毎回スペシャルなゲストをお迎えし、
自然にまつわるトークや音楽をお送りする1時間。

生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで
幅広く取り上げご紹介しています。

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2022年7月のゲスト一覧

2022/7/31 UP!

◎篠宮龍三(沖縄在住のフリーダイバー・写真家)
ザトウクジラに向き合って10年〜沖縄の海で起きた奇跡』(2022.07.31)

◎piro piro piccolo(野鳥と山登りが大好きなイラストレーター)
夏山の鳥に会いに行こう!』(2022.07.24)

◎Miyuu(自然と旅を愛するシンガー・ソングライター)
30日間6000キロ! キャンピングカーの旅〜Miyuuの自然と旅と音楽と〜』(2022.07.17)

◎バットフィッシャーアキコ(NPO法人「日本ガラパゴスの会」のスタッフ)
秘魚「ガラパゴスバットフィッシュ」に魅せられて』(2022.07.10)

◎青木江梨子(埼玉県ときがわ町で「キャンプ民泊NONIWA」を運営)
野あそび夫婦の「キャンプ民泊NONIWA」〜キャンプ未経験者におすすめ!』(2022.07.03)

ザトウクジラに向き合って10年〜沖縄の海で起きた奇跡

2022/7/31 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、沖縄在住のフリーダイバーで写真家の「篠宮龍三(しのみや・りゅうぞう)」さんです。

 篠宮さんは1976年、埼玉県出身。人間で初めて素潜りで100メートル超えを達成したジャック・マイヨールに触発されてフリーダイビングの道へ。国内唯一のプロ選手として、世界を転戦し、2010年に115メートルというアジア記録を樹立。

 そして2016年に第一線を退いたあとは、沖縄で現役の頃から続けていた、フリーダイビングのスクールや大会を運営。さらに「ONE OCEAN〜海はひとつ」をテーマにした活動もされています。ホームの海は宜野湾だそうです。

 そんな篠宮さんが先頃、『HERITAGE(ヘリテージ)』という写真集を出されました。この本は、沖縄近海で捉えたザトウクジラだけを掲載した写真集で、篠宮さんにとっては記念すべき1冊目の写真集です。

 水中写真は現役の頃から撮っていたそうですが、野生の生き物が相手の撮影は、競技よりも難しいとのこと。酸素ボンベはつけずに、重いカメラを持って潜る、一息1〜2分の勝負なので、いい写真が撮れた時の感慨はひとしおだそうです。

 きょうは、10年撮り続けているザトウクジラへの思いと、海中での驚きのエピソードなどお話しいただきます。

☆写真:篠宮龍三

篠宮龍三さん
篠宮龍三さん

HERITAGEに込めた思い

※改めて、この『HERITAGE』という写真集を出そうと思ったのは、どうしてなんですか?

「10年ぐらい、ホエールスイムというんですけれども、冬の間、沖縄にやってくるザトウクジラと一緒に泳いだり、撮影をしたりということにチャレンジしてきたんです。10年前は、なかなかやりかたもわからずに、相手は野生動物ですから、どうやって向こうの機嫌を見極めて、うまくアプローチをして撮影をしたりとか、そういうことがまったくわからなかったんですね。

 ここ2〜3年で、うまく撮れるようになってきましたし、もしかしたらですけど、ザトウクジラ全体の数が増えているような感じで、より見やすくというか、アプローチしやすくなってきましたので、ひとつ10年という区切りで形に残しておきたいなと思って写真集を作りました」

●撮影場所は沖縄の海のみなんですか?

「はい、沖縄の北部と奄美と、あとは八重山のほうですね。だいたいこの3箇所で撮影しています」

『HERITEGE』

●「HERITAGE」というタイトルに込められた思いは?

「沖縄本島北部と八重山と奄美大島は、去年世界遺産に登録されましたよね。その世界遺産は、英語でいうと”WORLD HERITAGE”ですよね。そこからワンワードもらって”HERITAGE”というタイトルにしたんですけれども、日本語に訳すと多分、伝承とか継承とか、後世に残すという意味があると思うんです。

 10年撮ってきて、この先の10年もやっぱりクジラたちが安心して、また沖縄の海に毎年毎年戻って来てくれるようにという、そういう思いを込めて”HERITAGE”という名前をつけました」

●ザトウクジラは一年中、沖縄の海にいるわけではないんですよね?

「そうなんですよ。夏はロシアとかアラスカのほうにいて、いっぱい餌を食べて、身体を太らせて、春になると沖縄に南下して来て、出産とか子育てとか繁殖活動を行なって、それで3〜4ヶ月経ったら、また北のほうに帰っていくっていうことの繰り返しをしているんですね」

●撮影しようと思っても、そんなにいつもは出会えないっていう感じなんですね。

「(出会えるのは)冬の間、3ヶ月くらいですかね」

モノクロ写真は肌の色!?

※この写真集『HERITAGE』は全編モノクロ写真なんですが、あえてモノクロで表現したのはどうしてなんですか?

「クジラの肌というか、地肌がやっぱりモノクロなんですよ。黒と白とそれからグレーの部分があるという感じなんですけども、その色そのものを出すには、写真をモノクロにしてしまったほうが、より雰囲気としては近づけるなというのもありますし、青い海に浮かんでいるクジラってとても綺麗だと思うんですけれども、それほど海は青くはないんです、実は。沖縄の海は結構プランクトンが豊富で、ちょっと緑がかっているんですね。

 見た目をよくするために、編集でどんどん青くしちゃったりとか、映える写真にしてしまうんですけど、それだと本質というか、本来のクジラの肌の色は出なくなっちゃうかなとも思いました。見た目が華やかな写真も素敵だと思うんですけど、クジラのそのものの色を出したいなと思って、モノクロで仕上げました」

写真:篠宮龍三

●なるほどー。写真を見ると、かなり近づいて撮影されているように感じるんですが・・・?

「そんなに近づきすぎるとすごく嫌がるんですよね。野生動物ですし、警戒もしますし、こっちに来るなっていうふうに腕を振ってくる時もあります。
 だから、そういうふうにストレスを与えるようなことはしたくないなって思って、レンズを変えたり、ちょっと望遠気味のレンズを使ったりして、寄ったような写真にしているという感じです。そんなにすぐ近くまでは寄らないように気をつけていますね」

●一日かけて撮影に臨むとして、だいたい何頭くらいに出会えるんですか?

「そうですね。いちばんピークの時期、3月中旬とかなんですけれども、5頭から10頭という感じですかね。まあ1頭会えればいいという時もあるし、1頭も会えないという時もありますので、やっぱり自然相手のものだなと思いますね」

表情は目に現れる

※これまでに出会ったザトウクジラで、いちばん大きな個体は全長、何メートルくらいですか?

「おそらく15メートルは超えていると思いますね」

●えーっ、15メートル! 怖くないですか? 

「やっぱり15メートルを超えてくると、かなり大きな部類に入ってきますし、水中では屈折率の関係で物が1.4倍に見えるんですよ。なので余計大きく見えるんですね。そういうかなり大きな個体に会った時は、圧倒されて怖くなりますね」

●それはそうですよね〜。ザトウクジラと目が合うこともあるんですか?

「もちろん! やっぱり目を見て、相手の様子をうかがうことが、まず大事だと思っているんですよ。目に表情が現れるんですね、意志というか感情というか。怒っているとか近寄るなとか、受け入れてくれているとかね。

 そういうのがすべて目に現れるので、まず目を見て確認をして、もう少し寄っても大丈夫かなとか、これはもう引いた方がいいかなとか。特に子供を連れている、子育てしているお母さんクジラは、神経質になっている場合がありますので、そういう時は離れて見守るとか、そういうこともしていますね」

写真:篠宮龍三

●目でわかるんですか。すごい!

「まあそうですね。やっぱり同じ哺乳類ですし、ガッと(目を)見開いている時は、怒っていたり驚いていたりとか、そういう状態なので、そういう時は離れるようにしますね」

●ザトウクジラって、近くにいる人間を認知して、大きなヒレが当たらないように避けてくれた、なんて話も聞くこともあるんですけど、そういうこともあるんですか? 

「そうですね。とても繊細な生き物なので、間違ってぶつかっちゃったりとか、そういうことは、ほとんどないんですよね。すごく大きな巨体で、胸ビレの長さだけで4メートルくらいあるんですけど、それでもぶつからずにうまく身をかわして避けていくので、すごいなって思いますね」

●撮影中に心がけていることはありますか?

「やっぱり海の中ですから、自然相手の野生動物相手なので、安全に行って帰ってくることをまず大事にしています。それと相手にストレスをかけすぎないっていうか、追いかけすぎないようにしてますね。

 親子クジラだと、お母さんクジラがちょっと神経質になっている場合もあるし、子供のほうが逆に興味を持って寄って来てしまうこともあるし、そういう時は逃げないといけないですけどね。そういうふうに向こうの機嫌もよく見ながら、あまり嫌な思いをさせないようにと考えていますけどね」

ザトウクジラの歌

※ザトウクジラは「歌うクジラ」としても知られていると思うんですが、篠宮さんは、ザトウクジラの歌を聴いたことはありますか?

写真:篠宮龍三

「はい、歌うクジラのことを”シンガー”っていうんです。冬になると、素潜りのトレーニングや講習中によく水底で聴こえてくるんですね。その声がとても、なんというか、切ないというか、狂おしいというか、そういう歌声なんです。

 仲間を呼んでいるとか、いろんな説があるんですけれども、オスが歌うので、メスに対して歌っているという説も昔はありましたね。最近では、オスがほかのオスに歌っているとか、オスが小さい子クジラに歌っているとか、そういう研究もあるみたいですね」

●どういう歌声なんですか?

「低い音が多いですかね。唸るような、牛さんが水中で唸っているような感じなんですけど」

●へぇ〜!

沖縄で有名なザトウクジラ

※ザトウクジラの撮影中に遭遇した印象的な出来事ってありますか?

