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恐竜少女、夢の古生物学者に!

2020/9/5 UP!

 

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、恐竜博士に憧れて古生物学者になった国立科学博物館の研究員「木村由莉(きむら・ゆり)」さんです

 木村さんは長崎県佐世保生まれ、神奈川県育ち。早稲田大学卒業後、2006年にアメリカに留学し、博士号を取得。その後、スミソニアン国立自然史博物館の研究員を経て、2015年から国立科学博物館・地学研究部の研究員。専門は陸上の哺乳類化石、特にネズミやリスなどの、齧歯類(げっしるい)の進化と生態を研究していらっしゃいます。そして先頃、『もがいて、もがいて、古生物学者〜みんなが恐竜博士になれるわけじゃないから』という本を出されました。

 きょうは古生物学や化石の発掘、そして大好きな恐竜への思いなどうかがいます。

☆写真協力:木村由莉

木村由莉さん

骨の研究のため、アメリカへ!

※木村さんのご専門、古生物学とはどんな学問なんでしょう?

「古生物学、漢字で書くと古い生物学ですよね。絶滅して化石になってしまった生物について、その生物が一体どんな姿をしていたのかとか、見た目ですね。あと何を食べていたのかを知る学問になるんですけれども、今生きている生物と絶滅した生物は全然、無関係ではなくて、必ず進化の道筋で繋がっているんです。

 古生物学っていうのは何か地面から見つけたものをなんだろう? っていう、それだけではなくて、生物の進化について研究するために、絶滅した生物を研究材料にしているっていうような感じになります。
 どうしても恐竜の骨とかが一般的なイメージになるんですけれども、例えばその生物が付けた足跡とか、あとは住処、それに排泄物も実は研究対象になるんです」

●そうなんですね〜。古生物の研究が進んでいる国っていうと、どちらになるんですか? 

「地面から見つかっている、偶然出てくるものを対象にするので、保存状態の良い化石が産出する国じゃないといけないんですよ。日本っていうのはなかなか大きな化石を見つけるのはすごく大変です。どうしてもやっぱり土地自体が広くて、あんまり人が住んでいないようなところが、化石を見つけるのにちょうどいいんで、アメリカやカナダ、最近では中国辺りがやっぱり古生物の研究、良い標本があるっていう意味では進んでいる国なのかなって思っています。

 中国なんて羽毛恐竜なんていうのも見つかっているんですね。それに対して日本はどうかというと化石自体はそんなに見つからないんですけども、その分クリエイティビティの高い研究がたくさんされているので、論文を読んでみると、日本人の著者の論文は実はすごく面白かったりもするんです」

●へー! では木村さんも海外で学ばれたということですよね?  

「そうなんです。大学は東京の大学に行っているんですけども、大学院の時に、そのまま進学したんです。でも、やっぱり骨の研究したいな〜って思った時に、当時はまだ骨化石を専門にする先生が(日本の)大学にほとんどいらっしゃらなかったっていうのもあって、アメリカに行ってみようということで、テキサス州の大学院で、修士課程、博士課程を学びました」

木村由莉さん

<恐竜化石の宝庫>

 さて、木村さんのお話にもあった通り、恐竜の化石はカナダ、アメリカ、中国で多く発掘されています。
 カナダで世界屈指の化石発掘地として知られるのがアルバータ州のカナディアン・バッドランドで、氷河の浸食による荒涼とした大地から恐竜や古代生物の化石が数多く発見されています。
 また、ユネスコの世界遺産にも登録された州立恐竜公園があり、白亜紀の化石が世界で最も見つかる場所として今も発掘作業が行なわれています。

 アメリカでは様々な州で恐竜の化石が発見されていますが、特に有名なのがモンタナ州で、州内各地で恐竜たちの痕跡が見つかっています。マコシカ州立公園内やその周辺では10種類もの恐竜が発見され、トリケラトプス・ホリドゥスの完全な頭の骨や、非常に珍しいテスケロサウルス類のほぼ完全に近い形の化石も見つかりました。州内にはこれらを展示している施設もたくさんあります。

