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リヤカーを引いて、世界5大陸単独踏破!〜小さな一歩を積み重ねて77500キロ!

2021/11/21 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、徒歩旅行家「吉田正仁(よしだ・まさひと)」さんです。

 吉田さんは1981年、鳥取県生まれ。2009年から、ユーラシア大陸の横断を皮切りに、北米大陸、オーストラリア大陸の横断、東南アジアの縦断、その後、2014年からアフリカ大陸、2015年からは南米・北米大陸の縦断に挑戦し、たくさんの困難を乗り越え、リヤカーを引いて5大陸の単独踏破を成し遂げました。およそ10年かけて歩いた距離は全部で77500キロ! 地球一周がおよそ4万キロなので、2周分に近い距離になるんです。

 きょうはそんな吉田さんに、時速5キロの旅で出会った人々や、忘れられない絶景など、お話しいただきます。

☆写真協力:吉田正仁

吉田正仁さん
写真協力:吉田正仁

ひとつのことをやり遂げたい!

※吉田さんの新しい本が『歩みを止めるな! 世界の果てまで 952日リヤカー奮闘記』。この本は南米大陸の南の端から、北米大陸の北の端まで歩いた旅の紀行文です。
 やはり気になるのが、どうして歩いて世界をまわってみようと思ったのか。何度も聞かれていると思うんですけど、大陸を横断するような旅に挑戦しようと思ったのは、どうしてなんですか?

「25歳くらいになって、自分の人生を振り返った時に、何かひとつのことをやり遂げたっていう経験がなかったんですね。スポーツや勉強も何をやっても中途半端で、自分の人生って何だろうと考えていた時期がありました。私の場合は何かひとつのことをやり遂げたいと思って、元々旅好きだったというのもあるんですけど、どうせだったら歩いて、中国からユーラシア大陸の最西端のロカ岬まで自分の足で歩いてみようと、それがきっかけでした」

●その発想があっても、実際実行に移すのはなかなか大変なことなんじゃないですか? 

「そうですね。まずお金がなかったので、2年ぐらい仕事をして、お酒もやめてタバコもやめて、お金をしっかり貯めました。あと装備品ですね。テントや寝袋、リアカー、そういったものは色んな企業にお願いをしたんです。会社の昼休みにひとり、車にこもって、ずっと営業の電話をかけて、装備の支援をいただく交渉をしたりとか。ひとつひとつ自分だけの力で、あまり誰かにお金とかで頼ることもなくやりたいって思いがあったので、資金に関しても全部自己資金でやりました」

●旅の相棒はリアカーですよね? どうしてリアカーなんですか? 

「歩くとなると衣食住、どこにでもホテルとか宿があるわけではないので、テントも必要ですし、無人地帯では食料も必要になって、衣食住すべて揃えたら、時には50キロとかになるんです。それらは全部背負って歩くと足の故障にも繋がると思いますし、そういうリスクがあって、荷物の運搬手段として、動物も考えたんですけど、やっぱり国境を越える時に何かしらのトラブルが生じたりとか、途中で死なれても困りますし、そういうこともあって色々と考えていき着いたのがリアカーというものでした」

写真協力:吉田正仁

●野営のために必要な道具を全部詰め込むんですよね。

「そうですね。全てないと、野営に必要なものもですし、タイヤのパンク修理とかそういう道具や工具、そういったものも必要です」

●いちばん重い時で何キロくらいになるんですか? 

「食料や水に左右されるんですよ。いちばん長い時で320キロとか無補給地帯、水も食料も補給できないところもあるんですけど、そういうところでもいちばん重い時で水だけで32リットル、32キロですね。あと食料も10日分とか詰め込んで、いちばん重い時で100キロを超えるぐらいですね」

(注:大陸を横断するような旅に出ようと思ったのは、今までの人生を振り返って、ひとつのことをやり遂げたことがなかったから、というお話でしたが、大陸に挑戦する前に、バックパッカーとしてアフリカを旅したときに、観光地や大きな街を巡って、物足りなさを感じたそうです。もっと小さな村や街を訪れ、現地の人たちと触れ合いたい、という思いも大陸に挑戦する理由だったそうです)

アースウォーカー「ポール・コールマン」との出会い

※吉田さんの本を読んでいると、南米大陸の旅でもいろんなかたたちと出会っています。中でも、パタゴニアの小さな町に暮らすポール・コールマンさんとの出会いが興味深いんです。ポールさんは「アースウォーカー」と呼ばれ、世界を歩いて旅をしながら、100万本以上の木を植えた人として知られています。ポールさんとはどうやって出会ったんですか?

