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雲にときめき、空に癒され 〜気象予報士の雲図鑑〜

2020/8/29 UP!

 

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、気象予報士の「菊池真以(きくち・まい)」さんです。

 菊池さんは茨城県竜ヶ崎市出身。慶應大学在学中に民間の気象会社でお天気キャスターを務め、気象予報士の資格を取得。その後、NHKの気象キャスターとして活躍。現在はお天気関連の本の執筆、講演活動のほか、自分で撮影した空や雲の写真展を開催するなど、幅広い活動をされています。先頃出された新しい本『ときめく雲図鑑』は掲載写真のほとんどが菊池さんが撮影した写真なんです。

 そんな気象予報士・菊池さんにきょうは雲のことをいろいろ教えていただきます。

☆写真協力:菊池真以、山と渓谷社

菊池真以さん

雲の名前に法則!?

※まずは雲の名前について。たくさん名前があると思っていたんですが、雲は10種類に分類されるそうですね。

「そうなんです。空に浮かんでいる雲って、よく何種類あると思う?って聞くとみんな、無限にあるんじゃないの?っていう風に言う方が多いんですけども、基本的にはほとんどの雲は10種類に分けることができるんですね。それで大きく10種類に分類された中から、さらに細分化されて何種類もあるっていうことになるんです」

●どうやって分けられているんですか? 

「雲が浮かんでいる高さ、あとは形、それによって10種類に分けられています。正式名称で言うと巻雲とか巻積雲とかちょっと難しい言葉に聞こえるかもしれないんですけども」

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

●名前に使われる漢字によっても、雲の高さとか形を知ることができるという風に本に書かれていましたけれども。

「そうなんです。さっきいちばん初めにお伝えした正式名称のほうですね。例えば巻雲とか巻積雲、巻層雲、高積雲、乱層雲とか、そういった漢字が並んでいるのが正式名称のほうなんですけども、それに付いている漢字を見ると雲の形とか高さが分かるようになっているんですね。

 小学生とか、覚えなきゃいけないな〜って学生さんにちょっとアドバイスをお伝えしますと、”乱”っていう漢字が付くと雨を降らせる雲なんですね。例えば積乱雲、積乱雲はご存知ですよね? 積乱雲にも乱が付いていて、それも雨を降らせる雲で、他には乱層雲。乱が付くので雨を降らせる雲だなっていう風に分かるんですよね。
 他には”積”、積み重ねるの“積”っていう漢字なんですけども、それが積雲、俗称で言うとわた雲、丸い雲ですね。その雲ってどんどんと積み重なるようにして大きくなっていくので、積っていう漢字が付きます」

●積乱雲もそうですよね? 

「積乱雲も積ですし、積雲も積、ちょっと漢字で難しい話になりましたね(笑)」

●いろいろ法則があるんですね〜。

「そうなんです! 最初に10種類全部覚えてくださいって理科の授業とかであるとすると、最初は漢字が並んでいて難しいなって思うと思うんですよ。なのでその時は漢字を見て少し法則を考えると分かりやすいかと思います。 あとは昔から呼ばれてきた俗称のほう、すじ雲とかうろこ雲とか、そういった俗称で覚えるのも1つの手かなという風に思います!」

<基本の雲10種類のまとめ>

 さて、気象予報士の菊池真以さんに教えていただいた、高さや形から10種類に分類される雲をまとめると・・・大きく分けると、空の高いところにある順に「上層雲(じょうそううん)」、「中層雲(ちゅうそううん)」、「下層雲(かそううん)」の3つになります。

 地上5000メートル以上の最も高いところにできる上層雲に分類されるのは、「すじ雲」とも呼ばれる巻雲(けんうん)と、「いわし雲・うろこ雲」などの巻積雲(けんせきうん)、そして空一面に薄く広がる巻層雲(けんそううん)です。

 続いて、高度2000メートルから7000メートルあたりに広がる中層雲には、「ひつじ雲」と呼ばれる高積雲(こうせきうん)と、空全体が灰色っぽくなる高層雲(こうそううん)があります。

 一番低い高度2000メートル以下のところにできるのは層雲(そううん)、別名「きり雲」と、丸みのあるかたまり状の層積雲(そうせきうん)、そして「雨雲・雪雲」でおなじみの乱層雲(らんそううん)です。

