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2021年8月のゲスト一覧

2021/8/29 UP!

◎寒川 一(アウトドアライフ・アドバイザー)
「アウトドアスキル」と「防災」〜「防災の日」を前に、新時代の防災術!』(2021.8.29)

◎棚沢永子(フリーエディター)
小さな旅、東京の森カフェめぐり〜隠れた名店がいっぱい』(2021.8.22)

◎じゅんいちダビッドソン(お笑いタレント)
「そろそろキャンプの達人って呼ばれたいんですけど」by じゅんいちダビッドソン』(2021.8.15)

◎中村みつを(イラストレーター)
東京は山岳都市!?〜「超低山」を楽しむ』(2021.8.8)

◎はた あきひろ(ガーデニング研究家)
家庭にあるもので始める野菜作り〜ノウハウより思いやり〜』(2021.8.1)

「アウトドアスキル」と「防災」〜「防災の日」を前に、新時代の防災術!

2021/8/29 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、アウトドアライフ・アドバイザーの「寒川 一(さんがわ・はじめ)」さんです。

 寒川さんは1963年生まれ、香川県出身。アウトドアでのガイドや、災害時に役立つスキルを教える活動のほか、アウトドア・メーカーのアドバイザー、そして三浦半島の静かな浜で焚き火をしながら、ゆっくり過ごす「焚火カフェ」を主催するなど、幅広い分野で活躍されています。

 そんな寒川さんが監修された本『キャンプ×防災のプロが教える 新時代の防災術 〜アウトドアのスキルと道具で家族と仲間を守る!』がこの春に出版されました。この“新時代”というのがまさにコロナ禍の今だと思います。きょうは9月1日の「防災の日」を前に、寒川さんに防災力を身につけるための術や、実践的な具体例などうかがいます。

☆写真協力:寒川 一

寒川 一さん

新しい避難スタイル

●それでは早速、寒川さんにお話をうかがっていきましょう。この本の序章で「新しい避難スタイル」を提案されていますが、まずはそのあたりから、ご説明いただけますか。

「コロナ禍も、もう2年を迎えてしまいました。非常に厳しい状況が今も続いているんですけれども、この数ヶ月の間も大雨が降ったりとか、あと猛暑もひとつの災害と言えるんじゃないかなと思うんですよね。
 そういう中で例えば、避難っていう指示が出た時に、今の状況を重ねてみると、共同で何かをする、もしくは共有するっていうのが非常に難しい時代になったのかなと思います。独立されたもののほうが好ましいかなというところで、キャンプというものを私は考えているわけですね」

●避難スタイルとしては、避難所に行ってもそこでキャンプするようにテントを張るっていうことですか? 

「まあ、これはシチュエーションが色々考えられると思うんですね。例えば冬場で、非常に寒い中で、体育館の中っていうのは、今まで過去の映像なんかでもご覧になられた方がたくさんいらっしゃると思うんですよ。プライバシーがないっていうのと、あと寒いっていうことを、何か改善する方法としてテントを張るっていうことは、ひとつ大きな方法かなと思うんですね。

 共同で皆さんが集まっているところで、キャンプをそこで展開するっていうのは、モラル的に難しいとか、そこを管理されている方の問題もあると思うんですよね。その辺がある程度クリアできてという条件の上で、キャンプをするっていうこと自体は非常に、先ほどの話じゃないですけれど、独立された形にできるっていうところが非常に有効かなという風には思います」

●この本には車で避難ということも書かれていましたけれども。

「そうですね。僕自身も車っていうのは、これも状況によりますけれども、非常に有効なシェルターだと思っているんですね。ひとつは、場合によったら家屋より非常に駆体がしっかりしている。エンジンがかけられれば、例えば空調、夏はエアコンが効いたり冬は暖房が出たり。あと最近ナビゲーションを備えている車が多いと思うんですけれども、そこから色々な情報を得ることも可能です。で、鍵がかけられたりとか、まあ何が何でも車がいいというわけではなくて、場合によっては車もシェルターとして考えておくっていうことはいいことかなと思いますね」

『キャンプ×防災のプロが教える 新時代の防災術  〜アウトドアのスキルと道具で家族と仲間を守る!』

まずは水の備蓄、そしてローリングストック

※避難所に行かないという選択肢もありますか?

「そうですね。これも先ほどの件と同じでケースバイケースの判断が必要になると思うんですけれども、まずはやっぱり自宅が安全であるっていう大前提が必要ですよね。例えば家屋の倒壊の恐れがないですとか、あと環境的に、周りに大きな川があるとか、裏にすぐ隣接した山があるような状況じゃなくて、家が安全であるという状態であれば、かえって動くより自宅で待機する形は十分にありかなと思います」

●そうなると備えも本当に大切になってくると思うんですけれど、食料を含めた備蓄品というのはどのくらい備えておけばいいんですか? 

「これもね、分量を例えば、このくらいですという風に言えれば、すごく簡単なんですけれども、これもやっぱりご家族の構成であったり、年齢であったりで用意するものも随分変わってくるとは思うんです。

 実際、僕らがいちばん重要だなと思っているのはやっぱり水なんですよね。仮にライフライン、水道が止まってしまった際に、やはり通常アウトドアとかサバイバルの世界で言われているのが、水は3日以内に、飲料水を確保するというか飲まなければ、人間がやっぱり(健全な状態を)保っていられなくなるということを考えると、水の備蓄にまずは重点を置くべきかなと思います。

 あとは食べ物自体は、その法則で言えば、しっかりお水さえ飲んでいれば、人は3週間から30日、生命を落とすことはないと言われているんですね。そのためにはしっかり体温を保つとか、ほかの条件もある程度必要になるんですけれども、食料品がまず第一にあるということではないということですよね。

 お家の中に食べ物がまるっきりないっていう方も、なかなかいらっしゃらないとは思うんですけれども、ある程度、普段から缶詰であったりとかパスタみたいな保存食を備蓄しておく。賞味期限があるものもありますので、そういうのをなるべく賞味期限前に消費をして、またそこに買い足しておく。

 これ”ローリングストック”って言うんですけれども、常に一定量の備蓄、食料の在庫が家にあって、期限が切れる前にそれを食べてしまうってことですよね。で、また買っておくと。それを繰り返していれば、ある日突然、災害が来ても一定量の食品がお家にあるということになるわけですよね」

*補足:お話に出てきたサバイバルの法則、これはアウトドア界では「サバイバルの3の法則」と呼ばれていて、いずれも「3」という数字に関連しています。
 まず、体温は適切に維持できなければ、3時間しか生きられないそうで、季節に応じた防寒の備えが必要。続いて、水分を摂取できなければ、3日程度しか生存できない。つまり水が最も欠かせない備蓄品。そして最後は、食べるものがなければ、30日ほどしか生きられないそうです。「サバイバルの3の法則」を参考に備えるのもいいかも知れません。

優れものの浄水器

※避難せざる得ない時の、非常用の持ち出し品でキャンプをやっている人ならば、最低限どんなものを持ち出せばいいですか?

「今キャンプの人口が非常に増えていますけれども、持っているものって結構バラバラかなという気もするんですね(笑)。そんな中でも共通しているだろうと思えるものが、ヘッドライト。今、手もとに用意しましたけれども、頭に付けるライトですよね」

●あ、はいはい! 両手が空きますよね? 

「そうですね。向く方向が照らされるっていう非常に合理性も高いですし、おっしゃる通りで手が空くっていうのは何よりもの恩恵だと思います。これは家族で1個ではなくて、ひとり1個、個人装備に当たるものなので、キャンプやっている人だったら大抵持っているんじゃないのかなと思いますね。まず、何はなくてもヘッドライトはお持ちいただきたいなと思います。あと、浄水器を今見せていますけれども・・・」

●えー!? そんなに小さな浄水器があるんですか? 

「そうですね。これ、アウトドアの専門店で販売されています。これに例えば、ペットボトルを簡単にジョイントできるんで、汚れた水を入れたペットボトルを付けていただいて、ちょっと手で押してやれば、先端から浄水されたお水、そのまま飲めるお水が出ます。

 このサイズで38万リットルの浄水力がある、38万リットルってちょっと想像できないと思いますけれども、1日10リットルぐらい浄水したとして100年以上もつっていう、言ってしまえば、一生使えるぐらいの能力を持っているものが、本当にこんな小っちゃなサイズで、数千円で手に入るんですね。こういうものがあるかないかで、さっきのお水をどれだけストックするかが変わってくるんですよね」

●確かにそうですね! 

「お風呂の汲み置きなんかされるお家も結構ありますよね。いざという時のために。そのお風呂のお水をそのまま飲んでしまうと、当然そこの中には菌が入っているわけで、大腸菌とか見えない菌がたくさんあると思うんですけれども、お風呂の貯め置きの水だったら、これ一発でそのまま飲むことが可能です。

 そういうようなアウトドアの用品で、割とコンパクトですぐ持ち出せるようなものを僕は非常持ち出し品として、枕より少し小っちゃいサイズの、手で簡単にさげられる防水のバックなんですけれども、この中に非常時のすぐ持ち出せるものは常に入れてあります。先ほどの浄水器だったり、ヘッドライトがこういう中に入っているって感じですね。

写真協力:寒川 一
写真協力:寒川 一

 災害はどこで遭うか分からないっていうことがありますので、例えば自分の長くいる場所、自宅はもちろんのこと、会社であったり、出先でも長時間いるような場所に、ある程度のものは備えておきたいなと考えますね。

 防災袋って、皆さんそれぞれそれなりには何かご用意されていると思うんですけれど、それをちゃんと手に入れられるかどうかは、すごく重要なことですよね。いくらお家の中に素晴らしいものがあっても、すごく離れた場所で災害に遭われたっていうこともありますので、僕は今の非常持ち出し用品と、あと一時避難用品、二次避難用品っていう三段階に分けて、ものは持つようにしているんですね」

*補足:寒川さんは非常用持ち出し品のほかに、一次持ち出し品として、1週間程度、外で過ごせるようにキャンプ道具を一通り、大きなザックに入れて用意。また、二次持ち出し品は1ヶ月程度の避難を想定して、日用品などもそろえ、大きなコンテナに保管して持ち出させるように準備されているそうです。どんなものを用意するのかは、寒川さん監修の本『新時代の防災術』をご覧ください。

自分なりの持ち出し品をデザイン

※寒川さんは、本の中で自分なりの持ち出し品をデザインしようと提案されています。そろえる時のポイントはありますか?

