毎回スペシャルなゲストをお迎えし、
自然にまつわるトークや音楽をお送りする1時間。

生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで
幅広く取り上げご紹介しています。

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Every Sun. 20:00~20:54

2022年8月のゲスト一覧

2022/8/28 UP!

◎渡邉克晃(サイエンスコミュニケーター)
地球が創り出す神秘「美しい鉱物の世界」』(2022.08.28)

◎渡邉智之(自然と人をつなぐ写真家)
あなたのそばにもいる「ホンドギツネ」〜繁殖、子育て、人との関係、その知られざる生態に迫る!』(2022.08.21)

◎清水浩史(島に魅せられたライター)
楽園のような日本の無人島〜生きる喜びに気づける島旅』(2022.08.14)

◎鈴木敦子(認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」)
人生の記念日に木を植えよう〜「プレゼントツリー」プロジェクト』(2022.08.07)

地球が創り出す神秘「美しい鉱物の世界」

2022/8/28 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、サイエンスコミュニケーターの「渡邉克晃(わたなべ・かつあき)」さんです。

 渡邊さんは1980年、三重県生まれ。子供の頃から石が好きで、家族旅行で海辺や川原に行く度に、綺麗な石を家に持ち帰るお子さんだったそうです。そして、広島大学に進学後は、植物や微生物によって引き起こされる岩石の風化現象を研究。大学卒業後は、東京大学 地球生命圏 科学グループなどで地球科学の研究に従事、その後独立し、現在はサイエンスコミュニケーターとして活躍中。地学博士、そして地質や鉱物の写真家でもいらっしゃいます。

 また、2017年にウェブサイト「地学博士のサイエンス教室 グラニット」を立ち上げ、美しい写真とわかりやすい解説をモットーに運営されています。

☆写真:渡邉克晃

渡邉克晃さん

狙いは美しい写真!

●渡邉さんは先頃『ふしぎな鉱物図鑑』を出されました。私も拝見させていただいたんですけれども、文庫本サイズで、すべてカラー写真なんですよね。とにかく写真が美しくて見入ってしまいました。こんなに色が豊富で多様な鉱物があるんですね。全然知らなかったです。

「ありがとうございます。めちゃめちゃ嬉しいですね。そう言っていただけると」

『ふしぎな鉱物図鑑』

●この本の狙いはどんなところにあるんですか?

「写真の美しさ、写真の綺麗さをいちばんの狙いにして作ったので・・・
嬉しいコメントありがとうございます」

●ほんとに綺麗でしたし美しかったです。

「この鉱物の標本は私の大学時代の恩師で、もう亡くなられた先生なんですけど、広島大学の北川隆司教授が集めていた鉱物コレクションを、ご家族のかたにお願いして、撮影させてもらうことができました。標本も立派ですし、ここを見せたいなというところでアップにしたりとか、角度を変えたり・・・撮り放題、思う存分、写真を撮らせていただきました。

 最高の鉱物の写真を用意して、自分の持っている知識も活かしながら、わかりやすく文章も書いて、そんな感じで作った本なので、いちばんの狙いは写真になります。写真を見てほしいなというところですね」

●鉱物のことは全くの初心者です。なるべくわかりやすく教えていただきたいんですが、まず鉱物とは? 岩や石とは違うんでしょうか?

「ちょっとだけ、定義というか難しい、堅い話なんですけど、鉱物は自然界にあって個体の物質であり、地質作用によってできた物質、これが鉱物の定義としてあるんですね。

石英(水晶)
石英(水晶)

 代表的なものは、皆さんよくご存知の、水晶ってありますよね。尖った六角形の柱みたいな透明な鉱物で自然界のものですよね。人工的に作ったものじゃないので、自然界のものであり、また液体とか気体じゃなくて、かちっとした固体ですね。

 地質作用っていうのがちょっとわかりにくいんですけど、水晶はマグマの熱とか地下水が関係しながらできるものなんです。こういったものは生物的にできたものとか、人工的にできたものじゃなくて、地質作用によってできたものとされるわけです。

 石や岩とは違うのかっていうところなんですけど、ややこしいところで、石ってやっぱりよく使っちゃうんですよね。石はすごく広い意味がある一般的な言葉で、鉱物も石です。岩も石になります。結石とか体の中にできるのも石です。石はすごく意味が広くて、ざっくりとした一般的な呼び名であって、学術的に言えば、石の中の一部が鉱物であり、また岩石である、こういった位置付けになります」

宝石も鉱物!?

ダイヤモンド
ダイヤモンド

●ダイヤモンドやルビーも鉱物ですよね? 宝石になっている鉱物も多いってことですか?

「そうですね。宝石になっている鉱物はすごく多くて、正確なところはわからないですけど、少なくとも代表的なものだけでも20種類以上は知られています。
 ルビーの鉱物名はコランダムって言うんですけど、あとエメラルドの、宝石の鉱物名として緑柱石(りょくちゅうせき)があったり、もちろんダイヤモンドもそうです。あとヒスイという宝石になる翡翠輝石(ひすいきせき)とか、宝石になるものはたくさんありますね」

コランダム
コランダム

●鉱物は何種類くらいに分類されるんですか?

「鉱物種っていう種名としては、今世界中で知られているのは5700種程度ですね」

●5700! そんなにあるんですね。それぞれ何が違うんですか? 

「鉱物種は化学組成という成分です。どんな元素でできているかが、ちょっとずつ違うっていうのがひとつ。あとは結晶の形というか、構造って言っているんですけど、鉱物はだいたい元素が規則的に並んだ形をしています。この規則的な並びがちょっとずつ違っても別の鉱物になるという、そういったこともあります」

緑柱石
緑柱石

鉱物はどうやって生まれるのか!?

※初歩的な質問なんですが、鉱物はどのようにして生まれるんですか? 

