! だから、竹に虫がつくんよね。タケトラカミキリという虫がおって、竹しか食わへんのね。その虫がようつくんやけど、あれは竹が甘いから来るんやろな。竹は見るだけでも気持ちええよね」
●確かに、竹林の中に入って、天まで届くような竹を見ていると気持ちいいですよね!
「三重県に“土井竹林”っていうのがあって、僕も一度行ったことがあるんやけど、そこに入ったとき『ギター弾きたいな』って思ったね」
●そこではどんな曲を弾きたいですか?
「僕の曲の中に“バンブーフラワー”っていう曲があるんやけど、それやね」
※ここで“バンブーフラワー”を少し弾いてもらいました。
「こんな感じやね」
●竹林の中でこの曲を聴くと、気持ちいいですよね!
「弾いてみたいな。竹は日本人にすごく貢献してくれてるよね。漁師は竹を絶対に使うし、農業でも使うし、僕らは竹に感謝せなあかんと思うで」
●今は竹を使う機会があまりないと思いますが、昔は結構使われていましたよね。
「白熱電球を開発したエジソンもフィラメントに竹を使ったといわれとるし、レコード針も竹やったし、ホンマに素晴らしいよね。それに、竹は伐っても次の年になれば生えてくるしな」
●今、“持続可能”といわれていますけど、そういう面でも竹はピッタリで、エコですね!
「もっと利用できると思うで」
●濱口さんは、竹のスピーカーを使っているんですよね?
「そうですね。孟宗竹を空洞にして、それに小さなフルレンジのスピーカーユニットを入れたものなんやけど、音が普通のスピーカーとはちょっと違う気がするわ。簡単に作れるから、これから竹(の部分)を長くしてみたり、短くしてみたりして、色々実験してみたいな」
●簡単に作れるんですか?
「そうやね。でも、色々試しながら作ってるよ」
●どんな音がするんですか?
「サラウンド的に作ると、あるかどうか分からんのに音が鳴る感じなんよね。メインのスピーカーはありつつ、お客さんを取り囲むように置いてあるんよ。それを去年の9月に初めてやってみたんやけど、『これはいけるな!』って思ったね。そこは野外で300人ぐらいのところで、竹スピーカーを8個使ったやんやけど、弾きやすくてどえらいよかったね! それで追求してみようと思ったね」
●さて、濱口さんは6月18日に『Yuji Hamaguchi From KatsuUra』というアルバムをリリースされましたが、どのようなアルバムですか?
「ブルースがあったり、しっとりとした曲もあったりと、色々なタイプの曲が入ったアルバムやね。僕は色々なタイプの曲が弾けるけど、その一部を入れた感じやね」
●ヴァラエティに富んだアルバムだと思いますが、曲作りはどのようにしていますか?
「これまで影響を受けてきた音楽や自然を自分なりに曲にしていく感じやね。あと、クラシック的なのも、楽譜を探して、それをギターに置き換えて、自分なりにアレンジするという感じやな。人の曲をやるときは、“作曲家をリスペクト”して、あまり変えないようにするね。やっぱり、ええ曲は何回聴いても飽きんよ。僕もライ・クーダーの曲とか何十年と聴いてるけど、いつも新鮮な感じがして飽きんね。イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』やと、あのギターのイントロ聴いただけで感動するよね。あれが巣晴らしいんよ」
●いつまでも色あせないですよね。
「そういうのが“ええ音楽”ということなんやろね。そういう曲は永久に残るわな。そういうものを目指してやっていきたいね。“飽きられん演奏家”になっていきたいな。“分かってるんやけど、気持ちいい”っていうのが理想やね」
●那智勝浦の夕陽に向かってギターを弾いている写真を拝見したんですが、そういったシチュエーションでギターの音色を聴いてみたいです。
「僕は月と夕陽に弱いんよ。うちのほうやと、夕陽が山に入っていくんよね。そこから西に行くと、海に入っていくから、両方楽しめるんよ。その日によって、海に入っていく夕陽を楽しめるし、山に入っていくのも楽しめるんよね。春の、霞んでシルエットのようになって沈んでいく夕陽もええし、秋の、空気が澄んで真っ赤になって沈んでいく夕陽もええんや」
●オススメの季節はいつですか?
「秋以降やのぅ。ホンマに美しいで」
※ここでそれをイメージした曲を弾いていただきました。
「こんな感じの曲がええね。美しいな。とにかく、美しいものが好きやの」
今回、濱口さんにお話を伺って、改めて竹のことを色々と考えてみました。今回のお話に出てきた以外にも、カゴやザル、すだれ、子供たちのおもちゃで竹とんぼに竹馬、さらにこの時期だったら流しそうめんをする時、あのそうめんを流す器としても欠かせないですよね。そうやって考えると、竹は昔から私たちの生活にこんなにも密着していたんですね。そんな竹をイメージして作ったという濱口さんの“バンブー・ブルース”という曲もお勧めですよ。
日本コロムビア/COCB-54111/本体価格:2,800円
濱口さんのメジャー・デビュー・アルバム。オリジナルやカヴァー等、14曲収録。プロデュースは音楽通の人には「夕焼け楽団」の活動で知られる久保田麻琴さん。
濱口さんが奏でるギターの音色は、ほのぼのとしてハート・ウォーミング、また、ブルース・タイプの曲は力強さがあって引き込まれます。
濱口さんの素晴らしいギターの音色は是非ライブで! ライブ情報などは、濱口さんのオフィシャルサイトをご覧ください。