2019年5月4日

アインシュタインもびっくり!?
世界初! 巨大ブラックホールの撮影に成功!!

 今週のベイエフエム「ザ・フリントストーン」は、「巨大ブラックホール特集」をお送りします! ゲストは、世界的な天文プロジェクトの日本側の責任者である、国立天文台の教授・本間希樹(ほんま・まれき)さんです。

 本間先生は1971年、アメリカ・テキサス州生まれ。東京大学大学院で天文学を学び、博士の学位を取得。専門は銀河系天文学。電波望遠鏡で巨大ブラックホールを写真で示そうという国際的なプロジェクトの、日本側の責任者として活躍中! そしてついに、銀河「M87」の中心にある巨大ブラックホールを世界で初めて視覚化し、先ごろ画像として公開されました。

 実は本間先生は、2017年に一度この番組にご出演いただいているんですが、その時すでに、今回の成功につながるようなお話をしていただいていたんです! 今回は改めて、ブラックホールの解りやすいお話や、データを解析し世界で初めて画像としての視覚化に成功した、その意義や今後の課題など、最新のインタビューも交え、お届けします。

ブラックホールとは?

※さあ、それでは本間先生に、そもそもブラックホールとは何なのか、まずはそこから教えてもらいましょう!
(以下は、2017年7月のインタビューの再編集)

「ブラックホールはとても変わった天体で、名前の通り“黒い穴”なんですね。とにかく重力が強く、物も光も吸い込みます。そして、一度吸い込んだら二度と出さないんです。オバケみたいですよね。“こんなものがあるのか!?”っていうくらい、変な天体なんです」

●では、そんなブラックホールはどうやってできるんでしょうか?

「普通のブラックホールというのは、例えば太陽よりも少し重い星からできます。具体的には、太陽の約30倍くらい重い星です。その星が燃え尽きると、星の真ん中が重力できゅっと潰れてブラックホールになるんです」

●ということは、ブラックホールは“ゴミ”のような、あるいは“燃えカス”のような天体なんですか?

「まさにそうです! 星が燃え尽きた後の“燃えカス”がブラックホールです」

●私のイメージでは、ブラックホールはドラム式洗濯機のようにぐるぐると渦を巻きながら、いろいろなものを吸い込んでいる天体だと思っていましたが、なぜ燃え尽きた天体が渦巻き状になるんですか?

「それはとてもいい質問ですね! 渦巻いているように見えているものは、実はブラックホールそのものではないんですね。ブラックホールの重力によって引っ張られると、ガスが周りからどんどん落ちるんですね。ブラックホールはあくまで“飲み込む”だけなので、やはりブラックホールそのものは黒いんです。なので皆さんがイメージしているような、ブラックホールの周りを渦巻いて光っている部分は、ガスなんです」

●そんなブラックホールに吸い込まれてしまうと、二度と出てこられないんですよね。

「そうです。不思議なことに、もし僕らがブラックホールの強い重力に耐えることができれば、ブラックホールの中に入ることはできるんです。ところが中に入ったら最後、二度と出られませんし、さらに光も出せないんです。なので、仮に中を見ることができて、そこにすごい世界が広がっていたとしたら、天文学者は大興奮なんですけど、それをブラックホールの外にいる人に知らせる手段がないんです。ブラックホールの中はとても不思議な空間なんですね」

●ブラックホールの中に入るか、入らないか。天文学者にとってそれは、究極の選択ですね!

月に置いた1円玉を見る!?