「いろんな出来方があって、鉱物は主に地下でできます。例えば地下の深いところで、マグマが冷えて固まる時に岩石ができて、その岩石中にできる鉱物がまずあります。岩石はそもそも鉱物の集まりなので、ツブツブしていますよね。岩石にツブツブの模様が見えると思うんですけど、あのひとつひとつの粒が鉱物になるんです。

 花崗岩(かこうがん)という白っぽくて、ごま塩模様の、お墓の石や建物の壁とかに使われている石があるんですけど、あれは地下でマグマが冷えて固まってできた岩石なんです。地下深いところで、ドロドロのマグマがゆっくり冷えて固まると、あの白っぽい岩石になるんです。
 その白っぽい岩石、花崗岩の中には石英とか長石とか黒雲母とか、いっぱいツブツブとした鉱物が入っているわけなんです。というわけで、マグマが冷えることによって鉱物ができる、鉱物の出来方のひとつとして、それが代表的なものになります」

花崗岩
花崗岩

●鉱物が作られる時に必要な条件はあるんですか?

「先ほどの鉱物の出来方は、代表的なものをひとつだけあげましたが、もっといろいろあるんですね。地下だけじゃなくて、地表で酸素とか空気とか水に触れながら変わったりとか、地下深くで圧力と温度が高くて、新しい鉱物ができたりとか、いろいろあるんです。

 条件としては圧力、温度、あと鉱物は固体なので、固体ができる前の液体状態の時の成分の違い、どんな圧力でどんな温度でどんな液体の成分か、これでどういう鉱物ができるかはだいたい決まっていきます」

●この本を読んで、ほんとにいろんな色の鉱物があるんだなって感じたんですけれども、こんなに多彩で多種多様な鉱物の、色や形の違いを決定づけるものは何でしょうか?

「色は主に成分ですね。鉱物がどういった元素でできているのかに主に関わっています。形のほうは、鉱物はだいたい規則正しく原子が並んでいる構造をしています。そのミクロというか目に見えない、小さい小さい微細な構造が、元素の並び方が鉱物の形を決める大きなひとつの要素になっています。

 どういった原子の並び方をしているかによってだいたい外側の形も、どんな形になりやすいかっていうのは決まってきます。成分と原子の並び方で色や形が決まる、そういったことですね」

輝安鉱(きあんこう)
輝安鉱(きあんこう)

日本は鉱物の宝庫!?

※日本で発見された鉱物は何種類くらいあるんですか?

「日本では1300種くらい知られています。世界中で5700種に対して日本で1300種、日本は世界的に見ても、ほんとにたくさんの鉱物種が産出している国になります」

●それはどうしてなんですか?

「日本の地質環境がちょっと特殊であるというか、バラエティに富むことが理由になっています。日本の国がある場所は、プレートっていう、地球の表面を大きな岩盤が覆っていて、その岩盤が何枚かの板になっていて、それをプレートと言っているんですけど、日本があるところは、太平洋側からユーラシア大陸に向かって、プレートが沈みこんでいる場所になるんですね。

 日本は地質が活発だなっていうのがなんとなくあると思うんですけれども、そういった土地柄で、マグマが上がってきたり、いろんな圧力が加わったりしながら、たくさんの種類の岩石、そして地質の環境というものがあります。複雑に複雑に混じり合っているわけなんです。

 そういった影響で岩石の種類が多ければ、それだけ鉱物の種類も多くなりますし、地質作用が多ければ、それだけ鉱物の種類も多くなる、そういった土地柄が日本の鉱物種の多さに関係しています」

●日本だけで採れる鉱物っていうと、具体的にどんなものがあるんですか?

「例えば、千葉石、辺見石、糸魚川石とか、そういったいかにも日本ぽい名前がついている鉱物がありまして、こういったものが日本でしか採れない鉱物として、いくつか知られています」

(編集部注:世界ではおよそ5700種の鉱物が発見されているということでしたが、渡邉さんによると、新しい鉱物は年間100種ほど見つかっているそうです。

 また、先ほどお話の中で、日本だけで発見された鉱物として「千葉石(ちばせき)」の名前が出ましたが、日本地質学会のサイトによれば、産出されたのは房総半島の南部で、きっかけは1998年にアマチュアの研究家が見つけた鉱物、そのときは内部が変質していたので正体がわからなかったそうです。その後2007年に別のアマチュア研究家が同じ場所から変質していない千葉石を見つけ、新発見につながったそうですよ)

鉱物は傑作品!?

※実際に鉱物を見てみたいと思ったかた、渡邉さんのおすすめは日本全国にある博物館。多くの博物館に石や鉱物の展示コーナーがあるそうです。また、全国46地域にある「ジオパーク」もおすすめだそうですよ。

 ほかにも海岸や川原でも鉱物を見つられますか?

「見つかります(笑)。ただ見るだけじゃなくて、やっぱり自分で拾いたいとか、探したいっていうのはありますよね。楽しいですよね」

●コツはありますか?

「だいたい石は鉱物の集まりでできているので、川原とか海岸に行ってきれいな石を探せば、それが鉱物なんですよね。その鉱物を拾った人が、魅力的だと思うかどうかなので(笑)、コツっていうかなんというか、きれいな自分の好きな石をまず見つけることですよね。

 色がきれいなのか、形がきれいなのか透明感があるのか、自分が実際に行って、あっ、これ、きれい! っていうのをまず見つけてもらいたいと思いますね。そのきれいな石を図鑑で、どんな石なのか、この石にどんな鉱物が含まれているのかを、ぜひ調べていただきたいなっていうのがあります。

 きれいな石を拾ってくるだけだったら、いろんな人がやると思うんですけれども、拾ってきた石がなんていう石なのか岩石なのか、なんていう鉱物を含んでいるのか、これを図鑑とかで調べて、自分なりにでも名前がわかるとすごく楽しくなるんですよね。
 これ、めっちゃきれいだなとか、この緑の石なんだろうな〜って拾ってきて、これ、緑泥石(りょくでいせき)っていうのか! 例えばですけど(笑)、わかったらもう俄然楽しくなるんじゃないかなと思います。石拾いが、鉱物採集が楽しくなると思います」

(編集部注:川原や海岸での石拾い、国立公園や国定公園などでは、持ち帰りは禁止されています。ご注意ください)

●では、最後に渡邉さんが思う鉱物の魅力とは、なんでしょうか?

