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生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで
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2021年12月のゲスト一覧

2021/12/26 UP!

◎原田祐介(プロの猟師)
捨てられる獣たちの命〜有害駆除の現状と、ある猟師の挑戦〜』(2021.12.26)

◎GAKU-MC(ラッパー)
あなたの暮らしにキャンピングカーを〜人生を豊かにしてくれる魔法の車!?』(2021.12.19)

◎一日一種(イラストレーター)
面白いな、可愛いな、ちょっと見てみよう〜漫画がいざなう生き物の世界』(2021.12.12)

◎松橋利光(生きものカメラマン)
生き物の宝庫、奄美大島〜自然と人の営みが近い島』(2021.12.5)

捨てられる獣たちの命〜有害駆除の現状と、ある猟師の挑戦〜

2021/12/26 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、プロの猟師「原田祐介(はらだ・ゆうすけ)」さんです。

 原田さんは1972年、埼玉県生まれ。20年ほど外資系のアパレルメーカーに勤めたあと、唯一の趣味だった狩猟を職業にする、つまりプロの猟師として生きていくことを決意。まず、山を知るために林業の会社で働き、2015年に「猟師工房」を設立。2019年には君津市に「猟師工房ランド」をオープン! 駆除されるイノシシやシカなどの有効活用、そして、年々高齢化している猟師さんの後継者問題などを発信されています。

 きょうはそんな原田さんに、有害駆除の現状などをうかがいながら、命の尊さについて考えたいと思います。

☆写真:原田祐介さんの著書「週末猟師」(徳間書店)より

人間の身勝手

原田祐介さん

●先頃出された本『週末猟師』には、猟をするというのは究極のアウトドアのひとつという文章もありましたけれども、山の中でソロキャンプをして火を起こして、そうやって夢中になってたどり着いた先に、週末猟師という選択肢があるという風に載っていましたよね。猟師の生活ってこういう感じなんだなって、未知の世界を覗いている気分ですごく興味深かったです!

「ありがとうございます」

●副題にある「ジビエ・地域貢献・起業」、そして「充実のハンターライフの始め方」という言葉が、この本の内容を表していると思ったんですけれども、中でも原田さんがいちばん重点を置いているのはどの項目なんですか? 

「そうですね〜。一生懸命、趣味で始まって、極まってくると地域貢献のための有害駆除なんていう、増えすぎた獣を獲って農業被害を減らしたりするような取り組みも行なっているんですが、いずれ獣を捕獲するかたが減ってくる中で、これから獣が増えすぎて、自然に非常に負荷がかかるような状況が出てくるんですね。そこをなんとかプロとして携わって、未来の日本のためになるような取り組みに、最後はつながっていく、そこがいちばん申し上げたいことだったんです」

●ジビエは専門のレストランがあったりというイメージはありますけれども、国内で獲れたジビエのお肉はどの程度、流通しているんですか? 

「これが非常に衝撃的な数字なんですけど、今国内で獲られる獣の数、有害獣として駆除される数が、年間120万頭だそうです。最近ジビエがブームになって、おっしゃった通り専門のレストランができたり、テレビ番組なんかで取り上げられたりする機会があるので、ブームにはなっているんですが、120万頭のうち、ジビエとかジビエのペットフードとかで、利活用されている数値が9%なんです」

●一桁? 

「残りの100万頭以上はどうなっているか・・・どうなっていると思います?」

●捨てられてしまっているということですか? 

「そう、人間の身勝手で農業被害を減らすと称して駆除されて、100万頭以上が今ゴミとして残念ながら捨てられている現状があります」

●千葉はどういう状況なんですか? 

「千葉は令和元年度の数字、これが最新の数値なんですが、年間5万頭の獣が獲られています」

●そのうち、ちゃんとお肉として活用されているのはどのくらいなんですか? 

「1500頭」

●え!? そうなんですね。それ以外は?

「残念ながら今のところ、猟師さんが自分たちで食べる以外はゴミとして処分されます。生きものを殺めた以上、日本人の道徳観からしたら、やっぱりきっちり最後まで、いただきますの精神で、きちっと食べて供養するっていう方向に持っていかなければいけないんですけど、そんな状況になっていないのが実情です」

千葉は埼玉の10倍!?

原田祐介さんの著書「週末猟師」(徳間書店)より

※君津市で運営されている「猟師工房ランド」は、どんな施設なんですか?

「これは昭和63年に廃校になって30年間放置されていた、旧鍵原小学校っていう山の中にある小さい山学校があるんですよ。そこを君津市さんから借り受けて、リノベーションを行なって、ジビエとか狩猟のテーマパークのようなものを作ったんですね」

●そもそもどうしてそういう施設を作ろうと思われたんですか? 

「やっぱりこの現状を広く都会のかたなんかに知っていただきたいと。たまたま、房総スカイラインっていう観光道路沿いにある学校だったんで、割と外房へ遊びに行くかたなんかが観光で必ず通る道なんですよ。

 山のほうの人は獣の実情をよく見たりするので、そういうのを知っているんですけど、千葉も北部の人とか、あとはアクアラインを使って(千葉に)来る東京のかた、神奈川のかたは、なかなかそういうことを知らないんで、是非そういうのを見て感じて味わっていただいて、この問題に一石を投じられたらいいなと思って作った施設です」

●オープンした時は、君津の山はどんな状況だったんですか? 

「私、埼玉から移住してきたんですけど、数値で言えば埼玉の10倍、獣が駆除されています。埼玉も素晴らしい自然があって、山もたくさんあるんですけど、全然比べものにならないほど、千葉は獣が多くて、獣という視点から見て、いろんな被害がすごいっていう感じだったんです」

●千葉はどんな生きものが多いんですか? 

「いちばん多いのはイノシシ。ほかにシカ、アライグマ、キョンなどが今たくさん駆除されていますね」

●千葉の特徴としてはどんな感じですか? 

「特徴としては温暖な地域で、海沿いにはドングリがたくさん成ったりする木がいっぱい生えているので、大きいイノシシが増えやすい状況にありますね。やっぱりイノシシがいちばん多い」 

原田祐介さんの著書「週末猟師」(徳間書店)より

(編集部注:「猟師工房ランド」ではイノシシやシカなど、有害駆除された野生動物をきちんと処理して、食品衛生法に従って、いわゆるジビエのお肉として販売しています。

 美味しい食べ方として原田さんのおすすめは、その肉の風味を感じて欲しいということで、塩・コショウで味わっていただきたいとのことでした。また、シカのお肉はしゃぶしゃぶも、おすすめだそうですよ。

 「猟師工房ランド」ではお肉のほかに、毛皮やツノ、骨などを素材にしたキーホルダーやアクセサリーなどを元小学校の体育館を改装した、広々とした店内で展示・販売しているそうです)

原田祐介さんの著書「週末猟師」(徳間書店)より

土砂崩れは獣の仕業!?

※地元の君津で野生動物の被害が増えていることと、猟師さんの後継者問題は、関連があるんですよね?

「そこなんですよ。そこがあったんで、この本がその入り口になってくれればって思いもすごく強くて、(本に)書いているんですよね」

●どんどん(猟師さんが)高齢化してきちゃって、山に人が入らなくなってしまったら、どうなってしまうんですか? 