「僕の場合はやっぱりさっきの非常持ち出し袋の中に最低限のもの、どちらかというと生きるための道具に加えて、あとパーソナル品って言うんですかね、僕個人の必要な大切な物っていうのはやっぱり入れてあります。それは具体的に何かというと、ひとつはメガネが僕、重要なんですよね。もし災害時に何らかでメガネを失ってしまうと、場合によったらちょっと命取りな場面も、見えないっていうことで、そういう可能性もあるなと思って、スペアのメガネをまずは入れています。

 それ以外にも例えば家族の写真ですね。家族の写真をなぜ入れてるかっていうと、東日本大震災の時にすごく大勢の方が、もう家財道具はなくなってもしょうがないけど、家族の写真だけは取り返したいんだっていう方が圧倒的に多かったんですよね。やっぱりそういう心情に絶対なるんだろうなと思って、まあ家族の受けもいいんでね、それ入れておくとね(笑)。
 あとすぐに使えるような現金ですとか、保険証やパスポートのコピーとか控えみたいなものも中に入れて、そういう個人を表すものとか、個人的なものを非常時の持ち出し品の中に入れていますね」

●なるほど。今の時代、感染症対策もしなきゃいけないですよね。マスクだったり除菌スプレーだったりっていうものも必要ですね。

「そうですね。もちろんマスクも入っています」

“備える”より“備わる”

※この番組では以前にも寒川さんにご出演いただいて、アウトドアの道具がいざという時に役立つ、そんなお話をしていただきましたが、キャンプ用の道具を揃えただけでは、だめなんですよね?

「実際、道具を揃えるっていうこと自体は、まずはそこから始まるとは思うんですけれども、この今の時代は、ものを備えているっていうのはある意味当たり前で、どちらかというと、その備えた道具をどういう風に活用ができるかとか、使う技術ですね。それが”備える”という言い方をするんであれば、”備わる”という言い方に変えたいなと。

 英語が分かりやすいんですよ。”Prepare (プリペア)”っていうのは、ものを用意するっていうことですよね。備わるっていうのは、僕らは”Install(インストール)”っていう言葉を使うんですけれど、自分の中にそういうものを使う能力をちゃんとインストールしないと、結局いくらいい道具とか、たくさんのものを備えていても、使いこなせないっていう可能性が出てくるということ。それぐらい今は現実的になってきたということですよね」

●この本にもキャンプは日常でできる避難訓練と表現されていますけれども、やはりキャンプをしていると知らず知らずうちに防災力は身に付いてくるものですか? 

「キャンプ自体がライフラインの少ない場所で、衣食住を組み立てるって言えばいいんですかね。言い換えればキャンプなわけですけど、ライフラインの少ない場所で衣食住を組み立てるのは、本当に災害時そのものだと思うんですよ。なので知らず知らずというよりかは、もう本当にやることなすことが全て生きるに繋がっているという、災害防災に役立つというより、もうひとつ奥側なのかもしれないですね。人が生きていくっていう上で必要なことをしっかり身に付けるっていうことかなと思っています」

●小さい頃からキャンプの経験をしておくっていうのは、すごく大事なことかもしれませんね。 

「そうですね。知識だけではなくセンスが身に付くっていうんですかね。生きた何か知恵みたいな形がやっぱり小さな子供の頃からやっていれば、頭に入っていくというよりか、体に染み込むんじゃないのかなと思いますけどね」

写真協力:寒川 一

人そのものがライフラインになれる

※寒川さんは鎌倉で「スタディトレッキング」というワークショップを開催されていますが、どんなことをやっているんですか?

「スタディトレッキングは実際学びながら歩くっていう、ちょっと造語というか、そういうタイトルなんですけれども、鎌倉の近隣の山を、実際山歩きをしながら、その途中で燃料になるようなものを見つける、それとあと湧き水も探します。結構ほかの町でも応用の利くことではあるんですね。実際、自分で自然の中から集めた燃料と水を使って自分で火を起こして、それで自分でランチを作る、そういうツアーをやっています。もう4年ぐらいやっていますかね」

●どんな道具を持っていけばいいんですか? 

「それは全部こちらでお貸し出しするんですが、先ほどの浄水器とか、あと拾った燃料でお湯が沸かせるヤカンがあるんですね。ちょっと特殊な形をしているんですけれども、ガスとか使わなくて、調達した燃料で沸かせるヤカンと、あと火が起こせるナイフ、それらをお貸しします。これ、どなたでも時間さえかければ(できます)。今までできなかったって人はいないですね」

●参加者の皆さん、どんな反応されていますか? 

「やっぱり防災っていうものに対しての意識も変わると。いわゆる何を持っておくべきかっていう意識自体が変わるとおっしゃる方が多いですね。あと百聞は一体験にしかずというか、やっぱり体験しておくことがすごく大切なことだっていう風に皆さんおっしゃいますね」

写真協力:寒川 一
写真協力:寒川 一

●防災という観点から、キャンプの初心者の方にアドバイスするとしたら何かございますか? 

「そうですね。せっかくキャンプを始めたということであれば、きょうお話ししたような、テントに泊まって美味しいご飯を食べてっていうのも、もちろんキャンプの楽しみ方だと思うんですけれども、自分の力で例えば、燃料を探してみるとか、浄水をしてみる、火起こしができるみたいな、これ逆に言えば、お家の中だとなかなか体験できないことなんですよね。
 それを是非キャンプで、自分の力で生きる何か方法をしっかりと身に付けていただきたいなと思いますし、その分やっぱり自然を楽しんでいただきたいというか、自然から色んなものが得られるんだっていうことを知っていただきたいですね」

●改めてこの本『新時代の防災術』の読者の方に、いちばん伝えたいことは何ですか? 

「きょう色々お話ししましたけれども、実際アウトドアを楽しむ、道具を使いこなすっていう話もしましたが、何より僕が今回の本でいちばんお伝えしたかったのは、技術と道具をさらに人の心がそれをうまく使いこなすんだよというマインドの部分ですね。

 今、アウトドア人口って非常に増えていますから、そのアウトドアをやる人たちがそういうそのマインド、マインドっていうのはもっと分かりやすくいうと、災害時には人助けをしようっていうことですね。自分が持っている道具とか技術をちゃんと自分自身にもちろん使って、自分自身プラス人に使えるっていう、自助と共助っていう言葉になるんですかね。それが個人ができるっていうことです、アウトドアであれば。

 それを多くの人が実際に実行できるようになったら、人間がライフラインになれるんじゃないのかなっていうことですね。ライフラインは外側からあるものですけれども、アウトドアをうまく活用すれば、人そのものがライフラインになれると僕は信じています。是非そういう方向に皆さん来ていただきたいなと思いますね」


INFORMATION

キャンプ×防災のプロが教える 新時代の防災術
〜アウトドアのスキルと道具で家族と仲間を守る!


『キャンプ×防災のプロが教える 新時代の防災術〜アウトドアのスキルと道具で家族と仲間を守る!』

 寒川さんが監修されたこの本にはきょうご紹介できなかったお話で、例えば、避難を強いられた時に、温かいものを食べるとモチベーションにつながるとか、極力、水を使わずにジッパー付きの保存用ビニール袋でご飯を炊く方法など、緊急時に役立つアイデアやヒントが満載です。寒川さんが使っている非常用の持ち出し品なども写真入りで解説。どんなものを備えればいいのか、明確に見えてくると思います。もしものときの心強い味方になる一冊! ぜひ参考になさってください。学研プラスから絶賛発売中です。

 また『焚き火の作法』という新刊が9月末に同じく学研プラスから発売予定です。

焚き火の作法

 詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎学研プラスHP:https://hon.gakken.jp/book/2380158500

 寒川さんのイベントや最新情報についてはFacebookをチェックしてください。

◎寒川 一さんfacebook:https://www.facebook.com/hajime.sangawa

オンエア・ソング 8月29日(日)

2021/8/29 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. SURVIVAL / MARC JORDAN

M2. CARS ARE CARS / PAUL SIMON

M3. DRINK THE WATER / JACK JOHNSON

M4. 3 IS FAMILY / DANA DAWSON

M5. アポトーシス / Official髭男dism

M6. FOR ONCE IN MY LIFE / CRAIG DAVID

M7. ALL BY MYSELF / JAMIE O’NEAL

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

小さな旅、東京の森カフェめぐり〜隠れた名店がいっぱい

2021/8/22 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、フリーエディターそしてライターの「棚沢永子(たなざわ・えいこ)」さんです。

 東京都府中市在住の棚沢さんは、詩の雑誌の編集業を経て、現在はフリーランスのエディター、そしてライター、さらに福岡にある出版社「書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)」の東京スタッフとしても活動されています。

 そんな棚沢さんが2017年に出された本『東京の森のカフェ』が好評で、新たなお店を追加するなどリニューアルを重ね、ロングセラーとなっています。

 きょうは棚沢さんと、東京の森カフェめぐり。知る人ぞ知る素敵なカフェをご紹介します。

☆写真協力:棚沢永子

写真協力:棚沢永子

意外と緑が多い東京

●ご自身でどんな点がロングセラーにつながったと思いますか?

