毎回スペシャルなゲストをお迎えし、
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生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで
幅広く取り上げご紹介しています。

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Every Sun. 20:00~20:54

2020年8月のゲスト一覧

2020/8/29 UP!

◎菊池真以(気象予報士)『雲にときめき、空に癒され 〜気象予報士の雲図鑑〜』(2020.08.29)

◎小口良平(自転車冒険家)『世界一周15万キロの自転車旅 〜人の優しさに支えられて〜』(2020.08.22)

◎辻 大和(石巻専修大学・准教授)『サルの社会にボスはいない!?〜ニホンザルの新常識〜』(2020.08.15)

◎小倉ヒラク(発酵デザイナー)『発酵の奥深い世界 〜微生物が文化を創る〜』(2020.08.08)

◎鈴木紀之(進化生態学者)『博士が愛するテントウムシ 〜多様性を保つ「すみわけ」』(2020.08.01)

雲にときめき、空に癒され 〜気象予報士の雲図鑑〜

2020/8/29 UP!

 

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、気象予報士の「菊池真以(きくち・まい)」さんです。

 菊池さんは茨城県竜ヶ崎市出身。慶應大学在学中に民間の気象会社でお天気キャスターを務め、気象予報士の資格を取得。その後、NHKの気象キャスターとして活躍。現在はお天気関連の本の執筆、講演活動のほか、自分で撮影した空や雲の写真展を開催するなど、幅広い活動をされています。先頃出された新しい本『ときめく雲図鑑』は掲載写真のほとんどが菊池さんが撮影した写真なんです。

 そんな気象予報士・菊池さんにきょうは雲のことをいろいろ教えていただきます。

☆写真協力:菊池真以、山と渓谷社

菊池真以さん

雲の名前に法則!?

※まずは雲の名前について。たくさん名前があると思っていたんですが、雲は10種類に分類されるそうですね。

「そうなんです。空に浮かんでいる雲って、よく何種類あると思う?って聞くとみんな、無限にあるんじゃないの?っていう風に言う方が多いんですけども、基本的にはほとんどの雲は10種類に分けることができるんですね。それで大きく10種類に分類された中から、さらに細分化されて何種類もあるっていうことになるんです」

●どうやって分けられているんですか? 

「雲が浮かんでいる高さ、あとは形、それによって10種類に分けられています。正式名称で言うと巻雲とか巻積雲とかちょっと難しい言葉に聞こえるかもしれないんですけども」

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

●名前に使われる漢字によっても、雲の高さとか形を知ることができるという風に本に書かれていましたけれども。

「そうなんです。さっきいちばん初めにお伝えした正式名称のほうですね。例えば巻雲とか巻積雲、巻層雲、高積雲、乱層雲とか、そういった漢字が並んでいるのが正式名称のほうなんですけども、それに付いている漢字を見ると雲の形とか高さが分かるようになっているんですね。

 小学生とか、覚えなきゃいけないな〜って学生さんにちょっとアドバイスをお伝えしますと、”乱”っていう漢字が付くと雨を降らせる雲なんですね。例えば積乱雲、積乱雲はご存知ですよね? 積乱雲にも乱が付いていて、それも雨を降らせる雲で、他には乱層雲。乱が付くので雨を降らせる雲だなっていう風に分かるんですよね。
 他には”積”、積み重ねるの“積”っていう漢字なんですけども、それが積雲、俗称で言うとわた雲、丸い雲ですね。その雲ってどんどんと積み重なるようにして大きくなっていくので、積っていう漢字が付きます」

●積乱雲もそうですよね? 

「積乱雲も積ですし、積雲も積、ちょっと漢字で難しい話になりましたね(笑)」

●いろいろ法則があるんですね〜。

「そうなんです! 最初に10種類全部覚えてくださいって理科の授業とかであるとすると、最初は漢字が並んでいて難しいなって思うと思うんですよ。なのでその時は漢字を見て少し法則を考えると分かりやすいかと思います。 あとは昔から呼ばれてきた俗称のほう、すじ雲とかうろこ雲とか、そういった俗称で覚えるのも1つの手かなという風に思います!」

<基本の雲10種類のまとめ>

 さて、気象予報士の菊池真以さんに教えていただいた、高さや形から10種類に分類される雲をまとめると・・・大きく分けると、空の高いところにある順に「上層雲(じょうそううん)」、「中層雲(ちゅうそううん)」、「下層雲(かそううん)」の3つになります。

 地上5000メートル以上の最も高いところにできる上層雲に分類されるのは、「すじ雲」とも呼ばれる巻雲(けんうん)と、「いわし雲・うろこ雲」などの巻積雲(けんせきうん)、そして空一面に薄く広がる巻層雲(けんそううん)です。

 続いて、高度2000メートルから7000メートルあたりに広がる中層雲には、「ひつじ雲」と呼ばれる高積雲(こうせきうん)と、空全体が灰色っぽくなる高層雲(こうそううん)があります。

 一番低い高度2000メートル以下のところにできるのは層雲(そううん)、別名「きり雲」と、丸みのあるかたまり状の層積雲(そうせきうん)、そして「雨雲・雪雲」でおなじみの乱層雲(らんそううん)です。

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

 ここまで挙げた雲は8つ、いずれも水平に広がるタイプです。残りの2つは「対流雲(たいりゅううん)」という、もくもくとした厚みのある雲になります。「わた雲」で知られる積雲(せきうん)と「入道雲」でおなじみ積乱雲(せきらんうん)で、上へ上へと成長し、地上2000メートルから1万メートルの高さまで発達するものもあるんです。積乱雲を見るとザ・夏!という感じがしますが、冬に日本海側に大雪を降らせるのも積乱雲のしわざなんだそうです。

 これからの季節は、すじ雲やいわし雲、つまり地上5000メートル以上の最も高いところにできる雲がよく見られるようになります。ぜひ菊池さんの本『ときめく雲図鑑』を参考に、観察されてみてはいかがでしょうか。

ときめく雲図鑑

雲の基礎知識

※続いて、雲の定義について教えていただきました。

「雲って地面から少しでも離れていたら雲なんです!」

●え!? そうなんですか? 

「霧と雲の違いってご存知ですか? 」

●教えてください! 

「霧と雲の違いは地面から少しでも離れているかどうか」

●空に浮かんでいるとかそういったものは関係ないんですか? 

「地面から少しでも離れていたら雲です。例えば霧が出ているとするじゃないですか、で、霧が地面にくっ付いていたら霧です。それが少しでも離れたら雲になります。層雲っていう、きり雲って言ったりもするんですけども」

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

●逆に高い雲はどれくらいの高さになるんですか? 

