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生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで
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2021年6月のゲスト一覧

2021/6/27 UP!

◎大久保夏斗(東京農業大学の学生)
新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第3弾! 草ストローに注目!〜ひとりひとりがちょこっとできるエコな選択〜』(2021.6.27)

◎黒ラブ教授(吉本興業所属の芸人)
新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第2弾!〜SDGsをお笑いにのせて、わかりやすく〜』(2021.6.20)

◎齊藤明希(「プラスティシティ」ファウンダー)
新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第1弾!〜ビニール傘をアップサイクル「プラスティシティ」〜』(2021.6.13)

◎岡部 聡(テレビプロデューサー)
生き物の営みを通して、人間のあり方を問う〜TV自然番組名物プロデューサーの視点〜』(2021.6.6)

新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第3弾! 草ストローに注目!〜ひとりひとりがちょこっとできるエコな選択〜

2021/6/27 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、東京農業大学の学生で、ベトナムから草ストローを輸入し、販売する会社を起こした「大久保夏斗(おおくぼ・なつと)」さんです。

 「SDGs」は、「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。地球の資源を大切にしながら経済活動をしていくための約束で2030年までに達成しようという世界共通の目標=ゴールが全部で17設定されています。

 今週は17あるゴールの中から、主にゴール12の「つくる責任 つかう責任」、そしてゴール1の「貧困をなくそう」について。

 去年「HAYAMI」という会社を起こした大久保さんに、草ストローの普及活動を行なう思いなどうかがいます。

☆写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI
大久保夏斗さん

運命のいたずら!? 草ストローとの出会い

 大久保さんが草ストローを販売するようになったいきさつが、ミラクルなんです。

 高校生の頃にSNSで、ウミガメの鼻にストローが刺さった映像を見た大久保さんは、ショックを受け、環境のために何か自分にできることはないか、探していたそうです。そんな中、世界をバックパッキングで旅をしていたお兄さん、迅太(はやた)さんが、たまたま飛行機の隣の席だったベトナムの方から、ベトナムには草で作ったストローがあると教えてもらい、そのことを、帰国した際に、弟の夏斗さんに伝えます。

 東京農業大学の国際農業開発学科で学んでいる夏斗さんは、海洋プラスチックゴミの削減だけでなく、発展途上国の農業支援にもつながると考え、ベトナムの草ストローを日本に広めることを決意、会社を起業します。

 メンバーは大久保迅太さん、夏斗さん兄弟と、草ストローの存在を教えてくれたベトナム人のミンさんの3人。実はミンさんは2年間、日本に留学していたんです。そして去年の5月に、合同会社「HAYAMI」を創業し、草ストローの普及に邁進しています。

 “飛行機の座席がたまたま隣りだった”ことが、ミラクルを生んだ、まさに運命の出会いだったんですね。もしかしたら、神様が環境問題に関心の高い若者を引き合わせた、と言っていいかもしれませんね。

左から大久保迅太さん、ミンさん
左から大久保迅太さん、ミンさん

草ストローの3つの特徴

※それでは大久保夏斗さんにお話をうかがっていきましょう。プラスチック・ストローの代替品になる草ストロー、その特徴を教えてください。

「特徴としては3つあるんです。1つ目は環境保護。脱プラスチックの観点からもプラスチック・ストローではない草ストローを使うことで、環境保護に繋がっているだけでなく、完全生分解性、無農薬、無添加っていう特徴もあるので、使用後にゴミ削減のために、資源として活用するっていう特徴もあるかなと思っています。

 で、2つ目にベトナムの農村、ホーチミンという都市から離れた農村で栽培されているので、ベトナムの農村地帯の雇用も創出していて、発展途上国支援にも繋がっているかなという風に思っております。

 3つ目には、やはり紙ストローより耐久性に優れていて、紙ストローは長時間使用できなかったり、口に張り付いてしまうっていう感触があると思うんですけど、そういったことはなく、長時間使用していただけるところが草ストローの大きな特徴かなと思います」

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

●見た目はどんな感じなんですか? 

「見た目は、本当に草の茎そのものです。何か草と聞くと葉っぱを丸めているイメージを持つ方が多いんですけど、草の茎をそのまま使っています。緑色で、自然のものなので多少、色や大きさにばらつきがあるんですけど、本当に自然本来の、草の茎そのままを使った製品になっています」

●じゃあ草ストローの素材は、茎を持つ植物っていうことなんですか? 

「そうですね。植物名でいうと、カヤツリグサ科のレピロニアという植物なんですけど、イネ科に近い植物ですね」

●そのレピロニアっていうのは、ベトナムで栽培されている植物なんですね? 

「そうですね」

●じゃあ珍しい植物ではないっていう感じですね。

「主に東南アジアの熱帯地域で栽培されていますね」

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

●それが草ストローになるまでにはどんな工程があるんですか? 

「本当に草の茎をそのまま利用しているので、工程としてはシンプルです。洗浄して、あとはカットして殺菌してみたいな、本当にシンプルな過程で作ることができるので、そこで大型の機械を利用してCO2排出みたいなこともない製品です」

●製品化するまでに何か大変だったこととかありますか?

「やはりベトナムと日本の衛生基準っていうのはどうしても異なるものがあったので、現地に向けてゼロから衛生マニュアルを作成してお送りしたり、あとは日本での残留農薬検査だったり、衛生基準の食品分析センターというところで衛生の検査を行ないました」

草ストローを資源にする!?

※草ストローは実際、どれくらいの耐久性がありますか?

「基本的には紙ストローよりは耐久性があります。草の茎を乾燥させているので、初めは潰すとパリッと割れてしまうこともあるんですけど、植物の茎なので(飲み物を)飲んでいるうちに茎が水分を含んで柔らかくなって、潰しても割れにくくなる、耐久性が増すといったような特徴があるんですね。本当にふやけたりすることはないので、長時間使用していただくことは可能です」

●洗えば何回でも使えるってことですか? 

「無添加なので基本的に使い捨てを推奨しています。防腐剤などは添加していないので、植物の劣化だったり衛生面の観点から使い捨てを推奨して販売しています」

●なるほど〜。廃棄処分する時は元々は植物ですから土に返したりとかするんですか? 

「現在、導入店舗から具体的な回収方法っていうのはまだ構築できていないんですけど、今後はその使用後のストローを資源として活用するために、家畜の飼料であるとか、農家の堆肥として活用できないかっていうことは現在検討しています」

●確かに草ストローを砕いていくと家畜のエサになったりもしそうですよね。

「そうですね 。やはり一度、人間の口に付けたものなので、それを動物に与えても大丈夫かっていうところだったり、あとはストローでコーラを飲んだものと、コーヒーを飲んだものを一緒にして、餌にしちゃっても動物に影響がないかっていうところは、ちゃんと考えないといけないなと思っています」

●確かに環境にもいいですけど、ベトナムで栽培したものを適正な価格で輸入したら、栽培農家さんの支援にもなりますね。実際ベトナムの皆さんからの反響とかはありますか?

「やはりコロナ禍で雇用だったり、経済が停滞している中で始めた事業だったので、日本で草ストローを売ることができて、助けられているっていう風には言ってもらえて、すごく嬉しいなと思います」

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

草ストロー、評判は上々!

※大久保さんは草ストローを広めるために、学業の合間をぬって、主にメールや電話で営業活動を行なっているそうですが、いま全国で何店舗くらいのお店が草ストローを使っていますか?

「全国で現在、約160店舗で使っていただいております」

●あ、そうなんですね! 千葉でも使っているところはありますか? 

「千葉も何店舗かありまして、木更津にある”KURKKUFIELDS(クルックフィールズ)”さんだったり、佐倉市にある”笑みごはん”さんだったり、4店舗〜5店舗ほど、ホームページにも導入店舗リストっていう風にして記載させていただいてるんですけど、導入していただいております」

●じわじわと広がっている状況なんですね! お客さんの評判を聞かれることはありますか? 