「こんなにたくさんの方に手に取っていただけるなんて思ってもみなかったので、自分がいちばんビックリしております。東京の人がいかに緑を求めているかっていうのを逆にこの本で知ったという感じでした。
 表紙を緑でいっぱいにしようよとか、写真も大きめに入れたいねとか、章立てなんかも工夫したりとか、色々工夫はしましたけど、本はひとりで作るものではないので、編集者さんとかデザイナーの方、あと書店さん、掲載店の方とか読者の方もね、みんなで一緒に作って一緒に応援していただいた、それがやっぱりロングセラーにつながったんだなという風には思っています」

『東京の森のカフェ』

●東京の郊外、例えば奥多摩あたりですと、森に囲まれたカフェがあるっていうのはイメージできたんですけれども、この本を読んでいたら、都心にも森を感じるカフェっていうのがあるんですね! 

「そうですね。東京って意外と緑が多くて、高層ビルとかごちゃっとした街並みのイメージが強いですけど、公園なんかもたくさん整備されていると思うんですよね。
 東京に森とか自然を作ろうっていう風に意識的にそういうことをしてらっしゃる方たちも多分たくさんいて、例えば大手町の駅を出たところに突然のように森が出現したりとかね。東京駅の隣の”KITTE”っていうビルも屋上庭園みたいなものを作ったりとか、あるいは目黒の高速のジャンクションの上に天空庭園なんて作ったりなんかして、森が出来上がったりとか、そういう風に意識的に作っている人たちもいると思うんですね。デパートの屋上なんかでも割と最近では木をたくさん植えたりとか、緑をたくさん入れているような動きもあると思います」

●南麻布とか表参道とかにもこんなに緑豊かなお店があったんだ! っていう風に驚きました。この本に掲載するかどうかの基準っていうのはどうやって決めているんですか? 

「基準っていうか自分にとって居心地がいい場所、気持ちのいいところ、面白いなと思えたところを入れるようにしました。ただ綺麗とか、お洒落とかだけじゃなくて、自分は面白好きなのかなって、やってみて思いましたけど(笑)、評判がよくても行ってみて、ピンと来なければ入れなかったかな。なんとなく緊張するなとか、静かにしてなくちゃいけないとか、椅子が硬くて腰が痛いとかね、ちょっと高いなとか、そういうところは外しました」

それぞれのストーリー

※本に掲載されているカフェは、どのお店にもストーリーを感じるんですが、その辺は意識して取材されたんですか?

「そうですね。結局取材を申し込んでお話を聞いているうちに、やっぱり皆さんすごく物語を持っているじゃないですか。それは聞いていくうちに分かってきたことなんですけどね、それを書きたくなった。逆にただのカフェ案内じゃなくて、そういうものを書きたくなって、ちょっと本の方針が見えたかなっていう、自分の中でもちょっとね、だんだん変わっていったというか、そんな感じで作ることになりました」

棚沢永子さん

●単にカフェの紹介をされているだけではなく、温かみがすごく感じられました! 

「店主の方、皆さん、すごくいい方が多くて、本当に何でも喋ってくださってね」

●お話を聞く中で、特に印象に残っているストーリーってございますか? 

「はい、お客様で転勤になっちゃって、20年ぐらい(店に行くのに)間があいちゃった人がいるんですって。それでその人が昔、マンデリンをいつも頼んでいたので、扉が開いて顔を見た途端にパッてそれを思い出して、“きょうもマンデリンでよろしいですか?”って。本当にすごく久しぶりなのにそれが出来るってすごいですよね。やっぱり流石、お店をやっている方ってすごいなって、それを聞いた時に思ったんですけど、そうしたらそのお客様がね、”覚えていてくれたんですか!”って言って、そういうエピソードなんかもありました」

●そうですか・・・中には歴史を感じるような場所もありますよね? 

「そうですね。すごく素敵な築350年の庄屋屋敷を移築してきたりとか、東京の西のほうってお蚕さんの産業が盛んでしたから、そのお蚕さんの製糸工場の女工さんたちの宿泊の施設を、そのまま和カフェに持ってきたところもあったりしました。
 町田に白洲次郎記念館ってあるんですけど、そこにカフェが併設されていまして、白洲次郎さんっていうのは戦後処理で憲法作りに関わったりとか、当時日本でいちばんかっこいい男って言われた人らしいんですけど、そういうところを取材したりもしました」

旧白洲邸 レストラン&カフェ「武相荘」
旧白洲邸 レストラン&カフェ「武相荘」

本当は内緒よ

※森を感じるカフェは郊外になればなるほど、行くのに不便だったりすると思うんですが、それでもお客さんで賑わうのはどうしてなんでしょうね?

「不思議ですよね。私も不思議だと思いました。ただ、もちろんそれぞれ工夫もしてらっしゃると思うし、特色を出すような努力もされていると思うんですけれど、今SNSの時代ですから、発信力とか、そういうことも駆使して皆さんやってらっしゃるかなっていうのは思います。
 でもやっぱり、カフェのポテンシャルっていうんですかね、魅力がないと続いていかないだろうなって。本当に行けば行くほど、リピーターの人が多いっていうのは感じましたね。ずっと何度も、毎回来る度に寄ってくれるみたいな人が多いみたいです」

●特に棚沢さんがおすすめのカフェをあげるとしたらどちらになりますか? 

「どこも大好きなのでね、なかなかちょっと絞りきれない(笑)。日野に“クレア ホーム&ガーデン”っていうカフェがありまして、ちょっと広いお庭で、建物をご主人が自分で、チューダー調のイギリスのお屋敷みたいな建物を建てちゃったりとか、エキゾチックな東洋の雑貨がいっぱい置いてあったりとか、そういう雑貨なんかもすごいんですけど、ママさんのお人柄が地球規模の肝っ玉母さんって言うんですかね(笑)。

 本当に考え方がとても素敵で、盲導犬リタイアの子を引き取って、その看板犬にしたりとか、あるいはWWOOF(ウーフ)と言って、外国から日本に旅行に来られる方に、無償で泊まらせてあげて、代わりにお店の手伝いとかね、パンを焼いたりとか農作業を一緒にしたり、そういうことをやってもらったりとかね。本当に小さい虫から動物も外国の人もみんな一緒に地球号に乗っている、みんな一緒だよって、そういう考え方はすごく素敵なのね。そういうところもありましたね。

「Clare Home & Garden」
「Clare Home & Garden」

 あと“コンブリオ”っていう青梅の奥のほうにある喫茶店なんですけど、本当にお客さんファーストのこだわりの店で、最初マスコミNGだったんですね。すごく素敵で、CMとかドラマ(の撮影)とかでオファーがいっぱい来るんですけど、ひとつも今まで受けてこなかった。
 私が申し込んだ時も最初ダメって、受けませんって言われたんですけれども、話をしているうちに受けてくださったんです。本当にお客さんのことを大事にしていて、夢のような調度品があって、なんか日常と切り離されたような場所ですね。本当は内緒です(笑)」

コンブリオ
コンブリオ

看板メニューは“おかかピラフ”! 

※棚沢さんはご自身でもカフェをされていると聞いたんですが、そうなんですか?

「これも本当にたまたまなんですけどね、叔母のカフェ(*)をその(本の)中にひとつに入れたんですよ。多摩川が近くてね、そのカフェ自体は街中にあるんですけど、ちょっと歩くとすごく気持ちのいい自然がたくさんあるようなカフェなんですよ。

 そこを去年、ちょっと体の具合があまりよくないので、そろそろリタイヤしようかっていう話が出ました。それで子供がいないので、私たちに相談が来まして、廃業の手伝いをしているうちに、あまりにやっぱり雰囲気がいいし、常連さんがたくさん付いているし、もったいないねって話になって、じゃあ思い切ってやっちゃおうかって言って、この4月の末から引き継いで、カフェの仕事もちょっとやるようになりました(笑)」

●実際に棚沢さんがコーヒーを入れたりとかもされるんですか? 

「やりますよ。どっちかっていうと夫のほうがコーヒー担当で、私が料理担当なんですけど、お客さんがみえると、この本を持って来てくださったりなんかして、とても嬉しいですね。自分の本を見て来てくださるってね」

●看板メニューは何ですか? 

「“おかかピラフ”という、醤油ベースのピラフに鰹節を乗せるんです。そうすると鰹節がふよふよ〜っと幸せな感じで湯気で踊るんです。それが割と評判がいいかな(笑)。それは元店主の直伝なんですけどね。評判がよかったので教えてもらってやるようになりました」

●ちゃんと引き継がれているわけですね。

「そうですね。本当に常連さんが多い店なので、その常連さんたちにも居心地がいいように、また、新しい人たちも楽しんでいただけるように、音楽と本と料理とコーヒーという、そういうお店を今頑張って作ってやっております」

ケトルドラム店内

(*)棚沢さんが引き継いだコーヒーハウス「ケトルドラム」は、京王線の聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩3分ほどのところにありますよ。営業日など含め、詳しくはケトルドラムのオフィシャルサイトをご覧ください。

◎ケトルドラム:https://kettledrum2021.wixsite.com/cafe

小さな旅の本

※今はテレワークということで、ご自宅で仕事をされているかたも多いと思います。リフレッシュのために散歩をされているかたもいらっしゃると思いますが、ご自宅の近くで、森を感じるカフェを探してみるのもいいと思うんです。棚沢さん、どうでしょうね?

「意外と近くにもあると思うし、カフェじゃなくても、なんか雑貨屋さんとかでもいいし、ちょっと扉を開けてみる。初めてのところって扉を開けるのに勇気がいるじゃないですか。でもちょっと気になればね、いい機会だからちょっと開けてみるといいんじゃないですかね」

●改めて、この『東京の森のカフェ』を読まれた方にどんなことを感じてほしいですか? 