「飛行機に乗るとよく窓から雲をご覧になることがあると思うんですけども、飛行機が飛ぶ高さ、それぐらいがいちばん高い雲、もう少し高いところかな? 飛行機が飛ぶ高さか、もう少し高いところが雲ができる限界です。

 大体地上から13キロメートルくらい、季節によって雲ができる限界の高さは変わってくるんですけど。雲は、例外もあるんですけども、ほとんどが地上からおよそ13キロメートルのところ、対流圏って言うんですけど、そこの間でできるんですよ。

 13キロメートルくらいがてっぺんの部分で、よく入道雲をご覧になること多いと思うんですけど、よく見ると、てっぺんが平らになっているのって見たことありませんか? “かなとこ雲”って言ったりするんですけど、入道曇ってどんどん大きくなっていきますよね。大きくなっていって限界にきたってところで、もうそれ以上上にいけないから、今度は横に広がるしかなくなるんですね。

 なので上だけ横に広がって、“かなとこ”っていう昔よく大工さんが使ったものがあるそうなんです。加工する時の金属が“かなとこ”って言うそうなんですけど、その形に似ていることから、“かなとこ雲”って言うんです。なので入道雲のてっぺんが平らになっているのを見たら、あそこが雲ができる限界だ!っていう風に分かるんですよ」

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

●すぐに消えてしまう雲と、雨を降らす雲の違いっていうのは、どういったところにあるんですか? 

「雨を降らせる雲って黒っぽくないですか? 怪しげな色をしていますよね(笑)。黒い雲ですよね。それって雲に厚みがあるからなんです。空を見ている時に雲が白く見えるのって、太陽の光が当たって、それで白く私たちに見えているんですけども、雲がどんどん厚くなってくると底のほうまで光が届かないんですよ。なので下から見ると黒っぽく見えるんです!」

●そういうことなんですね! 

「はい。それで厚みのある雲っていうのは、いっぱい水分を蓄えているわけですから、そこから雨が降ることが多いってことなんですね」

●なるほど〜。改めて、雲の発生のメカニズムっていうとどうなっているんですか?(笑)

「簡単に言いますと蒸発した地上の水が・・・空って冷たいじゃないですか、山とか登ると上のほうって寒いですよね。蒸発した地上の水が空で冷やされることによって、小さな雲つぶとしてまた現れるわけですね。その小さな雲つぶがいっぱい集まって雲になっているわけなんです」

ときめき、癒され

菊池真以さん

※雲を撮影するときのアドバイスをいただきました。

「今回、図鑑なので雲だけが写っている写真っていうのも多いと思うんですけど、是非周りの景色とも一緒に撮っていただくと、その時の気持ちとかその時の雲の出ていた状況とか、そういったものも分かりやすくなるので、風景も入れてみるといいかなっていう風に思いました。
 その時に水平線、地平線とかをまっすぐにするといいと思います! ちょっと曲がっているとやっぱり見栄えはよくないので、まっすぐにするとちょっと上手くみえるかなっていう風に思います」

●分かりました、やってみます! 

「はい!」

●いつも雲の写真を撮りながら、ときめいてらっしゃるんですか? 

「基本的には、なんかここが可愛いなとか、ここが綺麗だなっていう風に思って。多分写真を撮る時ってそうじゃないですか?」

●そうですね!

「人を撮るにしても景色を撮るにしても、多分ここが綺麗だなって思ったらシャッターを切ることが多いと思うんですけども、基本的には雲でここが可愛いなとか綺麗だなって時に写真を撮っています。それがときめきかなっていう風に思っているんですが。

 雲の名前っていうのも、やっぱり形とかその雲の特徴、可愛らしい部分とか綺麗な部分とか、特徴から名前が付いているものも結構多くって、例えば二重雲とかあるんですけども、それって本当に二重に重なり合う雲のことを言っているんですね。重なっていると綺麗だなって。他にも肋骨のような雲のことを肋骨雲って言ったりもするんですよ」

●面白いネーミングですね! 

「そうなんです。なので写真を撮る時、その雲がいいなってときめく瞬間と、その名前の付け方がたとえたものに似ているな〜と思う瞬間があるんです」

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

●空に浮かぶ雲を見ているだけでもすごく癒されますよね。

「私はもうすごく癒されて(笑)、本当に家事の合間とかでも空を見て癒されております!」

●ゲストの方もいちばん身近な自然が空だっておっしゃっていた方もいたんですけれども、本当にその通りですよね。誰もが見上げれば見ることができるというか。

「家からでも窓があれば見ることができるので、空はいつでも楽しめるのかなっていう風に思っています。私がいちばん好きなのはやっぱり夕方の時間の雲でして、時間によって結構雲の色とか表情が変わってくるので夕方の空はお勧めです」

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

空の変化を見逃さない

※気象衛星やコンピューターの発達によって、気象予報の精度は格段にあがりましたよね。でも、局地的で急激な変化にはなかなか追いつかないようにも思うんですが、自分や家族を守るために、何か心がけておきたいことはありますか?

「よくお伝えしているのが2つありまして、1つは自分は大丈夫だと思わないこと。どこが危険かとかどんなことが起きるのかっていうのを、想像する力っていうのがすごく大事だなっていう風に思っています。
 よく災害が起きてしまったりすると、まさか!っていう風に思うじゃないですか。なのでそのまさかが減っていくといいなっていう風に私は思っています。それを減らすためには大雨が来そうだとか、大雨が来たらここにはどんな危険があるのかなとか、そういったことを想像できる力っていうのは大切になってくるかなって思っています。

 もう1つはやっぱり空の変化を見逃さないことだと思いますね。昔は空とか雲の様子を見て危ないって感じることが多かったっていう風によく聞くんですけども、今は天気予報が便利に、どこでもスマートフォン1台あれば見られるので、本当に便利になったのはいいことですけど。
 その反面、極端な自然現象に対して少し察知するのが難しくなってきているのかなっていうことは感じていますね。なので”ときめく雲図鑑”では雲を楽しんでもらいたいと思って作っているんですけども、一方で空からのメッセージに対して、日頃からアンテナを広げていただけるきっかけになったらいいなと思っています」


INFORMATION


菊池真以さん情報

ときめく雲図鑑

ときめく雲図鑑


 菊池さんが専門的な言葉をなるべく使わないように心がけて書いた本です。とにかく写真が素敵で、食べ物にたとえた表現なども面白く、ほかにも雲を楽しむための情報が満載!
山と渓谷社から絶賛発売中です。詳しくは、以下のサイトをご覧ください。

◎山と渓谷社HP:
https://www.yamakei.co.jp/products/2820202460.html

 菊池さんの活動についてはオフィシャルサイトを見てくださいね。

◎菊池真以さんのHP:https://www.maisorairo.com

オンエア・ソング 8月29日(土)

2020/8/29 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. FEET IN THE CLOUDS  / PAUL McCARTNEY

M2. 雲 / 石井竜也

M3. BLACK RAIN CLOUD  / PAUL GILBERT

M4. SONG OF THE CLOUD  / FOUR GET ME A NOTS

M5. 白い雲のように / 猿岩石

M6. 流れる雲を追いかけて / サザンオールスターズ

M7. STRANGE WEATHER / GLENN FREY

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

世界一周15万キロの自転車旅 〜人の優しさに支えられて〜

2020/8/22 UP!

