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「世界は目覚めなければいけない」〜第76回 国連総会〜SDGsの行方

2021/10/17 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは先月、ニューヨークの国連本部で開幕した「第76回 国連総会」を特集! ゲストは、国連の活動全般に関する広報活動を行なっている国連広報センターの所長「根本かおる」さんです。

 根本さんにご登場いただく前に、国連とSDGsのおさらいをしておきましょう。

 国連は国際の平和と安全の維持、人権の擁護と推進、経済社会開発 の推進の三本柱に沿って、多岐にわたる活動を世界中で行なっています。そして国連総会は、すべての加盟国によって構成される国連の主要な機関のひとつで、現在の加盟国数は193カ国となっています。

 国連サミットで2015年に採択されたのがSDGs。「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語では「持続可能な開発目標」。

 私たちがこれからも地球で暮らしていくために、世界共通の目標を作って、将来世代のことも考えて、地球の資源を大切にしながら、すべての人にとって、よりよい社会を作っていこう、そのための約束と言えるのがSDGsなんですね。

 設定されている目標=ゴールは全部で17。その範囲は飢餓や貧困、気候変動対策、経済成長、そしてジェンダーに関することまで、いろいろな課題が入っています。

 SDGsの前身MDGs「ミレニアム開発目標」との大きな違いは、SDGsの場合、国や自治体に加え、民間企業や一般の人々も取り組むこと。そして開発途上国だけでなく、先進国の課題解決も含まれていることなんです。

 そんなSDGsの17の目標は2030年までの達成を目指していますが、世界各国の状況は、果たしてどうなんでしょうね。きょうはおもにSDGsの動向、気候変動、そして食料問題について、根本さんに解説していただきます。

根本かおるさん

「警鐘を鳴らすためにここにいる」

※それでは根本さんにお話をうかがっていきましょう。今回、国連総会の一般討論の冒頭で、グテーレス事務総長がかなり強い口調でスピーチをされたと聞いたんですが、そうだったんですか?

「国連総会、第76回の会議は9月14日から始まりました。そしてその1週間後の21日からのおよそ1週間が、世界の首脳が国連に集結して演説合戦をするというハイレベル・ウィークだったんですね。日本の国会で言えば、所信表明演説があって、代表質問があってということになりますけれども、そういった国連外交の花形的な1週間でした。

 その一般討論演説の冒頭、国連事務局のトップ、アントニオ・グテーレス国連事務総長が演説をしたんです。世界の動向について、”私は警鐘を鳴らすためにここにいるんだ。世界は目覚めなければいけない。世界は誤った方向にいっている”と言って、非常に強いメッセージを投げかけたんです。

UN photo Loey Felipe
UN photo Loey Felipe

 その背景には、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行があって、物凄いスピードでワクチン開発があって、ワクチン接種が始まっていますけれども、蓋を開けてみるとそのほとんどが豊かな国、あるいはワクチンを製造・開発している国々での接種であって、途上国を中心とした低所得国に回っているワクチンの割合というのは、全体の0.3%にしか過ぎないという現状があるんですね。物凄い格差です。

 また、貧富の格差も拡大しています。気候変動も人類存続の危機というレベルぐらいに脅威が高まっています。そして紛争も増えて長引いていると。そういう状況の中で、世界は目覚めなければいけないと警鐘を鳴らしたんですね」

●このままいくと、ますます誤った方向にいってしまうということですよね。

「千葉県も2年前に大きな台風被害がありましたよね。そして毎年のように、非常に大きな規模の風水害が日本でも起こっています。これは明らかに気候変動由来で、ここまで強くなって、そして頻度が上がっているわけなんですね。こういった大きな気候災害が起きると、それまで積み上げてきた、経済活動であったり、人の営みというものがいっぺんに吹き飛んでしまいます。

 余裕のある人たちは、自分の足で立っていられますけれども、非常に弱い立場にあるギリギリの生活をしている人たちは、ひとたまりもありません。それからこういった風水害が起きた時にスラムなども直撃を受けます。そこに住んでいるのはやはり弱い立場の人たちです。そういったことは日本も他人ごとではない、まさに自分ごとだと捉えなければいけないと思いますね」

UN photo Mark Garten
UN photo Mark Garten

SDGs報告書が示す危機的状況

※先日、SDGsに関する国連の報告書が公開されました。17の目標ごとに進捗状況がイラストや図などをまじえ、表示されていますが、新型コロナウイルスの感染拡大が多くの目標に深刻な影響を与えていることがわかりました。根本さんはこの報告書をご覧になって、どう思われましたか?