「この本はどちらかというと、カフェ案内というより、小さな旅の本だという風に私自身は思っています。東京はカフェにしても、何にしても、とてもバラエティに富んで面白い街ですね。
 なかなか今、遠出するような旅はできないですけれど、だからこそ身近な自然にちょっと目を凝らしながらね、いろんな場所を訪ねて、色んな人とちょっと話をしたりしてね、自分の好きな場所を見つけていただければいいなと。この本が手がかりにちょっとでもなれば嬉しいなと思っています 」

むさしのの都立公園「野川公園」
むさしのの都立公園「野川公園」

INFORMATION

東京の森のカフェ


『東京の森のカフェ』

 緑がいっぱいの表紙を見ているだけで癒されますよ。掲載されているカフェは36軒、それぞれにストーリーを感じるカフェばかりです。写真も素敵で、実際にお店の雰囲気や、コーヒーなどの名物メニューを確かめたくなります。棚沢さんが引き継いだコーヒーハウス「ケトルドラム」も掲載。この本を持って、カフェめぐりをするのもいいかも知れませんね。書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)から絶賛発売中です。詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎書肆侃侃房HP:http://www.kankanbou.com/books/cafe/0268

オンエア・ソング 8月22日(日)

2021/8/22 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. FEEL THAT YOU’RE FEELIN’ / MAZE FEAT. FRANKIE BEVERLY

M2. TOKYO / NENA

M3. STILL A FRIEND OF MINE  / INCOGNITO

M4. EXTRAORDINARY DAY / DELTA GOODREM

M5. Love Song / Uru

M6. BOOK OF DAYS / ENYA

M7. HAPPY EVER AFTER / JULIA FORDHAM

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

「そろそろキャンプの達人って呼ばれたいんですけど」by じゅんいちダビッドソン

2021/8/15 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、お笑いタレントの「じゅんいちダビッドソン」さんです。

 2015年に、サッカー選手「本田圭佑」さんのネタで「R-1ぐらんぷり」優勝! その後もテレビやラジオ、イベントなど、様々な分野で活躍されています。最近では、どハマりしている趣味のキャンプが高じて、YouTubeにキャンプ動画を配信。なかなかうまくならず、失敗ばかりすることから“へたキャン”と呼ばれるようになり、これが大好評! チャンネルの登録者は15万人を超えているんです。また、先頃『こまかいことを気にしない へたキャン入門』という本を出されました。

 きょうはそんな「じゅんいちダビッドソン」さんに、じゅんいちさん流のキャンプの楽しみ方や、芸人仲間と行くちょっと変なキャンプのお話などうかがいます。

☆写真協力:主婦の友社

写真協力:主婦の友社

へたでも楽しいキャンプ

●今週のゲストは、今やキャンプ芸人として大人気のじゅんいちダビッドソンさんです。 きょうはよろしくお願いいたします。  

「お願いします。この間も喋っていたんですけど、キャンプ芸人って言われるけど、キャンプ芸人ってなんやねん!?(笑)」

●(笑)でも、本当に空前のキャンプ・ブームですよね? 

「そうですね。割とこの2年ぐらい前から、コロナもあってなかなか居酒屋さんとか行けないから、じゃあキャンプ場なら大丈夫だろうということで、結構始めた方が多いんじゃないですかね」

●芸能界でもやっぱりキャンプ好きな方は多いんじゃないですか? 

「多いし、乗っかって増えていると言うか・・・僕もちょっとブームになる直前ぐらいから始めたんですけど、ヒロシさんとか、バイキングの西村君とかに誘われて始めて。焚火会というソロキャンプ好き芸人軍団でやっているんですけど、そうじゃない人も結構ちょこちょこ最近増えていますね」

じゅんいちダビッドソンさん

●多いですよね。そんな中、じゅんいちダビッドソンさんは先頃、新しい本『こまかいことを気にしない へたキャン入門』という本を出されましたけれども、私も読ませていただきました。

「どうでした? 読んでみて」

●失敗談も多く載っていて、”あ、完璧じゃなくてもいいんだ!”っていう風に思えて、これなら私もできそうかも、やってみたいっていう風に思えました。すごく楽しく読めました! 

「本を出す時なんとなく、芸人なんで、ルールとして嘘をつかんとこうと思って。だからキャンプのルーティーン編みたいなページがあるんですけど、一応嘘つきたくないから、本やからルーティンを載せているけど、“普段は毎回違いますよ”とか、ちゃんとコメントで入れてるんですよ」

●ありましたね、注釈が(笑)

「やっぱりよく言われるのが、へたキャンとかも誰かが言い出したことなんですけど・・・なんならうちの嫁に言われだしたんかな?」

●へたキャンは上手、下手の下手ですよね? 

「そう、なんかね、失敗多いんですよ。うっかりなんか忘れたりとか、うっかりテントが風で飛んでいったりとか、そういうのが多くて、YouTubeでそういうのをディレクターが面白がって流していたら、それをテレビ番組が取り上げて、嫁がそれを見て、“あなた、すごいね”と、“へたキャンっていう新しいジャンルを築いたね”みたいなこと言われて。

 それを僕がTwitterでこんなん言われたって書いたら、周りが“へたキャン、へたキャン”言い出して、なんか僕が出すコンテンツ、全部へたが付くんですよね。これも『へたキャン入門』でしょ? 1年前に出た本も『へたキャンご飯』でしょ? レギュラー番組も『下手なキャンプでごめんなさい』って言って、こっち望んでないんですけど、周りが勝手にへたありきでコンテンツを作るんで(笑)」

●失敗するキャンプだからこそ楽しいっていうことですか? 

「いやいや! 失敗しないほうが楽しいですよ! ただ、失敗しても、例えばキャンプ行きましたと、こんな料理、カレーライス作ってみたいと、作りました。ちょっとまずかった、でもそれもいい思い出になりますよって、それもキャンプ。
 家でまずかったら、ただまずいだけやけど、キャンプで焚き火して、みんなで作ったカレーがまずかったら、なんやねん! っていう思い出になるし、もちろん美味しいほうがいいんですけど、例え失敗しても怪我とかするような失敗じゃなければ、楽しめるっていう・・・」

●それも含めての思い出になりますよね。

「と、僕は思いますけどね」

●そもそもキャンプに目覚めたっていうのは、昔からってわけではないってことですか? 

「でも小っちゃい頃、好きで、たまに父親に連れて行ってもらったりとかしていたんですよ。大人になってからは、どっちかというと魚釣りが趣味で、休みの日は釣りばっかり行ってたんですけど、ある時さっきも言いましたけど、ヒロシさんとバイキングの西村君に誘われて、キャンプに1回行って一瞬でハマって、そこからどっぷりですね」

●すぐに自分でグッズ買ってみようとか!?

「いや、もうなんなら、その日のキャンプ中にAmazonでテントを注文しました」

●ええ!?

「そう、家に帰ったらもう届いていて、そのテントを持ってもう1回キャンプに行きました(笑)」

写真協力:主婦の友社

僕らは“ソログル”キャンプ

※ところで、キャンプのノウハウは、誰かに教わったんですか?

「ノウハウは、僕もそうですけど、一緒に行く仲間に特に教えもしないし、教わりもしないし、なんならネットで調べたりする人が多いんですかね。僕の場合はもうやってみて、あかんかったらまた次、違うやり方してみたいな。で、なんとなく学んでくるというか、別に正しいやり方を知らなくても、僕、何百回もキャンプをやっていますけど、未だになんかロープの、ロープワークって言うんですけど、結び方とか1個も覚え切らなくて、ずっと我流ですよ。それでもなんとかやれているんで、別にそれでもいいかなと思っていますよ」

●初めてヒロシさんたちに連れていってもらって、何がそんなに楽しくてハマったんですか? 

「もともとそのふたりとも仲良かったので、その仲の良い友人と、真っ暗闇の中で焚き火をぼーっと見ながら、特に大はしゃぎするわけでもなく、淡々とお酒を飲むっていう、この贅沢な雰囲気と空間というか、こんないい時間があるんやっていう風なハマり方ですよね」

●YouTubeの「ちゃんねるダビッドソン」にキャンプの動画もたくさんアップされていますけれども、芸人仲間の皆さんと行く時も、それぞれソロキャンプしているっていう感じなんですね。

「そうですね。だから本当にそのやり方も良くて、僕らの仕事って時間もバラバラじゃないですか。だから入る時間も帰らないといけない時間もバラバラなので、それぞれがソロキャンプっていうこのスタイルが良かったんですよね」

●好きな時に好きなものを食べるとか、本当に食事もバラバラですし・・・。

「バラバラですね。たまにちょっとお裾分けはしますけど、眠くなったら先輩後輩、関係なく寝ますし。だからそれこそ朝起きたら誰もいない時とかありますから」

●本当ですか?(笑)

「あります、あります! 朝起きたら誰もいない時もあるし、4〜5人残ってんのに自分ひとりだけ、朝4時に起きて撤収して帰らないといけない時とかもありましたね」

●基本的にはソロ・キャンプをされているってことですね? 

「そうですね。だからその焚火会のメンバーで一緒に行って、誰かと何かを共同でやったことは1回もないですかね。なんとなくそれぞれやっていて、なんとなく誰かの焚き火の周りになんとなく集まってきて、なんとなく帰っていくみたいな、そういう集団というか、やり方というか・・・」

●みんなで同じテントにとかではなくて、やっぱりソロっていうことに意味があるということですか?

「そもそも、みんなまあまあおっさんなんで、おっさん同士みんなで同じテント(に寝るのは)イヤでしょ? だからソロで良かったなってすごく思いますね」

●ソロ・キャンプの良さって何なんですかね? やっぱり自分の空間があるとか!? 

