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羽根は進化の結晶 〜羽根から見る野鳥の多様性〜

2020/12/27 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、公益財団法人「日本鳥類保護連盟」の調査研究室・室長「藤井 幹(ふじい・たかし)」さんです。

 藤井さんは1970年、広島県生まれ。日本動物植物専門学院を卒業後、日本鳥類保護連盟の職員に。現在は主にコアジサシの調査などを行なっていらっしゃいます。そんな藤井さんは専門学院在学中から野鳥の羽根に着目し、研究。そして先頃、その集大成ともいえる『BIRDER SPECIAL羽根識別マニュアル』を出版されました。

写真協力:藤井 幹、文一総合出版

 きょうは進化の過程で多様化してきた野鳥の羽根、その不思議な魅力に迫ります。また、冬のバードウォッチングの楽しみ方もうかがいますよ。

☆写真協力:藤井 幹、文一総合出版

写真協力:藤井 幹、文一総合出版

野鳥の多様性

●藤井さんの新しい本『BIRDER SPECIAL 羽根識別マニュアル』を読ませていただきました。羽根識別マニュアルというこのタイトル通り、ずらっと羽根の写真が載っているんですよね。しかもカラーで載っていて、こんなにいろんな羽根を見比べることは今までなかったので、すごく面白かったです! 

「いろんな種類を並べて比べるっていうところにすごく重点を置いたので、そう言ってもらえるとすごく嬉しいですね」

写真協力:藤井 幹、文一総合出版

●何種類の羽根を掲載されているんですか? 

「どこまでを数えるかなんですよね。単純に載っているものと、情報として出てくるものとかいろいろあるんで、数を正確に把握できてないんですけど、一応Amazonでは265種って書いてあるので、それが正しいんじゃないかと思います(笑)」

●形や色も様々で、本当に野鳥の多様性というものを感じたんですけれども。

「鳥の羽根の色や形というのは、彼らが生き抜いてきた中での進化の結晶なんですね。生きていくために進化していった過程を支えてきたのが羽根なんですよね。だから生き残るためにいかに進化させてきたかというのが、その羽根を眺めているとよく分かると思います」

●羽根の役割がいろいろ違うんですよね? 

「そうですね。逆にいうと鳥って羽根しか持ってないんですよ。くちばしとか足とかまで入れるとまた別ですけど、基本的に羽根しか持っていなくて、その羽根でいろんなことを補っているわけですよね。体を保温するためだとか、空を飛ぶためだとか、メスに対する求愛行動だとか、あとは触覚、感覚みたいなものもその羽根で補ったりしています」

●いろんな役割があるんですね。オスの方がカラフルな羽根になるっていうのはどうしてなんですか? 

「基本的にはやはりメスにアピールするっていう部分が大きいと思います。異性に対するアピールですね。逆にオスが子育てする場合はメスが派手だったりするんですよね。なので基本的には異性へのアピールっていうのもあります。

 あとは子どもを育てている時に、その卵を抱いたりしているメスとか、逆にオスだったりする方が目立っちゃいけないので、逆に卵を抱いている方は地味になって、周りで縄張りを持っているやつは派手になって、それでメスの方に注意がいかないようにするっていう意味もあると思うんです」

『BIRDER SPECIAL羽根識別マニュアル』

顕微鏡で見る羽根の世界

※藤井さんの新しい本『BIRDER SPECIAL羽根識別マニュアル』には顕微鏡で覗いた羽根の写真が載っていますが、羽根を顕微鏡で観察するとは意外でした。

「多分これがこの本でいちばん推したい部分なんです。元々はここのパートだけで作りたいって言ったんですけど、これだけじゃ売れないって却下されてしまったんで(笑)。なので3部作みたいになってしまったんですけど、本当にこれは日本に限らず、海外でもあまり今、主流になっていなくて、やっている人が少ないんですよね。

 でも本当に顕微鏡で覗くと、鳥が進化してきた過程っていうのが、ものすごくはっきり出ていて、グループによっても違うし、あとはグループっていう垣根を越えて、水辺で生活する場合にはこういう構造になるとか、生活環境でも変わってくるわけですね。それを見ることでいろんなことが分かるのですごく面白いと思います」

●顕微鏡で見ることによって、具体的にどんなことが分かるんですか? 

