2016年1月9日

海洋冒険家 白石康次郎
世界一過酷なヨットレース“ヴァンデ・グローブ”への熱き想い!

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、白石康次郎さんです。

 海洋冒険家の白石康次郎さんは1993年にヨットによる単独無寄港世界一周を達成、当時の最年少記録を樹立。その後も数々の海洋冒険やレースに参戦。2007年には、世界で最も過酷なヨットレースといわれている“5オーシャンズ”に出場し、総合2位という快挙を成し遂げました

 そんな白石さんが先頃、世界一過酷なヨットレース“ヴァンデ・グローブ”に挑戦すると発表! このレースは、たった一人で、どこにも寄らずに南半球一周約4万8千キロを走破する、とんでもないレースなんです。
 今回はそんな白石さんにヴァンデ・グローブにかける意気込みなどうかがいます。

海を制するもの世界を制す!?

※白石さんが今回挑戦するヴァンデ・グローブとは、どんなレースなのでしょうか?

「今年11月6日にフランスから一人でヨットに乗って、どこにも寄らないで地球を一周するというレースですが、それに日本人で初めて出場しようと頑張ってます!」

●それはすごいレースですね!

「僕は20年以上前に1度、無寄港で世界一周をしているんですが、そのときは176日かかりました。今回は80日ぐらいで帰ってきます。なので、ものすごく早いです。そういったスピードの要素が加わってくるので、ものすごく難しいです。
 このレースにアジア人はこれまで出たことがないんですよ。ヨーロッパのセーラーって、歴史上で大航海時代を通ってきているので、フランスではヨットは国技です。日本でヨットというと、皆さんは石原裕次郎さんか加山雄三さんだけしか連想しないんじゃないですか?(笑) そういったレジャーなイメージがあると思いますが、フランスでのヨットはこっちでいうと剣道や柔道に近いと思います。昔は海を制したら世界を制したんですよ。それが名残としてあるので、遊びのレースじゃないですね」

●そのレースになぜ出ようと思ったんですか?

「出たいんです! 理由とかどうでもいいんです。僕は出たいんです!」

●(笑)。前から出たいという気持ちがあったんですか?

「それは20年前からですね。いつか出てみたいとずっと思っていた憧れのレースでした。前回“5オーシャンズ”というレースで日本人初の総合2位になったので、今回このヴァンデ・グローブに出て、スタート地点で日の丸を上げようと思っています。そして、優勝したいと思っています!」

●その姿を想像したら鳥肌が立ちました! そのヴァンデ・グローブですが、具体的にはどんなレースなのか教えていただけますか?

「地球一周するのに色々なコースがあると思われていますが、実はないんですよ。例えば大西洋から出発したとして太平洋を抜けるためには、ヨットレースなので風だけなので、スエズ運河とパナマ運河は使えないんです。北に行こうとすると北極に氷があって通れないので、南に行くしかないですよね。
 フランスから出発するとカナリア諸島を通ります。赤道を越えてアフリカ大陸を回ります。インドの下を行って、オーストラリアの下を行って、ニュージーランドの下を通って、南米の先端のホーン岬と南極の間を通って北上します。下がって南極を一周して帰ってくるイメージですね。大航海時代はみんなこのコースを使ってたんですよね」

●そんな歴史を振り返ることができるレースなんですね!

「これは東回りになっているんで、西風が来るんですが、その風向きが逆だったら、世界の歴史は変わっていたんですよ。なので、世界の歴史は風向きで決まったようなものですね。あと、僕らは『あいつはセーラーだ。あいつはセーラーじゃない』っていう言い方をしたりするんですが、言い換えれば『あいつは侍だ。あいつは侍じゃない』っていうことになるんですよ。そのぐらい、セーラーは一目を置かれる存在なんですよね」

●そのレースに白石さんが出るということは本当にすごいことですよね。

「レースに出るには、中古艇で1億円以上するので、トータルで3億円以上の資金が必要なんですよ。それを集めるのが第一の冒険ですね」

●今はどんな感じなんですか?

「今は50:50ですね。いつ死ぬか分からない危険なレースですし、日本でヨットがメジャーかというとそうでもないので、日本で集めるのは難しいです」

●でも、そこには夢がありますよね!

「ヨーロッパの人に『なんでこんな危険なレースにスポンサーがたくさん付くんですか?』って聞いたら『危険なレースにスポンサードするから、周りから尊敬されるんだ』っていうんですよね」

結果にこだわると、チャレンジしなくなる!?

●このレースはどのぐらい危険なんですか?