「新型コロナウイルス感染症の大流行が始まる以前から、SDGsの2030年までの達成の目処というのは全く立っていなかったんですね。それが新型コロナウイルス感染症がここまで流行してしまって、さらに達成が遠のいてしまったという現状があります。

 わかりやすい例が飢餓だと思います。世界の飢餓人口というのは2010年代に入って、ずっと減ってきたんですね。それが後半に入ってから、残念ながらまた増えてきています。

 その背景には、紛争が長引いている。それから気候危機の影響で干ばつや洪水があって、その直撃を受けている。そういったことがあったんですが、新型コロナウイルス感染症が大流行して、人が思うように(畑を)耕せなくなった。あるいは、物が実ってもそれを収穫できない。あるいは物流という形で運べない。色々な要因があって、飢餓人口が2019年から20年にかけて1億人以上、一気に増えてしまったんです。

 これで、世界で最大8億人を超える人たちが飢餓に直面しているという状況になりました。飢餓人口の増加率というのは1年間で20%も増えたんですね」

※この番組としてはやはり気候変動に関する目標が気になりました。SDGsの報告書に「気候変動は続いていて、ほとんど収まっていない」と書かれていたんですが、そうなんですか?

「8月に、”IPCC”という世界の第一線で活躍している気候科学者による、国連の気候変動に対する政府間パネルというネットワークが報告書を出しました。アントニオ・グテーレス事務総長に言わせると、人類に対しての赤信号だと称しているんですね。

 パリ協定が最大限の努力目標としている(世界の平均気温上昇を)1.5℃上昇未満に抑えるということは、残念ながらできなくなっていると。どんなに頑張っても一度は1.5℃上昇を超えてしまうんですね。しかしながら、あらゆる国が温室効果ガス削減に取り組めば、この1.5℃上昇を超えた時期というのを短く抑えて、1.5℃上昇未満に抑えることができる。手をこまねいていれば、4度上昇まっしぐらと。

 9月には、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局が、これまでに表明されている温室効果ガス削減目標を足しこんで、どれくらいに抑えることができるのかを割り出しました。残念ながら、本来減らなければいけない温室効果ガスが、2030年に今と比べて16%増えてしまうという状況となっています。このままでは2.7度上昇の道をまっしぐらに進んでいます。

 これは個人的な努力を積み上げるだけではもう間に合いません。社会の仕組みを根本的に変える。エネルギー構成、それから建築物の建築方法、あるいはその食のあり方、交通手段、こういった社会の仕組みを根本から変えることをしなければ間に合いません」

COP26〜今こそアクション!

※今月末からイギリスのグラスゴーで気候変動に関する国際会議が開かれます。正式名称は「国連気候変動枠組条約締約国会議」通称COP(コップ)。26回目を迎える「COP 26」に根本さんが期待されていることはなんでしょうか。

「やはり危機感を持って、2050年の脱炭素(社会の実現)、そして2030年の(温室効果ガス)45%削減、それを確かなものにする。美辞麗句、そして美しい演説はいりません。欲しいのはアクションです。

 そして、豊かな国は自国で対策を取ることができますけれども、温室効果ガスの排出にほとんど寄与していない小さな島国などは、地球温暖化で北極圏、南極圏の氷が大きく溶けて海面上昇が起こると、その影響をまず受けることになります。

 温室効果ガスを排出している大国のしわ寄せを受けるのはこうした国々です。自分たちの国力だけで対策を取ることができない国々に対し、国際協力として、そして排出をしてきた大国の責務、責任として、気候変動対策への資金的な援助、それが必要とされています」

BTS、国連総会でスピーチ!