「鉱物の魅力・・・鉱物は自然界が生み出した、創り出した傑作品であると私は思っています。鉱物を見ていると、色ももちろんきれいなんですけど、形がすごくシャープだったり、きれいなんですね。原子がものすごく規則正しく並んでいる、なんでこんなものが自然界にできるのかなって。自然界は放っておいたら、物はどんどん乱雑な方向、無秩序な方向に進んでいくわけなんですよ。部屋は放っておいたら散らかるみたいな感じなんです(笑)

 でも秩序だったもの、高度に創り上げられたものができるためには、何かしらわざわざエネルギーを使うわけで、わざわざ創り出さないと絶対無理なんです。生物もそうやって自然界に生まれてきたと思いますし、鉱物もあの美しさ、あの規則正しさは、そうやって生み出された、わざわざ創り出されたものなんですよね。そこがほんとに神秘的で、鉱物の魅力だなって感じています」

玻璃長石(はりちょうせき)
玻璃長石(はりちょうせき)

INFORMATION

『ふしぎな鉱物図鑑』

『ふしぎな鉱物図鑑』

 渡邉さんの新しい本をぜひご覧ください。写真家でもある渡邉さんが撮影した鉱物写真、どれも美しい写真で見とれてしまいます。色や形が多種多様で、その多彩さに驚きの連続です。鉱物の不思議をわかりやすく解説しています。オールカラーでポケットサイズなので、フィールドワークや鉱物の展示会のお供にいかがでしょうか。おすすめです。
 「大和書房」から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎「大和書房」HP:https://www.daiwashobo.co.jp/book/b605966.html

 渡邉さんが主宰するウェブサイト「地学博士のサイエンス教室 グラニット」も、ぜひご覧ください。

◎「地学博士のサイエンス教室 グラニット」HP:https://watanabekats.com/

オンエア・ソング 8月28日(日)

2022/8/28 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. LIKE A ROLLING STONE / BOB DYLAN
M2. STONED SOUL PICNIC / SWING OUT SISTER
M3. RUBY TUESDAY / THE ROLLING STONES
M4. COLORS / AMOS LEE
M5. ダイアモンド / プリンセス・プリンセス
M6. DIAMOND ROAD / SHERYL CROW
M7. SMILE / WHAT A WONDERFUL WORLD / IMA

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

あなたのそばにもいる「ホンドギツネ」〜繁殖、子育て、人との関係、その知られざる生態に迫る!

2022/8/21 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、自然と人をつなぐ写真家「渡邉智之(わたなべ・ともゆき)」さんです。

 渡邉さんは1987年生まれ。現在は岐阜市を拠点に、人の営みの近くで暮らす生き物を撮影。また、ニコンカレッジ名古屋校で講師としても活躍されています。そして先頃『きみの町にもきっといる。となりのホンドギツネ』という写真絵本を出されました。

 きょうは、私たちのすぐそばで暮らしているホンドギツネの繁殖、子育て、そして人との関係など、あまり知られていない生態などうかがいます。

☆写真:渡邉智之

写真:渡邉智之

自然と人のつながり

※渡邉さんは「自然と人をつなぐ写真家」と名乗っていらっしゃいますが、そこにはどんな思いがあるのでしょうか?

「今の時代って人と自然がどうつながっているのかが、すごく見えにくい時代だなって感じているんですね。そういう見えにくい、自然と人のつながっている部分を、なんとか見える化できないかなっていうことを考えています。

 自分からは動物写真家って名乗らないようにしているんですね。動物写真家と名乗ってしまうのは、ありではあるんですけど、僕は動物だけを撮りたいわけじゃないんです。動物と人のつながっていく様子だったり、動物同士のつながっている部分だったりとか、そういう見えにくい部分を表現していけたらなと思っているので、そういう意味で”自然と人をつなぐ写真家”と名乗っています」

渡邉智之さん

●テーマが「自然と人のつながり」ってことなんですね。

「そうですね。なんとなく僕の中のイメージとして、自然と人をつなぐと自分では言ってはいるんですけど、僕の中で人という位置も、ほかの生き物と変わらなくて、結局自然の中で同じように生きている生き物なんですね。特に日本の自然なんかだと、野生動物の生態を撮るにしても野生動物だけで完結するわけじゃなくて、必ずそこには人の気配がどこかしらにあるんですね。

 だから自然と人の関係性だったりとか、自然と人をつなぐというふうにわけていますけれども、自然の中に人は含まれているよっていうのは常に感じていますね」

●都会に暮らしていると、自然とつながっているんだなっていう意識は薄くなってしまう印象はあるんですけど、その辺りはいかがですか?

「そうですよね。田舎に暮らしていても、いま僕、岐阜市に住んでいますけど、県庁所在地で名古屋から20分くらいの場所なので、それなりに都会ではあるんです。

 でも、そういうところに暮らしている人たちと話をしても、自然とそんなに関わっていなかったりとか、自分たちの身の周りでどういう自然現象が起こっていて、自分たちの暮らしにどういうふうに影響があってとか・・・逆に自分達の暮らしが野生動物、自然に対してどういうふうに影響しているのかを、気づかなかったり知らないっていうかたは、ものすごくいっぱいいますね」

昔から身近にいるキツネ

●先頃発売されました写真絵本『きみの町にもきっといる。 となりのホンドギツネ』、まさに自然と人のつながりがテーマになっているなと感じました。

『きみの町にもきっといる。となりのホンドギツネ』

 私もこの写真絵本を読ませていただいて、遊歩道だったり公園だったり、すぐそばでキツネが暮らしていることにすごく驚いたんですね。ほとんどの人間は気づいていないとも書かれていましたが、こんなに人の近くにキツネっているんですね!

