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「カーボンニュートラル」徹底解説!〜脱炭素社会がもたらす未来生活〜

2022/1/23 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、“世界でいちばん脱炭素に熱い魂!”脱炭素メディア「エナジーシフト」の編集長「前田雄大(まえだ・ゆうだい)」さんです。

 前田さんは1984年生まれ。2007年に東京大学を卒業後、外務省に入省。2017年から気候変動を担当。パリ協定に基づく国家戦略の調整にも尽力。そして2020年から「エナジーシフト」の発行人 兼 編集長として活躍中です。週末は群馬のご自宅で有機栽培にも取り組む自然派でいらっしゃいます。

 「エナジーシフト」はネットの情報メディアで、脱炭素に関連するニュースが満載! さらにYouTubeチャンネル「エナシフTV」も大人気で脱炭素について熱く語る「ゆーだい」さんの熱量が凄いんです。

 そんな前田さんが先頃『60分でわかる! カーボンニュートラル 超入門』という本を出されたということで、きょうはカーボンニュートラルについてわかりやすく解説していただき、さらに脱炭素社会に向けた企業の取り組みや、注目すべき新技術についてもお話しいただきます。

☆写真協力:エナジーシフト

前田雄大さん

カーボンニュートラルとは

※ここ数年、ニュースなどでも多く取り上げられ、最近ではテレビCMでも見るようになったワード「カーボンニュートラル」、カーボンは炭素のことですが、改めて、カーボンニュートラルとは何か教えていただけますか

「今、世界全体で、これは日本も含めてですけれども、気候変動という問題が大きな問題になってきております。この原因が何かと科学者の方々が突き止めた結果、二酸化炭素が問題であると、主要因であるという形に落ち着きました。

 この二酸化炭素は産業革命以後、石油とか石炭とかそういうのを燃やすと当然出るんですけれども、大気中の濃度が濃くなってきているので、これ以上増やしてはならないということになっています。

 ”カーボンニュートラル”というのはどういう状態かというと、例えば、車がガソリンを使って走った時に CO2を排出します。そういった世界全体で出るCO2の量と、例えば、森林のようにCO2を吸収するものがありますけれども、出る量と吸収される量、これがちょうど同じようになれば、大気中のCO2は増えません。

 ニュートラルというのは中立という意味なので、出る量のプラスの分と吸収されるマイナス分、これが等価になるとゼロで中立の状態。これがカーボンニュートラルという状態です」

『60分でわかる! カーボンニュートラル 超入門』

●前田さんの新しい本『60分でわかる! カーボンニュートラル 超入門』を 拝見しました。なぜ今、このカーボンニュートラルなのか、その理由や背景について改めて分かりやすく解説していただけますか。 

「はい。ひとつには、やはり段々とこの大気中のCO2の濃度が濃くなってきていて、それによってもたらされる地球温暖化、これが進展してきています。今、産業革命以降、地球の平均気温の上昇は1度ぐらい上がっている状況なんですけれども、実は国際社会は、この温度を2度未満の上昇に抑えようということになっています。
 2度とか1度とかだと実感として大したことないんじゃないかというふうに思われるんですが、これが2度上昇するだけでも、生態系とかにもかなり大きな影響を及ぼしたりとか、甚大な影響が出ます。

 今この1度上がった世界でも、日本でも西日本で豪雨が頻発したりとか、ああいうような被害が出るようになってきていて、世界全体でかなり経済活動にもマイナスの影響を及ぼすようになってきていると・・・。

 従いまして、世界全体で自分たちの将来を、子供たちに残していく未来も考えた時に、この気候変動問題にしっかり向き合って対策を取らないといけない、ここが急務になったというところがあります。そのためには、カーボンニュートラルな状態に持っていかなければならないというところがひとつあります。

 あともうひとつは、このカーボンニュートラル、例えば車で言えば、EV(電気自動車)とか、電気で言えば、再生可能エネルギーというのが手段としてあるんですけれども、ここのイノベーションの加速度がすごくなっていて、ここを抑えることが未来の経済社会モデルを作る上において、非常に有益だろうと思われるようになってきています。
 環境的な側面もそうなんですけれども、経済的な側面でも注目が集まってきています。経済成長しながら地球環境もよくなるという両立の論点が出てきたので注目が集まってきていて、カーボンニュートラルにみんないこう、ということになっています」

●経済とか社会の仕組みを変える可能性もあるってことですよね? 

