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山を旅する〜仲川希良さん流の山の楽しみ方

2020/11/22 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、モデルでフィールドナビゲーターの「仲川希良(なかがわ・きら)」さんです。

 希良さんは埼玉県出身。10年ほど前に、初心者向けアウトドア雑誌のお仕事をきっかけに山に登るようになり、登山歴1年半で雪山デビュー。真っ白な美しい世界を体験したことで、益々、山の虜に。そして山の魅力や体験を雑誌や本などで発信されています。

  そして先頃、新しい本『わたしの山旅〜広がる山の魅力・味わい方』を出されました。きょうは視点を変えて山を選ぶ「山旅」について。おすすめのルートや、女子らしい旅のヒントなどうかがいます。

☆写真協力:仲川希良

川の始まりを探す

仲川希良さん

*新しい本の第一章に希良さん流の山の楽しみ方として、「水の始まる山」があります。これは水を巡る山旅なんですか?

「私自身が山を深く味わうきっかけになった、すごく大きなキーワードなので、まず最初に水の始まる山っていうのをご紹介させていただきました。水の始まる、って聞くとちょっとイメージしづらいかもしれませんが、多くの川はそれをどんどん遡って、始まりまで辿っていくと山にたどり着くんですよ。

 そういったことをテーマにして、初めて川の始まりを見に行ったことがあったんです。宮城県の大滑沢っていうところだったんですけれども、沢登りの人にとってはすごく川底がなめらかで、ゆっくりお散歩するかのように沢登りを楽しむことができる素敵な場所なんです。その大滑沢をどんどん登り詰めて、最初の一滴を見よう! っていうチャレンジをしたことがあったんです。

 山の中でも細い沢筋を見ることっていうのはよくあるんですけれども、その最初の一滴って、見ようとも想像したこともなかったので、その時はいったい始まりってどんな感じなんだろう? って全然分からないまま、その沢を登っていっていたんです。

 途中で魚釣り、イワナを釣ったりだとか、火を起こして川沿いに泊まったりだとか、しながらどんどん登って行って。でもちょっと技術的に、滝とかも出てくるので、これ以上行くのが難しいなと思って、今度は山の尾根、出っ張っているところですね、尾根まで上がって、最初の一滴を探して今度は谷沿いを降りていくことにしたんです。

 尾根から降りて、ここが川が始まる場所だ! っていうところを歩き回ってみたら、深い苔と、ゴロゴロの石の隙間に、ぽちゃん、ぽちゃん、って水が滴る場所を見つけることができたんですね。その時はまだ、この一滴、本当に小さい透明な一滴が、私が上がってきた沢と繋がるっていうことは、正直に言えばちょっとピンとこなかったんです。もうただただ美しいひとしずくがぽちゃんと落ちているのを眺めているだけだったんです。
 でもそこから後ろを振り返ってみると、数メートル先にはもうそれが細い水の筋になっていて、それを辿りながら降りていったら、どんどん太くなって、ちゃんと自分が魚釣りを楽しんだもとの沢に戻ってくることができたんですね。

 戻ってきた! ってなった瞬間に、あの一滴っていうのは本当に川の始まりなんだ! っていうことをすごく実感することができたし、こういう風に沢がどんどん太くなって、たくさんの水を山から集めながら麓に流れていって、これが家の水道水になるんだっていうことに、はっとしたんですよ、そこで。

 どこかのダムだったり、湖だったり、溜められて、そこから取水場で水として取られて、浄水場を経て、お家に着くので、まだまだその先の旅も長いんですけれど、あ、私の川の始まりを見る旅っていうのは、つまり私の家の水道水の始まりを見る旅とイコールなんだっていうことにもその時気づいて。1回そういうことを味わうと、自宅で水道水の蛇口をひねる度に、山と繋がっている水が出てきたっていうことを感じられるし、すごく感謝の気持ちも湧いてくるんですよね」

水の運命を決める場所!?

『わたしの山旅〜広がる山の魅力・味わい方』

※新しい本の第二章では、「海を感じる山」という視点で山選びをされています。海と山がどうして結びついたのですか?

