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「アウトドアスキル」と「防災」〜「防災の日」を前に、新時代の防災術!

2021/8/29 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、アウトドアライフ・アドバイザーの「寒川 一(さんがわ・はじめ)」さんです。

 寒川さんは1963年生まれ、香川県出身。アウトドアでのガイドや、災害時に役立つスキルを教える活動のほか、アウトドア・メーカーのアドバイザー、そして三浦半島の静かな浜で焚き火をしながら、ゆっくり過ごす「焚火カフェ」を主催するなど、幅広い分野で活躍されています。

 そんな寒川さんが監修された本『キャンプ×防災のプロが教える 新時代の防災術 〜アウトドアのスキルと道具で家族と仲間を守る!』がこの春に出版されました。この“新時代”というのがまさにコロナ禍の今だと思います。きょうは9月1日の「防災の日」を前に、寒川さんに防災力を身につけるための術や、実践的な具体例などうかがいます。

☆写真協力:寒川 一

寒川 一さん

新しい避難スタイル

●それでは早速、寒川さんにお話をうかがっていきましょう。この本の序章で「新しい避難スタイル」を提案されていますが、まずはそのあたりから、ご説明いただけますか。

「コロナ禍も、もう2年を迎えてしまいました。非常に厳しい状況が今も続いているんですけれども、この数ヶ月の間も大雨が降ったりとか、あと猛暑もひとつの災害と言えるんじゃないかなと思うんですよね。
 そういう中で例えば、避難っていう指示が出た時に、今の状況を重ねてみると、共同で何かをする、もしくは共有するっていうのが非常に難しい時代になったのかなと思います。独立されたもののほうが好ましいかなというところで、キャンプというものを私は考えているわけですね」

●避難スタイルとしては、避難所に行ってもそこでキャンプするようにテントを張るっていうことですか? 

「まあ、これはシチュエーションが色々考えられると思うんですね。例えば冬場で、非常に寒い中で、体育館の中っていうのは、今まで過去の映像なんかでもご覧になられた方がたくさんいらっしゃると思うんですよ。プライバシーがないっていうのと、あと寒いっていうことを、何か改善する方法としてテントを張るっていうことは、ひとつ大きな方法かなと思うんですね。

 共同で皆さんが集まっているところで、キャンプをそこで展開するっていうのは、モラル的に難しいとか、そこを管理されている方の問題もあると思うんですよね。その辺がある程度クリアできてという条件の上で、キャンプをするっていうこと自体は非常に、先ほどの話じゃないですけれど、独立された形にできるっていうところが非常に有効かなという風には思います」

●この本には車で避難ということも書かれていましたけれども。

「そうですね。僕自身も車っていうのは、これも状況によりますけれども、非常に有効なシェルターだと思っているんですね。ひとつは、場合によったら家屋より非常に駆体がしっかりしている。エンジンがかけられれば、例えば空調、夏はエアコンが効いたり冬は暖房が出たり。あと最近ナビゲーションを備えている車が多いと思うんですけれども、そこから色々な情報を得ることも可能です。で、鍵がかけられたりとか、まあ何が何でも車がいいというわけではなくて、場合によっては車もシェルターとして考えておくっていうことはいいことかなと思いますね」

『キャンプ×防災のプロが教える 新時代の防災術  〜アウトドアのスキルと道具で家族と仲間を守る!』

まずは水の備蓄、そしてローリングストック

※避難所に行かないという選択肢もありますか?

「そうですね。これも先ほどの件と同じでケースバイケースの判断が必要になると思うんですけれども、まずはやっぱり自宅が安全であるっていう大前提が必要ですよね。例えば家屋の倒壊の恐れがないですとか、あと環境的に、周りに大きな川があるとか、裏にすぐ隣接した山があるような状況じゃなくて、家が安全であるという状態であれば、かえって動くより自宅で待機する形は十分にありかなと思います」

●そうなると備えも本当に大切になってくると思うんですけれど、食料を含めた備蓄品というのはどのくらい備えておけばいいんですか? 