「そうですね。やっぱり自分のペースでやっているけど、でもその空間は友人と共有しているっていう、僕ら”ソログル”とかいう言葉で言っているんですよ。ソロ・グループ・キャンプみたいな。ひとりのペース、自分のペースは乱されないけれども、場所を共有している楽しさもあるみたいな。だからいいとこ取りっていうか、もちろんその分それぞれお金はかかるでしょうけど」

●程よい距離感で楽しめるんですね。

<焚火会、TAKIVILLAGE>

 お話に出てきた、ソロキャンプ好きな芸人さんのグループ「焚火会」、メンバーはヒロシさん、バイキングの西村さん、うしろシティの阿諏訪さん、とろサーモンの村田さん、ベアーズの島田キャンプさん、ウエストランドの河本さん、スパローズの大和さん、インスタントジョンソンのスギ。さんで、現在は9人だそうです。

 キャンプによく行くエリアは、都内から車で行ける場所ということで山梨、神奈川、群馬、千葉あたりが多いそうですが、千葉でおすすめのキャンプ場として、いすみ市のTAKIVILLAGE(タキビレッジ)をあげてくれました。ネットで調べたら、高台の開けた場所にあって周りは雑木林という絶好のロケーション、フリーサイトでかなり良さげな感じでしたよ。

◎TAKIVILLAGE HP:https://takivillage-camp.site/

山林を賃貸!? プライベート・キャンプ場

●奥様と一緒にキャンプに行かれた時も、ハンモックを張るのにかなり手間取っていた様子をYouTubeで見たんですけど(笑)

「僕、ハンモック苦手でね(笑)。だから諦めたんですけど、今までハンモックを張って、朝起きたら大体、下の地面に付いてることが多くて」

●下調べとかもせずに臨まれていた様子がYouTubeに載っていて、奥様からもかなりつっこまれていましたけど。

「うちの嫁が、僕のいじり方がすごい上手いみたいで、YouTubeの“ちゃんねるダビッドソン”にあげているんですよ。なんか一定数、うちの嫁ファンがいて、顔は出させていなくて、声だけなんですけど、最近“嫁ットソン”出ないんですね、とかコメントが来たりするんですよ。結構つっこまれましたね、あの時は(笑)」

●いや面白かったです! やっぱり我流っていうのがモットーなんですか? 

「モットーってわけではないんですけど、めんどくさいから調べていないだけというか、あと、できると思っているんで。テントとかも初めて買ったテントを1回も開けずに現地に持っていって、それこそ軍が使っているテントを海外から個人輸入して。現地で開けたいんですよ、下調べとかせずに」

●なるほど! 

「現地で開けたら、やっぱり海外からの中古品なんでね、ポールが入っていなくて、布しか入っていなくてっていうこともありましたね。だから現地でポールの代わりになりそうな枝を拾って(テントを)建てたんですけど。下調べして完璧にやっていくよりも、テンションでいきたいので、自ずとミスは増えてしまうのかなっていう自己分析はありますけど」

●それこそがもうへたキャンなんですね!(笑)

「まあそろそろ達人って呼ばれたいですけどね」

●最近キャンプするための山林を買われたそうですね?

「買ったんじゃなくて賃貸なんですよ」

●賃貸!? そういう手もあるんですか?  どういう仕組みなんですか?

「そこの持ち主が、別に売るつもりも貸すつもりもなく大事にしていた山林で、たまたま僕が探しているって話を聞いて、僕のことを見ていてくれて、じゅんいちさんやったら賃貸とかでいいですよってやってくれたんで、変な話、特別扱いしてもらったんですけど。それで面白いですよ、本当に契約書を交わしてね。間に入ってもらって、アパートとかと一緒、2年契約の自動更新です(笑)」

●へ〜! そうなんですね! 山を! 

「礼金とかないですけど、敷金もゼロでしたよ、そういえばね」

●言える範囲でいいんですけど、どの辺りに? 

「県で言うと長野県です。都内から僕が行ける範囲で借りたかったんで、長野県ですね」

●YouTube(の動画)でもかなり広いなっていう印象がありました。

「広いですね結構。割となだらかで、傾斜地がそんなにないような林間ですね。だから山というよりは森というイメージですね」

●そこをマイ・キャンプ場として使っていくんですね?

「そう。おそらくこの放送が始まる頃にはもう終わっているんですけど、プライベート・キャンプ場としてオンラインサロン(※)のメンバーは使うことができるので、そのためにトイレを設置して、許可を取って林道に今、砂利を敷いてるんです。
 で、砂利敷きが終わってトイレが使えるようになったらサロンのメンバーは、めちゃめちゃ安い料金で、500円ぐらいとかで使えるみたいなキャンプ場としてオープンするんですけど、今まだその作業が完璧に終わっていないんで、まだオープンはしていないっていう状態です」

●どんなキャンプ・サイトにしようって考えるのも楽しそうですね! 

「そうですね。でもそこは最初、いろいろ、例えば井戸を掘って、小屋を作ってとか考えていたんですけど、森自体がすごく綺麗なんで、ここはあんまり人工的なことはせんとこって話になってね。もうトイレだけしか付けんでいいんじゃないか。あとは綺麗にしてくれているから、そのままの状態をなるべく残すようにしようみたいなことで、そこに関しては落ち着きました。実は明日、関西に土地を見に行くんですよね」

●関西ですか? 

「関西にまた第2弾でキャンプ場を作ろうと」

●え〜!? すごいですね! 

「関西にも結構メンバーがいるんで、長野県に来れないじゃないですか。だから各地にちょっと作りたいなと思って、何個か(キャンプ場を)」

●すごいじゃないですか!

「そういうのを今やっていますね」

(※じゅんいちさんのプライベートキャンプ場は、会員制オンラインサロン「じゅんいちダビッドソンのキャンプ村」のメンバーになれば、利用できるとのことです。メンバーの募集は不定期なんですが、次回は9月3日(金)の午後6時から申し込み開始となっています。会員になりたい方はじゅんいちさんのオフィシャルサイトをご覧ください。

◎じゅんいちダビッドソンのキャンプ村:http://jd-campmura.com/lp/onlinesalon-t/

じゅんいちダビッドソンさん

嫁「なんでドラム缶!?」

※じゅんいちダビッドソンさんはキャンプ用の道具もいろいろ試されているようですが、アウトドアでお風呂に入ろうと、ドラム缶まで買っちゃったんですよね?

「そうですね。キャンプ場でも備え付けで置いているところはもちろんあるんですけど、どこでもできないじゃないですか。もちろん直火って言って地面の上で直接、焚き火を許してくれているところじゃないとできないんで、今ほとんど(直火が許されているキャンプ場は)ないんですけど、それでもやっぱり自由に持ち運びができるので、最初買ってやった時はやっぱり面白かったですね」

●どんな感覚なんですか? 

「最初は”お、ほんまに入れるんや!”って感覚でしたね。焚くとね(お湯が)沸くのに結構時間はかかるんですよ、1時間ぐらいとか、下から火を焚いて。1回、番組ですけど、そのドラム缶風呂に満天の星空の下で入ったことがあって、それはもうめちゃめちゃ最高でしたね」

●いいですね〜。奥様の反応とかっていかがだったんですか? 

「嫁はそのドラム缶風呂よりも、ドラム缶を買った時に、僕、嫁に言ってなかったんですよ。で、いわゆるインターネットで買ったんで、急にあれ(ドラム缶)が家に届いて、その時、嫁が受け取ったんですけど、何か分かってなくて、”なんかでかいの届いてんけど、何!?”って連絡がきて、”あ、ごめん言うの忘れてた! ドラム缶!” ”なんでドラム缶!?”みたいな、そっちのびっくりをしていました」

●ドラム缶、売っているんですねっていう感じですよ。すごいですよね(笑)

「ホームセンターに売っているんですけどね。今は家に届けてもらえるところで買えるんでね」

●キャンプするのにいちばん好きな季節ってありますか? 

「4月から5月か、11月から冬にかけて、夏以外かな」

●あ、そうなんですね。冬でも? 

「冬は冬で雪の中とかでやったことあるんですけど、なんかそれはそれで素敵なんですよね。あんまり味わえない空気というか、雪の中で焚き火して、クソ寒い中、焚き火して、暖かいキムチ鍋とか作って、熱燗を入れて飲んで、みたいなね」

●いいですね〜。それぞれの季節での良さがあるんですね。

「あります、あります。5月くらいが(キャンプを)やる人多いじゃないですか、やっぱり。あれはすごく気持ちいい季節だと思いますけどね」

●今まででいちばん印象に残っているキャンプってありますか? 

「やっぱりみんなで、さっきの焚火会のメンバー6人ぐらいで行った、無人島でキャンプやったんですよ。いろいろ食料とか水とか買い込んで、無人島に3泊4日いたんですよ。あの時は何をするわけでもないし、何もしてないし、やることもなくなるのに、ずっとめっちゃ楽しかったですね。気の合う仲間と一緒やったっていうのはもちろんあるんですけど、あれがやっぱり今のところベスト・キャンプですかね、印象に残っているキャンプとして」

●その無人島でもソロ・キャンプの形態でやっていたんですか? 

「そうです。無人島の海岸にテントが6つ並ぶ、等間隔で」

●なんかシュールですね(笑)

「シュールですね、今考えると(笑)。思い出に残っているキャンプはそれですかね」

部屋でドラム缶風呂、嫁激怒!?

※今はなかなか、キャンプにも行けない状況が続いていますが、日頃からキャンプ気分を味わうヒントがあれば、教えてください。

「LEDランタンとかね、部屋の中で暗くしてね。僕がよくやっていたのが家の中で小っちゃいテントを建てて、テレビのモニターに自分で撮ってきた焚き火の映像を映してね。
 ランタンも僕はオイル・ランタンをつけてやっていたけど、危ないから、LEDランタンかなんか掛けて、ちょっと酒でも飲んだら、つまみもよくあるスキレットとかで作ったりすればね、ちょっとは味わえるけど、ただ正直2〜3回で飽きますけどね。
 僕も実際やりましたから、2〜3回で飽きたから、最終的にだんだんハードルが自分の中で上がっていくじゃないですか。2〜3回でもう家キャンプに飽きて、最終的に家の中でドラム缶風呂やりましたから」

●それ、すごいですよね(笑)

「あの時もあがる時に結構お湯が溢れて、また嫁に怒られてね。大変だったけれどもYouTubeに(動画を)あげたんですよ。やっぱりテレビの人って結構見ているじゃないですか。あれうちの番組でやってくれません? っていうのが2回ぐらいあって、結局、俺トータル4回ぐらい家でドラム缶風呂やったんですよ」

●もう奥様が大変! 

