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山村の活性化にもつながる森林レンタルサービス「フォレンタ」

2022/2/6 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、岐阜県東白川村(ひがししらかわむら)で林業と製材業を営む「田口房国(たぐち・ふさくに)」さんです。

 田口さんは1977年、岐阜県東白川村生まれ。学習院大学を卒業後、家業の林業・製材会社に就職。2007年に三代目社長となり、会社名を「山共(やまきょう)」に変更。理念は、会社名そのもので「山と共に、あしたをつくる」としています。

 そして、仲間とともにおよそ400ヘクタール、東京ドーム100個分の、会社の山林を管理。木を植え、育て、伐採し、板や柱などを作る仕事を日々進めていらっしゃいます。ちなみに田口さんのキャッチフレーズは「カントリージェントルマン」なんですよ。

 田口さんは、キャンプ好きに向けた森林レンタルサービス「forenta(フォレンタ)」を2年前に始め、アウトドア派だけでなく、全国の林業関係者からも注目を集めています。

 きょうはそんな田口さんに「フォレンタ」のシステムや特徴、そして林業や山村への思いについてお話しいただきます。

☆写真協力:田口房国

田口房国さん

東濃ヒノキの産地

※森林レンタルサービス「フォレンタ」のお話の前に、田口さんが生まれ育った、岐阜県東白川村はどんなところなのか、お話しいただきました。

「岐阜県には村がふたつしかなくて、ひとつはこの東白川村、もうひとつは合掌造りで有名な白川村があります。名前は東が付くか付かないかの差なんですけれども、場所は全然違っていて、東白川村には合掌造りの家はありません。
 昔はよく間違えて、こっちに来られるかたがいらっしゃったので、申し訳ないという気持ちがありましたね。周りは自然に囲まれていて、下呂温泉なんかも近くて、人口が2000人くらいの本当にほのぼのとしたいいところだと思っています」

写真協力:田口房国

●木曽地方の木材の産地なんですよね? 

「そうですね。木曽というのは厳密には長野県のほうを言います。ただその長野県と隣接しているような場所ですので、こっちのほうを裏木曽って言うんですけども、木曽の裏側というような感じですね。そのような場所です」

●主な木はなんですか? 

「やっぱり有名なのはヒノキですね。木曽ヒノキが元々有名ですけれども、このあたりは岐阜県美濃地方の東のほうなので、東濃という地域で呼ばれます。ここのヒノキを東濃ヒノキと言い、これもひとつの銘柄材として有名です。このヒノキとかスギのような針葉樹ですね。建築用材に使われる材料、この辺が有名かなと思います」

●ずっと昔から森作りの技術や文化が、受け継がれてきているような場所なんですか? 

「そうですね。うちの近くには神宮備林という伊勢神宮を建てるための専用の山、これ国有林ですけれども、そういうものもあったりして、江戸時代、もしくはそれ以前、昔からの木材の産地ということになっています」

●現在の林業が置かれている状況は、どうなんでしょうか? 

「日本全国、同じようなものかもしれませんけれども、木というのは育てるのにやっぱり50年とか100年とか、そういう時間が必要なんですね。それを維持しながら、その時その時でそこに携わる人たちがちゃんと稼ぎながら、人を入れながら、新陳代謝を図りながらやっていくという意味では、短期的にも長期的にも見ていかなければいけない仕事ですので、そういったところは非常に難しいかなと・・・。

 木材の単価そのものが昔に比べると、かなり下がっているというところもありますし、肉体労働でもあるし、天気に左右される仕事でもあります。そういったところからなかなか、なり手が不足していたりとか、色々な問題があるかなと思います」

写真協力:田口房国

山林購入はハードルが高い。ならばレンタル!

※会社の事業として2020年に森林レンタルサービス「フォレンタ」をスタートされました。このアイデアを思いついたのは田口さんですよね。何かきっかけがあったんですか?

「自粛期間がありましたよね。感染拡大が始まって最初の年の4月から6月あたりですかね。僕自身もあまり外に出ることなく、家でYouTubeを見たりとかしていました。その時にキャンプが最近流行っていると・・・ソロキャンプだとか色んな形で流行っているよっていうのを見ました。

 キャンプをしたいがために、山林を購入されるかたも増えているというのを見た時に、山林の購入はやっぱりハードルが高いというか、購入したあと、その山林に対して、単に自分の持ち物というだけではなくて、社会的な役割も山林というのは持っています。そういったところの責任の問題であるとか、もちろん登記とか税金の問題とか、諸々のことを考えていくと、山林を購入するというのはハードルが高いんだろうなということを思いました。

 でも一方で、一般のかたが森林に足を踏み入れてくれることは、僕としてはとても歓迎すべきことであると思っているので、それならレンタルという形をとれば、山側の人もそれを利用したい側の人も、両方にとっていいんじゃないかなとひらめいたというか、思いつきましたね」

写真協力:田口房国

●森林のレンタルサービスって本当に面白いなって感じたんですけれども、実際スタートするまではなかなか大変だったんじゃないですか? 