 そして、中国で世界有数の恐竜化石の産地となっているのが、モンゴルにかけて広がるゴビ砂漠。1922年から30年にかけてアメリカの調査隊が数々の化石を発見し、保存状態の良いものが多数見つかったことで知れ渡りました。日本の大学の調査隊も2016年に1メートルを超える足跡の化石を発見したそうです。

写真協力:木村由莉

 一方で日本でも恐竜の化石は発見されています。まずは福井県。勝山(かつやま)市で恐竜の化石が多数発掘され、「恐竜王国」とも呼ばれています。また、北海道も恐竜やアンモナイトなどの化石の宝庫として知られ、展示施設も多数あります。

大恐竜博とジュラシック・パーク

※ところで、古生物学者になろうと思ったのはいつ頃だったのでしょうか。

「結構ずーっと子供の頃から恐竜のことを好きだったんですけども、すごくよく覚えているのが6〜7歳の時に行った恐竜展なんですよ。幕張であった『大恐竜博』っていう展示なんですけども、その時日本にいながらカナダの化石がいっぱいやってきて。
 すごく大きな会場で、ある人はクリーニングしていたり、あとは復元された恐竜がドーンと展示されていたりで、もうワクワクがいっぱいの場所だったんですね。その時にやっぱり恐竜好きだな〜って小さいながらに思ったんですよ。

 で、もうひとつの転換期が、小学校高学年になってから上映された初代の『ジュラシックパーク』です。これで古生物学、むしろ恐竜がお仕事になるんだっていう風にわかったんですよね。古生物学者っていう人たちがいて、恐竜を対象にお仕事をしている、これを自分でもやってみたいなっていうのが、古生物学者になろうと思ったきっかけになります。

 (『ジュラシック・パーク』で)すごく印象的なのが、今もすぐに思い出せるシーンなんですけども、トリケラトプスが毒の草を飲んでちょっと弱っているような状態で、女性の古植物学者さんがそのトリケラトプスに近づいて、もしかしたら毒を飲んだのかもしれないって言って、排泄物に手を入れて一体何が問題だったのかを探ろうとするようなシーンがあるんですよ。それがすっごい衝撃的で、その時に初めて、今までは化石っていうのは石に閉じ込められてしまった動物みたいなイメージもあったんですけども、実際、恐竜はこういう風に地球上に生きていた動物なんだなっていう風に、すごく気付くようなきっかけになりました」

●余談なんですけれども、テレビの科学番組で再現される恐竜が大きく変わってきたということで話題になったりします。そのひとつが体毛や体の色ということなんですけども、昔は爬虫類のような皮膚で再現されていたものが、今はどんどん変わってきているということで、その辺り木村さんはどのように感じられていますか? 

「鳥に近いグループですよね。昔は鱗で表現されていたのが、羽毛恐竜っていうのが実際に見つかって、だんだん復元図でも羽毛が足された姿が出てきましたよね。昔はまさに羽毛こそが鳥の印だったんですけども、実際は恐竜の段階から羽毛っていうものが生えていたっていうことが分かったっていうので、ここ10年は特にすごくて羽毛の色っていうのも分かってくるようになりました。

 それは化石化したメラノソームっていうものなんですけども、色素を作っているようなところ、それの形態を見ることによって大体こんな色っていうのが特定できるんですね。それによっていくつかの恐竜に関してはトサカの部分は赤くて体の部分が黒、ちょっと白が混じっているだとか、そういう風に本当の、石に閉ざされた生物じゃなくて、昔、地球上にいた生物として復元が鮮やかになってきています。そういうのはすごく嬉しいです」

もうひとつの明るい道

※恐竜が大好きだった少女がどうやって古生物学者になったのか、そこには古生物学の第一人者「冨田幸光(とみだ・ゆきみつ)」先生との運命的な出会いがあったからなんです。

 木村さんが高校一年生のときに、国立科学博物館で開催された、南半球・ゴンドワナ大陸の化石を展示した恐竜展を見学。その恐竜展を監修したのが冨田先生だったんです。木村さんは古生物学者になりたい一心で、その熱い思いを何枚もの便箋にしたため、冨田先生に送ります。そして、分厚い封筒を受け取った先生からなんと返事が来たんです。