「そうですね。産業革命以後、ずっと化石燃料を燃やしてエネルギーを得るというのがベースになって、普段我々も生活している中で、電気が何由来とかあまり思ったこととかないと思うんですけれども、この電気の成り立ちも変わってくると・・・。

 例えば、太陽光パネルの値段も下がってきていますけれども、それに応じて、その便利度合いというのは上がってきているので、家の屋根に太陽光パネルを載っける、これがそんなに値段が高くなく、今はもう載っけられるようになってきているので、お宅の電気代が下がることにもなってきます。
 結構発電をしますので、災害時に停電をしてしまっても、そういうお宅のところは電気があることになってきたりとか、生活のあり方もだいぶ変わるようになってきています。

  EVも航続距離が延びてきていますので、これを使うと、例えば今キャンプとか流行っていますけれども、キャンプに行った先で、ドライヤーとか普段使えなかったものが車につなぐだけで使えるようになってきたりとか。そういう利便性も増えてきていて、徐々に社会、経済のあり方というのが変わってきています」

(編集部注:日本の国としては2年前に菅前総理が臨時国会で「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と発表。カーボンニュートラルと脱炭素社会を目指すと宣言しました。

 野心的な目標として国際的にも評価されたということですが、そこに向かうビジョンともいえる「カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」も策定されています。これは前田さんいわく、経済成長していくためのロードマップといえるものだそうです)

EV、モーター、蓄電池

昨年グラスゴーで開催された気候変動に関する国際会議「COP26」でも、世界の国々による温室効果ガスの削減に向けて、いろいろな合意がなされましたが、企業の取り組みがなければ「脱炭素社会」は実現しませんよね?

「そうですね。CO2の排出はやはり企業から出ている部分がかなり多いというところもあります。商品やサービスを提供するのはやっぱり企業ですので、我々が利用するようなサービスで、例えばCO2が減っているようなものを提供するかどうかというのは、やっぱり企業にかかってきているところがあって、企業の役割というのは非常に大きいかなと思います」

●例えば、国内の産業分野の中から、脱炭素に向けた積極的な取り組みはどういったところがあるんですか? 

「今、様々な分野で、このカーボンニュートラルに向けたコミットメントというのは出てきています。最近ですと、ニュースで大きく取り上げられたのはトヨタ自動車ですね。”トヨタイムズ”なんてCM でも、水素社会の実現とか、それから話題になったのはEVの戦略、これも本腰を入れて、レクサスなんかも将来的に全部EVにするんだというような話が出てきました。

 やはりそういう有名企業がアクションを起こしているというのは、一般の方々にとっても、”あ、もう脱炭層社会になるんだ!”っていうようなところも、可視化されるという意味においてもいいですし、世界に与えたインパクトっていう意味に置いても大きかったかなと思います」

●トヨタのお話もそうですけれども、様々な企業にとって大きな変化が求められてくるのかなと思うんですけれども、業種によっては追い風となる企業も多いんじゃないですかね? 

「そうですね。追い風としているような企業はやはりいらっしゃると思います。例えば、岩谷産業さんですね。ガスを扱っている会社さんですけれども、水素も元々扱われていたというところがあります。水素となると、日本の第一人者が岩谷さんになります。

 まさにこの脱炭素方針が示されてから、岩谷さんの株価というのはグッと上がったところもありますので、これまで取り組まれてきた水素の知見を活かして、さらに伸ばしていくというような方向性で事業戦略を組まれていると思いますから、追い風にされてビジネスをされているんだと思います」

●世界の脱炭素に向けて貢献する日本の技術もきっと多いですよね? 

「多いと思います。例えば、車もEV化が脱炭素においてはひとつキーとなるんですけれども、そこの中ではモーター、それから蓄電池というこのふたつが結構鍵になります。
 モーターは日本電産という企業が非常に高い技術を持って、世界のシェアを多く取りながらやっているところがありますので、このモーター技術を活かして脱炭素社会に貢献していくという文脈もあります。

 蓄電池も、アメリカではEVとなると、テスラという会社が非常に有名ですけれども、テスラのこれまでの蓄電池のところを支えてきたのは、日本のパナソニックになっています。今は中国、それから韓国の蓄電池メーカーも台頭してきているので、テスラはそういうところとの提携も始めてはいるんです。

  そうは言っても、パナソニックも重要な提携先になっているという意味においては、世界の3強と言われている蓄電池の一角をパナソニックが占めていますので、世界に対して貢献していると言えるんじゃないかなと思います」

写真協力:エナジーシフト

注目すべき人工光合成の技術

※ほかに前田さんが注目している技術はありますか?