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

 ここまで挙げた雲は8つ、いずれも水平に広がるタイプです。残りの2つは「対流雲(たいりゅううん)」という、もくもくとした厚みのある雲になります。「わた雲」で知られる積雲(せきうん)と「入道雲」でおなじみ積乱雲(せきらんうん)で、上へ上へと成長し、地上2000メートルから1万メートルの高さまで発達するものもあるんです。積乱雲を見るとザ・夏!という感じがしますが、冬に日本海側に大雪を降らせるのも積乱雲のしわざなんだそうです。

 これからの季節は、すじ雲やいわし雲、つまり地上5000メートル以上の最も高いところにできる雲がよく見られるようになります。ぜひ菊池さんの本『ときめく雲図鑑』を参考に、観察されてみてはいかがでしょうか。

ときめく雲図鑑

雲の基礎知識

※続いて、雲の定義について教えていただきました。

「雲って地面から少しでも離れていたら雲なんです!」

●え!? そうなんですか? 

「霧と雲の違いってご存知ですか? 」

●教えてください! 

「霧と雲の違いは地面から少しでも離れているかどうか」

●空に浮かんでいるとかそういったものは関係ないんですか? 

「地面から少しでも離れていたら雲です。例えば霧が出ているとするじゃないですか、で、霧が地面にくっ付いていたら霧です。それが少しでも離れたら雲になります。層雲っていう、きり雲って言ったりもするんですけども」

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

●逆に高い雲はどれくらいの高さになるんですか? 

「飛行機に乗るとよく窓から雲をご覧になることがあると思うんですけども、飛行機が飛ぶ高さ、それぐらいがいちばん高い雲、もう少し高いところかな? 飛行機が飛ぶ高さか、もう少し高いところが雲ができる限界です。

 大体地上から13キロメートルくらい、季節によって雲ができる限界の高さは変わってくるんですけど。雲は、例外もあるんですけども、ほとんどが地上からおよそ13キロメートルのところ、対流圏って言うんですけど、そこの間でできるんですよ。

 13キロメートルくらいがてっぺんの部分で、よく入道雲をご覧になること多いと思うんですけど、よく見ると、てっぺんが平らになっているのって見たことありませんか? “かなとこ雲”って言ったりするんですけど、入道曇ってどんどん大きくなっていきますよね。大きくなっていって限界にきたってところで、もうそれ以上上にいけないから、今度は横に広がるしかなくなるんですね。

 なので上だけ横に広がって、“かなとこ”っていう昔よく大工さんが使ったものがあるそうなんです。加工する時の金属が“かなとこ”って言うそうなんですけど、その形に似ていることから、“かなとこ雲”って言うんです。なので入道雲のてっぺんが平らになっているのを見たら、あそこが雲ができる限界だ!っていう風に分かるんですよ」

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

●すぐに消えてしまう雲と、雨を降らす雲の違いっていうのは、どういったところにあるんですか? 

「雨を降らせる雲って黒っぽくないですか? 怪しげな色をしていますよね(笑)。黒い雲ですよね。それって雲に厚みがあるからなんです。空を見ている時に雲が白く見えるのって、太陽の光が当たって、それで白く私たちに見えているんですけども、雲がどんどん厚くなってくると底のほうまで光が届かないんですよ。なので下から見ると黒っぽく見えるんです!」

●そういうことなんですね! 

「はい。それで厚みのある雲っていうのは、いっぱい水分を蓄えているわけですから、そこから雨が降ることが多いってことなんですね」

●なるほど〜。改めて、雲の発生のメカニズムっていうとどうなっているんですか?(笑)

「簡単に言いますと蒸発した地上の水が・・・空って冷たいじゃないですか、山とか登ると上のほうって寒いですよね。蒸発した地上の水が空で冷やされることによって、小さな雲つぶとしてまた現れるわけですね。その小さな雲つぶがいっぱい集まって雲になっているわけなんです」

ときめき、癒され

菊池真以さん

※雲を撮影するときのアドバイスをいただきました。

「今回、図鑑なので雲だけが写っている写真っていうのも多いと思うんですけど、是非周りの景色とも一緒に撮っていただくと、その時の気持ちとかその時の雲の出ていた状況とか、そういったものも分かりやすくなるので、風景も入れてみるといいかなっていう風に思いました。
 その時に水平線、地平線とかをまっすぐにするといいと思います! ちょっと曲がっているとやっぱり見栄えはよくないので、まっすぐにするとちょっと上手くみえるかなっていう風に思います」

●分かりました、やってみます! 