「飲食店の方から言っていただける言葉でいうと、環境問題にお客さんが興味を持ってくれて、これ何のストロー? っていう質問をしてくれたっていう声だったり、珍しい見た目のストローでコミュニケーションのツールに繋がったであったりとか。あとは見た目もすごく自然で、紙ストローよりも長時間使えるっていうことで、環境に優しいっていうことがダイレクトに伝わって、いい商品だなという風に言っていただきました」

●小さなお子さんはお家でもストローを使う機会は多いですよね。

「そうですね。高齢者の方だったり小さなお子さんは、やっぱりストローを使う機会がどうしてもあると思うので、ストローを使わないっていう選択肢ももちろんありだと思うんですけど、それでも使っていただく必要があるお客様には、ぜひ草ストローを利用して欲しいなと思います」

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

<草ストローを使ってみた>

 実際に草ストローを使った、この番組のスタッフの感想としては、第一印象は見た目も手触りも素朴な感じで、これはいいな! と思ったそうです。植物の、空洞になった茎なので、色味も太さも微妙に異なりますが、ストローとしての機能は申し分ないとのこと。水分を含むと柔らかくなり、耐久性が増すことも確認。

 ただし、乾燥した状態のまま、指ではさんで押すと、パキッと割れてしまうので要注意! 特に幼児はストローを噛んでしまうので、事前に必ず水分を含ませ、柔らかくした草ストローを使うようにしたほうがいいと言ってました。草ストローの箱に使用上の注意が書いてありますので、事前に確認してから使ってくださいね。

サボテンの皮でサイフ!?

※草ストローのほかに何か新商品はありますか?

「今年の3月からサボテンの皮で作ったヴィーガンレザーのサイフの販売を開始しました」

●サボテンの皮からサイフができるんですか? ちょっと想像がつかないんですけれども、どういう風にどうなったらサイフになるんですか? 

「メキシコで有機栽培されているサボテンを使って、そのサボテンを皮にする技術を持ったメーカーがメキシコにあって、それを日本に輸入して、その皮から日本の長年続いている皮職人さんの手でサイフにしていただくっていったような工程で販売しています」

●サボテンで皮を作る技術やメーカーは、どういうところから情報を得るんですか? 

「インターネットなどで、サボテンから皮を作っているっていうのは、以前から知っていたんですけれども、日本にはなかなか普及していないっていうのもあって、ぜひサステナブルな生活の中の選択肢のひとつとして、日本に普及させたいなっていう風に思って販売を開始しました」

●サボテンの皮を使うことで、どうやってサステナブルになっていくわけですか? 

「まず、サボテンであれば水の量も少ないですし、そこまで豊かな土地でなくても育つっていうところがあるんですね。そこから本来、動物の皮で作られているものを植物性のもので作ることで、動物愛護だったり。
 あとは動物性の皮を作る時に、家畜もメタンガスを出していたり、その動物たちの飼料を育てる時に農業を大規模に行なわないといけないので、そういった観点から、サボテンから作ったレザーのサイフを長く使っていただくことで、環境にもいい影響があるのかなという風に思います」

●見た目はどんなおサイフなんですか?

「本当に皮は動物性の皮と同じような手触りで、耐久性もそこまで差異はないです。無駄のないシンプルなデザインで、今現在は黒の一色のみで男女両方に利用していただけるような形になっています」

ミッションは、エコな選択を提供すること

※それでは最後に大久保さんにうかがいます。去年、先行して始めた草ストローの輸入販売、今後はどのような展開を考えていますか?

「そうですね。今いちばん目指しているのは、やはり循環システムの構築ですね。草ストローを使ったあとに、ただゴミにするのではなく、それを資源として活用してゴミを出さないシステムを構築したいなと思っています。ただそこには、どうやってお店から草ストローを回収するのかっていう課題はまだまだあるので、そこもしっかり考えて、導入店舗を増やしつつやっていけたらなと思っています」

●大久保さんが思い描く理想の未来っていうのはどんな未来ですか?

「我々の活動ではひとつミッションのようなものを掲げています。それは”ひとりひとりがちょこっとできるエコな選択を提供し続けること”で、誰かひとりが100環境に優しいことをするんではなくて、ひとりひとりが少しずつ環境に優しいエコな選択をすることで、大きな環境問題を解決できるような未来になったらいいなと思っています」 


INFORMATION

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

 「HAYAMI」で輸入販売している草ストローは、完全生分解性・無農薬・無添加なので環境だけでなく人間にも優しく、日本の衛生検査も通過しています。

 販売価格は、20センチ20本入りで一箱400円、13センチ20本入りで一箱280円。「HAYAMI」のサイトから購入できます。ご家庭はもちろん、飲食店などを営まれているかた、プラスチックゴミを減らすために、ぜひ一度、草ストローを試してください。

 詳しくは「HAYAMI」のオフィシャルサイトをご覧ください。草ストローを導入している店舗のリストも載っていますよ。

◎「HAYAMI」オフィシャルサイト:https://www.hayamigrassstraw.com/

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

 大久保さんが草ストローとは別にこの3月から販売を開始した、サボテンの皮を使ったおサイフは「Re:nne(リンネ)」というブランドの新商品です。名前の由来は「輪廻転生(りんねてんしょう)」の「輪廻」で、「生まれ変わり続ける」がコンセプトになっています。

 動物の皮を使わずに作った製品で特に植物系の素材で作った「ヴィーガンレザー」は、サステナブルで動物愛護にもつながるエコ素材として、いまとても注目されています。原料は、木の皮のほか、キノコやパイナップルの葉っぱ、りんごの皮などでサボテンの皮を使っているのはとても珍しいそうです。

 「Re:nne」ではデザイン性、機能性、そしてサステナビリティを重視して、おサイフを開発。メキシコで製造されたサボテンレザーを輸入し、日本の熟練した皮職人さんがひとつひとつ丁寧に仕上げ、現在は黒の長ザイフと、ふたつ折りサイフの2種類を販売しています。

 詳しくは「Re:nne」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「Re:nne」のオフィシャルサイト:https://rennetokyo.thebase.in

オンエア・ソング 6月27日(日)

2021/6/27 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. SPRING SUMMER FEELING / JILL SCOTT

M2. LIFE SUPPORT / SAM SMITH

M3. DRINK THE WATER / JACK JOHNSON

M4. FEELS LIKE HEAVEN / PETER CETERA & CHAKA KHAN

M5. ロビンソン / スピッツ

M6. WALLET / REGINA SPEKTOR

M7. ANYONE AT ALL / CAROL KING

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第2弾!〜SDGsをお笑いにのせて、わかりやすく〜

2021/6/20 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、吉本興業所属の芸人さん「黒ラブ教授」です。

 「SDGs」とは、「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。地球の資源を大切にしながら経済活動をしていくための約束で2015年の国連サミットで採択され、2030年までに達成しようという世界共通の目標=ゴールが全部で17設定されています。その範囲は飢餓や貧困、環境問題、経済成長、そしてジェンダーに関することまで、いろいろな課題が入っています。

 きょうお話をうかがう黒ラブ教授は、東京大学大学院の研究員のほか、理系の大学講師、そして国立科学博物館認定のサイエンス・コミュニケーターとしても活躍していて、理系や科学系、そしてSDGsをネタにしたライヴで大人気の芸人さんなんです。いったいどんな活動をされているのでしょうか。後ほど、吉本興業のSDGsへの取り組みも含め、お話いただきます。

☆写真協力:黒ラブ教授

写真協力:黒ラブ教授

「世界をどんどんグッドにしたい!」

※それでは黒ラブ教授にお話をうかがっていきましょう。吉本興業のSDGsサイトのトップに、教授の講演会情報が載っていました。まずは、吉本興業がSDGsに取り組むようになったのはなにかきっかけがあったのでしょうか。

「もともと吉本興業って、“住みます芸人”とか、地域活性で都道府県に一芸人を置いて、色々と地域を盛り上げるみたいなことをやっていたんですよね。SDGsは基本的に地域活性の意味もあるので、当初からSDGsに関わってきていましたね。関わってきたというか、やっていたら(あとから)SDGsがきたみたいな感じですかね。

  それで『ジャパンSDGsアワード』っていう国の賞ですか、あれで特別賞をいただいたりとか、そうやって吉本興業はSDGsに関わってきているんですけど、黒ラブ教授自体はまた全然違うところからSDGsに関わってきていて」

●どういうことですか? 

