毎回スペシャルなゲストをお迎えし、
自然にまつわるトークや音楽をお送りする1時間。

生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで
幅広く取り上げご紹介しています。

~2020年3月放送分までのサイトはこちら

Every Sun. 20:00~20:54

2021年7月のゲスト一覧

2021/7/25 UP!

◎Micro(Def Tech)
「海とは母親みたいなもの」Micro
〜Surf Me To The Ocean! GO NAMINORI JAPAN!
』(2021.7.25)

◎盛口 満(沖縄大学の学長)
ゲッチョ先生と沖縄の自然探検! 〜独自の進化を遂げた「やんばるの森」〜』(2021.7.18)

◎志村智子(公益財団法人「日本自然保護協会」NACS-J)
“動く自然”砂浜が痩せていく!?〜豊かな砂浜を守れ!「全国砂浜ムーブメント」〜』(2021.7.11)

◎鍵井靖章(水中写真家)
心が優しくなれる、ほどけるような気持ちになれる〜年間180日潜る水中写真家「鍵井靖章」の写真展〜』(2021.7.4)

「海とは母親みたいなもの」Micro〜Surf Me To The Ocean! GO NAMINORI JAPAN!

2021/7/25 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、サーフィンが生活の一部になっているDef TechのMicroさんです。

 Microさんは、1980年生まれ。東京都出身。ハワイ出身のshen(シェン)さんとDef Techを結成。名曲「My Way」を収録したファースト・アルバム『Def Tech』を2005年に発表、250万枚を超える大ヒットとなり、インディーズのセールス記録を塗り替えました。その後もコンスタントにアルバムを発表、去年、結成20周年を迎えています。

 Microさんがサーフィンを始めたきっかけは、サーフィン好きなご両親の影響で、幼稚園の頃にはボディボードに立って乗っていたそうです。特にお母さんに見て欲しくて、がんばってサーフィンをやっている少年だったそうですよ。ミュージック・ビデオでも波乗りしているシーンがフィーチャーされていて、プロ級の腕前を披露されていますよね。きょうはそんなMicroさんにサーフィンや海への想いをうかがいます。

☆写真協力:Micro

写真協力:Micro
写真協力:Micro

サーフィンは宇宙旅行!?

※サーフィンのとりこになっているMicroさんにまず、サーフィンの魅力についてお話しいただきました。

「サーフィンの魅力は、こんなに気持ちいい疲れを感じられるスポーツは地球上にただひとつだけだと僕は確信しています! 日焼けもして、皮膚もパンパンに張って、腕とかもパンパンなんですけど、筋肉痛まではいかなくて。なんだけれども頭のてっぺんからつま先までが心地いい疲れで。

 あともうひとつ、やっぱり板の上に立てるということはほぼ無重力というか、陸上の6分の1とか7分の1とか、本当に重力のかからないスポーツなので、たった1本のライディングで数秒しか乗ってないかもしれないですけれど、もしかすると宇宙飛行士と同じような体験、水の上に浮いている状態っていうのは宇宙旅行に似ているのかもしれませんね」

●へ〜〜そうなんですか。よく行くサーフスポットっていうのはどちらになるんですか? 

「僕は2日以上空いたら伊豆の下田に行きます。で、1日のオフとかだと千葉、湘南、鎌倉方面に波をチェックして行きます」

●ちなみに千葉だと、どの辺りに行かれるんですか? 

「まさにオリンピックの会場となっている一宮ですね」

●釣ヶ崎海岸とか? 

「そうです! 九十九里からずっと細かくたくさんポイントがあるので、あとは風向きと波のうねりをチェックして・・・」

●どうですか? 千葉の海は。

「僕、母親が千葉で、父が東京なので、東京と千葉のハーフなんです。なので自分の第二の故郷は千葉っていう感じですね。何かほっとします」

●わ〜! 嬉しいです! Microさんはどんな波がお好みなんですか? 場所によって波は違うと思うんですけれど。

「(波が)でか過ぎちゃうと楽しさを超えて恐怖心も、趣味特技とはいえ、本当に怖いっていう思いもあるので、胸、肩、腰ぐらいでグラッシーな、ガラス細工のような、波の面が綺麗で、それでロングライドしていける波だとずっと楽しいなって感じですね。ファンウェーブかなと思います」

●海外も含めて特に気に入っている場所はどちらになりますか? 

「僕はバリ、カリフォルニア、ハワイ、この3つですね」

●いいですね〜。どんなところがお好きなんですか? 

「毎回なんですけど、ハワイは色んなものを吸収して帰ってきますね。サーフィンのみならず、ファッションもそうですし、情報も早いから、そういう意味では何か自分がすごくたくましくなって、必ず海外に行って帰ってくる時に自分が成長しているのが目に見えて分かるので。ハワイ、バリ、時間軸も変わるし、生活のリズムも逆に海外の方が整いますよね。東京にいるとやっぱり夜が長いですね」

夢と希望の「波乗りジャパン」!

※東京2020オリンピック競技大会の、サーフィン競技の会場が先ほど、Microさんもよく行くとおっしゃっていた千葉の一宮町釣ヶ崎海岸。実はMicroさんは、サーフィンの代表チーム「NAMINORI JAPAN(波乗りジャパン)」には人一倍、強い思い入れがあるんです。そんな波乗りジャパンに期待していることをお聞きしました。

「ここのポイントで育った大原洋人(おおはら・ひろと)選手もここが地元ですし、小っちゃい時からみんな慣れ親しんでというか、仲良くさせてもらっていて、なので嬉しいですよね。

 自分がDef techとしてデビューしていて、当時、大原洋人くんは小学生で、最初に海で会った時に”あれっ!? お兄ちゃん、歌ってる人だよね?”とかって言われて、そうそう、そうだよ、洋人くんって返すと、”上手いよ! 歌、上手い、君! ”とかって言われて(笑)、君いくつ? って言ったら、”小5! 上手いよ、Def techいいよ!”とか言われちゃうくらい、そんな子がいま日本が世界に誇る代表なので、ひいきですけど、これは、身内びいきもありますけれど。

 そしてやっぱり大野修聖(おおの・まさとし)コーチ、僕の同級生で、彼がこの波乗りジャパンを引っ張っていて、必ずメダルは取れると確信しています。彼とは小学校の時から一緒にサーフィンを続けてきているので、本当の親友が今コーチになったという・・・」

Microさんと、親友の大野コーチ
Microさんと、親友の大野コーチ

●家族ぐるみで、幼い頃からのお付き合いなんですよね? 

「そうですね。僕たちが生まれる前から両親が仲良くて、交流があって。まーくん(大野修聖コーチ)のママも日本で初めてサーフィンした女性で、うちのパパも日本で初めてサーフィンをした、10人くらいいたクルーの中のひとりなんですよ。20歳ぐらいからずっとお互いの家族が仲良くてっていう、そんな親子二世代のサーフィンへのこの想い、夢、希望が詰まったオリンピックです!」

●すごいですね! そんな波乗りジャパンの公式応援ソングをDef techが担当されているんですよね。すごいことですよね!

「念願叶ってです! もう3〜4年前くらいからオリンピックがあるやなしやに関わらず、絶対にあると確信した上でこの曲の構成というか、もしオリンピック(の競技)にサーフィンが決まったら、こんな曲! っていう想いも詰めた曲ですね」

●曲名が「Surf Me To The Ocean」ということですけれども、改めてどんな想いを込めてこの曲をお作りになったんですか?

「やっぱり海に行く時の行き帰りのすごく大事な時間。皆さん車だったり、電車で行くサーファーの方もいらっしゃると思うんですけど、必ずそこには僕ら(サーファーには)音楽が必須で、特に行きの車の中はモチベーションが上がったりリラックスしたりしながらっていう、その海に入るまで、そして海に入ってファーストウェーブをキャッチするまでの気持ち、モチベーションが上がるようにあの曲を作りました。なので、選手ひとりひとりが試合前とかにヘッドホンして、ストレッチしながらとかヨガしながら、大会前に聴いてもらえたらなっていうそんな曲です」

「Surf Me To The Ocean」が収録されているDef Techの10作目『Powers of Ten』
「Surf Me To The Ocean」が収録されているDef Techの10作目『Powers of Ten』

ビーチクリーン&サンゴの移植活動

※海に行くと必ずビーチクリーンをやるそうですね?

「はい、父からも教わってきて、東京サーファーなので、自分たちのローカルポイントがないということもあって、ゴミ袋を車に積んでおいて、行って波乗りする前にビーチクリーンをして、入らせていただきますっていう、ビジターなので、どこでも初めましてという思いで。

 で、海から上がったら片手が空いているので、板を持っている反対の手でワンハンド・ビーチクリーン、片手分だけはゴミ拾いをするように。これはプロサーファーの善家尚史(ぜんけ・なおふみ)さんの活動なんですけれども、もう何十年もそのワンハンド・ビーチクリーンを推進してきて、どこの海でも誰かが見てなくても、海上がりに片方の手にいつもゴミを持っていて、その姿に僕はグッと心を打たれて、見よう見まねで実践し続けています」

●海の環境が気になり始めたっていうのはいつ頃からですか?

