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ニホンオオカミの伝説〜山梨県丹波山村に残る言い伝え〜 

2021/1/17 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、山梨県丹波山村(たばやまむら)・郷土民俗資料館の学芸員「寺崎美紅(てらさき・みく)」さんです。

 東京都武蔵村山市出身の寺崎さんは、2016年に東京都と山梨県の県境にある丹波山村に移住。現在は学芸員として村に伝わる山岳信仰や風習などを調査されています。もともと登山好きの山ガールだったこともあり、山々に囲まれた、深い森がある村での暮らしを楽しんでいるようです。

 そんな寺崎さんに、村に残るニホンオオカミの伝説や、丹波山村での暮らしについてうかがいます。

☆写真協力:寺崎美紅

写真協力:寺崎美紅

七ツ石神社との出会い

●丹波山村にはニホンオオカミの言い伝えがあるということなんですが、移住するほど、その言い伝えに興味を抱いたのでしょうか?

「なんと言ったらいいのか難しいんですけれども、知らなかったというか、行ったらあったという感じです。場所自体は知ってはいたんですけれども、たまたま登山で訪れてはいる土地だったんです。
 大学でオオカミ信仰とかを専門にやっていて、それで七ツ石神社が丹波山村にあるんですけれども、その時、丹波山村に七ツ石神社があるっていう意識がなかったので、たまたま山で仕事したいなと思って移住したら、そこに七ツ石神社があったっていう感じですね」

●その七ツ石神社というのは、どういう言い伝えがあるんですか? 

「埼玉県秩父市がお隣なんですけれども、そこと同じく、オオカミをお使いとする山の神が祀られていて、7つの大きな岩が御神体として祀られているんですね。

 関東の英雄と言われている平将門公の伝説に基づいていまして、追手から逃げていく最中に七ツ石山に達して、その上で、敵方に向かってどれが本物の将門公か分からないようにするために、7人の従者が影武者として立ちはだかって、それが弓を射られた時に大岩に変化してしまったっていう伝説があります。
 それで7つの大岩は将門公の7人の影武者の化身であるという風に考えられているんですね」

●丹波山村はそもそもどんな村になんですか? 山々に囲まれているんですよね?

「そうですね。山と川に挟まれているというか、人口が540人ぐらいですね。で、山林が97%で、残りの3%ぐらいの平地に人が住んでいるような感じなんです。東京の多摩川の源流域であるので、丹波山村自体は山梨県なんですけれども、東京都の水源地帯であるような場所です」

写真協力:寺崎美紅

●現在は丹波山村の郷土民俗資料館の学芸員でいらっしゃるんですよね? 

「肩書きとしては学芸員なんですけれども、冬場は資料館が閉まっちゃったりするので、主には村の文化財全般の担当として活動させていただいています。調査や研究以外にも観光分野と一緒に、活用だったりとか、その企画の担当をやったりしています」

●村に伝わる言い伝えも調べたりされるわけですか?

「そうですね。名前には残っているんだけれども、どこに今あるか分からないっていうものを探しに行くフィールドワークをしたりします」

山の中で遭遇した大きな白い犬!?

●村に残る言い伝えなどを調べているということですが、これまでにどんな言い伝えに出会いましたか?

「オオカミ関係で言いますと、オオカミは塩が好きだっていう風に言われているんですけれども、夜中に夕飯とか作る時に、家に塩がないって、もしなったとしても、夜中には塩を人の家に借りに行かないっていう話があります。

 外で塩を夜中に持ち歩くと、オオカミがそれを食べに来ちゃうっていう話を聞いた時に、昔そういう風に言われていた、夜中に塩を持ち歩くなと言われていたって聞いた時は、生活にかなり近いところにある考え方というか、かなりオオカミの存在が身近に語られてるんだなっていう風には思いました」

●へ〜! そうなんですね! ニホンオオカミは絶滅したとされてるんですよね? ニホンオオカミについてもいろいろ調査はされてるんですか? 

「私が興味ある分野っていうのが概念的な文化としてのオオカミなので、動物学的に現在どうかとか、生態がどうかっていうことはあまり詳しくはないんですけれども、結構、目撃情報は未だにあったりしますね」

●え!? 未だにですか? 

