毎回スペシャルなゲストをお迎えし、
自然にまつわるトークや音楽をお送りする1時間。

生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで
幅広く取り上げご紹介しています。

~2020年3月放送分までのサイトはこちら

Every Sun. 20:00~20:54

家庭にあるもので始める野菜作り〜ノウハウより思いやり〜

2021/8/1 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ガーデニング研究家の「はた あきひろ」さんです。

 はたさんは1967年生まれ、兵庫県西宮市出身。大手住宅メーカーに勤務後、2014年に独立。現在は奈良市で、農地を借りて、家族5人分のお米と野菜を作りながら、ガーデニング研究家、そして樹木医として活躍されています。また、テレビ番組「ぐるっと関西おひるまえ」の講師として出演されていて、家庭菜園での野菜作りを分かりやすく親しみやすい語り口で解説されていて人気なんです。

 そんなはたさんの新刊が『ペットボトルからはじめる 水耕栽培とプランター菜園』。
きょうはペットボトルや段ボールなど、家庭にあるものを使って始める水耕栽培やプランター菜園、そして農地を借りて取り組んでいる自給自足の生活についてもお話しいただきます。

☆写真協力:はたあきひろ

写真協力:はたあきひろ

水耕栽培のすすめ

※家庭にあるもので野菜を育ててみよう、ということで、まずは水耕栽培についてうかがいます。はたさん、最初に何を用意すればいいですか?

「用意するものはですね、色々なやり方があるんですけども、いちばん手軽なやり方でいうと、スポンジ、食器とか洗う時にスポンジを使うじゃないですか、新しいスポンジでもいいんですけど、古いスポンジでも構わないので用意してください。

 そのスポンジにカッターで深さ大体1センチぐらいの溝を作って、その溝の切れ込みの中に野菜のタネを入れて、そのスポンジを、豆腐が入ってるような(プラスチックの)ケースに水を入れて浸しておくとスポンジが水を吸いますよね。その水を吸ったスポンジからタネに水が移って、それで発芽します。タネぐらいは買わないといけないですけど、それ以外はそれで十分です。スプラウト(*)もできますし、ちょっと育てればベビーリーフもできますよ」

(*スプラウトとは、発芽直後の新芽のことで、発芽野菜とか新芽野菜といわれています)

●へぇ〜! 広いスペースが必要ってわけでもないですよね。

「そうなんですよ。ただ、ちょっと窓辺の、日の当たるところの方が成長が当然いいので、できるだけ窓辺に置いてもらって」

●水耕栽培の良さってどんなところですか? 

「水耕栽培はですね、まず野菜を作るとなると、嫌がられるのが虫なんですよね。水耕栽培の場合は室内でできるっていうのと、土を使わないから、土の中に虫の幼虫がいたり卵があったりして、それが野菜に付く場合もあるんですよね。
 水耕栽培は限りなく虫と出会う機会が少ないです。水は水道の水を使いますし、スポンジに虫がいるはずがないですし、タネそのものにも虫は付いていないですよね。”野菜作りはしたいんだけど、虫はね〜”って方にはぴったりだし、手軽に誰でもできるところがいいところだと思いますね。

 あと栽培期間も短いですから。普通、例えば小松菜とかチンゲンサイを、売ってるような形に育てるのには大体2〜3ヶ月かかるんですよね。でもスプラウトとかベビーリーフだと、2〜3週間で採れちゃうので、非常に勝負が早いんです」

●お水は毎日変えればいいんですよね? 

「そうです。水耕栽培の場合のポイントはやっぱり水。水耕と言われるぐらいだから水を清潔にしておくことが大切です。できるだけ水は毎日変えてあげることが重要です」

(補足:ペットボトルでも水耕栽培ができます。やり方は、はたさんの本にわかりやすく載っているのでご覧ください)

『ペットボトルからはじめる 水耕栽培とプランター菜園』

野菜を育てる秘訣

※水耕栽培の秘訣があったら、教えてください。

「秘訣はですね、僕いつも野菜を育てる時に言ってるのは、ノウハウより思いやりなんです」

●思いやり!? 