「もう無尽蔵に獣が増えます。獣が増えると・・・山の上のほうに獣が棲んでいるとしますよね。人間と一緒で歩きやすい道をずっと毎日歩くんですよ。で、歩いて、川に水を飲みに行ったりご飯を食べに行ったりすると、”けもの道”って言われる道ができます。

 今から20〜30年前は千葉の山もここまで獣が多くなかったはずなんです。でも今や、ひとつの山に例えば、昔は2頭しか獣がいなかったけど、今はひとつの山に20頭いる、10倍いるんですよ。毎日20頭が同じ道を行ったり来たりするのと、1頭や2頭が行ったり来たりする場合と、けもの道のほじくれ具合が違いますよね。数が多いほうがたくさんほじくれちゃいますよね。

 気候変動の影響で、ここ最近の、昔はなかったゲリラ豪雨みたいなのが、集中的にばーって雨が降るとします。掘り下がった、けもの道に雨水が流れちゃうわけですよ。昔より掘れているから、そこを川みたいに(雨水が)流れちゃう・・・。

 そうすると何が起こるかっていうと、表面の泥を洗い流す”洗掘”っていう現象が起きる。そうすると地下に雨水が染み込んで、たふたふのスポンジみたいになって、表層崩壊っていう土砂崩れが起きたりする原因にもなっているそうです」

●ただただ作物を荒らすとか、そういった獣の被害だけではなくて、土砂災害にまでつながってくるんですね。

「最近各地で起こっている土砂災害も複合要因なんだけど、獣もその原因のひとつにはなっているはずです」

●そもそもなんでそんなに獣が増えちゃったんですか?

「これはやっぱり捕獲する人が急激に減ってしまったんですね。昔はたくさん獲る人がいた。それこそ明治の頃まではニホンオオカミがいたんで、捕食するオオカミがいることによって、獣たちが神経を尖らせ、そこまで爆発的に繁殖できなかったりする現状があったんですけど、今オオカミも絶滅してしまって、捕獲従事者、趣味でやるかたも有害駆除で捕獲するかたも高齢化で減っちゃっていると。それがゆえに増えてしまったという現状もあります」

爆発的に増えている「キョン」!

※「猟師工房ランド」には、どんな方が来ますか?

「割と都会のニューファミリーとか、家族連れのかたが寄ってくれて,お子さんが毛皮とか角とか、色んなものを見て触って・・・ニューファミリーの方が多いかな」

●確かにお子さんは、ちょっと興味深いかも知れませんね。

「僕の取り組みの中で、やっぱり全くこのことに触れないで一生を終えるようなかたたちに、ちょっとでも日本の自然のことを垣間みていただけるような施設にしたいなっていう、そんな思いもあって、あの施設を作ったんだけどね」

●きょうも色々スタジオに(販売している商品を)持ってきていただきましたけれども、この毛皮は何ですか?

「これは、キョンなんですよ。聞いたことあります?」

キョンの毛皮

●あります! あります!

「最近また報道番組とかで、(キョンが)増えて東京に進出するんじゃないかなということで、うちにもすごく取材が来たりするんですけど、これ今、千葉で爆発的に増えてしまっているんですね」

●キョンは改めてどんな生き物なんでしょう?

「日本でいうと特定外来生物で、よくご存知なところではブラックバスと同じような、日本にいちゃいけない生き物です。これは勝浦にある、とあるレジャー施設から逃げ出したもので、昭和50年にそのレジャー施設が潰れたんだそうです。そこで放し飼いになっていた個体が、餌をもらえなくなったので、外にどんどん広がっていったっていうのが経緯らしいんです。今、千葉県内で4万4千頭、生息しているって言われています」

●大きさはどれくらいなんですか?

「大きさは柴犬くらい。これは中国南東部とか台湾の生き物なんですね。中国や台湾では超高級食材として、非常に高い評価を受けて流通しているようなものです」

●毛皮はすごく滑らかな美しい毛並みですね。

「シカはたくさんの種類がいるんですけど、キョンはシカの中でも毛皮が最高峰って言われています」

●艶やかですね!

「そう、キューティクルがね・・・」

●それから他の商品・・・こちらは? 

「捕獲個体をゴミとして捨てないで、ちゃんと利活用していくっていうのも、うちの社の理念の根幹となっているんですね。捕獲個体そのものも、極力余すところなく使っていきましょうっていう取り組みの中で、人間が食べられないというか、例えばイノシシも、小っちゃい、うりぼうちゃんから、100キロも150キロもある、おばけみたいな、ドラム缶みたいな個体もいるんですよ。

 大きい個体は、割と人間にはちょっと硬くて不向きだったり、あとは、可哀想なんですけど、美味しく食べるためには、血抜きっていう作業が必要で、毛細血管の隅々までの血を排出するような、特殊な絞めかたがあって、それをちょっと失敗してしまったものは、人間には血生臭くて不向きなんですね。

 硬かったり血生臭かったりするものは、逆にワンちゃんには栄養価の高いとても喜ぶご飯になるので、そういう意味で人間が食べられない、でもワンちゃんにはとてもプラスになるものを、ワンちゃんたちに手伝ってもらっているということで、ペットフードもたくさん作っているんですよね」

●なるほど〜! 

(編集部注:原田さんは君津市から委託を受け、狩猟をする後継者を育てるために「君津市狩猟ビジネス学校」を開催したり、小学生から高校・大学生に向けて、有害駆除の現状や命の尊さを伝える教室「命の授業」を行なったりされています。

 高校生向けの「命の授業」ではイノシシを解体し、お肉になる過程をあえて見てもらい、時にはまだ温かいお肉をビニールの手袋をして触ってもらうこともあるそうです。そこには原田さんの、命の尊さを伝えたい、そしてともに、日本の自然を未来に引き継いでいこうという、そんな熱い思いが込められています)

命の授業

※「命の授業」に参加された生徒さんの反応は、どんな感じなんですか?

「初めは、やっぱりちょっとギョッとした感じです。なかなか今を生きるかたたちって、それこそ、スーパーに並んでいるお肉が、どういう行程を経てお肉になるのかっていうのを知らないので・・・。

 私は49歳で、小っちゃい頃、田んぼの真ん中に住んでいたので、近所のお爺ちゃんが、ニワトリを絞めてお鍋にするのを近くで見ていたりとか、猟師さんがハトを獲ってきて捌いているのを見ていたりしてましたね。何となく生きものの生き死にとか、命のいただきかたをぎりぎり見られた世代なのかなと思うんだけど、今の小学生の親御さんなんかは、お若いからそんなことは知らないんですよ。

 だから、僕らがやっている家業がそういうことなんで、子どもとかに伝えられるじゃないですか。どうやってお肉って出来上がっていくんだろう、どうやって生きものを殺めると美味しいお肉になるんだろう、生きているものが亡くなっていくって、こういうことなんだなっていうのを、子どもたちが見てくれることによって、これはいずれ、フードロスの問題とか、食べものへの感謝とか、そういったものに・・・SDGsですよね。そういうものにつながってくると思うので、そんな感じの取り組みをしていますね」

(編集部注:「命の授業」については原田さんの本『週末猟師』にも掲載されています。ぜひご覧ください)

未来の日本のために

●改めて、この本を通していちばん伝えたいこと、最後に聞かせてください。

「はい。今、猟師も減っています。未来に向けて獣と人間がうまく共存出来るような仕組みを作るには、やはりきちっとした知識を持った猟師が、未来の日本のためには必要なので、興味があるかたがいたら、この本を読んでいただいて、本気でやるつもりがあるんだったら、猟師工房ランドに来てくれて、僕と話をしましょう」


INFORMATION

週末猟師〜ジビエ・地域貢献・起業、充実のハンターライフの始め方

『週末猟師〜ジビエ・地域貢献・起業、充実のハンターライフの始め方』

 週末にハンターとなって過ごすための基礎知識から、有害駆除の取り組み、週末猟師を体現している人たちのインタビューなども掲載。知られざる猟師の生活やリアルな現状を理解できる一冊です。徳間書店から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎徳間書店 HP:https://www.tokuma.jp/book/b592900.html

 君津市にある「猟師工房ランド」ではジビエなどの販売ほか、元小学校の広い校庭を利用して、ソロキャンパー専用のキャンプサイトも運営しています。詳しくはオフィシャルサイトを見てくださいね。

猟師工房ランド

◎猟師工房ランド HP:https://www.facebook.com/Hunter.workshop/

オンエア・ソング 12月26日(日)

2021/12/26 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1.THANK YOU / DIANA ROSS

M2. LIFE IS COOL / SWEET BOX

M3. ANIMAL / KE$HA

M4. VIVA LA VIDA / COLDPLAY

M5. Tomorrow Never Knows / Mr.Children

M6. A CHANGE IS GONNA COME / SEAL

M7. TALK TO ME / GEORGE

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

あなたの暮らしにキャンピングカーを〜人生を豊かにしてくれる魔法の車!?