※実は、2017年でのインタビューの時に、すでに本間先生は今回の大ニュースにつながる、こんなお話をしてくださっていたんです! 一体、どんな研究をされているのでしょうか?
(以下は、2017年7月のインタビューの再編集)

「僕らがやろうとしていることは単純明快で、“巨大ブラックホールは本当にあるのか”という問いに答えたいんです。もちろん、今までいろんな観測を積み上げてきた結果、ブラックホールがあるのはほぼ間違いないです。みんな、そのことについては疑っていません。しかし、そこに何かすごく重たい、ブラックホールっぽい天体があっても、それが本当にブラックホールであるかどうかを確認した人はいないんですね。これを確認するためには、それが黒い天体であるということを写真に収めればいいんです。

 具体的には、ブラックホール自体は黒いので見えないんですが、その周りを回っているガスを観測すると、ドーナツみたいに周りが光って、真ん中が黒く抜けているような写真が撮れるであろうということが想像できますよね。それを1枚でも撮ることができれば、“これは間違いなくブラックホールだ”ということが確認できるわけです。
 これをやろうと思い、世界中の研究者100人以上が協力して、地球規模の、非常に大きな電波望遠鏡を作る、“EHTプロジェクト”というプロジェクトをやっています。これはまさに、ブラックホールを見るための国際プロジェクトです」

●どうやって写真を撮るんでしょうか?

「1枚撮るだけでも非常に難しいんですよね。なぜ難しいかというと、そもそもブラックホールは見た目がすごく小さいんです。巨大ブラックホールは黒い穴として見えるわけですが、どれくらいの大きさで見えるか想像がつきますか?」

●ピンポン球くらいの大きさでしょうか?

「いえいえ、違いますね。簡単に言いますと、宇宙飛行士が月に行って、月の上に一円玉を置いて地球に帰ってくる。そして、地球からその一円玉を見ることを想像してください。だいたいその大きさが、僕らが見ようとしている巨大ブラックホールの大きさになります」

●そんなの絶対見えないじゃないですか(笑)!

「ほとんど不可能だと思うんですけど、それがもうすぐ実現するというのが、僕らが今やっている非常に面白いプロジェクトになります」

●いつごろ実現するんですか?

「実はすでに観測は終わっているんです」

●えっ!? そうなんですか!

「今年(2017年)の4月にブラックホールを見るための観測を、世界の望遠鏡を使って初めて行なったんですが、現在、そのデータの処理を行なっていて、現在はそれを待っている状態です。まだ結果は出ていないんですけど、かなりいいデータが取れているということは確認できているので、うまくいけば来年の初めぐらいには“穴が見えた!”と言えるかもしれないです」

●とてもドキドキしますね!

「はい、非常に楽しみですね!」

●私たちも凄く楽しみです!

5500万年前の姿!?

※さあ、それでは世界で初めてブラックホールの視覚化に成功した本間先生に、電話でお話をうかがいましょう!

●どうも、お久しぶりです! 2年ぶりのご出演ですね!

「はい! 2年前に出させていただいて、その時はまだ(ブラックホール撮影の)結果はなかったんですけど、今回はようやく結果について報告することができました。お待たせしました!」

●いえいえ、本当に私も楽しみにしていたんですけど、あの時は確か、かなりいいデータは取れているよ、というお話でしたよね?

「そうですね、観測そのものが終わってからの出演でしたので、観測が無事に成功していることはわかっていたんですね。ただ、結果がどうなるのかなという、期待と不安があったような状態でしたけどね」

●じゃあ、それから2年かけてデータを解析していって、画像として視覚化できた時は、どんなお気持ちだったんですか?

「いや〜、やっぱり見えて本当に嬉しかったですね!! 本当にブラックホールが黒い穴として見えたんで、嬉しいのと驚きなのと……ちょっと言葉にできないぐらいの、本当に感激した瞬間でした!」

●ちなみに、ブラックホールの画像は本間先生の予想通りでしたか?

「そうですね、基本的にはほとんど予想していたような画像でしたね。ドーナツみたいになって黒い穴が開く、そういうものを見たいと思ってやってきて、まさに見たかったものが見えた! そういう印象です」

●あの時も、月に一円玉を置いて、それを見るぐらい難しいことなんだよっておっしゃっていたじゃないですか! なので、かなりハードルは高かったんじゃないでしょうか?