「そうですね。実際に森林をレンタルするというサービスは、それまで日本ではなかったと思います。僕もそういう事例がないか(ネットで)調べたんですけれども、やっぱりヒットしませんでした。
 そんな中、その仕組みをどう作るかがいちばん悩んだところというか・・・実際に借りてくれる人もいるかどうか分からないので、とりあえず自社林で試しにやってみて、その反応を見ようかなと。そんな感じで、とにかくやってみようと思ってやりましたね」

●募集をスタートしたのはいつ頃だったんですか? 

「2020年の11月に募集を始めましたね」

●反響はいかがでした? 

「先ほども言いましたように、まったく今までにないサービスですし、もちろん知名度もゼロからのスタートでしたので、本当にどれだけ人が来てくれるのかなというのが不安でした。

 とりあえず自分の山を17区画に区切って、17人の物好きさんがいてくれればいいかなと思って募集を始めました。募集期間は1か月半くらいとっていたんですよ。そうしたら最初の1週間で、エントリーが100組を超えて、なんかものすごく来た! と、逆にちょっと焦って、1か月半もやったら大変なことになるなと思って、1か月に短縮しまして、11月いっぱいまで。1か月募集して、最終的には444組のエントリーがありましたね」

(編集部注:ここで「フォレンタ」のシステムや使用料について説明しておきましょう。岐阜県東白川村の田口さんの山林の場合は、ひと区画300坪、年間の使用料は66,000円、月割りにすると5,500円。借りるほうからすると、これは安いですよね。田口さんいわく、山林の所有者にとっては、こんなにもらっていいの、という金額だそうです。この料金設定は両者にとっていい価格帯ではないかともおっしゃっていました。

 使用する際のルールについては、借りた区画内の細い木は伐ってもよく、キノコや山菜なども採っていいそうです。焚き火もOKですが、直火は禁止。焚き火台などを使い、延焼を防ぐ手立てはしっかりしてくださいとのこと。スギやヒノキを植えた大事な山林をお借りするわけですから、火の取り扱いに十分に注意するのは当たり前ですよね。「フォレンタ」のシステムやルールなど、詳しくはオフィシャルサイトhttps://www.forenta.net/ をご覧ください。

フォレンタが集落に!?

写真協力:田口房国

※「フォレンタ」ならではの特徴というと、どんなことがありますか?

「やっぱり年間契約というのがいちばん大きな特徴かなと思っています。年間契約ですので、チェックイン、チェックアウトだとか、予約というものが利用者様にとっては必要がないんですね。
 例えば急にきょうキャンプしたいな〜って思い立っても来ていただけますし、もちろんいつ帰っていただいても構いません。まず、そういう気軽さというのがあるかなと思います。

 あと、これ僕自身も想定していなかったことなんですけども、最初は山を借りたかたがテントを持ってきて、泊まって帰っていく、普通のキャンプをされていくんだろうなって思っていたら、そこに皆さん、いわゆるブッシュクラフトというか、物を作り始めたんですね。

 落ちている木を拾ってきて、柵を作ったりとかデッキを作ったりとか、もしくは小屋のようなものを作ったりとかして、だんだんひとつの集落が出来上がってきているような、なんかそんな感じなんです。
 1泊2日で帰るようなところだったら絶対無理ですけれども、1年間借りていられる、1年後に更新すればもっと借りられますけれども、そういう長期スパンで同じところを借りていられるっていうところから、皆さん色々なものを作り始めていると、自分だけの秘密基地のようなものを作り始めている、これがフォレンタとほかのキャンプ場の大きな違いじゃないかなと思いますね」

写真協力:田口房国

●実際、利用されているかたの反応はどんな感じですか?

「そうですね・・・このフォレンタの場所は、本当に電気も水道もない、全然設備が整っていないところなんですね。仮設トイレをいくつか置いているというくらいの設備しかなくて、本当に、ここに何で皆さん来てくれるのかなっていうのが僕自身も不思議だったんですね。
 僕自身も度々(様子を)見に行きまして、ご利用者さんとお話ししていく中で、皆さん、ここのどこがいいんですか? って聞くと、いちばん最初に出てくるのは、静かなところっていうふうに言っていただけるんですね。

 ご利用されているかたは、このあたりで言うと名古屋とか、もしくは東京や神奈川からもいらっしゃっているかたもいるんですね。やっぱり日常、どうしても喧騒というか、なんらか音が溢れているところで生活をされていて、週末くらいは静かなところで、自分だけの時間を過ごしたいというようなところが、いちばんニーズとしてあったのかなと。
 僕らにとってみれば、静かすぎてごめんなさいという感じですけど、そういうところがよかったのかなと思いましたね」

(編集部注:実は田口さん、キャンプの経験がほとんどなかったので、だれかにキャンプの大事なポイントを教えてもらいたいと、YouTubeで調べていたら、以前この番組にも出てくださった、岐阜県出身のさばいどる「かほなん」さんを見つけ、アドバイスをお願いしたそうです。かほなんさんは快く引き受けてくださり、現地にも来て、いろいろアドバイスをしてくださったそうですよ)

ドイツでは、森林はみんなのもの!?