「沖縄の海に潜って、僕、最初はスキューバのオープンウォーター(ライセンス)を取ったんですけれど、当時27歳、Def techのツアーで沖縄に行ったあとですね。長く沖縄に滞在して潜るようになってから、最初サーフィンしている時はビーチの浜のゴミだけが気になっていたんですけど、潜ってみた時にサンゴたちが死滅して、白化している真っ白なサンゴを見て、これこのまま進行していくとどうなっちゃうんだろうと、ぞっとした記憶が13年前ぐらいですね」

サンゴの移植活動を行なっている仲間たち。金城さん(後列・左からふたりめ)Microさん(同3人め)。
サンゴの移植活動を行なっている仲間たち。
金城さん(後列・左からふたりめ)Microさん(同3人め)。

●沖縄でサンゴの養殖に成功した金城浩二さんの活動も、Microさんは応援されていますよね。

「金城博士!  もう博士です! ドクター金城! 金城さんとの出会いによってこのサンゴの復活に希望が持てたというか・・いま温暖化で様々な気候変動とか、海面の水位が上がって、ハワイのノースショアとかも数十年後、もしかしたらオーシャンフロントの家とかなくなっちゃうんじゃないかってくらい、いま浜がなくなっているんですね。やっぱりこの10〜20年、海を見てきて、確実に鎌倉もそうですけど、どんどん海面が上がってきているなって実感してます。それに対して絶望だけじゃなくて、人間の力で本当にこの地球をより良くしていけるのかって思っていた時に、金城さんが僕にこの一縷の望みを、希望を与えてくださいましたね。

 人間が育てて、人間の手で海に返していく。養殖したサンゴのほうが強くて、海水の温度が上昇しても、それに耐えられるだけのスーパーコーラルっていうめちゃくちゃ強いサンゴたちが金城さんの手によって作られて、いま海に返されている、それが現状、事実ですね」

●金城さんの活動を知って、初めはどんな思いでした? 

「最初、話を聞いているだけでは“本当かよ!?”って思ったんですよ。こんな広大な海に5〜6センチぐらいのサンゴを養殖して、果たしてそれがどれだけの可能性があるんだろうと思っていて、ちょっと僕も斜め45度ぐらいから見ていたんですよ。
 でも実際に僕も自分で養殖をして、自分の名前を付けたサンゴを植えて、数ヶ月後には大きくなっているんですね。そのサンゴが他の魚たちに食べられないように檻をかけてあげて、また数ヶ月するとサンゴたちがその檻よりもパンパンに大きくなっている・・・そうしたら、自分の育てたサンゴに小っちゃい子魚たちが誕生していたんですね。その時、僕はお金持ちじゃないのでマンションは建てられないけど、海の中に初めて大きなマンションを建てたような気分になったんですね」

●素敵ですね〜!

「そう、そこに本当に小っちゃな、見たことないぐらいの子魚たちが誕生して、親魚もみんなでそのサンゴの周りに生活をしているのを見て、初めて僕、人生でこの地球にいいことした! と思えた瞬間だったんです」

写真協力:Micro

波ニケーション!?

※Microさんは、今年からサーフィン仲間で同級生の「Shu Doso(しゅう・どうそ)」さんと新しいプロジェクト「WST」としての活動も行なっています。「WST」は「ストレート・ストリート」の略だそうですが、このユニットを始めるきっかけは何かあったんですか?

「今までは必ず毎年ハワイやカリフォルニアとか、海外に行ってました。コロナ禍の2年目には(海外どころか)日本から出ることも県外に行くことも、みんなから良しとされない、東京から来ないでくださいって言われるこの2年間、何ができるだろうってことをやっぱり考えました。当たり前に過ぎていく時間、当たり前なんてなかったっていうことも皆さん気づいたと思いますし、僕自身もそうなんですけれど。
 そういった時に幼馴染みのshuちゃんに、20〜30代はほとんど会っていなかったんですけれど、ここ5年くらいで急接近、グッと近くなって、人に会えない家族にも会えないっていう中で、ふたりっきりで海に行く機会が増えたんですよね。

 去年は週4日ぐらい一緒に海に行き、お昼には帰ってきてお互い仕事をして、僕も制作に入ってとかっていう中で、Shuちゃんが言うんですよ。社会にメッセージを送る方法ってテレビやラジオあるんですけれど、あとは本と音楽ぐらいしかないっておっしゃっていて・・・。
 そうかな? と思って、SNSもあるじゃんって言ったら、実際SNSも社会的メッセージを伝えられるんだけど、それは写真だったりするから、やはり言葉で伝えられるものは、音楽と活字にした本なんだって言ってたんですね。確かにいま必要なメッセージ、恋愛ソングもたくさんあるけれど、音楽に詰めるべきメッセージ、歌詞っていうのはあるなっていうそんな話を海の行き帰りで、僕は“波ニケーション”と呼んでいるんですけれど」

写真協力:Micro

●波ニケーション!? 

「はい、海に向かう1時間半、海の上で波待ちしている時間、ふたりで会話をし、万般にわたる話をお互いにしながら、やってみようか、1曲作ってみようって言って”Offshore”(1stデジタルシングル)ができたんですね」

●今年の1月から毎月1曲発表されていますよね? それって結構大変なことなんじゃないですか? 

「かなり大変です!(笑)」

●ですよね! 曲のアイデアってふたりで持ち寄って作るっていう感じなんですか? 

「そうですね。大体ふたりで話し合っています。どんなことをテーマにするか、どんなことをコンセプトに、っていうのは話し合って、WSTに関してはShuちゃんのペンが走るので、膨大な詩が出来上がっていく中で、そこにプロデューサーのNagachoと僕がメロディーを生み出していって。いい言葉にはもうすでにいいメロディーが乗っかっているんですよね。

 彫刻じゃないんですけど、(素材の)木が最初からそういう形をしていないじゃないですか。ただでもその物質を見て、その字を見た時にその中にメロディーが眠っているので、あとは削る作業、彫刻の感じに似ていると思います」

●やっぱりサーフィンや海からヒントをもらうことはたくさんあるわけですよね。

「音楽の制作、歌とサーフィンはめちゃくちゃ似ていると思います」

●えっ!? どういうところが似ているんですか? 

「波乗りって立っているだけじゃなくて、やっぱりアップス&ダウンという上下の運動と、シークエンスという流れなので、波に乗っていくっていうのは、人生もそうですけど、やっぱり辛い時もいい時もうまく乗りこなしていく。

 歌でいうと、ギターの上に自分の歌をどう気持ちよくライディングさせていくか。途切れないで、最初だけじゃなく真ん中も終わりもきちっと、いくつビブラートがかかるのかとかも含めてですけど。それを頭でやっていると楽しくなくて(アイデアが)出てこないので、やっぱり心でキャッチしたものを表現していく。意外にメンタルスポーツですね、音楽もサーフィンもしかり。すごく似ていると思います」

海は僕のママ

※これからもずーっとサーフィンを続けていくと思うんですが、最後にMicroさんにとって「海」とは?

「海とはやっぱり怖いし楽しいし、海とは母親みたいなものですかね。教えてくれるものが大きいですし、そこからやっぱり生まれてきたんだなって思いますし、僕は陸上で生まれてきたなって本当思わなくて、カッパのようにシャワーもお風呂も水にずっと浸かっていたいなって(笑)。身体も楽ですし、陸上に上がってこなきゃよかったのにって思うぐらい、海に帰りたいっていう症状と本能がそう呼んでるなって思うんです。

 海によって人間の世界の中で、この傲慢な自分も、人を見下したり見上げたり、本当は人間以上人間以下の人もいないのに、何かすごい人に出会うと、わーすごい。今度はそうじゃないなって思うと見下すような・・・そういうものってサーフィンと対峙していくと本当に自分があまりにも無力でちっぽけで、波がでかいとすぐにギブアップしちゃうし・・・。

 そういう自分の傲慢さでサーフィンの怪我にも繋がるし、やっぱり謙虚でいることも海から教わりましたし、ちゃんと礼節を重んじながら、ふざけないで真剣に楽しむ、真剣に遊ぶっていうことも海から教わって。東京都心に帰ってきて自分の生活に戻ってもそれって活かされているので、人間の世界でも。なので本当に全て教えてくれているのは海、海は僕のママです」


INFORMATION

RUN

 今年の1月から毎月リリースしている新プロジェクトWSTのデジタル・シングル、きょうは今月発表した「RUN」をお届けしましたが、ほかのシングルもぜひ聴いてくださいね。今年12月まで毎月1曲ずつリリースするということですから、今後のデジタル・シングルも楽しみです!