2021/12/19 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、日本のヒップホップ界のリヴィング・レジェンド、ラッパーの「GAKU-MC」さんです。

 GAKUさんは東京都出身。1994年に「EASTEND × YURI」として「DA.YO.NE」でヒップホップ初のミリオンセラーを記録、紅白歌合戦の出場を果たします。99年にソロ活動をスタート。その後、音楽を通しての復興支援のイベントほか、ミスター・チルドレンの桜井和寿さんとのユニット「ウカスカジー」など幅広い活動をされています。

 また、キャンピングカーで、全国をまわるライヴ・ツアーに出たり、家族と国内だけでなく、海外を旅したり、すっかりキャンピングカーにハマっていらっしゃいます。そして先頃『人生にキャンピングカーを』という本を出されました。

 きょうはそんなGAKUさんに、人生を豊かにしてくれるキャンピングカー・ライフについてお話いただきます。

そして今回は特別に3名のかたにGAKUさんの本を直筆サイン入りでプレゼントいたします。応募方法は こちらから!
『人生にキャンピングカーを』

GAKU-MCさん

めちゃくちゃ面白くて

※GAKUさんは以前、日本全国をキャンピングカーでまわるライヴ・ツアーを行なっていました。キャンピングカーを移動手段にしたのは、どうしてなんですか?

「長いこと音楽生活をしていまして、北海道から九州まで行ったことない都道府県はすでになくて、ただ、じゃあどこに行って、いつ(ライヴを)やったのか聞かれると、ちょっとあやふやな感じになっていると。

 で、僕らミュージシャンだと公共交通機関で、飛行機で、新幹線で現場まで行って、駅から空港からライヴ会場に入って、ライヴ会場のステージと、打ち上げ会場とホテルっていう、その3点トライアングルしか知らないと。すげえもったいないなっていうのをある時思いまして、ちょっとキツくてもなるべく車で行こうっていう風に思った年がありました。

 これは今から10年くらい前なんですけど、ハイエースに機材を全部詰め込んで、九州だろうが東北だろうが行ったろ! みたいな感じでやっていたんですけど、すごくよかったんですよ! それがまず、そもそもこれいいね! やっぱり日本って点と点でつながっているよね! みたいな。

 これ、もしかして車に泊まっちゃったほうが経費的にも軽くなるんじゃないかなみたいなところから、キャンピングカーを借りてみた年があったんですよ、めちゃくちゃ面白くてそれが。全部機材を入れて、寝るのもそこ、着替えもそこ、料理もそこでやったらもう本当に楽しくて、これでしょ! みたいなことで始めたのがきっかけだと思います」

●でも飛行機とか新幹線に比べると、だいぶ時間はかかりますよね。

「まあそうなんですよね、時間は当然(かかります)。例えば福岡だったら、羽田空港からだったら1時間半くらいで行くので、大冒険しているって感じではないですけど、陸路で行くと、途中色んな街に寄ってライヴをしながら行くので、まあ1週間とか10日かけて行くことになるんですね。そうすると、やっぱり関門海峡を越えたぐらいで、うぉ〜九州入った〜! みたいな感じになるんですね。

 そうすると、ステージ中のMCとかも、やっと着いたんだよ! みたいな感じになって、僕らも感動しながら音楽ができるっていう副産物もありました。当然、足だ腰だ首だは痛くなるんですけど、でもね、それも含めての旅なんで、今のところそれが楽しくてやっていますね」

GAKU-MCさん

●どんなことが特に楽しいんですか?

「ある程度大人になって、好きな音楽とはいえ、ある種、仕事じゃないですか。なので、その仕事が終わったらさっと帰って、各自の生活になるっていうスパンで僕ら生活していますけど、やっぱりその時だけは、なんかね、修学旅行みたいな気持ちになって、バンド・メンバーと和気あいあいとした旅になるんですね。バンド・メンバーも家族を持っているやつが多いですから、そのときはなんか突然、独身みたいな感じになって、みんなで旅を作り出していくっていうのがすごく心が踊りますかね」

(編集部注:メンバー4人によるキャンピングカーのライヴ・ツアーでは4人がそれぞれ、運転手やナビゲーターの役割ほか、料理を作ったり、グッズを売ったりと、ミュージシャン以外の仕事を分担していたそうです。そういうこともあって、メンバー同士の絆が深まったそうですよ。
 また、キャンピングカーのツアーは、ファンのかたからの差し入れが、地元の食材や地酒などで基本的に食事は自炊だったので助かったということでした)

GAKU号はヒノキの香り!?

※ライヴ・ツアーで使ったキャンピングカーはどんなタイプだったんですか?

「5年前はレンタカーでやっておりました。その時はいわゆる、ザ・キャンピングカーみたいな、それも毎年変えているんですけど、メルセデスベンツがベースになった大きいものだったりする年もありましたし、普通にバンクベッドと言われていて、運転席の上にベッドが飛び出していたものもありますね。色々ある中で直近のツアーはGAKU号というのを、オリジナル・キャンピングカーを作っていただいて、それでやっていました」

●GAKU号!?

「それは、僕が5年間くらいキャンピングカー最高! って言っていたら、協会のかたに表彰していただきまして、その副賞として、オリジナル・キャンピングカーを製作、1年間使ってどうぞ! みたいなものがありました。それはトヨタのコースターという、幼稚園バスとかロケバスが普段使っているようなやつの中身を、キャンピングカーに改造したものでした」

GAKU-MCさん

●特別仕様ってことですよね?

「そうですね。仕様はどんなのがいいですか?って聞かれて、一から説明して作っていただいたので、それはもう本当に最高でしたね!」

●具体的にGAKU号のこだわりは、どんなところなんですか?

「こだわりは3点ありまして・・・まず就寝スペースを、シングルベッドを4つにしてくださいとお伝えしました。これはキャンピングカーって大体ベーシックとして、ダブルベッドが2つみたいなものが多いんですね。やっぱり家族向けに作っているものが多いので。 ダブルベッド2つでも当然、男4人が寝られるんですけど、同じベッドにバンド・メンバーと寝るのもですね、なんか朝起きた時にひげ面を見るのもなぁ〜みたいな感じになるじゃないですか(笑)。僕もそうだし、相手もね、きっとそうなんで、そこはちょっとすみませんけど、シングルベッド4つだと最高です〜っていう風に伝えました」

GAKU-MCさん

●あははは〜(笑)

「2点目は、楽器がとにかく、運搬物としていちばん大事であり、かつ大きかったりするので、ドラムセットが入るようなサイズのスペースを後ろに作ってくださいと。鍵盤も運ぶんで、ベッドの下に入れるようにとか・・・」

●ベッドの下に鍵盤!?

「そういうスペースを作っていただいたことで、非常にストレスなく移動が出来るってことになりました。あと、最後の1つは、自宅もそうなんですけど、ウッディな感じ、木の感じが好きなので、出来たら、移動中長いこと旅をするので、心地よい車内の空間だと嬉しいです! と伝えたところ、飛騨のヒノキの間伐材で内装を作っていただきました。だからいつも車の中がヒノキの香りで、すごくよかったです」

(編集部注:GAKUさんは2018年に「ジャパンキャンピングカー普及貢献賞」を受賞。また、2019年のカートラベル・イベント「カートラジャパン」でアンバサダーに選ばれ、その副賞としてGAKUさんのリクエストを受けて改造したGAKU号を活用することになったそうですよ)

GAKU-MCさん

キャンピングカー沼にハマった人たち

※先頃出版された本『人生にキャンピングカーを』には、GAKUさんのご自身の体験談も書かれていますが、キャンピングカーにハマってしまった方たちが21人、登場しています。改めて、どんな方たちなのか、教えていただけますか。

「自分の使いかたとしては音楽ツアーで移動手段、宿泊手段で、楽しむためにキャンピングカーを選んでいるんですけど、僕みたいな職業の人以外にももちろん楽しめる素晴らしいギアだと思っているので、色んな人が人生にキャンピングカーを取り入れてもらえるように、色んな職種の人、色んな立場の人、色んな考えを持った人に、どうしてキャンピングカーにハマったのかとか、キャンピングカーがあるとどういう生活になるのか、そういうのを聞きに行ったら面白いんじゃないかなということで、この本を書き始めました。

 当然、僕より長く使っている人たちばっかりですし、まだ若い女性のかたもいたりとか、大ベテランで何十台もキャンピングカーを乗り継いできたような人もいたりして、もう本当に色んなバリエーションの人にお話を聞きましたね。

 いいところばっかりではないじゃないですか。当然、大変なこともあったりするので、そういうところもざっくばらんに聞いてみたりして、なるべく魅力あるキャンピングカー沼を(笑)、皆さんに知っていただければなという思いで書きました」

●この番組に以前、SPiCYSOL(スパイシーソル)のKENNY(ケニー)さんが登場してくださったんですけれども。

「あ! KENNYね!」

●この本にも登場されていましたね!