UN photo Loey Felipe
UN photo Loey Felipe

※今回、国連総会で「SDGモーメント」という会合がありました。根本さん、これはどんな会合だったんですか?

「SDGモーメントは国連総会のハイレベル・ウィークの期間中に、SDGsの推進の気運を高めようということで、SDGsに特化した会合です。

 今年は韓国の人気アイドルグループのBTSが、若者代表としてスピーチをしました。
 若い人たちが、新型コロナウイルス感染症の影響を非常に深刻に受けていると。学校に行きたくても行けない。健康な生活が送れない。メンタルへのダメージも受けてしまう。様々な打撃を受けているわけなんですけれども、決して若者たちは”ロスト・ジェネレーション”ではない。未来を切り開く可能性を持った”ウェルカム・ジェネレーション”なんだと。そういった若い人たちに向けた前向きなメッセージを(BTSのメンバーは)スピーチで伝えてくれました。

 そして彼らの大ヒット曲で『Permission to Dance』という曲がありますけれども、これを国連本部の敷地内で撮影をし、披露してくれました」

●私もBTS大好きなんですけれども、若い方々がSDGsなどに興味を持ってくれる、いいきっかけになったんじゃないかなって思ったんです。

「そうですね。#国連総会、#SDGmoment、こういった言葉が、日本でもTwitter、それからYahooのトレンドワードに入ってました。こういったことは私の知っている限りありません。日頃、国際的な課題、あるいは国連に関心を持ってくれている人たちだけではなくて、そういったことに日頃は振り向いてくれなかった人たちも、BTSがきっかけになって関心を持ってくれたというところがあります」

●国連本部で撮影された「Permission to Dance」の動画も、少なくとも私5回は見たんですけれども、スーツ姿ですごくかっこよかったです。なかなか国連本部の中を見る機会もないですし、改めて日本でもこういった方々がいらっしゃると、もっと広まるかなと思うんですけれども・・・。

「ピコ太郎さん来ましたよ」

●あ〜! そうですね! 

「ピコ太郎さんは“PPAP SDGバージョン”を国連で披露しました。それからハローキティも国連とSDGsを広めるキャンペーンに協力してくれていまして、国連でお披露目のパフォーマンスをしてくれましたよ」

(*ピコ太郎さんは2017年の国連総会に登場し、話題になりましたね)

人と地球の健康はひとつ!

※今回、国連総会で「食料システムサミット」がありました。これはどんな目的で開催されたんですか?

「食料というのは生産から、加工、流通、消費、廃棄と非常に裾野の広い産業ですよね。この裾野の広い”食”をテーマにして、すべてをシステムとして捉えて、これを見直す。SDGsの2030年までの達成に拍車をかけようと、そういう目的で開かれたサミットなんですね」

●フードロスの問題も絡んできますよね?

「もちろんです。それは消費のところですね。消費ももちろん大切なんですけれども、生産、加工、流通、消費、そして廃棄と全部を見る。そして気候変動にも非常に関わっているんです。

 食は生産部門だけで、世界全体の温室効果ガス排出の4分の1を占めています。そして、川上から川下の全部を見ていくと、温室効果ガス排出の3分の1を占めています。食のシステムのあり方を変えるということは、気候変動対策にもなるわけです」

●どのように変えたらいいのでしょう?

「それはやはり環境負荷の少ない生産の仕方、加工の仕方、流通の仕方に変えていく。それから途上国などでは、生産してから流通に回るまでのところで、多くの食料が無駄になっているんですね。効果的な倉庫のシステムがないとか、そういったことも関係しているんですけれども、そこを改善していくと。

 先ほど私は、饑餓人口が8億人を超えたと申し上げましたけれども、実をいうと、世界人口78億人の胃袋を満たすだけの食料はあるんです。あるんですが、豊かなところにいき過ぎて、必要としているところにはいっていない。無駄もたくさんある、ということで、饑餓人口が生まれてしまっているんですね。