「はい!」

●いつも雲の写真を撮りながら、ときめいてらっしゃるんですか? 

「基本的には、なんかここが可愛いなとか、ここが綺麗だなっていう風に思って。多分写真を撮る時ってそうじゃないですか?」

●そうですね!

「人を撮るにしても景色を撮るにしても、多分ここが綺麗だなって思ったらシャッターを切ることが多いと思うんですけども、基本的には雲でここが可愛いなとか綺麗だなって時に写真を撮っています。それがときめきかなっていう風に思っているんですが。

 雲の名前っていうのも、やっぱり形とかその雲の特徴、可愛らしい部分とか綺麗な部分とか、特徴から名前が付いているものも結構多くって、例えば二重雲とかあるんですけども、それって本当に二重に重なり合う雲のことを言っているんですね。重なっていると綺麗だなって。他にも肋骨のような雲のことを肋骨雲って言ったりもするんですよ」

●面白いネーミングですね! 

「そうなんです。なので写真を撮る時、その雲がいいなってときめく瞬間と、その名前の付け方がたとえたものに似ているな〜と思う瞬間があるんです」

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

●空に浮かぶ雲を見ているだけでもすごく癒されますよね。

「私はもうすごく癒されて(笑)、本当に家事の合間とかでも空を見て癒されております!」

●ゲストの方もいちばん身近な自然が空だっておっしゃっていた方もいたんですけれども、本当にその通りですよね。誰もが見上げれば見ることができるというか。

「家からでも窓があれば見ることができるので、空はいつでも楽しめるのかなっていう風に思っています。私がいちばん好きなのはやっぱり夕方の時間の雲でして、時間によって結構雲の色とか表情が変わってくるので夕方の空はお勧めです」

写真協力:菊池真以、山と渓谷社

空の変化を見逃さない

※気象衛星やコンピューターの発達によって、気象予報の精度は格段にあがりましたよね。でも、局地的で急激な変化にはなかなか追いつかないようにも思うんですが、自分や家族を守るために、何か心がけておきたいことはありますか?

「よくお伝えしているのが2つありまして、1つは自分は大丈夫だと思わないこと。どこが危険かとかどんなことが起きるのかっていうのを、想像する力っていうのがすごく大事だなっていう風に思っています。
 よく災害が起きてしまったりすると、まさか!っていう風に思うじゃないですか。なのでそのまさかが減っていくといいなっていう風に私は思っています。それを減らすためには大雨が来そうだとか、大雨が来たらここにはどんな危険があるのかなとか、そういったことを想像できる力っていうのは大切になってくるかなって思っています。

 もう1つはやっぱり空の変化を見逃さないことだと思いますね。昔は空とか雲の様子を見て危ないって感じることが多かったっていう風によく聞くんですけども、今は天気予報が便利に、どこでもスマートフォン1台あれば見られるので、本当に便利になったのはいいことですけど。
 その反面、極端な自然現象に対して少し察知するのが難しくなってきているのかなっていうことは感じていますね。なので”ときめく雲図鑑”では雲を楽しんでもらいたいと思って作っているんですけども、一方で空からのメッセージに対して、日頃からアンテナを広げていただけるきっかけになったらいいなと思っています」


INFORMATION


菊池真以さん情報

ときめく雲図鑑

ときめく雲図鑑


 菊池さんが専門的な言葉をなるべく使わないように心がけて書いた本です。とにかく写真が素敵で、食べ物にたとえた表現なども面白く、ほかにも雲を楽しむための情報が満載!
山と渓谷社から絶賛発売中です。詳しくは、以下のサイトをご覧ください。

◎山と渓谷社HP:
https://www.yamakei.co.jp/products/2820202460.html

 菊池さんの活動についてはオフィシャルサイトを見てくださいね。

◎菊池真以さんのHP:https://www.maisorairo.com

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