毎回スペシャルなゲストをお迎えし、自然にまつわるトークや音楽をお送りする1時間。
生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで幅広く取り上げご紹介しています。

Every Sun. 20:00~

カラフルな湘南の海〜光と影のメッセージ

2021/5/9 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、葉山のダイビングショップNANAの代表で、ダイビングガイドの「佐藤 輝(さとう・てる)」さんです。

 1976年、葉山に生まれた佐藤さんは、学生時代はヨット部に所属し、毎日のように葉山の海で練習。卒業後は有名ホテルの営業マンとして働いていたそうですが、体験ダイビングでその魅力に取りつかれ、ダイビングガイドの道へ。そしてサイパンなどで修行したのち、15年ほど前にダイビングショップNANAをオープン、湘南の海を知り尽くしたガイドとして活躍されています。

 そんな佐藤さんが先頃、写真集『湘南 波の下水族館』を出されました。この写真集は鎌倉在住の水中写真家「鍵井靖章(かぎい・やすあき)」さんとの共著という形で出版されています。

 きょうは子供の頃から葉山の海に親しんできた佐藤さんに湘南の海の特徴や、気になる海の変化などうかがいます。

☆写真協力:佐藤 輝

写真協力:佐藤 輝

魚と同じ目線に感動!?

※それでは佐藤さんにお話をうかがいましょう。初めて地元の、葉山の海に潜ったときは、どうでしたか?

「それは今でも鮮明に覚えているんですね。ヨットで海の上にはもう毎日のように行ったし、小さい時から磯場とかでもいっぱい生き物を見たりもしたんですけど、初めて葉山の海に潜った時は何かもうびっくりするぐらい感動しました。水中で苦しくなくて、普通に呼吸が出来て、魚と同じ目線にいる自分に感動っていう感じでした」

●ダイビングガイドになろうと思ったのは何故なんですか? 

「それは、ライセンスは社会人1年目で取ったものの、本当に軽い趣味だったんですね。年に2回ぐらい海外に行ったら潜ってみたりとか、そんな程度だったんですけども、だんだん社会人の時の趣味が、どんどんのめり込んでいくというか、土日にどこに潜りに行こうかなっていうのを考えるのが、いちばんの楽しみぐらいダイビングが好きになっていて、ある日とっても浅はかなんですけど、これを仕事にしたら毎日潜れるのになぁ〜みたいな気持ちになってきて、もうその気持ちが抑えられなくてサラリーマンを辞めました」

●そうだったんですね! 今はお客さんの案内を含めて年間どれぐらい海に潜っているんですか? 

「その年によってちょっと違うんですけど、だいたい数えたら250日でした」

●ええ!? すごい! 転職してよかったですね! 

「そうですね。本当に好きなことを仕事にしているっていうことに、とっても毎日のように感謝はしています」

●毎回、未だに感動しますか? 

「これはとっても正直に言うなら、さすがに毎日のように潜っているんで、毎回、感動の頂点みたいなのを迎えているわけではなくて(笑)、とっても今は基本的には日常というか、普通の方が会社に行ってくるねっていう感覚で潜っているんですね。

 ただサラリーマンの時と大きく違うのは、毎日じゃないですけど、見たことないウミウシっていう生き物が出てきたりですとか、あとは普段いっぱいいるお魚が、生態行動って言うんですけど、産卵してみたりとか、そういうことがちょいちょい起きるんで、そういうのを見た時はやっぱり、どの仕事も感動って毎日やっていてもあると思うんですけど、僕たちはそういうところにすごく感動を覚えますね」

佐藤 輝さん

穏やかな海

※改めて、葉山を含めた湘南の海の特徴を教えてください。

「相模湾っていう湾にある海なんですけども、相模湾の中では結構奥まったほうにあって、水深とかも深くなくて、イメージ的にはお気軽にダイビングできるというか、来るのも近いし、ボートに乗っている時間も短いし、潮の流れが強いとかもなくて、とっても穏やかな海にちょっと気軽に潜りに行けるっていう感じが特徴の海ですね」

●年間を通してどれくらいのお魚を見ることができるんですか? 

「ちょっと考えてみたんですけど、何種類って分からないなと思いまして、例えばきょうの朝も潜ってきたんですけど、バッと見渡しただけでも何十種類っていう風に、一箇所見てもブワッといるんで、今度機会があったら数えてみたいと思います(笑)」

●そんなに葉山の海にたくさんの生き物がいるっていうのは、やはりそれを支える豊かな生態系があるからっていうことですか?