「沖縄に毎年戻ってくる”Z(ゼット)”っていうクジラがいるんです。沖縄でホエールウォッチングとかホエールスイムをしている人の間では、とても人気のある有名なクジラなんですね。そのクジラをどうしても何年もかけて撮影していきたいなって思うようになって、ようやくここ数年撮れるようになったんです。

 普段そのZは、けっこう走り回っていることが多くて、早いんですよ、スピードが。ほかのメスを追いかけていたりすることが多いんですけれでも、たまたま止まっていることがありました。これはすごくラッキーだなって思って、今年何回か止まっているZを撮れたんです。
 向こうもこちらの存在に気がついて、くるっと振り返って向かい合わせのような形で向き合っちゃったんですね。もうすごくびっくりしまして・・・。

 向こうもとても興味を持ってくれたというか、嫌がらずにずーっと何秒か停止してくれました。その瞬間は撮影じゃなくて、どういう機嫌なのかなとか、どういう目をしているのかなとか、もっと探って仲良くなりたいって言ったら、ちょっと変ですけど、もっと自分の肉眼で見て、その場の空気とかその感覚とか時間を感じたいな、共有したいなと思いましたね」

写真:篠宮龍三

●Zと呼ばれるようになったのは、どうしてなんですか?

「尾ビレの右側にアルファベットのZみたいな文字が、文字のようにみえるキズが刻まれているんですよ。たぶん岩場とか珊瑚礁で擦れたあとだと思うんですけれども、それで通称Zってみんな呼んでいるんです。30年ほど前から毎年、沖縄に来ているみたいなんですね。とても古株というか身体もすごく大きいですし、とても見応えのあるクジラなんですよ」

●どれくらい大きいんですか?

「やはり15メートル以上はあると思いますね」

●わぁ〜!

ONE OCEAN〜海はひとつ

※長年、海と関わっている篠宮さんは、海の変化も感じていて、特にここ数年、沖縄の海の水温が高くなっていることと、海洋ゴミの問題を危惧されています。

 活動のテーマにもなっている「ONE OCEAN〜海はひとつ」というメッセージには、どんな思いが込められているのか、改めて教えてください。

「プラスチックゴミとかビニールのゴミは、海中に漂ったり浮かんだりして、いろんな国に流れていってしまうんですよね。自分が住んでいる沖縄でも、文字を読むと隣の国のゴミがあるなと思いますし、こっちでも出しているゴミが太平洋のほうにも行ってしまっているでしょうし、それはもうお互い様だと思うんですね。

 やっぱり(海は)ひとつにつながっているからこそ、大切にしていかなければいけないと思いますよね。海がなければ、地球の気候というのは安定しないですし、海がすべての生き物のルーツでもありますから、海に感謝して大切にしていかないといけないなと思いますね」

☆この他の篠宮龍三さんのトークもご覧下さい

写真:篠宮龍三

INFORMATION

『HERITEGE』

『HERITEGE』

 篠宮さんの初めての写真集です。沖縄の近海で10年撮り続けているザトウクジラだけの写真集。全編モノクロ写真だからこそ感じるクジラの迫力、その雄大さに圧倒されます。静寂さも感じますよ。沖縄では有名なZと呼ばれるザトウクジラの写真も掲載、見応えのある重厚な写真集です。ぜひご覧ください。お買い求めは篠宮さんのオフィシャルサイトから、どうぞ。

 篠宮さんが案内する各種ツアーもありますよ。8月は世界遺産の沖ノ島・玄界灘ツアーや小笠原ツアーなど。また、フリーダイビングのスクールも随時開催。詳しくは篠宮さんのオフィシャルサイトをご覧ください。

◎篠宮龍三さんHP:https://apneaworks.com

オンエア・ソング 7月31日(日)

2022/7/31 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. TRACES OF YOU / ANOUSHKA SHANKAR & NORAH JONES
M2. MAN IN THE OCEAN / HEATHER NOVA
M3. EDGE OF THE OCEAN / IVY
M4. DEEP SEA DIVER / BRISTON MARONEY
M5. WHALE SONG / さかいゆう
M6. HELLO WORLD / LADY ANTEBELLUM
M7. TO THE SEA / DAN ARBORISE

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

夏山の鳥に会いに行こう!

2022/7/24 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、野鳥と山登りが大好きなイラストレーター「piro piro piccolo(ピロピロピッコロ)」さんです。

 「piro piro piccolo」さんは1989年、東京都出身。多摩美術大学卒業。現在は、野鳥をテーマにイラストや小物を制作されています。

 小学生の頃にブンチョウを飼っていたこともあり、鳥好きだったpiro piro piccoloさんは大学卒業後に、友人からバードウォッチングに誘われ、公園でカルガモやカイツブリの子育てを観察、可愛いヒナを見て、一気にバードウォッチングにのめり込んだそうです。
 そして、初めての山登りが奥多摩、運動が苦手で、それでも汗だくになって登った山で、野鳥のさえずりに包まれ、こんな世界があったのかと感動されたそうです。

 そんな「piro piro piccolo」さんが先頃『なつのやまのとり』という本を出されたということで番組にお迎えすることになりました。

 今回は、夏山で見られる可愛い鳥たちの個性豊かな生態や、夏鳥たちを観察するおすすめの方法などうかがいます。

☆イラストレーション:piro piro piccolo

イラストレーション:piro piro piccolo

夏山で見やすい鳥たち

※それでは、さっそくお話をうかがっていきましょう。

●まずは、お名前のpiro piro piccoloさん、響きもすごく可愛いなあって思ったんですけど、なにか意味があるんですか?

「イタリア語で、イソシギっていう鳥の名前なんです」

●イソシギっていうのは、どんな鳥なんですか?

「水辺にいる小さなシギの仲間で、尾を上下にフリフリとする動きがすごく可愛い鳥なんです。見た目も可愛くって、磯にもいるんですけど、どちらかというと内陸の川にいるようなイメージで身近な存在です」

●イタリア語の名前は、なにか図鑑とかを見てお知りになったんですか?

「はい、イタリアに鳥を見に行った時に図鑑を買ったんですけど、それをパラパラと見ていたら、ピロピロピッコロって書いてあって、その語感がふざけていて可愛いから、作家名に選んでしまいました」

●確かに可愛いですよね! ピロピロピッコロって(笑)

「ありがとうございます!(笑)」

●そんなpiro piro piccoloさんが先頃『なつのやまのとり』という本を出されました。私も読ませていただきました。野鳥たちの可愛いイラストが満載で、とってもほっこりして癒されました。野鳥の生態とか特徴も一目でわかるので、すごく興味深く拝見しました。

『なつのやまのとり』

 この本には46種の野鳥が載っていますが、これが全部、夏の山で見られる鳥なんですか?

「そうですね。夏の山で見やすい鳥をピックアップしてるんですけど、この本では私が東京に住んでいるので、関東甲信越で見やすい鳥に絞っています」

●夏の山の鳥に絞ったのは、どうしてなんですか?

「夏山って鳥のさえずりがすごくて、ちょうど繁殖期なのでパートナーを作るために、そして縄張りを守るために、よくさえずっています。特に初夏がおすすめなんですけど、山を登っている途中に絶えず、なにかしらの鳥が歌っているという感じですね」

●掲載されている46種の野鳥は、図鑑だったら普通は、あいうえお順になっているとか、そういったことが多いですけれども、この本はそうなっていないですよね。何かこだわりがあるんですか?

「はい、麓から登っている間に、会える順番をイメージして描かせていただきました。大体なんですけれども、似た種類の鳥でも標高によって違ったりして、堅苦しくなく親近感がわくように、図鑑とはまた違う観点で描かせてもらいました」

●麓から登っている途中に見られる順っていうことは、標高順に下から上ってことですよね?

「そうですね」

●夏の山にいる野鳥は、一年中いるわけではないんですよね?

「はい、なかにはずっといる鳥もいるんですけど、基本的には繁殖するために来ている鳥たちです。餌が少なくなってくると、冬は平地に降りて行ったりとか、南の暖かい国に海を渡って行ったりします」

鳴き真似をするとモテる!?

※本に載っている野鳥の中から、いくつかピックアップしてお話をうかがっていきたいと思います。「キビタキ」という野鳥は、鳴き真似をすると書かれていますが、そうなんですか?

イラストレーション:piro piro piccolo

「あ、はい! すごくよくします。あのツクツクホウシとか、コジュケイっていう鳥がいるんですけど、その鳴き声とか真似します」

●この本にもピッピホイピーとか、周りの声からもいろいろ真似している、学んでいると書いてありましたけど、真似できるんですね。

「たくさん真似することで、メスにアピールしているんです。これくらい俺はできるんだぞ!って。だからモテるために鳴き真似していますね」

●鳴き真似するとモテるんですか?(笑)

「そうなんです(笑)。歌のレパートリーが多いことを自慢しているような感じだと思うんですけど・・・」

●へぇ〜、鳥の世界では鳴き真似できるほうがモテるんですね〜(笑)。

「そうですね〜(笑)」

●ほかにも鳴き真似する鳥はいますか?

「クロツグミとかオオルリとか、コサメビタキっていう小鳥も、けっこう鳴き真似をしています」

●じゃあモテるんですね!(笑)

「そうだと思います!(笑)」

●日本三鳴鳥(さんめいちょう)というのがあると書かれていましたけれども、これはどんな野鳥が鳴鳥なんですか?

「日本の鳥の中でもさえずりが美しいとされる、オオルリ、コマドリ、ウグイスの3種になります」

●鳴く鳥はたくさんいると思うんですけど、その中でもトップ3というか・・・。

「そうですね。個人的にはあまり納得できないんですけど、ほかにも綺麗な鳴き声の鳥たちがいるので・・・ただ昔は、野鳥を飼って鳴き声を楽しむ文化がありまして、その中でも捕まえやすいとか、飼いやすい点を踏まえて、この3種が選ばれたそうです」

●ちなみにpiro piro piccoloさんが三鳴鳥を選ぶとしたら、どんな鳥になりますか?

「すごく難しいんですけど、イカルっていう鳥が含まれていないのが、個人的には納得できなくて・・・何て言えばいいんだろう、牧歌的な綺麗な声でさえずるんですよ。高原にいるような・・・だからその子は入れてあげたいんですね」

イラストレーション:piro piro piccolo

●どんな声で鳴くんですか?

「イカルは、地域によって差があるらしいんですけど、私がよく聴くのは”キーコキー”って綺麗な声で鳴きます。あとは、ウグイスは唯一無二の鳴き方なので、そのままでいいなあって思っています。もう一羽入れるとしたら、悩みどころなんですけど、オオヨシキリっていう山にはいない鳥で、鳴き方がすごく変わっていて、個性的なので(三鳴鳥に)入れてあげたいなあって思います」

●どう個性的なんですか?