 WST初の有観客ワンマンライヴ「WST Straight Street LIVE 2021」が8月21日(土)に、渋谷eplus LIVING ROOM CAFE & DININGで開催される予定なんですが、全席ソールドアウトだそうですよ。やはり人気がありますよね。

 今後もDef Tech、そしてWSTの活動に目が離せません。

 新作のリリースやライヴ情報についてはDef Tech、そしてWST、それぞれのオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「Def Tech」HP:http://deftech.jp/

◎「WST」HP:https://www.wst-straight-street.com/

オンエア・ソング 7月25日(日)

2021/7/25 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. SURF CITY / JAN & DEAN

M2. MANY CLASSIC MOMENTS / KALAPANA

M3. Surf Me To The Ocean / Def Tech

M4. SEA SEED / Micro

M5. RUN / WST

M6. MAMA / SPICE GIRLS

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

ゲッチョ先生と沖縄の自然探検! 〜独自の進化を遂げた「やんばるの森」〜

2021/7/18 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、沖縄大学の学長で、植物や生物などの精密なイラストでも知られる“ゲッチョ先生”こと「盛口 満(もりぐち・みつる)」さんです。

 盛口さんは、1962年生まれ。大学卒業後、埼玉の中学・高校の教諭を経て、2000年に沖縄に移住、現在は沖縄大学の学長としての仕事のかたわら、フリーのライター、イラストレーターとしても活躍、自然や植物、生物などに関する本を数多く出版されています。盛口さんの出身地は実は、千葉県館山で、館山市から「館山ふるさと大使」に任命されています。

 きょうはそんな「盛口」さんに館山や沖縄の自然、そして先頃出された本『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』のお話などうかがいます。

☆写真協力:盛口 満

ボルネオ、手にしているのはウツボカズラ
ボルネオ、手にしているのはウツボカズラ

原点は千葉県館山の貝殻

※盛口さんは、生まれも育ちも千葉県館山、高校卒業まで館山で暮らしていたそうです。いったいどんな少年だったんでしょうね。

「あんまり子供の時の記憶はないんですけども、やっぱり気が付いたら自然の中で、友達とじゃなくても、ひとりでも歩き回ったり、生き物を見ているのが好きだったような覚えがありますね。館山だと家のすぐそばから小っちゃな山はあるし、少し歩けば海もあるしで、今考えれば贅沢な環境だったなとは思いますけどね」

●どんなことにいちばん興味があったんですか?

「最初の記憶は覚えていないんですが、生き物に興味を持ったなと自覚したのは、多分小学校2年生くらいの時に海に行って貝殻を拾った、ある日突然、貝殻がたくさん落ちていることに気が付いたっていうことだと思います。で、むやみやたらに貝を拾って帰っては、そのうち親にねだって図鑑を買ってもらって名前を調べ始める、そういうことから生き物との繋がりがすごく濃くなっていった気がします」

館山の海岸で見つけた貝殻
館山の海岸で見つけた貝殻

●へ〜! 盛口さんの原点は貝殻だったんですね。千葉大学理学部の生物学科で学ばれていますけれども、ご専門は? 

「私は大変うかつというか、あんまりきちんとものを考えられないのかもしれませんが、大学に入る時に生き物を勉強したいとは思ったんです。動物、小っちゃな生き物、虫とか貝とかがいいなと思って大学に行ったら、うちは植物しかないよって言われて、しょうがないなと思って、ただ野外で調べるほうが好きだったので、外で植物の生き様を調べる研究室に入れてくださいって言って、植物生態学っていう勉強をしたんですけど」

●どんな植物を研究されていたんですか? 

「うちの先生が森の研究者ではあったんですが、調べる対象を自分で選んでいいよって言われたので、やっぱり地元の館山、沖ノ島っていう小っちゃな離れ小島があって、歩いて渡れるんですが、そこの森をひとりで全部、木の位置とか種類とか太さとかそういうのを測って、この森の中で木はお互いにどんな関係で生きているのかなっていうのを自分なりに考える、そういう研究をやっていました」

●盛口さんって”ゲッチョ先生”って呼ばれていますけれども、その愛称の由来っていうのは? 

「はい(笑)、これもやっぱり生まれ故郷の館山なんですけれども、千葉大学で同じサークルに文学部の学生さんがいて、その友達が方言調査に館山に行くわけですよ。で、おじいさんに色んな生き物の絵を見せて“おじい、これ何て言うの?”っていう風に聞くわけですよね。そうすると、“これはカマゲッチョだっぺ”とかって、おじいが答えるわけじゃないですか。
 カマキリの絵を見せた時にそのおじいさんが“カマゲッチョだっぺ”って答えて、また何枚か絵を見せているうちにトカゲを見せた時に、“カマゲッチョだっぺ”っておじいさんが言って、その友達が“おじいさん、さっきこっちもカマゲッチョって言ってたよ”って言ったら、おじいさんが“あ、それもそうだな〜”って言って、おじいさん全く気にしなかった(笑)。

 実はカマキリとトカゲって面白い関係があって、地域によって名前が逆転したりよく似ていたり、館山はたまたま一緒の名前が付いていたんですね。僕もそれ知らなかったし、僕の世代になるとその言葉を知っているやつもいなかったんですけども、それがサークルで話題になって、お前の生まれた館山って変なところっていうので、カマゲッチョってあだ名を付けられてしまい・・・
 で、僕が勤めた学校は先生をなんとか先生って堅苦しく呼ばないっていう学校だったんですね。でも子供たちに勝手にあだ名を付けさせると、とんでもないことになるので、僕は大学でカマゲッチョって呼ばれていたよって言ったら定着したんですが、長いので切られて下半分だけになりました」

●それでゲッチョ先生だったんですね(笑)。

「それが呼びやすいし、館山という自分の故郷も引きずっていていいなと思って未だに使っています」

●私も館山は大好きで、家族でよく夏は遊びに行くんですけれども、盛口さんから見て千葉県館山の魅力っていうのは何でしょうか?

「実は館山って黒潮の端っこなんですよ。そこからまた黒潮が伊豆諸島のほうに流れていくんですね。だから南から流れてきたものが色々館山に引っかかって、そこから先に行くと半島を回って九十九里とかに行くと、微かにまだ南のものは流れ着きますけれども、やっぱりそういう意味でいうと南の尻尾なんですね。で、僕は貝殻を拾っていて、南のもののこんなものまで拾えるんだっていうのが館山はあって、その憧れが今沖縄に住み着く原動力になっているのかなと思っています」

『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』

宮古島は不思議の島!?

※小さい頃から南への憧れがあって20年ほど前に沖縄に移住した盛口さん、沖縄の自然や文化に関する本も出していらっしゃいます。そんな盛口さんの新しい本が『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』。この本は沖縄に住んでいる親戚のおじさんを訪ねて、東京から高校生と中学生の姪っ子、甥っ子がやってきて、一緒に沖縄を巡りながら、沖縄の自然や生き物を学ぶという展開になっています。

●盛口さん、このストーリー展開にはどんな狙いがあったんですか?

「ひとつは僕が学校の教員を長くやっていたので、学生とか生徒ってそんな生き物に興味を持っていないんですけども、でも実際にこういうのがいるよって言うと面白がってくれる。だから本でも、そんなに生き物に興味がないんだけど、たまたま親戚のおじさんがいるから来たっていうシュチュエーションは、僕が普段接している学生たちとか生徒たちとの感覚とあんまり変わらないです。

 ある種自分にとってはリアルな感覚で書けるなっていうのと、あともうひとつは沖縄は本当に生き物が多様なんで、僕もまだ全然全部見きれていないので、それを偉そうに全部書けないので、ある種切り取った形でリアルにするとしたら、誰かが来て案内するってシュチュエーションだったら、自分の知っているものをあんまり無理せずに出せるかなっていう風に思った次第です。

 本に登場してくるのは一種の架空の子供たちなんですが、実際うちの姉に姪っ子甥っ子がいて、ある日会った時に“おじさんって仕事とかしているの?”っていう風に言われて、あ、そういう風に見られているんだって(笑)、このキャラクターはどこかで使おうとは思っていました。そういうのもあります」

●実体験のような話でもあるんですね(笑)。

「実際、子供たちと一緒じゃないですけど、本に出てくる行程は全部ひとりで実際に歩いて、そこで見た生き物を入れているので、そういう意味で言っても、なるべくリアルな感じにしようかなとは思っていました」

●宮古島も好きで何度か行ったんですけれども、こんな歴史があったんだとか、こういう生き物がいるんだっていう新しい発見があってすごく面白かったです! そもそも不思議の島っていう風に宮古島のことを紹介されていましたよね? 

「僕自身もその沖縄に通うようになって、いちばん最初は西表っていうところだったんですけど、とにかくヤマネコもいるしジャングルが残っている大自然の島。その次に沖縄本島に住み着くようになって、やんばるもいいじゃんとか思ったんですけど、宮古島ってそういう意味で言うと平たくて森がないんですよね。海に潜る人は“宮古ブルー、最高”とか言って行くわけですけど、僕らからしたら、生き物はいないのかなと思っていたんですが、最近徐々に宮古島には宮古島にしかいない生き物が色々いるっていうのが分かってきました。

 本の中にもミヤコカナヘビとかですね、ミヤコヒキガエルっていう宮古にしかいない独自の生き物っていう話を紹介していますけれど、本当にここ最近ですね、宮古で新種のゴキブリが見つかって、これが超珍しいので、すぐ“種の保存法”で即指定されて、誰も捕っちゃいけませんみたいな、そんなものまで新たに見つかるような不思議なところが宮古には残っているということですね」

ミヤコヒキガエル
ミヤコヒキガエル

沖縄本島って面白い!