「KENNYが、ふりきれたカッケー車に乗っていましてね〜、いいなぁと思いましたね」

●KENNYさんもバンドのツアーで使うということで、屋根にも登れるから、いつかこの上をステージにしてライヴをしたいということもおっしゃっていましたね。

「KENNY君はアメリカのスクールバス、いわゆる映画とかでよく見る、白とか黄色がベースになっているやつ、あれを日本で中古車で、名古屋のほうで見つけたって言っていたかな。見つけてから寝ても覚めても、そのことが頭から離れず、友達と一緒に車に乗って、買いに行ったみたいな話から、それを使って本当はフードトラックをやりたかった、みたいなことを言ってました。

 ただ、フードトラックって法律的にも色んな規制があって無理だから、キャンピングカーにしよう! みたいな感じで・・・でもそのお陰で色んな旅したり、サーフィンに行ったり、音楽ツアーが出来たり、すごくいいです〜、ガソリンはめちゃめちゃ食いますけど〜って言ってましたけど」

●本に登場されているかたのインタビューは全員GAKUさんがされたんですよね?

「はいそうです」

●実際にインタビューされて、どんなことを感じられました?

「インタビューして思ったのは、本当にキャンピングカーって、ひとことで言い切れない多種多様なモデルがあると。同じモデルは2つとないと思ってくださってもいいというか、やっぱり同じ住居があんまりない、色んな種類がある、人の家も同じものがないっていうのと一緒で、車も実は全然違うんですね。

 目的に合わせてサイズ、ベッドの数、キッチンの占める割合、トイレはあるのかないのかとか、色んな選択肢がある・・・もちろん僕も知っていましたけれども、やっぱりこういうところに行きたい、こういう使いかたをしたいから、こういうレイアウトなんだな、みたいなね、そういうのを改めて教えていただきましたね。

 キャンピングカーをなんとなくいいな〜って思っているかたって、きっと潜在的にも多いと思うんですけど、この本を通して、改めて考えることによって、自分はこういう使い方をしたいから、キャンピングカーがあったほうがいいなとか、仕事も忙しいから、週末だけ借りるレンタカーからまずやってみたらいいなとか、将来は家を売っぱらって、でかいキャンピングカーに住めばいいじゃん! みたいなのとか、そういう想像ができて面白かったです」

GAKU-MCさん

家族とキャンピングカー 海外ツアー

※GAKUさんはプライベートでもご家族とキャンピングカーで旅をされたんですよね?

「GAKU号を借りている時は、使っていない時に家族みんな乗って、旅行に行ったりもしましたし、ちょっと前は、自分のうちだけでキャンピングカー1台を、乗用車とは別に所有すると、割とコストがかかったりするじゃないですか。だから5家族で1台のキャンピングカーを、シェアで持つっていうのをやっていたこともあります」

●それはお友達の家族で?

「そうですね。だから、今週うちが使いますんでとか、来週はうちが使いますんで、みたいな、そういうのをちゃんと皆で割り振ってやると。ネットで空いているスケジュールも見られたりして、そういうのでやっていたこともありますね」

●それはいいですね!

「これはまず、グンとコストを抑えられるっていうのと、やっぱり自分のうちだけで使うんじゃないから、すごく奇麗にしようっていう気持ちになるんですね。荷物も置きっぱなしにしておかないで、一回(使い)終わったらちゃんと出すっていう、あんまり入れっぱなしにしておくのも忘れるし、良くないなっていう風に思うので」

●キャンピングカーの旅は、子供たちにとっては冒険っていう感じですよね。

「秘密基地がそのまま車になって移動するみたいなことなんでね、すごくいいと思いました」

GAKU-MCさん

●そうですよね〜。海外はやっぱりキャンピングカーは多いんですか?

「本場はアメリカとか、ヨーロッパだと思うんですけど、昔からアメリカをキャンピングカーで旅するっていうのをちょっと憧れていた部分もありまして、もう4年前か5年前くらいになるんですけど、実は家族で世界一周したことがありました。その時のアメリカ、メキシコの旅を現地でレンタルして、キャンピングカーで行ったことがあります」

●海外をキャンピングカーってすごいことですよね!

「これね、ちょっと字面だけ聞いていると、すっげえ! ってなるんですけど、その時は子供が2人、今は3人なんですけど、子供が2人の時で、下がその時2歳だったのかな。小っちゃいと、飛行機の待ち時間が結構耐えられなくなるっていうか、荷物も多いし、すぐ寝るし、起きたら泣いていなくなるし、みたいな・・・。キャンピングカーにバンっと荷物も子供も放り投げておくと、旅としてはすごくカロリー低く行けますよね。

 アメリカはレストランに行っても、すごく食事の量が多いじゃないですか。頼むと食べきれないし、残さなきゃいけないし、そういうのもなんかちょっとフラストレーションが溜まったりするんですけど、キャンピングカーだとママの料理で、ずっと必要な分だけ、日本食で食べられるものを選んでいけるので、そういう意味では、アメリカのキャンピングカー旅は本当に安全極まりなく快適でよかったですよ。

 RVパークっていうキャンピングカー用の施設がすごく充実していて、どこの街に行ってもそれがちゃんとあって、停めて電気と排水をつないで、(パークの)真ん中に行くとプールがあってみたいな、そういう感じです」

移動中にウカスカジー の曲が出来た!

※近々、キャンピングカーで出かける予定はあるんですか?

「今、実はMr.Childrenの桜井とやっているウカスカジーのツアーが始まっておりまして、これは飛行機と新幹線を使って、ホテルに泊まるツアーなんですけど(笑)」

●キャンピングカーではないんですね?

「このツアーはキャンピングカーではないんですけど(笑)、実はこのウカスカジーのツアーで、桜井含めバンド・メンバーに、キャンピングカーすごくいいんだぜ!って言って、前回のツアーで1カ所、キャンピングカーを持っていって、みんなで乗って移動して、楽しんだっていうことがありまして、またツアーのどこかでやりたいなとは思っているんですよ。

 ちなみに前回ウカスカジーがキャンピングカーで移動した時、車内で出来た曲(*)っていうのが、(ウカスカジーの)新しいアルバムに入っておりますので、機会があったら、聴いていただけると嬉しいなと思っています」

(編集部注:*曲名は「プリーズ・サマー・ブリーズ」。今月リリースされたウカスカジーのニュー・アルバム『どんなことでも起こりうる』に収録)

●やっぱり、キャンピングカーでの移動中に出来る曲ってあるんですね。

「あります! あります! ギターのやつが急に弾きだして、僕と桜井が鼻歌でふふ〜んって歌いながら、出来た〜! みたいなね、そんなんありましたからね」

●ええ〜っ、すごい! 