「M1グランプリってあるじゃないですか、あれってお笑いで優勝するやつですよね。で、『サイエンスアゴラ』っていうイベントがあって、これは科学を分かりやすく伝える大会なんですね。そこで優勝させてもらったんです。

 僕がやっていることが、すごく難しい大学の科学を分かりやすく一般の人たちに伝えるみたいな芸風なので、それで優勝したので、国の組織から、SDGsって結構難しい内容なので、SDGsを伝えるのをやってくれないかって言われて、それならやりますって言って、それで僕の方は始まったんですよね、全然違うところから。
 で、たまたま吉本興業に所属しているので、“やろうよ! やろうよ!”ってなって、今に至るという、すごくわけの分からないストーリーでございました(笑)」

●普及活動っていうと黒ラブ教授は講演活動を主にされているっていうことですか? 

「そうですね。SDGsを笑って学べるようなイベントを今作っているんですけど、もともと科学のお笑いライブをやっていたんです。それよりも今SDGsの方が多く呼ばれるようになっているかもしれないですね。そのぐらいSDGsがメインになってきてはいますね」

●SDGsとお笑いってなかなか交わることのない2つの要素だと思うんですけれども、どうやって組み合わせているんですか? 

「SDGsって何の略か知ってる? って言った時に、結構多くの人が間違えていたので、間違えた例を紹介しますとか言いながら、例えば“スマブラ、ドラクエ、ガンダム、すげー、いや違うその略じゃないよ! SDGsってそういう略じゃないよ!”とか、

 “SDGsって何の略? そろそろお昼、どうする、ガストか、サイゼリア”とか、“いやいや女子高生の皆さんですか? 違う違う、世界の話だからね!”とか言って(笑)、

 そういう色んなところから、“サンマ、ダイコン、50%オフなら、即買い!”とか“よく言われるよね〜! 奥さんに言われたんだろうね〜”みたいな(笑)、“違うんだって! SDGsっていうのは〜”みたいな感じで、ボケとお笑いを混ぜながらしていて。

 その中でいいのを発見したんですよ、これは笑いではないですけどね。“SDGsって何の略? 世界をどんどんグッドにしたい!”、世界のS、どんどんのD、グッドがGで、したいがSなのでSDGs。“世界をどんどんグッドにしたい!”ってすごくいい、本物より分かりやすくないですか?」 

●分かりやすいです! 

「これはね、あ! と思っちゃいました(笑)」

写真協力:黒ラブ教授

誰でもできるSDGs。

※黒ラブ教授はSDGsをネタに講演会も数多く行なっていらっしゃいますが、なにか気をつけているってことありますか?

「誰でもSDGsって聞いちゃうとわけ分からなくなっちゃうので、これ誰でもできることだよ。例えば環境に気を使っているメーカーのお菓子を買うとか、そういう小っちゃなところから実はできるんだよとか。そこが実は相当な攻撃能力じゃないですけど、地球を動かすパワーになっていると思ってます。

 消費者が今SDGsに関していちばんパワーを持つ時代になってきていると思うので、そこら辺をお伝えすることと、あといかに、僕が環境系のことを喋っていると、なんか意識高い系の方なんだなぁみたいな、全然私と違うんだわと思われがちなので・・・僕がSDGsの講演とか逆に見ると、講演している方をそういう風に思えてしまうので、そうじゃないよみたいなことを伝えるのがメインかもしれませんね。自分が意識高いとかそういうような人間じゃないよ的な感じでやっていますね」

●みんなに関わってくることですよね。

「そうですね。みんなに関わってきて、みんながやらないと実は意味がないので。これまでの環境系の教育というか、運動ってどうしても意識高い系が出ちゃいますよね(笑)。なんかちょっと関係ないかなとか、そうやって随分、多分1987年ぐらいからサステイナブルっていう言葉は、持続可能なっていう言葉は作られているのにも関わらず、どんどん地球がやばいことになってきて、異常気象を起こしたり、結構やばいことになっているじゃないですか。でも環境活動は結構やっていたはずなんですよね、皆さん。やっている方はですけどね。

 それだとやっぱり進まないので、いかに全然普通というか、僕とかもそんな意識は高くないので、そういう人が実はやれるんだよとか。そういうところを目指したいので、わざと講演中、これよくないんですけど、ペットボトルを持っていきます、マイボトルじゃなくて(笑)。こいつ全然できてないじゃん! こいつ大丈夫か? って思わせるような、俺がやったほうがいいんじゃないか? というような感じに思わせたほうが多分やれると思う、印象深くなりますしね。

 SDGs講演っていうと真面目な話を今から聞かされるんだろうなって、思ってないかもしれないですけど、ちょっとあると思うんですよね。前ふりでインパクトや面白さも与えながら、こいつ全然ダメだな、みたいな(笑)結構意図的にやっていて。そんな人でも少しこういうこともできるんだ、みたいな。SDGsを全部守れって言ったらできなくなっちゃいますので、一部でもいいから、まずはそういうようなところを伝えられればいいなって思っていますね」

写真協力:黒ラブ教授

<「SDGs」の前身「MDGs」とは>

 さて、今回、黒ラブ教授から教えてもらったことがあります。それは「MDGs」。この「MDGs」は「MILLENNIUM DEVELOPMENT GORLS(ミレニアム・デベロップメント・ゴールズ)」の略で「ミレニアム開発目標」と呼ばれています。「SDGs」の前に定められた目標で、2000年に国連で採択され、2015年までに8つの目標を達成しようというものでした。

 その目標のなかで、貧困の撲滅や初等教育の普及などには大きな成果があったとされていますが、解決できなかった課題や、新たな環境問題などに対応するため、「SDGs」が誕生し、17の目標が設定されたということなんです。

 「MDGs」と「SDGs」の違いは、目標の数だけではありません。前身の「MDGs」は国連や国の政府が取り組みの主体だったのに対し、「SDGs」は国や自治体に加え、民間企業や一般の人々も取り組むことになっています。また、目的は「MDGs」が発展途上国の課題を解決することでしたが、「SDGs」は先進国の課題を解決することも含まれています。

 「SDGs」の17の目標=ゴールは2030年までに達成することになっています。私たちひとりひとりに、何ができるのか、「黒ラブ教授」もおっしゃっていましたが、お菓子を買うにしても環境のことを考えて作っているメーカーのお菓子を選ぶなど、消費者に出来ることってたくさんあるのではないでしょうか。

いかに続けるのかが、いちばん大事

※黒ラブ教授はSDGsの講演会で、こんなことを感じているそうです。

「講演をやりながらお客様からも学べるので。よく肥料を土に返すみたいな、生ゴミを肥料に返してみたいなのあるじゃないですか。そういうキットを売っていたりする地域があるんですけど、意識高い系の人ですら続かないんですって、大変で。それだとやっぱり一過性のものになって、SDGsムーブメント! みたいになるんだなっていうのを勉強して、やっぱりいかに続けるのかっていうのがいちばん。

 意識が高い人でもそういう行動が続かない人もいるんだから、そこをどうにか変えたいなと思ったりして、色々そういうことも言ったりしながら。結構裏のところをみんな言わないですよね、やっぱり恥ずかしいっていうか。 そういうありのままの声を聞けるのもやっぱり芸人の特質だろうなと、そういうところがありますね」

●17の目標の中で黒ラブ教授がいちばん気になっている目標っていうのはありますか? 