※ひとくちに沖縄といっても、島によってそれぞれの特徴があると思うんですが、盛口さんが、特にこの島の自然は面白いと思ったのはどこですか?

「いちばん最初、僕が本土に住んでいた時は西表オンリーだったんですよ。もうとにかく暇があれば西表に行って西表すごい! って思っていたんだけれども、西表では流石に仕事がないので沖縄本島に移り住んで、それから20年経ちますけれど、だんだん沖縄本島って面白いなっていう感覚がアップしていますね。
 本当は、色んな島に1年ずつくらい住みたいなって気持ちはあるんですけど、それは難しいし、でも沖縄本島ってこんなに人が住んでいるのにまだまだ自然がいっぱいあるし、分かっていないこともあるんで、沖縄本島だけでも見きれないっていうか、十分だなっていう感じですね」

●観光地というようなところもたくさんある中で、自然もまだまだ残っているってすごいですよね。沖縄でしか見ることができない固有種っていうのも多いと思うんですけれども、代表的な固有種を挙げるとしたら何かございますか? 

「これ困ってしまうというか、あんまり意識してないというか(笑)。でも山に行くと沖縄本島だとヤンバルクイナの声が聴こえたりすると、やっぱりこれ沖縄だよなっていう思いをよくします。あとリュウキュウヤマガメっていう陸生のカメ、川じゃなくて山に住んでいるカメがいて、そんなに珍しいわけではないんですけど、見る度にやっぱりこういう風に山にカメがいるって、沖縄は面白いよな〜って思ったりするんですね。

 ほかにも色々いて、それこそ自然探検の本に紹介させていただきましたけれど、本当にキリがないぐらい、虫とかでもまだまだ沖縄固有とか、固有ではないけど、沖縄に来ないといないとか見られない虫とかそういうのもたくさんいますね。この間もたまたま森で今まであんまり気にしていないハチがいるなと思って捕まえて、知り合いの先生に送ったら、まだこれ2匹目だよって言われて、そんな風に当たり前にそんなことがあるのはやっぱりすごいなと思ったりしました」

●新たな発見があるわけですね! それは何というハチだったんですか? 

「名前は付いていないって言ってました」

●ええっ!? じゃあもうまさに新種なんですね!?

「前に見つかって誰かが標本を持っているんで、存在というのは知られていたんだけれども、きちんと研究が進むほど何匹も見つかっているものではないって言っていました」

●どんなハチなんですか?

「ハチはハチなんですけど、説明が難しいというか・・・まぁ尻尾が長くて、木が倒れたあとに色んな虫が住みつきますよね。その木の中で木材を食べている虫に寄生するために尻尾が長いオナガバチっていうハチの仲間なんですけど」

オナガバチの仲間
オナガバチの仲間

ワクワク ドキドキ 冬虫夏草

※ところで、盛口さんがよく行くフィールドはどこなんですか?

「私がやっぱりいちばん行くのは、やんばると言われている沖縄の北半分のほうですね、そこの森に行きます」

●やんばるの森っていうのはどんな森なんですか? 

「そうですね。なかなか一言では言い難いところになるんですけど、ひとつは沖縄本島のやんばるの特徴は山のてっぺんだけが残っているって感じですよね。例えば奄美大島とか、ほかの南の島もありますけれど、もうちょっと平たいんですね。だから川が流れていて山の中でも平たい部分があってっていうのがあるんですが、沖縄本島はもうちょっと痩せている感じで、山のてっぺんだけちょっと海から出ている、だから割と険しいんです。

 そういう意味で海岸線に沿ってしか集落がなくって、ちょっと入ると森になっちゃうと。で、歩けるところもそう多くないんです。歩こうと思えば歩けますけど、何せ斜面なんで道がなかったりするんですね。南の島なので冬でも葉っぱが落ちない。日本でいちばん大きなドングリを付けるオキナワウラジロガシという木も生えていたりします。

やんばるの森
やんばるの森

 やんばるがもうひとつ面白いのは、沖縄の島々、いちばん北にあるのは屋久島のほうから、いちばん南のほうは与那国島っていうところまで点々と島があって、昔は陸地と繋がっていたから色んな動物が入ってきているんですけど、ちょうど沖縄本島は真ん中にあるんですね。
 そうすると本土からも遠いし、台湾からも遠くて、歴史の中ではかなり昔に両方から切り離されてしまって、大昔に入ってきた生き物が細々と生き残っていたり、独自の進化を遂げていると。ちょっと西表とか屋久島に比べれば地味な感じもするんですが、実は結構タイムカプセルを掘り起こしている感じなんです。そういう意味で言ってヤンバルクイナにしろヤマガメにしろ固有の生き物が見られるっていう、そういう森なんですね」

●フィールドワークしていてどんな瞬間がワクワクしますか? 

「沖縄は梅雨が終わってしまったんですけれども、春から梅雨にかけてがいちばんワクワクするシーズンで、梅雨が終わるとがっかりしてしまうという感じ、また1年お預けだなと思うんですけど、やっぱり湿気が多いほうが生き物はとても豊かなんですね。
 いちばんは雨が多い時期に出てくる虫に取り付く冬虫夏草っていうキノコがあるんですが、これもまだまだ知られていなくて、毎年、これ初めて見るとかこれ名前ついているのかしら? っていうのが見つかったりして、そういうのを見るとひょっとしてこれは世界で初めて僕が見ている生き物ではないかと、ワクワクドキドキが止まらないですね」

●すごいことですよね〜! 今年も何かそういった新しい発見はあったんですか?

「はい。今年はその冬虫夏草の仲間で、セミの成虫からニョキニョキとキノコが生えているのを沖縄本島で初めて見て、西表では見つかったことはあるんですけれども、沖縄本島にあるかなと思っていたら、いくつか見つけることができて、ちょっと森の中でひとり走り回っておりました(笑)」

セミの成虫から生える冬虫夏草
セミの成虫から生える冬虫夏草

生き物の形、知らない世界

※新しい本でもそうなんですが、盛口さんが描くイラストは昆虫でも魚でも植物でも、とても精密で美しい仕上がりになっています。イラストは実物を見ながら描くんですか?

「基本的には見たまんまということなんですけど、できれば実物で、虫とかは実物を見て描いているんですが、カエルとかトカゲは逃げちゃうので、これは写真を撮って写真から描いています」

●細かくてびっくりしました。すごい! と思っちゃいました。イラストを描く時に心掛けていることはありますか? 

「実は僕は芸術系は一切習ったことがないし、本当にそういう意味で言うと器用ではないのでヘタクソなんですけども」

●いやいやいや! 

「いや、下手だから省略ができなくて、上手い人だともっとデフォルメしてすごく生き生きと描けるんですけど、僕は全部ちゃんと描かないとそれっぽく見えないので、すごく面倒臭いと思いながら、自分ではでもしょうがないですね(笑)。で、生き物の色んな形の面白さにやっぱり自分が惹かれているところがあるので、それが伝わればいいなっていうのと、もうひとつは今写真が発達していて僕も写真を撮りますけれども、絵も面白いんだよっていうのもどこかで伝えたいことではありますね」

●そもそもイラスト描いてみようって思われるようになったのは、何かきっかけがあったんですか? 

「3つあるんですけど、ひとつは子供の時から生き物とは別に絵を描くのが好きでした、漫画の模写みたいなのですけど。もうひとつは昔はデジカメがなかったのでカメラが高くて、あと扱いがすごく面倒くさかったんですね。全然分からない、僕、機械音痴なので写真が撮れなかったっていうのがひとつ。
 で、何とか自分で生き物のことを記録したいなとは思っていて、そうすると写真がダメだと絵を描かざるを得ない。たまたま好きだったからそれが全部絡まって生き物の絵を描くようになったっていうことではあります」

●写真でパッと撮るよりも絵で描くほうがすごく観察力が高まりそうですよね。

「やっぱり描くと、描いたものっていう漠然としたイメージで残っています。写真だとやっぱり写真を撮った! って安心してしまって覚えていなかったりするので」

●小さいお子さんとかも観察しながら描いてみるっていうのはいいかもしれませんね。

「そうですね。時々小学生の子からファンレターみたいなのをもらったりするんですけど、やっぱり好きな子は小学校2年生でもよく見て描いていたりしますもんね」

●最後にこの新しい本『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』を通して読者の皆さんにいちばん伝えたいことは何ですか?