「僕が、私が、育ててやろう! という風に思うんじゃなくて、この子が気持ちよく育つ環境を作ってあげようと。そうすると、水って毎日変えた方が気持ちいいですよね。

 で、発芽する時って肥料いらないんですよ。何故かっていうとタネの中に発芽するエネルギーがあるから。でも発芽した時に”そろそろ、はたさん、肥料を頂戴〜!”っていう風な顔つきになってきた時に、液体肥料をあげると、”ありがとうね!”という感じになるんですけど、最初から肥料入りの水を入れると、”まだいらないのにな〜”っていう感じですよね。

 ですので、あんまり自分が育てているっていうよりは、相手が気持ちよく育つことを(考える)。そしたら今何をしないといけないのかなっていうのが、水耕栽培でも、土を使うものでも、畑でする場合でも共通なんですよ」

●思いやり大切ですね! 部屋の中で育てるので日々成長を観察できるっていうのもいいですね。

「いいですね。最近だと写真を撮ってSNSにあげたりするのも、日々成長していくのがわかるし、あと外じゃないので、雨の影響とか天気の影響を受けないですよね。写真も定期的に撮りやすいし、寒い日でも室内が暖かければ育ちます」

●本当に初心者にはぴったりの水耕栽培ですね! 

「そうなんです!」

はた家の庭先菜園
はた家の庭先菜園

100円ショップで園芸!?

※ここまでは水耕栽培についてうかがってきましたが、続いては、はたさんお勧めのプランター菜園について。家にあるもの、たとえば、台所にあるプラスチックの、ざるやボウルでもプランターの代用になるってことなんですよね?

「そうなんです。僕が100円ショップとかホームセンターに行くと、園芸コーナーだけじゃなくて色々なコーナーに行って、これって園芸に使えそうやな、っていうのを見つけるのがちょっと趣味なんです。ざるだけではちょっとしんどいんですけど、ざるとボウルがセットになって100円のものがあるんですよね。もう少し大きなものだと、ホームセンターに高いのもあるんですけど、それで十分育つんです。

 特にプランターを選ぶ時の注意点なんですけど、鉢底がざる状になっているのがすごくよくて、プランターでも穴が少ないものは、あまり僕はお勧めできないんですよ。何故かというと、植物の根っこって、野菜も花もハーブもそうなんだけど、空気が大好きなんですよね。空気があると成長がものすごく促進されてよくなります。ですので、底がざるのようなプランターが最近はありますから、ないしは下の鉢底の穴が多いものを選んでもらったらいいですね。ざるでも当然いいですよ」

●でも、ざるとボウルに土を入れてってことですよね? それでちゃんと育つんですよね?すごいですね。

「ちゃんと育ちます」

●あと、卵パックで野菜作りとも(本には)書いてありましたけれども。

「卵パックってね、園芸的にいうと、ちょっと専門用語なんですけど、セルトレイっていうのがあって、小さな苗を作るキットみたいなのがありましてね。そのセルトレイに卵パックって似ているんですよ。小部屋がたくさんあって、その小部屋に土を入れて、タネをひとつずつ撒いて、(芽が出たら)取り出して植え付けるってやり方なんですけど、まさに卵パックってそんな感じで使えるのでちょうどいいんです」

●土はどんなものを選んで買えばいいですか? 

「土はですね、ずばり25リッター入りで600円以上です!」

●25リッターっていうとどういうサイズですか? 

「25リッターだとですね、ホームセンターとか園芸店で売っているいちばん大きいサイズの袋ですね。ちょっと女性ではしんどいかな、男性が両手で抱えて持てるぐらいの大きさなんです。これで600円以上がいいと僕は言っているんです。
 僕は全国でセミナーをする時に現地で土は調達するんですけど、僕の経験上、25リッターで600円以上の土を使うとまず失敗したことがないです」

●この季節、プランター菜園でお勧めの野菜ってありますか?

「この季節は皆さんが分かるもので馴染みのあるものだと・・・バジルはいいな! あとクウシンサイって分かりますか? 中国料理で炒めもので出てくる空芯菜もいいですね。それからモロヘイヤ、ツルムラサキ。暑さに強い植物を今言ったんですけど、その4つがお勧めです!」

クウシンサイ
クウシンサイ

僕の野菜は自動運転!?

※はたさんは奈良市で自給自足の生活をされていますが、そのきっかけは、西宮の実家で阪神淡路大震災を経験したこと。ライフラインが止まる中、未来に命をつなぐ食べ物の大切さに改めて気づき、サラリーマン生活をしながら、自給自足を模索していったそうです。

ところで、現在はどれくらいを自給しているんですか?

