2016年6月18日

舞台は大多喜町!「夏美のホタル」

 今週のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンのゲストは、森沢明夫さんです。

 先日公開された話題の映画「夏美のホタル」。この映画は同名の本が原作となっているんですが、その作品の舞台が千葉県の大多喜町なんです。そこで、千葉で生まれ育った原作者、作家の森沢明夫さんに、「夏美のホタル」の裏話や、大多喜町の自然遊びや生き物のお話などうかがいます。

 また、今回はその原作本を森沢さんのサイン入りでプレゼント!詳しくはコチラ!

“小説映え”する場所

●今週のゲストは、作家の森沢明夫さんです。よろしくお願いします。

「よろしくお願いします」

●森沢さんには何度もこの番組に出ていただいて、川遊びや旅のことなど、面白いお話をたくさんしていただいていますが、今回は森沢さんの小説が原作となり、先日全国ロードショー公開された「夏美のホタル」のことをうかがっていきたいと思います。早速ですが、この本の舞台が千葉県なんですよね?

「はい。房総半島にある大多喜町という山の方にある町の山奥にある雑貨屋さんのお話なんです」

●実際にある雑貨屋さんなんですか?

「実際に“あった”雑貨屋さんです。僕が学生時代から、そこに住んでいたおじいさんとおばあさんにお世話になっていて、よく遊びに行っていたんですね。そのおじいさんとおばあさんが2年前に亡くなって空き家になっていたんですよ」

●その雑貨屋さんを舞台に小説を書きたいと思ったんですか?

「そうですね。小説家になってからはずっと思っていました。“小説映え”するというか、セミの声や川のせせらぎ1つにしても、すごく様になる感じの場所なので、映画みたいに映像が流れていくように言葉を選んで書きました」

●実際に読んでいても、空の色や虫の鳴き声など、普段、五感で感じているような風景が伝わってくるんですよね。それが、今回映画化されましたよね。映画化の話を聞いたときはどう思いましたか?

「実は、主演の有村架純ちゃんには3年前に会っていたんです。架純ちゃんとマネージャーさんが僕の本を読んでくれていて『この本を読んで泣きました。もし、映画化するときに主演でやらせてもらえたら嬉しいです』って言ってくれていたんですね。架純ちゃんは当時まだ朝ドラに出る前だったんですが、“この子が主演やってくれるならすごくいいな”と思っていて『そうなったらいいね』って話をしていたんですよ。それが今回、実現したので、嬉しかったですね」

●そんな前から縁があったんですね! まさに運命ですね! 主人公の夏美ちゃんは、有村さんのイメージとピッタリですよね!

「ドンピシャなんですよ!」

●それはピュアなイメージが合っているんでしょうか。

「顔や姿、喋り方とかが合っているんですよね。実際に映画で演じた架純ちゃんを見てても『ドンピシャだ!』って思いましたね」

●ロケ地となったところは、(小説の)舞台となったところと同じなんですよね?

「同じですね」

●イメージは一致しましたか?

「その場所で撮っているので、一致しましたね。映像がすごくキレイに撮られていて、スクリーンを見ながら深呼吸をしたくなることが何度もありました」

風、竹林、川遊び

※何度も通った雑貨屋さんが映画のロケ地となったとき、森沢さんはどんな気持ちだったのでしょうか?

「僕が通っていた雑貨屋さんが2年前に空き家になってしまったんですが、そこをそのまま使ってくれたので、僕のことをすごく可愛がってくれたおじいちゃんとおばあちゃんは、天国で喜んでくれてるだろうなって思って、僕もすごく嬉しいんですよね」

●映画を観ると、そのお店に行ってみたくなりますね!

「マニアックな場所にあるのでたどり着きにくいと思いますが、見てほしいですね」

●どんな雰囲気なんですか?

「今はもうロケが終わったので空き家になっていますが、本当に山奥にぽつんとある商店で、周りには何もなくて静かなところで気持ちいい風が吹いていて、近くには川が流れているんですね。僕が通っていたときは店の周りに竹林があって、いつも風で竹がそよいでいて、風鈴が鳴っているというすごく気持ちのいいところでした」

●そこで森沢さんは当時、そこでどんな風に過ごしていたんですか?