「想像してみてください。『たった一人で100日かけて動力なしで地球一周してください』といわれたら、どうします? まず何をします? 誰も助けてくれる人がいないんですよ? 水、食料はないんですよ? 船での旅なので、嵐もあれば凪もあれば竜巻もあるしクジラの激突もありますよ。氷山もあるし、転覆もありえる。半分以上夜です。どうですか?」

●想像しただけで、私は恐怖心しか出てきません・・・。

「昼夜関係なく走っているので、1時間以上眠れないんですよ。僕もクジラに2回激突したことがあるし、ひっくり返ったことも何十回もあります。ときには想像もしていないこともあるんですよ。もちろん、海に落ちたら誰も助けてくれないので死んでしまいます。そういうネガティヴのことを言い出すとキリがないんですよ」

●それを超えるポジティヴなことがあるんですよね?

「そうなんですよ! 1人で世界一周したら楽しいだろうなっていう好奇心ですね。むしろ、そっちが大前提なんです。それをするためには、さっきいったみたいなことを全て乗り越えないといけないんですよ。そのための準備や訓練をずっとしてきているんですよね。大事なことは“いかに純粋であるか”なんですよ。“これがいい、あれがいい”といったベストな条件を積み重ねてもベストな結果にはならないんですよね」

●常に「結果を残さないと!」「ベストを尽くさないと!」って思ってました。

「『結果を残さないと!』って思うと、結果が出ないものにチャレンジをしなくなるんです。『この子と付き合うのは無理かな・・・。俺なんてどうせダメだろうな』って思っている男って嫌じゃないですか? むしろ『金なんてないけど、あなたのことが大好きなんだ。命に代えてでも守ってみせる!』という男の方がいいじゃないですか!」

●その方が心に響きます! そういう想いでヴァンデ・グローブに挑むんですね!

「そうですね! 僕は未だに船酔いが治らないんですよね(笑)。残念ながら、僕はあまり船が合わないんですよね(笑)」

大事なのは“いつも機嫌がいいこと”

※ヴァンデ・グローブのコースの中で、一番厳しいところはどこなんでしょうか?

「一番厳しいのは南極の周りです。波が10メートルを超えてくるほど高いですし、氷山もありますし、クジラとの激突が多いです。なので、事故が一番多いのは南極の周りですね。あと、ホーン岬も厳しくて“帆船乗りの墓場”といわれています。チリとアルゼンチンの先端で、南極との間なんですが、南緯が56度まで下がります。そこは潮も荒れているし海峡も狭いので、そこで多くの人が亡くなっています」

●そういうところをヨットで通るのって、すごく厳しいですよね。

「そうですよ。大丈夫です、楽なことをしに行っているわけじゃないので(笑)。そこを越えた船乗りは“ケープホーナー”と呼ばれて、金のイヤリングをして酒場でテーブルの上に足を乗せて自慢話をしていいんです。そこは海面的に厳しいんですが、僕らが一番恐れているのは“落水”なんですよ。海面が荒れているかどうか関係なく、海に落ちたら誰も助けてくれないから終わりなんです。それにいつ落ちるかなんて分からないんですよ。条件がいいときでも落ちる可能性がありますからね。それが一番気をつけないといけないことですね」

●そうしないように、どういう注意をしているんですか?

「僕がヨットに乗っているときに心がけているのは“いつも機嫌がいいこと”です。難しい言葉でいうと“平常心”ですね。それを心がけます。何か起きたときに、そこを対処するのではなく、まずは自分の機嫌を直すんです。
 1人での旅なので、1つのことしかできないですよね。飯食いながらだと眠れないじゃないですか。眠っている間は舵を取ることはできないですよね。だから、どっちかを選択しないといけないんですよ。そうなると、いい決断をしたいですよね。

 じゃあ、いい決断をするためにはどうすればいいのかと考えたら、機嫌がよくないといけないですよね。良かれと思って下した判断ってあると思いますが、機嫌が悪いときに良かれと思ったことは詐欺に引っかかりますよね。お金に困ってるときに『いい投資の話があるんだけど・・・』って言われたら食いつきますよね? 引っかかる人って悪いことをしようとして引っかかってるわけじゃないですよね。良かれと思っていても引っかかっちゃうんですよ。ネガティヴになっていると判断が消極的になっちゃうじゃないですか。
 だから、機嫌がいい状態で下した判断というのは、まず間違いないんですよ。なので、自分をまずそういう状態にしてから事にあたることですね。事にあたることを最初にしてしまうと、慌てたり事故ったり間違えた判断をするんですよ。これが大きなポイントですね」

●それってこの陸での生活でもすごく役に立つことですね!