「そうそう(笑)」

●この新しい本『こまかいことを気にしない へたキャン入門』を、どんな方に読んでもらいたいっていうのはありますか? 

「これ実は、入門する人に一個注意があって、この本をすべて鵜呑みにしてやったらミスるから、ここは取り入れる、ここは取り入れない、自分の判断力の問題があるんで、この本は実はキャンプの入門ではなくて、判断力を養うための本やと思っているんですね。

 判断力を養いたい人に読んでもらいたいのと、逆にキャンプのベテランの人に読んでもらいたい! そしたらバラエティ本と捉えて読むんじゃないかなと、キャンプのベテランですごく詳しい人が読んだら、逆に面白い本だと思います。だからその2種類ですね。判断力を養いたい人とベテランのキャンパーさんに読んでいただきたいですね」

●これからキャンプを始めようっていう方はどうしたらいいですか?(笑)

「ヒロシさんの本を読めばいい!(笑)」

●ヒロシさんの本で勉強!?(笑)。では、改めてじゅんいちダビッドソンさんにとってキャンプとは?

「キャンプとは・・・でもまあ遊びですよね。キャンプとは人生ですとまではいかないですよね。人生の色んな要素のうちのひとつで、やっぱり遊びなんですよね。僕のいちばん好きな遊びですかね」


INFORMATION

こまかいことを気にしない へたキャン入門


『こまかいことを気にしない へたキャン入門』

 本の前書きに「この本は入門という名のバラエティーブックです」と書かれている通り、見ているだけで楽しい本です。でも、ちゃんとどんな道具が必要なのかの準備編から、キャンプ場についたら何をしなくちゃいけないかなど、基本的なことはおさえてありますよ。愛用している道具や使い方の説明が、たくさん写真とともに解説してあるのでわかりやすく、失敗談も参考になりますよ。おすすめです! 主婦の友社から絶賛発売中!

◎主婦の友社HP:http://shufunotomo.hondana.jp/book/b581522.html

 YouTubeの「ちゃんねるダビッドソン」もぜひ見てください。普段、どんなキャンプをやっているのか、よくわかりますよ。焚火会のメンバーも出てきたりと見所満載! 中でもおすすめは奥様が登場する回、絶妙なツッコミに笑いますよ。

◎じゅんいちダビッドソンさんHP:https://junichi-davidson.co.jp/

オンエア・ソング 8月15日(日)

2021/8/15 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. STARS / SIMPLY RED

M2. GOOD TIMES / THE JACKSONS

M3. LIGHT MY FIRE / ERMA FRANKLIN

M4. PRIVATE EYES / THE BIRD AND THE BEE

M5. Bye / ビッケブランカ

M6. Loveland, Island / 山下達郎

M7. IN MY LIFE / THE BEATLES

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

東京は山岳都市!?〜「超低山」を楽しむ

2021/8/8 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、イラストレーターの「中村みつを」さんです。

 中村さんは1953年、東京生まれ。16歳から山登りを始め、その後、国内のみならず、ヒマラヤやヨーロッパアルプス、南米パタゴニアなどにも遠征。現在はフリーのイラストレーターとして自然や旅のイラストやエッセイを多く手掛けていらっしゃいます。また、2年前には「山の日アンバサダー」に就任されました。

 そんな中村さんの新刊が『新装版 東京まちなか超低山〜50メートル以下、都会の名山100を登る』。3年前に出された本のリニューアル版になります。

 「超低山」と呼び始めたのは中村さんで、その定義は本の副題にあるように、登山口から山頂までの高さが50メートル以下となっています。実は東京には、それも、23区内にはたくさん山があるんです。きょうは都内にある、とっても低い山「超低山」の話題をお届けします。

☆写真協力:中村みつを

写真協力:中村みつを

自分の懐に収まる山

※では早速、中村さんにお話をうかがっていきましょう。都内の超低山に注目するようになったのは、なにかきっかけがあったんですか?

「都内で打ち合わせの帰り道に、まっすぐ帰るのも面白くないなーと思って、散歩がてら新橋の辺りを歩いていたんですね。そうしたら、こんもりとしたものが目の前に現れたんです。気が付いてみたら、そこは前から知っていたんですけど、その時に何故か山に見えたんですよ。それが虎ノ門にある標高26メートルの愛宕山(あたごやま)という、東京タワーの近くにあるんですね。多くの人が結構行かれるところなので、ご存知だと思うんですけど、出世の石段という急な階段があるんです。それが有名ですけど、そこを見た時に今までも来ていたはずなのになんで山に思えたのかな? って自分でちょっと向き合ってみたんですよね。

 そうして、ちょっとぐるっと周りを歩いてみたんです。超低山のいいところは小さいんですよね。超低山って言うくらいで、あっという間に周れちゃうんです。これがなんとも小気味よくって、自分の懐にスッと収まる、山ってなかなかそんなこと、本来はできないですよね。富士山をくるっと周ろうなんてことももちろんできないし、それがあっという間にできちゃうミニチュアの面白さみたいな、そういう感覚がありました。

 それで歩いてたらトンネルが現れたんですよね。車がそこを通っているんです。都心の真ん中に山があって、トンネルがあってっていうのはちょっと想像つきにくいっていうか、改めて見た時の発見と驚きみたいなのをその時に感じたんですよね。だから今までいかに僕たちは普段、生活の中で見ているようで見ていないんだなっていうことを改めて思ったんですよ。

 それで改めて石段をトコトコ登って頂上に行って、今はもうビルに囲まれたりして江戸時代のように展望がいいわけではないんですけど、僕にはとてもそれは雄大な景色に見えたんです。かつてフェリーチェ・ベアトっていう明治時代に来た(イギリス人)写真家が当時の写真を残しているんですけど、それを見た時に、まさしく山だったんだなっていうのが、またさらに気付いていくことに面白さが出てきて、そこからスタートしたような感じですね。よくよく見れば、山ってちゃんと付いていますよね? 愛宕山・・・」

●あ〜、確かにそうですね!

「それは都内にもたくさんあるわけですよね。飛鳥山とか代官山とか、それこそ拾っていくとたくさんあるんですよ。何とか山とか、何とかヶ丘とか、丸っていうのもそうですよね、何とか台、そういうのは全部山なんですよね。だからそういう地形を表したことにだんだん興味が向いてくると、東京というのは山岳都市なんじゃないかって思えてきて、山があれば当然、谷もあるんで、渋谷は谷なんだとか、そういうことが見えてくるんですよね」

『新装版 東京まちなか超低山〜50メートル以下、都会の名山100を登る』

江戸時代、大名が山を造る!?

※ひとくちに超低山といっても、いくつかタイプがあるんですよね?

「はい、分かりやすく説明すると、人工の山、人の手で造った山っていうのは築山(つきやま)って言うんですけど、例えば築地ってありますよね、あの築と同じです。あれは造った土地なので築地って言うんですけど、それと同じで造った山を築山って言うんですよ。だから日本語っていうのはすごく分かりやすくできているんですね。その文字を紐解いていくとね。そういうのがひとつひとつまた面白いんですよ。

 その人工の山っていうのは多くは大名庭園に造られていることが多いんですよね。大名庭園っていうのは江戸時代に造られるんですけど、徳川が幕府を開いて日本中の大名がそこに屋敷を持つわけですよね。時代は安定してきているので、それぞれが庭に凝るわけですよね。藩の力の大きさっていうのももちろんあるんですけど、徳川御三家なんかは広大なお屋敷を持っているんで当然お庭も広いんです。

 そうするとまず池を掘って、池を掘った時に土をどうするかっていうと、それを山にするんですよね。掘った土を盛って山を造るんです。そういう手法をどこの庭園もやるわけですよね。松を植えたりとか、楓を植えたりとか、園路を造ったりとか、東屋を作ったりとか、色んな工夫をして、六義園とか、小石川後楽園とか、清澄庭園とか、浜離宮とかたくさんありますけど、みんなそれぞれ持ち味が違うんですよね。それは考え方の違いで、それぞれなんですけど、そういうところに築山を造るですよね。

 その築山もほとんど、自分が生まれ育った場所を思い起こすようなものを造ったりとかって意外とあるんですよね。あとは富士山を模したものももちろん造られました。大体高さにすると5メートルぐらいなんですよね。元気な人は30秒ぐらいで登頂できちゃうんですけど、それを人工の山、築山っていう大名庭園にたくさん造られたっていうのがまずひとつですね」

●超低山を登ることは歴史を体感することにも繋がりそうですね。

「そうですね。だからさっきの大名屋敷の山、例えば浜離宮でもいいですけど、山に登ると時の将軍もそこに立ったんだなっていうことが分かるんですよね。だから今はもう、もちろん将軍さんはいないですけど、同じものがそこにあるんですよね。だから同じことを体験できるっていうか、それがなかなか面白いんですよ」

<超低山の種類>

 超低山のタイプは、先ほど中村さんのご説明にあった、大名屋敷内の庭園に造られた人工の山「築山」のほかに、江戸時代の「富士信仰」の影響で街中にたくさん造られた「富士塚」、これは今も都内に50くらいは残っているそうですよ。

 そしてもうひとつのタイプが「天然の山」。都内には、中村さんが超低山に注目するきっかけになった虎ノ門の「愛宕山」のほか、王子の「飛鳥山」、そして浅草の「待乳山(まつちやま)」があります。

 まとめると超低山のタイプは「築山」「富士塚」そして「天然の山」の3つなんですが、その3つに収まらない山として、いわゆる、崖のような場所を「見立ての山」と中村さんは呼んでいます。実はこのタイプが都内にはいちばん多く、代官山や五反田、品川などにもあるそうですよ。探しに行くのも楽しそうですね。

おすすめの超低山

※お勧めの超低山を教えてください。

「これがね、いっぱいあって困っちゃうんですけど(笑)。季節に分けてもいいし、色々考え方はあるんですけど、まず理解しやすいところで言うと、さっきの3つ挙げた天然の山っていうのが分かりやすい山だと思うんですよね。行けばそこにそそり立っているんで。

