2014年9月13日

世界一小さなリゾート“きせきのしま”

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、むらいさちさんです。

ジープ島

 写真家の「むらいさち」さんは、国内外の海をフィールドに、主に水中写真の素晴らしい作品を発表されている新進気鋭のカメラマンで、他にもリゾートや旅の写真でも注目されています。そんなむらいさんが先頃『きせきのしま』という写真集を出されました。今回はむらいさんに、ミクロネシアに浮かぶ小さな島“ジープ島”のお話や、海中に咲く可愛い花のお話などうかがいます。

直径33メートルの島!?

●今回のゲストは、写真家の「むらいさち」さんです。よろしくお願いします。

「よろしくお願いします」

●むらいさんは国内外の様々な海で撮影をされていますが、今月9月に『きせきのしま』という写真集を出版されました。この“きせきのしま”ってどんな島なんですか?

「これはミクロネシア連邦にあって、赤道のすぐ上にある無人島で、直径が33メートルぐらいしかない小さな島なんです」

●直径が33メートルなんですか!?

「歩いても周囲100メートルぐらいしかない小さな島なんですけど、そこに寝泊りしながら撮影したものを1冊の本としてまとめました」

●日本からだと、どうやって行くんですか? 「グアム経由で、そこから飛行機で1時間半ぐらい乗ると“チューク”というミクロネシア連邦にある島に着きます。そこから船で30分ぐらい乗った先の沖合いに(ジープ島は)あります」

●その島に出会ったキッカケは何だったんですか?

「ダイビング雑誌の取材で行ったのがキッカケでした。そのときに好きになって、それから通うようになりました」

イルカ

●どんなところに惹かれたんですか?

「一番は“手付かずの自然が残っていた”ことですね。僕は取材で世界各国の海に行くことが多いんですが、そうすると、最近では昔サンゴがあった場所に5年後、改めて訪れると全くなかったり、水面の上昇でビーチがなくなってヤシの木が倒れてしまったというようなマイナス面を見ることが多くなったんですね。その中でジープ島に行ったら、島の周り360度全てがキレイなサンゴ礁だったんです。そんなキレイなサンゴ礁を見たのが久しぶりで、まずそこに感動しました。 それに、その島って海面上昇とかがあったら、すぐに沈んでしまうような島なんですが、そういったことがそこには起きていなかったんです。現地の人から『15年前から変わらないよ』っていう話も聞いていたので、『こんな場所が地球上にまだあったんだ!』っていうことにも惹かれました」

●まさに“きせきのしま”ですね!

「その島自体は奇跡でもなんでもなく、そこに存在しているんですが、僕たちからすると、その島が奇跡に見えたんですね」

●そういうところに長期滞在するとなると、泊まる施設とかあるんですか?

「一応泊まる施設はあります。僕は“世界一小さいリゾート”と言っているんですが、男女別れて雑魚寝するぐらいの小屋みたいなものがあるのと、そこのオーナーは日本人で、ダイビングのスタッフが1人いて、彼がケアしてくれるので行くと意外と快適に過ごせます」

●事前に行くことを連絡しておけば、それにスタッフの方が合わせて来てくれるんですね?

「そうですね。島を担当している旅行会社さんがあって、そこに頼むと手配をしてくれます」

●とはいえ、高級リゾートに泊まるような便利さはないんですよね?

「もちろんありませんよ!(笑) 雨水を溜めた水で体を洗ったり、その水を使ってお茶を作って飲んだりするぐらいなので、本当のリゾートを求めてくると、ビックリすると思います。でも、それ以上のものを見ることができて、出会えると思います」

小さな島が教えてくれたこと

●むらいさんが“きせきのしま”に滞在しているときは、どんな風に過ごしているんですか?