 

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、世界157カ国を、およそ8年半かけて旅をした自転車冒険家「小口良平(おぐち・りょうへい)」さんです。

☆写真提供:小口良平

小口良平さん

 小口さんは1980年生まれ。長野県岡谷市出身。2007年から1年かけて、自転車で日本一周。2009年3月から2016年10月にかけて、世界157カ国を自転車旅。移動した距離はおよそ15万キロだそうです。そして先頃、世界一周の旅をまとめた本『果てまで走れ! 157カ国、自転車で地球一周 15万キロの旅』を出されました。

 きょうはそんな小口さんに、世界一周の旅で出会った人々や忘れられない出来事、そして自転車の魅力などうかがいます。

果てまで走れ! 157カ国、自転車で地球一周 15万キロの旅

3つの魔法の言葉

※世界一周の旅に出ると決意した小口さんは大学卒業後、建設会社で働きながら、一日2食の節約生活を5年近くも続け、旅の資金を貯め、そしてついに世界一周の旅に出たそうなんですが、どんなルートで世界を巡ったのでしょうか。

「日本からいきなり飛行機でオーストラリアに飛びました。で、オーストラリアのからオセアニア諸島ですね、ニュージーランドとか走りながらインドネシア、インドネシアからずっと東南アジアを上がって、インドのほうまで上がりました。そのあとシルクロードをずーっと東のほうから、アジアから中央アジアを超えて、中東を超えて、ヨーロッパを周ったあとにアフリカ。で、東アフリカを走ったあとに、今度はヨーロッパの北欧と西欧、で、西アフリカに南下しました。最後は2年ちょっとかけて北中南米大陸を、北のアラスカのほうからぐーっと南のほうに下がってゴールがニューヨーク。アメリカのニューヨークから最後、日本に戻ってまいりました」

●言葉はどうされていたんですか? 勉強されていたんですか? 

「それが恥ずかしながら、英語もまともに喋れなかったんです(笑)。最初に行ったオーストラリアでカタコトな英語発音だけは覚えて、一応ブロークン・イングリッシュを使って、世界の人とコンタクトしていたんですけども、やっぱり人間なのでジェスチャーがある程度通じていました。ただ、世界を周るにおいて、現地の言葉を3つ覚えていたらコミュニケーションがとれるっていうのを発見しまして、私はそれを魔法の言葉と呼んでいるんです」

●へー! その3つはなんですか? 

「1つ目が“こんにちは”、例えば英語だとハローとかスペイン語だとオッラー、フランス語はボンジュールとかなんですけども、それで相手の警戒心を解くことができたんですね。

 2つ目が“ありがとう”、センキュー、メルシー、グラシアスとかなんですけれども、やっぱり自分が感謝を示すっていうことでオープンマインド、仲良くしたいですっていうメッセージが届いていたので、向こうもありがとうって言われて嫌な気分になる人はいないと思うんですよね。話を聞いてくれるような親身な状態になってくれていましたね。

 最後が“うまい”“おいしい”、英語だとヤミーとかスペイン語だとサブロッソとか言うんですけども、やっぱり人間なので食べ物を食べて生きています。同じ食べ物を食べて共感してくれるっていうことが非常に相手の、やっぱり文化を尊重してくれているっていうように多分思ってくれたと思うんです。食っていう字を分解すると“人を良くする”って書いてあるんですね」

●おー! 確かにそうですね! 

「はい、まさに私もそうです。この間も海外の友達が来て、納豆を食べておいしいって言ってくれて、何か納豆を褒めてくれる=日本を褒めてくれるような気になっていました。私も同じように現地のものを、現地の言葉でおいしいって言ったら、すぐに仲良くなって家に泊めてくれたりとか、優しくしていただいていました」

●そうなんですね! 本当に魔法の言葉ですね!

「そうですね! ちょっと言葉に自信のない方はとりあえず、この3つの言葉を現地語で覚えていくことをお勧めします!」

車の接近が鼻で分かる大自然!?

※およそ8年半の世界を巡る旅では、とんでもないハプニングがたくさんあったと思いますが、その中から、いろんな「いちばん」を聞いていきたいと思います。まずは、いちばん嬉しかった出来事はなんですか?

「そうですね。世界中で会った人と再会の場面がありまして、例えば、他に私と同じように自転車旅をしているスペインの友達がいて、たまたま一度会ったあと再会をしたりとかしていました。その中で実は私、旅の最中に出会った日本人の女性、エジプトのラハブっていうところで会ったんですけども。で、帰ってきて2016年、5年半ぶりに再会して、その女性と少し仲良くなりまして、実は2年前に結婚して、先々月、子どもも生まれました(笑)」

●わあ! おめでとうございます! 

「ありがとうございます! それこそ多分、旅をしてなかったら日本でも絶対出会ってなかったので、そういう意味ではトータルすると、旅で嬉しかったことは再会かなと、そして妻との出会いかなっていう風に今では振り返りができました」

●そうなんですね〜! では、いちばん美しいと思った景色はどこですか? 

「中央アジアのタジキスタンにパミール高原と呼ばれているところがありました。標高が4000メートルを超えているような場所なんですけれども、政治的な理由もあってちょっと内乱をしばらくしていましたので、割と観光で入れるようになったのは最近になります。

小口良平さん

 私が行った時も全然人に会わないようなところで、峠をいくつも越えて行って走っておりました。そしたら、何か鼻につんざくような匂いが感じられたんです。何の匂いかなと思った時に、ガソリン? って思った瞬間に、次は目で視覚として2キロ〜3キロ先に車がやってくるのが分かりました。そして近づいてくると音でようやくそれが車だって分かったんです。

 つまりはですね、そこに人が全然いないので空気が非常に澄んでおりまして、車の存在が目や耳よりも、先に鼻で分かるような大自然が残されているような場所でした。夜空の星なんかも流星が降ってくるような、本当にロケットが落ちてきているんじゃないかって思えるような大自然があって、まだまだ地球にはこんなところが残っているんだ! ってワクワクした景色が本当にいちばん美しかったかなと感じました」

●素敵ですね〜。では、いちばん美味しかったご飯は何ですか? 

「中東料理なんですけども、イランという国に行った時に食べさせてもらった “ドンドルマ“っていう料理がありました。田舎料理みたいなんですけれども、トマトとかナスとかの中をくりぬいて、そこにお肉を詰めたりお米を詰めたりとかして。

写真提供:小口良平

 イランはオリーブオイルが非常に有名で、純度の高いオリーブオイルがありまして、その肉詰めしたもの、米詰めしたものの野菜をオリーブオイルで1日中煮込みつつ、次の日になったらそれを取り出してお皿に並べて最後に乾燥ローズ、バラのチップをふわーっと振りかけて、なんとも優雅な、エクセレントな食べ物をいただきました。
 味はどこか日本の煮込み料理にも非常に似てて、そういった意味もありまして美味しくいただいていました! 

 この料理がですね、実はあんまりレストランに並んでいなくて、仲良くなったご褒美の証に家に招いてもらっていただいていたので、そういったことも含めて、本当にいちばん美味しかったご飯かなって思います」

カンボジアの恩人、無償の愛と約束

※世界を巡る旅では、たくさんの人に出会い、助けてもらったことも多いと思うんですが、特に記憶に残っている人はいるのでしょうか。

写真提供:小口良平

「カンボジアで出会った家族になります。私の中で今でも約束と思って活動をしているんですけれども。カンボジアに行った時にカンボジアの現地通貨が切れてしまって、銀行で両替しようと思ったんですけど、土日で空いていませんでした。お金が一切なくて、川を渡らなくてはいけないんですけれども、その渡し船のお金も払えなくて。
 ひとまずキャンプをしようと思って、地域の人たちにキャンプをさせてくれって言ったんです。普段だったらキャンプをさせてくれるんですが、小さい村だったので、ダメだって追い払われてしまったんですね。