「やっぱりそういう意味でも、長い移動、車の中だと寝ちゃうやつもいるんですけど、キャンピングカーってスイッチが入った時、みんなテンションが高く、話も盛り上がりながら進んで行くんでね、その時はすごく楽しかったです」

●本当にキャンピングカーって、人生とかライフスタイルを豊かにしてくれそうですね。

「はい! そうだと思います、ぜひ! まだ未体験の人は最初から購入を考えると、ちょっと二の足を踏むと思うので、今はレンタルのキャンピングカーはどこにでもありますし、まずそこからやってみるっていうのと、あとAirbnb(エアビーアンドビー)ってわかります? 誰かが家を貸すサービスみたいのあるじゃないですか?
  あんな感じのサービスがキャンピングカー・バージョンであるので、普段、所有されているかたが使っていない時、どうぞ、みたいのも結構、今あって、そこで借りると、色んなこだわった車種とかもたくさんあるので、まずそういうのを試してみるといいかなと思いますね」

☆この他のGAKU-MCさんのトークもご覧下さい


INFORMATION


人生にキャンピングカーを

『人生にキャンピングカーを』

 キャンピングカーライフをエンジョイされている方々、21名が登場。そのこだわりが美しい写真とともに紹介されていて、見ているだけでも夢が膨らみますよ。キャンピングカーが欲しくなること請け合いです! ぜひ読んでください。A-WORKSから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎A-WORKS:http://www.a-works.gr.jp

 GAKUさんはミスター・チルドレンの桜井和寿さんとのユニット「ウカスカジー」で現在、全国ツアー中。1月30日の広島公演まで続きます。

 また、来年2022年4月のソロ・ツアーが決定! 東京公演は4月22日(金)に渋谷プレジャー・プレジャーとなっています。

 詳しくはGAKUさんのオフィシャルサイトを見てください。

◎GAKU-MC :http://www.gaku-mc.net

<プレゼントの応募方法>

GAKU-MCさんの本『人生にキャンピングカーを』を直筆サイン入りで、抽選で3名のかたにプレゼントいたします。

応募はメールでお願いします。
件名に「本のプレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。

flint@bayfm.co.jp

あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。応募の締め切りは12月24日(金)。当選発表は発送をもって代えさせていただきます。たくさんのご応募、お待ちしています。

応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。

オンエア・ソング 12月19日(日)

2021/12/19 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. 昨日のNo, 明日のYes  /  GAKU-MC

M2. FUN DAY  /  STEVIE WONDER

M3. SLEEPING IN MY CAR / ROXETTE

M4. So What  /  SPiCYSOL

M5. Fly High    /  milet

M6. AROUND THE WORLD /  BING CROSBY

M7. PLEASE SUMMER BREEZE / ウカスカジー

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

面白いな、可愛いな、ちょっと見てみよう〜漫画がいざなう生き物の世界

2021/12/12 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、生き物が大好きなイラストレーター「一日一種(いちにちいっしゅ)」さんです。

 一種さんは、環境アセスメントなどに関する、生き物や環境の調査を行なう会社に勤務後、独立。現在はフリーのイラストレーターとして「いきものデザイン研究所」というサイトを運営しているほか、生き物に関する本を数多く出版されています。

 「いきものデザイン研究所」では、生き物の面白い生態を4コマ漫画でわかりやすく紹介、その可愛くて親しみやすい絵と、ユニークな世界観がSNSなどで話題になっています。そんな一種さんが先頃、初心者向けのバードウォッチングの本を出されました。

 きょうは、バードウォッチングの初心者に向けてのアドバイス、そして、好奇心をくすぐる生き物たちの面白話をお届けします。

☆イラストレーション&漫画:一日一種

秋から冬がベスト・シーズン

イラストレーション&漫画:一日一種

※一種さんの新しい本『今日からはじめる ばーどらいふ!』。この本はひとりの男性がバードウォッチングにハマっていく様子を漫画やイラストで紹介していますが、これは一種さんの体験がもとになっているんですか?

「中身のところで、鳥の楽しさとか見つける喜びとか、あとは図鑑で調べる面白さ、そういうのはやっぱり実体験がベースにはなっていますね。ストーリーは全く体験は関係ないんですけど(笑)」

●この本は、まさにバードウォッチングの初心者の入門書みたいな感じですよね?

「意識的にはそういうものになればいいかなって。それよりも、バードウォッチングを始めようかなっていう人って正直そんな多くないかなって思ったので。ただ、バードウォッチングって何だろう?とか、興味があるっていう人は割といるかと思うんですよ。だから、始めようかなぐらいよりも、もっと手前の人も含めて、見てもらえるような本になればいいかなと思って、特に親しみやすさを含めて漫画にしました」

イラストレーション&漫画:一日一種

●とっても読みやすかったです! 一種さんはもともと、野鳥がお好きだったんですか? 

「そうですね。私も環境コンサルタントの会社に勤めていた頃は、鳥を主に調査をしていたので、専門家っていうほどでは全然ないんですけれども、生き物の中ではいちばん鳥は接してきたグループではあります」

私もこの番組でバードウォッチングの体験を海浜幕張でさせていただいたんですね。こんな都会に鳥っているんだなっていうのがすごく驚きで、カラスやハトしかいないんじゃないかっていう風に思っていたので、色んな鳥が実は身近にいるんだなということをすごく感じたんです。実際、この時期がちょうどバードウォッチングにいい季節なんですよね? 

「秋の終わりぐらいから葉っぱが落ち始めて、冬ぐらいまでは特にいい時期とは言われますね。年間を通してそれぞれ(の季節)に見どころはあるんですね。やっぱり初心者のかたとか、ベテランのかたでもそうですけれども、冬がやりやすい、始める人には結構いいかなっていうのは言われていますし、僕もそう思います」

●それはどうしてですか? 

「色々理由はあるんですけれども、主なところだとやっぱり、落葉樹の葉っぱが落ちて、鳥が見やすくなるっていうのがありますし、秋までに生まれた個体が加わって全体的に数が増えるとかですね。あとは混群(こんぐん)というのを作る、違う種類同士が集まって、一緒にグループになって見やすくなることがあったりとか、あと大きなところは渡り鳥がやってくることですね。

 夏ぐらいまでは山の標高の高いところで繁殖していた、棲んでいた鳥たちが、冬になって食べるものがないとか寒いとかって理由で降りてくるんですよね。だから私たちの身近でも普通に見られるようになります。あと北国の鳥とかも渡ってきますし、全体的に種類が増えるし、数も増えるし、見やすくなるのでやっぱり冬が個人的にもおすすめです」

野鳥観察におすすめは公園

※この時期だと、どんな野鳥を見ることができますか?

「環境にもよるんですけれども、普通の雑木林とか緑地であれば、小鳥類のシジュウカラやコゲラ、あとメジロとか。冬っていうことを考えるとツグミ類、地上をトコトコ歩いている中型の鳥、あとはジョウビタキっていう(今回番組で)ご紹介いただく本にも出てくる、オスはお腹がオレンジ色の、結構可愛い鳥も見られますね」

イラストレーション&漫画:一日一種

●おすすめの観察場所はありますか? 