「これはですね〜何にしようかな(笑)。まぁ自分も貧困ちゃ貧困なので〜と思ったんですけど(笑)、いちばん大事なのは13番の気候だと思うんですよね。気候がダメになったら家も壊れたりとか、森も壊れたりとか、結構すごい力なので、そしたら貧困にもなりますし、台風とか異常気象とかで教育もできなくなる場合もありますし、なのでやっぱり13番、芸人としてはちょっとつまんない答えですね〜(笑)。

 なので! 気候をなおすには、多分住み続けられる街づくりをっていう11番があるんですけど。もともと僕たちは住み続けられちゃっているんですけど、そういう意味じゃないですけどね。すごく長い目で見た住み続けられる街づくりをなんですけど、それをしっかりできると多分気候もよくなると思うので、この住み続けられる街づくり、例えば小さな環境で世の中を回すというか地産地消というか、そういうようなところができると多分環境も汚さなくなると思うので、11番にします!」

写真協力:黒ラブ教授

難しい内容を分かりやすく

※教授は東京大学大学院の研究員、理系の大学講師、そして国立科学博物館認定のサイエンス・コミュニケーターの顔もありますが、なぜ芸人さんになろうと思ったんですか?

「昔から笑わせていた天才的な少年だったんですよ、まさかこんなに全然売れないとは思いませんでしたけど(笑)。じゃなくて、本当に昔から笑わせていたのは事実で、それでM1グランプリに行ったんですよね。その時まだ素人だったんですけど、たまたま新聞に載ったりして、やっぱりお笑いってすごいなって思ってやっていたんです。そのあと大学に行った時に、大学の授業すごくつまんなかったんですよ。大学の授業を見たら、すごくつまんなくさせる技術がてんこ盛りだったんですよね(笑)。

 ある意味すごく才能的な授業で、どんなに興味を持っていても眠くなるっていう魔法の性質があるんですよ、みんながみんなじゃないですけどね。で、お笑いもやっていたんで、いかに引きつけるか、笑わせるか、楽しくさせるかっていう技術も片一方で学んでいたので、もしかして難しい内容でも、こっちの面白い技術を入れればできるんじゃないかっていうのが、今の黒ラブ教授なんですよね。だからSDGsも実は難しい内容を話してるんですけど、おもしろおかしく簡単に見させるというか」

●東京大学の大学院では研究もされているっていうことですけど、それはどんな? 

「黒ラブ教授の活動が難しいものをどう分かりやすく伝えるかっていうことなんですけど、これって科学コミュニケーションっていう学問なんですね。研究は、黒ラブ教授自身をというか(笑)、それを論文にするというか、いかにみんなに伝えるか、他の方にもそのノウハウを伝えて、難しい内容でもいかに伝えるかとか。

 結構、科学コミュニケーターっていっぱいいるんですけど、多くが難しいものをわかりやすく伝えるには難しいものを省いちゃって、中身のない、へ〜だから何? っていうような説明になっちゃっていて、魅力がなくなっちゃうんですよね。その難しさに魅力があったりするところもあって、そこを加えながら、僕の場合、難しいことをうまく入れながらも分かりやすくするように努力するんですけど」

●そのバランスってちょっと難しそうですね? 

「もう本当それもさじ加減で、よく失敗もしますね。失敗するんかい!(笑)そんな感じですけど」

●サイエンスコミュニケーターっていう肩書きもありまして、すごいですよね。これも認定されるものですよね。

「そうなんですよ。これ国立科学博物館で、超勉強するんですよ(笑)。すごく時間がかかるんですよ。ずっと試験ばっかりあって、結構な難易度で、選りすぐりの人たちが集まってくるので」

●黒ラブ教授がこのサイエンスコミュニケーターってことは、すごいことなんですね。

「ちょっと自慢しておきました、ありがとうございます! 売れない芸人だからとりあえずそういうこと言っとかないと(笑)」

写真協力:黒ラブ教授

理系が地球を助ける!?

※最後に世界はまだまだコロナ禍のなかにいますが、2030年までにSDGsの17の目標を達成するためには、どんなことが大切だと思いますか。

「そうですね。職とかも失っている方が多くなってきちゃっていると思うので、まずはウイルスを抑えて、社会の混乱を減らすというか、完全にどうなるか分からないですけど、それがないと、余裕がないままだと人間ってやっぱり環境のことなんて気にしてられないですよね、正直言って。もう自分の環境が悪くなってきちゃっているので、まずはウイルスを抑える。まずそこが始まんないと多分SDGsが、今回コロナ禍になってプラスチックのゴミがすごく増えちゃったんですよね、ギュイーンって上がったんですよ」

●コロナ禍でどうしてプラスチックが? 

「梱包材が増えたじゃないですか、それですごいらしいんですよ、今、ゴミの業界に聞いたら。まずはそこら辺をもとに、巻き戻っているところが多いので。意外にロックダウンしても気候が少し直っただけで、やっぱり悪かったんですよね。
 少しだけしか直っていないというのは、ロックダウンしても駄目ってことは、じゃあどうするんだって話ですけど。相当社会の仕組みを変えなきゃいけないなっていうようなレベルになっているんですけど、ちょっとそう思いましたね」

●黒ラブ教授さんが思い描く未来像があれば是非教えてください。

「やばい、今のところ芸人なのに真面目なことしか喋ってない! やばいこれはやばいですよ!(笑)思い描く未来ですよね。やっぱり科学コミュニケーターで科学をやっている人間なので、科学っていい面もあるけども、やっぱり環境を壊した張本人のひとつでもあるんですよね、技術っていうのは。
 なのでやっぱり理系をもっと増やして、いい意味の理系の技術が少しでも上がって、今度は地球を助ける技術の発展を促したいので、そういう理系が増えればいいかなっていう、そういう未来を描いている真面目な黒ラブ教授でございます」


INFORMATION

 「黒ラブ教授」の活動についてはオフィシャルブログやTwitterをぜひご覧ください。
吉本興業が行なっているSDGsの活動にもご注目を!

◎「黒ラブ教授」オフィシャルブログHP:https://kurolovekyouzyu.web.fc2.com

◎吉本興業が行なっているSDGsの活動のHP:https://www.yoshimoto.co.jp/sdgs/

オンエア・ソング 6月20日(日)

2021/6/20 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. SOMEBODY’S BABY / JACKSON BROWNE

M2. JET / PAUL McCARTNEY & WINGS

M3. SPEED OF SOUND / COLDPLAY

M4. PRIDE(IN THE NAME OF LOVE) / U2

M5. 瑠璃色の地球 / 松田聖子

M6. SMILE / ELVIS COSTELLO

M7. EARTH / LIL DICKY

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第1弾!〜ビニール傘をアップサイクル「プラスティシティ」〜

2021/6/13 UP!

