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生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで幅広く取り上げご紹介しています。

Every Sun. 20:00~

夜は昆虫写真家!?〜ノコギリクワガタとウルトラマン〜

2020/9/26 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、昆虫写真家の「森上信夫(もりうえ・のぶお)」さんです。

 森上さんは1962年、埼玉県生まれ。子供の頃、おじいさまの影響で、虫取りなどの遊びを通して昆虫が大好きになった、まさに昆虫少年。そして立教大学在学中に撮影の技術を身につけ、現在は、昆虫写真家とサラリーマンを兼業、忙しい日々を過ごしていらっしゃいます。そんな森上さんが先頃、新刊『オオカマキリと同伴出勤〜昆虫カメラマン、虫に恋して東奔西走』を出されました。
 きょうは、兼業だからこそのエピソードやベランダ昆虫園、そして昆虫への熱い想いなどうかがいます。

☆写真提供:森上信夫

写真提供:森上信夫

オオカマキリと同伴出勤!?

※森上さんはサラリーマンとの兼業をされていますが、どうやって昆虫を撮影する時間を作っているのでしょうか?

「それはもう結局は、1日は24時間という上限があるので、寝る時間を削るしかないんですよね。
 で、幸いにというか、昆虫の羽化とか孵化とか脱皮のような劇的なシーン、それこそ本で使うためにまさに撮らなければならないシーンというのは、天敵である鳥が寝ている時間、つまり夜に行なわれることが多くて、夜から明け方にかけてですね。だから自分が寝る時間を削りさえすれば、意外に撮れるものなんですよ。
 日中にやられてしまうと出勤時間は動かせませんから、そこはどうにもならないんですけれども、夜にそういうことが起きることが多いので、単純に徹夜すればなんとかなるというケースが多いですね」

●でも、徹夜して次の日は普通に仕事に行くわけですよね? 

「そうなんですよ。徹夜明けで出勤するというのは、なかなかつらいものがあるんですけれども、撮れた時はそれでも満足感いっぱいで電車に乗れますからいいんです。でも、撮れなくて出勤時間を迎えた時ですね。羽化、孵化、脱皮が起きると踏んで徹夜で待機したのに、結果的に何も起きなかった場合というのは、出勤する時の疲労感といえば相当なものですね(笑)」

●そうですよね〜。この本にも、僕を28時間待たせたオオカマキリ、という風にありましたけれども、本当に徹夜の撮影っていうのは当然のようにあったわけなんですよね。

「そうです。ちょうどお盆の時期だったので勤務先も休みで、28時間待てたことはある意味幸せだったんですけどね」

写真提供:森上信夫

●オオカマキリと同伴出勤したのは本当なんですか? 

「あ、これは本当なんです」

●これはどういうことですか?(笑)

「卵を産みそうなオオカマキリがいまして、お腹がもうパンパンに膨らんでいて、身重な感じだったんです。それで締め切りのある仕事で、オオカマキリの産卵シーンを撮らなければいけなかったんですよ。結局その時も一晩徹夜して朝まで見ていたんですけれども、夜のうちに産まなかったんですね。
 スタジオで撮っていたわけですけども、これをそのままスタジオに放置して出勤してしまうと、昼のうちにおそらく産卵してしまうだろうということは予想できたので、もうこれは連れていくしかない! ということで、職場に小さな水槽に入れて連れて行ったんです」

●職場のみなさんはどんな反応されるんですか?(笑)

「それは分からないように、コンビニの袋に入れた状態でデスクの足元に置いて。それで職場で撮影できるわけではないので、何をしたかというと、そのコンビニの袋に入ったミニ水槽の上に足を乗せて、延々と貧乏ゆすりをしながら、上半身は普通に仕事をしているんですけど、下半身は延々と貧乏ゆすりをして、その水槽の中にいるオオカマキリがグラグラ揺れる中で産卵を始めないように、オオカマキリも落ち着かないですから、そういう形で産卵したいという気持ちを妨害し続けたんです」

●へ〜! で、無事に産卵シーンは撮影できたんですか?