「そうなんですよね。みなさん、キツネって聞くと北海道をイメージするかたがすごく多いんですよ」

●はい! まさに私もそう思っていました。

「まさにそうですよね。たぶんそういうかたはすごくいらっしゃって、北海道にしかキツネはいないと思っているかたもいるんですね。
 でもよくよく考えると、お稲荷さんのキツネだったりとか、キツネの能とかお祭りで売っているお面だったりとか、新美南吉(にいみ・なんきち)の童話『ごん狐』だったりとか、身近な場所にキツネに関する文化とか民話とか、そういうのが実はいっぱいあるんですよね。

 そういう文化が生まれてきたっていうことは、つまり昔から人とキツネは常に近くにいて、なにかしらの関わりがあったことの証拠でもあるんですよね。だから昔の人たちは、おじいさん、おばあさんの世代の人たちはよく、キツネに化かされたっていう話を本当に真剣にするかたもいらっしゃいますよね。でも、今の僕たちってキツネに化かされたってほとんど言わないと思うんです。

 それはやっぱり科学がどんどん進んでっていうのもあると思いますけど、僕たちのキツネを感じる、気配を感じることの力がどんどん弱くなっているっていうか、そういうのもあって、キツネはずっと身近にいるんだけど、キツネの存在にどんどん気づけなくなっているような感じはするんですよね」

(編集部注:写真絵本に掲載されているホンドギツネの写真は、主に岐阜市の渡邉さんの住まいからすぐ近くの河川敷で撮ったものだそうです)

写真:渡邉智之

ホンドキツネの繁殖、子育て

 ここで、主人公ホンドギツネがどんな動物なのか、ご説明しておきましょう。

 ホンドギツネは世界中に広く分布しているアカギツネの仲間で、日本では沖縄を除いて、本州より南に生息。見た目は柴犬(しばいぬ)をほっそりさせたくらいの大きさで、体重は4キロから7キロほど。人のそばで暮らしていても警戒心が強く、人前に姿を見せることはほとんどないそうです。

 北海道に生息するキタキツネも同じアカギツネの仲間ですが、ホンドギツネよりも体が少し大きく、足元がくつ下をはいたように黒い個体が多いとか。

 キツネの特徴としては、走るのが得意で、草刈りされた場所や、見通しの良い畑などを好んで狩りをする、ということなんですが、耳がいいので、獲物となる虫や小動物の出す小さな音を聴いて狩りをするそうです。

※ホンドギツネの繁殖シーズンはいつ頃なんですか?

写真:渡邉智之

「早いと11月ぐらいから繁殖期なってきますね。繁殖期になると面白いのが、オスが”コンコン”って鳴きます。”コンコン、コンコンコン”って鳴くんですね。これが実はオスがメスを探して、自分はここにいるよ、メスはどこだい? ってアピールしている時の声なんですよ。

 そういう声を11月くらいの夜に、河川敷や堤防で待っていると結構、聴こえてくるんですよね。その声を聴いて、メスが、あ! オスがいたって分かって、オスとメスが出会えるわけですね。だいたいそれが11月ぐらいから始まって、12月の末とか1月とかに交尾をして、早いと2月の末から3月の中旬くらいに巣穴の中で子供を出産します」

●何匹くらい産むんですか?

「2匹から多いと5匹ぐらいですね」

写真:渡邉智之

●この写真絵本には子育ての様子なども掲載されていましたけれども、メスとオスで一緒に子育てするっていう感じなんですか?

「そうですね。キツネはオスも子育てに参加する動物なんです。オスが子育てに積極的に関わる動物って結構珍しくて、日本ではタヌキとキツネしかいないですよ。ほかの野生動物はメスが主体で子育てをするんですね。キツネの場合だとオスが子供に食べ物を持ってきたりとか、おもちゃを持ってきたり遊んであげたりとか、そういうことをしますね」

●基本的には出産も子育ても巣穴で行なわれているってことなんですね。

「はい、そうですね。巣穴も常に同じ巣穴を使うわけではなくて、お母さんのメスの縄張りの中に巣穴がいくつかあるんですよ。だいたい数十メートル置きぐらいにポンポンポーンとあって、なにかあると巣穴の引越しをして子育てをするっていう感じですね」

(編集部注:渡邉さんによると、いくつかある巣穴の、どれを使っているのかを入念な観察で突き止めても、警戒心がとても強いので撮影が難しく、川をはさんで対岸にブラインドテントをはって、やっと姿を見せてくれるそうです)

※ホンドギツネは夜行性なんですよね?

「はい、夜行性と言われています。基本的に夜に活動するんですね。なんだけど、夜じゃなくても昼間とか、例えば冬だと、雪が降ったあとにちょっと早い時間にキツネが出ていることもあります。
 オスがメスを早い時間から探し出したりとか、子育ての最中だと朝とか昼間とか、お母さんが朝昼晩みたいな感じで(子ギツネに)お乳をあげに来たりするので、夜行性と言われているけど、完全な夜行性ではなくて、昼間でも結構動いています」

●撮影自体は、多いのは夜っていう感じなんですか?

「そうですね。撮影自体は、昼間にそういうふうに見られるのは、そこまで多いことではないので、ほぼほぼ夜の撮影になります」

(編集部注:ホンドギツネの撮影は、観察が8割、そして夜の撮影が多いため、光をどう作るのかが、とても難しいと渡邉さんはおっしゃっていました)

写真:渡邉智之

キツネが腰を抜かした!?

※ホンドギツネの撮影をされていて、思わず見入ってしまった瞬間はありましたか?