 体調も非常に悪かったので、泣く泣く学校の裏に隠れて張ったんですけども、やっぱり見つかってしまって、出てけ!って、みんなに追い払われた時にある人が近づいてきてくださって、その人がこっち来いよと言ってくれたんです。ついていくとその人が渡し船のお金を払ってくれて、対岸のですね、屋台があったんですけども、その屋台に連れて行ってくれました。で、ご飯をご馳走してくれて、結果その彼の家に招いてくれて、一泊させてもらいました。

 次の日の朝になると当然のように朝ごはんが出てきて。私もそれだけ優しくされて体調も徐々に良くなって、じゃあきょう出発できる!って思って、出発しようとした時に彼が私の手の上に置いたのが現地のお金だったんです。

 それも多分、今で換算するとカンボジアの、一般の人の平均給料の半分くらいのお金、日本円だと10万円とかそのぐらいの大金を彼が家族を振り切って渡してくれたんですね。彼には小さい子どももいるので、さすがにこれは受け取れないよって返したんですけれども、彼がそれは絶対持っていけと、世界一周するっていう人間が、日曜日だし、きょうも食べられなかったら、世界一周なんかできないと、きょう君が来てくれたから家族みんなが笑顔になっていると、またしばらくしたら、変な日本人、今頃どこにいるのかな、なんて言ってまた家族がハッピーになってスマイルになる瞬間があるから、これは感謝の証だ、って言ってくれて渡してくれたんです。

 本当に世界中いろんな人が優しくしてくれましたけども、本当に無償の愛をたくさん受け取って、いつか私がこの家族を私の故郷の長野県に呼びたいなっていうのと、私自身も新しくできた家族を自転車でまたカンボジアに、この町に行きたいなっていう風に思って、彼との約束を今も、まあ果たせずにはいるんですけども、それを果たしたいなと思って今の活動をしています」

●この本を読んでいると、いろんなハプニングがあって、どうしてそこまでして旅を続けるんだろう?っていう風に思ってしまったんですけれども、旅を続けることのモチベーションってどこからきたんですか? 

「やっぱり人に優しくされたっていうのがいちばん大きかったなと思います。応援してくれている人の気持ちを裏切れないな、応えたいなっていう思いがあったと思います。多分自分だけの約束であれば、変な話、弱い人間なので途中で帰っていたかもしれないんですけれども、やっぱりこれだけ優しくされて、次に再会した時に世界一周できなかったって言ったら、ガッカリさせちゃうなとかって思うと、頑張って世界一周して再会した時に、君のおかげで世界一周できたんだよ、ありがとう!って言いたいなっていうのが、本当に最後の最後までモチベーションになっていました」

サドルの上の原風景

※ところで、小口さんが自転車の魅力にハマったのはいつ頃だったのでしょうか?

写真提供:小口良平

「いちばん最初に自転車って楽しいな〜って思ったのが、兄がいるんですけども、兄と一緒に、私の故郷には諏訪湖という一周16キロぐらい、当時は道路が綺麗じゃなかったので22〜23キロあったんですけど、その諏訪湖一周を8歳の時にしました。
 その時にお腹を空かせながらも走っていると、普段車でばーっと過ぎていた風景がしっかりと全部自分の頭の中に入ってきていました。例えばこんなところにお店があったんだなとか、親戚のばあちゃんの家ってこんな遠くにあったんだとかですね、鳥とか草花の音が聴こえたり、車では感じられなかったものがサドルの上ですごく良く感じられて、その一周が私にとっての大冒険だったんです。それがなんか原風景として心の中に残っています」

●小口さんにとって最初の冒険なんですね。

「そうですね、はい」

●現在、小口さんはジャパン・アルプス・サイクリング・プロジェクトの副代表を務めてらっしゃいますけれども、これはどんなプロジェクトなんですか? 

「はい、長野県の県知事のもとに官民連携の協議会を作りまして、私はそこで副代表をさせてもらっているんです。長野県をサイクリングで、その魅力を伝えていこうということで、今大きく観光プロモーションをしていて、長野県を一周するサイクリングロード800キロを今作っているところです。
 自転車乗りの人にとっては坂とか峠、山が実はご馳走のような場所になるんです。これを登るために一生懸命汗をかいたりとか。標高2000メートルを超えると森林限界、植生が変わってくるので、そこにいる動植物も変わってきます。そして長野県ならではの温泉であったり、食文化、海こそないけれど、山菜やそば、そういったものを楽しんでもらえるようなものを周遊観光として今みんなで作っているところです」

写真提供:小口良平
写真提供:小口良平

●平坦な道のりじゃダメなんですね(笑)

「そうですね! 平坦は平坦でいいんですけど、やっぱり初級者から中級者、上級者までが楽しめるのが長野県の魅力かなっていう風に思っています。そして今だと電動アシスト付きの自転車、Eバイクがありますので、この登場によって今、老若男女の方が楽しめるような環境が整ってきています」

南極大陸、そして月へ

※小口さんは地元長野でバイク・パッキング・ツアーのガイドもされています。どんなツアーなんでしょうか。

「自転車に荷物を載せまして、そこにテントであったりとか食料、寝袋とか、そういったものを付けて1泊2日。もしくは来年、本格的にやろうとしているのが子どもたちを、今私がいる日本のど真ん中と呼ばれている辰野町から海を目指して、5泊6日で行くようなツアー、そういったもののガイドをしています」

●へー! 初心者でも大丈夫ですか? 

「そうですね。それこそ今私たちの辰野町というところを、ゆっくりのんびり走ってもらおうということで、主にちょっと都会とかで仕事に疲れてしまった30〜40歳くらいの女性をターゲットに可愛らしいマップを作ったりとか、そういった方々が楽しめる、おいしくてお洒落で綺麗な、インスタ映えするようなコースとか、そういったコンテンツを作ったりしています」

写真提供:小口良平

●車では感じられないことが感じられますね。

「そうですね。時速15キロで走ると全然今までと違った時間軸で見えてきます。汗をかいたりとかすると頭の中もスッキリしだして、本当に、自分の人生の中で大切なものってなんだったかなーっていう風に見返りの時間になるので、是非こういった速度を変えるアクティヴティをしてもらえたらなと思っています」

●小口さんが今後、自転車で行きたいところはどこですか? 

「いろいろあるんですけれど、今実は157ヶ国のあとに1年に1ヶ国ずつ行っておりまして、死ぬまでに全ての国を行こうと思っていて、196ヶ国あるので76歳くらいになったら全ての国を走りきれると思っています。
 それとあとは南極大陸、こちらも自転車でチャレンジしてみたいなと思って、今少しずつ練習とかしているところです。今年も、新型コロナウイルスの関係はありますけれども、もし状況が芳しくなったら、モンゴルのウランバートルからロシアのイルクーツクっていうところまで800キロくらい、冬場をカットバイクっていう冬を走れる自転車で練習をしていきたいなという風に思っています」

●すごいですね! 

「そして最後にはいつか、まあ『ET』っていう映画の影響もあったんですけど、月を自転車で走ってみたいなっていうのもあります。多分30年後には叶うんじゃないかなと思っています(笑)」

●夢が広がりますね〜。では最後に自転車の魅力を一言で言うならば! 