 実は当時、先生はアメリカで開催される学会を前に多忙を極めていて、何通も来る相談の手紙を読むような時間はなかったそうです。ところが! 気分転換のつもりで、たまたま木村さんの手紙を開き、そして興味を持った先生は、学会が終わったら、研究室で話を聞く約束をしてくれたんです。

 冨田先生と出会ったことで、木村さんは一気に古生物学者への道を進んでいったことは言うまでもありませんよね。冨田幸光先生との出会いについては、木村さんの本『もがいて、もがいて、古生物学者〜みんな恐竜博士になれるわけじゃないから』に詳しく載っています。

もがいて、もがいて、古生物学者〜みんなが恐竜博士になれるわけじゃないから

 現在木村さんの専門は恐竜ではなく、ネズミやリスなどの齧歯類。なぜ哺乳類化石の研究者になったのか、そのいきさつについてお話しいただきました。

「冨田先生はゴンドワナの恐竜展を監修していたんですけども、その頃の専門はウサギの化石がメインだったんですよね。私は大学に入ってから富田先生の研究室にちょこちょこ出入りするようになるんですが、先生の部屋っていうのは小さな哺乳類の化石だとか、あとは今生きている動物の、骨になった姿とかがたくさん置いてあるんですよ。

 空き時間に先生の部屋でそういう動物たちのスケッチとかしていると、スケッチがだんだん溜まっていって愛着が湧いて、大学生の低学年の頃には結構、齧歯類も可愛いなと、ウサギも可愛いなと思うようになったんですよ。骨を見て可愛いなと思っているんで、ちょっと気持ち悪いかもしれないんですけど(笑)、骨を見て可愛いなと思っていたりするんですね。

写真協力:木村由莉

 一方で大学に入って、恐竜の研究をしたいって言っている別の学生にも出会うわけですよね。その時に自分が恐竜を研究したいっていう広い枠組みで思っていることに対して、その時に出会った今の友人たちは、こういう研究をしたいっていうテーマがすごく特定されていたんですよ。

 大学生の段階でそのくらい違うっていうことを考えた時に、もしかしたら恐竜っていうのは古生物っていう入り口なだけであって、本当に恐竜を研究したいっていうのとちょっと違うかもしれない、もしくは恐竜(専門)で進んでいったら、きっと友人たちは学者さんになるけど、自分は学者さんにはなれないかなとか、そういうことを思っていたんですね。

 また一方でフィールドワークって言って、野外に化石を探しに行くっていう調査に参加するようになるんですけれども、その調査ですごく身に染みたのは、自分は身体も小さいので周りの人に比べて背負えるリュックの重さっていうのが断然軽いんですよ。そうなると大きな恐竜の化石を見つけた時にそんな非力な人をなかなか連れて行かないんじゃないかなって。

 もし私が先生で誰か学生さんと恐竜発掘に行くみたいになった時に、恐竜が実際に見つかりました、川で見つけてそれを例えば道路まで運びますってなった時に、やっぱり力のある人を連れて行くんじゃないかなと思った時に、自分はもしかしたら恐竜をやっていると選ばれないかもしれないなっていう風に思ったんです。

 それがちょっとした挫折のポイントだったんですけど、その時にいろいろやっていたひとつとして小っちゃな齧歯類化石、小っちゃいから運べるじゃん! っていう(笑)、これだったらできるじゃん! みたいな感じで結構明るい道として私には映ったんですよ。恐竜でもしかしたらできないかもしれないな、研究者にはなれないかもしれないなって思った時に、齧歯類の化石がすごい明るい道に見えて、これで行けるところまで行ってみたいっていうのが、私が今、齧歯類の化石で研究者になっている経緯になります」

写真協力:木村由莉
写真協力:木村由莉

夢の捉え方

※木村さんの専門、ネズミなどの哺乳類は小さいので、その化石を見つけるのは大変じゃないですか?