 今週から番組放送30年特別企画として新シリーズがスタートします。シリーズ名は「SDGs〜私たちの未来」。この番組ではおもに「環境」や「自然」に関する項目にしぼって、SDGsについて、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。そして今月6月は「環境月間」ということで、3週にわたって新シリーズをお届けします。

 第1弾の今週は「SDGs」をひもときつつ、雨のシーズンということで、廃棄されるビニール傘を、トートバッグなどの製品にアップサイクルして販売するブランド「プラスティシティ」にフォーカス! ファウンダーでデザイナーの「齊藤明希(さいとう・あき)」さんにお話をうかがいます。

☆写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

齊藤明希さん

<SDGsとは?>

 きょうのゲスト、齊藤さんはバッグの専門学校在学中に「プラスティシティ」を設立、現在はトートバッグをメインにブランド展開、おもに自社のオンラインストアで販売しています。齊藤さんにお話をうかがう前に「SDGs」とはなにか、おさらいしておきましょう。

 SDGsは「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。

 私たちがこれからもこの星「地球」で暮らしていくために、世界共通の目標を作って、地球の資源を大切にしながら経済活動をしていこう、そのための約束がSDGsなんですね。

 2015年の国連サミットで採択され、2030年までに達成しようという目標=ゴールが全部で17設定されています。その範囲は飢餓や貧困、環境問題、経済成長、そしてジェンダーに関することまで、いろいろな課題が入っています。

 きょうはSDGsの、17設定されているゴールの中から「つくる責任 つかう責任」について考えていきましょう。

年間8000万本!?

●それでは齊藤さんにお話をうかがっていきましょう。ビニール傘のビニール部分をアップサイクルの素材に選んだのは、どうしてなんですか?

「もともとバッグの専門学校に入りたいって思ったのも、なるべく環境に優しい素材を使ってバッグを作ってみたいと思って専門学校に入ったんですね。だから何か素材をと思って、日頃から何が使えるかっていうのは探していて。東京の学校だったんですけど、通学している時にもよく雨の日には捨てられた傘を見ることも多かったですね。

 最初は例えばコルクとかも環境にいい素材だし、使えるかなって思ってちょっと試してみたり、ヴィーガン素材っていうのも市場に出始めてはいたので気になってはいたんですけど、そういうものを取り寄せて試すのがちょっとハードルが高く感じたっていうのもあったり、見たことある製品だったり、何かもうちょっと新しいものを探したいなとは思っていて。

 環境にいい素材って見る観点によってすごく意見が分かれるというか、難しいものだと思うので、どのみちゴミにされるものを再利用できるのが、いちばんのエコな素材なんじゃないかなっていう風に考え始めて、それから普段の生活で身近なところで何かないかなって探し始めました」

●国内で1年間に廃棄されるビニール傘がおよそ8000万本ということですけれども、それは齊藤さんはどのようにお考えですか?

「なんか想像つかない数だなって。私は最初こういう問題をテレビのニュースで知ったんですけど、でも8000万本って集まっているのを見たこともないし。ただブランドを始めて実際に回収した傘、3000枚のビニールが山積みにされているところを見た時に、私より背が高いくらい山積みにされていたんですけど、これでも3000枚なんだっていう、すごくそれは衝撃的ですよね」

写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

試行錯誤を経て開発した「グラス・レイン」

●ビニール傘のビニール部分はどうやって集めているんですか?

「ビニールの部分は、専門学校の時は本当にゴミを回収している方に直接“譲っていただいてもいいですか?”って聞きに行ったり、確実にゴミにされているっていうのが分かる傘を1本1本回収してましたね。

 道ばたで見つける傘や置いてある傘は、明らかにゴミに見えても、一応。所有権が分からないものなので勝手に取ってはいけないらしくて、なのでもう本当にゴミとして回収されたものだけを集めていたんですけど、ブランドになってからは、商業施設や鉄道会社さんのほうで回収された傘を大量に買い取っています」

●大体、ひと月でどれぐらい集まるものなんですか? 

「毎月集めているっていうわけではなくて、まとめて最初3000本分を一気に買い取って。だから定期的に回収するっていう感じですね」

●一般の方々からもビニール傘を集めているんですよね? 

「はい。数ヶ月前に始めた企画なんですけど、直接メッセージでお客様から、家にある傘を回収していただくことは可能ですか? っていう連絡がいくつかあったり、そういったこともあったので始めたプロジェクトです。1枚ビニール部分をある程度洗浄していただいて、ポストで投函していただいて、1枚につきオンラインストアで使える100ポイントと交換するっていうようなシステムになっています」

●どのくらい集まっていますか? 

「まだ100枚はいってないかなって感じなんですけど、でも徐々に集まってきて、今はトートバッグ1つ分ぐらいは集まっています」

●ビニール傘は、家にあるっていう方きっと多いと思います。

「気づいたら溜まっているっていう方がすごく多いので、どんどん送っていただきたいです!」

●廃棄されるビニール傘のビニールの部分を、独自の技術を使って新たな素材に生まれ変わらせて、「グラス・レイン」という風に名付けられましたけれども、そこに辿り着くまでも色々な試行錯誤があったんじゃないですか? 

「そうですね。最初は1枚のビニールで縫製をしてみたり、異素材と縫い合わせたり、色々試したんですけど、何をしてもやっぱりビニール傘のチープさから抜け出せなくて。

 いい素材と組み合わせてバッグを作っても、他の素材に頼っていたら、もはやビニール傘を使う意味がなくなってしまうって思って、そのビニール部分だけで、単体でもっと価値をあげないといけないなっていう風に考え始めて、そこからこのビニールだけで何ができるかっていうのを色々と実験し始めました。

 色々と塗ってみたりとか、のりを塗って何枚か重ねたりとか、どうやったらもうちょっと強度を上げて、見た目もよくするかっていうので、色々試行錯誤はしました」

*補足:齊藤さんは素材になるビニールの強度をあげるために、何枚か重ねていろいろ試したそうです。そして熱すれば硬くなる性質に気づき、アイロンで圧着すれば、接着剤を使わなくてもくっつくことを発見。そして独自の技術を施して、新たな素材「グラス・レイン」を開発されました。

写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

<傘をゴミにしないために>

 今週は新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第1弾! SDGsの17ある目標から「つくる責任 つかう責任」について。ということで、廃棄されるビニール傘をアップサイクルしているブランド「プラスティシティ」の取り組みをご紹介しています。

 さて、雨の季節、急に降られて、仕方なくビニール傘を買って家に帰ったことってありますよね。どのご家庭でも2〜3本をあるであろうビニール傘を一般家庭で廃棄する時は、多くの自治体では不燃ゴミとして回収しているようですが、持ち手の部分のプラスチック、金属の骨、そしてビニール部分があるので、とてもリサイクルしにくい、やっかいなゴミになってしまいます。

 では、傘をゴミにしないコツはないのでしょうか。

 まず、番組としてご提案したいのが、国産の良質な傘を購入して大事に使う。

 日本の、傘を作る技術は優れていますが、海外で生産された安い傘におされて国内のシェアは激減しているそうです。国産の傘を購入することで、傘を作っている会社や職人さんを守ることにもつながりますよね。

 そして、大事な傘がもし壊れたら、ホームセンターやショッピングモールにある修理屋さんで直してもらいましょう。愛着のある傘は修理して長く使いたいですよね。

 続いて、徐々に広がり始めている、傘のシェリングサービスを利用する。

 駅前、商業施設、コンビニなどにある傘スポットからレンタルし、使わなくなった傘は返却するシステムで、1日70円で借りられるとのこと。

 詳しくは「アイカサ」のサイトをチェック! https://www.i-kasa.com/

 そしてご家庭にある、いまは使わなくなった傘は捨てずにリユースしてもらう。

 地域によっては傘の貸し出しサービスを行なっているところもありますし、発展途上国の支援物資として受け入れている団体もありますので、そこに寄付するのはいかがでしょうか。

 そして、これは傘本体ではないんですが、雨の日に、百貨店やショッピングセンターなどの入り口に設置してある、濡れた傘を入れるビニール袋、これもゴミになっちゃいますよね。

 そこで提案したいのが、自分だけの傘カバー。

 くるくる丸めてコンパクトになるので持ち運びが苦にならないし、傘を収納して肩にかけたりできる、機能的な傘カバーが市販されています。一度チェックしてみてくださいね。

 傘をゴミにしない究極のコツは、やはり私たちの意識を変えること、ではないでしょうか。

 仕方なく買ってしまったビニール傘を処分するときには、齊藤さんのお話にもあった「プラスティシティ」の一般家庭向けリサイクル・プログラムをぜひご利用ください。ビニール部分1枚で100円分のポイントがつきます。ビニール傘からビニール部分を取り外す方法や、送り方などは「プラスティシティ」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎プラスティシティ:https://plasticity.co.jp/

写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

便利さが無駄を生む!?