 それから、気候変動と食料不安というのは、負の循環でつながっています。気候変動があって干ばつがある、あるいは洪水がある、あるいは水不足がある。そうすると十分な収穫がない、それが人々をさらに貧困化させる、食料が手に入らない。そして食料がなくなると、食料価格が上がる、貧しいと買えない。ということで、負のスパイラルになるんです。

 それをポジティブなスパイラルに変えていかなければいけないと。そのためには人の健康、地球の健康を別々に考えるのではなく、それは”ひとつの健康”なんだと。人と地球の健康をつなげて考えて、人と地球は一蓮托生だと考えて、両方の健康を考えていくことが必要なわけですね」

UN photo Loey Felipe
UN photo Loey Felipe

自分ごととして取り組む

※根本さんは日本国内でSDGsの普及活動を行なっていらっしゃいます。今はどんなことにいちばん力を入れてるんですか?

「SDGsの認知ですけれども、おかげさまで今、平均で半分以上の人たちが何らかの形でSDGsのことを聞いたことがある、そういう段階に達しました。また、小学校、中学校の学習指導要領にSDGsが盛り込まれています。それから大学などでも教えるようになっていると。そういったことを受けて、若い世代では認知度はもう7割を超えているんです。認知拡大のレベルは過ぎたと言えます。

 これからは認知拡大ではなくて、アクション! アクションを加速、そして拡大していくと。そしてSDGsの実現に効果、インパクトの大きいアクションって何なのか。やはり社会の仕組みを根底から変えることで、達成につなげていくということが、今私たちのいちばんの課題ですね」

●SDGsの17の目標達成は2030年までですよね。

「あと9年しかないです」

●そうですよね。私たち一般市民が出来ること、やるべきことはどういったことですか?

「まずは知ることですよね。こうして番組で取り上げてくださること、大変ありがたいと思っています。知ったからにはアクションを起こし、そのアクションをもっと広げていく。そして、周りの人たちにも働きかけて、広げていく。ただ、個人で積み上げても、残念ながら限りがあります。

 やはり社会の仕組みを変えられるように、選挙に行きましょう。それからエネルギーとか食のあり方とか、消費、廃棄の仕方、そういった影響の大きい分野に対して、“物を言いましょう! 働きかけましょう!”ということで、どうやったらその範囲を広げていけるのかを、地域の方々と一緒に考えてもらえればと思います」

●ベイエフエムは、千葉県のメディアとしては初めて「SDGメディア・コンパクト」に加盟しました。今後、SDGsの目標達成のために、根本さんがメディアに期待されることはどんなことですか?

「メディアとして、やはりSDGsを多くの人たちに知ってもらって、自分ごととして考えてアクションを起こしてもらう。これをひとつの幹として考えていただきたいんですね。どうしたら効果、そしてインパクトの大きな運動にしていくことができるのか。旗ふり役になれるのもメディアだと私は思うんですね」

●では、最後に改めてリスナーのみなさんに伝えたいことを教えてください。

「リスナーの方々は、環境というアングルからSDGsに関心を持ってくださった方が多いのかなと思うんですけれども、SDGsというのは環境、社会、そして経済、この3つの分野を統合的に捉えて、私たちの暮らし、そして権利をぐいぐい引っ張っていってくれる、2030年までに、より持続可能で、より平等な、包摂的な社会を一緒に目指そうという、大変野心的な世界目標です。

 環境の入り口で関心を持っても、それは例えば格差であったり、あるいは人の権利であったり、ジェンダー平等であったり、子どもに対する暴力の課題であったり、そういった社会的な側面、それから貧困というような経済に関する側面につながっていきます。
 環境を入口に、でもそこで止まらずに社会、及び経済まで考えながらSDGsを見守って、そして自分ごととして取り組んでいただければと思います」


INFORMATION

 国連広報センターのオフィシャルサイトをぜひご覧ください。
 SDGsの進捗状況に関する報告書は、どなたでも見られます。トップページのお知らせ欄に「持続可能な開発目標(SDGs)報告2021」という見出しがありますよ。日本語版でイラストや図も多くあって見やすくなっていますので、ぜひ確かめてください。

◎国連広報センター:https://www.unic.or.jp

◎持続可能な開発目標(SDGs)報告2021:https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_report/

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