「日常を冒険や旅に変えられる、身近な場所をそういった場所に変えられるかなっていう風に思っています!」

小口良平さん

INFORMATION


小口良平さん情報

果てまで走れ! 157カ国、自転車で地球一周 15万キロの旅

果てまで走れ! 157カ国、自転車で地球一周 15万キロの旅


 現地の人たちと触れ合いながら世界を走破。その自転車旅の全貌が綴られた感動の冒険エッセイです! ぜひ読んでください。詳しくは、河出書房新社のサイトをご覧ください。

◎河出書房新社HP:
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309417660/

 小口さんは10月17日から地元長野県上伊那郡辰野町で、世界一周したサイクリスト13人の写真と言葉の企画展を開催する予定です。詳しくは小口さんのオフィシャルブログを見てください。

◎小口さんのHP:https://ameblo.jp/gwh175r/

◎小口さんが副代表を務める
「ジャパン・アルプス・サイクリング・プロジェクト」のHP:
https://japanalpscycling.jp

オンエア・ソング 8月22日(土)

2020/8/22 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. サイクリングに行こう / 村田和人

M2. 魔法のコトバ / スピッツ

M3. WHEN I FALL IN LOVE / CELINE DION feat.CLIVE GRIFFIN

M4. THANK YOU / DIDO

M5. アオゾラペダル / 嵐

M6. サイクリング / 仲井戸 chabo 麗市

M7. いつまでも変わらぬ愛を / 織田哲郎

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

サルの社会にボスはいない!?〜ニホンザルの新常識〜

2020/8/15 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストはニホンザルの研究者、石巻専修大学・准教授の「辻 大和(つじ・やまと)」さんです。

与えるサルと食べるシカ〜つながりの生態学

 辻さんは1977年、北海道生まれ。東京大学大学院・修了後、京都大学霊長類研究所を経て、今年から石巻専修大学の准教授としてご活躍されています。辻さんは大学生の時に、上野動物園のボランティア活動で担当したニホンザルに興味を抱き、研究をスタート。石巻市の沖合にある「金華山島」に生息する野生のニホンザルを20年にわたって観察・研究し、その成果を一冊の本、『与えるサルと食べるシカ〜つながりの生態学』にまとめ、先頃出版されました。

 きょうは「ニホンザルの新常識」! 知られざる生態について辻さんにうかがいます。

☆写真提供:辻 大和

写真提供:辻 大和

実はボス猿はいない!?

※ニホンザルは、群れを率いるボスがいて、そのボスを中心にサルの社会が成り立っているとよく聞きますが、辻さん、それは本当なんですか?

「それはよく誤解されている点なんですけれども、実は野生ではボスザルっていうのはいないっていう風に今、私たちは理解しています。群れの中でケンカの強いオスっていうのは確かにいるんですけれども、ただそのケンカに強いオスっていうのが人間の社会で言うところのボスの役割、例えばケンカを仲裁したりとか、争いが起きた時に最前線で戦うとか、あるいは群れの行き先を決めるといった役割は野生状態では確認されていないんですね。それで私たちは野生のサルにはボスはいないという風に理解しています」

●そうだったんですね! サルたちって家族単位で生息しているんですか? 

「そうですね。サルのオスは大きくなると生まれた群れを出て行くんですけれども、メスっていうのは基本的に生まれた群れで生涯過ごします。ですからサルの家族っていうのはメスとその子どもたちっていうことになりますね。群れの中でお母さんと娘、あるいはお姉さんと妹っていうのはとても仲がいいですね」

●子育てをするのはメスだけってことですか? 

「そうです。ですからサルの群れにはオスはいるんですけれども、お父さんはいないっていう風になります」

●ニホンザルって何を食べているんですか? 

「サルはなんでも食べる雑食性の動物ですけれども、でもいちばん好きなのは果物とかドングリの仲間ですね。他には葉っぱですとか花とか、あとはキノコとか虫なんかも食べます」

●サルたちの行動のどんなところに注目して研究されるんですか? 

「私は専門が“食べ物“ですから、サルたちがまず何を食べているか、どこで食べているか、あと誰と食べているかっていうところに注目しています。群れの中にはやっぱり順位関係ですとか性別とかいろんな状態、ステータスがありますよね。そういう社会的な要因がそのサルたちの”食べる“っていう行動にどう影響しているのかっていうのを調べるのが、私の専門としてそういうことに注目しています」

写真提供:辻 大和

サルの役割、種子散布

※続いて「ニホンザルの新常識」その2!
野鳥は植物の実を食べて、そのタネを遠くに運んで、植物の分布を助けているという話を聞いたことがありますが、野生のニホンザルもそんな役割を担っていたりするのでしょうか。

「はい、そうですね! 自然界におけるサルの重要な役割のひとつが種を運ぶ、種子散布と言うんですけれども、そういう役割です。私はサルの行動観察と一緒にサルたちのウンチを集めて分析をしたことがあるんですけれども、サルの糞からはなんと36種類の植物の種が出てきました。サルは鳥に比べて体も大きいですし、また動き回る範囲も大きいですから、より広い範囲にいろんな植物の種をばらまいていると考えられます」

●森にとってはサルの影響っていうのはすごく大きいんですね。

「はい、私はそう考えています」

●秋口になるとサルたちが里へ降りてきて、畑の作物を荒らしちゃうっていうようなニュースもありますけれども、気候変動とかによってサルたちの環境とかには影響はでているんでしょうか? 

「その点については、はっきりしたことは申し上げられないんですけれども、ただサルたちが畑を荒らす行動っていうのが山の実りと関係があるっていうことはよく言われています。サルたちが大好きな木の実の実りには、年によって大きな違いがあるんですね。山の実りが乏しい年にサルたちが食べものを求めて畑にやって来ちゃうんです。その結果多くのサルが有害獣として駆除されてしまうっていう、そういう現象があります」

●それはどうしたら対策できるんでしょうか。

「例えばですね、山の実りはどれくらいかっていうことをモニタリングするっていうのがひとつ方法かもしれません。今年は山にドングリがあんまりないなっていうことが分かれば、今年は畑にやって来そうだぞっていうことを、あらかじめ予想して対策が打てるかもしれませんね。そしたらむやみに殺さなくても済むんじゃないかっていう風に私は思っています」

●今、辻さんがいちばん気になっていることってなんですか? 

「そうですね。1年間に2万頭を超えるサルが有害駆除されてしまっているって現象はとても心が痛いですね。実際、駆除に科学的な根拠があるわけでは必ずしもないんです。ですから山の実りをモニタリングして、サルたちが畑にやってくる時期を予測したりとか、あとはさっき種子散布の話をしましたけれども、サルたちが山の中でこんな大事な働きをしているんだよっていうことを、多くの人に知ってもらうことによって、サルたちに対するネガティブなイメージを改めていただければなという風に思っています」

辻 大和さん

サルの楽園「金華山島」

※「辻」さんの研究のメイン・フィールド「金華山島」は、いったいどんな島なんでしょうか。

「島の大きさは10平方キロメートルくらいで、そんなに大きな島ではないんですけれども、東北地方の三大霊場のひとつになっています。島の中には大きな神社がありまして、昔から信仰を集めています。ブナとかモミの林で覆われたとても美しいところです」

写真提供:辻 大和

●ニホンザルは何頭くらいいるんですか? 

「はい、現在は200〜250頭ぐらいいまして、6つの群れに分かれて暮らしています」

●その島は人は多いんですか? 