「そうですね、今まで人類が誰もやったことがない、非常に高い視力、具体的には視力300万という数字なんですけど、それで“絵”を描くので、非常に慎重にチェックしながら進めました。もう本当に、何千回、何万回というぐらい、何度も何度も画像化の処理を繰り返して、“もうこれは間違いないね!”と言える、そういうところまで追い込みましたので、それは結構大変でしたね」

●私も写真を見ましたけど、凄かったですよ! “あ、見えるんだ、ボラックホール!”て単純に思っちゃいました(笑)。あれが視覚化できたことによって、天文学の歴史っていうのは大きく塗り替えられることになるんじゃないですか?

「はい、あの一枚の写真の持つ意味は非常に大きいと僕は思っていますね。それはやっぱり、ブラックホールっていうものが予想されていた、想像上の天体というか、もちろん存在することはみんな疑っていなかったですけども、やはりそれが視覚的に見えた、確実に存在するっていうことを示した一枚なので、本当に100年間待ち続けてきたものを、ようやく僕らは見た……そういう意義がありますね。本当に大きな意義があると思っています」

●う〜ん……! ちなみに今回、画像として公開したのは、以前この番組で話してくださった、銀河の真ん中にある、たったひとつの超巨大なブラックホールなんですよね。

「そうですね。今回、ブラックホールを撮ることが出来たのは、“M87”っていう、天の川銀河とは別の、乙女座にある銀河なんですけども、その中心にある巨大なブラックホールですね」

●なるほど。そうすると、地球からは大体どれくらい離れた距離にあるものなんですか?

「今回のブラックホールは大体、5500万光年離れていますので、光の速さで5500万年かかります」

●なんかもう、スケールが大き過ぎてなかなか想像できないですね(笑)。

「僕らが見たブラックホール、あのドーナツのような絵がありましたけど、あれはまさに5500万年前の姿ですね」

●あっ、あれが5500万年前の姿になるんだ!

「それがようやく5500万年かけて今、届いたという、そういう写真ですね」

●なるほど、そういうことになるんですね! なんかそうすると、時間の重みっていうのも感じますね!

「そうですね、やっぱり宇宙の大きさや時間の長さ、それがやっぱり宇宙スケールなので、そういうのは感じてもらえればと思います」

2020年には、さらなる展開が!?

●前回ご出演された際に、最終的にはブラックホールの写真を撮ったことによって、どうやってそのブラックホールができたのかとか、なぜ銀河系の真ん中にあるのかとか、その辺もわかればいいなというお話をされていましたけれども、今回の画像からそういったことも今後、わかってきそうですか?

「はい、それは今後の宿題として実は今回、残ったっていうのが僕たちの印象で、実はブラックホールは非常に今回、綺麗に見えたんですけど、その周りでブラックホールの近くから吹き出していると想像されていた“ジェット”っていうものが全く見えなかったんですね。ジェットっていうのは、水鉄砲の水が細く飛んでいくようなものを想像していただければいいんですけど、このM87っていう天体にジェットが出ているっていうことは、もう以前からわかっていたんですね。
 だからブラックホールのそばを見れば、それが見えて、周りの銀河にどういう影響を及ぼすか、そんなようなことまでもしかしたら見えたらいいかなと思っていたんですけれども、今回そこは全く見えなかった。

 なので、今回このプロジェクトに関わったメンバーの、次の大きな課題、それは“ブラックホールからジェットがどう出ていくのかを見たい。そしてそれが最終的には銀河にどういう影響を与えているのか”、そういう研究に繋がっていくとみんな思っていますので、決してこれでプロジェクトが終わりっていうことじゃなくて、さらに次に大きな、また面白いテーマがあるということになっています」

●なるほど。逆に今回の画像からは、何がわかりそうなんですか?

「今回の画像はやはり、一番大きなことは“ブラックホールがそこにあるぞ”というとこを明らかにした。それは光さえ出さない、本当にお化けのような天体だったんですけど、ブラックホールの最大の性質が今回、黒い穴としてちゃんと捕らえられた。そしてそれは相対性理論の予想通りだったので、基本的にブラックホールは極端に重力が強いところでも、今のところアインシュタインの言っていることは正しかった、そういうことがこの観測からわかっています」

●へぇ〜! じゃあ、アインシュタインも今、喜んでいるでしょうね(笑)!