「そうですね。沖縄っていうとたくさんの魅力があるし、皆さん色んな目的で来られていると思うんですが、その中に自然というものの素晴らしさもあるんだよっていうのを伝えたくて、自分の知らない見方とかですね、自分の知らない世界が、自分が出かける場所にもっとあるんだってことをまず知っていただけたら・・・皆さんが自然にどっぷり浸かっていただかなくてもいいとは思うんですが、そういう部分もあるんだよっていうのを伝えたくて書かせてもらったという本です」


INFORMATION

ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検


『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』

 ゲッチョ先生の案内で自然豊かな、生き物の宝庫沖縄を探検しましょう。沖縄本島の北部にある「やんばるの森」や、街中で見られる生き物ほか、宮古島や石垣島、西表島や与那国島の、個性的な自然が精密で美しいイラストとともに紹介されています。岩波ジュニア新書シリーズの一冊として絶賛発売中です。詳しくは「岩波書店」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「岩波書店」のオフィシャルサイトHP:https://www.iwanami.co.jp/book/b583373.html

◎ゲッチョ先生の公式サイト:http://kamage.web.fc2.com/

◎ゲッチョのコラム:https://blog.goo.ne.jp/kamage-nomori

オンエア・ソング 7月18日(日)

2021/7/18 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. LOVELAND, ISLAND / 山下達郎

M2. STEP IN THE NAME OF LOVE / R.KELLY

M3. SOULS (PEACH BOSSA MIX) / BIRD

M4. HONEY BEE / BENNY SINGS

M5. ダイナミック琉球〜応援バージョン〜 / 成底ゆう子

M6. 島人ぬ宝 / Begin

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

“動く自然”砂浜が痩せていく!?〜豊かな砂浜を守れ!「全国砂浜ムーブメント」〜

2021/7/11 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、公益財団法人「日本自然保護協会」NACS-J(ナックスジェー)の「志村智子(しむら・ともこ)」さんです。

 1951年から日本の自然を守るための活動をしている、環境保護団体の草分け的な存在「日本自然保護協会」はこれまでにも重要な役割を果たしてきました。この団体がなければ、日本の自然はもっとひどい状態になっていたかもしれないと言われています。

 そんな「日本自然保護協会」NACS-Jがいま力を入れているキャンペーンが、豊かな日本の砂浜を守るための「全国砂浜ムーブメント」。いったいどんな活動なのか、このあと志村さんにじっくりお話をうかがいます。

☆写真協力:日本自然保護協会

写真協力:日本自然保護協会

砂浜は危機的な状況!

※それでは早速、志村さんにお話をうかがっていきましょう。「日本自然保護協会」では現在「全国砂浜ムーブメント」というキャンペーンを行なっていますが、これはどんな活動なんですか?

「日本自然保護協会はその名前の通り、日本の自然を守る活動をやっているんですけど、ちなみに今年で70周年になるんです!」

●おお〜! 

「今までは比較的、森とか山とか里山とか、陸上の活動が中心だったんですね。ただ本当に世界的に海の自然保護っていうのは遅れているので、NACS-Jも力を入れてやっていこうということで、砂浜ムーブメント自体は3年前から開始しました」

●砂浜ってそんなに危機的な状況なんですか? 

「はい、そうなんです。海自体が本当に今、世界的に早く保護しなければいけない状況っていう風に言われているんです。その中でも砂浜は日本だけではなくて、世界的に危機だと言われている環境なんです」

●何がいちばん問題なんですか? 

「最近、プラスチックゴミがたくさん漂着しているっていうお話は聞かれたことがあると思うんですけど。プラスチックはもちろんなんですけれど、実はもうひとつ、砂浜自体が小さくなっている、痩せていくっていうのが大きな問題になっています」

●海岸自体も減ってきてしまっているっていうこともあるんですよね?

「そうなんです。日本って海岸はすごく長くて、実は世界で6番目の長さがあるんですね。陸地はとっても狭いんですけれど、日本の海岸線はとっても長くて、その海岸線っていうのは、私は日本の財産だと思うんですね。実はそれを結構、改変してきてしまっています。日本全体では約半分は人工的な海岸になってしまっているっていう風に言われています」

写真協力:日本自然保護協会

●自然の海岸ではなくて、人工のコンクリートの海岸っていうことですか? 

「そうですね。いちばん改変されているのが干潟とか砂浜なんですね。遠浅の干潟って埋め立てられてなくなったところがとても多いんです。砂浜も同じように遠浅なので色んな改変がしやすい。あとは波を被ってしまうので護岸工事をされて、陸と海の間にコンクリートの境界線ができてしまっているっていうところが増えています」

●どうしてどんどん自然の海岸って少なくなってしまうんですか?

「ひとつは陸地が狭かったので、遠浅のところは埋め立てやすいから、これは便利だって思って埋め立ててしまったっていうのもあるんですね。あとは砂浜は海のすぐ近くまで、例えば道路を作ったり、建物を作ったりすると、そこに波が被ったり削られたりすると大変なので、道路や町を守るために護岸を作って、砂浜のほうを潰してきたっていうことがあります。その結果、砂浜が減って波の力を弱める力が減ってしまったりして、さらに大きな堤防を作ったりっていうような悪循環になってしまっているというところが結構あるんですね」

全国砂浜ムーブメント、3つの取り組み

※「全国砂浜ムーブメント」の具体的な内容を教えてください。

「はい、砂浜って私たち、とても馴染みのある景色だと思うんですけれど、じゃあ実際にどんな生き物がいるんだろうとか、どんな仕組みを持っている自然なんだろうって、意外にご存知じゃない方が多くいらっしゃるんですね。
 なので、1つは砂浜ノートっていうのを作りました。砂浜のことをもっと知ってもらおうということで、砂浜のことを紹介した冊子を作ったんですね。これをたくさんの子供たちに届けたいというのが1つ目のアクションです。

写真協力:日本自然保護協会

 2つ目のアクションは、砂浜の生き物を調べようっていう取り組みなんですね。砂浜のアプリを使って、砂浜に行って生き物の写真を撮って送っていただくっていうものなんです。砂浜の自然のことはなかなか知られていないので、そうやって全国から砂浜の生き物の情報を集めていただくっていうのが、砂浜を守る第一歩としてとても重要なんですね。

 3つ目のアクションが、砂浜に押し寄せてくる海ゴミを減らそうというものです。これもやはりアプリを使って、どこでゴミを拾ったよっていうのをご報告いただくっていう、その3つのアクションからなっています」

●アプリを使うっていうのはゲーム感覚で取り組めて、お子さんたちも楽しめそうですね! 

「特に今コロナで、みんなで集まって、例えば砂浜の生き物を探そうとか、みんなでゴミを拾おうっていうのはなかなかやりづらいと思うんですね。なんですけど、活動がひとりじゃなくて全国みんなでやっているっていうのを、アプリを使って繋がるっていうのは、とっても今の時期にやりやすいものかなと思います」

●砂浜ノートは具体的にどんな内容になっているんですか? 

「砂浜を楽しもう! っていうところから始まって、砂浜でこんなことをすると面白いよっていう、例えば砂でお城を作ってみようっていうのもあるし、砂に隠れてしまったカニを掘るにはどうしたらいい? なんていうものも紹介しています。あとは砂浜でビーチコーミングをしませんかっていうお誘いをしているんですね。ビーチコーミングっていうのは、ビーチは砂浜ですよね、コーミングっていうのはコーム、くしのことを言うんですけど、砂浜をくしですくように色んな探しものをする、砂浜の宝探しみたいなことを言います。

  そうすると実は貝殻とか色んな面白い貝が落ちていたりとか、あとは人工物、例えばビーチグラスであったり陶器の欠片とか、そんな色んな面白い宝物も見つかりますよ、砂浜をそうやって歩きませんかっていうようなことも紹介しています。それ以外にも植物や貝殻のミニ図鑑、あとは砂つぶそのものを見てみようとか、砂浜をどうやったら楽しめるかっていうのをご紹介している冊子です」

写真協力:日本自然保護協会

●ここまで砂浜に焦点を当てたものってなかなかないですよね。

「砂浜を知ってほしい、砂浜を守りたいって言っても、相手を知らないと守れないじゃないですか。なんだけど、今例えば本屋さんに行っても、森の本とか雑木林の本とかお花の本とかはたくさんあると思うんですけれど、海のコーナーって結構ちょっとなんですね。

 その中でさらに砂浜のことを紹介している本って、本当にごく僅かしかないんです。で、自然保護協会としては本を作ろうか、売ろうかって思ったんですけど、今の砂浜の現状を考えると、売っていたら間に合わない、お金を出してまで手に取ってみようかなって思う人に届けているのだと間に合わないので、自分たちで作ってしまおうってことで冊子を作ったんです。

 最初の年、一昨年に作った5千部はほとんどあっという間になくなってしまって、昨年これをもっとたくさんの子供たち、5万人の子供に届けたいってことで、クラウドファンディングで皆さんに協力をお願いして、それが無事達成できたんです。それを今お配りしているところです」

*編集部注:「日本自然保護協会」は千葉県内のイオンモールともコラボして、幕張、木更津、銚子で、貝殻でリースを作るワークショップなどを開催、大変好評だったそうですよ。そしてお話にもあったアプリは「ピリカ」と「バイオーム」のふたつ。

 「ピリカ」はゴミ拾いアプリで、一緒にやっている仲間と交流できたり、お互いに応援のメッセージを送れたりするそうです。そして「バイオーム」は生き物コレクションアプリで、砂浜で生き物を見つけたら、写真を撮って投稿すると、AIがどんな生き物か判定してくれるそうですよ。
 詳しくは「全国砂浜ムーブメント2021」のサイトをチェック!
https://www.nacsj.or.jp/sunahama_movement/

九十九里浜の謎!?