「神社の関係者と参拝客、そして私たち研究者以外には実はいません。それに昔から狩猟が禁じられていますので、サルたちはとてものんびりと暮らしています」

●人よりもサルのほうがのびのびとたくさんいるようなイメージなんですね!? 

「そうですね。サルの楽園と言ってもいいと思います!(笑)」

●それってわんぱくに育っちゃったりしないんですか? 

「金華山のサルは他の場所に比べて性格が穏やかで、顔もとても美人というか可愛いサルが多いですね」

●具体的に注目しているサルはいるんですか? 

「はい、学生時代は対象の群れの1個体ずつ、17個体いたんですけれども、それぞれマークして3カ月くらいぶっ続けでそいつらを、1日3個体ぐらいずつ決めて追っ掛けていました」

●素人からすると違いが分からないような気もするんですけども(笑)、どうやって見分けるんですか? 

「サルたちは比較的表情が豊かで、しかも個性的なんですよね。ですから他の動物に比べると、これは誰かっていうのは非常に分かりやすいと思います。私は人間の識別よりもサルの識別のほうが楽だと思います(笑)」

●本当ですか!?(笑)サルに名前を付けたりしないんですか? 

「付けていますよ。アテナちゃんとかビーとかシフとか、そういう名前はずっと代々先輩たちから受け継いだ名前を付けています!」

●辻さんも名前を付けることはあるんですか? 

「一度付けたことがあります(笑)。オトハちゃんとかネネちゃんとか付けました。今元気かなぁ」

写真提供:辻 大和

サルとシカが共生!?

写真提供:辻 大和

※ラストは「ニホンザルの驚くべき新常識」その3です。「サルの楽園」ともいえる「金華山島」には、ほかにどんな動物がいるのでしょう。そしてその動物との関係は!?

「サルの他には大型の動物としてシカが500頭くらいいます。あとはモグラですとかネズミ、そして鳥とか虫の仲間なんかもたくさんいますね」

●へ〜! じゃあ本当に動物たちの楽園ですね。この“与えるサルと食べるシカ”というタイトルですけれども、この本のタイトルにもなっているサルとシカの珍しい行動を目撃されたということですね。それはどんな行動だったんですか? 

「サルが木の上で葉っぱとか果物を食べている時に、サルたちが一部をぽろっと落とすんです。その木の下にシカがやってきて、サルが落とした葉っぱや果物を食べるという関係です。私たちはこれを“落穂拾い”と呼んでいます」

●木の上で暮らすサルと地上で暮らしているシカって、なかなか関わりがなさそうなイメージがありましたけど、関わっているんですね。

「はい、私も初め見たとき、すごくびっくりしました。無関係だと思っていたのに、実はこうやって食べ物を通じて結びついていたんだなと分かって、とてもびっくりしました」

●シカはサルの行動を分かって集まってくるってことですか? 

「私は多分シカはサルの出す音を聞きつけて、集まってくるんだと思っています。例えばサルが木に登って食べる時に枝をガサガサと揺らしたり、あるいは大きな声で鳴いたりするんですね。多分ご馳走を見つけて嬉しいのかなと思うんですけれども、シカたちはそういう音を聞きつけて集まってくるのかなと思います」

写真提供:辻 大和

●逆にサルはシカたちによって何かプラスなことはあるんですか?

「金華山では、私はサルがシカから何か利益を得ているっていうのは、まだ見たことはありません。ただ他の国ではですね、例えばこれはインドの例なんですけれども、外敵が近づいてきた時にシカが警戒音をピーって上げるんですね。それを聞いてサルたちが逃げるっていう関係も知られています」

●そういった動物たちの関係性って他の動物とかにもあるんですか? 

「そうですね。これは共生関係って言うんですけれども、例えばイソギンチャクとヤドカリのように、ヤドカリが住処を提供してあげる、イソギンチャクは食べ物のおこぼれに預かるとか、そういう関係は古くから知られています。ただ大型の動物でこういう共生関係っていうのが見つかったのは、多分私たちの研究が初めてじゃないかなと思います」

●そうだったんですね〜。もし島のサルと話ができるとしたら何を聞いてみたいですか? 

「そうですね。私が気になっているのは、木の上からサルたちが葉っぱを落とす時に、それは本当に私たちが思っているようにたまたまなのか、それともシカのことを考えて、わざと落としてあげているのかなって可能性もありますよね。それはやっぱり彼らに聞いてみたいと思っています(笑)」

●確かに!


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辻大和さん情報

与えるサルと食べるシカ〜つながりの生態学

与えるサルと食べるシカ〜つながりの生態学


「金華山島」に生息するニホンザルの、20年にもおよぶ観察・研究の集大成。山小屋に寝泊りしながら、長い時には3〜4ヶ月も観察していたそうです。そんな地道な研究がサルとシカの共生関係を明らかにしたんですね。ニホンザルに関する“新常識”が満載の本です。ぜひ読んでください。 詳しくは、地人書館のサイトをご覧ください。

◎地人書館のHP:
http://www.chijinshokan.co.jp/Books/ISBN978-4-8052-0942-4.htm

 辻さんの活動については研究室のサイトを見てください。

◎辻さんのHP:
https://hirakuogura.com/https://sites.google.com/view/animal-ecology-lab/%E6%95%99%E5%93%A1%E3%81%AE%E7%B4%B9%E4%BB%8B

オンエア・ソング 8月15日(土)

2020/8/15 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. 太陽が燃えている / THE YELLOW MONKY

M2. MONKEY MAN / AMY WINEHOUSE

M3. ADVENTURE OF A LIFETIME / COLDPLAY

M4. Monkey Magic / ゴダイゴ

M5. アイシテル / Monkey Magik

M6. UPSIDE DOWN / JACK JOHNSON

M7. 夢 / ファンキーモンキーベイビーズ

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

地球の雑学

2020/8/15 UP!

<日本の固有種はトップクラス>

 ニホンザルは日本にしかいない固有種ですが、実は日本は生き物の多様性に富んでいるので、固有種がとても多い国なんです。

 ダーウィンの進化論で知られ、世界自然遺産にも登録されているガラパゴス諸島には110種類の固有種がいるそうですが、日本はそれを上回る131種類の固有種が確認されています。全世界の哺乳類の22%、爬虫類の38%、両生類に至っては74%が日本の固有種というデータもあるんだそうです。

 固有種が多い理由としては、日本が島国であるものの、大陸と何度もくっついたり離れたりしてきたことや、6800余りの離島があること、南北に長く標高差もあり地形が複雑なこと、そして森林が多いことなどが挙げられます。

 さらに、湿地帯が水田という形で現代まで残されてきたのも大きな要因になっているようです。だから、日本と同じくらいの大きさの島国、イギリスやニュージーランドと比較しても、生物の多様性、固有種の多さともに日本が飛びぬけているそうですよ。
 この豊かな自然を「当たり前」とは思わずに、しっかり守って、未来につなげていかなければなりませんね。

発酵の奥深い世界 〜微生物が文化を創る〜

2020/8/8 UP!