「私がポール・コールマンという名前を知ったのは、日本を出る前の話なんですね。登山とか極地探検とか、結構色んな冒険の歴史ってあるんですけど、なかなか歩いて大陸を横断したっていう前例が、記録として文章として残っているかというとそうでもないんです。インターネットで歩いている人について調べていたら、ポール・コールマンっていう名前が出てきて、それが最初のきっかけですね。100万本の木を植えながら世界4万キロを歩いた男がいると、それが彼を知ったひとつのきっかけだったんです。

 そして、チリを歩いていた時に、旅行者だったと思うんですけど、”ラフンタっていう町に木を植えながら(地球を)歩いた男がいるよ”と(教えてもらって)、その情報だけでポール・コールマンだと(わかって)すぐに思い立って、会いに行きました」

写真協力:吉田正仁

●実際、会っていかがでしたか? 

「やっぱり普通に考えて、歩いて旅をするって、最初できるんだろうか? って、経験も知識も何もなくて、大きな不安がやっぱりあったんですけど、ポール・コールマンとか、あと何人か歩いて(旅をして)いる人がいて、そういった人の前例が不安とか迷いがあった自分の背中を後押ししてくれました。

 それがあったのは確かなので、彼と出会えたことはすごく幸せだったと思います。彼は今、自給自足に近いような生活をしていて、元々荒地だったところ、そこにも木を植えて、今は野鳥や虫の、色んな生物の楽園になっているんです。

 彼も”ひとつひとつ目の前のことをやっていくことは、歩いているのと同じだ”というような話をしてくれて、歩き終えた時も自分の生きかたを、進む道を同じように一歩一歩行くんだよっていうことを教えてくれたような気がしました」

(注:ポール・コールマンさんの奥様は実は、活動を共にしている日本人の「菊池木乃実(きくち・このみ)」さんというかたです。菊池さんはポールさんの本も出していらっしゃいます)

旅が交わる砂漠のレストラン

写真協力:吉田正仁

●南米のペルーの砂漠にポツンとレストランがありましたよね? 

「それもすごく印象的ですね。ポール・コールマンと同じように自分の背中を後押ししてくれたかたのひとりが、池田拓さんっていうかたなんですね。池田さんの名前を知った時には、彼は既に亡くなっていて、もちろん面識はないんですけど、池田さんが南米(大陸)を縦断したということはもちろん自分の頭にもあって、南米を実際に歩きながら、池田さんもこういう場所を歩いたのかなと想像しながら歩いていたんですね。

 ペルーの砂漠地帯、首都リマの北300キロぐらいのところに、そのレストランはありました。レストランに着く3日前ぐらいに、1台の車が止まって、おじさんがこの先に家があるから寄って行けよと、そういうこと言ってくださったんすね。
 住所は、1キロ毎にマイルストーンっていうんですかね、距離の数字が書いてあるんです。337とかそういう数字だったと思うんですけど、くしゃくしゃのレシートに337キロって書いて渡してくれて、実際3日ぐらいでそこに辿り着いた時、レストランが現れたんです。

写真協力:吉田正仁

 そこが彼のレストランで、この砂漠地帯を旅する、自転車で旅する人もいるし、バイクで通り過ぎるような人もいるんですけど、そういう人を善意で招いて食事を与えてくれるかたなんです。そこを訪れた人のゲストブックっていうんですかね、記録で名前を書いていたり、色んな感想を書いていたり、そういうものが5冊くらいありました。それを渡されて、ページをめくった瞬間にもうビビビっと、稲妻が走るような衝撃があって、そこには池田拓さんの書き込みがあったんですね。衝撃的でしたね」

●吉田さんにとっては、池田拓さんは憧れに近いような存在ですよね?  

「そうですね。歩くきっかけを与えてくれた、直接面識はないんですけど、間接的にきっかけを与えてくれたようなかたで、こういう形で自分の旅と池田さんの旅が交わるということに感動を覚えました」

●すごいですね。ゲストブックには色々な歴史が刻まれているんですね。

「そうですね。グレートジャーニーっていう旅をされた関野吉晴さんっていう探検家もいらっしゃるんですけど、池田さんの数ページあとに関野さんの書き込みがあったり、個人的にいちばん尊敬しているカール・ブッシュビーっていう30年くらい歩き続けている人がいて、彼の書き込みもあって、こういう形で旅路が交わる、重なることにすごく嬉しく思いました。

 池田さんの話には後日談があって、日本に帰って本を出したあとに、知り合いの知り合いくらいを辿って、池田さんのお父さんも亡くなられているんですけど、お姉さんがまだお元気で、お姉さんに連絡を取って、本と池田さんの(ゲストブックの)書き込みの写真を送らせていただいて、喜んでくださったと、そういうことがありました」

●旅が繋いでくれた絆っていう感じですね! 

「そうですね」

(注:お話に出てきた吉田さん憧れの冒険家「池田拓」さんは、1988年から3年かけて、徒歩で北米大陸の横断と南米大陸の縦断を成し遂げた人です。残念ながら1992年に26歳の若さで亡くなっています)

忘れられないペルーの絶景

※南米大陸の旅で出会った未だに忘れられない絶景があれば、教えていただけますか?

