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個性豊かな動物たちに仕事をさせるとしたら!?〜動物行動学に基づいて楽しく解説!

2020/10/25 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、動物行動学者の「新宅広二(しんたくこうじ)」さんです。

 新宅さんは1968年生まれ。大学院修了後、上野動物園、多摩動物公園に勤務。その後、国内外のフィールドワークを含め、およそ400種の野生動物の生態や飼育法などを修得。現在は国内外の科学番組や映画の監修、動物園や水族館などのプロデュース、そして大学や専門学校で教鞭をとるほか、生き物に関するユニークな本を数多く手掛けていらっしゃいます。

 そんな新宅さんの新しい本が『動物たちのハローワーク』。この本は、ご専門の動物行動学に基づいて、動物を擬人化し、こんな仕事をさせたら面白いだろうな〜という視点で書かれています。動物の生態を楽しく学べるのはもちろん、私たち人間のお仕事を改めて知る一冊となっています。

 きょうはそんな新宅さんにもしも動物たちが仕事をするとしたら、どんな職業が向いているのか、動物行動学をもとに楽しく解説していただきます。また、サイエンスのかたまり、動物園のお話もうかがいますよ。

☆写真協力:新宅広二 

新宅広二さん

ヒバリはラジオ・パーソナリティ!?

*本に登場する動物は200種、職業は120種、載っているんですが、私が特に気になったのは、もちろんラジオ・パーソナリティ! その仕事に向いている生き物として「ヒバリ」をあげています。これはおしゃべりが大好き、そんなイメージなんでしょうか。

「ヒバリ、ご覧になったことありますかね? 」

●そうですね〜、ないかな〜!? 

「意外と都会でもいるんですよ、原っぱとかあるところだと。珍しい鳥ではないので、結構人の側にいる身近な鳥なので。
 それが空高く上がっていくんですよね。で、上空でとまりながら、ずっと綺麗な声で喋り続けるっていうのがヒバリの特徴で、それ自体は縄張りを主張しているような行動なんですけど、電波に乗せて多くの人に、いろいろ自分の声を聴いてもらうかのような感じの行動なので、ちょっとラジオっぽいなと思ったんです(笑)」

●この本にも美しい声でピーチクパーチクしゃべり続けるので、世界中にファンも多いっていう風に書かれていましたけれども(笑)。

「日本だけじゃなくて結構いろんなところにヒバリはいるので、みんないいイメージの鳥なんですよね、どの国もね。みんなに愛されてる身近な鳥なのかなと思って」

●なるほど〜。あとアナウンサーという項目もありましたけれども、こちらはハシビロコウで、これはどういった鳥なんでしょうか? 

「これはアフリカにいる大きな鳥なんですよね。結構ネットなんかで動かない鳥として話題になったりしてますけれども、無表情でずーっと集中力があって、1時間ぐらい動かないとか、そういう姿勢を保てるんですよね。
 かと思うと、このハシビロコウっていうのはクラッタリングって言ってくちばしを早く動かして音を鳴らすことができて、早口言葉じゃないけれども、そういうのも、実は動かないだけじゃなくて上手な鳥なので、ベテランのアナウンサーみたいな感じですよね(笑)」

●アナウンス部長って書いてありましたね(笑)。アナウンサーは話術だけじゃなくって体力や精神力も必要っていう風に書かれていましたけれども、私は元々山陽放送のアナウンサーだったので、なんで本当に分かるの〜? っていう風に思いました! まさに集中力と忍耐力、体力も必要だなって感じていたので。

「そうですよね。そういう一発勝負っていうか、間違いが許されなかったりとか、やり直しがなかなか効かないような仕事ですよね。ハシビロコウは水の中の魚を獲ったりするんですけど、ずーっと集中してるんですよね」

『動物たちのハローワーク』

動物たちの履歴書を書いてみた!?

※それから本当にいろんなジャンルの職業がありまして、例えば警察官はシェパードとありましたけれども、これは警察犬っていうイメージですか? 

「この本は、求人を出す側と就活をしている側の動物2つに分けて書いてみたんです。こういう人材が欲しいっていう人と、私はこういう特技があるので応募しましたって、動物の履歴書を書いてみたんですよ。
 やっぱりこのシェパードとか警察犬で有名なのは皆さんイメージしやすいですけど、犬は350種類以上いるので、犬の中にはやっぱり警察犬に向いてない犬っていうのもいるんですよね。今回この本で応募させたのはバグなんですけれども、小さくて愛玩犬なので、あんまり警察の事件を解決するようなものにはちょっと向いてなくて(笑)」

●面白いですよね。履歴書はこの本に色々載っていますけれども、本当に笑いながら読ませていただきました! あとは冒険家も載っているんですよね? 