「いっぱいあるんですけど・・・面白かったなぁと思ったのは、キツネが腰を抜かした瞬間があって(笑)、人でも腰を抜かすってあんまり見たことないじゃないですか。たぶん一生見ない人もいると思うんですけど、キツネが腰を抜かした瞬間を見たことがあります。

 2匹の子ギツネが夕方、河川敷の草やぶから出てきていて、一段落してちょっと休憩しているような感じでいたんですけれども、そこに突然別の子ギツネが草やぶからぱーっと出てきたんです。

 それに2匹の子ギツネがびっくりして飛び跳ねて、1匹のキツネはほんとに立てなくなっちゃったっていう、本当に腰を抜かして、腰が砕けちゃってヨタヨタしていて、しばらく立てなくて・・・こんなことあるんだなという感じですよね(笑)。人ですら(腰を抜かした瞬間を)見たことないのに、野生動物の腰を抜かす瞬間を見てしまったと、それはちょっとびっくりしましたね〜。

写真:渡邉智之

 ほかにも面白いこととしては、2013年に観察をしていた時に、僕のことを全然気にしないオスがいたんですね。その子は僕に対してすごく興味があるらしくて、毎日のように彼らのところに会いに行くので、彼らが僕のことを覚えてくれるんですよ。

 その中でもその1匹の子は僕にすごく興味を持っていたので、僕が堤防の上で待っていると、草やぶから出てくるんですよ。出てきて、堤防の上に僕を見つけると、わざわざ堤防の上にあがってきて、なぜか僕の横に座って・・・本当に面白いですよね。なんか絵本の世界みたいな感じです。

 僕のすぐ横に座って、一緒に夕陽を眺めたりとか、時間的にどんどん車が渋滞していく時間なので、渋滞する車を一緒に見ていたりとか・・・同じ風の匂いをすぅーっと、あ! 同じ匂いを今嗅いでいるな、みたいなことがあったりとか。それが住宅街のすぐ横であったので、そういうところに絵本みたいな世界があって、それは本当に忘れられない経験だなと思います。

写真:渡邉智之

 子ギツネも遊び好きなんですけど、大人のキツネも遊び好きなんですよ。キツネって、オスが長い棒をくわえて走っているあとを、後ろからメスが追っかけて、追いかけっこをしたりとか、そういうことをするんですよね。結構遊び好きな姿、大人でも子供でも遊んでいたりするのを見ると、なんか人間との共通点じゃないけど、そういう部分も感じて、なかなか面白いですね」

人間をよく見ているキツネたち

※ホンドギツネたちは、人間のそばで健気に、そしてしたたかに生きているような気がするんですけど、渡邉さんはどう思いますか?

「彼らが人のそばで生きることのひとつ大きな理由として、やっぱり食べ物があると思うんですけど、食べ物が比較的手に入りやすいと思いますね。人間がゴミとして出している残飯とかも食べるし、作物とかも食べるし、今の時期は、トウモロコシ好きなんで、トウモロコシもめちゃくちゃ食べるんですよ。

 そういう食べ物を食べたりとか、あとは畑だったらネズミがいっぱいいるので、ネズミを狩っていたりとか。人の近くにいるとキツネが生きていく上で、食べ物が比較的得やすいっていうのはあると思うんですね。

 だから人の近くをずっと彼らは離れないんだろうと思うんですけど、逆にそういういいこともあれば、(キツネが)車にひかれてしまうとか、そういうことも結構あるんですよね」

●可哀想な状況を目にすることも多いですよね。

「そうですね、結構ありますよね。」

●開発も含めた自然環境の変化は、やはり野生動物には厳しいと感じますか?

「そうですね。開発もちょっと難しいところですけど、突然ぐっと大きな変化で、彼らの暮らしが変わることをすごく感じていますね。そんな中でも彼らは上手いこと、人の暮らしをよく見ていて、どういうふうに自分たちがその状況に対応していけるのかっていうのを、常に考えて生きているような感じはするんですね。

写真:渡邉智之

 テトラポットが河川敷にばーっと置かれて、キツネの寝床とか潰れる時があったんですけど、そういう工事のあとでも子ギツネたちは、そのテトラポットの上で翌日には跳ね回って追いかけっこしていたりとか、そういうしたたかさもすごくあると思いますね。確かに開発で彼らの暮らしがどんどん変わっていくっていうのもあるんですけど、同時にそれをうまく許容していって彼らの暮らしもどんどん変化しているなってことは実感していますね」

●改めてホンドギツネを通して見えてきたもの、感じたことってなんでしょうか?

「ずーっと見ていて面白いなって思うのが、彼らって人のことをよく観察しているんですよ。人が気づかないだけで、人が散歩している様子をじーっと見ていたりとか、犬を散歩させている姿を見ていたりとか・・・そういうのを草陰からじーっと観察していて、人がいない時間に合わせて出てきたりとか、草刈りしたりすると、そこで狩りをしたりとか、人の暮らしをよく見ているんですね。

 すごくよく見ているからこそ、僕たちのことをすごく理解しているんですよ、彼らって。それがまず面白いなって思うんですけど、逆に僕たちって彼らのことをどれくらい知っているのかなっていうのは常に思いますね」

写真:渡邉智之

INFORMATION

『きみの町にもきっといる。となりのホンドギツネ』

『きみの町にもきっといる。となりのホンドギツネ』

 渡邉さんの写真絵本をぜひご覧ください。これまでほとんど知られることのなかった、ホンドギツネの生態に迫る初めての写真絵本です。
 こんなに身近にキツネがいることに驚きます。河川敷や畑、公園などで、健気に生きている姿が素晴らしく、子ギツネたちの愛くるしい写真に思わずにっこりしてしまいますよ。ホンドギツネたちは、人の暮らしにひっそりと寄り添いながら、きょうも生きていて、あなたをすぐそばで見ているかも知れません。ぜひお子さんと一緒にホンドギツネの世界を覗いてみてください。「文一総合出版」から絶賛発売中です。

◎「文一総合出版」HP:
https://www.bun-ichi.co.jp/tabid/57/pdid/978-4-8299-9017-9/Default.aspx

 渡邉さんのオフィシャルサイトもぜひ見てくださいね。ホンドギツネ以外にタヌキやムクドリなどの写真も載っていますよ。

◎オフィシャルサイト:https://wtnbtmyk47.wixsite.com/watanabetomoyuki

オンエア・ソング 8月21日(日)

2022/8/21 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. HER TOWN TOO / JAMES TAYLOR & J.D. SOUTHER
M2. NATURE / INDIA. ARIE
M3. OUR NIGHT / BILLY CRAWFORD
M4. CLOSE TO YOU / THE CARPENTERS
M5. 太陽の下 / レミオロメン
M6. YOU’VE GOT A FRIEND / ROBERTA FLACK (WITH DONNY HATHAWAY)
M7. BY YOUR SIDE / SADE