「できました! その晩連れて帰って、スタジオの鉢植えに留めて、すぐに産卵するかと思ったけど、意外にそうでもなくて。まあオオカマキリにとっては激動の1日だったわけですから(笑)」

ベランダ昆虫園

写真提供:森上信夫

※いつ、羽化や孵化、そして脱皮をするのかなど、なかなか予測できない昆虫撮影で楽しい瞬間というのは、どんなときなんでしょうか?

「それは2つあります。1つはそれこそ自分が思い描いていた通りの絵を撮れた場合、つまり目の前でまさに待機中にことが始まった場合というのは1つそうですね。
 あともう1つは思い通りっていうのとは全く真逆の、思いがけない出会いがあったという時ですね。それは野外で思いがけない虫との出会いが思いがけない形であって、目の前で面白い行動を見せてくれた時なんていうのは、とても嬉しい瞬間ですね。こういうのは後からじわじわ嬉しさが来るタイプなんですけど」

●森上さんはご自宅にベランダ昆虫園があるということですけれども、それはどういったものなんですか? 

「 趣味的に飼っているわけではなくて、スタジオ撮影のためのバックヤードという位置付けなんです。例えば水生昆虫、水に棲む虫がいますね。ゲンゴロウとかそうした虫というのは、野外ではカメラを水に沈めて撮るわけにはいかないので、結局水槽で撮るしかないんですね。
 そうするとスタジオには撮影用の水槽があるんですけれども、その水槽で撮る虫を普段飼っておくバックヤードというのが、そのベランダの昆虫園なんです。同じ水槽にタガメが入ったりゲンゴロウが入ったりすることがありますけれども、そういういろんな虫をベランダで生かしているというのがベランダ昆虫園ですね」

写真提供:森上信夫

●今、何種類ぐらい飼っているんですか? 

「おそらく15〜16種類ぐらいいると思いますね」

●え〜!? そうなんですね。その昆虫の世話もしているんですよね? 

「そうです、毎日結構な時間がかかりますね。1時間ぐらいは虫の世話で時間を取られます」

●ちなみにどんな昆虫がいるんですか?

「今は水生昆虫ではタガメ、タイコウチ、それからゲンゴロウの仲間が4種類くらいいまして、後は水生昆虫ではありませんけれども、カブトムシ、クワガタムシもやはり継続して飼っていて、それはやっぱり写真の需要が多いからなんですね。毎年新作を撮っておかないと、例えば去年使った写真と同じものは同じ雑誌には出せないっていうようなことがありまして、それでカブトムシ、クワガタムシも結構たくさん飼っています」

写真提供:森上信夫

虫の感情を撮る!?

※森上さんの新しい本『オオカマキリと同伴出勤〜昆虫カメラマン、虫に恋して東奔西走』に載っている昆虫写真は、どれも表情豊かに見えるんです。何か心掛けていることがあるんでしょうか?

「そう言っていただけると嬉しいですね。それは特に気をつけて撮っていることなので。
 昆虫というのは外骨格という体の構造をしていまして、要するに身体の外側に骨があるのと同じですから、表情を作ることができないんですね。要するに柔らかくないので。

 そこで表情を感じていただけるというのは、言わばお面をした子ども、お面をしているから表情は分からないんだけれども、手足で何かアクションをとることで、お面の向こう側でどんな表情してるのかっていうことがある程度分かると思うんです。やはり昆虫の顔以外の、手足がどんな形をとってるかというポーズで、ある程度その表情というものを感じていただけるように努めて撮っているつもりなんです」

●へ〜! でも昆虫相手となるとなかなかお面を被った子どもと同じってわけにはいかないですよね? 

「でもそこに僕はほぼ同じという認識があって、それは結局、昆虫カメラマンの仕事というのは、大人向けの本より児童書で使われることが多いんです。
 そうすると、子どもというのはやはり虫に対して、自分と違う生き物というよりはかなり擬人化して捉えていて、自分との共通した感情とか表情を持つ生き物というような感じで捉えることが多いので、擬人化して見るであろう子ども達に、実際に喜びとか悲しみとか怒りとか、虫の感情を感じてもらえるような撮りかたを、努めてそうしているっていうところがありますね」

●へ〜そうだったんですね! 森上さんが一番好きな昆虫って言うと何になるんですか? 