「ピンポイントで特定の場所でなければ、やっぱりこれから(バードウォッチングを)やろうかな、やってみたいなっていう人におすすめなのは公園ですね。公園に行けば、水辺、池があったりして、そこで冬になってきてカモ類とかたくさん見られたり、広葉樹に小鳥類の群れが来ていたりしますね。

 鳥も公園だと警戒心が薄いんですよね。大自然の中に行くと全然見られない、すぐ逃げていっちゃうような距離でも、公園だと鳥の警戒心が薄いので、とても近くて見やすいので、すごくおすすめです」

●確かに池とかそういった水辺がある場所と、雑木林がある場所では見られる野鳥の種類も違いますよね。

「そうですね。その点では公園はどちらもセットになっていたりして、水辺で色んなカモ類を見て、そのあと雑木林で小鳥類を見たりとか出来ますね。本当におっしゃる通り環境によって全然違います。林、水辺、ちょっと流れのある川、草地、それぞれでやっぱり見られる野鳥が結構違うので、色んな環境で見るといいかなと思います」

●公園で野鳥を見つけるコツってありますか? 観察のポイントとかあったら教えてください。 

「公園に行って、水辺のカモ類は、特にコツとかあんまりなくて、すぐに見つけられると思うんですよ。ただ、昼ぐらいになるとカモ類って結構岸辺で休んでいたりするので、朝方は普通に見られたカモがいないなって思ったら、岸辺のほうを見ると見つけられたりとか、環境と環境の際辺りにいるようなことが多いと思いますね。

 川でも、川のど真ん中よりも、ちょっと岸辺の辺りを目でなぞるように探していくと、割とセキレイ類を見つけられたりとか、ちょっと休んでいる水鳥を見つけられたりしますよ。
 林を見ている時も、林全体を見ているとなかなか見つからないと思うんですけれども、林間というか、こずえの辺りを舐めるように見ていくと、上のほうに止まっている鳥を見つけられたりとかします。

 もっと簡単なコツを言えば、やっぱり聴くことですかね。声を聴く、バードウォッチングですけれども、割とリスニングが大事だったりします。まず声を聴いて、どこにいるんだろうって探す、その順番で見つけられることが多いですね。まず耳を澄ますのは大事だと思います」 

イラストレーション&漫画:一日一種

*編集部注:千葉でおすすめの観察場所として、一種さんがあげてくださったのは、習志野市の谷津干潟。自然観察センターには備え付けのフィールドスコープもあるし、野鳥観察のガイドさんもいるそうです。そしてもう1箇所が銚子漁港。何種類ものカモメが見られる、野鳥好きにはマニアックな場所だそうです。

 バードウォッチングの初心者のかたは、「日本野鳥の会」が開催しているバードウォッチングのイベントに参加するのもおすすめと一種さんはおっしゃっていました。全国で開催しているので「日本野鳥の会」のホームページをチェックしてみてください。

◎日本野鳥の会:https://www.wbsj.org/

イライラの由来、二度寝するカエル!?

●一種さんが運営されているサイト「いきものデザイン研究所」には、生き物に関する4コマ漫画が掲載されています。その中から、私が特に気になった漫画を色々お聞きします。

  まずは「由来が意外なあの言葉」という4コマ漫画がありまして、イラクサという多年草から”イライラ”という言葉だったり、”ひし形”というのは菱(ひし)という植物から来たんだよ! っていうことでしたが、それは本当なんですか? 

イラストレーション&漫画:一日一種

「はい、語源の由来自体は、どんなものでも諸説があったりするので、絶対にこれが正しいっていうわけじゃないんですけども、一説としては言われていますね。意外と植物が先だったんだっていう、ちょっとびっくりする由来ですけれども」

●びっくりです! 

「イラクサは、棘(トゲ)を全般的にイラって呼んだりして、その中でもイラクサっていう草はガラス状の棘で、刺さると簡単に砕けてしまって、しばらく取りづらいんですね。毒が入っている棘なので、結構痛痒いんですよ。ずーっとイラクサが刺さると痛痒い感じがして、まさにイライラするみたいな状態になるんですね(笑)。

 ”苛立つ(イラダツ)”から来るとも言われますね。棘(イラ)が立つ、刺さって立つことからイラダツ、イライラが苛立つから来たのかもしれないですけれども、そういうイラクサを含む、棘のある植物から来てるっていうことはどうやら確からしいです」

●へえ~〜〜! 

「ひし形もそうですね。水草の菱を見ると、そこまでひし形でもないかなっていう気はするんですけど、ただ漢字もやっぱり同じ菱、水草の菱と同じで、ひし形の由来は、どうやらそこから来ているっていうのは読めますね。葉っぱも果実も、ややひし形っぽい形をしていて、どちらから来ているのかは確かじゃないんですけども、どうやら水草から来ているようです」

●面白いですね~。それから「早起きだが、二度寝するカエル」っていうのもありましたよね。アカガエルの産卵のお話でしたけれども・・・。

イラストレーション&漫画:一日一種

「そうですね。それを漫画にしたのは、やっぱり早起きするのがまずは面白くて、さらに産卵したあと二度寝しちゃうのが、ふたつ目の面白いところで、漫画にしてみたいなって思ったんですね。

 カエル類は、冬眠して春に起きて産卵みたいなイメージが、どちらかというと強いかと思うんですけれども、アカガエル類はちょっと特殊な産卵方法です。戦略だと思うんですけど、天敵があんまりいないような、まだ寒い2月くらいに、まず起きて産卵をします。産卵をしたあとは、起きていればいいかなとも思うんですけど、やっぱり食べる物がないのか、ちょっと活動はしづらいみたいで、春が来て暖かくなるまで寝ちゃうっていう(笑)」

●二度寝しちゃうんですね?(笑)

「人間でいうところの二度寝、ちょっと真面目な二度寝ですけども」

変身するニホンウナギ

※一種さんが主宰されているサイト「いきものデザイン研究所」にアップされていた4コマ漫画の中からもうひとつ。「ニホンウナギの変態」という漫画がありましたよね?

「そうですね。あれは土用の丑の日に合わせて、何かしらウナギの面白い話をアップ出来ればなと思っていたんですね。今ウナギって絶滅危惧種なところにまず、すごく関心がいっているじゃないですか。それもすごく大事なテーマなんですけれども、それですごい乱獲がどうのこうのとか、ウナギを食べないようにしなきゃみたいなところに、みんな意識が集中しちゃっているかなと思ったので、それより以前に、別の視点でウナギってこんなところが、実はすごく面白い生き物なんだっていうのを知ってもらえればな~と思って、敢えて変態っていうテーマで書いたんですね。

 食のウナギっていうよりも、生き物のウナギとしての見方でも、実はすごく魅力的な生き物なんですね。産卵場所をようやく特定できたことは、数年前にニュースになったりもしましたけれども、本当に謎だらけの、何かすごくダイナミックな生き方をしている面白い生き物です。そういう面も知ってもらえたら、食べ方とか、食としてのウナギのほうの接し方も変わるのかなと思って、そういう漫画を描きました。

イラストレーション&漫画:一日一種

 変態は、蝶がやっぱり有名だと思いますけれど、イモムシからサナギになって成虫になるみたいな変態を、ウナギも何段階かの変態をします。最初は葉っぱ型のレプトケファルスっていう、海流に乗りやすい不思議な平べったい形をしているんですけれども、それが段々日本に近づいて来ると、細長いいわゆるウナギ型みたいな形になって、シラスウナギっていう状態になります。

 それがどんどん成長していくと、お腹が黄色くなったり、黒くなったり、最後に銀ウナギっていうお腹が銀色のウナギになったりする、変身を何回も繰り返す、実は面白い魚なんですね。なので、”変態するウナギ”っていうテーマで、面白さを知ってもらえればなと思って、漫画を描きました」

漫画だけど、裏付けはちゃんと

※「いきものデザイン研究所」のサイトにあげている4コマ漫画のネタは、どうやって決めているんですか?

「生き物のネタ自体は世の中ありふれているので、僕は出来るだけ多くの人に興味を持ってもらえそうなものを決めて、それからどうやって漫画にしようとか、どうやったら面白く伝えられるかを考えて作りますね」

●でも、漫画を描くにもやっぱり生き物とか自然のことをよく分かっていないと描けないですよね。

「そうかもしれないですね。僕もそれなりに調査とか仕事でやっていても全然、今もそうですけれども、まだまだ知らないなと思うので、漫画にする前に間違いがないように、フィクションの部分はフィクションとしてちゃんと伝わるようにして、情報として伝える部分は間違いないように、ちゃんと調べたりしたりとかはしていますね。そこがいちばん正直、神経が擦り減る辛いところですね」

●漫画を描くこと以上に大変なことなんですね。

「そうですね。やっぱりこういうものをやっていると、どうしても漫画なので、誇張して伝わっちゃう部分もあるんですけれども、出来るだけ、おかしな伝わり方をしないように、こう見えても一応は気を使っているつもりです。はい!」

●改めて一種さんが漫画やイラストを通じて、どんなことを伝えたいですか?