「”ギョシギョシ ギョギョシギョギョシ”って鳴くんです。その声がすごくうるさい(笑)っていうか、やかましい感じなんですけど、鳴いているだけで、その子がいるなあって気づけるので、とても存在感のある鳥です。それが面白いので入れてあげたいです」

多夫多妻、子育て共同、イワヒバリ

※実は、人をあまり恐れない野鳥も意外といるようで、中でも「イワヒバリ」という鳥はpiro piro piccoloさんのお気に入りみたいですね。どのあたりにいる、どんな鳥なんですか?

「標高2500メートルくらいの高山の岩場に棲む、スズメくらいな小鳥なんですけど、背中が岩みたいな色で、すごく地味な鳥です」

イラストレーション:piro piro piccolo

●気づくと足元にいて、こちらが驚くと、本には書かれていましたけど、それぐらい人懐っこいってことですか?

「人懐っこいっていうか、あまり人を気にしない性格なんでしょうね(笑)」

●どんな生態なんですか。イワヒバリって?

「イワヒバリは、子育ての方法がすごく面白くって、まず多夫多妻制で、しかもヒナを共同で育てます。グループで行動しているんですけど、そんな鳥はほかにはいなくって、高山の厳しい環境だからこそ、そういうふうに子育てしないと、確実に子供を育てあげられないんでしょうね。そんな進化の仕方をしたみたいですね」

●みんなで協力しあって育てているんですね! で、岩にいるんですか?

「あ、そうですね。名前の通り、岩場に棲む鳥です。ヒバリって名前がつくように、すごく鳴き声も綺麗で、よく歌いながら歩いている姿を見かけますね」

●そうなんですね〜。

※イワヒバリ以外に特に心惹かれた鳥っていますか?

「あとは、好きな鳥なんですけど、ホシガラスです」

イラストレーション:piro piro piccolo

●カラスの仲間なんですか?

「そうなんです。カラスの仲間なんですけど、全身に星模様があって、綺麗な鳥なんです。森林限界って呼ばれる、あまり木が生えない、環境の厳しいところに棲んでいます」

●カラスと言えば、真っ黒いイメージがありますけど、模様があるんですね?

「それが名前の由来になっています」

●(本に掲載されているイラストを見て)ホシガラス、綺麗ですね〜。

「この子が面白くって、その子もあまり人を気にしないタイプの鳥なんです。登山道に出てきて、ハイマツっていうそのあたりに生えている松の仲間の実をくわえて、目の前でほじくり出して、中身を集めるんですね」

●へぇ〜すごいですね〜。

「それを喉いっぱいに溜めて、やっとどこかに運んでいくっていう姿が見られます」

●喉を見るのもなんか楽しいですね。膨らんでいるわけですね。

「けっこう膨らんでいます」

早朝のさえずりのシャワー

※夏山シーズン真っ盛りですが・・・piro piro piccoloさん、野鳥観察に行くのに
これはあったほうがいいという持ち物はありますか?

「絶対に双眼鏡だと思っています」

●双眼鏡!

「双眼鏡さえあれば、荷物になるし、ほかの道具はいらないといっても過言ではないんですけれど、だんだん欲が出てきて、カメラとか録音用の機材とか欲しくなっちゃいますね」

イラストレーション:piro piro piccolo

●確かにこの本『なつのやまのとり』にも、PCMレコーダーを持ち歩くって書かれていましたけれども、これは野鳥の鳴き声を録音する機材ってことですよね?

「まさにその通りです。鳴き声を聴いても、鳥の種類が分からないことって多々あるんですね。録音しておくと、家に帰ってから聴き返してネットで検索したりとか、鳴き声のCDが付いている図鑑で調べたりとかして、それでやっと野鳥の種類がわかるっていう、勉強の仕方をしています」

●鳴き声を覚えるのには、やっぱり役立ちますね。

「そうなんですよ。鳴き声って、例えば”ホーホケキョ”とかだったら馴染みのあるので・・・”聞きなし”っていうんですけど、人間の言葉に置き換える方法が難しくって、例えばコサメビタキがどんな声だったかって言われると、ぜんぜん表現できないので、今はそうやって録音することが重要だと思っています」

●野鳥たちは、早朝によく鳴くイメージがあるんですけれども、piro piro piccoloさんは、明け方に山に行ってるんですか?

「はい」

●だいたい何時くらいに?

「夜明け前がベストですね。夏になると(午前)3時くらいに着かないと、朝のさえずりの、始まる時間が楽しめないので、気合いで朝早く山に向かうようにしています」

●なかなかハードなんじゃないですか?

「ハードですよ(苦笑)。私も朝は得意ではないので、きついところはあるんですけど、一度さえずりのシャワーを経験してしまうと、それを聴けないのは損だな〜と思えるようになってしまって、気合いで行くようにしています。
 泊まりのパターンもよくありますね。そのほうが楽ではあります。テントに泊まったりすると、鳥の声も近く感じられるし、早朝の第一声を聴くことができるのでおすすめです」

●テントに泊まって、朝を待ってという感じなんですね。

「そうですね」

●夜に野鳥は鳴いたりするんですか?

「実は夜も鳴くんです。フクロウとかヨタカとか、夜行性の鳥はまだわかるんですけれど、特にホトトギスっていう鳥がすごくて、昼も鳴いているのに夜も鳴きながら飛び回っているっていう変わった鳥です」

●テントに泊まるのも楽しそうですね。

「そうですね。たぶん人によっては、うるさくて眠れないっていう人、けっこういらっしゃるかもしれないです」

一生懸命さに心洗われて

※野鳥たちを観察するときに心がけていることはありますか?

「自分は彼らにとって邪魔かもしれないって、常に心に思っておくことですね。鳥の気持ちになって考えたら、双眼鏡で覗かれてるって、絶対気持ちよくないものだと思うので、長居はせずに今こうして覗かせてくださいまして、ありがとうございます! っていう、そんな気持ちで(山に)いさせてもらっています」

●なるほど、敬意を持っているわけですね。山で野鳥たちを観察していてどんなことを感じますか?

「みんな頑張って一生懸命生きているなあって思うことばっかりですね。登りで鳴いていたオオルリが、帰りも同じ谷で一生懸命鳴いていたりするんです。そのさえずりのペースも朝よりは下がっていて、それだけずっと鳴いていたんだ〜って、疲れを感じさせたりとか・・・あとヒナがかえるとまた必死さがすごくて、登山道に出てきてまで餌を集めたりとか、そういう姿を見せてもらえるので、みんなすごいな〜って心が洗われる感じです」

●最後にこの本『なつのやまのとり』に込めた思いをぜひ聞かせてください。

「見やすい鳥に絞って46種類載せているんですけれど、こんなにもたくさんの鳥がまさにこの時期に一生懸命、山で子育てをしているんです。なので、山頂を目指さなくていいし、ゆっくり登れば、運動が苦手な私でもなんとかなったので、ぜひみなさん頑張って登って、実物を見に行ってほしいなと、そういう思いで描かせていただきました」


INFORMATION

『なつのやまのとり』

『なつのやまのとり』

 夏山で見かける野鳥を46種、麓の登山口から頂上に向かうイメージで順番に紹介。野鳥の姿はもちろん、鳴き声や面白い特徴を、きれいで可愛いイラストで解説してあります。ページをめくるたびに、可愛い野鳥たちの虜になると思います。なにより、piro piro piccoloさんの鳥たちへの愛情を感じますよ。ぜひご覧ください。
 山と渓谷社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎山と渓谷社HP:https://www.yamakei.co.jp/products/2822590530.html

 piro piro piccoloさんのオフィシャルサイトも見てくださいね。

◎piro piro piccoloさんHP:https://iirotorii.tumblr.com/

オンエア・ソング 7月24日(日)

2022/7/24 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. SONGBIRD / OASIS
M2. WHEN THE BIRD BECAME A BOOK / HAYLEY SALES
M3. SONGBIRD / FLEETWOOD MAC
M4. HUMMINGBIRD / EDDI READER
M5. 夏鳥 / 中島 愛
M6. WILD BIRD / GEORGE BAKER SELECTION
M7. LOVIN’ YOU / MINNIE RIPERTON

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

30日間6000キロ! キャンピングカーの旅〜Miyuuの自然と旅と音楽と〜

2022/7/17 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、自然と旅を愛するシンガー・ソングライター「Miyuu(みゆう)」さんです。

 Miyuuさんは、VAN LIFE、いわゆる、車を中心にしたライフスタイルに憧れ、高校生の時に体験した家族とのキャンピングカーの旅の思い出も手伝って、日本全国を車でめぐる旅を計画。そして去年、運転免許を取得し、キャンピングカーを借りて、念願の旅に出たんです。

 その旅の記録は先頃『30 DAYS VAN LIFE〜Trip on Music』という楽曲付きフォトエッセイとして出版されました。

 そんなMiyuuさんに、走行距離6000キロのキャンピングカーの旅や、旅先で行なったフィールドレコーディング、そして自然や環境への思いなどうかがいます。

Miyuuさん

30日の旅、1日1日を噛み締めて

●今週のゲストはシンガーソングライターのMiyuuさんです。初めまして。よろしくお願いいたします。

「初めまして。よろしくお願いします」

●今年の5月に『30 DAYS VAN LIFE〜Trip on Music~』というタイトルの本を出されました。この本は、VANいわゆるキャンピングカーで、30日間かけて旅された時の体験が記されていますよね。私も読ませていただきました。写真も豊富に載っていて、日本をまわられている様子がすごく素敵で、一緒に旅をしているようなワクワク感を味わうことができました。

「めっちゃ嬉しいですね。まさに一緒に旅しているっていうイメージで作ったので・・・ありがとうございます」

Miyuuさん

●いつ頃、旅に出たんですか?

「旅自体は去年の10月1日から30日間ですね」

●30日間の旅は、埼玉県の秩父を出発して、群馬県の水上町と尾瀬を経由して、その後は南へ下って、主に西日本・四国・九州を経て、今度は一気に北上して横浜で旅を終えるというルートで、走行距離は6000キロでした。このルートにしたのは、どうしてなんですか?

