2017年2月11日

盲導犬は大切なパートナー
〜「NEC盲導犬キャラバン」取材レポート

 今回のベイエフエム/NEC presents ザ・フリントストーンは“盲導犬”にフォーカス! 人間にとって“犬”は大切な存在ですが、盲導犬は多くの視覚障害者の方たちの支えになってきました。そんな盲導犬の体験イベント「NEC盲導犬キャラバン」が先日、千葉市立千城台西小学校で開催されました。そのときの模様をお届けします。

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まだまだ足りない盲導犬

※まずは日本盲導犬協会の山本ありささんに、日本盲導犬協会の取り組みについてお話をうかがいました。

山本さん「日本盲導犬協会では“盲導犬の育成”が大きな役割ではありますが、実はそれ以前に、“目の見えない方や、見えにくい方の自立支援”を一番の目的として活動しています。なので、歩く手段の一つとして盲導犬を育て、安心して歩くための応援をしています。また“盲導犬を育成する訓練師の養成”にも力を入れて行なっています」

●盲導犬の育成はどのように行なっているんですか?

山本さん「その犬の性格を見つつ、楽しく訓練することで、犬が自ら進んで盲導犬としての仕事をするようになることを心掛けています」

●盲導犬となる犬が、生まれてから盲導犬になるまで、そして引退した後はどうなるのかが、すごく気になるのですが、教えていただけますか?

山本さん「私たちの協会では犬の繁殖の段階から行なっています。盲導犬に向いている性格の母犬と父犬から生まれた子犬を、2〜3ヶ月から1年間、“パピーウォーカー”と呼ばれるボランティアのお宅で預かっていただきます。そこで“人が大好き!”というところまで育てていただき、1歳になったら協会で訓練を始めます。その訓練の中で、盲導犬に向いているかどうかを判断して、適正があると判断されたら訓練を1年間行なって、2歳で盲導犬としてデビューします。そして、10歳になると盲導犬を引退し、引退犬を飼育するボランティアのお宅にあずかっていただくという流れになっています」

●となると、ボランティアの方々の存在は欠かせないですね。

山本さん「そうですね。私たちの協会はボランティアの方々に支えられているといっても過言ではないと思います。犬を飼育することももちろんですが、運営するための費用においても、ボランティアの皆様の支援によって成り立っています」

●よく“盲導犬が足りない”とか“盲導犬を待っている人がまだたくさんいる”という話をうかがいますが、それについてはどう思いますか?

山本さん「今、日本で活躍している盲導犬が966頭なのですが、必要としている人は約3000人と言われているので、やはりまだまだ足りていないと思います」

●それでは、今後は社会で活躍できる盲導犬をさらに増やしていくことが課題になってくるのでしょうか?

山本さん「もちろん盲導犬と盲導犬ユーザーが過ごしやすい世の中にしていくということも重要な課題ですが、盲導犬を育成するための費用のうち95パーセント以上が、ボランティアの皆様による支援となっています。また、10歳になると引退するため、新たな盲導犬をユーザーにお渡しする必要も出てきます。なので、新しい方に盲導犬をお渡しするとなると、倍以上の頭数の犬を育てなければならないですし、それを育てる人の数も増やさないといけないので、すぐに増やすことができないというのが現状です」

●私たちがお手伝いすることで、少しずつ盲導犬が増えていくということですね。

山本さん「そうですね。そうしていただけると私たちとしても、大変ありがたいです」

●今回、NEC盲導犬キャラバンの活動をしてみていかがですか?

山本さん「私たちは小学生を対象にこのようなキャラバンを行なっているのですが、子どもたちは吸収力があって、素直に盲導犬や盲導犬ユーザーのことを知ってもらえます。その子どもたちが大人になった時に、盲導犬や盲導犬ユーザーが過ごしやすい社会にしていただけるのではないかと思いながら、感謝の気持ちを持ちつつ、授業をさせていただいています」

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アイコンタクトはダメ!?