「それは本当そう思います。やっぱり岩場があって、砂地があって、色んな環境があって、そういうことがたくさんの魚たちがいる環境を作ってくれているんだと思います」

『湘南 波の下水族館』

海中の春夏秋冬

※陸上は初夏を迎えつつありますが、海の中も春・夏・秋・冬と季節の変化はありますか?

「とってもありまして、陸よりも海の方が春夏秋冬を少しだけ先取るんですよ。ざっくり言うと、春は気温が冬から春になって、だんだん上がってきて、魚が増えてくる季節みたいな感じで、プランクトンが増えて、海の透明度が落ちて、海が汚くなるんですね。でもそれはとっても海にとっては栄養が豊富で大事なことで、生まれてきた小さなお魚たちはそのプランクトンを食べて大きくなっていきます。

 夏になると水温がどんどん上がってくるんで、いちばん魚が多い季節みたいな、海の中に群れがいっぱいいます、みたいなのが夏です。夏の終わり頃になると今度は、季節来遊魚って言うんですけど、黒潮っていう南からこっちのエリアの方に流れている潮に乗っかって、熱帯魚たちが流れてくるんですね。夏秋は群れとその季節来遊魚っていう熱帯魚、普段は見られない子たちを楽しむ季節ですね。

 秋が終わってだんだん水温が下がってくると、さっきとは逆でプランクトンがどんどん減ってくるんで、透明度がドンドン上がってくるんですね。綺麗な海になってきて、その代わり群れは減って、水温が落ちた冬は、冷たい水温でしか生きられないお魚たちを観察できるようになるサイクルでまわっています。本当に春夏秋冬で全然違うものになるっていう感じがあります」

●葉山の海でそれぞれの季節を代表する生き物は、例えばどんな種がいるんですか?

写真協力:佐藤 輝

「いちばん人気みたいな感じで言うと、春はダンゴウオです。ダンゴウオは大きさ1センチもないようなお魚なんですけど、お団子みたいな、これがもうとにかくダントツ人気で、この子は3月ぐらいから5月しか見られないんですよ。水温が上がってくるといなくなっちゃうんですね。

 夏になると、夏秋はやっぱり季節来遊魚が人気なので、ミナミハコフグの赤ちゃんとか分かりますかね? さかなクンが被っている帽子の」

●あ〜! はいはい!

「あれも1センチとかそれぐらいの大きさなんですけど、あんなお魚たちが人気の魚です。夏秋はそういうのが人気で、冬になると葉山の場合は、ウミウシって分かりますか? ナメクジみたいな、本当は貝の仲間なんですけど、そのウミウシが冬になると一気に増えるんですね。1日30種類とか40種類とか見られるんですけど、冬はそのウミウシが人気ですね。人によって好きなものが違うんで何とも言えないんですけど、僕のお勧めはそんな感じです」

写真協力:佐藤 輝
写真協力:佐藤 輝

海藻が激減している!?

※葉山の海に潜り始めた頃と比べて、何か変化を感じることはありますか?

「これは多分どこの海も、この辺でいうと伊豆や千葉がダイビングポイントとしては、割と多くの方が潜っている場所なんですけど。どこもだと思うんですけど、やっぱり海藻が激減しているエリアが多いですね。
 昔はアカモクっていう海藻に引っかかっちゃって、浅いところは冬になると前に進めないぐらい海藻が生えていたんですけど、それが全く何もなくなっちゃっているところもいっぱいあって、10年前と比べたら全然違う景色です」

●そうなんですか。地球温暖化の影響っていうのも感じることは多いですか? 

「僕はその専門家ではないので、ダイビングガイドの僕が地球温暖化ですって言い切るのはちょっとよくないのかもしれないんですけど、確実に冬の水温が昔に比べると1度か2度は高いんですね。昔は12度から13度までいちばん冬の冷たい時に落ちたのが、今は14度ぐらいにまでしか落ちていなくて、陸上に比べると水中の2度っていうのは、陸上の何倍も大きい差があって。

 やっぱりよくよく考えてみると、昔当たり前のようにいた魚がすごく減っていたりとか、いなくなっちゃっていたりとか、そういうのはやっぱりすごく大きく言ったら、地球温暖化は絶対関係しているんだろうなとは思います」

写真協力:佐藤 輝

●佐藤さんがいちばん危惧していることって何ですか? 