  今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、発酵デザイナーの「小倉ヒラク」さんです。

 小倉さんは1983年、東京都生まれ。早稲田大学卒業。その後、東京農業大学で発酵学を学んだあと、山梨県甲州市に発酵ラボを作り、微生物の世界を探求。現在、発酵デザイナーとして、多方面で活躍されています。そして先頃、『発酵文化人類学〜微生物から見た社会のカタチ』が文庫本となって発売されました。

発酵文化人類学〜微生物から見た社会のカタチ

 きょうはそんな小倉さんに、私たちの食生活や健康を支えている発酵食品について、たっぷりお話をうかがいます。世界的にも珍しい日本の発酵食品のお話もありますよ。

☆ 写真提供:小倉ヒラク

微生物に呼ばれている!?

※それではまず、発酵デザイナーというお仕事について。どんなことをする人なんでしょうか。

「発酵デザイナーは現在、世界で名乗っているのは僕だけで、端的に言うと見えない微生物、発酵菌の働きをデザインを使って可視化するという職能であると定義しているんですね。

 元々僕はデザイナーだったんですけれど、20代の半ばくらいの時に働きすぎ遊びすぎで身体を壊しまして、たまたまその時にお味噌屋さんの末娘と発酵の先生に出会って、お前は身体が弱いから発酵食品をいっぱい食べろと、そしたらもうちょっと元気になるぞって言われて、発酵食品を食べるようになったんです。それから発酵のことがすごく面白いなと思い始めて、気がついたら発酵の仕事ばっかりやっているデザイナーになっていました。

 もうこれは微生物に呼ばれているとしか思えないから、っていうので、30歳手前くらいで東京農業大学の研究生で大学に入り直して微生物学の勉強をして、普通のデザイナーをもうやめて、微生物とか発酵文化に関わるものしかやらないぞと決めて、発酵デザイナーと名乗るようになりました」

小倉ヒラクさん

●へ〜! 『発酵文化人類学』という本も読ませていただいたんですけれども、微生物と人間ってこんなに深い関わりがあったんだっていう風にすごく驚きました!  

「そうですよね。結構奥が深いお話なんですよね。微生物と人間が相互に影響しあいながら、文化を作っていくっていうことなんですけれども」

●このタイトルの“発酵文化人類学”というのも初めて聞いたんですけれども、これはどんな学問なんでしょうか?  

「これも僕が勝手に提唱した学問なんですけれども、これは微生物の視点を通して人間の社会を見るということをやっている本なんですね。実は僕は2回大学に行っているわけですけど、1回目の大学の時に文化人類学という学問をやっていたんですね。僕はデザインの仕事だったんですけど、いろんな土地へ行って調査をするわけです、デザインを作る前に。その調査をしていると文化人類学のフィールドワーク調査が、まるで発酵をテーマにしてやっているようだなって思えてきたんですね」

●どんな調査をしていたんですか? 

「蔵(くら)がある土地の歴史をそこの長老の人とかに会って聞いたりするんですよ。だから200〜300年前はうちはこういう土地で、ここは今もうコンクリートで埋め立てられちゃっているけど河川があって、ここに船を通してどこどこで作ったお醤油を運び出して、それはどこどこのお殿様に献上されて、みたいな話とかがいっぱい出てくるんですよ。

 今見えているものと全く違うその社会の形というか、そういうものが見えてくるんですね。要は文化人類学ってテーマをなんとか族みたいな、民族でやっているんですけれども、そのなんとか族みたいな話を発酵という世界、だから人の代わりに微生物を見ることで文化人類学と同じようなことをやっているっていうことを思うようになって、それでこの本の名前になっているんですね」

写真提供:小倉ヒラク

食の美意識は気候と微生物が作る

※続いて、発酵に関するこんな興味深いお話をしてくださいました。

「日本と中国って発酵食品のバリエーションがものすごく多い国なんですけれども、それのキーポイントになっているのが麹(こうじ)っていうものなんですね。甘酒とか塩麹とかを作る元になるものなんですけど、この麹という文化が中国にも日本にもあるんですけど、中国と日本だとその麹の微生物の種類が違うんですよ」

●どう違うんですか? 

「日本だと“コウジカビ”っていう、結構もこもこになる毛足が長い、空気を大量に呼吸して甘みを結構いっぱい作ってくれるカビが麹を作るんですね。それに対して中国の麹は“クモノスカビ”っていう、毛足が長くない代わりに根っこをすごく張る、酸を結構いっぱい出す、空気があまりなくても生きていけるカビっていうのが麹を作るんですね。そのことによって同じような発酵食品を作る時でも全然、味の指向性が変わってくるわけです。

 例えばお酒、この麹ってお酒を作るのに使うんですけど、日本だと日本酒になるんですね。中国だと日本酒によく似たものだと、例えば紹興酒になるんですよ。日本酒ってやっぱり新酒が美味しいってイメージがあるじゃないですか、搾りたてとか美味しそうって思うじゃないですか。紹興酒って搾りたてはあまり美味しくないんですよ、ちょっと苦くて酸っぱくて。なので紹興酒は、大体5年とか10年とか熟成させているじゃないですか。熟成させる中で味がまろやかになって美味しくなって高級品になっていくんですね。

 一方、日本酒っていうのは、古酒が最近流行っていますけど、基本的には結構フレッシュに飲むのが美味しいとされていて、それって微生物の違いで出てくるんですね。そういうものが積み上がってくると、例えば日本の発酵食品は、実は中国ほどあまり発酵させなくて、みんな数ヶ月とか数週間とかで終わりにするわけですよ。それに対して中国って10年、30年とか発酵させてすごくどっしりしたものを、重厚なものを作り上げていくっていう、なんか食の美意識みたいなものが変わってきちゃうんですね。

 ある意味でいうと、その土地の美意識って人間が作っているっていう風に思っていたんですよ。ところが今のこの麹の話とかを突き止めていくとそうではなくて、その土地の気候と微生物が人間の美意識を形作っているとも言えるわけですね。だからもし中国に“コウジカビ”が棲んでいたらまた違っていたわけですよ」

●そうですね〜!

「日本に実は“クモノスカビ”は棲んでいるんだけど、もっと“クモノスカビ”を使いこなす技術を持っていれば、多分日本も違ったものになっていたんですよね」

不思議なお漬物“すんき”!

※続いて、世界でも珍しい、日本の発酵食品を紹介してくださいました。

不思議なお漬物「すんき」
不思議なお漬物「すんき」


「長野県木曽町っていう、御嶽山の麓の町があるんですけど、山の関所町なんですが、そこに“すんき”っていうちょっと不思議なお漬物があるんですよ。そのお漬物は塩を一切使わないお漬物なんですね。世界でも結構珍しいお漬物で、カブの葉っぱにお湯をくぐらせて、冬になるギリギリ手前の時にちょっと室温でカブの葉っぱを発酵させておくと、その土地にしかいない特殊な乳酸菌が発酵して、それでちょっと不思議な旨みのあるお漬物ができるんです。塩が入っていないから全然しょっぱくなくて、酸っぱいだけっていう、酸っぱうまいみたいなものができてくるんですね。

 やっぱり塩を入れると雑菌汚染が起こらなくなって、発酵菌だけ呼び込めるので、塩を入れたほうがいいわけですよ。ところがその木曽という町は、山の関所町でどんな海からも遠いんですよ。新潟も遠いし北陸も遠いし静岡ももちろん遠いしっていう状況なので、塩がないんです。塩を持ってこられない、だから如何に塩を使わずに食べ物を保存するかってことをみんな考えるわけですよ。その結果、他の土地にはないような不思議なお漬物ができてくるんですね。

 このお漬物、僕の農大の先生の一人が研究したんですけど、何故かこのカブの葉っぱを発酵させるとカブの葉っぱの中からコハク酸っていう、シジミとか魚介類の旨みが菌によって生成されるらしいんですね。だからみんなこの“すんき”をどういう風に使うかっていうと、お味噌汁とか蕎麦とかに入れて、ちょっと出汁みたいにして使うんですよ。だから魚介類が手に入らない土地なのに魚介類の旨みを、何故か微生物の力を使って作り出してしまうっていう不思議なことをするわけですよ。こういうことも海の近くだったらする必要ないんですよね」

●微生物のパワーってすごいですね!