「未だに、もう令和ですけれども、平成に入ってからも目撃情報、それらしきっていうのはあります。私も大学生の時に、秩父市の三峰神社の奥の院に登っている道中で、でっかい白い犬が道の向こうに立っていたことがありました。

 それが近づいてきたら真上にぴょーんってジャンプして、音もなく横の草むらにサッと入ったのを見たことがあって、それがオオカミかどうかは分からないんですけれども、ロマンがあるなっていう風に思っています」

●その大きな白い犬は普通の犬とはまた違ったわけですか? 

「そうですね。動けなかったというか、急に大きな動物が現れるとちょっとパニックというか、よく分からなくなっちゃうと思うんですけど、(山道を)登ろうと思っていたら、道の先に結構、大型犬サイズというか、毛がすごく白くてフサフサで、『もののけ姫』に出てくる山犬みたいな感じの雰囲気だったんです。

 それがじっと見ていて、どうしようってこっちも思っている時に、真上に飛び上がって、横の草むらにスッと入ったので、慌ててそれを、友達も一緒にいたんですけど、追いかけて行って。

 で、辺りを見回しても、あれだけ大きな動物が飛び上がって草むらに入ったのにも関わらず、特に何も倒れていないというか、草が踏まれてもいないし、音も何もしない。すぐ目の前にいたので、そんなに遠くに行ってないと思うんですけど、森の中も特にガサガサという音もしなくて、シーンとした山のままだったので、今のは一体何だったんだろうっていうような感じでしたね」

●すごい! そんな経験をされていたわけですね!

「そうですね。それが本格的に今後もオオカミ信仰をやっていこうっていうきっかけにもなりましたね」

七ツ石神社を再建!

●丹波山村にはニホンオオカミにまつわる行事はあるんですか?

「丹波山は特に行事ということはないんですけれども、先ほどの七ツ石山は、東京都最高峰の雲取山の手前にある山なんですけれども、その山頂よりちょっと下がったところに七ツ石神社があります。そこにオオカミ信仰があるので、毎年11月の7日に小さな祭礼が麓の神社の方で行なわれて、オオカミの絵が描かれている御札が配られる行事はありますね」

写真協力:寺崎美紅
写真協力:寺崎美紅

●その神社を再建したのは寺崎さん? 

「そうです。移住して、移住する前から知ってはいたんですけれども、登山をしていた時に、ボロボロの神社に偶然通りかかって。その時はほかの所の人間なので、特に何もしてあげられないなと思って、落ちている物とか写真を撮ったりして、記録だけしていたんです。

 たまたま、山で仕事したいと思ったら丹波山村を紹介していただいて、移住しますってことになったら、七ツ石神社が丹波山村にあるっていうことをそこで知りました。じゃあ何かしてあげられるかもしれないということで、地域おこし協力隊としてまず3年間、移住して着任したんです。

 その3年間を使って、まず村の文化財に指定をして、そこから村のお金だったり協力金をいただいたりとかして、下でお宮を作って、ヘリコプターで山まで上げて、上でもう一回組み立ててっていうような形で(再建しました)」

●山で暮らしたいっていう思いがあったということですけど、どうして山で暮らしたいっていう風に思われたんですか? 

「どうしてですかね(笑)。なんか山が好きだからとしか言いようがないというか、難しいですけど」

●それまでずっと東京で暮らされていて、山は登山で行くっていう感じだったんですか?

「そうですね。趣味と、あとは山岳信仰っていう御山の宗教文化とかが、大学の自分の専門だったので、そのためのフィールドワークがてら登山もして、っていうような形で行っていたんですけど、どうしても(東京に)帰って来る度に山がまた遠くなるというか、早く次の山に行きたいなっていうような感じでしたね」

写真協力:寺崎美紅

背負った命の温かさ

●狩猟免許を取得されたと聞いたんですが、そうなんですか?

「移住してもう次の年ぐらいに取りました」

●どうして取ろうと思ったんですか? すごいですね! 

「なんでですかね〜。気づいたらなんかもう始まっていたというか(笑)。興味は元々あったんですけれども、山の感覚により近づきたいっていう気持ちがあったかなという気はしています。
 お肉を得るために命と命のやり取りをするっていうのがやっぱり自然で、山は全ての命に等しく厳しいっていうことを体感しているところです」

●実際、寺崎さんも狩猟に出るわけですよね。どんなものを狙うんですか? 

「主に鹿とか猪ですね。鹿が多いかな? 今、鹿がすごく増えているので」

●今月1月は、ちょうどシーズンなんですか? 

「そうですね。11月から3月まではシーズンです」

●へ〜! じゃあ例えば、鹿を狙って獲ったとして、その鹿のお肉はどうなるんですか? 