「もともとは全部の都道府県をまわろうぜ! っていう意気込みだったんですけど、やっぱり各地の、人の生活だったり営みだったりとか、いろんなことをされているかたの思いというのを、もっとより深く知りたいなと思って、旅に出る前にある程度、お話しをうかがいたい人へ連絡をとっていたりしていたんですね。

 例えば、もともと関わりがあった日本自然保護協会のかただったりとか、あと広島でビールを作っている若者たちがいて、そのかたには直接お話しをうかがいたいなと思って、旅前に連絡していたんです。

 一カ所に2〜3日くらい留まって、そのかたたちといっぱいコミュニケーションをとって、思いだったりっていうのを深く知りたいって思ったら、全国はさすがに行けないな〜って・・・なのでピンポイントで、じゃあここ! って目的地を決めて、その間に出会いがあったらいいな〜みたいな感じで動いていました」

●ひとりで旅に出られたわけではないですよね?

「そうですね。幼馴染みのふたりと行きました。コロナ禍でけっこうみんな生活が変わっちゃって、私自身もぜんぜんライヴができなくなって、なんかちょっと悶々とした気持ちというか、なんかしないといけないなという気持ちがありました。

 で、大阪に帰った時に、その幼馴染みたちと喋っていて、“旅出えへん? もうなにかしないとあかん!”みたいになって、最初そんな感じでスタートしたんです。でも3人でキャンピングカーに乗り込むのはいいねんけど、運転できるのはよく考えたら私だけやなって思って(笑)」

●えーっ! じゃあ交代で運転していたわけではなく・・・?

「そうなんです。まだみんな免許を持っていなくて・・・」

●ということは、ずっとMiyuuさんが運転していたんですか?

「そうなんです。私自身も去年の6月に免許を取ったので、免許ほぼ取りたてみたいな感じで、(車の)前後に初心者マークを貼って運転していました(笑)」

●実際にキャンピングカーで旅に出られて、いかがでしたか?

「もう本当にめちゃめちゃ楽しくて・・・3人の中でもいろいろ話し合いがあったりとか、撮影で同行して、また別の車でついてきてくださったスタッフのかたたちとも、30日間の間にすごく話し合いをしました。

(このキャンピングカーの旅は)すぐ終わるんだろうなっていうのは、最初からわかっていたんですけど、本当に一瞬で・・・でも30日っていう制約があったからこそ、1日1日を絶対ムダにしないでおこうって思って、毎日、1日1日を噛み締めて旅ができたかなって思っています」

Miyuuさん

(編集部注:Miyuuさんは、キャンピングカーのレンタル会社に、こんな旅がしたいんですとご自身で働きかけ、借りることが決まったそうです。そして30日間の旅用に、車の内装を少しカスタマイズすることになり、お料理用にスパイスボックスの棚をつけたり、ウクレレのスタンドを取り付けたり・・・さらに、ベッドを寝心地の良いものに交換してもらい、旅に出たそうですよ。準備段階から自分で動くなんて、行動力がありますよね)

自然にお返し、ビーチクリーン

※キャンピングカーの旅は、どんなところが魅力的ですか?

「私、旅行がもともと好きで、ホテルとか旅館とかに泊まることもあるんですけど、やっぱり時間に縛られないっていうのがいちばん大きいかなって思っています。
 例えば、目的地に向かおうって思うけど、きょうはちょっとしんどいなと思ったら、途中で停まって・・・で、行き先も、こっちのほうに行こうと思っていたけれども、きょうはこっちにしようかなってことも、その場で決められるじゃないですか。なので、なんか今を生きているなっていう感じがすごくしましたね」

●車の中で寝泊まりをしていて、幸せを感じる瞬間っていうのはありました?

「毎日幸せでしたね(笑)。車にもよると思うんですけど、雨が降った時にすごく雨音が聴こえたりするんですね。それがたまにうるさいなと思うこともあるかもしれないけど、家では絶対感じられないので、雨を感じられるのは、キャンピングカーの良さかなとも思いますね。あとカーテンを開けた時に毎回違う景色が見られるのも(幸せでしたね)」

●いいですね〜!

※旅の途中、広島県江田島で「日本自然保護協会 (NACS-J)」のビーチクリーン・イベントに参加されていました。これはどんな経緯で参加することになったんですか?

Miyuuさん

「まず、日本自然保護協会さんとは以前お仕事をご一緒させていただいたことがありました。私自身もやっぱり自然からすごくパワーをもらっていたり、そのパワーを得て音楽を創っていたりするので、今回の旅のテーマとして、自然から(パワーを)もらった分、なにか還元したいなとふわっと思っていたんです。

 具体的に何をやればいいのだろうと思った時に、日本自然保護協会さんに、何か一緒に旅中にできるってことってあったりしますか、っていうお話しをさせていただいていました。
 そうしたら日本自然保護協会さんが全国でビーチクリーンをするような『全国砂浜ムーブメント』というのを毎年やっていて、その時期にちょうど旅も被っていたので、みんなでどこかで落ち合って、一緒にビーチクリーンしませんか、っていう話から、広島の江田島で牡蠣の養殖のパイプゴミが問題になっているから、そこに行って一緒にビーチクリーンしましょうっていうお話になって実現しました」

●実際に参加されていかがでした?

「そうですね。私、神奈川に住んでいることもあって、湘南とか千葉の海にもよく行くんですけど、場所によって落ちているものが全然違うなって感じて、特に江田島はやっぱり牡蠣の養殖が盛んなので、私が想像していたより(パイプのゴミが)たくさんありましたね。

 パイプの形として残っているものもあれば、粉々になって、ほぼ砂のような大きさになっているものとかもあって・・・地元のかたたちともお話しさせていただいて、“やっぱり拾うのが大変なんだよね。だから外から来てくれる人がいて、すごく嬉しい”っていうお声はいただきました」

自然と一体化、フィールドレコーディング

※旅の途中に、自然の中で弾き語りを録音するフィールドレコーディングをされていました。これは旅に出る前からやってみようと思っていたんですか?

「そうですね。フィールドレコーディングは絶対やりたいと思っていて、真っ先にこの旅でやろうって決めていたことなんです。
 すごく大好きな映画で『はじまりのうた』っていう、分かりますか。その映画が大好き過ぎて、完全にそれにインスピレーションを得た感じですね(笑)。あの映画は街中でレコーディングしているけど、私は自然の中で・・・森の中のスタジオじゃないですけど、ブースも自分で作ってレコーディングしてみたいって思ってました」

●何ヵ所で録ったんですか?

「(楽曲付きフォトエッセイに)3曲入っているので、3ヵ所で録りましたね」

●それぞれどこで?

「1曲目は旅の前半に行った尾瀬、群馬県の森で録って・・・2曲目は愛媛の、海にいちばん近い駅、梅津寺(ばいしんじ)っていう駅があるんですけど、本当に目の前が砂浜なんです。その砂浜に機材を広げて、電車の音が後ろから聴こえて、船の音だったり、波の音だったりが結構入るところで録音しました。

 最後は、最終日に長野県の駒ヶ根高原教会の中で歌わせていただきました。それに関しては、教会で歌うって決めていなかったんですけど、旅中にたまたま出会ったかたが、教会で歌ったら、みたいな感じで言ってくださって、最後はそこでフィールドレコーディングっていう形になりましたね」

●実際にフィールドレコーディングされて、いかがでした?

「なんだろう・・・すっごく自然と一体化している感じを、自分の中で感じながら気持ちよく歌えたなっていうのと、あとやっぱりスタジオの中で歌うと、防音室だとか無音のところで、本当に声を綺麗に録れるっていうのがあるんですけど、フィールドレコーディングは常に何かの音が鳴っている状態なので、自然の音をより自然に聴いてもらいたいなと思えば思うほど、マイクを置く位置がすごく難しくて・・・」

Miyuuさん

●確かにスタジオで録るのとは、全然違いますよね。
 
「ですね〜。しかもほぼ一発録りだったので、録っている時間よりもマイクを
セッティングする時間がすごく長かったです」

●スタジオでいざ録るぞ! っていう時よりも開放的になれるというか、気持ちよさそうだなっていうのを感じたんですけど、いかがでした?

「めちゃめちゃ気持ちよかったです!」

自分なりにできることを発信

※先ほどもお話がありましたが、Miyuuさんは「日本自然保護協会(NACS-J)」が行なっている『全国砂浜ムーブメント』というキャンペーンに協力されていて、オンラインのイベントにもMCとして参加されていました。なにか協力するようになったきっかけとか、あるんですか?

「きっかけっていうのは、もともと旅にもご一緒に協力させていただいたりとか、それ以外にもお話をさせていただいたりして、日本自然保護協会さんのテーマである多様性ということについても、自分自身もっと学びたいなって思っていました。

 海も山も川もすべてが繋がっていて、切り離せないっていうことをいつも教わっていて、本当にそうだなと思っています。
 それって人間関係にも通じることってすごくあるなと思って、今の私がいるのは両親がいて兄弟がいて、仕事仲間がいて友達がいてっていうことで、すべての出来事だったりとか、出会った人が今の自分を作っているんだなって、環境問題から教わったというか、日本自然保護協会さんからいろいろ教えていただきましたね。

 自然環境についてより深く掘り下げることで、今後私たちの子供だったりとか次の世代に美しい世界を残していけたりとか、より豊かな自然を残していけるっていうことプラス、自分自身の人生ももっと環境問題を学ぶことで豊かになっていくんじゃないかなって思っています。
 なので、協力させてくださいと、むしろ私から学ばせてくださいという感じで、イベントのMCとかもさせていただいたりしています」

●以前から自然や環境を保全するような活動に興味があったんですか?

「そうですね。興味はあったんですけど、どういうふうに自分が踏み出せばいいかっていうのが分からなくて、心の中ではずっとなんかしたいな〜みたいな気持ちがあったんですね。
 その気持ちが芽生えたきっかけっていうのが、おばあちゃんが愛媛県に住んでいて、私は大阪で育ったので、いつも瀬戸大橋を渡って愛媛のほうに行くんですけど、その瀬戸大橋から見える工場地帯からすごく煙が上がっていて、子供ながらに空気が汚くなるよみたいな、すごくもやもやした気持ちになったんです。

 やっぱり大人になるにつれて、小学校高学年くらいから、ああいう工場があるから自分は今、車に乗れているし、豊かな生活が送れているんだなと思ったら、なんかそれを否定するのも違うな・・・でもやっぱり環境は汚れているし、矛盾だらけで、どうしたらいいんだろうみたいな感じで・・・気づけば、それもまた年が経っていくごとにその感情すらもちょっと薄れていく自分がいて・・・。

 でも、そうしているうちに一方で、それに対して声を上げている人たちがいるっていうことを知って、シンプルにそうやって声を上げている人はかっこいいなーって思って・・・自分ができていなかったから、その人たちからいっぱい学べることってあるんじゃないかって思って・・・日本自然保護協会のかたたちもそうなんですけど、一緒に私もそういう人たちから学んで、自分なりにできることを発信したいなって思いました」

知ることの大事さ

※環境問題で今、いちばん気になっていることはありますか?