 今そそり立っているって言い方をしましたけど、これは大げさに表現することが大事なんですよ。だから登るところは登山口って言うようにしているんですよね。小さくてもそこは雄大な山として取り上げるような気持ちで登ってほしいと思うんです。じゃないとあっという間に終わっちゃうんで(笑)。僕はゆっくり愛でながら登ろうということで、さっきの飛鳥山、愛宕山、待乳山、これらは登っといた方がいいと思います。

 あと可愛い山をひとつ紹介しておきたいんですけど、東京の小金井市に野川という清流が流れているんですね。野川公園っていうのが近くにあるんですけど、そこに”くじら山”という名の標高53メートルの山があるんですね。これは何がいいかって言うと、大名屋敷でもなんでもないんですけど、築山なんですね。雑木林が周りにあって公園の一角なんです。近くの小学校を改築する時に土が余って、それをそこに盛ったわけなんですよ。子供たちが遊んでいるうちにくじらの形になって山が残ったんですよね。

 で、気が利いている大人たちがいたんですね。それをちゃんと大事にそのまま残したわけですよ。そこにシロツメクサとか全山を覆うように咲き誇るわけです。それがもう本当に可愛らしい山で、そこから見る西側の風景は雄大で、夕焼けを見るには本当にいいところです。本当にそこは、お殿様も誰もいない子供たちのパラダイスなんですけど、大人が行っても楽しいです」

写真協力:中村みつを

浦安で富士巡り!?

※千葉にもお勧めの超低山はありますか?

「千葉だと例えば、浦安に3つの富士塚があるんですね。富士巡りができるんですけど、堀江富士っていうのがあるんですね。これは清瀧(せいりゅう)神社っていうところにあるんですけど、もうひとつは猫実(ねこざね)富士っていうのがあって、これは豊受(とようけ)神社っていうところにあるんですね。もうひとつが当代島富士っていうのがあって、これは当代島稲荷神社っていうところにあるんですけど、この3つは大体3〜7メートルほどのミニチュアの富士山があります。駅からも近いんでこれは楽しめると思います。

 あとおすすめなのが、流山にある流山富士っていうのがあって、これ江戸川に沿ったところにあるんですけど、そこに浅間神社があって、浅間神社っていうのは富士信仰ですね、富士を祀ったところですけど、そこに高さ6メートルの立派な富士塚があります。ここも街歩きをしながら尋ねると楽しいと思います。

 (超低山は)思い立ったときにふっと寄れるよさがあるので、そんなに大げさな格好はいらないんですけど、できたら手に(物を)持たない、要するにデイパックを背負うとか、手はブラブラさせておいたほうがいいと思います。というのは富士塚の中には岩登りに近いような感じで、結構手を使って登るところもあるんですよね。そういうところもあるんで、手が空いた方がいい。あとはこの時期だと暑いんで水分補給は欠かせないっていうこともありますよね。

 いちばん重要なのは想像力ですね。その超低山を前にした時に、そこに行くまでのことを色々想像しながら気持ちを膨らませていく、そういうものがいちばん肝心かもしれないですね。山頂に立った時に見える風景を想像してみるのもすごく楽しいと思います」

気の向くまま、あえて迷ってみる!?

※去年から続くコロナ禍で遠出することが難しくなっていますよね。そんななか、近場に日帰りで行くような「マイクロツーリズム」という旅のスタイルが注目されています。超低山はマイクロツーリズムそのものですよね?

「そうですね。このマイクロツーリズムというのはこのコロナ禍で生まれてきたって言ってもいいと思うんですけど、それまであまり言われませんでしたよね? 遠くに行くのがひとつのステータスだったり、夢だったりというのがあったと思うんです。(以前は)今さらそんな家の近所を歩いてどうすんの!? みたいなことだったと思うんですよね。

 でもこのコロナ禍でマイクロツーリズムがだいぶ言われるようになって、僕が書いたこの本もそういう意味では非常に喜んでもらえる本にはなったんですね。
 自分の住んでいる街でもいいし、あと勤めている会社との距離でもいいし、その間に結構あるんですよね、今まで見落としていたこととか。そういうのをちょっと調べてみると山があったりするんで、そういうところに足を運んでみるといいかと思います」

●朝起きて、その日の天気を見て、ちょっと行ってみようかっていうその手軽さ、気軽さっていうのも超低山の魅力ですね?

「そうですね。寝坊しても行ける良さがあるんで非常にいいです(笑)。で、どこかでお昼を、江戸時代からやっているお蕎麦屋さんで食べようかとか、ここの団子屋さんに帰りは寄っていこうとかね、そういう気持ちを緩やかにする良さがある。緊張することのない山登りかもしれないです。

 で、よく言われるんですけど、迷ったらどうするんですか? っていう人がいるんですよね。本当の山だったら大変ですよね。迷ったりすると帰って来られなかったりするわけですけど、この都内での山歩きですから、僕は迷うことはお勧めしているんですよね、どんどんと迷ってと。
 丁寧なコースガイドがあったらいいのにっていう風に、今の人は捉えがちなんですよね。右に曲がったらこれがあって、左に曲がったらこれがあるっていう、もう道順のように行くのに慣れちゃっている部分もあると思うんですけど、そんなものはもうやめて、気の向くままに歩く。最終的に例えば、愛宕山だったら愛宕山にたどり着くまでを楽しんだ方がいいと思いますよね」

●中村さんのお話を聞いて超低山に行ってみようって思った方、たくさんいらっしゃると思うんですけれども、そんな方に何かアドバイスがあるとしたら。

「とにかく頭を柔らかくして、想像力を豊かに楽しむっていうことだと思います。疲れたら休めばいいし、雨が降ったらどこかに雨宿りすればいいし、そのぐらいの気持ちで行くといいと思います。あとは何とか山っていうのを、地図を広げた時に見つけたら、なんだろう? ってそういう不思議さを思うことも大事だと思います」


INFORMATION

新装版 東京まちなか超低山〜50メートル以下、都会の名山100を登る


『新装版 東京まちなか超低山〜50メートル以下、都会の名山100を登る』

 都内にこんなにも「山」があるのかと驚きますよ。普段意識していないので「山」と認識していないだけ。思い立ったらすぐ行ける山や、山をめぐるコースも紹介。付録には「東京の超低山 百名山リスト」も掲載。ぜひ読んでください。ぺりかん社から絶賛発売中です。
 詳しくは、ぺりかん社のサイトをご覧ください。

◎ぺりかん社HP:http://www.perikansha.co.jp/Search.cgi?mode=SHOW&code=1000001871

写真協力:中村みつを

 中村さんは今年12月に恵比寿の「ギャラリーまぁる」で個展を開催予定。山の世界を描いた作品を中心に展示するそうですよ。

◎ギャラリーまぁるHP:https://galeriemalle.jp

オンエア・ソング 8月8日(日)

2021/8/8 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. HOT SUMMER / PRINCE

M2. WALKING AWAY / CRAIG DAVID

M3. SATURDAY IN THE PARK / BOBBY CALDWELL

M4. 茜色の夕日 / フジファブリック

M5. SMILE~晴れ渡る空のように~ / 桑田佳祐

M6. WALKIN’ ONE AND ONLY / TUCK & PATTI

M7. WHOLE WORLD AROUND / DANIEL POWTER

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

家庭にあるもので始める野菜作り〜ノウハウより思いやり〜

2021/8/1 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ガーデニング研究家の「はた あきひろ」さんです。

 はたさんは1967年生まれ、兵庫県西宮市出身。大手住宅メーカーに勤務後、2014年に独立。現在は奈良市で、農地を借りて、家族5人分のお米と野菜を作りながら、ガーデニング研究家、そして樹木医として活躍されています。また、テレビ番組「ぐるっと関西おひるまえ」の講師として出演されていて、家庭菜園での野菜作りを分かりやすく親しみやすい語り口で解説されていて人気なんです。

 そんなはたさんの新刊が『ペットボトルからはじめる 水耕栽培とプランター菜園』。
きょうはペットボトルや段ボールなど、家庭にあるものを使って始める水耕栽培やプランター菜園、そして農地を借りて取り組んでいる自給自足の生活についてもお話しいただきます。

☆写真協力:はたあきひろ

写真協力:はたあきひろ

水耕栽培のすすめ

※家庭にあるもので野菜を育ててみよう、ということで、まずは水耕栽培についてうかがいます。はたさん、最初に何を用意すればいいですか?

「用意するものはですね、色々なやり方があるんですけども、いちばん手軽なやり方でいうと、スポンジ、食器とか洗う時にスポンジを使うじゃないですか、新しいスポンジでもいいんですけど、古いスポンジでも構わないので用意してください。

 そのスポンジにカッターで深さ大体1センチぐらいの溝を作って、その溝の切れ込みの中に野菜のタネを入れて、そのスポンジを、豆腐が入ってるような(プラスチックの)ケースに水を入れて浸しておくとスポンジが水を吸いますよね。その水を吸ったスポンジからタネに水が移って、それで発芽します。タネぐらいは買わないといけないですけど、それ以外はそれで十分です。スプラウト(*)もできますし、ちょっと育てればベビーリーフもできますよ」

(*スプラウトとは、発芽直後の新芽のことで、発芽野菜とか新芽野菜といわれています)

●へぇ〜! 広いスペースが必要ってわけでもないですよね。

「そうなんですよ。ただ、ちょっと窓辺の、日の当たるところの方が成長が当然いいので、できるだけ窓辺に置いてもらって」

●水耕栽培の良さってどんなところですか? 

