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心が優しくなれる、ほどけるような気持ちになれる〜年間180日潜る水中写真家「鍵井靖章」の写真展〜

2021/7/4 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、水中写真家の「鍵井靖章(かぎい・やすあき)」さんです。

 鍵井さんは1971年、兵庫県生まれ。大学在学中の20歳のときに、ある写真家の水中写真展を見て感動し、写真家になることを決意。その後、伊豆やモルディブでダイビング・ガイドとして経験を積みながら、水中撮影のスキルを磨いて、28歳のときに独立。そしておよそ20数年にわたってフリーランスの写真家として第一線で活躍されています。現在は鎌倉に拠点を置き、葉山や岩手など国内の海はもちろん、コロナ禍の前は月2〜3回は海外の海に出かけていたそうです。

 きょうはそんな鍵井さんに、世界の海に潜って感じた日本の海の素晴らしさや、写真展のお話などうかがいます。

☆写真協力:鍵井靖章

写真協力:鍵井靖章

やっぱり感じる海の変化

※それでは鍵井さんにお話をうかがいましょう。国内外のいろいろな海に潜って写真を撮っていらっしゃいますが、特に印象の残っている海はどこですか?

「モルディブ好きですね。行ったことあります?」 

●ないんです〜。行ってみたいです! 

「インド洋に浮かぶ島々なんですよね。僕、25歳〜27歳まで住んでいたこともあるので、ちょっと故郷的な海でもあるんですけれど、やっぱりモルディブの魚影の濃さとか素晴らしい海なので大好きです」

●ほかの海とモルディブの海っていうのは具体的にどう違うんですか? 

「やっぱり魚影の濃さですよね。色んなお魚がいて、あとジンベイザメとかマンタとか、ダイビングをする僕らにとっては、憧れの生き物との出会いを可能にしてくれる海なんですよ」

●長年、海に潜ってらっしゃいますけれども、いちばん感じる海の変化ってありますか? 

「そういう質問されたらやっぱり、最近はよく海洋プラスチックや温暖化現象って言われるじゃないですか。でもそれは本当に感じますよ。多分前回、葉山の佐藤輝さんとの話でもあったかもしれないけど、海藻がなくなったりだとか、環境の変化はやっぱり感じますよね」

●やっぱり長年見てこられて、悪くなっているなという印象ですか? 

「悪くなっているなっていうか、例えば、海外のリゾート地とかもっと昔はゴミが多かったって言うんですよね。でも観光地化されることによって、目に見えるゴミは減るわけじゃないですか、観光地として成立するから。

 でもよく言われているように、実は目に見えないマイクロプラスチックとか、そういう問題があるわけじゃないですか。プラスチックの歴史が始まって、僕たちはそれの問題と向き合っていかなくちゃいけないっていうところに来ていると思うので、目に見えて綺麗になった場所っていうのももちろんあると思うんだけれど、実は目に見えていない部分で何かしら違う問題が進行していったりしているのではないかなっていう懸念はあります」

初の流氷ダイビング!

※コロナの影響でなかなか海外へは行けなくなりましたが、ここ1〜2年はやはり国内の海で撮影していることが多いのでしょうか?

「そうですね。正直言って海外に行きたい気持ちは全くなくて、今は国内の海を十二分に楽しむと言いますか、記録をしていて。
 実は僕、ダイビングを始めて30年くらい経つんですけれど、北海道の流氷ダイビングとかしたことなかったんですよ、外国ばっかり行っていたから。で、今年初めてその流氷ダイビングをやったりして、やっとちゃんと日本人のダイバーっぽく活動しています(笑)」

●流氷ダイビング、いかがでした? 

「実はすごく怖かったんですよ。水温がめっちゃ冷たいんじゃないの、とか思っていて、すごく怖かったんですが、意外と装備をしっかりすると全然ストレスなく、氷の下の世界を楽しむことができました」

●流氷ダイビングは初めてということですけれども、どんなものを撮影されたんですか? 

「いちばんの目標は流氷の下から見上げるっていうことだったので、流氷が持っている造形とか、ちょっと流氷が薄いところから溢れてくる光だとか、まぁ氷の造形ですよね、それを楽しんだかな」

写真協力:鍵井靖章

●どうなっているんですか? 流氷の下って。

「なんとなく想像がつく世界ですよ。氷の下でさ、あれ知ってますよね? 流氷の天使と言われる生き物な〜に?」

●流氷の天使? 

「クリオネ」

●ああ! クリオネ! 

「そうそう、クリオネとかハダカカメガイかな、貝の仲間なんですけれど。もうね、なんか両手じゃないんだけれど、一生懸命泳いでいるの、小っちゃくてすごく可愛かった。やっぱりテレビの映像とかで見るのとは全然違いますよね。寒さ忘れましたから」

●へぇ〜! 