「ふたつあるんですけど、まずは海ごみの問題、マイクロプラスチックだったりとか・・・。それはシンプルに、私は夏になるとサーフィンをしたりとか、海に行く機会がすごく増えるんですけど、やっぱり汚い海より綺麗な海のほうが自分の心も気持ちよくいられるしって思ったのが、海ごみに関心を持ったきっかけなんですね。

 海にはすごくいろんな生物がいて、プラスチック自体がその生物たちの邪魔になっているということも、(以前は)想像力が乏しかったので考えていなかったんですけど、日本自然保護協会のかたから教わったりすることで、人間もそうだし、生き物たちもやっぱり海は綺麗なほうがいいよなって思って・・・。

 私がオフィシャルグッズ、自分のグッズを作る時に、できるだけ海を汚さないような工夫をしている企業さんとのコラボ商品を作ったりもしていたり・・・ステンレスストローだったりとか、少しでも長く着られるような素材を使ったTシャツだったりとか、自分ができることをちょっとずつしています。

 もうひとつは、洋服の廃棄だったりっていうことなんですけど、このふたつに関心があるのは多分、自分にいちばん身近な問題だったからだと思っています。

 大手の企業さんだったりとかファッションブランドさんが、最近着なくなった服を回収してくれるサービスとかあったりするじゃないですか。すごくいろんな取り組みをされているんだなと思って・・・私もやっぱり安い服を買えると嬉しくなるし・・・でもそういうものって生地がちょっと薄かったりとかして、2回着たらもうダメになるとかあるじゃないですか。そういう服をリサイクルできるからと思って、(回収ボックスに)入れていて、それでなんか気持ちよくはなっていたんですね。

 ある日、YouTubeで回収された服たちが、どこに行っているのかっていう動画をパッとたまたま見てしまって・・・そうしたら、循環していると思っていた洋服たちが、アフリカのある国に送られているだけで、その人たちもその服を着れないし、必要としていないから、どんどんそこにゴミが溜まっていく、悪循環になっているんだっていう問題提起の動画を見つけたんです。

 やっぱり知ることって大事だなと思ったし、その問題を根本から解決するためには、自分が少しでもひとつのアイテムを長く着続けることだなと思って、そういう問題に関心があるというか、まず自分ができることにトライしようかなっていうふうに思いました」

●私たちはどんなことを心がけたらいいんでしょうか? 

「私自身も今すごく勉強している段階で、大きいことは言えないんですけど、本当にひとりの小っちゃい力が集まれば、どんなことでも、大きいムーブメントを起こせるんだろうなと思っています。
 例えば、さっき言った少しでも自分の持っている服を長く着るとかもそうだし、ステンレスストローにしてみようかなとか、本当に小っちゃいことでもいいと思うんですけど、それをみんなひとりひとりがやったら、気づけば大きいことになっていくので・・・私自身もたまに、タンブラー忘れた! みたいな時もあるけど(笑)、徐々に自分ができることをやっていくのが、いずれは大きなムーヴメントになると信じています」

※では最後に、シンガー・ソングライターとして、今後歌っていきたいことはなんでしょう?

「知ることの大事さをさっきお話ししたんですけど、私はそれを自然環境から学んだんですね。なんか人間関係も同じだと思っていて、大嫌いな人が例えばいるとして、人の悪口をいつも言っていたり、嫌だ、聞きたくないと思う人もいると思うんです。でも私たちってその人の多面的な部分の、ひと部分しか多分見えていないと思うんですね。

 イマジネーションというか、その多面的だということを想像することがすごく大事だと思うし、知ることだと思うんです。そういうことの大事さをメッセージとして、音楽で届けていけたらいいなと思って、曲作りもそういうメッセージを込めて作りたいなって思っています」

●Miyuuさんの音楽にやっぱり自然の体験は必要なことですか? 

「そうですね。旅だったりとか、自然との関わりから、なにか音楽をやろうって思ったので、すごいきっかけを与えてもらったという意味では、自然と音楽は私自身、切り離せないなってすごく思います」

(編集部注:Miyuuさんは、30日間のキャンピングカーの旅を通して、人はひとりでは生きられないことを再確認したそうです。そして、夢はVAN LIFE! そんなライフスタイルも発信していきたいとのこと)


INFORMATION

『30 DAYS VAN LIFE〜Trip on Music』

『30 DAYS VAN LIFE〜Trip on Music』

 Miyuuさんの楽曲付きフォトエッセイをぜひ読んでください。主に西日本から九州を巡る30日のキャンピングカーの旅の記録。旅先で出会った人のインタビューや体験、フィールドレコーディングの裏側なども掲載。1日1日を大切にしながら、ありままを楽しんでいる姿が写真からもよくわかりますよ。ナチュラルなMiyuuさんの音楽、そして生き方に今後も注目です。

 このフォトエッセイはMiyuuさんのオフィシャルサイトからお買い求めいただけます。また、お話にも出てきたオリジナルのステンレス・ストローのほか、可愛いトートバックなども販売。ぜひチェックしてください。

◎MiyuuさんHP:https://avex.jp/miyuu/

オンエア・ソング 7月17日(日)

2022/7/17 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. Have a good trip〜MIYAZAKI〜 / Miyuu
M2. BIG YELLOW TAXI / JONI MITCHELL
M3. FRAGMENTS / JACK JOHNSON
M4. moonlight / Miyuu
M5. IRONIC / ALANIS MORISSETTE
M6. ALL I WANNA DO / SHERYL CROW
M7. ride on / Miyuu

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

秘魚「ガラパゴスバットフィッシュ」に魅せられて

2022/7/10 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ガラパゴスバットフィッシュ愛好家で、NPO法人「日本ガラパゴスの会」のスタッフ「バットフィッシャーアキコ」さんです。

 アキコさんは1991年、東京都生まれ。上智大学外国語学部卒業。在学中にガラパゴス諸島を訪れ、卒業後には、現地のチャールズ・ダーウィン研究所のボランティア・スタッフとして活動。現在は、日本人でもっとも多くのガラパゴスバットフィッシュを観察してきたスペシャリストとして、講演や執筆、メディアへの出演など、幅広い活動をされています。そして先頃、『バットフィッシュ 世界一のなぞカワくん〜ガラパゴスの秘魚』という本を出されました。

 アキコさんのインタビューをお届けする前に、きょうのお話の主人公ガラパゴスバットフィッシュについて説明しておきましょう。ガラパゴス諸島の海に生息するへんてこりんな魚で、英語名が「バットフィッシュ」。「バット」はコウモリのことなので、直訳すると「コウモリのような魚」となりますが、写真を見ると、コウモリには見えません。

 見た目の最大の特徴は、真っ赤な口紅を塗ったような唇! 体の大きさは15〜20センチほど、正面から見ると甘食パンのようで、上から見ると矢印のような形、胸びれや腹びれが足のようになっていて、海底の砂地を歩き、魚なのに泳ぎが苦手など、およそ魚らしくない特徴を持っています。

 そんなバットフィッシュの存在を知り、一瞬にして虜になったアキコさんは、敬愛の意味と、あまりにも知られていない魚だったので、少しでも知名度を上げたいという強い思いで「バットフィッシャーアキコ」と名乗るようにしたそうです。

 きょうは、謎だらけのガラパゴスバットフィッシュについてお話いただくほか、どうしても会いたくてとった、信じられない行動に迫ります。

☆写真協力:バットフィッシャーアキコ

バットフィッシャーアキコさん

なぜ、真っ赤な唇!?

●番組の冒頭で、ガラパゴスバットフィッシュの特徴についてご説明しましたが、写真を見て、特に目を引くのが真っ赤な口紅を塗ったような唇です。なぜバットフィッシュの唇が赤いのか、わかってるんですか?

「これは本当に不思議で、おっしゃる通り、口紅を塗ったかのような真っ赤なリップなんですけど、どうしてこんなに真っ赤なのかは、実は全く解明がされていません。そしてもっと不思議なのは、この真っ赤な唇が海の中で見ると全然目立たないんですよ」

●すごく目立ちそうですけどね。

「そうなんです。海の中は陸上と違って、赤色が吸収されてしまう性質があるので、大体水深3メートルくらいから赤色はだんだん色味が暗くなってきて、10メートルを過ぎたあたりから輪郭もぼやけて黒い感じに見えてしまいます。

ガラパゴスバットフィッシュが生息している水深20メートルあたりですと、その真っ赤な唇はなんとなく黒いぼやけた物体のようで、そもそもちょうど顔面の中央に黒っぽい模様がある魚なんですけども、その模様の中に隠れてしまって、どこに口があるか分からないですね。

 これは私の個人的な推測なんですけども、唇が赤い理由はもしかしたら、赤いことによって唇を見えなくさせて、例えば獲物となる魚に、ここに自分の口があるよっていうことを悟らせない戦略なのかなと勝手に推測しています」

写真協力:バットフィッシャーアキコ

●そうなんですね〜。その口の上の部分、割と大きな目の先にある出っ張りのようなものは? 尖った鼻のようにも見えるんですけれど・・・。

「すごく不思議ですよね。横から見るとピノキオの鼻のような物体なんですけれども、これは一応、吻(ふん)と呼ばれる名称が付いています。バットフィッシュの仲間全般そうなんですけれども、釣りでいうルアーのような、擬似餌というのをピロピロと出し入れして、獲物をおびき寄せるんです。

 この吻の先から出すのかと思いきや、そうではなく、吻の下からその擬似餌をピロピロと出し入れするので、実質その吻は本当に何のためにあるのかが分からないんですね」

●面白いですね〜! 飾りみたいになっちゃってるんですね。

「本当に飾りなのかな〜みたいな感じですね(笑)」

●魚の分類でいうと、どんな魚の仲間なんですか?