※盲導犬ユーザーは盲導犬のことをどう思っているのか、NEC盲導犬キャラバンに参加された盲導犬ユーザーの森川加奈子(もりかわ・かなこ)さんにお話をうかがいました。

●盲導犬と一緒に過ごすようになってどれくらいですか?

森川さん「7年経ちましたね」

●実際に一緒に過ごしてみて、どうですか?

森川さん「安心感があるということと、生き物と一緒に生活しているので、ぬくもりを感じることができるのがいいなと思っています」

●盲導犬がいなかった時と今とでは、全然違いますか?

森川さん「そうですね。一番違いを感じたのは、私の場合は“歩く速さ”ですね。以前と今とでは、倍ぐらい違うと思います。以前、杖を使って近所にお使いに行ったのですが、おそらく盲導犬だと半分くらいの時間で済むんですね。それくらい違ってきます」

●そんなに違うんですね! 具体的にどうやって盲導犬と一緒に目的地に行くのか、教えていただけますか?

森川さん「基本的には私の頭の中に地図があって、そこに盲導犬が教えてくれる情報を合わせていきつつ歩いていくというのが盲導犬との歩行の仕方なんですね。なので“○○に連れてって”と言っても連れていってくれるわけではないんです」

●そこはナビとは違うということですね。盲導犬のお仕事としては、どんなことがあるのでしょうか?

森川さん「大きく分けると“角を教えること”“障害物を教えて避けること”“段差を教えること”の3つですね」

●その3つのお仕事と、自分の頭の中にある地図とを組み合わせると、杖よりも倍の速さでたどり着くということですね。では、自宅ではどのようにして盲導犬と過ごしているんですか?

森川さん「家ではハーネスもリードも外して、普通のペットとして部屋の中でゴロゴロと寝そべっています(笑)」

●(笑)。家では甘えん坊なんですね!

森川さん「そうですね!」

●今後、例えば街で盲導犬を連れている方に出会う機会もあると思うのですが、その時に“こういう行為はやめて欲しい”とか“こういう時は助けて欲しい”ということがあれば教えていただけますか?

森川さん「盲導犬に対してやらないでいただきたいことは“触らない”“話しかけない”“アイコンタクトをしない”ことです。意外と知らないことなんですが、アイコンタクトは触ることと同じくらいの効果を発揮してしまい、(盲導犬がお仕事をおろそかにして)大変危険です。そして“飲食物を与えない”ことです。犬がお腹を壊してしまったり、アレルギーによるアナフィラキシーを起こす可能性がありますので、絶対に食べ物や飲み物は与えないでいただきたいです。
 私たちに対してやっていただくと助かることは、困っていそうな時に“お手伝いしますか?”と声をかけていただくことですね。その中でも特にありがたいなと思うことがあります。例えば横断歩道にいる時、盲導犬は信号機の赤と青の見分けはしていないので、盲導犬ユーザー自身が車の流れや人の足音を聞いて、赤か青かを推測しています。なので、もしそういう場面に出会いましたら、“そちらは青ですよ”とか“赤になりましたよ”、“自分も渡りますので、青になったら教えますね”などの声をかけていただくと、とても助かります。具体的にお声がけいただけると大変嬉しいです」


日本盲導犬協会の山本ありささん、盲導犬ユーザーの森川かなこさんと。

相手を思うこと

※実際にNEC盲導犬キャラバンに参加した方々は何を感じたのでしょうか? まずは、小学6年生の木原倖忠(きはら・ゆきなり)くんにお話をうかがいます。

●盲導犬を見たのはきょうが初めて?

木原くん「テレビでは何度か見たことがあるんですけど、実際に見たのは初めてです」

●実際に盲導犬が働いているところを見てどうだった?

木原くん「テレビで見た時よりも、盲導犬とユーザーの動きがぴったり合っていて素晴らしいと思いました」

●人と犬のコンビネーションがすごかったよね。もし今後、盲導犬を連れている人を見たらどうしたいと思う?