「1日のスケジュールを言うと、雨さえ降らなければビーチでも寝ちゃうんですね。小屋にいると風が通らなくて暑いので、ビーチで寝ちゃいます。そうすると、朝の5時半に日が昇り始めるので、その朝日で目が覚めます。僕はその朝日の写真を撮ったりしたあとに、朝ごはんを食べたら、ダイビングをするために本島から船が来てくれるんですね。それに乗ってダイビングをしに行ってから戻ってきて、昼ごはんを食べたり、他の無人島に行ってごはんを食べたりします。その後もう1回ダイビングして、そのあとはダラダラとしますね(笑)。
 島に行ったら時計は外しますし、時計なんて見なくても朝や夜が分かるんですよね。暗くなってしまったらやることがなくなるので、みんなでお酒を飲んだりして、満天の星空を見ながら寝るっていう感じですね。あとは目の前の海を見たり、運がいいと、イルカが島に遊びにきたりしてくれることがあるので、イルカと遊んだりして、本当にのんびり過ごします」

むらいさちさん

●それ、最高ですね! 自然の赴くままに過ごす感じなんですね。

「雨が降ったら雨宿りして、晴れたらまた外に出ていったりしますし、慣れてくると、吹いてくる風で雨が降るかどうか分かってくるんですね。最初の3日間ぐらいは体から現代社会が捨てきれないんですけど、それが過ぎて体が慣れてくると、『人間って、元々こういう風に過ごしていたんだな』といった感じで、人間が本来持っている本能が目覚める感じがするんですよ。そこは、人が忘れていたものを取り返しにいく場所なのかもしれないですね」

●その研ぎ澄まされた感覚で写真を撮っているかと思いますが、むらいさんが思わずシャッターを押した印象的な瞬間ってありましたか?

「この島は虹がすごく多いんですね。朝や夕方にスコールが降ったりするんですが、そのあとに大きな虹が出てくるんですよ。写真集の表紙になっている写真は1回目に行ったときで、なかなかこういうシーンに出会うことがないんですが、そのときも夕方に雨が降ったんですけど、夕方っていうこともあって、船も本島に帰っちゃってたんですよ。虹が出たときに興奮して、島から写真を撮ったんですけど、遠くでそれを見ていた船が戻ってきてくれたんですね。『おーい、船に乗れ!』って言われて船に乗せられて島の沖に連れていかれたら、島に虹がかかっていたんですよ! それを見て興奮しながら、がむしゃらに写真を撮りました。

 それ以降、あれだけキレイでハッキリとした虹には出会っていないんですが、あのときの興奮しながら写真を撮ったときの気持ちは今でも忘れないですね。むしろ、もう普通の虹じゃ写真は撮らないですね(笑)。それから最初のころは『前回のを越える写真を撮ろう』と毎回思っていたんですが、徐々に『そうじゃないんじゃないか』と思うようになったんですね。どんなに僕が気合いを入れていっても、結局は自然が相手なので、太刀打ちできないんですよ。なので、そこからは自然に身を任せて、素晴らしい景色を見せてもらったら感謝する気持ちが自然と湧いてくるようになりましたね。最初は小さな島で『小さいな!』としか思わなかったんですが、段々とその島が大きく見えてくるんですよ。そうすると、その島を通して日本のことを考えたり、自分の家族のこと、地球環境のこと、今後の自分のことを考えたりするんですけど、それをそこの自然が教えてくれる感じがしましたね」

地球の元気のバロメーター!?

※写真集『きせきのしま』には、小さな赤いお花のような写真があります。これはどんな一枚なのでしょうか。

ソフトコーラル

「これはサンゴの仲間なんですね。皆さんがよく見るサンゴは“ハードコーラル”という固くてキレイなサンゴなんですが、このサンゴは“ソフトコーラル”といって、触るとすごく柔らかいサンゴなんです。このお花みたいなのは“ポリプ”でプランクトンを一生懸命食べています。写真集に載っているものは紅葉みたいなキレイな赤色なんですが、他には紫や青、黄色など色々な種類があるんですよ。海の中は色が少ないイメージがあると思いますが、こういった森みたいな場所があって、そこに行くとすごくキレイで『海の中にも森があるんだな』って思いました」

●私はダイビングが趣味で、何度か海に潜ったことがあるんですが、海の中にはお花のようなものだったり、すごく色鮮やかな世界があるんだって写真集を見て思いました。

「実は知られていないんですが、そういうのが多いんですよね」

●他にも、こういった写真を撮影されているんですよね?

「そうですね。陸上にある花がすごく好きっていうこともあって、それを水中に持っていっているんで、魚とかももちろん撮りますが、僕はどちらかというと、水中のお花を探して撮影する方が好きだったりするので、普通の水中カメラマンとは少し目線が違うかもしれないですね」

●水中のお花の魅力はどんなところですか?