「この脱炭素時代、どうしても再生可能エネルギーのように、これまで出ていたCO2を出さないという方向性にいくものが多いんですけれども、カーボンニュートラルの成り立ち、出すほうもあれば吸うほうもあるというところで、注目している技術として、人工光合成というのがあります。

 元々、森林が行なっている光合成、これはCO2を吸収してという話ですけれども、これを人工的に行なうということで、大気中のCO2を活用しながら、別のものを生み出していくというような概念になっています。

 これが本当に経済的にもしっかり成り立つような形で確立されると、いくらCO2を出しても、人工光合成で吸収しきれば、カーボンニュートラルになっていきますので、かなり注目かなと思っています。
 実は日本の企業も東芝さんとかトヨタさんも取り組まれているんですけれども、世界で最高効率を叩き出していたりもしますので、日本が貢献出来るというところもそうですし、出す側を減らすだけではなくて、どうやってそもそもあるCO2を減らしていくのか、これを突き詰めていくと面白いかなと思っています」

●一方で取り組みが遅れている分野で、ここは頑張って欲しいなっていうところありますか? 

「やはりこの脱炭素の流れで、様々なところで取り組みが加速していくことが重要なんですけれども、ベースとなるところで再生可能エネルギーというのがひとつ大きな鍵になってきます。

 今この再生可能エネルギーで、拡大していくとみなされているふたつの分野があるんですが、ひとつが太陽光発電、もうひとつが風力発電になります。いずれも日本の企業の存在感が薄くなってきてしまっています。
 太陽光発電に関しては2005年ぐらいまでは太陽光パネルは世界のシェアNo. 1は日本だったんですけれども、今はもう1%まで下がってしまっていますので、こうしたところは巻き返しをしてもらってと思いたいところです」

カーボンニュートラルが生活を変える!?

※やはり気になるのが、カーボンニュートラルの社会になると私たちの生活がどう変わるのか、だと思います。生活面でどんな変化がありそうですか?

「世界の潮流から申し上げると、実はこの再生可能エネルギー自体が、コストが下がってきているというところがひとつ特色になっています。この流れをしっかり日本も汲むことができれば・・・今は再生可能エネルギーは国民負担になってしまって、電気代を上げる方向にいってしまっているんですけれども、期待したい方向性としては、日本の電気代が再生可能エネルギーの導入によって長期的に下がる、もしこういうことが出来れば、実感値として出てくるかなという風に思います。

 あとは都心と地方で少し変わってくるところはあるかなと思うんですけれども、地方のお宅で太陽光パネルを(屋根に)載せることができれば、今もうそれだけで電気代が下がるようになります。

 そうなってくると、それをEVにためるということが出来れば、今もこの瞬間、実はランニングコストでいうと、EVのほうがガソリンで走るよりも電気で走るほうが安いので、そういうところでお財布にも優しくなっていきます。

 プラスその車にためた電気を使って、家の電気を効率よく回していくというようなことも出てくるようになるかなと思います。車さえあれば、どこでも電気が使えるようになってくると、車のあり方もまた変わってきます。

 カーシェアみたいなことも出てきて、これが例えば、携帯のアプリと連動して、車を持たなくても勝手に車が来るような、車の自動化もこの電動化に合わせて行なわれているところになっていますので、もしかすると交通のあり方も変わってくるかもしれません」

●私たちの生活を振り返ってみると、本当にエネルギーなしでは成立しないですよね。ということはCO2を出さないと生活できないじゃないかって思っちゃいますけれども、カーボンニュートラルは生活全般に関係しているっていうことですよね。

「おっしゃる通りです。今の社会のモデルというのは基本的に何をするにしてもCO2が出る、電気を使おうが車に乗ろうが出るようになっていますので、これがガラッと変わっていく、これが脱炭素トランスフォーメーションと言われている由縁になるんですけれども、ここの前提を変えないといけないというところがあります。今あらゆるところから生活しながら出ているCO2、これが2050年にはゼロになっていくという話ですから、すごいことだなと思います」

※やはり、私たちひとりひとりの意識や行動が大事ですよね。

「今カーボンニュートラルの動きというのは、どうしても国の政策であったり、それから企業の役割であったりというところに焦点が当たりがちなんですけれども、(企業が)供給をするだけではなくて、やはり(消費者から)必要だというニーズが出てきて、歯車が噛み合うような部分もあるかなと思います。

 ひとりひとりの取り組み意識が変わって需要が出てくると、そこに目をつけてビジネスが生まれてくるという好循環になるかなと思います。
 例えば、地方に住んでいるのであれば、屋根置きの太陽光パネルを載せてみるとかもそうですし、都心であっても再生可能エネルギーの電気のメニューというのが、今はもう電力の小売り自由化になっています。