※ところでそもそも砂浜って、どうやってできるんですか?

「面白いですよね。砂浜ってそこから砂が湧くわけでも、勝手に増えてくるわけでもないですよね。千葉県の九十九里浜にはとっても大きい砂浜がありますよね。あそこは結構、特徴的な砂浜のひとつなんですけれど、あまり大きな川が流れ込んでいないんですね。ほかの地域だと大きな川が山から砂を運んできているところっていうのが多いんです。

 山の中から雨や風で削られた砂が川で運ばれてきて浜にやってくる。そこで砂浜ができるっていうのができ方のひとつなんですけれど、大きな川が流れ込んでいない、千葉県の九十九里浜は実は、北と南の崖を削った砂が溜まってできている砂浜なんです。そんな風に砂浜ってその浜ごとによって、どこから砂がやってきたかとかによって全然個性が違うんですね。だから砂の色がちょっと白っぽかったり黒っぽかったり、そういう個性があるのは砂の成り立ちに関係しています」

●いろいろ見比べてみるのもいいかもしれないですね。

「なんですけど、例えば九十九里浜は崖が砂浜を作っているっていうのは分かってはいたんですけれど、崖が削られてしまうとその上の住宅とか施設の、もしかしたら足元が崩れてしまうかもしれないっていうので、崖が削れないように、下に直接、波風が当たらないようにブロックを並べたんですね。そのおかげで崖が減るスピードっていうのは減ったんですけれど、そうしたら砂浜が痩せてきちゃったんですね。要するに砂の供給源が減ってしまったことで、波でさらわれていく需要と供給が合わなくなってしまって砂が減っている、そんなところもあります。

写真協力:日本自然保護協会

 ほかの地域では山の上から運ばれてくる砂がダムで塞き止められたり、途中で砂を取られてしまったりいうので、海にやってくる砂が減ってしまったりっていうこともあります。あとは砂ってそこにずっと居続けるわけではなくて、波で沖に持っていかれたりしますよね。台風で一時的にさらわれていくっていうこともあるんですけれど、結構海の中にまだ残っていて、だんだん砂が戻ってくるっていうこともあるんですね。

 それと同じように大きな砂浜だと海流に乗って、どんどんゆっくり運ばれてきて、隣の湾に運ばれたりとか、隣の浜に少しずつ運ばれていくっていう動きがあるんですけれど、その間に港を作ったり突堤を作ったりすると、隣の浜に砂が行かなくなったりとかっていうこともあるんですね。そんな風に砂がどこからやってきているのか、そういうことをだんだん私たちも分かってきて、これで砂浜が痩せてきてしまったんだなっていうのが分かるようになってきました。

 そういうのは、最近はGoogleマップとかインターネットで地図や航空写真が簡単に見られるようになったので、そういうのを見ると、砂がどこで止まっているかなっていうのが結構簡単に分かるようになってきました。

 実は砂浜のいちばんの大きな特徴は“動く自然”だっていうことなんですね。もちろん森とか草原とかも動きはあるんですけれど、砂浜ってとても動きの激しい自然なんですね。1日の間に干満もあるし、季節的な変動もあるしっていうので、常に動き続けているのが砂浜の自然なんですね。
 なので、さっき自然の海岸っていうのお話があったんですけれど、コンクリートブロックを入れるっていうのが、人工物があるから自然じゃないっていう見方もあるんですけれど、その自然の動きが“どのくらい生きている自然なのか”っていうのが、ひとつ見るポイントなのかなっていう風に思います」

写真協力:日本自然保護協会

約20億本のペットボトルが行方不明!

※志村さんからプラスチック・ゴミが砂浜にたくさん流れ着いているというお話がありましたね。日本は家庭から出るゴミは回収して焼却などされて、ちゃんと処理されていると思うんですが、それでも海洋プラスチックゴミが増えているのは、どうしてなんでしょう?

「海のゴミはみんな海外から流れてきたものっていう風に思っていらっしゃる方も多いんですね。確かに外国のゴミっていうのも相当日本に流れ着いています。そうなんですけど、例えば千葉県っていうのは、太平洋側と東京湾側があるじゃないですか。東京湾みたいな深い湾の場合、湾の奥まで外洋のゴミが入ってくることってそんなにないんです。なんだけど、東京湾の奥のほうに行くとそれでもゴミがいっぱい溜まっているんですね。実は私たちの暮らしの中から海に流れ着いているゴミは相当数あるんです。

 日本は容器包装プラスチック、色んな食べ物とか色んなものを買う時、大抵プラスチックに覆われているじゃないですか。ああいう容器包装プラスチックの、ひとり当たりの使用量がアメリカに次いで世界で2番目に多いんですね。とってもたくさんのプラスチックを日本人は使っているんです。でも一生懸命回収はしていますよね。日本は、ペットボトルの9割は回収してリサイクルしているんです。世界でトップレベルのすごく優秀な回収リサイクルの国なんです。

 ただし、日本のペットボトルの使用量は年間で230億本って言われているんですね。その9割を回収しても、1割の行方不明があるとすると、それだけで20億本以上がどこかに行っているんですね。
 自分はゴミ箱に入れたんだけれど風に飛ばされてとか、うっかりとか、私たちもそんなことはしないようにしようと思っても、ビニール袋が風で飛んで行っちゃったとか、ポケットに入れておいたはずなのになくなっているっていうことがあると思うんです。

 最近はマスクも結構、道に落ちているのを見かけたりするんですけれど、そういうようなうっかりなものもたくさんあるんです。そういうものが回収しきれないで、私たちの手元から逃げ出しちゃっているゴミっていうのも相当数あるんです。なので、回収する、リサイクルする、拾うっていうのもとっても大事なんですけれど、元々の使う量をもうちょっと減らす、世界で2番目よりは、もうちょっと減らしたほうがいいんじゃないかなという風に思っています。

 砂浜に流れ着いている海ゴミの量っていうのは、海ゴミ全体の中で1割、もしくは2割程度じゃないかっていう風に言われているんですね。それ以上の量が海の中や沿岸に流れ出してしまっているっていう風に言われています。海の中だけではなくて本当に今、色んなところの大気中からも、微小なプラスチックが見つかっているんですね。そういうことになってしまっているのは量がたくさんあるっていうのはもちろんなんですけれど、プラスチックって細かくなってもプラスチックなんですよ。

 人工的に作られたとても安定した物質なので、細かくなってもなかなか分解されないんですね。私たちの周りにある落ち葉や木の枝とか、動物の死骸っていうのはだんだん細かくなって最終的には菌類が分解してくれて無機物になって、また次の生き物がそれを肥料にしたり栄養にしたりして循環しているんですけれど、プラスチックっていうのは生物が分解できない構造を持っているんですね。
 バイオプラスチックの研究とかもまだ進んでいるんですけれど、私たちはこの半世紀くらいでプラスチックの使用量がものすごく増えたんですけれど、最後どういう風にしたら分解するとか、ちゃんと循環するかっていうことを知らないまま、実は使い続けているのが今の状況なんです」

写真協力:日本自然保護協会

砂浜ノートを持って海に行こう!

※最後に長年、自然保護の活動に携わってこられて、いまどんなことを感じていますか?

「海の自然保護ってすごく遅れているっていう風に申し上げたんですけれど、本当に陸の自然に比べて海の自然は、半世紀とか30年とかそのくらいは軽く遅れている感じがします。なんだけど、日本の自然って、日本地図を思い浮かべてくださいって言った時に、大抵の方は陸地しか多分思い浮かばないと思うんですね。

 その周りに海があると思う方、海のことまで思い浮かべて日本地図を思い浮かべてくださる方って、なかなか少ないかなって思いますね。でも本当に海と一体になって日本の自然が成り立っているので、海も含めて陸の自然も思い浮かべてくれる人が増えていくといいなっていう風に思っています。

 あと、どういう風に自然を見るかっていうのは、やっぱり時代によって私たちの色んな理解、科学技術も進んできて、理解がどんどん進んできていると思うんですね。壊すほうの技術と言ったら言い過ぎかもしれないですけれど、自然を利用する技術も進んでいるんですね。それと同じように守る技術も進んでいかないと、気が付いたらそのバランスが崩れていたっていうことになると思うんですね。

 本当にこの20〜30年だけ見てみても、例えば白神山地は今世界遺産になっているじゃないですか。日本自然保護協会もブナの森を守るために取り組んでいたんですけれど、30年くらい前、世界遺産になる前は加工技術が発達していなかったので、ブナを伐ってスギに変えることがいいことだったんですね。

 森そのものを守るべきものだっていう認識が最初はなかった。だけど今は森の中に色んな生き物がいて、そこにいると楽しいし、空気も美味しいし、きれいな水ももたらしてくれる場所だっていうイメージが、多分皆さんの頭の中に思い浮かべられるようになったんじゃないかなと思うんですね。そういうことが海に関しても是非、皆さんに感じてほしいなっていう風に思っています」

志村智子さん

●「全国砂浜ムーブメント」、今年は12月31日まで続きますよね。番組を聴いてくださっているリスナーさんに、改めていちばん伝えたいことってどんなことですか? 

