2015年2月14日

自然を五感で感じる“ネイチャーゲーム”

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、佐々木香織さんです。

佐々木香織さん

 日本シェアリングネイチャー協会は“人が自然を尊重し、共生していく社会をつくる”ことを目的とし、ネイチャーゲームなどの自然体験プログラムを通して、自然と人、そして人と人を繋ぐ活動をされています。ネイチャーゲームはアメリカで生まれたプログラムなんですが、その種類は毎年少しずつ増えていて、日本生まれのネイチャーゲームもあるそうです。
 今回は日本シェアリングネイチャー協会の広報担当、佐々木香織さんにどんなネイチャーゲームがあるのかなどうかがいます。

サウンドマップ!?

※自然の中で遊ぶネイチャーゲームにはどんなプログラムがあるのか聞いてみました。

「“サウンドマップ”というネイチャーゲームがあるんです。実は今日、自分の家の隣にある小さな公園でやってきました。紙を1枚持って、自分の気持ちを静かにして、周りから聴こえてくる自然の音を“音の記号”でカードに描いていくというゲームです。ほんの1分でもいいので、自分が受信機になったつもりで少しでも自分の気持ちを静かにして、自然からのメッセージを受け取るというものなんです。
 何もないと思うような都会の中の住宅街でも、葉っぱが風で揺れる音や、鳥の鳴き声が何種類も聴こえたり、鳥同士が会話しているのが分かったり、ハトが飛び立ったときの羽の音や風を切る音などが聴こえてきて、色々な環境の中に自然がたくさんあるんだということに気づくことができるんですね。これは家のベランダでもできるので、誰でもいつでもできるので、オススメです」

●耳から自然を感じるんですね。実際に音を記号化して描いたカードを持ってきてもらっていますが、天気図のようで不思議な文字ですね! 真ん中のドングリのようなマークが佐々木さんがいる位置で、そこから渦巻きのように回っていて、右の方には三角の矢印が、左には渦巻きや波模様が、下には葉っぱの絵が描いてありますが、自由に描いているんですね。

「“音のイメージを自由に描いてみよう”というのがコンセプトなので、記号が決まっているわけではないんですね。自分が受信機のように、自然からのメッセージをキャッチできるネイチャーゲームなので、至福のひと時を過ごせます」

●もちろん、私は同じ場所にはいないんですが、これを見て「こんな音が聴こえてきたのかな?」と、なんとなくわかるような気がします。

「普段生活していると、自然が身近にあることを感じにくいんですが、この“サウンドマップ”をやっていると“この地球上には、私たち人間だけじゃないんだ”と、ふと気づかせてくれるので、すごく好きですね」

●これは1人でやるんですか?

「1人でもできますし、仲間同士でやって“こんな風に聴こえた”と見せあうのも、とても楽しいと思います」

1人1人、違っていていいんだよね

※毎年増え続けているネイチャーゲームの現在の数は約160種類! その中から、五感を使って楽しむ、ある面白いビンゴゲームについてうかがいました。

「ビンゴゲームって、普通は数字が書いてあって、数字が書かれた玉が出てきて、出た数字のところに穴を開けていくというゲームだと思いますが、それの自然版だと思っていただければいいと思います。ネイチャーゲームの特徴として“五感を使う”というのがあるんですが、私たち1人1人が持っている五感を使って、自然の中にたくさんある宝物を探そうというものです。マス目を見ていただくと“見る”以外の感覚を使って探すものがたくさん書かれていると思います」

●確かにそうですね。“チクチクするもの”とか“いい匂い”とかありますね。こういったものを探すんですね。

「そうです。1人1人が持っている嗅覚や触角、視覚などの五感を使って自然を体験するというものです。このゲームの面白いところは、これを3人のグループでやったりすると、“いい匂い”でよく揉めるんですよね(笑)。“いい匂い”って一言で言っても、人によってバラバラなんですよ。例えば、誰かがお花の匂いを他の人に紹介したとしても、それをいい匂いと感じてないことがよくあるんですね。 でも、1人1人感じ方が違うので、“1人1人違っていていいんだよね”ということを確認しながら進めていくので、それで揉めているグループには“全員が「いい匂い」だと思うものを見つけてきてよ”と言ってます。そうすると、みんな鼻をすごく使って匂いを嗅ぎまくって、いい匂いを探そうとするんですよね。そして、3人の折り合いがついたいい匂いを探してきてくれます。そんな風に、1人1人の五感が違うということを自然の中で感じることも、このゲームの面白いところだと思います」

佐々木香織さん

●自然を感じる感じ方もみんな全然違うんですね。他にどんなゲームがありますか?