●実は齊藤さんは3年間、イギリスの大学に留学されていたそうですよ。イギリスでの生活が今の活動に何か影響を与えたことってあるのでしょうか?

「大学にいた頃は何も考えていなかったというか(笑)、今関心あるものを当時は感心が特になかったりしたんですけど、後々、変わったかなって思うのは、東京からイギリスのロンドンではなくてちょっと田舎の方に行ったんですけど、すごく色んなことが不便に感じてましたね。

 日本ってその便利さが、例えば何かが不便だったなって思ったら、それに対してのソリューションが製品っていう形であることが多いと思うんですけど、イギリスはそうではなくて、何か不便だなって感じたことは自分なりに受け入れないといけなくて。

 その時はめんどくさいなとか、何でもうちょっと東京みたいに進んでないだろうって思っちゃったりとかしたんですけど、でも逆に(日本に)帰ってきて、こんなに便利じゃなくてもいいんじゃないかなって。その便利さが結局色々な無駄を出している要因でもあるので、帰ってきてからやっと気付かされたことだと今は思います」

●具体的にイギリスで不便だったことって、どんなことなんですか? 

「それこそビニール傘はそんなに売っていないし、雨が降ったら、イギリスはよく雨が降るし、1日でもすごく変化が多いので、別に雨に打たれてもいいし(笑)、何かそういったことがあったり。

 あと傘とかは関係なく、例えば自動販売機があまりなかった町で、お店がすごく早く閉まってしまう、そういうのに不便さを感じたんですけど、お店が開いてる時に行けばいいし、自分がその環境に合わせて行動すればいいだけであって、何もかも今欲しいからっていう風に考えなくてもいいのかなって思いました。 お店が閉まっている分、そこで働いている人たちは早く家に帰って家族と過ごせているんだなとか、そういったことを考え始めました」

なくなるのが目標のブランド!?

●今週は新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第1弾! SDGsの17ある目標のなかから「つくる責任 つかう責任」。

「プラスティシティ」のスローガンに「10年後はなくなるべきブランド」とありますが、これにはどんな思いがありますか?

「それは色々な思いがあるんですけど、私たちがこんなに簡単にビニールの素材が手に入ってしまうっていうのは、きっといいことじゃないし、10年後にはこんなに簡単に手に入らない素材であってほしい、それがブランドとしての目標かなって思います」

●このブランドを初めて何か意識の変化みたいなものってありました? 

「購入してくださった方のコメントとかを読んでいて、意識の変化っていうか分からないんですけど、気付かされたことは、こんなにも共感してくれている人が多いんだっていうこと。自分が関心があったり、気になっていたことが、こうやってブランドっていう形でローンチした時に、みんなも同じことを感じているんだっていう風に思ったことですね。

 あとはお客様の中で、SNSで投稿してくださった方で、私たちの製品ってもともと廃棄されている傘なので、どうしても取れない汚れだったりもあるんですけど、私はむしろそのサビの汚れがかっこよくデザインになるなって思って、それも取り入れたいと思っていて。

 それはすごくお客様によって反応が色々で、好む方もいれば、もうちょっと白いものがほしいっていう方もいらっしゃるんですけど、買ってくださった方の中で、透明なものを想像していて、届いた製品を見たら、サビが付いていてショックを受けたって言っていたんですね。

 でもそのショックを受けた、何でも新品で何でも新しいものを期待してしまっている自分の考え方を、意識することができたっていう風にコメントしてくださって、私も想像していなかった反応だったので嬉しいなと思って」

●最後に、この番組のリスナーに伝えたいことをお話いただきました。

「私は個人的に物を買うときは、購入することは一種の投票と同じようなもので、貢献したい会社だったり、こういうプロダクトが増えてほしいなっていうものに対して、なるべくお金を使うようにはしています」

●その製品を購入するだけじゃなくて、その背景も知ってもらいたいっていうことですか? 

「そうですね。ちょっと意識するだけでなくせる無駄だったり、ゴミになるものをちょっとでも減らせるのかなって。だからきょうあすからでも始められることって、きっと気にしていないとできないけど、ちょっとでも意識するとすぐに変えられることとか、行動に移せることってあるのかなっていう風に思います」

写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

INFORMATION

 齊藤さんは、廃棄されるビニール傘をアップサイクルするブランド「プラスティシティ」を立ち上げました。これは「つくる責任」の一翼を担っていると思います。「10年後にはなくなるべきブランド」という思いにも共感しました。みなさんは、どう感じたでしょうか。

 「プラスティシティ」で販売しているトートバッグなどの製品情報や、一般家庭向けのビニール傘のリサイクル・プログラムについて、詳しくは「プラスティシティ」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎ 「プラスティシティ」HP:https://plasticity.co.jp

オンエア・ソング 6月13日(日)

2021/6/13 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. BAD WEATHER / DIANA ROSS & THE SUPREMES

M2. SPIRITS IN THE MATERIAL WORLD / THE POLICE

M3. TRY TRY TRY / NIKKI YANOFSKY

M4. RAIN / MADONNA

M5. 雨 / 森高千里

M6. 雨に濡れても / B.J. THOMAS

M7. CHANGE IN MIND, CHANGE OF HEART / CAROLE KING

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

生き物の営みを通して、人間のあり方を問う〜TV自然番組名物プロデューサーの視点〜

2021/6/6 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、テレビの人気自然番組「生きもの地球紀行」や「ホットスポット 最後の楽園」、そして「ダーウィンが来た!」などを手がける名物プロデューサー「岡部 聡(おかべ・さとし)」さんです。

 岡部さんは1965年、大阪府生まれ。子供の頃からテレビの自然番組が大好きで、将来は海洋生物学者になりたいという夢を持つ少年だったそうです。そして進学した琉球大学ではサンゴ礁生物学を専攻、主に魚の分類に関する研究をされていたそうです。

 そして自然番組の制作を希望し、NHKに入局。その後、手がけた番組が海外の映像関係の賞を受賞するなど、その手腕は高く評価されています。現在はNHKエンタープライズ・エグゼクティヴ・プロデューサーとして活躍。また、先頃出版した本『誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち』でも注目されています。

 きょうはそんな岡部さんに、生き物の、不思議で奇妙な驚くべき生態、そして「ホットスポット 最後の楽園」のプレゼンターをおよそ10年務めた、福山雅治さんとの取材エピソードなどうかがいます。

☆写真協力:岡部 聡

岡部聡さん

イルカが漁を手伝ってくれる!?

※新刊『誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち』には、岡部さんが世界の取材先で目撃した、生きものたちの、不思議で奇妙な生態が、体験談とともに全部で14編掲載されています。まずはその中から、私が特に気になったお話をうかがっていきましょう。

●まず、人間の漁を手伝うイルカがいるということで、岸にいる人間には魚の群れがいつ、自分たちの前に来るのか分からない、どのタイミングで網を投げるのか、それを教えてくれるのがイルカ、ということですけれども、イルカが合図してくれるっていうのはどういうことなんでしょうか? 