「鳥に限らず、動物や植物などは種っていうのがあって、その上に属や科、目(もく)とかにグループ分けをどんどんしているんですけど、目レベルぐらいであれば、その羽根の構造を見ただけで仕分けることができます。
 あとは先ほども言った、生息環境によって構造が変わってくるっていう、そういう偏りもあるので、その鳥がどういう生活をしてるかっていうのも推測することができますね」

写真協力:藤井 幹、文一総合出版

ものまねが上手なコトドリ

※多種多様な野鳥が世界にはいますが、藤井さんが今いちばん惹かれている種として、「コトドリ」という野鳥を挙げてくださいました。いったいどんな鳥なんでしょうか?

「オーストラリアの南東部の方にいるんです。スズメ目っていうスズメの仲間がいるんですけど、その中で世界で一番大きい鳥で、琴のような羽根を持っているんですよ。
 好きっていう理由が羽根好きだからなんですけど、琴のようなすごく変わった羽根を持っていて、鳴き声もものまねがすごいんですよ。近くの工事の音だとか、カメラのシャッター音だとか、全部綺麗に真似するんですよ」

●へ〜〜! 

「オーストラリアの地元では言い伝えがあって、森の中で子どもを呼んじゃいけないって言うんですよね。森の中でお母さんが子供を呼ぶと、それをコトドリが真似して、その声につられて、子供がついて行ってしまって迷子になるっていう言い伝えがあって、それぐらいそっくりに真似ることができる鳥がいます」

※フクロウの羽根が特殊だと聞いたことがあるんですけど、そうなんですか?

写真協力:藤井 幹、文一総合出版

「消音効果とか、多分そういう話だと思うんですけれども、まずひとつは表面に産毛みたいな毛がいっぱい出ているんですよ。それも書籍を読んでもらうと何で出ているのかっていうのは書いてあります。

 あとはその翼のいちばん外側にギザギザになっている部分があって、そこが消音効果を発揮しています。これは新幹線のパンタグラフとか、そういうものに利用されていますね。新幹線だと騒音を軽減する役割のために、フクロウの羽根の構造を真似て、使ったりしていますね」

●へ〜! ほかにそういった特殊な羽根を持っている野鳥はいるんですか? 

「日本だとオオジシギという鳥がいるんですけれども、それは尾羽から音を出すんですよね。高速で飛ぶことで尾羽を振動させて、ものすごく大きな音を出します。それはディスプレイのためなんですけれども、あまりにも大きな爆音みたいな音を出すので、カミナリシギみたいに呼ばれたりしています。

 海外だとエクアドルの方に生息しているキガタヒメマイコドリという鳥がいるんですけど、それは翼が棍棒みたいに、軸がちょっと変形していて、それを高速で1秒間に100回以上振動させるらしいんですよ。振動させてこすることで、バイオリンみたいな音を出すんですよね。そういう変わった羽根を持っている鳥もいます」

野鳥はバロメーター!?

*野鳥は「環境を知るバロメーター」とも呼ばれているそうですが、環境の変化に敏感に反応するのが野鳥たちなんですか?

「自然環境の変化に敏感に反応するのは多分、動物、植物みんな共通なんですよ。ただ、鳥は飛ぶことができるので、大きな移動ができない哺乳類とか、昆虫とか、全然動けない植物なんかと比べると、移動が早いんですよね。

 そこの環境が気に入らなければ、餌がないと思ったら、すぐにどっか飛んでいってしまうので、人間が見た時に、鳥がいなくなっていれば、よくない環境だとか、鳥がたくさん来ていれば、いい環境になったとかっていう、そういう判断ができるわけですね。

 哺乳類や昆虫とかだと、急に環境が悪くなっても、なかなかすぐにはそこの個体数が変わったりとかしてこないので、そういう意味では鳥はすぐ飛んでいく、飛んでくるっていうその動きが早いから、変化を見ることが簡単だということで、バロメーターっていう言い方をしていますね」

●そういった意味でいうと、日本は鳥にとって居心地はいい場所なんですか? 

「これは鳥に聞いてみないと分からないです(笑)。私が言っていい話なのかという感じもしますけど、でも今生活できているっていう意味では、鳥にとって最低限生きることができる環境だと思うので、悪くはないんじゃないかなとは思いますね」

●長年、藤井さんが野鳥たちを見てきて、改めてどんなことを感じますか? 