「アンコウの仲間ですね。皆さんもご存知のチョウチンアンコウですとか、そういった類の仲間になります。チョウチンアンコウもそうですけれども、擬似餌のようなものをピロピロと出し入れして、獲物となるものをおびき寄せて、パクッと食らいついて生計を立てていると言いますか・・・」

●生息しているのはガラパゴス諸島の海だけなんですか?

「そうですね。ガラパゴスバットフィッシュに関しては、発見された当初はガラパゴス諸島の固有種だとされていたんです。のちに実はペルー沖でも発見しましたという論文が出たんですけれど、その後、現在に至るまで、ほかにペルー沖で発見されたという例ですとか、論文がひとつもないので、実のところ、私個人としてはガラパゴス諸島の固有種と言ってもいいのではないだろうかと考えていますね」

(編集部注:ガラパゴスバットフィッシュが属するアンコウ目アカグツ科ニシフウリュウウオ属の魚は、世界に13種類いるとされ、そのすべてが南北アメリカ大陸の近海に分布しているそうです)

『バットフィッシュ 世界一のなぞカワくん 〜ガラパゴスの秘魚』

運命の出会い、そしてスペイン語!?

※アキコさんがバットフィッシュの存在を、いつどんなきっかけで知ったのか、気になりますよね。お話によると、高校3年生の夏、「海の日」に下北沢の本屋さんでたまたま手に取った生き物フォトブック、そこに載っていたガラパゴスバットフィッシュの写真に衝撃を受け、一瞬にして虜に! 

 そしてレジに走り、即お買い上げ! 家に帰る時間ももどかしく、近くのファーストフード店に駆け込み、バットフィッシュの写真を夢中で見続け、気がついたら、2時間、経っていたそうです。

 アキコさん、バットフィッシュのどんなところがそんなに魅力的だったんですか?

「なんでしょう・・・フォルムですか・・・甘食パンのようなボディに前足後ろ足が生えてるようなルックスもそうですし、口紅を塗ったかのような真っ赤な唇もそうですし、何か言いたげな目と言いますか、すべてが自分の中で、こんな生き物が地球上に存在したのかという喜びと興奮で一気に惹きつけられて、魅せられてしまいました」

写真協力:バットフィッシャーアキコ

●確かにインパクトのある魚ですけれども、ただただ面白いなと思うだけじゃなくて、アキコさんは行動に移したわけですよね? バットフィッシュに会うためにまず始めたことはどんなことなんですか? 

「まず最初に、きっかけとなったバットフィッシュの載っている本を読んでいた時にすぐに思ったのは、この魚に会いたい、どうしたら会えるんだろう、(本を)見たところ、ガラパゴス諸島というところに生息している、ガラパゴス諸島はどうもエクアドル領らしい、エクアドルという国はスペイン語圏・・・ということはスペイン語を勉強すれば、話せるようになれば、会えるじゃん! っていう安直な考えで、当時高校3年生だったこともあり、大学の希望の進路をスペイン語の学科に設定しました(笑)」

●もともと語学は得意だったんですか? 

「それが全くだめでございまして、もう本当にガラパゴスバットフィッシュに夢中になってしまったため、自分が語学が嫌いで苦手だということをすっかり忘れていたので、大学に合格してからやっと思い出しましたね」

●すごいですね! 研究者になろうとは特に考えなかったんですか? 

「そうなんですよ。本当に会いたい! スペイン語を喋れれば会えるじゃん! っていうことしか思いつかなかった安直な頭だったので、よし、研究者に! っていう考えが全く浮かばなかったんですよね」

●スペイン語を勉強して、初めてガラパゴス諸島に行ったのはいつ頃なんですか? 

「初めて行ったのが大学3年生の夏休みですね。語学がすごく苦手だったので、入学してから大変苦労したんですけれども、3年生になると少しばかりは会話もできるようになってきまして、ダイビングのライセンスも取得できたタイミングだったので・・・」

●もともとダイビングとかもされていたんですね。 

「実を申しますと、泳ぎが全くダメなんですね(笑)。ただ唯一、会える方法というのがガラパゴス諸島の海でダイビングするという手段しかなかったので、水がそもそも苦手だしカナヅチなんですけれども、決死の思いでダイビングの講習に申し込みまして、すごく苦労しながら、自分で独自の特訓を重ねながら、なんとかダイバーになったという次第です」

報われた瞬間!

※アキコさんが大学3年生の夏休みに、初めて訪れたガラパゴス諸島は南米エクアドルから西へおよそ1,000キロの、太平洋に浮かぶ火山群島。ほかに類を見ない動植物の宝庫で、あのチャールズ・ダーウィンが「進化論」を書くきっかけにもなった島々としても有名。1978年に世界自然遺産の第1号のひとつとして登録された、世界中の研究者たちが注目している生き物たちの楽園です。

 アキコさんによれば、日本からガラパゴス諸島に行くまで、トランジットの時間も入れると30時間ほどかかり、動植物の保護のため、検疫など含め、かなり厳しい規則と検査があり、それをパスしてやっと島に入ることができたそうです。

 また、島に上陸してからも、野生生物とは2メートルの距離を取るなど、厳しいルールが課せられ、ダイビングできるのは許可されたエリアだけ。船の数や参加人数も制限されていて、ダイビングするためには必ず事前にツアーに申し込まなければいけないそうです。

写真協力:バットフィッシャーアキコ

 ツアーに参加して、ダイビングエリアに潜って、すぐにバットフィッシュに会うことはできたんですか?

「私、すごく幸運なことに、初めてガラパゴス諸島に行った年の、本当に初めての1本目のダイビングでお会いすることが叶いました!」

●どうでした? 初めてお会いして。

「何人かのお客さんのグループと一緒に潜ったんですけれども、先頭を泳いでいるガイドが見つけてくださって、いるよって指をさした先に、うわー! いた! って感じだったんです。
でも、元気に泳いでるねっていうのでは全くなくて、砂地の上に静かに佇んでいる、どちらかというと、例えば落し物が落とされたままになっているみたいな空気のほうが近いんです。

 すごく静かにひとりで砂地に佇んでいて、しかしその様子を見て、こちらとしてはもう本当に大興奮で、すべての血管という血管がフルで、血潮が駆け巡るような興奮を覚えました」

●苦手な言語も泳ぎも頑張ってよかったですね! 

「報われた瞬間でした!」

写真協力:バットフィッシャーアキコ

※初めての出会いから現在に至るまで、何匹くらいのガラパゴスバットフィッシュに出会っているんですか?

「現在、累計55バットに会っておりまして、これをお話すると、意外と少ないじゃん! って、おっしゃるかたもいらっしゃるんですけれども、ガラパゴスバットフィッシュは、ガラパゴス諸島でダイビングすれば、必ずしも会えるという魚ではないんですね。

 時期と場所を選んで潜って、そこまでしてでもやっと一回のダイビングにつき、1バット会えるか会えないかぐらいのレア度なので、私にとってはこの55っていうのはとっても大きいですね!」

●これまで出会った55バット、それぞれ個体差とかっていうのはあるんですか?

「例えば見た目、体の模様のつき方ですとか、ピノキオの鼻のような吻の長さが違うといった身体的な特徴はもちろんなんですけれども、何よりも性格に違いがあるなということは実感しています。

 例えばバットフィッシュがいた! と言って、私たちダイバーが駆け寄ってカメラを向けた時に、ずーっとぼーっとしている個体もいれば、どうしようって困って後退りをした末に泳いで逃げていく個体もいれば、後退りをした後に諦めてフリーズしてしまう個体もいます(笑)。

 あとはもう見るからに怒った顔で、こちらに向けて口をパクパクして何かを訴えてくるような個体もいたり、もう本当に人と同じですよね。反応の違い、性格、本当に一匹一匹違うなということは、すごく実感しました」

チャールズ・ダーウィン研究所で熱く語る!?

写真協力:バットフィッシャーアキコ

※アキコさんは、ガラパゴス諸島のサンタ・クルス島にあるチャールズ・ダーウィン研究所のボランティア・スタッフとして活動していたそうですが、世界中の研究者たちが憧れる研究所に、いったいどんな経緯でスタッフとして入ることができたんですか?

「これがもとを正せば2度目の渡航の時ですね。大学4年生の夏に再びガラパゴス諸島を訪れたんですけれども、その際にチャールズ・ダーウィン研究所にちょっとお邪魔できる機会を頂戴いたしました。

 その時に海洋生物部門のオフィスにご案内いただいて、そこで、”ガラパゴスバットフィッシュって研究されていますか?”ってワクワクしながら尋ねたところ、”ん? バットフィッシュ、やっていないよ”っていうふうに返されてしまって・・・。

 もう私は大ショックだったんですね。あなたたちのお住まいのこの海に、こんなにも珍しい魚がいるのに、全く研究の対象にしないなんて、もったいないですよ! みたいなことを、ど素人の私がプロの研究者たちに向かって、思わず熱く語ってしまったところ、”そんなに好きなら、うちに来ればいいじゃん!”と声をかけていただけまして・・・。

 その時が大学4年生の夏で、あと半年学校が残っていたので、では卒業したら、こちらに来ます! っていう約束をして、無事に卒業をし、来ました〜という勢いで研究所に戻ってきたところ、”ごめん! 実は今、席が空いていないんだ”と言われてしまったんです。

 でももう来ちゃったし、どうしようと思っていたら、”それなら私が引き取ります!”と申し出てくださったかたが現れて、そのかたが長をしている、同じダーウィン研究所の植物部門のプロジェクト『ガラパゴス・ベルデ2050』というチームに所属する運びになりました」

●研究者にとってはすごく憧れの研究所ですよね!

「そうですね。私が在籍していた時にも、世界から毎日(研究所に)所属したいという希望が100通以上メールで届いていましたね」

●すごいですね! そういう研究所に所属できるというのは!

「そうですね。すごく幸運なことでございました。平日は自分が所属していた植物部門のチームで、ガラパゴスの在来植物の保全の研究や調査などを行ないながら、休日は個人的に海に行ってダイビングをして、ガラパゴスバットフィッシュの観察を続けて、自分なりにノートに気付いた点とか疑問に思った点を毎回つけていました。
 あとは現地の海洋生物学者の皆さまであったり、ダイビング・ガイドの皆さまに聞き込み調査などを行なったりしていましたね」

ガラパゴスで感じた人間のおごり

※ガラパゴスで暮らした経験のある日本人は、ほとんどいないと思うんですけど、実際に暮らしてみて、ガラパゴスの自然や生き物から、どんなことを感じましたか?