木原くん「盲導犬を連れている人の邪魔にならないようにしつつ、丁寧に接していきたいと思っています」

※次に、5年生の大場洸綺(おおば・こうき)くんにお話をうかがいます。

●盲導犬を見たのはきょうが初めてかな?

大場くん「いえ、何度かあります」

●きょうは実際に盲導犬が働いているところを観たけど、どうだった?

大場くん「大きいなと思って見ていたら、実は結構仕事もしていて、すごいと思いました」

●今後、街で盲導犬を連れている人を見かけたらどうしたいと思う?

大場くん「お手伝いなど、色々としたいと思います」

※最後に、6年生担当の新舘徹(しんたて・とおる)先生にお話をうかがいます。

●今回、授業の一環としてNEC盲導犬キャラバンを行なったわけですが、実際にやってみてどうでしたか?

新舘先生「やっぱり実際に目で見て、やってみることが子どもたちの心に響くものだったんじゃないかと思いました。どうしても普段は説明だけになってしまうんですが、こういう風に体験できるというのはすごくいいなと感じました」

●新舘先生は何か思うところはありましたか?

新舘先生「単に視覚障害者や盲導犬がいるということだけではなく、“相手を思うということは誰に対しても変わらない”と感じたので、それを子どもたちに伝えるきっかけとしても、すごくいい時間を過ごせたと思います」

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かけがえのない存在

※今回のNEC盲導犬キャラバンは千葉市立千城台西小学校で開催されました。千葉市がNEC盲導犬キャラバンの取り組みを、学校の授業に導入しようと思ったのはなぜなのか、千葉市教育委員会の岡田直美(おかだ・なおみ)さんにお話をうかがいました。


千葉市教育委員会の岡田直美さん

岡田さん「今回実施した3校は、平成26年度にボランティア活動推進協力校の指定を受け、今年で3年目となります。千葉市では、子どもたちに思いやりの心や社会性などの豊かな人間性を育む教育を推進しています。各学校では、花植え活動や地域清掃などの様々なボランティア活動に取り組んでいます。その1つとしてNEC盲導犬キャラバンも、実際に盲導犬と触れ合うことで、視覚障害の方への理解を深めることができる素晴らしい取り組みであると捉えています」

●ボランティア活動推進協力指定校は、千葉市ではどれくらい認定されているのでしょうか?

岡田さん「千葉市教育委員会では、社会福祉法人や千葉市社会福祉協議会と連携し、毎年市内の小学校のうち5校を指定して、3年間の福祉教育を推進しています」

●実際にNEC盲導犬キャラバンに参加されて、いかがでしたか?

岡田さん「まずは視覚障害の方を理解していくということ、そして子どもたちが、これから将来に向かってどのように関わっていけばいいのかということを、分かっていただけたのではないかと思いました」

●今後もこの活動は続けていかれますか?

岡田さん「そうですね、続けられたらいいなと思っています」

※なぜNECが盲導犬キャラバンという活動をすることになったのか、NEC・CSR社会貢献室の竹内礼美(たけうち・れみ)さんにお話をうかがいました。

竹内さん「NECはC&C(コンピューター&コミュニケーション)を通して“世界の人々が相互に理解を深め、人間性を十分に発揮する豊かな社会の実現に貢献する”という企業理念を1990年に制定しました。この企業理念の実現に向け、3つの中期テーマに沿った社会貢献活動に取り組んでいます。3つのテーマとは“福祉・ダイバーシティ”“環境”“教育・文化・スポーツ”です。NEC盲導犬キャラバンは、“福祉・ダイバーシティ”のテーマに基づいて実施している社会貢献プログラムです」

●いつごろから、年にどのぐらいされているんですか?

竹内さん「2006年から日本盲導犬協会の皆さんと共に活動していて、年に16回開催しています」

●実際にこの活動に携わってみて、どうですか?


