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地球は最高の芸術家〜辺境に住んで、感動を撮る写真家〜

2022/1/30 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、写真家の「野村哲也(のむら・てつや)」さんです。

 野村さんは「地球の息吹」をテーマに、主に辺境や秘境といわれる、人がほとんど立ち入らないフィールドで撮影を行なっていらっしゃいます。

 きょうはそんな「野村」さんに、移住生活をしながら撮影するスタイルや、強く印象に残っている世界の絶景のお話などうかがいます。

☆写真:野村哲也

野村哲也さん

星野道夫さんとの出会い

※1974年、岐阜県生まれの野村さんは高校生の頃に、お兄さんの手ほどきで山登りと写真を始めたそうです。そしてなんと、いまなおたくさんのファンがいる写真家星野道夫さんに出会います。

 やはり星野さんとの出会いは、その後を決定づけるものだったんですか?

「星野道夫さんに会った時は、僕は20歳で星野さんは41歳だったと思うんです。とにもかくにも星野道夫というその背中の大きさを・・・写真の撮り方とか教えてくれるんではなくて、写真家とは何だという背中があまりにも大きすぎて・・・星野さんが亡くなってから色んなかたにお会いしていますけれども、あれ以上の背中のでかい人を見たことがないですね。それを20歳の時に見たっていうのは、やっぱり若かりし頃の自分にも本当に衝撃的だったんだろうなっていうのは、今でも思いますね」

●そういった出会いがあって、写真家になって、定期的に住む場所を変えるという移住生活をしながら撮影されているんですよね? 

「そうですね。星野さんと実際に、自分が重ねられた時間というのは2年しかなくて、2年後に星野さんはロシアのカムチャツカ半島で衝撃的な死を迎えられたんですね。僕としては本当にアラスカに星野さんを追おう、写真もテーマもアラスカでと思っていたんですけど、亡くなってしまって・・・星野さんがいるアラスカが僕は好きだったみたいで、何も手がつかない時に写真の先輩たちから、南極にでも行ってこいよみたいなことを言われたんですよ。

 ペンギンは好きだったので、南極にすごく安く行けるっていう裏技を聞いて、それで行ってみたのが22〜23歳で、南極に2回ほど行かせてもらって、ペンギンの写真集を作りました。

 その時、実は南米のいちばん最南端から南極に行ったんですね。その途中で出会ったパタゴニアの風景、南米のアルゼンチンとチリの南のほうをパタゴニアって言うんですけれども、その風景に惚れてしまって、そこから10年ぐらい通い続けて、やっぱり旅行で、旅で撮れる写真に、ある時、限界を感じてしまい、それであればもう住んでみようと。
 ちょうどその頃、結婚することになって、奥さんと一緒に住んじゃおうということになりました。そこから2年ごとに住処を変えながら、写真を撮り始めるようになったんです」

写真:野村哲也

●今までどんな場所で暮らしてきたんですか? 

「チリの南のほうのパタゴニアで2年間とか、あと南アフリカにも花とか動物の写真を撮るために2年間、またイースター島にも、本を作ろうと思っていたので、全部で6ヶ月ぐらい住んでいました」

●やっぱり住むことで撮れる写真っていうのは、だいぶ変わってくるんですか? 

「まずは、結論は変わります。圧倒的に変わります。でも、そこの土地に自分が染まっていって、僕が変わることで、周りの自然の見え方が変わっていくのか、または自分がそこにいることで、根をおろしたから、仕方がないなっていうことで、自然が僕を受け入れてくれるようになったのか、どっちなのかは分かりません。
 分からないですけれども、明らかに今まで撮れなかった写真、そこの大地が許してくれるような、優しく接してくれるようなことにはなりますね」

地球がNO.1!

※今までに撮影のために訪れた国は、何カ国くらいあるんですか?

「今、国連加盟国は全部で193カ国あるんですけれども、そのうちの150カ国ほどに足を踏み入れています」

●どうやってこの国に行こうとか、撮影場所を決めるんですか? 

「気に入った場所(笑)。でも基本的には僕は、友達にも冷たいやつだって、たまに言われるんですけれども・・・人間も好きなんですが、大好きなんですけれども、それよりも地球のほうが好きなんですよ。
 人間よりも地球のほうに興味があるので、簡単に言ってしまうと、人間が作った最高峰の盆栽と、グランドキャニオンと、どっちが見たいって言われたら、僕は別に盆栽が嫌いじゃないですけれども、やっぱりグランドキャニオンを見たいんですよね。

 地球が創り上げた、盆栽も自然が創り上げているんですけれども、人の手が全く入っていない、地球が創り上げた造形物のほうに僕は興味があるので、そういう造形物が残っているところを重点的に、やっぱり辺境とか秘境とか、皆さんがなかなか行かない自然が多いところ、大自然の中に行きたいというか、そういうところのほうが多いかもしれないですね」