「ガラパゴス諸島の生き物は、基本的に人間をあまり恐れないんですね。野生生物に2メートルを越えて近づいてはいけないよっていうルールがあるんですけど、実際にその2メートル・ルールを破ってくるのは、生き物側が多くて、ズカズカズカってこっちに近寄って来ちゃったりするんですね。島に住んだ当初はベンチに座っていると、アシカにベンチを奪われることもあったりしました。

写真協力:バットフィッシャーアキコ

 最初の頃はそれにすごく驚いてしまったんですけれども、住んでいるうちにだんだん、これって、なんというか自分が人間であるおごりだったなというか、人間が座っているのになんで来るんだよっていう思いが、多分どこかにあったのかなって思い始めました。やはりガラパゴスに住んでいると、生き物たちは同じ環境に棲んでいる対等な生物、対等な存在なんだなと思うようになりましたね」

●なるほど〜。今後明らかにしたいバットフィッシュの生態はありますか?

「もうたくさんあるんですけれども(笑)、そのうちのひとつが、私がダーウィン研究所にいた時に海洋生物部門の人に声を掛けていただいたことがあって、その時に”アキコ、この間、自分は海底探査をするために潜水艦に乗ったんだけれど、その時に水深200メートル・エリアにすっごい数のガラパゴスバットフィッシュがいたよ!”って教えていただいて、もうそれを聞いて大興奮ですよね! 

 普段はダイビングの時だと会えて1バット、基本的に単体でいることがほとんどの存在が、水深200メートル域にすごい数がいたっていうのが、どうしてなんだろうっていうのもありますし、果たしてそこがメインの生息地なのか、もしそこがメインの生息地だとしたら、逆になぜダイビングで見られるような水深20メートル・エリアにも出てくるのか・・・いろいろ謎があるので、とにかくその水深200メートル・エリアのすごい数のバットフィッシュを、自分の目でも是非見てみたいですし、その理由を解明したいです」

●楽しみですね! なんかワクワクしますね!

「ワクワクします!(笑)」

●では、最後にアキコさんにとってバットフィッシュとはどんな存在ですか?

「私にとって最愛の存在であり、人生の起爆剤でもあるかなと思っています。もともと語学も苦手だし嫌いだしっていう人間がスペイン語を勉強して、現地に住むようになったりですとか、泳ぎもダメ、水に触るのも怖かったような人間がダイバーになって、現地の海で潜るようになったりですとか・・・。

 ガラパゴスバットフィッシュに出会わなければ、絶対に着手しなかった領域に、私の見識を広めてくれたというか、私の世界を広げてくれた存在なので、本当に人生におけるターニング・ポイントとなってくれたので、本当に感謝していますね」

(編集部注:ガラパゴスバットフィッシュの生態は謎だらけで、何を食べているのかも分かっていません。アキコさんによれば、カニやエビなどの甲殻類や軟体動物ではないか、ということですが、実はだれも捕食シーンを見たことがないそうです。
 ガラパゴス諸島の生き物は一切、島外には持ち出せないため、ガラパゴスバットフィッシュは、世界のどこの水族館でも飼育されていないということですが、近縁種のニシフウリュウウオ属の仲間は、国内の水族館で見られるところがあるそうです)


INFORMATION

『バットフィッシュ 世界一のなぞカワくん〜ガラパゴスの秘魚』

『バットフィッシュ 世界一のなぞカワくん 〜ガラパゴスの秘魚』

 ガラパゴスバットフィッシュへの畏敬の念と愛にあふれた本です。ぜひ読んでください。専門の研究者がいない中、地道な観察や、数少ない論文などを参考に書きあげた、世界に誇るバットフィッシュの専門書と言っていいかもしれません。といっても、難しい本ではなく、ガラパゴスでの生活やチャールズ・ダーウィン研究所での体験など含め、楽しく読めます。巻末には、これまで出会った55バットの観察記録が写真入りで掲載されていますよ。
 さくら舎から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎さくら舎HP:http://sakurasha.com/2022/04/バットフィッシュ-世界一のなぞカワくん/

 バットフィッシャーアキコさんのオフィシャルサイト、そしてアキコさんがスタッフとして活動されている「日本ガラパゴスの会」のサイトもぜひご覧くださいね。

◎バットフィッシャーアキコHP:https://www.batfisherakiko.com

◎「日本ガラパゴスの会」HP:https://j-galapagos.org/

オンエア・ソング 7月10日(日)

2022/7/10 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. CHANGE THE WORLD / ERIC CLAPTON
M2. I’M WONDERING / STEVIE WONDER
M3. YOUR WONDERFUL SWEET, SWEET LOVE / THE SUPREMES
M4. IT WOULDN’T HAVE MADE ANY DIFFERENCE / TODD RUNDGREN
M5. いつまでも変わらぬ愛を / 織田哲郎
M6. LONGING IN THEIR HEARTS / BONNIE RAITT
M7. ONLY YOU / THE PLATTERS

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

野あそび夫婦の「キャンプ民泊NONIWA」〜キャンプ未経験者におすすめ!

2022/7/3 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、埼玉県ときがわ町で「キャンプ民泊NONIWA」を運営する「青木江梨子(あおき・えりこ)」さんです。

 青木さんはご主人の達也さんと一緒に「野あそび夫婦」というユニット名で活動。2019年6月に日本初とされるキャンプと民泊を組み合わせた「キャンプ民泊NONIWA」をオープン、おふたりともキャンプインストラクターの資格を持ち、キャンプの講習会ほか、アウトドア雑誌の企画監修なども行なっていらっしゃいます。そして先頃、『ソロキャンプ大事典』という本を出されました。

 きょうはそんな青木さんに、キャンプ民泊NONIWAの特徴やビギナー向け「ソロキャンプのノウハウ」などうかがいます。

☆写真協力:キャンプ民泊NONIWA

写真協力:キャンプ民泊NONIWA
写真左:戸井田夏子 写真右:猪俣慎吾 

ふたりで誰かを喜ばせる

※埼玉県ときがわ町で運営している「キャンプ民泊NONIWA」は具体的には、どんな施設なんでしょうか。

「基本的には、民家の横にあるちょっと広めのお庭みたいなスペースを、キャンプ場としてお客様にテントを張ってもらって、トイレとお風呂とキッチンは自宅のものを使ってもらうというスタイルです。キャンプのハードルを下げるために作った、これからキャンプを始めたいかたに向けた施設になります」

●一般の方にキャンプ場として利用してもらうためには、ある程度広い敷地が必要だと思います。「キャンプ民泊NONIWA」がある埼玉県ときがわ町というのは、どういった場所なんですか?

「そうですね。東京からも大体1時間とか1時間半くらいで来られるような場所にはなるんですが、埼玉でいうと秩父のちょっと手前あたりに位置しています。こんもりした山とか小さな川が流れている里山というような雰囲気の場所になります。なので、長野とか山梨みたいな、広大な敷地のキャンプ場のイメージとはちょっと違う感じなんですけど・・・ちょうどいい町です」

写真協力:キャンプ民泊NONIWA

●改めて、このキャンプ民泊を始めるに至った経緯を教えてください。

「私たちはもともと、夫婦で結婚してからキャンプを始めようという形で始めたんですね。その時に周りにキャンプをやっている友達もいなくて、自分たちでインターネットで、どんな道具がいいのか、ルールとかあるのかな、みたいな感じで、いろいろ調べて(キャンプを)始めたんですけど、結構苦労したので、気軽に相談できる人が身近にいたらいいなぁって思っていたことがひとつです。

 あと、キャンプをまだやったことがない友達に、キャンプに連れて行ってよ〜! っていう感じで、一緒にキャンプすることがありました。その時にも自分たちにとっては当たり前になっていた、テントに建て方とか、薪の割り方みたいなものが新鮮みたいで友達も喜んでくれたんですね。

 今まで私と夫は同じ趣味もなかったので、自分たちがふたりで誰かを喜ばせることができるんだな、キャンプって! っていうことに、そこで気づいたっていうことから、キャンプ民泊をやってみようかなってことにつながりました」

(編集部注:「キャンプ民泊NONIWA」をなぜ埼玉県ときがわ町で開業したのか、実は、青木さんご夫妻はもともと練馬区にお住まいでしたが、ご主人が埼玉県川越でお仕事をされていたので、通える範囲で自然豊かな場所を探していたら、たまたま「ときがわ町」と出会ったそうです)

インストラクター付きキャンプ

※一般のキャンプ場との大きな違いは、どんなところでしょうか。

「まずその規模が、一般のキャンプ場だったら、30張りとか、30組40組とか、もっと多いところもたくさんあると思うんですけど、うちの庭のスペース的にマックスで3〜4組っていう、すごく小規模なところがひとつです。

写真協力:キャンプ民泊NONIWA

 あとは、これからキャンプを始めたいかた向けのキャンプ場ということでやっているので、最初は手ぶらで来ていただいて、キャンプ道具も全部レンタルして、そして私達がキャンプのインストラクターとして、テントの建て方とか全部お伝えする感じでやっているところが(ほかのキャンプ場との)違いかなと思います」

●初心者としては、どんなテントがいいんだろうとか、そういったことがまだわからない状態なんですけど、心配いらないっていうことなんですね!

「そうですね。テントの大きさとか収納のときのサイズはどれくらいがいいですか? とか、車の大きさとか、家族の人数とかで、あなたにはこういうテントがいいんじゃないんですか、みたいなご提案をしたりしています」

●初歩的なことは、すべて教えていただけるってことなんですね?

「そうですね!」

写真協力:キャンプ民泊NONIWA
写真:猪俣慎吾

※NONIWAでは、キャンプの講習会も実施されているそうですね。どんな講習会があるんですか?