「水耕栽培はですね、まず野菜を作るとなると、嫌がられるのが虫なんですよね。水耕栽培の場合は室内でできるっていうのと、土を使わないから、土の中に虫の幼虫がいたり卵があったりして、それが野菜に付く場合もあるんですよね。
 水耕栽培は限りなく虫と出会う機会が少ないです。水は水道の水を使いますし、スポンジに虫がいるはずがないですし、タネそのものにも虫は付いていないですよね。”野菜作りはしたいんだけど、虫はね〜”って方にはぴったりだし、手軽に誰でもできるところがいいところだと思いますね。

 あと栽培期間も短いですから。普通、例えば小松菜とかチンゲンサイを、売ってるような形に育てるのには大体2〜3ヶ月かかるんですよね。でもスプラウトとかベビーリーフだと、2〜3週間で採れちゃうので、非常に勝負が早いんです」

●お水は毎日変えればいいんですよね? 

「そうです。水耕栽培の場合のポイントはやっぱり水。水耕と言われるぐらいだから水を清潔にしておくことが大切です。できるだけ水は毎日変えてあげることが重要です」

(補足:ペットボトルでも水耕栽培ができます。やり方は、はたさんの本にわかりやすく載っているのでご覧ください)

『ペットボトルからはじめる 水耕栽培とプランター菜園』

野菜を育てる秘訣

※水耕栽培の秘訣があったら、教えてください。

「秘訣はですね、僕いつも野菜を育てる時に言ってるのは、ノウハウより思いやりなんです」

●思いやり!? 

「僕が、私が、育ててやろう! という風に思うんじゃなくて、この子が気持ちよく育つ環境を作ってあげようと。そうすると、水って毎日変えた方が気持ちいいですよね。

 で、発芽する時って肥料いらないんですよ。何故かっていうとタネの中に発芽するエネルギーがあるから。でも発芽した時に”そろそろ、はたさん、肥料を頂戴〜!”っていう風な顔つきになってきた時に、液体肥料をあげると、”ありがとうね!”という感じになるんですけど、最初から肥料入りの水を入れると、”まだいらないのにな〜”っていう感じですよね。

 ですので、あんまり自分が育てているっていうよりは、相手が気持ちよく育つことを(考える)。そしたら今何をしないといけないのかなっていうのが、水耕栽培でも、土を使うものでも、畑でする場合でも共通なんですよ」

●思いやり大切ですね! 部屋の中で育てるので日々成長を観察できるっていうのもいいですね。

「いいですね。最近だと写真を撮ってSNSにあげたりするのも、日々成長していくのがわかるし、あと外じゃないので、雨の影響とか天気の影響を受けないですよね。写真も定期的に撮りやすいし、寒い日でも室内が暖かければ育ちます」

●本当に初心者にはぴったりの水耕栽培ですね! 

「そうなんです!」

はた家の庭先菜園
はた家の庭先菜園

100円ショップで園芸!?

※ここまでは水耕栽培についてうかがってきましたが、続いては、はたさんお勧めのプランター菜園について。家にあるもの、たとえば、台所にあるプラスチックの、ざるやボウルでもプランターの代用になるってことなんですよね?

「そうなんです。僕が100円ショップとかホームセンターに行くと、園芸コーナーだけじゃなくて色々なコーナーに行って、これって園芸に使えそうやな、っていうのを見つけるのがちょっと趣味なんです。ざるだけではちょっとしんどいんですけど、ざるとボウルがセットになって100円のものがあるんですよね。もう少し大きなものだと、ホームセンターに高いのもあるんですけど、それで十分育つんです。

 特にプランターを選ぶ時の注意点なんですけど、鉢底がざる状になっているのがすごくよくて、プランターでも穴が少ないものは、あまり僕はお勧めできないんですよ。何故かというと、植物の根っこって、野菜も花もハーブもそうなんだけど、空気が大好きなんですよね。空気があると成長がものすごく促進されてよくなります。ですので、底がざるのようなプランターが最近はありますから、ないしは下の鉢底の穴が多いものを選んでもらったらいいですね。ざるでも当然いいですよ」

●でも、ざるとボウルに土を入れてってことですよね? それでちゃんと育つんですよね?すごいですね。

「ちゃんと育ちます」

●あと、卵パックで野菜作りとも(本には)書いてありましたけれども。

「卵パックってね、園芸的にいうと、ちょっと専門用語なんですけど、セルトレイっていうのがあって、小さな苗を作るキットみたいなのがありましてね。そのセルトレイに卵パックって似ているんですよ。小部屋がたくさんあって、その小部屋に土を入れて、タネをひとつずつ撒いて、(芽が出たら)取り出して植え付けるってやり方なんですけど、まさに卵パックってそんな感じで使えるのでちょうどいいんです」

●土はどんなものを選んで買えばいいですか? 

「土はですね、ずばり25リッター入りで600円以上です!」

●25リッターっていうとどういうサイズですか? 

「25リッターだとですね、ホームセンターとか園芸店で売っているいちばん大きいサイズの袋ですね。ちょっと女性ではしんどいかな、男性が両手で抱えて持てるぐらいの大きさなんです。これで600円以上がいいと僕は言っているんです。
 僕は全国でセミナーをする時に現地で土は調達するんですけど、僕の経験上、25リッターで600円以上の土を使うとまず失敗したことがないです」

●この季節、プランター菜園でお勧めの野菜ってありますか?

「この季節は皆さんが分かるもので馴染みのあるものだと・・・バジルはいいな! あとクウシンサイって分かりますか? 中国料理で炒めもので出てくる空芯菜もいいですね。それからモロヘイヤ、ツルムラサキ。暑さに強い植物を今言ったんですけど、その4つがお勧めです!」

クウシンサイ
クウシンサイ

僕の野菜は自動運転!?

※はたさんは奈良市で自給自足の生活をされていますが、そのきっかけは、西宮の実家で阪神淡路大震災を経験したこと。ライフラインが止まる中、未来に命をつなぐ食べ物の大切さに改めて気づき、サラリーマン生活をしながら、自給自足を模索していったそうです。

ところで、現在はどれくらいを自給しているんですか?

「家族5人分のお米と野菜をほぼ自分で作っています」

●畑を借りてるんですか?

「そうです。農家さんから畑を400坪借りて。先ほど田んぼから帰ってきたんですけど、お米を作る面積が300坪で、野菜を作る面積が100坪です!」

●へぇ〜! 今はどんな野菜を育てているんですか? 

「今はですね、夏野菜のキュウリ、トマト、ナス、オクラ、シソ、カボチャ、スイカ、サツマイモ・・・言い出したらきりがないですけど、いわゆる夏野菜と言われるものがざっと100坪の中にあります」

●え、何種類くらいになるんですか? 

「品種も入れると毎回30〜40種類やと思います(笑)」

●すごい! 苗を植えて水や肥料を与えてとか、日々忙しいですよね? 

「そう思われがちなんですけどね。当然、タネとか苗は植えないといけないんですけど、こうやって今ラジオでお話している間も、僕のサツマイモとかトマトは勝手に育っているでしょ。だからある種、自動運転なんですよね。400坪の中で今多分、自動で運転しているんですよ。僕が例えば、お米とか野菜を収穫するまでに、その野菜たちお米たちと関わる時間って全時間にしたらわずかなんですよね。当然(僕が)寝ている間も動いてるわけですよね。

 そう考えると、そんなに皆さんが考えるほどでもないんですよ。僕も園芸研究家として働きながら自給自足しているわけで、仕事があるわけですよね。以前はサラリーマンをしながら自給自足をしていましたから。そんなに皆さんが考えているほど大変じゃないし、高いスキルではないですよね。そういった自給的なところって、何万年と人間がやってきたことだから、すごくベーシックなスキルだと思うんですよね」

写真協力:はたあきひろ

ありのままに受け入れる

※はたさんは自給自足の生活を続けてきて、いま改めてこんなことを感じているそうです。

「これは僕が自給自足する時にあんまり思わなかったんだけど、食の自立をしたと同時に精神的な自立がなされていってるのかなという感じですね。だからものすごく僕、話し方がスローやと思うんですけど、気持ち的にもすごくスローな感じで、全てを受け入れる。

 だから対人関係に関しても、自給自足する前より人の好き嫌いってほとんどなくなったんですよね。あらゆる現象をありのままに受け入れることを、畑は教えてくれるという風に思います」

●この番組を聴いて、自宅で野菜作りをしたいなって思った方にアドバイスをするとしたら。

「僕の本の中に色々アイデアがあって、それで、”えっ! こんな幼稚なことからやるの?”って言われるかも分からないんだけど、その小さなところでも芽が出て、双葉になって、本葉が出てっていう現象は、僕が大きくやっている畑でも同じなんだよね。

 だからあんまりスケール感で、ものを判断するんじゃなくて、自分の身の丈に合ったものを、僕の本なり、違う人の本でもいいですよ、ないしはテレビ番組を見て、これいいなと思った、自分の身の丈に合ったものを選んで、まずスタートする。

 スタートして失敗しても、それはすべてが失敗なんじゃなくて、自然現象として何か自分の思いとは違ったから失敗してるのであって、それをよく観察すれば、何か収穫できることがある。だから、やめて他の趣味にいっても構わないから、何かひとつ自分に合うものを見つけてやっていただいたらいいかなと思います」


INFORMATION

ペットボトルからはじめる 水耕栽培とプランター菜園


『ペットボトルからはじめる 水耕栽培とプランター菜園』

 特にこれから野菜を自分で作ってみようと思っているかたにお勧めの本。イラストや写真を豊富に使って説明してあるからとても分かりやすいです。初心者にも手軽に作れる野菜も紹介しているので、ぜひこの機会にはたさんの本を参考に野菜作りにチャレンジしてみませんか。お子さんと一緒に夏休みの自由研究のテーマにもいかがでしょうか。内外出版社から絶賛発売中です。

◎内外出版社HP:https://www.naigai-p.co.jp/corporate/

YouTube「はたさんの野菜作りチャンネル」


 はたさんはYouTubeで野菜作りの動画を公開中。1分ほどの動画でプランターや鉢などを使って行なう野菜作りを紹介しています。これもわかりやすくてお勧めですよ。

https://www.youtube.com/channel/UCqzg2cQDY3IRgBU6EIHpD5g

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