●これまで野村さんが訪れた場所の中で、個人的にここの絶景すごかった! っていう場所を3つほど挙げていただきたいんですけれども・・・。

「もし答えをひとつって言うなら、地球です! 地球があまりにも美しすぎるので、地球がすべてで、地球がNO.1だと思っていますし、地球が最高の芸術家だとも思っています。
 場所を3つって言われると、難しいですけど、まずは地球が創り上げた壮大なもののひとつで、南アフリカにある砂漠が集中的な雨によって花園になるんですよ。それが600キロ続くんですよ。600キロって、東京から岡山まで新幹線に乗って行ったら、左右が全部花園だったら、ちょっとびっくりしません?」

写真:野村哲也

●うわー! すごいですね、そう考えると。

「そんな場所もありますし、この前ちょうどNHKの『ダーウィンが来た』かな。 自分がガイドで入ったんですけれども、ホタル(の乱舞)が100キロ続いたらビビりません?」

●ええ〜! すごい! 

「それ、アルゼンチンにあるんですよ。僕たちの中で絶対そんなのあり得ないっていうものが、地球はそんなにちっぽけじゃないので、爆発的な自然(現象)を産むんですよね。そんなことあり得ないっていうことがあり得るのが地球なんですね。
 もちろんパタゴニアの山々の険しさっていうか美しさもまた絶景ですね。3つ挙げろと言われたら、それですかね」

(編集部注:野村さんに海外でのコミュニケーションはどうされているのか、お聞きしたら、言葉は英語とスペイン語はしゃべれるそうですが、どちらも通じないときは、笑顔とオーバーリアクションでコミュニケーションをとるとおしゃっていましたよ。笑顔は共通言語なんですね。

 野村さんはこのコロナ禍で変わったこととして、みんなが爆笑しなくなったと言ってましたよ。心のことを考えるとマイナスだな〜と心配されています。大自然の中に出かける野村さんは、動物たちと一緒に大笑いしているとおっしゃっていましたよ)

世界に誇れる千葉の宝

※野村さんはいま、新しい本を準備中です。その内容は、国内47都道府県の素晴らしい場所をひとつずつ紹介する、というものなんだそうですが、どんなテーマで選んでいるのか、ちょっとだけ教えていただけますか。

「今回はちょうど今、縄文が数年前からやっぱりブームになっているんですよね。少し前に世界遺産に北海道と北東北(の縄文遺跡群)がなりましたけれども、縄文文化はあまりにも面白くて、そういう目線で僕は47都道府県を見たことがなかったので、新たな目線でまた47都道府県の取材をずっとしてきたこともありましたね」

●例えばどういう場所になるんですか? 

「縄文というのは日本中全部にあったんです。僕たちの持っている死生観とか、あと僕たちの核になっている、日本人ってどういう宗教観ですかって言った時に、もちろん仏教徒とかキリスト教徒とかイスラム教徒とか、色々いらっしゃると思いますけれども、基本的にいちばん近いもののひとつは古神道からきていて、八百万(やおよろず)の神信仰というか、アニミズム信仰というか、全ての巨木、全ての巨石、そこに神を見るっていう、だから僕たち日本人はその全部が神なんですよね。

 周りにいる全てのもの、関わっているものが神様、ひとりだけじゃなくて、八百万信仰で八百万の神がいるっていう、数えられないくらいの神に自分たちは包まれていて、生かしてもらっているっていう文化が日本文化の神髄のひとつだと思っているんです。
 そういうのが実は縄文(時代)からあったことも、縄文文化を学ぶことによって確信したというか、なんて昔の日本は高度だったんだろうっていうことを、遺跡として色んな方たちが必死に守ってきてくれたおかげで、今の僕たちがそれを拝見する、見て学ぶことができるのは非常にありがたいことだなって思いますね」

●例えばベイエフエムの地元千葉だったら、どこを撮影されるんですか? 

「千葉はいいところなんですよ。本当に好きなんです、海も綺麗ですし・・・。僕が今、新しい本で取り上げているのは自然が創ったもので、そんなに有名ではなくて、世界に誇れるものなんですよ、むしろ世界唯一のもの。僕はそれが47都道府県に必ずひとつあると思っています。世界唯一です。日本唯一じゃなくて、世界一と言っていいものです。
 それぞれ47都道府県の世界一が必ずあるんですけど、千葉は自然っていう視点で見た時にちょっと困ったことがあって、でもこれは絶対何かあると思って探していたら、ぶっちぎり世界一のものがありました!」

●え、何でしょう? 

「チバニアンです!」

●あ〜! チバニアン! 

「日本中の名前で、(地質)時代の名前に千葉っていう、チバニアンっていう名前が付けられているのは、日本では千葉しかないですからね。それは世界に誇る、俺たちの県は世界の地質年代の、一部の名前として認定されてんだぞって、千葉人は絶対に自信を持って、異国の方たち、または県外の方たちに胸を張って言うべきですね! とんでもなく面白かったです。
 チバニアン自体の地球が創り上げた本当に美しいアートが、あんな壁面にあんなにくっきりわかりやすく、それもあんなに簡単に見られてしまう。もう僕は本当に奇跡だと思いますよ。千葉の宝だと思います」

写真:野村哲也

思いっきり感動しようぜ!