 実は東京電力さんとかの電気プランよりも、再生可能エネルギーなのに安いプランも出ていますので、そうしたものに切り替えていただくというのもそうですし、それから車をEVにしていただくとか、様々あるかなというふうに思います。
 ちょっとでもいいので、そういう意識を持っていただくと、需要のほうが動き始めますので、そういうところに取り組んでいただければなと思います」

●個人ひとりひとりが出来ることっていうことですよね。

「そうですね。そういう取り組みが、例えばそこに目をつけた日本の企業がイノベーションを起こして、そのイノベーションが世界に広がると、世界のCO2を減らす方向にもつながるかなと思います。

 そうなると世界全体の気候変動が、進展が遅くなる、ないしは改善しますので、例えば日本の、西日本豪雨のようなことがありましたけれども、ああいうようなことが減って、未来の社会が安定したものになる、そういうところにも回りまわってつながると思います」

脱炭素メディア「エナジーシフト」

※前田さんが発行人 兼 編集長を務めるメディア「エナジー・シフト」は脱炭素に関連するニュースが満載ですね。どんなところにポイントをおいているんですか?

「やはり多くの方々に情報を届けたいと思っています。単にそこに存在する情報を横流しにするだけだと、面白いと思っていただけないと思いますので、人がより興味関心を示していただくように、これをどうにか面白いと思っていただけるように出来ないか、掛け算をちょっと意識しながら、日々、人の興味関心に脱炭素が掛け算出来るように意識しながら発信をさせていただいています」

写真協力:エナジーシフト

●その「エナジーシフト」から生まれたYouTube チャンネル 「エナシフTV」 では、前田さんが「ゆーだい」として気候変動や再生可能エネルギーなどをテーマに熱く語ってらっしゃいますけれども、パワフルですよね! “世界でいちばん脱炭素に熱い魂”というフレーズが印象的でしたけど、本当に熱いですね!(笑) 

「ありがとうございます! もう暑苦しいくらいです(笑)。(世界は)脱炭素を、地球の温度を下げにいく方向性ではあるんですけれども、私自身は熱量を上げにいっているんじゃないかっていう(笑)」

●すごく上がっていますよね!(笑) 本当に脱炭素に人生をかけているんだなっていう印象がありますけれども。

「はい! 人生、もう完全に全振りして、脱炭素にかけてやらせていただいています」

●今後はどんな発信をされていきたいですか? 

「そうですね。日本もカーボンニュートラルの宣言が出て、2021年には本当に多くの企業から、脱炭素に関するコミットメントが出てくるようになりました。これが2022年は、加速をしていくことになるかなと思っています。

 そうなると、ひとつひとつの単発の情報だけでなくて、これらがどうつながっていくのか、社会全体を網目状に底上げしていくような形にしていきたいなとに思っていますので、そうした形のハブのひとつになれればなと思って、意識しながらやっていきたいなと思っています」

●カーボンニュートラル、そして脱炭素に向けて、改めてリスナーの皆さんにいちばん伝えたいことってどんなことでしょうか? 

「はい。デジタルの世界が、デジタルトランスフォーメーションと言われましたけれども、人々の生活を変えて、それが当たり前になったというのが、今の世の中だと思うんです。それが起きる前は、誰もこういうようなことが起きるとは思わなかったと思います。

 世界は今、脱炭素の流れというのは、単に持続可能な世界を未来に残すというだけでなく、やはり社会、経済のあり方を変えていくというところにありますので、ぜひアンテナを高く・・・そして社会、経済が便利になる方向に、この流れはいくかなと思いますので、それを上手く活用していただきながら、皆様の生活も豊かになっていくといいかなと思っております」 


INFORMATION

60分でわかる! カーボンニュートラル 超入門

『60分でわかる! カーボンニュートラル 超入門』

 前田さんの新刊。脱炭素に向けた国内外の動きや取り組み、そして技術などが、図やイラストでわかりやすく解説。さらにYouTubeチャンネル「エナシフTV」と連動しているので楽しみながら理解できますよ。おすすめです! 技術評論社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎技術評論社 HP:https://gihyo.jp/book


「エナジーシフト」「エナシフTV」

 前田さんが発行人 兼 編集長を務めるネットの情報メディア「エナジーシフト」、そしてYouTubeチャンネル「エナシフTV」もぜひ見てくださいね。「ゆーだい」さんの熱さに圧倒されると思いますよ。詳しくは「エナジーシフト」のサイトをご覧いただければと思います。

◎エナジーシフト HP:https://energy-shift.com

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