「これもね、分量を例えば、このくらいですという風に言えれば、すごく簡単なんですけれども、これもやっぱりご家族の構成であったり、年齢であったりで用意するものも随分変わってくるとは思うんです。

 実際、僕らがいちばん重要だなと思っているのはやっぱり水なんですよね。仮にライフライン、水道が止まってしまった際に、やはり通常アウトドアとかサバイバルの世界で言われているのが、水は3日以内に、飲料水を確保するというか飲まなければ、人間がやっぱり(健全な状態を)保っていられなくなるということを考えると、水の備蓄にまずは重点を置くべきかなと思います。

 あとは食べ物自体は、その法則で言えば、しっかりお水さえ飲んでいれば、人は3週間から30日、生命を落とすことはないと言われているんですね。そのためにはしっかり体温を保つとか、ほかの条件もある程度必要になるんですけれども、食料品がまず第一にあるということではないということですよね。

 お家の中に食べ物がまるっきりないっていう方も、なかなかいらっしゃらないとは思うんですけれども、ある程度、普段から缶詰であったりとかパスタみたいな保存食を備蓄しておく。賞味期限があるものもありますので、そういうのをなるべく賞味期限前に消費をして、またそこに買い足しておく。

 これ”ローリングストック”って言うんですけれども、常に一定量の備蓄、食料の在庫が家にあって、期限が切れる前にそれを食べてしまうってことですよね。で、また買っておくと。それを繰り返していれば、ある日突然、災害が来ても一定量の食品がお家にあるということになるわけですよね」

*補足:お話に出てきたサバイバルの法則、これはアウトドア界では「サバイバルの3の法則」と呼ばれていて、いずれも「3」という数字に関連しています。
 まず、体温は適切に維持できなければ、3時間しか生きられないそうで、季節に応じた防寒の備えが必要。続いて、水分を摂取できなければ、3日程度しか生存できない。つまり水が最も欠かせない備蓄品。そして最後は、食べるものがなければ、30日ほどしか生きられないそうです。「サバイバルの3の法則」を参考に備えるのもいいかも知れません。

優れものの浄水器

※避難せざる得ない時の、非常用の持ち出し品でキャンプをやっている人ならば、最低限どんなものを持ち出せばいいですか?

「今キャンプの人口が非常に増えていますけれども、持っているものって結構バラバラかなという気もするんですね(笑)。そんな中でも共通しているだろうと思えるものが、ヘッドライト。今、手もとに用意しましたけれども、頭に付けるライトですよね」

●あ、はいはい! 両手が空きますよね? 

「そうですね。向く方向が照らされるっていう非常に合理性も高いですし、おっしゃる通りで手が空くっていうのは何よりもの恩恵だと思います。これは家族で1個ではなくて、ひとり1個、個人装備に当たるものなので、キャンプやっている人だったら大抵持っているんじゃないのかなと思いますね。まず、何はなくてもヘッドライトはお持ちいただきたいなと思います。あと、浄水器を今見せていますけれども・・・」

●えー!? そんなに小さな浄水器があるんですか? 

「そうですね。これ、アウトドアの専門店で販売されています。これに例えば、ペットボトルを簡単にジョイントできるんで、汚れた水を入れたペットボトルを付けていただいて、ちょっと手で押してやれば、先端から浄水されたお水、そのまま飲めるお水が出ます。

 このサイズで38万リットルの浄水力がある、38万リットルってちょっと想像できないと思いますけれども、1日10リットルぐらい浄水したとして100年以上もつっていう、言ってしまえば、一生使えるぐらいの能力を持っているものが、本当にこんな小っちゃなサイズで、数千円で手に入るんですね。こういうものがあるかないかで、さっきのお水をどれだけストックするかが変わってくるんですよね」

●確かにそうですね! 

「お風呂の汲み置きなんかされるお家も結構ありますよね。いざという時のために。そのお風呂のお水をそのまま飲んでしまうと、当然そこの中には菌が入っているわけで、大腸菌とか見えない菌がたくさんあると思うんですけれども、お風呂の貯め置きの水だったら、これ一発でそのまま飲むことが可能です。

 そういうようなアウトドアの用品で、割とコンパクトですぐ持ち出せるようなものを僕は非常持ち出し品として、枕より少し小っちゃいサイズの、手で簡単にさげられる防水のバックなんですけれども、この中に非常時のすぐ持ち出せるものは常に入れてあります。先ほどの浄水器だったり、ヘッドライトがこういう中に入っているって感じですね。

写真協力:寒川 一
写真協力:寒川 一

 災害はどこで遭うか分からないっていうことがありますので、例えば自分の長くいる場所、自宅はもちろんのこと、会社であったり、出先でも長時間いるような場所に、ある程度のものは備えておきたいなと考えますね。