※野村さんが主催されているディープ・ツアーがありますよね。これはどんなツアーなんですか?

「僕は基本的に海外にいるので、今までにアラスカやら、ペルーのマチュピチュとか、パタゴニアとか、色んな海外のツアーをしてきているんです。今回1年半、日本にほぼ軟禁状態なので、それだったら国内で、自分が大好きなところ=人が全く知らないところ、人がいないところに行くのが僕の仕事なので、旅行や観光情報サイトにはほぼ載っていないところだけを巡るツアーをしています。
 毎月(行き先を)1個ずつ決めて、少し前は沖縄のヤンバルに人をお連れしたんですけど、誰にも会いませんでした(笑)」

●本当ですか!? 

「人が来るところに行かないので(笑)。皆さんにも感動してもらいたくて、来月は高知に行って、実は日本最大の磐座(いわくら)があるので、そこの磐座をみんなで巡ろうとか。
 3月は北海道に、モモンガってご存知ですか? 真っ白くて目がくりくりのモモンガがいるんですけど、普通会いに行くって言ってもなかなか見られないんですよ。でも一応、僕は写真家なので、モモンガの家を7個ぐらい知っているんですよ。なので、ツアーが始まる前に7個のモモンガの家を、コンコンコン、いますか〜? いますか〜? って、いるよって言ったところに皆さんをお連れしようかなとか」

写真:野村哲也

●行き先も内容もディープになっているんですね。

「そうですね。屋久島に行っても縄文杉には絶対行かないとか。でも人が知らない、縄文杉に負けない杉があるので、その杉に会いにみんなで行きましょうとか」

●定番の場所は行かないんですね? 

「一切行かない。だって定番の場所に行っちゃったらディープにならないから(笑)」

●そうか、そうですよね! 面白い、興味深いですね。

「普通、見られないものを見ると、人ってやっぱり感動するんですよね。そのディープツアーには、僕はいつも言っているんですけど、予習は必要ない、予習してこなくて結構ですと。そもそもネットにも載っていないですから、予習のしようがないんですけど。
 載っていたとしても予習なんていらない。僕としては、いちばん何が大切かっていうのは、最初に自分がまっさらな、何も知らない状態で会うファーストインパクト、何も知らなかった時に出会って感動したことって、一生で一度きりしかないんですよ。

 ファーストコンタクトまでに、予習や復習をしていると色んなバイアスがかかっちゃって、つまんなくなっちゃうと僕は思っています。予習は一切してこずにそのままボーンって放り出しますから、放り出したところで自分の五感を最大限研ぎ澄まして、まず感じてほしいと。例えばモモンガがいたら、そのモモンガの可愛らしさにまず感動して大きく心を揺らしてほしい。

 心揺らしたあとにもしかしてモモンガに興味を抱いたら、モモンガの勉強をして復習すればいい、そっちのほうが僕は全然学びとしていいんではないかなと、頭にも定着するんじゃないのかなと思っているんですね。

 実は感動も僕はこのコロナ禍で皆さんが失ったもののひとつ、笑いと同じで失ったものではないかなと思っていて、せっかくだったらおもいっきり感動しようぜ! 感動させる場には自分が連れてったるから! って思ってます」

●いいですね〜!

「そこでゲラゲラ笑えればもう言うことないですよね。感動して笑って、最後に学べれば、僕としては言うことないかなって思いますね」

写真:野村哲也

どう感じるかはお任せします

※改めて写真を通して、どんなことを伝えたいですか?

「多分、写真家の方たちは、自分の写真を見て、こういう風に勇気を与えたいです とか、なんとかを感じて欲しいですとか、そう言う方も多いとは思うんですけど、僕はそんなことは言えなくて、写真を見て感じるのはそれぞれの方たちなので、そこはその人たちにお任せします。

 僕は、僕の写真を見て、こういうことを感じてほしいとか、それは僕の中ではちょっとおこがましいなって。僕はたまたま自分が見て感動した大自然を出来るだけそのまま、そこのエネルギーも気も含めて封じ込めた状態で写真を撮ってきているつもりなので、その気やエネルギーを感じてもらって、皆さんがどう思うかは、当然僕と同じじゃなくていいですし、違って当たり前ですし、何か感じたことを大切にしてもらえれば、僕はいいのかなって思っています」

☆この他の野村哲也さんのトークもご覧下さい。


INFORMATION

 野村さんの写真、そして近況については野村さんのオフィシャルサイト、そしてブログをぜひご覧ください。素晴らしい写真がたくさん載っています。ブログはまめに更新されていて、野村さんがいま何をしているか、よく分かりますよ。

◎オフィシャルサイト:http://www.glacierblue.org/home.shtml

◎ブログ:http://fieldvill.blog115.fc2.com/

 野村さんが主催するディープツアーはいずれも定員に達していて、キャンセル待ちの状態だそうです。なお、新型コロナウィルスの影響で延期または中止になることもあります。

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