「サワガニやスジエビ、ドジョウを捕ったりしながら川遊びをして、川から上がってきたら、そのお店でアイスを買って食べたり、庭でバーベキューをさせてもらったりしましたね」

●原作の中で主人公の2人が川遊びをしたりするシーンがありますが、そのまんまなんですね!

「そのままです。あと、周りが竹林だったので、5月になるとタケノコ掘りを頼まれてやってました。そのタケノコがものすごく美味しいんですよ! そもそも、大多喜はタケノコが有名で、毎年楽しみでしたね」

●原作でもそのタケノコのことが出てくるじゃないですか。それも森沢さんが実際に体験されたことなんですね。

「野遊び、水遊びに関しては、ノンフィクションがかなり入ってます」

●主人公の2人が野遊び、水遊びを通じて色々な体験をしていくことで成長していくじゃないですか。森沢さんもそんな体験を通して変わったことってありますか?

「成長したかどうかは分かりませんが、日本全国を野宿しながら旅をしていたので、そこのおじいちゃん、おばあちゃんに限らず、全国のおじいちゃん、おばあちゃんたちのところに泊めてもらったりしていたので、『人間って優しいんだな』って思うようになって、根源的に人間が好きになりましたね」

●それまでは、あまり好きじゃなかったんですか?

「それまでは人間があまり好きじゃありませんでした。10代のころは『人間は地球を蝕むだけのガンだ』と思っていて、考え方が荒んでいましたね(笑)。世の中をナナメに見るような生意気な子供でしたが、その旅で色々な人にお世話になったことで、“人間っていいな”って思うようになりました」

千葉の川遊びスポット

※小説「夏美のホタル」には、川底から湧き水が出てくる場所で、夏美たちが遊ぶシーンが出てきます。そんな場所は実際にあるのでしょうか?

「いくつもあります。沢登りをしていくと、クールバスクリン色みたいな真っ青なところがいくつかあるんですよ。そういうところに行くとヒヤっとして、下を見てみると(水が)湧いているんですよね。湧いている砂地に手を突っ込むと、肩まで手を入れても何もぶつからないんですよ」

●そんなところがあるんですね! そこは普通に行ける場所なんですか?

「アウトドアが好きな人なら行けるんじゃないでしょうか(笑)」

●(笑)。どの辺りか聞いても大丈夫ですか?

「養老川の上流の方と小櫃川(おびつがわ)の上流の方に行くと、いくつかあります」

●そこに行けば、映画に出てきた川遊びができるかもしれないんですね! 他にも色々と面白い遊びをしてましたよね。

「あの辺りにはサワガニがたくさんいるので、サワガニをよく捕ってましたね。水の流れに近いジメジメとしたところの岩の玉砂利を転がしていくと、その下にサワガニが隠れているので、それを捕まえてました。しかも、赤くて小さめのサワガニを集めて、水の中にしばらく入れて泥を吐かせて、それを油で揚げて食べてました。結構美味しいんですよ。

 もっと美味しいのが“スジエビ”といって、5センチぐらいの半透明のエビがいるんですが、それを水中メガネを付けてエビを見ながら、目の細かい網ですくっていくんですね。それを炒めて食べるとすごく美味しいんですよ。それは子供でもできるので、僕の子供も小さいころによくやらせてました」

●家族で行っていたんですね。川遊びができる場所や環境がなくて、難しくなってきている状況だと思っていましたが、千葉には探せばそういうところがあるんですね!

「上流の方に行けば、ありますね。人の汚染が少ないし、ゴルフ場とかよりも下に行くと、汚れちゃってますね」

●そういうのは如実に出てますか?

「出てると思います」

大人だから野遊び、川遊び!?

※千葉で生まれ育った森沢さんに、好きな場所をうかがいました。

「僕は外房の方だと勝浦から南が好きなんですね。リアス式とまではいかないんですが、岩場や砂浜など色々な種類の自然が交互に出てくるんです。それがすごく好きで、水中メガネをつけて潜ってみると、色々な魚を見ることができるんですよ。そして、館山といった南房総の方も好きで、海の透明度が高いんですね。昔は1月〜2月以外はずっと潜って遊んでましたね」

●やっぱり、季節によって見えてくるものは違いますか?