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

楽園のような日本の無人島〜生きる喜びに気づける島旅

2022/8/14 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、島に魅せられたライター
「清水浩史(しみず・ひろし)」さんです。

 清水さんは1971年生まれ。早稲田大学卒業。大学時代はクラブの活動として、たびたび島に行き、その一方でバックパッカーとして、アラスカ、インド、南米、アフリカなど、辺境秘境の旅に没頭。大学卒業後はテレビ局に勤務するも、日常の窮屈さから脱出したいと、国内外の島旅は続け、現在はライター、そして編集者として活躍されています。

 これまでに150以上の無人島を取材。人が住んでいない島ゆえに、船の定期便はあるはずもなく、目的の島に行くためには、漁船などをチャーター。島にたどり着いても、船着場はなく、上陸するためには岩場に飛び移るか、浅瀬にドボンと飛び込んで泳ぐしかないそうです。

 清水さんはそんな島や島旅に関する本を多く出版、そして先頃『日本の絶景無人島〜楽園図鑑』という本を出されました。

☆写真:清水浩史

沖縄県多良間村の水納島にて
沖縄県多良間村の水納島にて

純白の楽園「百合が浜」

※『楽園図鑑』には37の島が掲載されています。何か選ぶ基準のようなものはあったんですか?

「無人島の中でも、やはり楽園というイメージと結びつきやすい、とにかく透明度の高い海に囲まれていること、あるいは真っ白な砂浜があること、あるいはサンゴ礁が豊かな島っていうのを厳選したという形なんですね。

 その中でも根幹にあるのは、人工物、人が作ったものがほとんどないっていうところを重視していると言いますか・・・はたからみると、綺麗だけど何もないように見えるかもしれないんですけど、何もないということは、何もかもあるっていう島なのかなって思います」

『日本の絶景無人島〜楽園図鑑』

●どの島も本当に素敵だったんですけれども、特に私が気になった絶景の無人島についてお話をうかがっていきます。まずは、鹿児島県の「百合ヶ浜(ゆりがはま)」。最強の純白楽園と書かれていましたけれども、真っ白な砂浜ですね。

「そうですよね。ここは結構広く、美しい場所として知られていますけれども、本当に美しいんですよね。与論島の大金久(おおがねく)という海岸の1.5キロ沖ぐらいに、毎日あるわけではなくて、大潮あるいは中潮のかなり潮が引いた時、干潮の時だけポコンと現れる真っ白な砂地だけの島ですね。

 与論島の海の青さと砂地の白のコントラストが本当に映えると言いますか、美しいので、出会える回数が少ない分だけ、出会えた時の喜びは大きな島なのかなと思います」

百合ヶ浜(鹿児島県与論町)
百合ヶ浜(鹿児島県与論町)

●確かに幻の浜っていうふうに、この本にも載っていましたけれども、それぐらいなかなか見ることができないっていうことですか? 

「そうですね。百合ヶ浜に限らずなんですが、厳密には島未満の低潮高地と呼ばれるものなんですね。潮が引いた時だけ島が現れる、そういう場所はこの百合ヶ浜はじめ、日本には各地にあるんです。出会えないんですけれども、この幻の美しさが味わえるという、本来の島とはまた違った魅力が低潮高地にはあるのかなと思います」

●現れては消えてしまうっていうことですよね。 

「そうですね。この儚さも魅力と言いますかね」

南バラス島(沖縄県竹富町)
南バラス島(沖縄県竹富町)

サルの楽園「幸島」

●続いては、宮崎県串間市にある「幸島(こうじま)」、サルの楽園と書かれていました。砂浜をサルの親子が走っている写真が載っていましたけど、こうやってサルが頻繁に現れるんですか? 

「ここは野生のサルが90頭くらい生息しているんですね。京都大学の研究員たちが観察のために島を訪れていることもあって、結構人慣れはしていますね。
 宮崎県の石波(いしなみ)海岸から渡し船で、もうほんの数分で渡ることができるんです。島にポッと渡してもらったら、もうそこにはサルが群れているという、異世界に紛れ込んだような楽しさと言いますか・・・美しさもありますし、それでまたそこの海や砂浜が綺麗なんですよ。
 サルを眺めるもよし、綺麗な砂浜で泳ぐもよしと、本当に楽園のような島かなと思いますね」

幸島(宮崎県串間市)
幸島(宮崎県串間市)

●海岸にサルがいるなんて、なかなかないですよね?

「そうなんですよ。私は無人島に行くのはいつもひとり旅ですけれども、サルに見守られて泳ぐって、見守られているような気がして、本当に楽しいですね(笑)」

●人間が近くに行っても、別に恐れるとか怯えてしまうとかはないんですね。

「ないですね。黙々と毛づくろいをしたりとか、本当に人間とサルのいい距離があるのかなというふうに思いますね」

●なぜ幸島にはサルがいるんですか? 

「これは研究員でもまだ分かっていないんですよね。なぜここにサルがいるのかは、ずっと謎なんです。ただこの島で有名になったのは、ここのサルは文化ザルとも言われたんですよ。というのは、60年代だったか、サルが芋を海水で洗って食べる姿が目撃された島なんですね。

 それは、砂を落とすっていうのもあるんですけれども、塩味が付いて芋が美味しくなることをサルは学び、その学んだことが次の世代にも受け継がれていくことが発見された島なんです。これは文化的行動であるということで、この幸島のサルは世界的にも有名になったという貴重な島かなと思いますね」

●サルにとっても楽園なんですね!