「僕は『水中にも、こんな色鮮やかなものが生きているんだ』というのを多くの人に見てもらいたいという思いで撮ることが多いですね」

●その写真をいくつか見させていただきましたが、すごく“寄り”で撮影されてますよね?

「寄ると、よりお花みたいに見えるのと、水中のそういったものって小さいんですね。1センチないものとか多いので、マクロレンズで寄って撮るしかないんですよ」

●それだけ寄ってみると、「自然が作り出すものって、なんて繊細で精巧にできているんだろう」って感じるんですが、実際に生で見てもそう思いますか?

「そうですね。大体『わーっ!』って言いながら撮ってます(笑)。僕はサンゴとかすごく好きで、そういうのを見ると、『人間って(自然に)かなわないな』って思いますね。素晴らしい景色を見たとき、写真でも表現しきれない領域にいくときがあるんですね。そういうときはカメラを置いて見てしまうぐらいの景色と出会うときがあるんです。自然の中には絶対に人間じゃ作り出せないものがあると思います」

●カメラマンがカメラを置いて見ていたくなる美しさって、相当なものですよね!

「そういうものって、言葉や写真などでは表現しきれないんですよ。それはこの人間の“目”の性能の良さがあるから見られるんだと思いますね」

●むらいさんが海の中で撮影していて、一番嬉しいはどんな瞬間ですか?

「やっぱり“自分のイメージを超える風景に出会ったとき”ですね。僕が一番好きな被写体はサンゴ礁なんですけど、元気なサンゴ礁に出会うと『地球はまだまだ元気なんだな』っていうのを思いますね。僕はマイナスイメージを伝えるジャーナリストではないので、“そういったいいところを見てもらって、人が元気になれば、いいパワーに繋がる”と思って、いつも写真を撮っているので、そういう風景に出会うとすごく嬉しくなりますね」

●サンゴって、元気が伝わってくる生きものですか?

「僕の中では、サンゴは“地球の元気のバロメーター”だと思うんですね。陸だと分かりやすいと思いますが、水中は見る人が少ない分、サンゴが減ってきているのは現実なことなので、そういった中で元気なサンゴを見ると、『この海は元気なんだ!』っていうのがストレートに伝わってくるんですね。特にこの写真集を見てもらえれば、『地球ってこんなにも元気なんだ』って思いますし、『地球のどこかには、こういった場所がまだ存在するんだ!』って知るだけでも、『頑張ろう!』って思えると思うんですね。自分がそう思うので、見てくれた人が同じようにそう思ってくれると嬉しいなと思って、この写真集を作っているので、そう思ってくれると嬉しいです」

むらいさちさん

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 世界中の海に潜られているむらいさんですが、最近では千葉の海にもよく行かれるそうです。ちなみに、千葉の海の生き物は近くまで寄ってきてくれて、人懐っこいのが印象的だとか。そんなむらいさんの最新の写真集『きせきのしま』ですが、とにかく表紙の写真から素敵なんです! 青い海に浮かぶ小さな島とそれを包むダブル・レインボー。まるで絵本のようなその写真は必見です!

INFORMATION

「きせきのしま」

写真集『きせきのしま

小学館/本体価格1,000円

 むらいさんの最新の写真集は、ミクロネシアに浮かぶ世界最小のリゾート“ジープ島”で撮影されたフォトブックです。青い海に浮かぶ小さな島、それを包むようにダブル・レインボーが出現。そんな奇跡のような表紙写真も素敵ですよ。

写真展『きせきのしま〜ちいさな島の夢のはなし』

 その写真集の発売を記念して、新宿のコニカミノルタプラザで写真展が開催されています。14日には、むらいさんによるギャラリートークが午後1時からと午後4時からの2回開催されますので、むらいさんのお話を直接聞いてみたい方は是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

写真展の開催は9月19日まで。
入場は無料。

オフィシャルサイト

 詳しくは、むらいさんのオフィシャルサイトをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. BABY, I LOVE YOUR WAY / BIG MOUNTAIN

M2. Island / RIP SLYME

M3. OVER THE RAINBOW / IZ

M4. Callin' / Caravan

M5. ここにしか咲かない花 / コブクロ

M6. WHAT MAKES YOU BEAUTIFUL / ONE DIRECTION

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」