「本当に千葉の皆さんは、太平洋側の海と東京湾側の海っていうとっても個性が違う2つの海を持っている、とってもいい県にお住まいだと思うんですね。なので、是非たまには海に行っていただきたいなっていうのが第一です。
 やっぱり現場に行って砂浜に立って、見えてくるものっていうのがいっぱいあると思うので、是非一度砂浜にお出かけいただきたいなと思うし、その時には是非、砂浜ノートをお持ちいただければ、砂浜を見るヒントにもなるんじゃないかなという風に思っています」


INFORMATION

写真協力:日本自然保護協会

 「全国砂浜ムーブメント」に家族やお友達と参加しませんか。「砂浜ノート」があれば、海や砂浜のことを楽しく学べますよ。子供たちの体験にお役立てください。日本自然保護協会のサイトからすぐ申し込めます。

 また、ゴミ拾いアプリ「ピリカ」と、いきものコレクションアプリ「バイオーム」もぜひ活用してください。同じく協会のサイトからダウンロードできます。今年の「全国砂浜ムーブメント」は12月31日までです。

 ほかにも日本自然保護協会では、あと20頭ほどになってしまった「四国のツキノワグマ」を救うための活動も行なっています。また、現在、会報誌「自然保護」の表紙を飾る「フォトコンテスト」の作品を募集中。応募の締め切りは9月30日です。

 そして日本自然保護協会の活動は会費や寄付で支えられています。ぜひご支援いただければと思います。

 いずれも詳しくは「日本自然保護協会」NACS-Jのオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「日本自然保護協会」NACS-JのHP:https://www.nacsj.or.jp

オンエア・ソング 7月11日(日)

2021/7/11 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. SAND AND GLASS / JESSE HARRIS & THE FERDINANDOS

M2. 想い出のスマ浜 / THE BEACH BOY

M3. CHAIN REACTION / DIANA ROSS

M4. I FEEL THE EARTH MOVE / MANDY MOORE

M5. LOST! / COLDPLAY

M6. ALMOST PARADISE / ANN WILSON & MIKE RENO

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

心が優しくなれる、ほどけるような気持ちになれる〜年間180日潜る水中写真家「鍵井靖章」の写真展〜

2021/7/4 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、水中写真家の「鍵井靖章(かぎい・やすあき)」さんです。

 鍵井さんは1971年、兵庫県生まれ。大学在学中の20歳のときに、ある写真家の水中写真展を見て感動し、写真家になることを決意。その後、伊豆やモルディブでダイビング・ガイドとして経験を積みながら、水中撮影のスキルを磨いて、28歳のときに独立。そしておよそ20数年にわたってフリーランスの写真家として第一線で活躍されています。現在は鎌倉に拠点を置き、葉山や岩手など国内の海はもちろん、コロナ禍の前は月2〜3回は海外の海に出かけていたそうです。

 きょうはそんな鍵井さんに、世界の海に潜って感じた日本の海の素晴らしさや、写真展のお話などうかがいます。

☆写真協力:鍵井靖章

写真協力:鍵井靖章

やっぱり感じる海の変化

※それでは鍵井さんにお話をうかがいましょう。国内外のいろいろな海に潜って写真を撮っていらっしゃいますが、特に印象の残っている海はどこですか?

「モルディブ好きですね。行ったことあります?」 

●ないんです〜。行ってみたいです! 

「インド洋に浮かぶ島々なんですよね。僕、25歳〜27歳まで住んでいたこともあるので、ちょっと故郷的な海でもあるんですけれど、やっぱりモルディブの魚影の濃さとか素晴らしい海なので大好きです」

●ほかの海とモルディブの海っていうのは具体的にどう違うんですか? 

「やっぱり魚影の濃さですよね。色んなお魚がいて、あとジンベイザメとかマンタとか、ダイビングをする僕らにとっては、憧れの生き物との出会いを可能にしてくれる海なんですよ」

●長年、海に潜ってらっしゃいますけれども、いちばん感じる海の変化ってありますか? 

「そういう質問されたらやっぱり、最近はよく海洋プラスチックや温暖化現象って言われるじゃないですか。でもそれは本当に感じますよ。多分前回、葉山の佐藤輝さんとの話でもあったかもしれないけど、海藻がなくなったりだとか、環境の変化はやっぱり感じますよね」

●やっぱり長年見てこられて、悪くなっているなという印象ですか? 

「悪くなっているなっていうか、例えば、海外のリゾート地とかもっと昔はゴミが多かったって言うんですよね。でも観光地化されることによって、目に見えるゴミは減るわけじゃないですか、観光地として成立するから。

 でもよく言われているように、実は目に見えないマイクロプラスチックとか、そういう問題があるわけじゃないですか。プラスチックの歴史が始まって、僕たちはそれの問題と向き合っていかなくちゃいけないっていうところに来ていると思うので、目に見えて綺麗になった場所っていうのももちろんあると思うんだけれど、実は目に見えていない部分で何かしら違う問題が進行していったりしているのではないかなっていう懸念はあります」

初の流氷ダイビング!

※コロナの影響でなかなか海外へは行けなくなりましたが、ここ1〜2年はやはり国内の海で撮影していることが多いのでしょうか?

「そうですね。正直言って海外に行きたい気持ちは全くなくて、今は国内の海を十二分に楽しむと言いますか、記録をしていて。
 実は僕、ダイビングを始めて30年くらい経つんですけれど、北海道の流氷ダイビングとかしたことなかったんですよ、外国ばっかり行っていたから。で、今年初めてその流氷ダイビングをやったりして、やっとちゃんと日本人のダイバーっぽく活動しています(笑)」

●流氷ダイビング、いかがでした? 

「実はすごく怖かったんですよ。水温がめっちゃ冷たいんじゃないの、とか思っていて、すごく怖かったんですが、意外と装備をしっかりすると全然ストレスなく、氷の下の世界を楽しむことができました」

●流氷ダイビングは初めてということですけれども、どんなものを撮影されたんですか? 

「いちばんの目標は流氷の下から見上げるっていうことだったので、流氷が持っている造形とか、ちょっと流氷が薄いところから溢れてくる光だとか、まぁ氷の造形ですよね、それを楽しんだかな」

写真協力:鍵井靖章

●どうなっているんですか? 流氷の下って。

「なんとなく想像がつく世界ですよ。氷の下でさ、あれ知ってますよね? 流氷の天使と言われる生き物な〜に?」

●流氷の天使? 

「クリオネ」

●ああ! クリオネ! 

「そうそう、クリオネとかハダカカメガイかな、貝の仲間なんですけれど。もうね、なんか両手じゃないんだけれど、一生懸命泳いでいるの、小っちゃくてすごく可愛かった。やっぱりテレビの映像とかで見るのとは全然違いますよね。寒さ忘れましたから」

●へぇ〜! 

「流氷ダイビングで僕、今回すごくいいなと思ったのが、例えば寒くなったら寒いって一緒に潜っている人に言ったらすぐに上がってくれるんですよ。だから何となくイメージだったら、すごく寒いのを我慢していっぱい潜んなきゃいけないのかなと思ったんだけれど、ちょっともう寒いし、もういいかなと思ったら20分くらいで上がるって言ったら、すぐに上がってもらえるんで、無理なく潜れて、ストレスなく今回、氷の下を楽しむことができたので、それはすごくよかったですね。

 で、結果僕は夢中になって50分くらい潜っていたんですけれどね。僕にとってはやっぱり思っていた以上に寒くなくて、思っていた以上に快適に氷の下の世界を楽しめたので、また来年の2月には行きたいなと思っています」

●初めてご覧になった氷の下の世界はいかがでした?

「もう一回撮りたいな〜! まだちゃんといいの撮れていないんで、もう一回撮りたい。でも素晴らしかったですよ。だからまた行きたいっていう気持ちにさせる・・・もちろん沖縄とか、ああいう海とは全く違う世界が広がっていたので、素晴らしい体験でしたね」

手付かずの海!?

※つい最近も国内の海で撮影されていたと聞いたんですけど、どこの海でどんな生き物を撮ってたんですか?

「つい先日までは愛媛県の愛南町って言って、まだダイビング・ポイントとして2年しか経っていない新しいエリアがあるんですけれど、そこで手付かずの海に潜ってみたり・・・手付かずってやっぱりいいですね。残念ながらたくさんダイバーが入ったりすると、そこはちょっとポイントとしては荒れちゃうと言いますか、生き物が少なくなったりもするんだけれど、その愛南町っていう町の海はほとんど誰も入ったことがない海だったので、日本の海って本来の姿はこうなんだ! って思える海がそこに残っていたので大変よかったですね。素晴らしかった」

●具体的に手付かずの海、そういった海っていうのはどんな状況になっているんですか? 