「その鹿の肉は自分たちで持って帰って食べるか、それか衛生の基準に則って、獲れてから2時間以内に加工施設に運び込んだものじゃないと、お肉として販売は出来ないっていう縛りがあるので。それをクリアしていれば、加工施設に持って行って解体、お肉に分解しています。

 それで村外のお店だったりとか、村内のお店に渡っていって、道の駅で食べることが出来たり、ふるさと納税などのネットで購入できたりっていう感じになっています」

●(狩猟は)すごく緊張感のある現場ですよね? 

「やっぱり命が絶える間際の様子っていうのは、ちょっと心苦しくはあるんですけども、解体が一旦始まると、なんかちゃんと肉に見えてくるというか、こういう風に出来ているんだなっていうのがあったりします。

 持って帰るためにみんなで背負うんですけど、背負っている時に、当たり前なんですけど、すごく温かいんですよ、そのお肉が。そうすると何か本当に、温かいご飯って美味しさのイメージそのものだと思うんですけれども、でも自然界において温かい食事っていうのは命の温かさなわけで。

 改めて食事っていうのは命をいただくことなんだなっていうのを、当たり前ではあるんですけれども、背負った命が、そのお肉が温かいっていうことが、何かすごく実感としてありましたね」

●まさに命をいただくっていうことですね。

ニホンオオカミのイラスト、そのこだわり

写真協力:寺崎美紅

●あのニホンオオカミのイラストは、どなたが描いたんですか?

「このイラストを描いたのは、画家の玉川麻衣さんっていう方なんです。SNSで偶然見かけて、彼女が描かれているオオカミの絵を。たまたまネットを見ている時に見かけて、この人に是非描いてもらいたいなって思って、連絡をさせていただきました。

 初めて会った時から割と意気投合して、朝まで飲んだりしたんですけど(笑)。その時にお互い、オオカミとか七ツ石神社を再建するっていう熱い思いみたいなのが共鳴して、未だにずっと一緒に仕事をやらせていただいてるっていう感じです」

●手拭いに描かれた星たちもすごく綺麗だなと思ったんですけれども、あれ北斗七星ですよね? 

「そうですね。星の位置も実際に近づけようということで、ご本人にも調べていただいたりとかして。やっぱり自分たちが欲しいものを全力で作ろうということで、七ツ石山に何度かご一緒していただいて、登山しながら打ち合わせなんていうことも結構ありました。

 現地をよく知っている人から見られても恥ずかしくないような、実際にこうなってるよね、みたいな感じに思ってもらえるような仕上がりを目指して、山の形だったり、空の感じは結構こだわって作っているんです。

 オオカミと言ったらやっぱり満月のイメージがあると思うんですけど、満月にしちゃうと、それだと普通、星は見えないはずなんです。でも月も入れたいっていうことで、できるだけ月を細く小さくして、だから星が見えるんですよっていうような感じにしたりとか。空も一色じゃなくて、夜の暗さにもいろんな段階があるっていうことで、グラデーションにして見せようと、かなりこだわって作っていただきました」

●改めて日本にまつわる文化に、寺崎さんはどんなことを感じますか? 

「物理的に失われたりしても、そこで終わりにならないっていうものが文化だと思っているんです。でも、残そうと思う人だったり、タイミングが合わないと残らないものってたくさんあると思うんですね。

 でもオオカミは昔から、自然と動物と人の間を繋いできた存在だと思うんです。それは彼らの姿を、実際になかなか山で見かけなくなった今でも、その文化的な痕跡が、一種の絆のように自然と人間を繋いでいるような気がするので、私にとってオオカミ信仰というか、オオカミの文化っていうのは、人が今でも探してる、見えない自然とのやり取りの答えの最前線を、いつも走っているような感覚ですね 」


INFORMATION

写真協力:寺崎美紅

 寺崎さんが丹波山村のPRのために作ったニホンオオカミのグッズ、是非チェックしてください。玉川麻衣さんのイラストが素敵です。実際に登山しながら打ち合わせもされていたなんてお話もありましたが、かなり忠実に描かれています。

 手拭いやマグカップ、お猪口や焼酎など、地元の道の駅「たばやま」で販売していますが、特産品を買える「丹波山村オンラインショップ」でもお買い求めいただけます。

◎丹波山村オンラインショップ:https://tabayama.shop-pro.jp/

◎丹波山村 郷土民俗資料館のHP:https://www.vill.tabayama.yamanashi.jp/kanko/kyoudo.html

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