「山に登り始めた当初は、山に登っている時、海について考えることってなかったんです。尾瀬ってありますよね、大人気の場所ですが、尾瀬にある至仏山っていう山に登った時にちょうど霧雨も降っていて、足元が蛇紋岩っていうツルツル滑る岩で覆われている山なので、ずっと足元を見ながら歩いていたんですね。
 そしたらある尾根上を歩いてる時に、ガイドさんが、希良さんここが中央分水嶺ですよ! って仰ったんですよ。中央分水嶺はご存知ですか?」 

●いいえ、中央分水嶺って何ですか?

「分水嶺っていうのはまず、山の中にある水の境界線なんです。水がこれからどこの方向に落ちていくか、どこの海へ向かっていくかっていうことを決める線。山が尖ってますね? その尖った右側の斜面に降りるのか左側の斜面に降りるのか、っていうので、どっちの方に水が流れていくかって変わってきますよね。
 そういう水の分かれ目の部分を分水嶺って言うんですけれども、その中で特に日本海と太平洋に分かれる部分ていうのを中央分水嶺って言うんですよ。主に日本列島の真ん中あたりに背骨みたいに通っている線なんですけれど、私がその時登っていた至仏山っていうのが、ちょうどその中央分水嶺に当たる位置だったんですね。

 自分がその尾根の出っ張りの上を歩いているので、あ、私の右肩にぽちゃんと落ちた雨は今から太平洋に行くんだ! 左の肩に落ちた雨は今から日本海に行くんだ! っていう、ちょうどその雨の運命を分けるような、そういう線の上に立っているんだっていうことに、はっと気づいて。周り一帯は本当に霧に囲まれてる状態だったんですけど、この霧の向こうには太平洋があるんだ! 日本海があるんだ! って、急にそこで海の存在を意識することになったんですよね」

●山と海が繋がっているっていうことは、普段あまり意識しないと思いますが、そうやって考えてみると面白いですよね! 

「必ず土地っていうのは繋がっていますから、そこで水を意識するとたどり着く先は海だから、山、水の始まる場所っていうのは、必ず海と繋がっているんだなっていうことが分かりますよね〜」

※希良さんは「海を感じる山」のおすすめとして、“たくさんありすぎて迷う〜”とおっしゃっていたんですが、その中からひとつ挙げてくださいました。それは、山形県と秋田県にまたがる「鳥海山」。山から、青い日本海がど〜んと広がる大絶景が見られ、水平線がわん曲していて、地球が丸いことを体感できる場所だそうです。
 そんな鳥海山は下山後の、すごく美味しいお楽しみがあるそうです。

「その辺りの日本海では、岩牡蠣っていう牡蠣が採れるんです!」

●うわ〜、いいですね! 

「牡蠣はお好きですか? 」

●大好きです! 

「じゃあもうぜひ行っていただきたいんですけど、牡蠣って旬は冬っていうイメージがありません?」

●はい、あります。

「岩牡蠣の旬は夏なんですよ! だからちょうど登山シーズンと、牡蠣の旬も被っているんです。なんで夏に岩牡蠣が旬を迎えるかっていうと、山からの冷たい水が海の方にも流れ込んでいて、海底で山からの冷たい湧き水が湧いているんですね。

 その真水と海水が混ざることによって、たくさんのプランクトンが生まれて、牡蠣を大きく育ててくれるのと、冷たいお水なので、じっくり大きくなるまで牡蠣を育てることができるんですね。
 だからすごく大きい手のひらからはみ出しそうな、完全にはみ出てますね、そういう牡蠣の殻の上に、ぷっくりしたミルキーな牡蠣がぼてっと乗っかっていて、それをひと口でトゥルンといただくと、牡蠣なんだけど、これは山の恵みだなっていう気持ちにもなるんですよ。山の水が育んだ牡蠣を下山後にいただけるっていういい場所ですよ」

女子に役立つ山旅のヒント

写真協力:仲川希良

※新しい本には、希良さんらしい、女子に役立つ、山旅のアイデアが書かれているんです。

●この本には旅のコーディネート、着回しアイデアという感じで、山をしっかり歩く時はこんな着こなしとか、ゆるりと自然を楽しむ時はこんな感じとか、いろいろ希良さんが着回しアイデアということで提案してくださっていますけれども、すごくそういったことが女子的には嬉しかったです! 