「冒険家はバイカルアザラシを冒険家っぽいなーと思って、ちょっと当てて見たんですけれども」

●アザラシが冒険家というイメージがちょっとわかなかったんですけれど。

「そうなんですよね。アザラシって例えば少し前ですけど、東京湾とかの多摩川に“たまちゃん”っていうのが来たりとか、ずいぶん北の方に本来住んでる動物なのに、とんでもないところに来ることがあるんですよね。アザラシは全体的にちょっとそういう傾向があって、本来棲んでいるところから遠くまで行ってっていうことが、世界中でよく見られるんですよね。
 中でもこのバイカルアザラシは、ずいぶん内陸の方にある淡水の湖(バイカル湖)なんですけど、世界で唯一そこに淡水のアザラシとして生息してるので、一体どうやってそこまで、その先祖が行ったのかっていうのが想像するとちょっと楽しいんですけどね」

●あと気象予報士というのもありましたね。これはアマガエル? 

「これは結構日本でも有名ですよね。アマガエルのアマっていうのは雨って書くんですけれども、やっぱり雨を本当に予想するんですよね。特に雨の前にちょっと鳴くっていう習性が知られているので、気象衛星とかそういうのがない時代に、昔の人たちは自然や動物が発する情報を利用して、もうすぐ雨が降るんじゃないかとか、台風が来るんじゃないかとか、そういうのを巧みに利用してたわけですよね」

●なるほど〜!

「この本自体が就職ジャーナルみたいな作りにしたかったので、いろんな成功者のインタビューとか、そういうのを動物目線で語っています。ユーチューバーで成功したジャイアントパンダの語りが入っているところがあるんですけど、ただ寝てるだけじゃないっていうことを、すごく一生懸命、動画の再生回数を稼ぐにはどんな努力をしたかっていうことを、いろいろ語らせてみたんですけどね(笑)」

実はインドア派!?

写真協力:新宅広二

※新宅さんは今年の春まで生物調査のために、ヒマラヤ山脈のエベレストに滞在していたそうです。どんな生き物を探しに行ってたんですか?

「極地生物です。(エベレストは)極地気候になるんですよね。もう南極とか北極と同じぐらいの特殊な、酸素も少ないとこだと半分から3分の1ぐらいのところなので、そういうところに棲む動物の生態をちょっと調べに行きたかったので行ってましたね」

●具体的に言うと、どんな動物がいるんですか? 

「皆さんお馴染みのイエティがいるところなんですよね(笑)。まぁイエティがいるかどうかはあれですけど、雪男が話題になっていた、ちょうどそういう場所なんで、ああいう都市伝説みたいなのが出るぐらいの。大型動物も意外といろいろいるんですよね、クマから霊長類もいますし」

●新宅さんが行かれた時はどんな動物がいました? 

「哺乳類で10種類くらいは見れましたし、それから鳥だと20種類以上、今整理してるところですけどね。ユキヒョウとかそういうのもいました。レッサーパンダもちょっと調べたかったんですけど、それはちょっと見れなかったですね」

●標高はどれぐらいなんですか? 

「標高は5000メートル以下ですね。4000メートル台までのところを」

●そうなんですね〜。元々登山とかはされていたんですか? 

「いや、全然、僕インドア派なので(笑)、お仕事以外では山に行くことはないんですけど」

●えー! 大変だったんじゃないですか?! 

「そういう登山の知識とかもないので大変でした。特に高山はあんまり経験がないのでちょっとまた大変でしたけど」

●でも動物を探しに? 

「そうですね。あとはそこの少数民族の人たちに、いろいろヒアリングをしたいことがいくつかあったので、そういうのも取材しながら、動物と関係することでね」

写真協力:新宅広二

●例えば、どんなことなんですか? 

「気候変動のこととか。それから動物がどう変わってきたかっていうのが、私はそんなにまだ回数を行っていないので、そこの住民の人たちにヒアリングすると、短期間でいろんな情報が集められるんですね。そういういろんな項目もちょっと聞いたりして、情報を集めてきましたね」

●ちなみに動物はどう変わってきていたんですか? 

「ヒマラヤのエベレストなので、地球温暖化とかなんか感じてるのかな? なんて思って。でも聞く人聞く人、何も変わってないよってみんな言ってましたけど(笑)」

●そうなんですね(笑)

「気候変動の話っていうのは、どこか全体が暖かくなるだけではなくて、いろんなバランスが崩れていくので、必ずしも暖かくなるところばっかりじゃないんです。ちょうど私がいた時はここ数年、寒いよねなんてみんな言ってたぐらいなので、それはそれとして何か影響があるのかもしれませんけど」

動物園は宝の山!

*新宅さんはそもそも、どういうきっかけで動物を専門にするようになったんですか?

「僕ね、動物園に勤めていたんですけど、大学まで動物園に行ったことがなくて。動物はもちろん嫌いじゃなかったんですけど、動物園に勤めるとも思わなかったし、動物で食べていくことになるとも思わなかったんですよ。
 でもちょうど大学の研究で、動物園の動物をちょっと借りることになって行ったら、すごく面白いなと思って。動物の中で飼われている動物、思った以上にいろんなデータがちゃんと取られていて、宝の山だなと思ったので」

●どんなデータですか?