「絶景ということであれば、ペルーにワスカラン国立公園というところがあるんですね。ちょうどペルーの首都リマに着いたあと、3週間くらい足を止めていたんです。その時に、リマの北東300キロくらい離れているんですけど、そのワスカラン国立公園は自分の歩くルートとちょっとずれるので、バスでワラスという街まで行ってトレッキングをしたんですね。テントとか寝袋を持って山を歩いて。

 それもすごく息をのむような景色の連続で、満足のいくものだったんですけど、トレッキングを終えて、バスに乗ってワラスに戻る時に、峠があって、峠を超えた瞬間、目の前にもう信じられないような景色が現れたんですね。6000メートル級の山が連なっていて、全部氷河を抱いているような山で、眼下にはターコイズブルーの湖が見えて」

●へぇ〜〜! 

「これ凄いな! と思って、トレッキングを終えて、一回リマに戻るんですけど、その景色を忘れられないんですね。戻りたいなって思って。でもペルーのリマからずーっと北を目指す当初の予定では、海抜0メートルの海岸線をずっと歩くだけなんです。ワラスに戻るにはアンデスを越えないといけなくて、4000メートルの峠を3つくらい越えないといけないんですよ。

 そういうことを考えていたら、戻りたくないという気持ちもあるんですけど、キツいのは目に見えているから。でも帰国後に、例えば今もなんですけど、どこがいちばん綺麗でした? と言われた時に、ワスカラン国立公園って堂々と答えるには、やっぱり自分の足でそこをリヤカーを引いて歩かないといけないなと思って、その4000メートルの峠を3つ越えて、2週間ぐらいかけて戻って、バスから見た景色と同じものをリヤカーと一緒に見ることができました」

写真協力:吉田正仁

会社務めは、新しい冒険!?

※世界5大陸をおよそ10年かけて踏破して、すでに3年近く経ちました。現在はモンベルの社員として仕事をされていますが、吉田さんの旅は次のステージに入っていると言ってもいいのでしょうか。

「そうですね。新しい冒険ですね、今の仕事は」

●おお〜! それはどんな冒険なんですか?

「未知ですね!(笑)。今の業務も全くの未知なんですね。仕事を教えてくださるかたは“北極圏を歩くほうが大変です”って言うんですけど(笑)」

●あははは(笑)

「僕は今の仕事のほうがよっぽど大変かな〜と思っています」

●ガラッと、生活も変わりますよね。

「はい」

●12月11日に開催されるモンベル主催の」冒険塾」で講師を務めることになっていますけれども、どんな内容になりそうなんですか?

「自分としては、踏み出す最初の一歩、踏み出すきっかけを与えるようなお話ができたらなと思っています。旅で歩く理由はもちろん、色んな国々でのエピソードもちょっとお話できたらと考えています」

●本を出版されるということは、人に影響を与える立場になられていると思うんですけれども、世界の旅で得たこと、感じたことで、どんなことをいちばん伝えたいですか?

「自分が伝えられること、いちばん、唯一にして最大のことっていうのは、どんな小さな一歩でもそれを積み重ねることで、夢とか目標とか、そういうものに辿り着く、近づくことができるっていうことかなと思います。

 歩いてきた距離が77500キロ、年月は10年くらいなんです。その77500キロとか、10年っていう数字だけを見たら、すごく大きなものに思われるかもしれないんですけど、結局やってきたことって、目の前の一歩を着実に確実に刻んでいくことなんですね。その結果そういう大きな数字になっていたということなので、そういうことを伝えられたらなと思っています」


INFORMATION

『歩みを止めるな! 世界の果てまで 952日リヤカー奮闘記』


『歩みを止めるな! 世界の果てまで 952日リヤカー奮闘記』

 南米・北米大陸を単独踏破したときの紀行文。奇跡的で印象的な出会いの数々や、大自然の過酷さや絶景など、読み応えのある話が満載です。ぜひ読んでください。産業編集センターから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎産業編集センターHP:https://www.shc.co.jp/book/15058

「モンベル冒険塾」開催!

 吉田さんが講師として登壇する「モンベル冒険塾」が12月11日(土)の午後2時から開催されます。講師の顔ぶれは吉田さんのほかに、ヨットで太平洋往復単独横断を達成した辛坊治郎さん、冒険作家の佐藤ジョアナ玲子さん、そしてモンベルの辰野会長です。今回はモンベル大阪本社でのリアル開催と、オンライン配信となっています。参加者の募集は11月30日まで。参加費など、詳しくはモンベルのオフィシャルサイトをご覧ください。

◎モンベルHP:https://www.montbell.jp/generalpage/disp.php?id=590

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