「それは写真集にもそういうページを作らせていただいたんですけど、色んな魚が減ったりとか、色んなことが起きているんですね。もととなっているいちばん悪いことは、さっきも言ったんですけど、海藻が減っちゃっていることだと思います。海藻が減って小さいお魚たちが隠れる場所がなくなるから大きいお魚に食べられちゃうとか、だから何とかその海藻を取り戻すことが出来れば、もとにもう一回戻るチャンスはあるんじゃないかなっていう気がします」

●どうやったら戻るんでしょうか? 

「例えば僕たちがいつもやっているのは、海藻が減ったことによって”磯焼け”って言うんですけど、ウニとかが食べるものがなくなっちゃうんですね。海藻を食べていたのに海藻がなくなっちゃうんで。
 今までは岩の下とかに隠れていて、夜ちょっと出てきて、いっぱいある海藻を少し食べていたウニが、食べるものがなくなっちゃうんで、どんどん表に出てきて、もう何でもかんでも食べだしちゃうんですね。そうすると岩肌が全部見えてきちゃうような状況に今はなっていて。それもまた賛否両論あると思うんですけど、その海藻を食べてしまうウニを漁師さんと一緒にみんなで駆除したりするんですね。

 でも僕がいつも思っているのは、そのウニを僕らレベルが10人20人で潰したところで、海藻が全部のエリアに戻ってくるとはもちろん思っていないんですけれども、何かそういう地道な活動をして、今そういう大変なことが海に起きているんだよっていうことを、少しでも多くの方に知っていただくことが大事なのかなと思います」

気をよくしてくれる場所!?

※最後に「佐藤」さんが感じる海の魅力って、どんなところですか?

「やっぱり何かちょっと神がかっているかもしれないんですけど、気がよくなる感じがすごく僕はしていて。やっぱり嫌なこととかあっても、毎日海に潜っているといつもフラットな気持ちでいられますし、あとはたまに潜りに来てくれたお客さんが、潜るとなんとなく自然な感じで、“海はいいなぁ〜”みたいなことを本当に自然に言っているのを見たりしていると、やっぱり人間をリフレッシュさせて気をよくしてくれる場所なんだなっていうのが魅力なんじゃないかなと思います」

●私はシュノーケリングしかしたことなくて、ダイビングはしたことないんですけれども、やはり深いところから見るとまた全然違いますか?

「シュノーケリングとはやっぱり違いますね。最初に言った、魚と同じ目線にいるっていうのがやっぱり僕の中では大きく違いますね」

写真協力:佐藤 輝

●気持ちよさそうですね! 一緒に泳げるわけですよね。

「そうですね。本当に一緒に泳いでいる感じですよ」

●今後も佐藤さんは、葉山の海の写真っていうのは撮り続けるわけですよね? 

「もう僕は、写真集を出させていただくのは今回が人生で最後だとは思っているんです。でもやっぱり10年前の写真と今の写真は、要は今は10年前の写真を本当に撮れなくて、海藻もなければ絶滅した魚もいれば。
 なので10年前の写真を撮っておいてよかったなと思うこととかいっぱいあるので、これからも写真を撮って、楽しみつつ、ちゃんと葉山の自分のホームとしてる海の記録を残すという意味でも撮っていこうと思っています」

写真協力:佐藤 輝

●改めて今回の写真集『湘南 波の下水族館』でいちばん伝えたいことは何でしょうか? 

「湘南に住んでいる子供にもとっても伝えたいんですけれども、都心から近い湘南って何かすごくお洒落な海だけど、潜るっていうイメージがまだ多分ないと思うんですね。でも東京から近い海にはたくさんの生き物が暮らしていて、とってもカラフルな海が広がっていて。
 でも今その海には温暖化を含め色んな危機が迫っていて、このままだったらそのカラフルな海は失われちゃうんじゃないかなっていう危機感も感じています。素晴らしい海だっていうことと、今その海に危機が来ているんだよっていう両方を見ていただけたら嬉しいなと思います」


INFORMATION

湘南 波の下水族館』


『湘南 波の下水族館』

 佐藤さんが水中写真家の鍵井靖章(かぎい・やすあき)さんと共に出版した写真集です。東京から近い海にこんなにもカラフルな生き物がたくさんいることに驚きます。数メートル潜っただけで別世界が広がっていることが分かり、可愛らしくてユーモラスな生き物たちに癒されますよ。青菁社(せいせいしゃ)から絶賛発売中です。

 詳しくはダイビングショップNANAのオフィシャルサイトをご覧ください。

◎ダイビングショップNANA HP:https://nana-dive.net/

◎青菁社 HP:https://www.seiseisha.net

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