「それは普段の生活でもそうだし、経営判断など全部そうだと思うんですよね。なので、デートはランチからにしてください(笑)」

●平常心で挑めるということですね(笑)。

「そういうことです。プロポーズも午前中にしないとダメですね。午前中からだと嘘をつきにくいんですよ。お天道様の下では嘘はつけないですよ。高級レストランでお酒を飲みながらだったら、みんなキレイでロマンチックに見えるじゃないですか。そうやって間違えた判断をするんですよ。のぼせた判断を下すわけですよ。だから、デートはランチからにしてください。僕も女房には1月1日の午前中にプロポーズしましたからね。そこで出た判断は間違いじゃないですよ(笑)」

●私もこれからそうします(笑)。

一緒に世界一周を楽しみましょう!

●私の人生の航海もそうですが、白石さんのヴァンデ・グローブですよ! このレースは4年に1度なんですよね。是非出場していただきたいと思います!

「日本人セーラーとして、このぐらいのレースに出られないとダメだよね。次は東京オリンピックが開催される2020年なので、日本で作った船で日本人セーラーが世界一周をするのが夢なんです。それを続けていくうちに次の世代が出てきて、それを繋いでいくというのが僕の理想ですね」

●今回、白石さんが出ることが最大の目的じゃなく、その後に続くようにと考えているんですね。

「そうですね。僕がいつも海洋塾とかをやっているけど、先生自らが世界一周にチャレンジしていくのが一番いいんですよ。やっぱり背中を見せることが何よりなんですよ」

●白石さんが世界一周に出ている姿を見て、他の日本人セーラーにどんなことを感じてほしいですか?

「このレースってやるのは僕一人だけど、大勢の力がないとできないことなんです。今はヨットでも電話が繋がるだけじゃなく、twitterやFacebookなどのSNSができて、これまで以上に自分から発信することができるんです。それを見て、一緒に世界一周を楽しんでほしいですね」

●世界一周って、やりたくてもなかなかできないじゃないですか。それを白石さんの体験を通して一緒に体験できるって、素晴らしいことですよね!

「SNSは大きな力なので、ワクワクしながら一緒に世界一周していただけたら嬉しいですね」

●楽しみです! 白石さんが海から学んだことって、どんなことですか?

「海には“あるがままの世界”があるんですよ。人間には欲があるので、色々いじっているところがあるんです。そういう欲をもってやっていると、コテンパンにされて、それで気が付いたこともあるんですよね。つまり、都会にないものは“たった一人”だということです。
 海の上だと自問自答している時間が長いんですよ。自問自答ってものすごく大事で、そうしていると自分を見つめ直して、自分が何者であるかを分かるようになるんです。そういうものを考えるのに、ヨットは適したものなんですよね。だって、人類最小単位でこの地球に挑むレースなんて他にないですよ。それは醍醐味なんですよね。それが海から一番学んだことですね」

●今回の白石さんの挑戦を見て、私たちも自問自答するキッカケになるかもしれないですね。

「自分だったらどうしようとか考えながら楽しんでください。僕の体験を通じて、大きなものに触れたような感覚になってくれたら嬉しいですね」

※この他の白石康次郎さんのトークもご覧下さい

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 “人類最小単位で地球に挑むレース”と白石さんはおっしゃっていましたが、たった一人でどこにも寄らずに地球を一周するなんて本当に大変なレースですよね。でも、だからこそ、この“ヴァンデ・グローブ”に挑戦している白石さんを見てみたい。大海原を航海している白石さんの姿を想像すると胸が熱くなりませんか? みなさんもぜひ白石さんと一緒に夢を見ましょう。

INFORMATION

 今回お話いただいたヴァンデ・グローブですが、実はまだ参戦が決まったわけではないんです! レースへの参戦には費用がかかります。そこで、“白石康次郎後援会”では、支援してくださるサポーターを募集しています!
 個人会員で年額24000円から。会員になると、白石さん本人とお話できるほか、グッズの贈呈など様々な特典があります。白石さんと一緒に夢を見ましょう!

 ご支援のほど、ぜひよろしくお願いします!

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. DON'T STOP BELIEVIN' / GLEE CAST

M2. SEVEN SEAS OF RHYE / QUEEN

M3. I BET MY LIFE / IMAGINE DRAGONS

M4. FIGHT TOGETHER / 安室奈美恵

M5. RUDE / MAGIC!

M6. 終わりなき旅 / Mr.Children

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」