「そうですね。100年前にアインシュタインが相対性理論をつくって、それ以来、こういう天体があるあると言われながら、今回初めて見られたわけですからね。……まぁ、本人には伝えることはできませんけど(笑)、見たらびっくりするでしょうね!」

●今回は世界6箇所の望遠鏡で同時に観測されたんですよね。今後もその6箇所で続けていくんですか?

「実はさらに今回以降ですね、望遠鏡を増やそうという計画になっていまして、この間は6箇所8台だったんですね。しかし来年以降は9台ないし10台の望遠鏡にしたいと思っています。実際、準備は多分ほとんどできているので、さらに望遠鏡を増やした観測が来年行なわれて、そうするとさっき説明したジェットとかっていう、今回見えなかったものも次は見えてくるんじゃないかということで、またさらなる新しい研究の展開があるので、ぜひそれも楽しみにしていて欲しいなと思っています!」

●本当に楽しみですよ! 来年に始まって、いつ頃(結果が)わかるんですか?

「どうですかね。今回も一枚の写真を撮るのに、最初の観測から2年かかっちゃっているんですよね(笑)。だからそういう意味で、僕らのプロジェクトはなかなかそう簡単に、カメラで写真を撮るかのようにすぐ答えが出てくるわけではないんですけども。ただ今回、随分いろんな技術や経験の蓄積がありますので、次回以降はもっと早く、観測したら半年とか1年で結果が出るようになるんじゃないかと思っています」

●おお、そうですか! 

「ええ、どんどん成果が出ることを期待して欲しいと思いますね」

●来年、東京オリンピック・パラリンピックが終わった頃、はやぶさ2が帰ってくる辺りにはわかっちゃったりしますかね?

「ああ、そうですね、来年はいろんなイベントがありますからね。そのイベントの中のもうひとつとして、ブラックホール関係でまた何か大きなニュースが提供できればいいですね!」

●本当に来年が楽しみです! 今まで研究されてきた成果が形になってひと段落だと思いますけども、今後もまだまだ研究は続けられるんですよね!

「そうですね、やっぱり研究って息が長いですからね、今回僕たちはこれを10年やって、ようやく一枚の絵にたどり着きましたけど、またさらにやらなきゃいけないことがいっぱいありますので、またすぐ、3年か5年、いや、もっとかな(笑)。時間をかけて頑張りたいと思っています」

●この番組でも、本間先生のことをずっと応援させていただきたいと思いますので、ぜひ今後ともよろしくお願いします!

「はい、こちらこそどうぞよろしくお願いします! 今までも応援いただいて、本当に感謝しています! ありがとうございます!」

YUKI'S MONOLOGUE 〜ゆきちゃんのひと言〜

 誰もがあると思っていたけれど、まだ誰も見たことがなかったブラックホール。 そんなブラックホールを世界で初めて視覚化したって本当に凄いことですよね。 本間先生ならきっと来年の撮影も成功して、将来的にどうしてブラックホールが出来たのか、その謎も解き明かしてくれるのではないでしょうか。一緒に期待して待っていましょう。

INFORMATION

『巨大ブラックホールの謎』

『巨大ブラックホールの謎』

講談社 / 税込価格1,080円

 巨大ブラックホールについて詳しく解説。未だに多くの謎に包まれている巨大ブラックホール研究の決定版です! 詳しくは、講談社BOOK倶楽部のオフィシャルサイトをご覧ください。

その他、本間さんの活動や研究については、オフィシャルサイトをご覧ください。

また、巨大ブラックホール観測の国際プロジェクトEHTについては、EHTジャパンのHPをご覧ください。

今週のオンエア・ソング

オープニング・テーマ曲
「(MEET) THE FLINTSTONES / THE B-52's」

M1. SHINING STAR / CHAKA KHAN

M2. COSMIC GIRL / JAMIROQUAI

M3. 天体観測 / BUMP OF CHICKEN

M4. 星のかけらを探しに行こう Again / 福耳

M5. FANTASY / EARTH, WIND & FIRE

M6. WHEN YOU WISH UPON A STAR / BILLY JOEL

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」