「流氷ダイビングで僕、今回すごくいいなと思ったのが、例えば寒くなったら寒いって一緒に潜っている人に言ったらすぐに上がってくれるんですよ。だから何となくイメージだったら、すごく寒いのを我慢していっぱい潜んなきゃいけないのかなと思ったんだけれど、ちょっともう寒いし、もういいかなと思ったら20分くらいで上がるって言ったら、すぐに上がってもらえるんで、無理なく潜れて、ストレスなく今回、氷の下を楽しむことができたので、それはすごくよかったですね。

 で、結果僕は夢中になって50分くらい潜っていたんですけれどね。僕にとってはやっぱり思っていた以上に寒くなくて、思っていた以上に快適に氷の下の世界を楽しめたので、また来年の2月には行きたいなと思っています」

●初めてご覧になった氷の下の世界はいかがでした?

「もう一回撮りたいな〜! まだちゃんといいの撮れていないんで、もう一回撮りたい。でも素晴らしかったですよ。だからまた行きたいっていう気持ちにさせる・・・もちろん沖縄とか、ああいう海とは全く違う世界が広がっていたので、素晴らしい体験でしたね」

手付かずの海!?

※つい最近も国内の海で撮影されていたと聞いたんですけど、どこの海でどんな生き物を撮ってたんですか?

「つい先日までは愛媛県の愛南町って言って、まだダイビング・ポイントとして2年しか経っていない新しいエリアがあるんですけれど、そこで手付かずの海に潜ってみたり・・・手付かずってやっぱりいいですね。残念ながらたくさんダイバーが入ったりすると、そこはちょっとポイントとしては荒れちゃうと言いますか、生き物が少なくなったりもするんだけれど、その愛南町っていう町の海はほとんど誰も入ったことがない海だったので、日本の海って本来の姿はこうなんだ! って思える海がそこに残っていたので大変よかったですね。素晴らしかった」

●具体的に手付かずの海、そういった海っていうのはどんな状況になっているんですか? 

「サンゴとか、ソフトコーラルと言われる海底に付着している生き物、ああいうのがすごくモサモサっと生えていて、すごく色彩も豊かで、魚たちもダイバーを見たことがない魚たちがほとんどなので、割と慌てて逃げ出すというか、それが逆に可愛かったですね(笑)」

●人に慣れていない!?(笑)

「そう、人に慣れていないからその反応がすごく可愛くて、慌てて逃げ出したりして、逃げられるのは嫌なんですけれど、でもそれはそれで可愛かった」

●日本の海の良さって改めて鍵井さんから見てどんなところにありますか? 

「これ、どのカメラマンに聞いても同じだと思うんですけれど、黒潮とか親潮とか色んな海流が混ざり合っている場所なので、色んな海流の影響で生息している生き物も違うし、ほかの国では感じられないぐらいのバリエーションは日本の海にはありますよね。だって考えてもみてください。僕、今年3月に北海道の流氷ダイビングに行ったって言ったじゃないですか。その翌日には僕、沖縄に飛んでザトウクジラと一緒に泳いでいましたから、やばくないですか!?」

●ええ!? すごいですね!(笑)

「だから、日本すごいなと思って」

●また海の状況も全く違いますよね?

「ね! でも氷の下であれ、クジラであれ、計り知れない感動を与えていただけるので、ありがたいですね、ありがたい仕事!(笑)」

●鍵井さんにとって天職ですね!

「どうでしょう・・・まぁきっと適職ですね」

海は平等!

写真協力:鍵井靖章

※海の中で撮影していて、いちばん嬉しい瞬間はどんな時ですか?

「嬉しい瞬間は・・・ちょっとカメラマンっぽいこと言っていいですか?」

●はい! 

「僕、別に自分のために写真は撮っていないので、誰かに見ていただけるっていうことを前提に撮っているっていうか、このシーンを撮影したらどんな人に届くかなって思いながら撮影しているのですよ。だからやっぱりみんなの気持ちに届いてくれそうなシーンに出会ったり、そういうのが撮れたりした時はやっぱり嬉しいかな」

●ただ自然が相手ですから、相手は生き物ですし、なかなか思い通りにいかないことも多いんじゃないですか? 

「そうですね。でも長年やっているから割と折り合いというか、会えなかったとしても、今僕は会えるタイミングじゃなかったんだ、まだその役割じゃなかったんだと思う時もあるし、かと思えば、とてもたくさん貴重な生き物に出会える時もあるし、色々、海は平等平等(笑)」

●ベスト・ショットを収める極意っていうのは? 

「あんまり無理しないことじゃないですか。僕お魚が逃げてもあんまり追っかけないし、あんまりお魚にストレスを与える撮影はしたくないし。あとやっぱりちゃんと自分の命を守りながら撮影したらいいんじゃないかな、海から帰ってくることが大前提でね」

●生き物の生態とかもちゃんと勉強していないと、いい写真は撮れないのかなとも思うんですけれど・・・。

「僕あんまり詳しくないんですよ、生き物の生態」

●あれ? そうなんですか? 

「もちろん一般の方よりは知っているけれど、僕どちらかというと海の中で、色とかデザインとか、そっち系で見ちゃっている人間なので・・・そうなんですよ、ちょっと厄介なんですよ(笑)」

●だから鍵井さんの写真はパーッと明るい色鮮やかな感じで、気持ちがいいんですね! 