「そんなことがあるのかとやっぱり思いますよね。ブラジルのラグーナっていうところの話なんですけれども、非常に特殊な地形をしているんですね。人間が立てるぐらいの砂浜があって、そこからちょっと行くと、もう20メートルくらいまで落ち込んでいるような地形になっているんです。

 そこに夏になるとボラが回遊してくるんですけれども、水が結構濁っているので人間からはどこにボラの群れがいるかは、同じ水面に立っている限りは分からないんですね。で、人間が(ボラを)獲る方法は投網ですから、自分の目の前、5〜6メートルぐらいまでしか投網って届かないので、何も見ずに投げると何も獲れないと。

 イルカはイルカで闇雲に追いかけてもやっぱり、獲れるでしょうけど、体力を使いますよね。で、人間が立てるくらいの浅瀬があるので、(ボラを)追いかけてもそこにザーッと逃げ込まれちゃうとイルカも獲れないと。それをどうやって解消しているかって言うと、イルカが(ボラを)人間の方に追い込んで、人間が網を投げるとそれでびっくりして、イルカの方に戻ってくるんですよね。それをイルカが獲っているっていう漁の方法で、両方にメリットがあると。

 だから人間からするとイルカが追い込んでくれる。イルカからすると人間が沖の方にボラを追い出してくれるっていうような関係があって、確かにボラの群れを追いかけている時のイルカの動きっていうのは、普通の動きとはちょっと違うんですよね」

●どんな動きになるんですか?

「背中を高く上げるような動きになるんですけれども、普通の呼吸とはちょっと違うような動きをするんですね。素人が見ていても言われないと分からないんですけれども、よくよく見ていると、背びれだけが上がるのか、背中全体が上がるのかっていうところで、確かにその1回だけは、全然それまで泳いでいる呼吸のための泳ぎとは違うような動きをするので、ベテランはすぐに、今イルカがこっちに魚を追い込んだっていうのが分かるそうです」

『誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち』

空中の葉っぱに産卵する魚!?

※岡部さんが先頃出された本『誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち』には、こんなお話も載っています。

●熱帯魚のコペラ・アーノルディという魚。魚という生き物の常識を超えた、世界で唯一のとびっきり変わった方法で産卵するという風に書かれていますけれども、これは一体どんな方法で産卵するんですか? 

「魚って基本的には卵に殻がないので、水中で卵を産むっていうことが前提になっているんですね。それは両生類までは卵に殻がないので、どうしても産卵は水中でやらないといけないと。
 爬虫類とか鳥類になってくると殻があるので、陸上に進出できるっていうのが普通の考え方なんですけれども、コペラ・アーノルディっていうのは水面の上にある葉っぱに産卵するんですよね。それは本当にオスとメスが上手く同調して、一緒に飛び上がって、ペタッと葉っぱに引っ付くんですね、2秒とか3秒ぐらい。

 その間にパパッと1回あたり多分10個ぐらいの卵を産むんです。その卵もメスが産卵する時にジェル状のものに包まれて乾きにくくはなっているんですね。ただ、そのまま置いておくと乾いてしまうので、オスが下にずっといて1分に1回ぐらいですかね、尾っぽで水を弾いてその葉っぱに、水面の上10センチぐらいの葉っぱに、狙いすましたように水をかけて、卵が乾かないようにします。大体2日くらい孵化するまでかかるんですけれど、ずーっとオスが水をかけ続けるという非常に変わった生態を持っている魚ですね」

●魚なのに水から飛び出して卵を産むってことですね。しかもちょっと上がったところじゃなくて、10センチってかなりピョーンって飛ばないといけないですよね。

「そうですね。体長4〜5センチぐらいの大きくない魚なので、自分の身体の2倍ぐらいの距離を飛んで、しかもピタッとくっ付きますからね。あれはやっぱり初めて見た時はびっくりしましたね。こんなこと本当にするんだと思って(笑)」

●面白いですね〜! なんで水中じゃなくて空中の葉っぱに産卵するんですか? 

「コペラ・アーノルディはコペラっていう種類の魚なんですけれども、コペラは他にも何種類かいて、他のやつは水中の葉っぱに産卵するんですよね。水中の葉っぱに産卵してオスが守るっていう生態を持っているんですけれども、アーノルディだけが水面の葉っぱに産卵するっていう方法をとっているんです。

 それはもちろん水中にあると当然外敵に食べられる危険が高くなりますから、水面より上に卵を産むことは合理的ではありますよね、外敵のことを考えれば。そんなところまで行って卵を食べようとする奴はいませんから、合理的ではあるけれども、じゃあどうやって乾燥っていうものを解決するのかっていうことが、普通の魚には、こういう言い方するとあれですけれど、思い付かないと思うんですよね。  

 彼らは、思っているわけじゃないですけれども、普通そんなことはやっぱり考えないですよね。魚って別に水面より上に卵を産むことを前提としてないですから、そんなこと考える必要もないわけですよね。それをどうやって、卵が上にあったら乾くから水をかけないといけないなっていう風なことを、思うことはないんですけど、なんでそういう生態が身に着いたのか、生まれたのかっていうのは本当に不思議で、いくら考えても分からないですね」

岡部聡さん

福山雅治さんとの撮影秘話!

※岡部さんが手がけた「NHKスペシャル ホットスポット 最後の楽園」では福山雅治さんがプレゼンターをおよそ10年担当されました。長いお付き合いになったんですね?

「そうですね。お互いこんなに長く続くとは思ってなかったんじゃないですかね(笑)」

●福山さんとの撮影で思い出に残っていることなどありますか? 

「大スターですから色々思い出はありますけれど、やっぱり第1シリーズで初めて行ったマダガスカルでの腸炎事件ですかね。お腹を壊して福山さんが寝込んでしまったという(苦笑)、ちょっとあれは本当に焦りましたね」

●どうしてお腹が痛くなっちゃったんですか? 何かに当たったとかですか? 

「原因はよく分からないんですけどね。インドリっていうサルを見に行ったんですけれども、明日から見に行くぞーって言って、泊まったロッジで朝起きて来なかったと。それでどうしたんですか? って聞いたら、どうもマラリアになったんじゃないかと思うくらい高熱が出ているっていう風に言われて、それはそれは焦りましたね。

 結局2本撮りだったんですね。ブラジルの真ん中の草原セラドっていうところに行ったのと、そこから南アフリカ経由でマダガスカルに行くっていう非常にハードスケジュールなロケで、疲れも溜まっていたんでしょうね。

 ブラジルを経験していたからちょっと安心っていうか、割と大丈夫かなっていうことがあって。レストランで出た飲み物に入っていた、氷に当たったんじゃないかなと思うんですけどね。結局あの時は福山さんチームとこちらのチーム合わせて7人ぐらいで行っていたんですけれども、その内の5人がもう大変なことになって(苦笑)」

●ええっ!? 

「僕とヘアメイクさんだけが何ともないっていうような感じで。あの時は、ああもうないなと、今後はないなと思いましたけど(笑)、結局(福山さんは)回復されてインドリにも無事にご対面いただいて、その後もバオバブを見に行ったり、ロケはほぼほぼ予定通り。
 2日くらい寝込んでいらっしゃったんですけれども、予定通りロケは終わって帰ってきたら、『笑っていいとも!』でネタにして笑っていました、本人も(笑)」

●福山さんって、画面からはすごく楽しんでいるように見えるんですけれども、やはり福山さんご自身も生き物や自然がすごくお好きなのかな? って印象があったんですが。

「どうでしょうね。僕もそうですけど、多分福山さんは、取り立てて生き物や自然が大好きっていうわけではないと思うんですよね。僕も30年も(自然番組の制作を)やっていたら生き物が好きなんですよね? って言われますけど、いや別に生き物ってそんなに大して好きとかっていうような対象ではないなと思っていて・・・。
 その代わり福山さんがよく言われるのは、生き物に対してはやっぱり畏敬の念とか、畏怖の念があるっていう風によくおっしゃっているんですよね。

 自然が好きって、多分このラジオのリスナーさんとかはそうだと思うんですけれど、自然が好きっていうのはちょっと語弊があって、それはものすごくよく知っている場所だったり、管理された自然は好きなんでしょうけれども、例えばアマゾンのジャングルの中に裸で放り出されて、でも俺は自然が好き! って言える人っていないと思うんですよね。

 自然っていうのは、本来はものすごく恐ろしい場所で、現代人が何の道具も持たずに行って、そこで生きていけるような場所では当然ないわけで、その中で生き物って何の道具も持たずに身体ひとつで生きていますよね。だからそういうところでやっぱり、人間はどうやっても敵わないなっていう思いが、福山さんは、畏怖とか畏敬の念っていう言葉になってくると思うんですよね。

 福山さんは非常に言葉を大切にされる方なので、気軽にそんな軽々しく、生き物や自然が好きです! みたいなことは言わないですね。言ってくれって言っても言わないです、全然。それを踏まえた上で、やっぱり原生の自然の中で生き物が生きていること、あるべきものがあるべき場所にあるっていうことの居心地の良さっていうのがある。それを人間が壊していってるんだっていう問題意識は共有できているという風に思っています」

岡部聡さん

野生のトラに襲われた!?