「あ、よかったです!」

●どんな格好していいんだろうとか、何から用意したらいいんだろうっていうのがあったので、すごく分かりやすかったです。

「やっぱり山登りをするっていうとすごくビシッと揃えなくちゃ! って思いますよね。それもすごく大事なことなんですけれども、それと同時に麓の町歩きも楽しむって思うと、ちょっとしたリラックス・ウエアがあるだけで、その麓の町歩きがすごく楽しくなったり、実はそのウエアって山の上でも役立つものだったり、気合を入れすぎない山ウエアのコーディネートっていうのもあるはずだな、と思ってそういうページも作らせていただきました」

●女子目線でのヒントがたくさん載っているなっていう風に感じました! 

「嬉しいですね、そう言っていただけると」

●登山初心者の女性に向けて何かアドバイスがあるとしたら? 

「それは持ち物的な部分ですかね?」

●そうですね。あとは私、化粧とかも気になるんですけど。スキンケアだったりとか、化粧を直す時間もないだろうし、そもそも皆さん、どうされているのかなっていう、いろいろ不安です(笑)

「やっぱり行ってみないと分からない部分ですもんね〜。何泊するのか、日帰りなのかどうなのかっていうことでも、ずいぶん持ち物は変わってくると思います。日帰りだったら、とりあえずはいつも通りで行ってしまうのが、もちろんいいかなと思うんですけれども、もし1泊するってなった場合は、スキンケア類をどういう風にコンパクトにするのかっていうのが大事になってくるんですよね。

 特に山の中で使うためのスキンケアっていうのは、たくさん持っていってもなかなか使いきれなかったり、重くなってしまったりするので、化粧水だったり、それからメイク落とし化粧水みたいな、そういったものを全部コットンに染み込ませて、ビニールの中に入れて、きちっとパウチ状にして持っていくと、すごく小さくなりますよね。
 それからいつも使ってるものを山の中でも使うことができるので、安心してお肌にも使えるので、必要な分をコットンに染み込ませて、パウチするっていうのがスキンケアはおすすめですね」

●それは知らなかったです。いいですね! 全部持っていくと荷物になっちゃいますからね。

「そうなんですよ。もしそんなに何泊もしないような旅行だったら、山にかかわらず、そういうやり方の方がグッと荷物は少なくなりますよ。普通の旅行でもね」

●いいこと聞きました!

「ぜひやってみてください!」

山とパンを味わう!?

写真協力:仲川希良

*新しい本には、コラムが何本か掲載されていて、その中のひとつがとても気になりました。「山ごパン」と書かれていたんです。この「山ごパン」とはなんでしょう?

「私の友人であるモデルの“パン野ゆり”ちゃん、もうパンが好きすぎて名前にもパンを入れてしまったパン野ゆりちゃんという子がいるんです。資格もたくさん持っていてパンの魅力を日本中に広める活動をたくさんしているモデルさんなんですが、そんなパン野ゆりちゃんと一緒に山もパンも味わうっていう、パン・ハイキングをよくしていたんですよ。それについてコラムを書かせていただいたんです」

●「絶景パン」って書かれていて、ハイキング中に出会った絶景の中で、その土地に育まれたパンをパチリと撮影されてるんですよね? この景色とパンっていう、その写真がすごく可愛くって、すごく好きです! 

「そうなんです。あの写真を撮るのもパン・ハイキングの楽しみなんです。パンと山ってなかなか繋がらないかもしれないんですが、私は山を通してその土地を味わっていて、パン野ゆりちゃんはパンを通してその土地を味わっているって言うんですね。

 どういうことかなと思ったら、その土地で採れる野菜だったりミルクだったり小麦だったり、そういったものがパンの素材になっていたり。それからパン屋さんの見た目、お店の見た目にもその土地らしさってすごく出てきたりするんですよ。だからパン屋さんを巡ることも山を歩き回ることも、その土地を味わうことに繋がるね! って言って、どちらも巡るパン・ハイキングをしているんです。

 朝、麓のパン屋さんで買ったパンを背負って、もちろんその場でもちょっと食べちゃったりするんですけど(笑)。まずは里を巡ってパン屋さんでパンを仕入れて、そのパンをその土地を育んだ山に登って、山から見える絶景と一緒にそのパンを撮影したりだとか、麓の里の景色を眺めながら、その美味しいパンを頬張ったりして。下山後もまたお土産のためのパン屋さんを巡るっていうね(笑)、パン屋づくしの山旅ですね」

●おすすめのパンを巡るハイキング・コースっていうのはありますか? 