「そうですね。それを眺められるという、アクセスできるという幸せと言いますか、そんな貴重な島かなと思います」

北陸のハワイ「水島」、伊豆のヒリゾ浜

●『楽園図鑑』に掲載されている、私が特に気になった無人島。続いては、福井県敦賀市にある「水島(みずしま)」、北陸のハワイとも呼ばれているんですね。

水島(福井県敦賀市)
水島(福井県敦賀市)

「そうですね。無人島に限って言えば、日本海側は本当に綺麗な砂浜だけの島や無人島はほとんどないんですよ。ですので、この水島は真っ白な砂浜が600メートルぐらい続く、本当に美しい島なので貴重かなと思います。
 昨年くらいまでは多少コロナの影響で制限があったものですから、今年からはしっかり楽しめる島かなと思います」

●この海の透明度も高いですね。 

「そうですね。この水島の周辺は遠浅なんですよね。お子さんでも本当に安心して遊べますし、日本海というと、どうしてもちょっと荒々しいイメージがありますけれど、北陸のハワイっていう謳い文句に何ら違和感を覚えないような、素敵な島かなと思います」

●首都圏に住んでいるリスナーさんに向けて、アクセスしやすいおすすめの無人島はありますか?

「伊豆半島の先端にある”ヒリゾ浜”を挙げたいと思います。このヒリゾ浜は伊豆半島にあるので、無人島ではないんですね。ただし、道がないので陸地からアクセスできないんですよ。ですので、中木(なかぎ)っていう港から渡し船で渡るんです。

 ヒリゾ浜に渡ると目の前には岩の島がポンポンと浮かんでいるんですよ。平五郎岩(へいごろういわ)であったり、丘ハヤマっていう岩礁があったりするので、ヒリゾ浜から泳いで岩場の無人島に上陸するっていうことも楽しめます。

ヒリゾ浜(静岡県南伊豆町)。中央に見える岩の島が平五郎岩、 右手の浜がヒリゾ浜。
ヒリゾ浜(静岡県南伊豆町)。
中央に見える岩の島が平五郎岩、右手の浜がヒリゾ浜。

 このヒリゾ浜、何がすごいかっていうと、伊豆屈指の透明度って言われているんですよね。ただでさえ伊豆半島は綺麗ですけれども、どんだけ澄んでいるんだ、どんだけ魚影が濃いんだっていうぐらいお魚にも会えますし、そういう意味ではおすすめしたいなと思います。

 それと、だいたい海水浴っていうのは8月いっぱいで終わってしまう、毎年なんか天候が不順だな〜とか言ったら、あっという間に夏って終わってしまう。ただし、このヒリゾ浜は9月いっぱいまで海水浴をやっているという、ちょっと珍しいパターンなんですね。夏が終わってしまったっていうかたにも、9月いっぱいまで楽しめますので、多くのかたが楽しめる島なんじゃないかなと思いますね」

●まだ間に合いますね! 

「そうですね!」

(編集部注:素朴な疑問として、無人島の所有者は誰なのか、清水さんにお聞きしたら、国が所有していることもあるそうですが、多くは地方自治体で、中には個人または企業が所有している島もあるそうです。無人島を販売しているサイトもあるとのことですから、気になる方はネットで検索してみてはいかがでしょうか)

海と真剣に向き合う

※清水さんが島や島旅に興味を持つようになったのは、何かきっかけがあったんですか?

「もう30年ほど前なんですが、大学時代、早稲田大学の水中クラブという部に所属していたんですね。この部は年がら年中、島に行って、海にスキューバダイビングで潜り、あるいは素潜りで潜るという、海の探検部みたいな活動内容だったんです。
 毎年夏には1ヶ月以上の島合宿があるんですよ。それで1年生の時に沖縄県の伊江島(いえじま)での合宿で、先輩が助言してくれたんですよ。

 1ヶ月もの集団生活なので、結構人に気を遣って、楽しくしなきゃとか、みんなを楽しませなきゃなんて気を遣っていたんです。それを見た先輩が“清水、そんなに人に気を遣うことなんて必要ないよ。この部ではとにかくひとりひとりが、海の本当の面白さに真剣に向き合ってくれたら、もうそれだけでいいから”みたいなことを言ってくれたんですよね。

 なんかそこからですかね。吹っ切れたように、周りからどう思われてもいいや、どんなにオタクだと思われてもいいから、好きな海にどんどん行こうって。そこから島旅が始まったのかなと思います。

 私は、会社勤めも飽きっぽいところがありますし、長らく大学院で研究もしてたんですけど、その研究生活も飽きるっていう、非常に飽きっぽいんですね(笑)。ただこの島旅だけは、飽きないのはなんでかなって考えたことがあるんですけど、やっぱり有人島、無人島どちらであっても飽きないのは、どんな島に行ってもそれぞれ個性が違うんですよね。

 例えば、距離が近い島であっても、いざ行ってみると全然違う、これはなんなんだろう。島っていうのは小宇宙であって、それぞれ多様な個性の集まりなんだなっていうことが、飽きない理由なのかなと思っていますね」

百合ヶ浜の取材で与論島を訪れた際の写真
百合ヶ浜の取材で与論島を訪れた際の写真

島の人は、旅人にもおおらか

※離れた島「離島」になればなるほど、島独特の文化や豊かな自然が残っていますよね。

「そうですね。開発の波っていうことでいうと、やはり離れれば離れるほど、島独特の文化、豊かな自然は残りやすい傾向にあると思うんですよね。ですので、島旅をすると、今度はもっとあの先の島に行ってみたいな、そしてまたその先の島にも行ってみたいなって、どんどんアイランド・ホッピングをしたくなる。

 それはなんでしょうかね・・・島の大きさがどんどん小さくなったり、距離がどんどん離れたり、人口がどんどん少なくなっていけばいくほど、何か昔ながらのものが残っていることが、やっぱり可能性としては大きいので、島旅はどんどん奥に分け入りたくなるのかなって思います」

●住んでいる人たちのつながりも深そうですね

「そうですね。まあ相互扶助ですよね。物理的な仕事の面でも精神的な面でも、横のつながり、助け合う精神が島には残っています。面白いのは、島の中で助け合いが閉じられているかというと、そうではなくて、結構旅人にも開かれているのが、島旅の面白さかと思うんですよね。