「そう、それで不思議な微生物がいるっていうことと、この木曽の土地の特性っていうものが合わさった時に他の土地にはないような、木曽のすごく不思議な食文化っていうのが生まれてくるわけなんですよね」

古代エジプト、ビールが給料代わり!?

※私も毎日、お味噌汁をいただいているんですが、発酵食品は私たち日本人には欠かせないものですよね。

「定番の食卓を見てみるとお分かりになると思うんですけど、納豆かけご飯にお味噌汁を食べるじゃないですか、ご飯はさすがに発酵していないけれども、ご飯にかける納豆は大豆に納豆菌っていうバクテリアを付けて発酵させているんですね。納豆にかけるお醤油は大豆と麦を塩水と混ぜて、乳酸菌とか麹菌とかで発酵させた液体調味料なんですよ。お味噌汁のお味噌はやっぱり大豆と米とかを混ぜて発酵させた固体の調味料で、出汁を取る時に鰹節とか入れるじゃないですか、鰹節は鰹の身をカビで発酵させて硬くカチンコチンにしたものなんですよね。だからどんだけ発酵しているものを入れているんだということになるわけですよ(笑)」

●そうですよねー! 私、ビールも大好きなのでビール酵母とかもまたそういったものですよね。

「そうですね。ビールも非常に古い発酵食品で、古代エジプトの時代の、もっとさらに昔のシュメール文明でも、もうすでに作られていることが記録されているんですね。これは元々は備蓄していた麦が例えば、ナイル川の氾濫で水浸しになった時に麦が発芽して、それが甘い麦汁を作る感じになるわけですよ。その甘い麦汁を発酵させていくとビールになるっていう、これも結構原始的なものですね。で、すごく面白いのが、これも古すぎて本当にそうかっていうのが諸説あるんですけど、公共事業に使われていたんですね」

●公共事業? 

「はい、ピラミッドとかを作る時に給料になっていたわけですよ。だからお前はきょうこれくらい働いたからビール何リッターな、みたいな給料代わりで使われていて、古代エジプトの壁画にはビールを調子に乗って飲みすぎて酔っ払って、それを他の人が担ぎ上げているっていうような壁画が残っているんですね」

●へー! そうなんですね!

アジアとヨーロッパ、発酵文化の違い

※小倉さんは去年、ヨーロッパを回って、日本の発酵文化を伝える講演を行ないました。どんなお話をされたのでしょうか。

「実は発酵と言ってもヨーロッパとアジアでかなり世界観が違いまして、ヨーロッパの発酵ってワインとかパンとかになるんですけど、あとヨーグルトとか。でも日本で発酵っていうとお味噌とかお醤油とか、日本酒とかになるでしょ、発酵する原理が結構違うんですよ。

 ヨーロッパの発酵って結構、単体の微生物で成り立っているというか、あんまり関与する微生物が多くないんですね。ヨーグルトだと乳酸菌、パンだと酵母、ビールもそうですね。ワインも酵母なんですけど、それに対して日本って例えば日本酒には乳酸菌、酵母、麹、あと硝酸還元菌とか結構いろいろいるんだけど、何種類もの菌が関わってできていくわけです。
 お味噌も一緒でやっぱり麹菌、乳酸菌、酵母みたいな、しかも複数種類の酵母、複数種類の乳酸菌とか、アジアってなんかいっぱい菌が関わってできているんですね。

 だから一神教と八百万の神みたいな違いがあって、そこの原理の違いみたいなものを結構話したりしたら、すごく面白いって言ってもらえて。で、その中でもいちばんキーポイントになるのがコウジカビっていうカビなんですね。

 僕は大学ではカビのことを勉強していたんですけれども、まさにヨーロッパにない、アジアですごくファクターになっているのが、発酵のスターターになる発酵カビの存在なんです。ヨーロッパにも一応カビを使う発酵食品はあるんですけど、チーズとか、ただスターターではなくてどっちかって言うと、またちょっと違う、あとのほうの行程で出てくるやつなんですね。

 アジアの場合は、発酵のいちばん最初のスターターになることが非常に多いんです。アジアって湿潤、暖かくて湿っているのでカビが多くなるんですよ。このカビって発酵の最初にくっ付くと、いろんな食べ物をいろんな形に分解するんですね。分解する力がすごく強いんです。それでいろんな形に分解すると、カビが分解したものにまた別の菌がくっ付いてくるんですね。だから発酵がすごく複雑になるんです。

 なのでアジアの発酵ってカビが介在することによって、ものすごく複雑性を帯びるわけですよ。それでお味噌!みたいな、紹興酒!みたいな原料は、シンプルなんだけど複雑な味わいのものが出て、独特な旨みみたいなものが出てくるっていう。そこのキーポイントになっているのは、このカビの存在だよ、みたいな話を(講演では)結構したりしていましたね」


INFORMATION


小倉ヒラクさん情報

発酵文化人類学〜微生物から見た社会のカタチ

発酵文化人類学〜微生物から見た社会のカタチ


 同書は先頃、文庫本となって発売されました。発酵の奥深い世界、微生物の働き等々、発酵と文化人類学を結びつけた興味深い本です。ぜひ読んでください。角川文庫の一冊として絶賛発売中です。詳しくは角川書店のサイトをご覧ください。

◎角川書店のHP:
https://www.kadokawa.co.jp/product/321912000315/

発酵する日本

写真集『発酵する日本』


 小倉さんが47都道府県の知られざる発酵文化を訪ねた旅が写真集となって発売されています。 青山ブックセンターのみの限定販売。詳しくは青山ブックセンターのサイトをご覧ください。

◎青山ブックセンターのHP:
https://aoyamabc.stores.jp/items/5e97c40634ef01783a3bdd1b

写真提供:小倉ヒラク

 今年、小倉さんは下北沢に「発酵デパートメント」というお店をオープンさせました。
 “世界の発酵、みんな集まれ”を合言葉に、小倉さんが集めた多種多様な発酵食品を販売しているそうですよ。

写真提供:小倉ヒラク

 また、毎月定額で発酵調味料を届けるECサイト「発酵サブスク」も運営されています。詳しくは小倉さんのオフィシャルサイトをご覧ください。

◎小倉ヒラクさんのHP:https://hirakuogura.com/

オンエア・ソング 8月8日(土)

2020/8/8 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. 気分爽快 / 森高千里

M2. DO YOU REALLY WANT TO HURT ME / CULTURE CLUB

M3. SEPARATE WAYS / FEYE WONG

M4. BLAME IT ON THE SUMMER / BASIA

M5. Cheese “PIZZA” / JUDY AND MARY

M6. マリーゴールド / あいみょん

M7. 希望の轍 / サザンオールスターズ

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

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