藤井 幹さん

「私が本格的に鳥を見始めて、たかだか、子どもの頃からだとしても40年とかそんなもんですよね。その中でもやっぱり鳥が少なくなったなというのは感じますね。私なんかよりももっと昔から鳥を見ている方の話を聞くと、その頃から比べて鳥は少なくなっているんです。
 私が見始めてからでもさらに鳥は少なくなってきているので、本当にいちばん感じることは、増えている鳥も一部いるんですけど、全体的に鳥が減ってきたなっていうことを感じますね」

●それはどうしてなんでしょうか? 

「やっぱり環境の変化というのがあると思います。それが日本だけじゃないかもしれないですね。日本は四季があって、1年中いるんではなくて、夏になったら渡ってくる鳥、冬になったら渡ってくる鳥もいます。そうすると越冬地だとか、夏どこか繁殖しに行く所だとか、そういう場所の環境変化も、もしかすると影響しているかもしれないですね。

 種類によっては海外でどんどん獲られて食べられていて、そのせいで日本で減ってしまったっていう種類もいます。一概に理由がなかなかはっきり言えないんですけど。日本も干潟みたいなところは面積が縮小したりだとか、どんどん環境が変わっていますので、そういう意味ではちょっと鳥にとって生息しづらい環境っていうのがあちこちにできてしまって、見られる数が減っているっていうのも当然あるのかなと思います」

バードウォッチングのコツ!

●この番組の取材で以前、幕張海浜公園に行ってバードウォッチングを体験させていただいたんですけれども、都会にも意外に多くの野鳥がいるんだな! っていうことをすごくその時に痛感したんですが、普段は気付いてないだけなんですね。

「そうですね。本当にそうだと私も思うんですけど。よく観察会をするんですけども、初めて鳥の観察会に参加される人の多くが、小さい鳥はみんなスズメみたいに思っているわけですよね。でも実際あれはこういう鳥です、これはこういう鳥です、と教えてあげると本当に皆さんびっくりされているのがすごく印象的です」

●種類も、カラスとハトとスズメぐらいかな〜って思っていたんですが、やっぱり観察するっていうのが大事なんですね! 

「そうですね。そこに目を向けるっていうことが大切だと思います。実際に何気なく見ているのではなく、鳥を鳥として認識してあげると世界が広がるので、意識するっていうことがすごく大切なんだなと思いますね」

●冬、野鳥観察するとしたら、千葉でおすすめの場所がありましたら教えてください。

「千葉はすごくいい場所なんですよ。まず東京湾がありますよね。東京湾にはたくさん鳥いますし、船橋だとか、先ほど行かれたって言っていた幕張の方だとか、干潟が広がったりしていますので、そういう干潟には、シギやチドリだとか、そういう干潟に集まる鳥がいっぱい来ています。ちょっと海の方を見渡すと、スズガモっていうカモがもう何千羽も集まったりしてますし、すごく東京湾はいい環境なんですよね。

 あと、九十九里浜ですよね。あそこもいいところですし、内陸に行けば、印旛沼だとか手賀沼だとか、いろんないいバードウォッチング・スポットがありますので、是非いろんなところを歩いてもらえると、いろんな鳥が見られると思います」

●野鳥を見る上で何かコツなどありましたら教えてください。

「どういう場所にいるかっていうことを、やっぱり理解することが大切だと思いますね。鳥をなんとなく見るのも楽しいんですけども、見たいっていう鳥を見る時に、どこに行けば見られるかっていうことを、調べて行くっていうのがひとつ重要だと思います。

 あとは小鳥なんかだと、何を食べているか、例えば木の実だと、この実をすごく食べるから、探し回るよりもこの実がある木のところで待ってみようとか、そうするとその鳥が当然そこに飛んできたりしますから、そういう見方もありますね。だから前もって調べて探しに行くっていうのがひとついい方法だと思います」 


INFORMATION

BIRDER SPECIAL羽根識別マニュアル


『BIRDER SPECIAL羽根識別マニュアル』

 羽根の部位や特徴などから、その羽根の持ち主が分かる優れた羽根図鑑。藤井さんが羽根の調査や研究に費やした膨大な時間さえも感じる力作です。顕微鏡を用いた識別法は画期的で、美しい羽根の写真を見ているだけでもわくわくしますよ! ぜひご覧ください。文一総合出版から絶賛発売中。詳しくは文一総合出版のホームページを見てください。

◎文一総合出版のHP:https://www.bun-ichi.co.jp

◎藤井さんが所属する公益財団法人「日本鳥類保護連盟」のHPはこちら:
 http://www.jspb.org/

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