「魚も違いますし、海草の繁茂の仕方が違うんですよ。海草が生い茂っている時期だと、海草の間に色々な魚の稚魚がたくさんいたりします」

●潜って魚を見るのと、釣って魚を楽しむのと、どっちが好きですか?

「う〜ん、選べないな〜。すごく面白いのが、釣りの仕掛けを輪っかに巻いて、手にもって泳いでいって、岩場にいる魚を見つけて、魚の顔の前に仕掛けを落とすと、(こっちは)泳ぎながら見ているので、魚が食った瞬間に合わせると絶対に釣れるんですよね。釣った魚を潮だまりに入れておいて、他の魚をまた釣りにいくっていうことを繰り返して、美味しい魚だけを選んでもっていくということをしていましたね。そうやって泳ぎながら釣りも楽しむということをしていました」

●それは面白そうですね! 釣りは当たりの瞬間が一番面白いですが、それを海の中で見ながらできるんですね。そういう遊びって、子供のころにしかできないと勝手に思ってしまっていましたが、「大人でもそういう遊びってアリじゃない」って思っちゃいますね!

「大人がそういう遊びを覚えていないと、子供に教えられないですよね。昔って、そういう遊びをみんなが当たり前に知っていて、それを子供に教えていたと思うんですよ。あるときから川に近づいてはいけなくなったり、釣りが禁止になったりと、人間を自然から遠ざけるようになってしまっていて、そういう遊びができる大人がいなくなっちゃったじゃないですか。だから、僕は大したことをやっているつもりはないのに、ラジオでこうやって話をする機会をもらっているので、逆に『そんなの当たり前でしょ?』っていう世の中になっていったらいいなって思いますね」

●森沢さんの本を読んでいると、「大人だけど、川遊びしてみたいな」って興味が出てきますね。

「是非やってもらいたいですね」

●最後に、「夏美のホタル」の舞台となっている千葉のリスナーの皆さんにメッセージをお願いします。

「僕の小説は、ほっこりするようで、“心が温かくなって泣けます”という感想を言ってくださる読者が多いんですが、その中でもこの作品が“泣きました”という感想が一番多い作品になります。是非、千葉県の自然に癒されながら泣いていただければ嬉しいです。原作と映画、両方とも楽しんでいただけたらと思います」

※この他の森沢明夫さんのトークもご覧下さい

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 森沢さんもおっしゃっていましたが、「夏美のホタル」は本当に泣けます。私も後半ずっと泣きっぱなし。でも、号泣するというよりは温かい涙が頬を伝うという感じでした。そして、映画は思わず深呼吸したくなる千葉の美しい自然が満載です。原作を読んでから映画を観れば、きっと千葉の自然の魅力を再発見できると思います。

INFORMATION

小説『夏美のホタル』

小説『夏美のホタル

 角川文庫/税込み691円

 森沢さんのベストセラーとなるこの本は、お話にも出てきたように、大多喜町にあった雑貨屋さんと、その周辺の森や川が舞台となった心温まるストーリー。読んでいると、いつの間にか涙が頬を伝っているかもしれません。

 そして、今回この本を森沢さんのサインをそえて、抽選で5名の方にプレゼント!
あなたの住所・氏名・年齢・職業・電話番号、そして『夏美のホタル』と書いて、flint@bayfm.co.jpまで送ってください。
締め切りは6月22日(水)。番組の感想などを添えてくださると嬉しいです。 当選発表は本の発送をもって代えさせていただきます。たくさんのご応募をお待ちしています。
※受付は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。

映画『夏美のホタル』

 映画化された「夏美のホタル」が現在全国ロードショー公開されています。主演は日本アカデミー賞 優秀主演女優賞などを受賞した有村架純さん。恋人役に工藤阿須加さんほか、小林薫さん、三石研さん、吉行和子さん等が出演。詳しくは映画の公式サイトをご覧ください。

オフィシャル・ブログ

 森沢さんの近況については、オフィシャル・ブログをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. STAND BY ME / BEN E.KING

M2. JUST WHEN I NEEDED YOU MOST / RANDY VANWARMER

M3. BOOM! / MAIA HIRASAWA

M4. 夏の思い出 / ケツメイシ

M5. HUMAN NATURE / MICHAEL JACKSON

M6. 星の中の君 / Uru

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」