「“落ち葉の窓”というものがあるんですが、落ちている葉っぱを拾って、台紙に貼り付けます。そうすると、葉脈や虫食いの穴、色などが葉っぱ毎に違うので、その葉っぱの特徴も分かりますし、これを太陽にかざして光を受けてみると、ステンドグラスのように葉っぱがキレイに見えるんです。散歩してるときにでも葉っぱを拾って、それを切って貼れば、作れるので、すごく簡単なので、オススメです」

●こうやって改めて見ると、葉っぱって色々な形があるんですね!

「葉脈1つにしても、種類によって違うんだということが分かりますよね」

●そして、美しいですよね。

「そうですね。さっき“1人1人感じ方が違う”と言いましたが、それと同じように、葉っぱも同じ種類でも1枚1枚違うんですよね。そんな自然の多様性や人間の多様性を、こういう簡単な活動の中から自分自身で気づくことができるので、すごく楽しいと思います」

都会で蘇った、あのときの森の匂い!?

※佐々木さんがネイチャーゲームに出会ったキッカケは何だったのでしょうか?

「両親が山岳系だったので、子供のころによく登山に連れていってもらっていたんです。そのときは自然の良さなんて全く分かってなくて、登山を始めた途端“あと何分?”って聞くような子供だったんですね。でも、そのときの経験が今に繋がっているような気もしますが、子供のころは自然に対する興味は持っていなかったです。それが大人になって、都会での暮らしが中心になってくると、自然から離れるじゃないですか。
 あるとき、雨上がりの街中を歩いていたとき、森の匂いが漂ってきたんですね。そのときに、その匂いから“子供の頃に登った山の、下りのあのシーン”みたいな感じで蘇ってきたんですよ。そこから、自然に対して興味を持つようになったんですね。そして、今でいう“山ガール”ですけど、友達と一緒に身近な山を登ったりしているうちに、ネイチャーゲームがあるということを知って、リーダー養成講座を受けたということが出会いです」

●その匂いで、昔の記憶が蘇ってきたんですね!

「多分そうだと思います。自分でも説明できない不思議なことでした」

●それで、山が恋しいっていう気持ちになったんですか?

「自然に目がいくようになった感じですね。でも、当時は自然というと、車や電車で少し遠くに行くとか、海外に行かないといけないといった感じで、自分の暮らしと自然は別のところにあると思っていたんですね。なので、週末になると友達と一緒に登山をやっていたりしていたんですが、その中でネイチャーゲームに出会って、リーダーになったという感じですね」

●ネイチャーゲームを知ることによって、自然に対する考え方って変わりましたか?

「そうですね。先ほども話した“遠く離れたところにある自然”というのが、よく言われる“自然”だと思っていたんですが、ネイチャーゲームのリーダー養成講座を受けた後、家まで帰るときに、自然が目にすごく入ってきたんですね。今まで気づいていなかったことが改めて分かって、自然の見方を教えてもらったような気がします」

●わざわざ遠くまで行かなくても、身近にこんなにも自然があったということに気づいたんですね。

「そうなんです。身近な自然を感じることと、遠くにある深い自然を感じることの両方がよく見えてきました。例えば、水って、水道の蛇口をひねって“自然、ありがとう”って思わないじゃないですか。それが森や山の中に行くと、“水ってこういう風に流れて、私たちのところまで来ているんだな”って思って、遠くの森と自分の暮らしは繋がっているということが分かってきたんですね。当たり前のことなんですが、自然の恩恵を毎日受けているんだということを感じました」

離れているけれど、繋がっている

●佐々木さんはアメリカ西海岸にあるロングトレイル“ジョン・ミューア・トレイル(340キロ)”にも行かれたことがあるそうですね。

「340キロ全てではありませんが、セクション・ハイクという形で1週間〜10日ぐらいで、2回ほど行ったことがあります」

●いかがでしたか?