「ステップ1、2みたいな感じで進んでいただくんですけど、まずステップ1は日帰り講習という形で、泊まらずにNONIWAに来ていただきます。

 キャンプ道具は一般的にどういう物が必要なのか、ずらっと並んだ道具をいろいろ見ていただいて、ご説明をして、キャンプの全体のイメージをつかんでいただいたうえで、テントの建て方とか、タープの建て方とか一緒にやってみます。
 最後は焚き火をして、マシュマロを炙って食べて、ちょっとキャンプのイメージをつかんで帰っていただくみたいな感じです。

 そしてまた別日にステップ2として、次は宿泊体験! 実際に泊まってみましょうという形で、自分たちでテントとタープを建てて、一晩を過ごしていただくっていうようなキャンプ講習をほぼ毎週やっています」

●やっぱり一歩踏み出す勇気ってなかなか出ないというかたも多いと思うんですけれども、ここまでバックアップしていただけるといいですね! やってみようかなっていう気持ちになりますよね。

「そうですね。多分ここまで、ほぼマンツーマンという形で、キャンプを体験していただく施設はほかにはないかなと思っています」

●NONIWAは誰でも利用できるんですか?

「そうですね。キャンプ講習自体は、ほんとにキャンプをまだやったことがないかたも、どなたでもお申し込みいただけるようになっています。ただ、そのキャンプ講習以外に通常のキャンプ場のような形でも泊まっていただけるんですけれども、それはまずキャンプ講習に来ていただいたかた、もしくは私たち野遊び夫婦と面識があるかたとか、そのご紹介みたいな形で小規模でやっています。

 あとは、月に1回くらいオープンイベントというのを開催していて、日帰りで来てくださったかたは、いろいろお話しした上で、今後NONIWAをキャンプ場として使っていただけるようなシステムになっています」

キャンプは、絆が深まる

写真協力:キャンプ民泊NONIWA
写真:赤井恒平

※ところで、青木さんご夫妻がキャンプをやるようになったのは、どうしてなんですか?

「始めたきっかけが・・・もともと私が小さい時に、家族にキャンプに連れていってもらって、その時の経験がすごくよくって、自分も家族ができたらキャンプを始めたいなって思っていました。
 中学生くらいになると、やっぱり部活とかでなかなか家族でキャンプに行けなくなって、疎遠になっていたんですけど、大人になって結婚したらキャンプしたいなってなんとなく思っていたんです。それで夫と結婚したタイミングで、キャンプやってみない? っていうふうに誘った感じなんですけど、夫はキャンプをしたことがなくって、全然アウトドアとは無縁の人だったんですね。でも、意外とハマってくれました」

●ご夫婦でのキャンプの醍醐味ってどんなところですか?

「そうですね。一緒にキャンプをするっていう面でいうと、家族でキャンプをするとチームみたいな感じで、力を合わせないとできないみたいなところがありますね。私はテントのこっち側を持つから、お父さんはそっちを持ってみたいな感じとか、一緒にご飯を作らないと食べられないし、テントを建てないと寝ることができないみたいな感じで、家族がチームになる感じがすごく個人的にはいいなって思っています。

 それは夫婦でやった時も一緒で、普通におうちでただテレビを見ながら、ご飯を食べている時とはまた違う経験ができますよね。焚き火を囲んでふたりで話すと、いつもはしないすごく深い話ができて、将来どういうふうにしていく? みたいな話もできて、キャンプ民泊っていうのをやってみようか、仕事を辞めてこっちにシフトしようか、みたいな話もできたので、そういう時間が持てるのがキャンプのいいところかと思います」

●ご夫婦やご家族の絆が深まりそうですよね! アウトドアやキャンプの趣味が仕事になったわけですけれども、好きが仕事になって、ましてやNONIWAを利用されるユーザーさんが自宅にいらっしゃるということもありますよね? オンとオフの切り替えって難しくないですか?

「結構私たちの性格なのか、ぬるっと始まって(笑)、少しずつ来てくれる人が増えていって・・・みなさん本当にいいかたばかりで・・・家族が増えていくようなイメージで、あまりオンとオフみたいに切り離さなくても楽しいかなっていう感じです」

超初心者向け『ソロキャンプ大事典』

『ソロキャンプ大事典』

※青木さんご夫妻は先頃、『ソロキャンプ大事典』という本を出されました。この本のセールスポイントを教えてください。

「はい、基本的にはNONIWAのキャンプ講習でお伝えしている、基本的な道具の選び方から、テントとかタープの建て方をわかりやすく載せていただいている本なんですね。
 大辞典というだけあって、こういう時にどうしたらいいのだろうみたいなこととか、女性のソロキャンパーさんってすごく不安が多いと思うんですけど、こういう時に、たとえば盗難だったりとか、夜怖い思いをしないかみたいな、そういう不安なところまで、こと細かく載せてもらっている本になります。

 あとは私たちが体験したことのあるソロキャンプ以外の、いろんなスタイルがあるんですけど、例えば自転車キャンプとか、徒歩で飛行機とかで行くようなキャンプとか、バイクを使ったソロキャンプをやっているかたがたにも協力していただいて、それぞれのキャンプ・スタイルの魅力を対談形式で載せてもらっているのがすごくおすすめです」

●ソロキャンプ、今ブームですよね?

「そうですね。かなり増えてきていて、最初NONIWAでもファミリーキャンプ講習をやっていたんですけど、(お客さんから)ソロでもやりたいです! っていうかたがすごく増えてきて、ソロキャンプ講習も始めていったという形です」

●青木さんご自身もソロキャンプってされたことはあるんですか?

「そうですね。最初から、キャンプを始めたいって時から、やっぱりソロキャンプに憧れがありました。でもやっぱり最初からひとりでやるには、なかなかハードルが高いというか不安だったので、NONIWAで自宅の庭になるんですけど(笑)、”女子ソロキャンプの会”みたいな感じで、同じ境遇の人たちとソロキャンプの練習をするってところから始めました」

●なるほど〜。私のような初心者がソロキャンプに挑戦するとしたら、まず何から始めたらいいんでしょう?

「そうですね〜。小尾さんの周りには、キャンプをしているお友達っていますか?」

●います!

「そしたら、やっぱり一緒に、キャンプに連れて行ってもらうっていうところから始めたらいいかなって思いますね。もし周りにいなかったら、まずは必要最低限の物を持って、日帰りのキャンプから始めるっていうのがいいかなって思っています」

●泊まらないとなると、確かにハードルが下がるかもしれませんね。

「そうですね。テントとか寝袋とか大物はまだ買わなくて、椅子とかお料理が
できるような、おうちにあるものでもぜんぜんいいと思うんですけど、そういうのを持って日帰りでキャンプ場に行ってみるのがいいと思います。

 そこでどんな泊まりのキャンプがしたいか、みたいな(周りに)いろんな(スタイルで)キャンプをしている人がいるので、その様子を見て、私はあれよりも小さいテントでいいかなとか、そういう感じで、実際経験してみてから、自分のイメージにあった道具を揃えていくのがいいかなと思っています」

(編集部注:ソロキャンプの初心者が友達のキャンプにお邪魔する時は、防災用にもなるヘッドライトもあったほうがいいでしょう、とのことでした)

ときがわ町をアウトドアタウンに

写真協力:キャンプ民泊NONIWA

※NONIWAは、常連さんが増えてきたそうですが、5年後、10年後のNONIWAがどうなっているか、何かイメージのようなものはありますか?

「NONIWAを始めてまだ3年くらいですけど、その中でもやっぱりキャンプの流れというか世の中の流れとかで、私たちがおすすめする(キャンプ)スタイルもどんどん変わっているので、講習の中身も日に日に変わっているイメージなんですね。

 今まで来てくれたお客さんの反応とかで、いろいろ変えているので、5年後、10年後はどんなキャンプ講習になっているのかは、まだわからないんですけど、キャンプをやりたいって人はきっといると思うので、5年後、10年後も!(笑)コツコツやっていきたいなと思っています」

●ちなみにこの3年間で、どういった変化があったんですか?

「私たちがそう感じているだけかもしれないんですけど、今までは快適なキャンプをするために、結構道具をたくさん持って行って、グランピングみたいな感じで快適にキャンプをするのがいいよね! っていう時期もあったんですね。

 今は逆にどれだけ物を減らして、身軽に苦がなくキャンプに行くっていうような、日常と非日常の垣根があまりないような形のキャンプも見直されています。実際、お客さんが泊まりに来てくれた時に、あまりにも大きなテントを建てていると、結構それだけで消耗しちゃっていたりする人もいるので、なるべくコンパクトで疲れないキャンプをご提案するように変わってきました」

●ユニット「野遊び夫婦」としては、なにか新しい活動とか、夢や目標というのはありますか?

「そうですね。私たちご縁があって、この埼玉県ときがわ町という所で活動させていただいているんですけど、本当にこの町がすごく大好きで移住して来たので、この町の魅力を私たち目線でどう伝えていけるかなっていうのが、日々の課題でもあるんです。
 将来的にときがわ町をアウトドアタウンにできたらいいな〜っていう目標があるので、ちょっとずつNONIWAだけじゃなくて、近隣のキャンプ場さんと提携したりとか・・・。

 あとは今、新しく夫がやっている、レンタルとかアウトドアのショップみたいなのを、10月くらいにオープンできたらっていう形で活動を始めているところなので、ちょっとずつ町を巻きこんで、面白いことができたらいいなって思っています」


INFORMATION

 「キャンプ民泊NONIWA」はキャンプ未経験者に向けた、至れり尽くせりの施設。超初心者の小尾さんもぜひNONIWAでキャンプ体験をしたいということです。番組の取材でお邪魔して実現できればとスタッフは思っています。

 ちなみに青木さんご自身が、キャンプの時のいちばん好きな時間は焚き火をしながら、周りの風景と大好きなお酒を楽しんでいる時だそうです。キャンプに焚き火とお酒は欠かせませんね(苦笑)

 キャンプ民泊NONIWAについて、以下のオフィシャルサイトをご覧ください。

https://noniwa.jp

 「野あそび夫婦」の活動については、以下のオフィシャルサイトをご覧ください。

https://noasobifufu.com

『ソロキャンプ大事典』

『ソロキャンプ大事典』

 ソロキャンプをやりたいかた、または初心者のかたは、ぜひ「野あそび夫婦」監修のこの本を参考になさってください。ソロ用の道具選び、サイトでの設営・撤収、ソロキャンプのご飯ほか、徒歩、自転車、そしてバイクのソロキャンプスタイルなどを掲載。安全にそして快適に過ごすためのノウハウが満載です。

 成美堂出版から絶賛発売中です。詳しくは以下のサイトをご覧ください。

https://www.seibidoshuppan.co.jp

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