「本当にその通りで、実際には死んでしまって有機物の部分がバラバラになった時に、骨自体が一個一個バラバラになってしまうんですね。それでも大きな動物の場合は重量があるから、ある程度まとまって留まってくれるのに対して、小さい骨の場合は本当にバラバラに崩れて壊れてしまって、川に流されたりして崩れてしまうんですよ。

  そういう意味で小さい動物の化石そのものを探すのは実はすごく大変なんですけども、小さい動物の場合たくさん子供を産むし、それに1匹の個体の生きている年齢もそんなに長くないですよね。地質年代的にはすごくたくさんのネズミが存在していることになるので、確率論的にはネズミの化石もバラバラに崩れながらも実はたくさん見つかるんです」

写真協力:木村由莉

●なるほど〜! 

「骨はやっぱり壊れやすいんですけども、歯はすごく硬い物質、アパタイトって硬い鉱物でできているので、砂粒みたいな状態で残ってくれるんですよ。
 フィールドワークに行くと、みんながコンコンって化石発掘したり、ブラシで表面を拭ったりして骨を出して、ジュラシックパークみたいな状態で化石発掘している人たちの横で、私はどんなことをしているかっていうと、堆積物を土嚢の中に入れてたくさん取ってきて、それをふるいの上で洗うんですよ。

 ふるいの上には少し粗いものが残って、下からは泥が出てくっていう風になるんです。砂つぶと、もしあったら歯の化石とか骨の化石がふるいの上に残るので、そのふるいの上に残った残渣物を集めて、それを顕微鏡でゆっくり見ていって化石を探していく、そんな感じで、実は小型の哺乳類の化石はたくさん見つかるんです」

写真協力:木村由莉
写真協力:木村由莉

●研究している上でいちばん嬉しい瞬間ってどんな時ですか? 

「日本から出ないと思われていた化石が出てきたっていう報道ってありますよね、新聞の報道に。そういう風に通説を覆すような発見に繋がりそうって分かった時に嬉しいな〜っていう風に思います」

●小さい頃からそういった化石とかがお好きだったわけですからね! 

「そうですね!」

●子どもの頃から考えたら夢のような日々ですよね〜! 

「本当にそうだと思います、自分でもびっくりするくらい。恐竜っていう部分に関しては、いつも少し夢が叶って少し夢が叶わなかったな〜なんて思うんですよ。
 私は東京近辺に住んでいたので国立科学博物館によく通っていて、なんとなくイメージとしてこんなところで働きたいなっていう風に小っちゃい頃は思っていたので、そこで今働けているって意味ではひとつ夢が叶っているんです。

 ただ恐竜の博士になりたいっていうのも、ものすごく大きな夢だったので、それが恐竜から体のサイズをぐーっと小さくした齧歯類の研究をしているってことで、ひとつ夢が叶わなかったっていうのはあるんですけど、その夢も夢の捉え方なのかなって思っていて。もし恐竜をやっていたら学者になれなかったかもしれないっていう、道が先にあるんだったら、自分はすごい研究者になってみたいと思っていたので、齧歯類の化石をこれから自分で有名にしていくぞ!っていう気持ちで研究ができる、こっちのほうが今は好きかなって思っています」


INFORMATION


木村由莉さん情報

もがいて、もがいて、古生物学者!!〜みんなが恐竜博士になれるわけじゃないから


もがいて、もがいて、古生物学者!!〜みんなが恐竜博士になれるわけじゃないから

 タイトル通り、恐竜博士になることを夢見た少女が、もがいて、もがいて小さな哺乳類化石の研究者になるまでを綴った自伝的エッセイ。応援したくなる感動の一冊! 古生物学者を目指す子供たちへの進路アドバイスも載っています。ぜひ読んでください。ブックマン社から絶賛発売中です。

◎ブックマン社HP:
https://bookman.co.jp/book/b524508.html

 木村さんの研究や活動については国立科学博物館のオフィシャル・サイトを見てください。

◎木村由莉さんのHP:
https://www.kahaku.go.jp/research/researcher/researcher.php?d=ykimura

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