NEC・CSR社会貢献室の
竹内礼美(たけうち・れみ)さん

竹内さん「私はまだこのプログラムを担当して1年半しか経っていないんですが、実際にこうして関わってみると、誤解していたことや知らなかったことがたくさんあったんだということに気付きました。よく考えれば分かることなんですが、“盲導犬は道案内をしてくれるわけではない”、“盲導犬に話しかけたり触ったりしてはいけない”ということも、正しく理解していなかったなと思います。盲導犬ユーザーが安心して街を歩けるように、まずは目が見えている人が正しく理解する必要があると思います。NEC盲導犬キャラバンが行なっている普及啓発教室では、盲導犬の仕事や、街中で盲導犬ユーザーに会ったらやって欲しいことや、やって欲しくないことなどを、日本盲導犬協会の方が小学生の皆さんに分かりやすく説明してくれます」

●本当に分かりやすい授業でしたよね。今回は小学生が対象でしたが、他の方を対象にすることもあるんですか?

竹内さん「実は、昨年の8月に初めて、体験を中心とした“NEC盲導犬キャラバン・夏の特別イベント”を開催しました。画用紙を使ってアイマスクを作ったり、スタンプラリー形式で全員が白杖歩行や手引き歩行をしたり、点字の名刺作りなどができるイベントです。そこでは、NECの研究開発品である“ウェアラブルグラス”を掛けると出てくる仮想キーボードを使って様々な操作をしていただくということも行ないました。保護者の方々にも好評で、参加できなかった方から“ぜひ来年も開催して欲しい!”というリクエストがありましたので、今年の夏も開催したいと考えています」

●お子さんだけでなく、親子で参加できるイベントも開催されているということなんですね!

竹内さん「はい。保護者の方が知らないこともたくさんあると思いますので、この機会に一緒に学んでいただいて、親子で色々な話をしてもらえるといいなと思います」

※最後に、森川さんに本日の感想をうかがいました。

森川さん「子どもはすごく柔軟で、とても静かに聞いてくれていたので、きっと分かってくれただろうなと思っています。いつも学校にうかがうたびに、“分かってくれたんだな。盲導犬ユーザーに対する理解者がさらに増えたな”と感じられて、とても嬉しく思っています」

●森川さんにとって盲導犬とはどんな存在でしょうか?

森川さん「“かけがえのない大事なもの”としか表現の仕様がありませんね」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 犬好きの私は前から盲導犬には興味があったんですが、今回改めて知ることがたくさんありました。特に、盲導犬と人が実際に障害物のある場所を歩くデモンストレーションでは、飼い主と犬というより、お互いがパートナーで“人間が犬を思いやり、犬が人間を思いやる”という様子がうかがえて、その絆にとても感動しました。

INFORMATION

日本盲導犬協会

 日本盲導犬協会では、盲導犬候補の子犬を育ててくださるパピーウォーカーや、引退した盲導犬を飼育してくださるボランティアの募集ほか、会員や寄付も募っています。盲導犬のことをもっと知りたい方は、ぜひ、日本盲導犬協会のオフィシャルサイトをご覧下さい。

NEC盲導犬キャラバン

 全国各地の学校での活動や、街でのイベントなどを精力的に行なっているNEC盲導犬キャラバンについての詳しい情報は、下記のオフィシャルサイトをご覧下さい。

千葉市教育委員会

 盲導犬キャラバンを授業に導入する他にも、様々な福祉教育やボランティア学習を行なっている千葉市教育委員会についての詳しい情報は、下記のオフィシャルサイトをご覧下さい。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「GRACIAS / LARRY CARLTON」

M1. OB-LA-DI, OB-LA-DA / YOUSSOU N'DOUR

M2. I'LL BE THERE / JACKSON 5

M3. I JUST CALLED TO SAY I LOVE YOU / STEVIE WONDER

M4. OOPS(feat.CHARRLIE PUTH) / LITTLE MIX

M5. CHANGE THE WORLD / CHAR & 佐藤竹善

M6. FRIENDS / MEGHAN TRAINOR

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」