「一言でいうと素晴らしかったですね。ジョン・ミューア・トレイルには人がほとんどいないですし、人が歩いていいスペースは横幅30〜40センチぐらいで、すごく細いトレイルが続いているんですね。ほかは原生自然が残っています。そこに身を置くと、自分はそこの調和の中から外れているビジターなんだということがよく分かります。自分以外のそこで生活を繰り広げているものたちというのは、花1つだけじゃなく、花の下には土があり、土の下には水があるという流れがあって、1つ1つが関係して調和し合っているということで美しさを生み出すということを、そこを歩きながら感じました」

●その体験を通して、考え方がまた変わったんじゃないですか?

「日本の山や街にいて、それぞれの土地が大事だと思うのと同じように、日本以外の場所にも、ずっとそのままでいてほしい場所というものができることによって、地球全体も大事だと思うと思うんですね。
 例えば、ジョン・ミューア・トレイルは今の時期、冬なので雪で覆われていて誰も入れないんですが、“今あそこはどんな感じなのかな?”って思いをめぐらせてみたり、離れているけれど、気持ちの上では近くで繋がっているような感じがして、そんな大事なものが増えていくような感覚を得たので、そういうところで変わってきたところはあると思います」

佐々木香織さん

●大事なもの、大事な場所が増えるってステキなことですよね。それによって、ネイチャーゲームに対する考え方や、やり方って変わりましたか?

「ジョン・ミューア・トレイルはジョン・ミューアという方の名前を付けたトレイルなんですね。ネイチャーゲームを作ったジョセフ・コーネルというナチュラリストはジョン・ミューアを尊敬していて、大きな影響を受けていたんです。ネイチャーゲームを始めたころはよく知らなかったんですが、ネイチャーゲームをやっていくうちに、そして働くようになって、ネイチャーゲームの深い部分を知ることができました。
 コーネルさんに会うと、よくジョン・ミューアの話をしたりします。そういう風に各国にいる色々なナチュラリストの方々はジョン・ミューアからすごく色々な影響を受けているのがよく分かりますし、ジョン・ミューアの文章を読んだり、ジョン・ミューアを記念したトレイルを歩いたりすることによって、真髄という部分では大きく関係しているかと思います」

●その“真髄”ということを言葉に表しづらいと思いますが、あえて言葉にすると、どういう感じですか?

「“自分が自然の一部で、全ての自然が繋がっている”ということじゃないでしょうか」

※この他の佐々木香織さんのトークもご覧下さい。

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 私も実際にネイチャーゲームの1つ“サウンドマップ”に挑戦してみたんですが、とっても簡単でした。近くの公園に紙とペンだけ持っていって静かに目を閉じると、本当に色々な音が聴こえてきました。風の音、生き物の音、それをマップに描き起こすことで、改めて自分が自然に囲まれて生きていると実感できました。みなさんもぜひ挑戦してみてください。

INFORMATION

日本シェアリングネイチャー協会情報

 今回番組でご紹介できたネイチャーゲームはほんの少し。まだまだたくさんあります。日本シェアリングネイチャー協会のオフィシャル・サイトには一覧が載っていて、大きく4つのカテゴリーに分かれています。どんなゲームがあるのか、ぜひご覧ください。
 また、全国で開催されるネイチャーゲーム関連のイベント情報も掲載されています。
 ちなみに3月1日(日)の午前10時から、千葉県松戸市の21世紀の森と広場で、どなたでも無料で参加できるネイチャーゲーム・セミナーがあります。 そして、毎年10月の第3日曜日は(今年は10月18日)“全国一斉シェアリングネイチャーの日”となっていて、今年は“木を抱きしめよう(仮)”をテーマに実施されます。
 さらに、リーダー養成講座も定期的に開かれています。

◎詳しい情報:日本シェアリングネイチャー協会のオフィシャル・サイト

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. TOUT,TOUT POUR MA CHERIE / MICHEL POLNAREFF

M2. OVERJOYED / STEVIE WONDER

M3. ひとつだけ / 矢野顕子

M4. GOT YOUR BACK / CRADLE ORCHESTRA & GIOVANCA

M5. SONG OF LONG AGO / CAROLE KING

M6. HERE,THERE AND EVERYWHERE / THE BEATLES

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」