「そうですね・・・小尾さんはまだ山初心者ですよね?」 

●初心者です〜。

「そしたらぜひおすすめしたいのは鎌倉ですね。鎌倉って観光地としてもとてもメジャーで、美味しいパン屋さんもたくさんあるんですよ! もう選びきれないぐらいあるんですが、それと同時に鎌倉は山がすごく近い町でもあるんですね。

 ちょっと歴史の話になっちゃいますけど、鎌倉幕府ありましたよね? “いい国つくろう鎌倉幕府”。なぜ鎌倉幕府があそこにできたかっていうと、三方を山に囲まれていて、残る一面が海に面していて、すごく守られた土地だったんですよね。敵が攻め込みにくい、そういう場所だったから、あそこに幕府が置かれたわけなんです。なのでその鎌倉の市街地のすぐ後ろには三方を囲むように可愛い鎌倉アルプスっていう山並みがあるんです。

 だから鎌倉の町に行って、麓で美味しいパンを仕入れて、その後ろにある鎌倉アルプスをハイキングすると、山の上から、山に囲まれて、そして海に守られた鎌倉の市街地をしっかり見ることができて、あ、こういう地形だから鎌倉幕府ってあったんだな〜とか、そういう歴史についても味わいながら、ついでに美味しいパンも味わいながら(笑)、旅することができる素敵な場所ですね」

●へ〜! 参考にさせていただきます! 

「鎌倉アルプスだったらスニーカーとかで行くことができるので、山初心者の方にもおすすめの場所です! 」

山があるからこそ

*希良さんは10月末に、ご家族と一緒に北八ヶ岳の白駒池に行って、久しぶりの山旅を楽しんだそうですよ。では希良さん、今後どんな山旅をしたいですか?

「そうですね。行きたいところは溢れて溢れて、とめどなく出てくる感じなんですけれども(笑)、やっぱり今は息子が小さいというのもあって、改めて気負わずに自然の中に身を浸せる場所っていうのを探していきたいなと思っています。
 一生懸命歩いてたどり着く山頂っていうのもすごくいいんですけれども、そういった限られた場所だけじゃなくても、やっぱり自分なりの視点を持つことで、山の味わいってどんどん深めていくことができると思うので、まずはそういったハードルの低いところから、家族を改めて連れて歩いてみたいなと思います」

● では最後に、希良さんにとって山とは? 

「山があるから本当に私が私でいられるなっていうのを、今改めて感じています。山に行くことによってすごく心も体も整うなっていうことを、改めて久々に山に足を運んだことで実感しています。
 自分の生活のすぐそばに山があるっていうことを感じること、それが日常の支えにすごくなっているので、私が私でいるためになくてはならない存在、山があるからこそ、私の日常があるんだなっていうことを常に考えていきたいなと思います」

☆過去の仲川希良さんのトークもご覧下さい。


INFORMATION

わたしの山旅〜広がる山の魅力・味わい方


『わたしの山旅〜広がる山の魅力・味わい方』

 今回お話いただいた「水の始まる山」「海を感じる山」のほかに、「生き物に会える山」「信仰を集める山」など希良さんらしい視点で山旅を紹介。また海外で楽しんだトレッキングの旅も掲載しています。
 旅のヒントになるコラム、そしてアウトドアスタイル・クリエイターの「四角友里」さんやサバイバル登山家「服部文祥」さんとの対談のページもあり、写真も素敵です。ぜひ読んでください。枻出版社から絶賛発売中。詳しくは枻出版社、またはランドネのサイトを見てください。

◎枻出版社:
https://www.ei-publishing.co.jp/magazines/detail/book-494142/

◎ランドネ:https://funq.jp/randonnee/article/633817/

◎仲川希良さんのオフィシャルサイト:http://kirayukiyama.jp/

◎仲川希良さんのFacebook https://www.facebook.com/yummy.yu/about

◎仲川希良さんのインスタグラム:
https://www.instagram.com/kiranakagawa/

◎パン野ゆりさんのインスタグラム:
https://instagram.com/yuri.yamano?igshid=p5ypxbm8fp4u

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