※新刊『誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち』に掲載されている中から、もうひとつ、とんでもない体験談をうかがいましょう。

●地球上で最も怖い生き物ということで、岡部さんがインドのトラをこの本で挙げていらっしゃいますけれども、野生のトラと対峙したことが3回もあるんですよね。しかもその内の1回はトラとの距離が1メートルもなかったと本に書かれていましたけれど、どういう状況だったんですか? 

「あれはいつだったかな・・・1993年だったと思うんですけれど、インドの真ん中にバンダウガルっていう国立公園があって、そこにメスのトラを撮りに行ったんですね。動物写真家の飯島(正広)さんがその7年前に撮影に行ってました。

 シータっていう名前が付いたメスのトラがいて、その時、やはりトラって、今でもそうですけれど、絶滅の危機にあって・・・国立公園の中にいるんですけれど、人間がどうしてもそこに入っていて、人間との衝突が起こっているっていうことがよく言われていたので、飯島さんが7年前にあったシータが、どういう運命を辿っているのだろうかっていうのを見に行くドキュメンタリーの『生きもの地球紀行』だったんですけれども。

 そのシータを見に行くと当然周りにはオスのトラもいるわけですよね。その中でチャージングタイガーって言われている、その時にいちばん若くて大きなトラがいて、それがシータの縄張りと重なっている場所にいたんですね。
 シータを追いかけていると当然そのチャージングタイガーとも出くわすわけですよね。メスのトラは割と大人しくて、もちろん怖いんですけど、テレビ的に見るとガオーってこないんですよね、優しいから。

 オスのトラはやっぱり獰猛ですから、なんかするとこっちに向かって威嚇してくるので、そういうシーンも必要でしょうと。それだけではないんですけれども、たまたまそのチャージングタイガーがいるっていうことを聞いて、草むらの中にいたんですね。非常に高い2メートルぐらいある草むらの中にいて、この辺にいるって言われたんですけど、どこにいるか分からなかったんです。

 でも行かないと向こうから出てくるわけがないので、こっちからゾウの背中に乗って近づいていったんですね。基本的にはトラはゾウには襲いかからないと言われていたので、それを信じて安心して行ってたら、草むらの中から突然、トラが飛びかかってきたというようなことですね(笑)」

●でも、実際襲いかかってきて、岡部さんはどうされたんですか? 

「いやもうね、多分人生で初めて気を失っていましたね、記憶がないんです。いわゆるホワイトアウトしていましたね。目の前で、1メートルのところにトラの大きな顔があって、そこで僕の記憶はもうなくなっている。多分10秒ぐらい気を失っていたんじゃないですかね、あまりの恐怖に」

●ええっ〜!? でも本には、二度と会いたくないと思う一方で、どうしようもなくもう一度、野生のトラを見てみたいと思わせる魔力があるという風に書かれていましたけれども、その魔力っていうのは何なんですか? 

「僕の中ではトラってやっぱり地上でいちばん怖い生き物、いちばん強い生き物っていうイメージが今でもありますね。だってオスのトラって頭から尻尾の先まで入れると2メートル50センチぐらいあるんですよね。体重も200キロぐらいあって、その巨体で3メートルぐらい平気で飛ぶんですよね。ゾウの上を飛び越えていくって言いますから、本気出せばね。

 そんな身体能力、大型力士が3メートル飛ぶんですよ。そんな生き物、ほかにいないですよね。多分体重200キロですから、あの時僕はゾウに乗っていて、足は下に降ろしていましたから、足にかぶって噛み付かれて引きずり下ろされたら絶対敵わないですよね、もう絶対耐えられないと思います。

 それだけすごい生き物が、この地球に一緒に同時代に生きているっていうのはやっぱりすごいことだなと。多分ジュラシックパークじゃないですけど、ティラノサウルスがいたらやっぱり見てみたいと思うじゃないですか。現代で言ったらトラってそれに近いものがあるし、やっぱり簡単に見られないですからね、野生のトラは。あれだけ勇猛果敢な生き物っていうのは、ほかにはちょっと思い浮かばないですね。そういう生き物は、また会いたくないと思う反面、また見てみたいという気持ちは何処かにはあります」

生き物の魅力を伝える

※岡部さんは30年以上、自然番組の制作に携わっていらっしゃいます。海外の辺境や秘境と言われる場所に行って撮影するのは、大変な労力を必要とすると思いますが、その原動力は何ですか?

「やっぱり楽しいっていうのはありますよね。生き物の姿を間近で見るっていうのは楽しいっていうのもありますけれど、原動力っていうとやっぱり、子供の頃からずっと違和感を感じていたのは、この地球上にある土地って誰かのものっていう風に決まっていますよね、大体、国があるところって。地球上で誰のものでもない土地って、南極大陸ぐらいしかなくて。所有者がいますよね、国でも何でも。

 土地が所有されているからには、その所有者がどうするか次第で開発されたりしてしまいますよね。でもそこには元々生き物が棲んでいたわけで、じゃあその生き物ってどうすればいいの? っていう風なことを、子供の頃からずっと思っていたんですね。
 やっぱり生き物は環境の中で必死になって生きていて、役割があるわけですね。人間だけです、地球上で何の役割も持っていない生き物っていうのは。

 環境に対して何の貢献もしていないし、やっぱり自分は人間は生きていたいから生きているだけで、それで環境破壊しているっていうのは、ちょっとおかしなことだなってずっと思っていて・・・生き物の魅力を伝えることで、もうちょっと考えた方がいいなと僕は個人的には思っているので、そういうことをちゃんと伝えたいなということですかね」

●改めて岡部さんが制作する自然番組で、いちばん伝えたいことってどんなことですか?

「伝えたいことは、やっぱり生き物っていうのは長い時間をかけて進化してきたというか、それがどういう風に生きているか。その生き様っていうのは、環境の中で必死になって生きるために、人間が思い付かないような進化を遂げているので、その面白さを伝えたいっていうことですね。そこから後のことはもう見ている人が考えることであって、いちばんやりたいのは、生き物の魅力をどうやったら伝えられるのかっていうことを考えますね 」


INFORMATION

誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち


『誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち』

 岡部さんが世界の取材先で目撃した、生きものたちの、不思議な生態が体験談をまじえて14編掲載されています。改めて生物や自然の奥深さを思い知らされました。ぜひ読んでください。文藝春秋から絶賛発売中です。

◎「文藝春秋」HP:https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163913155

オンエア・ソング 6月6日(日)

2021/6/6 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. LOVE LAND / THE LOST GENERATION

M2. THE PROMISE (THE DOLPHIN SONG) / OLIVIA NEWTON-JOHN

M3. WONDERFUL / ANNIE LENNOX

M4. 約束の丘 / 福山雅治

M5. TIGER / ABBA

M6. REACH / GLORIA ESTEFAN

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

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