「サンゴとか、ソフトコーラルと言われる海底に付着している生き物、ああいうのがすごくモサモサっと生えていて、すごく色彩も豊かで、魚たちもダイバーを見たことがない魚たちがほとんどなので、割と慌てて逃げ出すというか、それが逆に可愛かったですね(笑)」

●人に慣れていない!?(笑)

「そう、人に慣れていないからその反応がすごく可愛くて、慌てて逃げ出したりして、逃げられるのは嫌なんですけれど、でもそれはそれで可愛かった」

●日本の海の良さって改めて鍵井さんから見てどんなところにありますか? 

「これ、どのカメラマンに聞いても同じだと思うんですけれど、黒潮とか親潮とか色んな海流が混ざり合っている場所なので、色んな海流の影響で生息している生き物も違うし、ほかの国では感じられないぐらいのバリエーションは日本の海にはありますよね。だって考えてもみてください。僕、今年3月に北海道の流氷ダイビングに行ったって言ったじゃないですか。その翌日には僕、沖縄に飛んでザトウクジラと一緒に泳いでいましたから、やばくないですか!?」

●ええ!? すごいですね!(笑)

「だから、日本すごいなと思って」

●また海の状況も全く違いますよね?

「ね! でも氷の下であれ、クジラであれ、計り知れない感動を与えていただけるので、ありがたいですね、ありがたい仕事!(笑)」

●鍵井さんにとって天職ですね!

「どうでしょう・・・まぁきっと適職ですね」

海は平等!

写真協力:鍵井靖章

※海の中で撮影していて、いちばん嬉しい瞬間はどんな時ですか?

「嬉しい瞬間は・・・ちょっとカメラマンっぽいこと言っていいですか?」

●はい! 

「僕、別に自分のために写真は撮っていないので、誰かに見ていただけるっていうことを前提に撮っているっていうか、このシーンを撮影したらどんな人に届くかなって思いながら撮影しているのですよ。だからやっぱりみんなの気持ちに届いてくれそうなシーンに出会ったり、そういうのが撮れたりした時はやっぱり嬉しいかな」

●ただ自然が相手ですから、相手は生き物ですし、なかなか思い通りにいかないことも多いんじゃないですか? 

「そうですね。でも長年やっているから割と折り合いというか、会えなかったとしても、今僕は会えるタイミングじゃなかったんだ、まだその役割じゃなかったんだと思う時もあるし、かと思えば、とてもたくさん貴重な生き物に出会える時もあるし、色々、海は平等平等(笑)」

●ベスト・ショットを収める極意っていうのは? 

「あんまり無理しないことじゃないですか。僕お魚が逃げてもあんまり追っかけないし、あんまりお魚にストレスを与える撮影はしたくないし。あとやっぱりちゃんと自分の命を守りながら撮影したらいいんじゃないかな、海から帰ってくることが大前提でね」

●生き物の生態とかもちゃんと勉強していないと、いい写真は撮れないのかなとも思うんですけれど・・・。

「僕あんまり詳しくないんですよ、生き物の生態」

●あれ? そうなんですか? 

「もちろん一般の方よりは知っているけれど、僕どちらかというと海の中で、色とかデザインとか、そっち系で見ちゃっている人間なので・・・そうなんですよ、ちょっと厄介なんですよ(笑)」

●だから鍵井さんの写真はパーッと明るい色鮮やかな感じで、気持ちがいいんですね! 

「なんかやっぱり僕の写真を知ってくれている人は、鍵井さんはそんなに生態に興味がないからこの写真が撮れるんですよ、っていう言い方をする人もいるし・・・“あ、はい”って思いながら聞いているんですけれどね(笑)」

●鍵井さんならではの、こだわりはどんなところなんですか?

「コロナになってみんな疲れているし、僕も疲れているし、それは気が付いていないような傷が付いているような・・・何かのタイミングで自分ってやっぱり疲れているんだなって思う時もあるし、今は何か日々のSNSの発信もそうかもしれないし・・・今度の写真展もそうかもしれないけれど、今日本に生きていて疲れを感じている人に自然の持っている癒しとか、写真という芸術、エンターテイメント、分からないけれど、そういうものが持っている力で皆さんに何か違う、もう少し優しい感情を持ってもらえればいいかなとか思ったりするかな」

心が優しくなれる写真展

※現在、外苑前の「Nine Gallery」で写真展を開催しているそうですが、どんな写真展ですか?

「ここの写真展のお話をいただいた時に、やりたいなって思ったのが疲れている人が逃げ込める都会のオアシスみたいな場所を作ってみたいと思って。自分の作品がすごいでしょ! 自然がすごいでしょ! っていうような写真展ではなくて、そこに来てくれた人がほんのひと時でも、別に全ての写真の前じゃなくて、ただ1枚の写真の前でもいいから、その前に来た瞬間にふと心が優しくなれるというか、ほどけるような気持ちになれる展示会を作りたいなと思ってやっているのが今のそれです」

●都会ど真ん中ですよね、外苑前は。そこにいながら自然を体感できるっていうのは素晴らしい機会だなと思うんですけれども、別の写真展ももうすぐ開催されるんですよね?

「そうなんですよ。銀座でもうひとつ『Blue+(ブルー・プラス)』っていう写真展をやるんですよ。写真を撮るダイバーさんってすごい多いんですよ。で、僕が先頭に立って、写真を撮るダイバーさんを100何名集めて、みんなで写真展しようって音頭を取ってやっている写真展を富士フォトギャラリー銀座で開催します」

●具体的にどんな写真になるんですか? 

「今回で6回目か7回目なんですけれど、今回は趣向を変えて、1枚の写真を上下左右反転させて、ちょっと万華鏡のような世界を作って、100何点を会場にわーっと並べて、ちょっとおかしな写真展です」

●へぇ〜! 素敵ですね! 万華鏡、ちょっと想像つかない世界なので興味深いです! 改めて鍵井さんの海への想いを聞かせていただけますか? 

「海への想いですか!?」

●ちょっと壮大になっちゃいますけど(笑)

「海、いいね! ダイビングって割と敷居が高いじゃないですか、ライセンスを取ったりしなくちゃいけないし・・・もちろんダイビングをされるのはいいと思うけれど、シュノーケリングとかあるじゃないですか、されますか?」

●はい! シュノーケリングはよくします! 

「シュノーケリングも海の魅力を感じることが十二分にできるので、まぁ海水浴は海水浴でいいけれど、ちょっとマスクとフィンを付けて、お魚の姿を探してみたりするのはいいんじゃないかなと思います」

●潜りながら水中カメラとかで写真を撮っている方も多いと思うんですけれども、私たちが水中カメラで撮影する時のコツとかがあれば、是非教えてください。

「わーっと(海に)入っていっても魚は逃げていくから、ちょっと待っていたら、次は魚のほうから寄ってきてくれるので、自分の思いだけで写真は撮れないですよね、自然の中では。だから海の中に入っていって写真を撮ろうと思う前に、ちょっとだけそこに馴染んでいたら、次は魚のほうから挨拶してきてくれるので、そういうのがいいタイミングじゃないかなと思います」

●では最後に鍵井さんにとって海とは?

「仕事場かな(笑)・・・まだ分からない、あまりにも身近すぎて。僕がもう引退間近になったら何か違う感情になるかもしれないけれど、今は海にどっぷり浸かっているし、あるのが当然だし、まだ分からない。もちろん大切なものには変わりはないし、愛おしいものでもあるし、はい」

☆この他の鍵井靖章さんのトークもご覧下さい


INFORMATION

青い庭

 現在、鍵井さんの写真展が外苑前の「Nine Gallery」で開催されています。
「青い庭」と題されたこの写真展は、都会の中の癒しの空間をイメージし、
およそ25点の新作が展示されているそうですよ。開催は7月11日まで。
期間中は、毎日夜7時から鍵井さんのギャラリートークが予定されています。
 詳しくは「Nine Gallery」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「Nine Gallery」のオフィシャルサイト:https://ninegallery.com/exhibition/1089

Blue+(ブルー・プラス)

 そして7月9日からは写真展「Blue+(ブルー・プラス)」が銀座の富士フォトギャラリーで開催される予定です。ダイバー100数名のかたが撮った、万華鏡のような作品が展示されるそうです。開催は7月15日まで。
 詳しくは富士フォトギャラリーのサイトを見てください。

◎富士フォトギャラリーHP:http://www.prolab-create.jp/gallery/ginza/

オンエア・ソング 7月4日(日)

2021/7/4 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. MORNIN’ / AL JARREAU

M2. BLOW / 山下達郎

M3. WHAT A WONDERFUL WORLD / JUJU

M4. YOU’RE ONLY LONELY / J.D. SOUTHER

M5. 潮風にちぎれて / 松任谷由実

M6. I CAN SEE CLEARLY NOW / MINMI

M7. I’M STILL WAITING / COURTNEY PINE

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

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