「正直そんなすごい意識を持って欲しいわけじゃ全然ないんですよね。ただ単純に、生き物ってこういうところが面白いなとか、可愛いなとか、ちょっと見てみようかなぐらいな感じで、ちょっと入口になればいいかなくらいに思っています。

 生き物が嫌いな人に無理やり勧めようとか、好きになってもらいたいなんて全然思っていなくて、本当に普通に暮らしている人が、ちょっと知って特になればくらいに思って漫画を描いています。基本的に漫画ってほんと娯楽なので、それぐらいですね」

*編集部注:一種さんがいま注目しているのが微生物、例えば身近な生き物として、苔などいるクマムシ、乾燥にも強いスーパー微生物ですよね。そんな微生物のミクロの世界を描いてみたいそうです。


INFORMATION

『今日からはじめる ばーどらいふ!』


『今日からはじめる ばーどらいふ!』

 初心者に向けて、バードウォッチングのポイントやノウハウ、そして面白さなどを漫画とイラストでわかりやすく解説、本当に楽しく読めますよ。これからやってみようと思っているかたに最適な入門書。ぜひ活用してください。文一総合出版から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎文一総合出版HP:
 https://www.bun-ichi.co.jp/tabid/57/pdid/978-4-8299-7236-6/Default.aspx

 一種さんが主宰しているサイト「いきものデザイン研究所」もぜひご覧くださいね。4コマ漫画、面白いですよ。

◎「いきものデザイン研究所」HP:http://wildlife-d.xsrv.jp

オンエア・ソング 12月12日(日)

2021/12/12 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. CRANES IN THE SKY / SOLANGE

M2. WINTER WONDERLAND / TONY BENNETT

M3. LISTEN, LISTEN / SANDY DENNY

M4. SLEEPIN’ / DIANA ROSS

M5. 君に夢中 / 宇多田ヒカル

M6. BEAUTIFUL TRANSFORMATION / BROOKE HOGAN

M7. THAT’S ENTERTAINMENT / THE JAM

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

生き物の宝庫、奄美大島〜自然と人の営みが近い島

2021/12/5 UP!

 今年の嬉しい出来事のひとつとして、7月に奄美大島が沖縄ほかとともに世界自然遺産に登録されたことがあげられます。国内では白神山地、屋久島、知床、小笠原諸島についで5件目になります。

 鹿児島県に属する奄美大島が選ばれた理由は、なんといっても生物多様性の高さで、固有種の多さは際立っています。奄美大島は日本の国土の0.2%にも満たないのに、国内全体の、生物の種類のおよそ13%が確認されているそうです。そんな生き物の楽園、奄美大島にご案内します。

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、生きものカメラマン「松橋利光(まつはし・としみつ)」さんです。

 松橋さんは1969年、神奈川県出身。水族館に勤務後、フリーのカメラマンとしておもにカエルなどの水生生物をメインに、いろいろな生き物を撮影、これまでに児童向けの本や写真絵本を数多く出版。また、子供向けの生き物教室も開催されています。

 そんな松橋さんの新しい絵本が『奄美の道で生きものみーつけた』。これまでに40回ほど通ったという奄美大島の生き物や自然について、きょうはたっぷりお話をうかがいます。

☆写真:松橋利光

松橋利光さん

道で出会える生き物たち

●本のタイトルに「奄美の道」と入れたのは、奄美大島では道でたくさんの生き物に出会えるからなんですか?

「そうですね。奄美大島は森の中にたくさん林道が走っていて、身近な生活道路だったりもするんですけど、生き物を探す時の基本として、そういう道で車をゆっくり走らせて、まずその状況を知るのが第一歩なんですね。そこで出会う生き物を集めてみました」

写真:松橋利光

●奄美大島は道を歩いているだけで、こんなにたくさんの生き物に出会えるんですね。

「(生き物に出会えるのは)道だけじゃないですけど、生き物の数というか量は沖縄のやんばる以上だと思っています」

●以前よりも生き物は増えてきているんですか? 

「”マングースバスターズ(*)”がすごく機能しているようです。外来のハブの退治のために導入されたマングーズが増えて、結構カエルとか食べちゃったりするんですけど、その駆除が世界でも珍しいぐらいうまくいっている島なんです。それだけじゃなく、ほかの保全活動とか色々相まって、この10年でかなり爆発的に生き物が増えていると思います」

●今年7月には沖縄本島などと共に世界自然遺産に登録されましたけれども、何度も通っている松橋さんとしてはどうですか? 決まった瞬間はどんなお気持ちでした? 

「やっぱり世界遺産に向けて頑張っている人たちも見てきましたし、ものすごく嬉しい気持ちでいっぱいだったんですけど、自分はシンプルに自然を好きな人間として言ってしまえば、若干注目されて観光で人が増えると、また道で何かが起きてしまうんじゃないかみたいな、そういう弊害みたいなものに対しての心配も少しありました」

*ハブなどの駆除を目的に導入されたマングースがハブなどを食べずにアマミノクロウサギなどを捕食して、固有の生き物が減る一方でハブが増えてしまったそうです。そのため、環境省では2000年から本格的にマングースの駆除に着手、その事業のことを「奄美マングースバスターズ」と呼んでいます。その取り組みがうまくいき、奄美大島の生き物たちが増えているのではないかということなんですね。
 環境省の奄美野生生物保護センターでは保護活動など、様々な取り組みを行なっています。ぜひオフィシャルサイトをご覧ください。

◎奄美野生生物保護センターHP:https://www.env.go.jp/nature/kisho/wildlifecenter/amami.html

日本一美しいアマミイシカワガエル

※改めて、奄美大島の気候や天候について教えていただけますか。

「亜熱帯なんですけれども、暑さは、最近関東の夏はすごい暑さですよね。ああいう暑さとはまた違っていて、しっかり雨も降りますし、夜は涼しくなりますから、それほど過ごしにくいというか過酷な状況ではなくて、かえって夏は奄美で過ごしたいぐらいに思う時がありますよ」

写真:松橋利光

●そうですか! すごく高温多湿なイメージあるんですけれども、湿気とかも多いですよね? 

「湿気はすごいです。湿気はすごいですけど、そのおかげで、雨が定期的に降ることで、カエルの撮影がしやすいので、かえってありがたいです(笑)」

●自然相手だと撮影もなかなか大変なんじゃないですか? 

「今の時期は繁殖期だからと思って行っても大外しすることがありますし、ふいにチャンスが訪れる時もあるので、そこは努力してもしょうがないというか、なるべく回数を行ってチャンスを増やすっていうだけですかね」

●奄美大島は、そこにしかいない生き物もたくさんいるんですよね?

写真:松橋利光

「そうですね。有名なところだとアマミノクロウサギとか、ルリカケス、あとはアマミイシカワガエルとか、アマミと名の付く生き物はとても多いですね。固有種と言われるものが脊椎動物だけでも何種類かいて、昆虫も含めるともう何百といるようなので、奄美でしか見られない生き物はたくさんいます」

●アマミイシカワガエルは写真絵本にも写真が載っていましたけれども、実際に見ると、どれほど美しいんですか? 

「日本一美しいって言われていますね。沖縄に棲むイシカワガエルと元々同種とされていたんですけど、何年か前に種として別れたんです。明らかにアマミイシカワガエルのほうが、緑色が、何色かのグラデーションの中に金をまぶしたような縁取りができていたり、背中だけをアップで撮ったりすると何かの模様ですよね。すごく美しいですよ。

 沖縄の種も含め本当に迷彩色なんですよ。緑色なので実は目立たないんですけど、でもよく見るとすごく複雑な色彩をしていて美しいです。実は結構大きいんですよ。本州で見られるようなカエルとは違っていて、子供の手のひらぐらいはあります。大きい種類だと大人の女性の手のひらぐらいはあるので、模様もはっきり見えますし、すごく綺麗ですよ」

写真:松橋利光

五感を駆使して見つけ出す

※松橋さんが奄美大島で、撮影のためによく通っている場所はどの辺なんですか?