※田口さんは以前、ドイツの山岳地帯シュヴァルツヴァルト、これはドイツ語で「黒い森」という意味があるんですが、そんな針葉樹の森が広がる場所に視察と研修のために行き、いろいろ見て回ったそうです。滞在中に、なにか発見というか、参考になることはありましたか?

「いちばん驚いたのは、ドイツの人って休みの日になると、みんな森林に遊びに行くんですね」

●へぇ〜! 

「もちろん、みんながみんなじゃないでしょうけれども、多くの一般市民のかたが森林に自由に入っていって、そこでハイキングを楽しんだりバーベキューをしたり自転車に乗ったりだとか、そういうことをされているんですね。そこにいちばん驚きましたね。日本もすごく森林は多いんですけれども、日本でそういう光景って見たことないなと。

 僕も田舎に住んでいますけれども、そういう光景は全然見なくて、一般の人が森林に気楽に入れるのが、僕らの木材産業にとってみても、そういう文化があるのがとても心強いことですし、森林が一般の人に必要とされているんだなっていう、それがすごく伝わってきたんですね。

 もちろんそこに仕組みだとか法律だとか、そういったものが整備されている背景もあるんでしょうけれども、そういうのが日本でも実現できるといいなと思ったのも、このフォレンタを始めたひとつのきっかけですね」

●森林が日常の一部になっているんですね。

「そうですね。日常の一部ですし、みんなのものであるという意識が高いんですね。ドイツも森林は個人が所有しているものでもあるんですけれども、同時にみんなのもの、公共のものということで、自由に森に入ってもいい権利というのがちゃんとあるらしいんですね。それって素敵だなって思いましたね。

 どうしても日本だと、個人所有の森林には勝手に入っちゃダメ! って、個人のかたが、どこか強くなっちゃう部分があったりするんですね。歴史的なバックグラウンドもあるんでしょうけれども、ヨーロッパのかたがたのそういう感覚って素敵だなって思いましたね」

山村に自信と誇りを

※「フォレンタ」のサイトで知ったんですが、静岡にも「フォレンタ」があるんですね?

「はい、そうです。この仕組みをフランチャイズにしようと思いまして、その第1号として、静岡の伊東市で”フォレンタ静岡”として、去年の暮れにオープンしましたね」

●今後は色んな場所で展開していくという感じなんでしょうか? 

「はい、もうすでに日本全国から、うちの山でも出来ないかな? というようなお問い合わせを毎日のようにいただいています。こういう風に山を活用したいという山主さん側のニーズというか希望もありますし、山を利用したいという利用者様側のニーズもありますので、それにお答えするような形で、どんどん広げていければ嬉しいなと思っています」

写真協力:田口房国

●山村地区が抱えている問題の解決にもつながりそうですよね。

「そうですね。このフォレンタという事業が、単に今キャンプブームだから、それに乗っかってというだけではなくて、僕自身の思いですけれども、森林が今まではそこに生えている木材の価値でしか、はかられてこなかったんですね。

 僕も木材を取り扱う仕事をしていますけれども、木材の価値が下がったことによって、森林の価値が下がってしまう・・・この東白川村は90%が森林ですけれども、森林の価値が下がるということは、この山村の価値そのものが下がってしまうというふうに思ってしまうんですね。

 山村の価値が下がるということは、そこに住んでいらっしゃるかたがたが、みんな自信だとか誇りだとかを失って、例えば子供に、もうこんなところに住まないほうがいいぞと。大人になったら名古屋へ行け、東京へ行けとか言って、どんどん(子供を)送り出して、過疎化が進んでいってしまう・・・そういう悪循環になってしまうと思っているんですね。

 でも、一方で森林の価値は木材だけじゃなくって、こういうキャンプ利用もそうですし、そこにまだまだたくさんの魅力があって、恵みがあって、そういったところを再認識出来れば、自ずと森林の価値の高まりにつながっていきますし、それが地元に住んでいる人たちの自信とか誇りにもつながっていくと思うんです。

 だからやっぱり、この森林というものに、新しい価値を見出すことで、この山村地域そのものが自信や誇りを取り戻して、また盛り上がっていってくれればいいなというのが僕の思いですね」


INFORMATION

写真協力:田口房国

 田口さんはいわく、山村には、森が醸し出す空気、水、そして雰囲気がある。「フォレンタ」を通じて、都会のかたが山村にもっと来ていただけるような、そんな仕組みづくりをしていきたいともおっしゃっていました。

 「フォレンタ」について詳しくは、オフィシャルサイトをご覧ください。

◎「フォレンタ」HP:https://www.forenta.net/

 田口さんは林業や製材業の仕事のほかに、ふるさと東白川村の文化や暮らしを広く発信する活動もされています。ぜひ田口さん個人のサイトも見てくださいね。

◎田口房国さんHP:https://www.fusakuni.com/

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