「家族5人分のお米と野菜をほぼ自分で作っています」

●畑を借りてるんですか?

「そうです。農家さんから畑を400坪借りて。先ほど田んぼから帰ってきたんですけど、お米を作る面積が300坪で、野菜を作る面積が100坪です!」

●へぇ〜! 今はどんな野菜を育てているんですか? 

「今はですね、夏野菜のキュウリ、トマト、ナス、オクラ、シソ、カボチャ、スイカ、サツマイモ・・・言い出したらきりがないですけど、いわゆる夏野菜と言われるものがざっと100坪の中にあります」

●え、何種類くらいになるんですか? 

「品種も入れると毎回30〜40種類やと思います(笑)」

●すごい! 苗を植えて水や肥料を与えてとか、日々忙しいですよね? 

「そう思われがちなんですけどね。当然、タネとか苗は植えないといけないんですけど、こうやって今ラジオでお話している間も、僕のサツマイモとかトマトは勝手に育っているでしょ。だからある種、自動運転なんですよね。400坪の中で今多分、自動で運転しているんですよ。僕が例えば、お米とか野菜を収穫するまでに、その野菜たちお米たちと関わる時間って全時間にしたらわずかなんですよね。当然(僕が)寝ている間も動いてるわけですよね。

 そう考えると、そんなに皆さんが考えるほどでもないんですよ。僕も園芸研究家として働きながら自給自足しているわけで、仕事があるわけですよね。以前はサラリーマンをしながら自給自足をしていましたから。そんなに皆さんが考えているほど大変じゃないし、高いスキルではないですよね。そういった自給的なところって、何万年と人間がやってきたことだから、すごくベーシックなスキルだと思うんですよね」

写真協力:はたあきひろ

ありのままに受け入れる

※はたさんは自給自足の生活を続けてきて、いま改めてこんなことを感じているそうです。

「これは僕が自給自足する時にあんまり思わなかったんだけど、食の自立をしたと同時に精神的な自立がなされていってるのかなという感じですね。だからものすごく僕、話し方がスローやと思うんですけど、気持ち的にもすごくスローな感じで、全てを受け入れる。

 だから対人関係に関しても、自給自足する前より人の好き嫌いってほとんどなくなったんですよね。あらゆる現象をありのままに受け入れることを、畑は教えてくれるという風に思います」

●この番組を聴いて、自宅で野菜作りをしたいなって思った方にアドバイスをするとしたら。

「僕の本の中に色々アイデアがあって、それで、”えっ! こんな幼稚なことからやるの?”って言われるかも分からないんだけど、その小さなところでも芽が出て、双葉になって、本葉が出てっていう現象は、僕が大きくやっている畑でも同じなんだよね。

 だからあんまりスケール感で、ものを判断するんじゃなくて、自分の身の丈に合ったものを、僕の本なり、違う人の本でもいいですよ、ないしはテレビ番組を見て、これいいなと思った、自分の身の丈に合ったものを選んで、まずスタートする。

 スタートして失敗しても、それはすべてが失敗なんじゃなくて、自然現象として何か自分の思いとは違ったから失敗してるのであって、それをよく観察すれば、何か収穫できることがある。だから、やめて他の趣味にいっても構わないから、何かひとつ自分に合うものを見つけてやっていただいたらいいかなと思います」


INFORMATION

ペットボトルからはじめる 水耕栽培とプランター菜園


『ペットボトルからはじめる 水耕栽培とプランター菜園』

 特にこれから野菜を自分で作ってみようと思っているかたにお勧めの本。イラストや写真を豊富に使って説明してあるからとても分かりやすいです。初心者にも手軽に作れる野菜も紹介しているので、ぜひこの機会にはたさんの本を参考に野菜作りにチャレンジしてみませんか。お子さんと一緒に夏休みの自由研究のテーマにもいかがでしょうか。内外出版社から絶賛発売中です。

◎内外出版社HP:https://www.naigai-p.co.jp/corporate/

YouTube「はたさんの野菜作りチャンネル」


 はたさんはYouTubeで野菜作りの動画を公開中。1分ほどの動画でプランターや鉢などを使って行なう野菜作りを紹介しています。これもわかりやすくてお勧めですよ。

https://www.youtube.com/channel/UCqzg2cQDY3IRgBU6EIHpD5g

前の記事
次の記事
サイトTOPへ戻る
WHAT’s NEW