「空港から(車で)1時間ぐらい南下したところに、大和村っていう集落があるんですね。そこの森が林道に沿って渓流もかなり多くて、林道を走っているだけで繁殖期とかですとカエルの鳴き声が聴こえてくるんですよ。この下で産卵しているんじゃないかと思って、車を停めて沢を下りていくみたいな、割と気軽に観察ができる場所があるので、その大和村がいちばん通っていますかね」

●それで降りて行って、実際やっぱりカエルがいた! みたいな感じなんですか? 

「そうです、そうです。カエルって鳴き声が全部違うので、この声はハナサキガエルだ! しかも数がいっぱい、ピヨピヨ鳴いているぞ! って思って降りていくと、産卵しやすい溜まりがあったりするんですよ。そこに何百と集まって産卵しているところに出会うんですね。(大和村は)川と生活が近いって言うんですかね。なので、耳や五感を駆使すれば、そういうシーンに出会うチャンスがたくさんあります」

写真:松橋利光

●同じ場所でも季節によって出会える生き物は違いますよね? 

「(生き物が)食べるもので出てくる場所も違いますし、繁殖期が近ければ、カエルなどは鳴き声が全然季節で違います。そういう季節の移り変わりで見られる生き物が違ったり、図鑑に書いてある通りに解釈していると全然繁殖期とか違ったりするので、とにかく(奄美大島に)行って、耳をすませて風を感じながら行動するしかないっていう感じですけどね」

●一日の撮影スケジュールはどういう感じなんですか?

「夜がメインなんですよ。朝は例えば鳥の渡りだとか面白いことがあれば、朝から鳥の撮影をして、昼間の生き物があまり動かない時間にちょっと仮眠をとって、夜森に入って、(カエルの)産卵に出会ってしまったりしたら、一応産卵が終わるまでか、もしくは明るくなるまで待って、朝帰って仮眠してみたいな感じなので、本当に寝るとか食事っていうのはいちばん後回しで、ほぼ森にいます」

繁殖期、必死なカエルと紳士的なカエル

※撮影のためのフィールドワーク中に、なかなか出会えない生き物と出会えた時って、やっぱりどきどきするんですか?

「生き物との出会いや、そのシーンの出会いは毎回嬉しいですし、ドキッとするんです。それを体の動きで(いきなり)近づくと、生き物がびっくりするっていうのは、みなさん分かると思うんですけど、こっちの、”わっ、いた!”って気持ちの高揚が生きものに伝わるんですよ。なのでとにかく“いたっ!”って思っても、“いたっ!” って思わないようにしていたり、冷静を装うというか、本当になるべく心静かにっていうのがいちばんですね。いくら出会って感動しても」

●いた〜! って声に出さなくても、そういったワクワク感っていうのは生き物に伝わっちゃうものなんですか?

「多分、そう感じています。もちろん、その時に無駄な動きが出ちゃっているのかもしれないんですけど、やっぱり“あっ!”って思った時は、パッとこっちを見られた気がすることもあるので、“あっ!”って思っても、とにかく、すっと心を落ち着けるように意識はしています」

●難しいですね〜(笑)。

「難しいですよ。もう長年やっているので、何とかなっていますけど」

●生き物の撮影をしていて、思わずクスッと笑ってしまうような瞬間はありますか?

「本当に、生き物ってドジなので、ちょっと食べ物を落としたりとか、そういう日常の、クスッと笑えるようなトラブルってよくあるんですけど、カエルは普段すごく警戒心が強いのに、繁殖期になると、わけがわからないくらい必死なんですよ」

●必死なんですか?

「アマミハナサキガエルは、沢でピヨピヨ鳴いて集まるカエルなんですけど、数百と集まるので、オスがメスを探すことに必死なんですね。そういう時に胴長を履いて沢に行って、川の水が濁らないように水の中に半分入って、石に座ってずーっと待つんですけど、そうすると、自分の膝が石だと思われて、膝に4匹も5匹もカエルが乗っかってきたり・・・」

写真:松橋利光
写真:松橋利光

●へぇ〜!(笑)

「水中カメラで近づいたら、メスだと思って人の手につかまってきたり、なかなかその必死さは面白いですよ(笑)」

●面白いですね(笑)。微笑ましいというかなんというか・・・。

「面白いです! とにかく、もう笑いながら撮っています」

●ほかのカエルで、なにか面白い生態があったら教えてください。

「日本一美しいと言われているアマミイシカワガエルですとか、オットンガエル、奄美固有のカエルがいるんですけど、その2種類は逆にとても紳士的で、目の前にメスが現れても抱きついたりしないんですよ」

●ええっ!

「イシカワガエルは岩の隙間というか、穴の中で産卵するんですけど、穴の入口で鳴いて、メスがこっちに来るまで誘導するようにして鳴き続けて、一緒に穴の中に消えていくっていう感じですね。

写真:松橋利光

 オットンガエルは産卵のための小さな巣を作るんです。砂利をどけたような水たまりを作るんですけど、そこでオスが鳴いてメスが来ると、まずオスは一度巣を出て、メスがそれを値踏みするようにぐるぐる動くんですね」

●へぇ〜〜! 

「オスはまた戻って来て鳴いたりするんですけど、見ているとメスが姿勢を低くして、もう産卵してもいいよ!っていうような合図のようなものを出すんですよ。そうすると、(オスが)のそのそっと来て、背中に抱きついて産卵が始まったり、すごく紳士的なカエルがいて、面白いですよ」

写真:松橋利光

大事なのは謙虚さ

※奄美大島が世界自然遺産に登録されたことで、現地に行って生き物の写真を撮ってみたいと思うかたも多いと思います。プロのカメラマンとして何かアドバイスがあれば、お願いします。

「自然保護という観点からも、あとは危険防止という観点からも、シンプルに自然の中にいることをすごく意識して、常に謙虚に行動していれば、生き物ってそんなに逃げないんですよ。なので、ちゃんとルールを守って、自分が撮るっていうよりは、(生き物と)会えた喜びを普通に分かち合うぐらいな、余裕を持って森に入ってもらえれば、あれだけ生き物が多くて、出会うチャンスが多いので、いい写真が撮れちゃったりするのかなって思います」

●謙虚さ、が大事なんですね。

「そうですね」

●では最後に、この写真絵本を通して、どんなことを伝えたいですか?

「奄美大島の素晴らしさを伝えるっていうことはもちろんなんですけど、やっぱり生き物が多くて、自然と人の生活が近いイメージなんですね。本当に集落の裏に珍しいカエルやネズミが普通に現れるので、ロードキルのような事故があったりすることをきちんと知ってもらって、自分がどう行動したらいいのかを少し考えるきっかけになればいいかな思って作りました」

写真:松橋利光
写真:松橋利光

☆この他の松橋利光さんのトークもご覧ください


INFORMATION

『奄美の道で生きものみーつけた』


『奄美の道で生きものみーつけた』

 松橋さんの新しい絵本、お勧めです! 奄美の道で出会ったカエルやヘビ、ウサギや野鳥などの写真が満載。元環境省のアクティヴ・レンジャー木元侑菜(きもと・ゆうな)さんとの共著。松橋さんは木元さんから教えていただく現地の生き物情報に、とても助けられているとおっしゃっていました。奄美大島の美しくて可愛い生き物たちをぜひ感じてください。新日本出版社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎新日本出版社HP:
https://www.shinnihon-net.co.jp/child/detail/name/%E5%A5%84%E7%BE%8E%E3%81%AE%E9%81%93%E3%81%A7%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%BF%E3%83%BC%E3%81%A4%E3%81%91%E3%81%9F/code/978-4-406-06599-3/

オンエア・ソング 12月5日(日)

2021/12/5 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. ワダツミの木 / 元ちとせ

M2. FORCE OF NATURE / LENKA

M3. THE FROG PRINCE / KEANE

M4. ALL NIGHT LONG / PETER FRAMPTON

M5. 白い月 / 城 南海

M6. PEACE FROG / THE DOORS

M7. 花 / 中 孝介

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

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