 防災袋って、皆さんそれぞれそれなりには何かご用意されていると思うんですけれど、それをちゃんと手に入れられるかどうかは、すごく重要なことですよね。いくらお家の中に素晴らしいものがあっても、すごく離れた場所で災害に遭われたっていうこともありますので、僕は今の非常持ち出し用品と、あと一時避難用品、二次避難用品っていう三段階に分けて、ものは持つようにしているんですね」

*補足:寒川さんは非常用持ち出し品のほかに、一次持ち出し品として、1週間程度、外で過ごせるようにキャンプ道具を一通り、大きなザックに入れて用意。また、二次持ち出し品は1ヶ月程度の避難を想定して、日用品などもそろえ、大きなコンテナに保管して持ち出させるように準備されているそうです。どんなものを用意するのかは、寒川さん監修の本『新時代の防災術』をご覧ください。

自分なりの持ち出し品をデザイン

※寒川さんは、本の中で自分なりの持ち出し品をデザインしようと提案されています。そろえる時のポイントはありますか?

「僕の場合はやっぱりさっきの非常持ち出し袋の中に最低限のもの、どちらかというと生きるための道具に加えて、あとパーソナル品って言うんですかね、僕個人の必要な大切な物っていうのはやっぱり入れてあります。それは具体的に何かというと、ひとつはメガネが僕、重要なんですよね。もし災害時に何らかでメガネを失ってしまうと、場合によったらちょっと命取りな場面も、見えないっていうことで、そういう可能性もあるなと思って、スペアのメガネをまずは入れています。

 それ以外にも例えば家族の写真ですね。家族の写真をなぜ入れてるかっていうと、東日本大震災の時にすごく大勢の方が、もう家財道具はなくなってもしょうがないけど、家族の写真だけは取り返したいんだっていう方が圧倒的に多かったんですよね。やっぱりそういう心情に絶対なるんだろうなと思って、まあ家族の受けもいいんでね、それ入れておくとね(笑)。
 あとすぐに使えるような現金ですとか、保険証やパスポートのコピーとか控えみたいなものも中に入れて、そういう個人を表すものとか、個人的なものを非常時の持ち出し品の中に入れていますね」

●なるほど。今の時代、感染症対策もしなきゃいけないですよね。マスクだったり除菌スプレーだったりっていうものも必要ですね。

「そうですね。もちろんマスクも入っています」

“備える”より“備わる”

※この番組では以前にも寒川さんにご出演いただいて、アウトドアの道具がいざという時に役立つ、そんなお話をしていただきましたが、キャンプ用の道具を揃えただけでは、だめなんですよね?

「実際、道具を揃えるっていうこと自体は、まずはそこから始まるとは思うんですけれども、この今の時代は、ものを備えているっていうのはある意味当たり前で、どちらかというと、その備えた道具をどういう風に活用ができるかとか、使う技術ですね。それが”備える”という言い方をするんであれば、”備わる”という言い方に変えたいなと。

 英語が分かりやすいんですよ。”Prepare (プリペア)”っていうのは、ものを用意するっていうことですよね。備わるっていうのは、僕らは”Install(インストール)”っていう言葉を使うんですけれど、自分の中にそういうものを使う能力をちゃんとインストールしないと、結局いくらいい道具とか、たくさんのものを備えていても、使いこなせないっていう可能性が出てくるということ。それぐらい今は現実的になってきたということですよね」

●この本にもキャンプは日常でできる避難訓練と表現されていますけれども、やはりキャンプをしていると知らず知らずうちに防災力は身に付いてくるものですか? 

「キャンプ自体がライフラインの少ない場所で、衣食住を組み立てるって言えばいいんですかね。言い換えればキャンプなわけですけど、ライフラインの少ない場所で衣食住を組み立てるのは、本当に災害時そのものだと思うんですよ。なので知らず知らずというよりかは、もう本当にやることなすことが全て生きるに繋がっているという、災害防災に役立つというより、もうひとつ奥側なのかもしれないですね。人が生きていくっていう上で必要なことをしっかり身に付けるっていうことかなと思っています」

●小さい頃からキャンプの経験をしておくっていうのは、すごく大事なことかもしれませんね。 

「そうですね。知識だけではなくセンスが身に付くっていうんですかね。生きた何か知恵みたいな形がやっぱり小さな子供の頃からやっていれば、頭に入っていくというよりか、体に染み込むんじゃないのかなと思いますけどね」

写真協力:寒川 一

人そのものがライフラインになれる

※寒川さんは鎌倉で「スタディトレッキング」というワークショップを開催されていますが、どんなことをやっているんですか?