「なんかやっぱり僕の写真を知ってくれている人は、鍵井さんはそんなに生態に興味がないからこの写真が撮れるんですよ、っていう言い方をする人もいるし・・・“あ、はい”って思いながら聞いているんですけれどね(笑)」

●鍵井さんならではの、こだわりはどんなところなんですか?

「コロナになってみんな疲れているし、僕も疲れているし、それは気が付いていないような傷が付いているような・・・何かのタイミングで自分ってやっぱり疲れているんだなって思う時もあるし、今は何か日々のSNSの発信もそうかもしれないし・・・今度の写真展もそうかもしれないけれど、今日本に生きていて疲れを感じている人に自然の持っている癒しとか、写真という芸術、エンターテイメント、分からないけれど、そういうものが持っている力で皆さんに何か違う、もう少し優しい感情を持ってもらえればいいかなとか思ったりするかな」

心が優しくなれる写真展

※現在、外苑前の「Nine Gallery」で写真展を開催しているそうですが、どんな写真展ですか?

「ここの写真展のお話をいただいた時に、やりたいなって思ったのが疲れている人が逃げ込める都会のオアシスみたいな場所を作ってみたいと思って。自分の作品がすごいでしょ! 自然がすごいでしょ! っていうような写真展ではなくて、そこに来てくれた人がほんのひと時でも、別に全ての写真の前じゃなくて、ただ1枚の写真の前でもいいから、その前に来た瞬間にふと心が優しくなれるというか、ほどけるような気持ちになれる展示会を作りたいなと思ってやっているのが今のそれです」

●都会ど真ん中ですよね、外苑前は。そこにいながら自然を体感できるっていうのは素晴らしい機会だなと思うんですけれども、別の写真展ももうすぐ開催されるんですよね?

「そうなんですよ。銀座でもうひとつ『Blue+(ブルー・プラス)』っていう写真展をやるんですよ。写真を撮るダイバーさんってすごい多いんですよ。で、僕が先頭に立って、写真を撮るダイバーさんを100何名集めて、みんなで写真展しようって音頭を取ってやっている写真展を富士フォトギャラリー銀座で開催します」

●具体的にどんな写真になるんですか? 

「今回で6回目か7回目なんですけれど、今回は趣向を変えて、1枚の写真を上下左右反転させて、ちょっと万華鏡のような世界を作って、100何点を会場にわーっと並べて、ちょっとおかしな写真展です」

●へぇ〜! 素敵ですね! 万華鏡、ちょっと想像つかない世界なので興味深いです! 改めて鍵井さんの海への想いを聞かせていただけますか? 

「海への想いですか!?」

●ちょっと壮大になっちゃいますけど(笑)

「海、いいね! ダイビングって割と敷居が高いじゃないですか、ライセンスを取ったりしなくちゃいけないし・・・もちろんダイビングをされるのはいいと思うけれど、シュノーケリングとかあるじゃないですか、されますか?」

●はい! シュノーケリングはよくします! 

「シュノーケリングも海の魅力を感じることが十二分にできるので、まぁ海水浴は海水浴でいいけれど、ちょっとマスクとフィンを付けて、お魚の姿を探してみたりするのはいいんじゃないかなと思います」

●潜りながら水中カメラとかで写真を撮っている方も多いと思うんですけれども、私たちが水中カメラで撮影する時のコツとかがあれば、是非教えてください。

「わーっと(海に)入っていっても魚は逃げていくから、ちょっと待っていたら、次は魚のほうから寄ってきてくれるので、自分の思いだけで写真は撮れないですよね、自然の中では。だから海の中に入っていって写真を撮ろうと思う前に、ちょっとだけそこに馴染んでいたら、次は魚のほうから挨拶してきてくれるので、そういうのがいいタイミングじゃないかなと思います」

●では最後に鍵井さんにとって海とは?

「仕事場かな(笑)・・・まだ分からない、あまりにも身近すぎて。僕がもう引退間近になったら何か違う感情になるかもしれないけれど、今は海にどっぷり浸かっているし、あるのが当然だし、まだ分からない。もちろん大切なものには変わりはないし、愛おしいものでもあるし、はい」

☆この他の鍵井靖章さんのトークもご覧下さい


INFORMATION

青い庭

 現在、鍵井さんの写真展が外苑前の「Nine Gallery」で開催されています。
「青い庭」と題されたこの写真展は、都会の中の癒しの空間をイメージし、
およそ25点の新作が展示されているそうですよ。開催は7月11日まで。
期間中は、毎日夜7時から鍵井さんのギャラリートークが予定されています。
 詳しくは「Nine Gallery」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「Nine Gallery」のオフィシャルサイト:https://ninegallery.com/exhibition/1089

Blue+(ブルー・プラス)

 そして7月9日からは写真展「Blue+(ブルー・プラス)」が銀座の富士フォトギャラリーで開催される予定です。ダイバー100数名のかたが撮った、万華鏡のような作品が展示されるそうです。開催は7月15日まで。
 詳しくは富士フォトギャラリーのサイトを見てください。

◎富士フォトギャラリーHP:http://www.prolab-create.jp/gallery/ginza/

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