「はい、好きな虫はたくさんあるんですけども、そう聞かれることが多いので、一応ノコギリクワガタと。これは実際、嘘ではなくて、たくさん好きな虫が何種類かいる中で、無理に1位を決めるとノコギリクワガタかなという感じですね!」

●どうしてですか? 

「それはね、かっこいいから!」

●そうなんですか〜(笑)

「非常に単純な理由なんですけれども(笑)、姿・形がかっこいいっていう、フォルムのかっこよさだけではなくて、クワガタムシって黒いものが多いんですけれども、ノコギリクワガタはワインレッドの体の色をしているんですよ。この美しい体っていうのがノコギリクワガタが他のクワガタムシより、ちょっと好きだなという理由だと思いますね」

写真提供:森上信夫

昆虫はチャンピオン!?

※最後に・・・長年、昆虫の撮影を続けていて、昆虫からどんなことを感じますか?

「もともと鳥とか魚も含めて、生き物は何でも好きだったんですけれども、被写体として見た時にやっぱり昆虫が一番だなという感じです。他の生き物に興味が広がっていくタイプの人もいるんですけれども、僕の場合はその昆虫愛というものに収れんしてきたという感じで、どんどんその虫の魅力の奥深さに引き込まれてきたという感じがあります」

●その魅力ってのは何ですか? 

「やはり虫の場合は多様性ですね。足が6本とか羽が4枚という、割と小学校の理科的な知識ですけれども、そういった昆虫の体の構造を決定づける制約の中でも、ここまでデザイン的に遊べるのかというような。
 鳥とか魚というのは、見れば鳥であったり魚であったりということが、ある程度分かるレベルの多様性だと思うんですけれども、昆虫の場合、本当にこれ生き物なの? っていう、生き物かどうかすら見て分からないというような形の多様性があって、そこが昆虫の一番の魅力だと思いますね」

『オオカマキリと同伴出勤〜昆虫カメラマン、虫に恋して東奔西走』

●本の中に「時として下から見上げるようなかっこいい存在だ」って書いていましたけれども、本当に崇拝しているような感じですよね(笑)

「はい、そう思います(笑)」

●ウルトラマンのような存在だとも書かれていましたけれども、とにかくかっこいいんだ! っていう思いがすごく伝わってきました。未だにかっこいいなって思われてますか? 

「そうですね。だからよく虫って可愛いって目線で見る人もいて、どの虫が一番可愛いですか? っていう質問が非常に困るんですけども。可愛いと思ったことはなくて(笑)、それこそウルトラマンを可愛いとは言わないじゃないですか。ですから虫に対してリスペクトに近い感情もあって。

 非常にこれは大雑把な分類ですけれども、背骨のある脊椎動物と背骨のない無脊椎動物という2つの生き物に分けると、人間がその脊椎動物という進化のチャンピオンにいるとすると、昆虫は無脊椎動物というもう1つのリーグのチャンピオンという感じがあって。
 ですので、僕としてはセ・リーグのチャンピオン・チームが、パ・リーグのチャンピオン・チームを見てるような、そういった感じで昆虫という存在に一目置いてるという、そういう感じが昆虫を見るスタンスと近いかもしれないですね!」


INFORMATION


オオカマキリと同伴出勤~昆虫カメラマン、虫に恋して東奔西走


『オオカマキリと同伴出勤~昆虫カメラマン、虫に恋して東奔西走』

 文章がメインの自伝的エッセイ。ご本人曰く、サラリーマンとの兼業写真家の、毎日のドタバタ劇ということですが、昆虫との生活がリアルに描かれていてとても面白いですよ! そして掲載されている昆虫の写真が生き生きとしているので、昆虫の表情にも注目しながらぜひ読んでください。詳しくは、築地書館のサイトをご覧ください。

◎築地書館HP:
http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1604-4.html

 森上さんの活動についてはぜひオフィシャルブログを見てください。

◎森上信夫さんのHP:http://moriuenobuo.blog.fc2.com/

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