「スタディトレッキングは実際学びながら歩くっていう、ちょっと造語というか、そういうタイトルなんですけれども、鎌倉の近隣の山を、実際山歩きをしながら、その途中で燃料になるようなものを見つける、それとあと湧き水も探します。結構ほかの町でも応用の利くことではあるんですね。実際、自分で自然の中から集めた燃料と水を使って自分で火を起こして、それで自分でランチを作る、そういうツアーをやっています。もう4年ぐらいやっていますかね」

●どんな道具を持っていけばいいんですか? 

「それは全部こちらでお貸し出しするんですが、先ほどの浄水器とか、あと拾った燃料でお湯が沸かせるヤカンがあるんですね。ちょっと特殊な形をしているんですけれども、ガスとか使わなくて、調達した燃料で沸かせるヤカンと、あと火が起こせるナイフ、それらをお貸しします。これ、どなたでも時間さえかければ(できます)。今までできなかったって人はいないですね」

●参加者の皆さん、どんな反応されていますか? 

「やっぱり防災っていうものに対しての意識も変わると。いわゆる何を持っておくべきかっていう意識自体が変わるとおっしゃる方が多いですね。あと百聞は一体験にしかずというか、やっぱり体験しておくことがすごく大切なことだっていう風に皆さんおっしゃいますね」

写真協力:寒川 一
写真協力:寒川 一

●防災という観点から、キャンプの初心者の方にアドバイスするとしたら何かございますか? 

「そうですね。せっかくキャンプを始めたということであれば、きょうお話ししたような、テントに泊まって美味しいご飯を食べてっていうのも、もちろんキャンプの楽しみ方だと思うんですけれども、自分の力で例えば、燃料を探してみるとか、浄水をしてみる、火起こしができるみたいな、これ逆に言えば、お家の中だとなかなか体験できないことなんですよね。
 それを是非キャンプで、自分の力で生きる何か方法をしっかりと身に付けていただきたいなと思いますし、その分やっぱり自然を楽しんでいただきたいというか、自然から色んなものが得られるんだっていうことを知っていただきたいですね」

●改めてこの本『新時代の防災術』の読者の方に、いちばん伝えたいことは何ですか? 

「きょう色々お話ししましたけれども、実際アウトドアを楽しむ、道具を使いこなすっていう話もしましたが、何より僕が今回の本でいちばんお伝えしたかったのは、技術と道具をさらに人の心がそれをうまく使いこなすんだよというマインドの部分ですね。

 今、アウトドア人口って非常に増えていますから、そのアウトドアをやる人たちがそういうそのマインド、マインドっていうのはもっと分かりやすくいうと、災害時には人助けをしようっていうことですね。自分が持っている道具とか技術をちゃんと自分自身にもちろん使って、自分自身プラス人に使えるっていう、自助と共助っていう言葉になるんですかね。それが個人ができるっていうことです、アウトドアであれば。

 それを多くの人が実際に実行できるようになったら、人間がライフラインになれるんじゃないのかなっていうことですね。ライフラインは外側からあるものですけれども、アウトドアをうまく活用すれば、人そのものがライフラインになれると僕は信じています。是非そういう方向に皆さん来ていただきたいなと思いますね」


INFORMATION

キャンプ×防災のプロが教える 新時代の防災術
〜アウトドアのスキルと道具で家族と仲間を守る!


『キャンプ×防災のプロが教える 新時代の防災術〜アウトドアのスキルと道具で家族と仲間を守る!』

 寒川さんが監修されたこの本にはきょうご紹介できなかったお話で、例えば、避難を強いられた時に、温かいものを食べるとモチベーションにつながるとか、極力、水を使わずにジッパー付きの保存用ビニール袋でご飯を炊く方法など、緊急時に役立つアイデアやヒントが満載です。寒川さんが使っている非常用の持ち出し品なども写真入りで解説。どんなものを備えればいいのか、明確に見えてくると思います。もしものときの心強い味方になる一冊! ぜひ参考になさってください。学研プラスから絶賛発売中です。

 また『焚き火の作法』という新刊が9月末に同じく学研プラスから発売予定です。

焚き火の作法

 詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎学研プラスHP:https://hon.gakken.jp/book/2380158500

 寒川さんのイベントや最新情報についてはFacebookをチェックしてください。

◎寒川 一さんfacebook:https://www.facebook.com/hajime.sangawa

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