「例えば野生動物の調査をすると、1年間行くとか、もしくは3ヶ月行くとか、期間を限定して見るしかないんですよね。でも動物園は、生まれた瞬間から死ぬ瞬間まで、ずっと毎日記録されていて、非常に壮大な1匹の動物の人生って言うかな、そういうのが記録されていて、なかなか野生でそういう(記録の)取り方はやっぱりできないんですよね。だからそれはそれとして見えてくるものがあるので、野生の調査も大事ですけど、飼育下の動物もずいぶん研究対象としては面白いんじゃないかなってその時思いましたね」

写真協力:新宅広二

●で、動物に興味を持って動物の道に進まれたわけですね。
新宅さんはオリジナルのワークショップ「空想動物園を作ろう」を開催されていますが、どんな内容なんですか?

「今年コロナで教育イベントが軒並み中止になっちゃったんですけど、それでも今年、何箇所か動物園や博物館からの依頼があって。今年やっているのは子ども向けに 動物園のデザインをさせるワークショップをやってみようかなと思ってやってみました。

 模型を並べるだけじゃなくて、動物園っていう施設がどうしてライオンを安全に飼えるのかとか、動物たちが狭い場所で寿命まで生きて、生かすことができるのかっていうのは実はサイエンスの塊なんです。そういうのをデザインしながら理解させるっていうのかな。

 配列も全部意味があったりとか、作業する時にどういうレイアウトが実は効率的なのかとか、お客さんにそういうのを見せるために教育的にどういう配慮がされているのかっていうのを、自由に作らせる中で知ってもらうというか、そういうワークショップですね」

●ヘ〜! デザイン、実際に絵を描いてもらうというようなことですか? 

「模型で、ある敷地を買収したという設定にして、池とかがある広大な敷地、動物園ができるぐらいの敷地の地図を与えて、そこに動物のフィギュアとか、特に今回は空想の動物園なので、もう恐竜とか、マンモスとか、全部ありにして。
 そういうのがもしいたとしたら、飼育する場合にどうやって、どれくらいの広さが必要かとか、どういう餌の確保が必要か、いくらぐらいかかるのかとか、そういうのを考えさせるようにしてましたね」



檻がなくても大丈夫!?

*大盛況だったワークショップ「空想動物園」は本物の動物園の、施設としての面白さを知る側面もあるそうです。具体的にどういうことなのか、お話いただきました。

「なんかそういう見方がわかると、空想の動物園じゃなくても、動物だけじゃなくて施設の面白さっていうかな、檻がないのにどうして逃げないんだろうとか、そういうのに実は秘密が隠されているとかね。そういうところが見られるようになるんじゃないかなと思っていますよね」

●動物園のレイアウトなんて考えたことなかったです。

「普通は動物の方を見ちゃうのでね。それが自然に(レイアウトを)見たり、檻を感じさせないようにする工夫が、どういう風な仕組みになっているのかを、子供たちに考えさせながら。
 私は動物園の設計とかにも関わったりしてるので、そういうところの考え方を少し優しく教えてあげたりしてました」

●檻がなくても大丈夫っていうのは、どういうことなんでしょうか? 

「恐竜でもどんな猛獣でも、めちゃくちゃ頑丈な檻さえ作れば、どんな動物でも飼えるんですよね。ただそれじゃちょっと芸がないというか、ちゃんと動物行動学に基づいてやると、過剰な檻を作る必要はないんですよね。

 例えばですけど、ジャンプ力のない動物だったら上を塞ぐ必要はないわけですよね。それから泳げない動物は、お客さんと動物の間に水を張ることで、こっちに来れないんですよね。だからそこには檻を作る必要がないとか。

 なんかそういう風に動物の得手不得手をうまく利用しながら、できるだけ檻のない、全部檻で囲まなくて済むようなものは、近代の動物園ができて、この100年以上、150年ぐらいの間にいろいろそういうことができそうだってことが分かって、やられているんですよね」

●それも全て行動学っていうことですよね? 

「そうですね。例えばクマなんかはよく檻がなくて、その前に深いお堀みたいなのが張ってあると思うんですけど。これはジャンプ力がないので、檻で囲まなくてもこっちに来れないし。そうするとクマと同じ目線で、その間に遮るものがないので、非常に同じ空間にいるような感じになるんですよね」

●なるほどー! そういう仕組みがあったんですね!

☆過去の新宅広二さんのトークもご覧下さい。


INFORMATION


動物たちのハローワーク


『動物たちのハローワーク』

 動物の生態を知り尽くしている新宅さんだからこそ書ける本だと思います。履歴書が載っていたり、擬人化された動物の可愛いイラストも載っていたりと、読むのが本当に楽しい本ですよ。動物たちのそれぞれの特技なども分かって面白いです。ご家族みんなで楽しめる本だと思います。
ぜひ読んでください。辰巳出版から絶賛発売中です。

 詳しくは辰巳出版のサイトをご覧ください。

◎辰巳出版HP:http://www.tg-net.co.jp

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