 というのも、私が若い頃、仕事がつらくて、結構島に逃げていたことがあるんですけど、島の人によく言われたのが、そんなに仕事がしんどいんだったら、いつでもこの島に帰って来ればいいからと。あなたの居場所は会社だけじゃないんだから、そんなに気にするな、みたいなことをよく言ってくれたんですね。

 そういう意味で島の人たちの温かさ、おおらかさは、島内部だけではなくて、外部の旅人にも開かれているっていうのが、面白いところかなって思いますね」

(編集部注:清水さんによれば、戦後、150近くの島が無人化。その原因は、高度成長期に出稼ぎで人が出て行ったことや、近年は少子高齢化のために無人化していることが多いそうです。無人島になってしまうと、もう一度、人が住むことはほとんどなく、「人が暮らしていることが貴重なこと」だと清水さんはおっしゃっていました)

中ノ瀬(沖縄県伊江村)
中ノ瀬(沖縄県伊江村)

生きる喜びに気づく

※最後に、これまでたくさんの島を取材されてきた清水さんだからこそ、島を通して、何か見えてきたこと、感じていることはありますか?

「もちろん、島の楽しさ、豊かさに気づけるのがひとつあります。ただし、それと同時にやはり日常、どんなにつまらないと思える日常であっても、島の旅から帰ると、なにか日常の面白さに気づけるんですよね。

 島旅から帰ると少し強く生きられると言いますか、それが島旅の魅力かなと思うんですよね。日頃気づけなくなっている生きる喜びに気づける、ということなのかなと思いますね。

 例えばなんですけども、山口県の情島(なさけじま)に行った時に、大根を育てているおばあさんの話を聞いたんですね。その息子さんは都会で暮らしていて、社長さんになられていてお金持ちなんですね。それでその息子さんは島で暮らす母親に対して、もう野菜なんて買えばいいって! と息子が言うんだよって。お婆さんは、私は野菜は育てたいから育てているんだよって言うんですよね。

 つまり、生きる喜びっていうのは、何か買ったりすることだけではないんだと。何か育てること。もちろん子育てもそうですし、そういうことに気づける。

 ですので、島から帰ると、あれほど嫌だった仕事が何か小さなタネのように思えてきて、この仕事も大根のように手塩にかけて育てていく。だからその過程こそが生きる喜びなのかなって気づけたりする。島旅は帰ってきてからあとの、何か効用があるのかなというふうに思います」


INFORMATION

『日本の絶景無人島〜楽園図鑑』

『日本の絶景無人島〜楽園図鑑』

 清水さんの新しい本、おすすめです。きょうご紹介した島を含め、37の島が掲載。白い砂浜、透明な海、サンゴ礁などなど、楽園のような島が美しい写真とともに紹介されています。どの島にも行ってみたくなりますし、写真を見ているだけでも癒されますよ。この夏、間に合えば、または来年の夏の島旅の参考に、どうぞ。
 河出書房新社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎河出書房新社
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309289731/

◎清水さんのTwitterもぜひ見てくださいね。
https://twitter.com/shimizhiroshi

オンエア・ソング 8月14日(日)

2022/8/14 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. KOKOMO / THE BEACH BOYS
M2. Loveland, Island / 山下達郎
M3. IN PARADISE / JANET KAY
M4. SEASIDE WEEKEND / ANTENA
M5. 神様の宝石でできた島 / The Boom
M6. I CAN SEE CLEARLY NOW / JIMMY CLIFF
M7. LIFE / DES’REE

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

人生の記念日に木を植えよう〜「プレゼントツリー」プロジェクト

2022/8/7 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」の「鈴木敦子(すずき・あつこ)」さんです。

 鈴木さんが2003年に設立した「環境リレーションズ研究所」は環境意識が高いといわれている日本の人たちに、もっとアクションを起こしてもらいたい、そのためのプラットフォームを作っていこうと活動をスタート。現在は、森づくりを主な事業として取り組んでいます。

 中でも「人生の記念日に木を植えよう」をコンセプトに、2005年から全国で進めている「プレゼントツリー」プロジェクトに注目が集まっています。

 いったいどんなプロジェクトなのか、じっくりお話をうかがいます。

☆写真協力:認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」

鈴木敦子さん

森林再生の入り口=プレゼントツリー

※この「プレゼントツリー」、文字通り、木をプレゼントする活動のようですが、具体的にはどんなプロジェクトなのか、教えていただけますか。

「森を守ろうというと、9割以上の日本人の方々は賛同してくださるんです。でも、森にまで行ったことのある人って少ないんです。渚沙さんは森に行ったことありますか? 森林再生したことありますか?」

●いや〜確かにそう言われると・・・。

「なかなか入り口がどこにあるかということも含めて、すごく入りにくいのかもしれない。なので、そういう人たちに入り口を設けることで、あなたの大切な人やあなた自身の人生の記念日に木を植えませんか。その木を大切な人にプレゼントしませんかっていう、そういうコンセプトでスタートをしているのが、このプレゼントツリーです。

写真協力:認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」

 プレゼントという言葉の意味としては、自分自身へのプレゼント、もしくは大切な人へのプレゼントっていう意味と同時に、森を再生するという意味で森へのプレゼント、そこに記念樹を植えることによって森が再生される。それからひいては日本全体の森が潤っていくというそういうプレゼント、そしてそれは未来の地球に対するプレゼントでもありますよって、そんな意味を込めてプレゼントツリーという名前を付けています。

 要するに森が近くにある人たちは、森づくりに参加するのも、もしかしたら簡単なのかもしれないです。でも、都会にいる私も、渚沙さんもきっとそうだと思いますけれども、都心部に住んでいらっしゃるかたがたは、どうも森まで少し距離がある。
 精神的な距離もあるとするならば、記念日に記念樹、記念の木を植えることによって、その木を地元と一緒に育てていく。で、育てることによって、やっぱり木って育ちますから、大きくなりますから、そこに愛着が湧いて愛着も大きく育っていくんです。

 我々は森林整備協定というのを結びながらやるんです。最低10年、地元の自治体にも入ってもらって、地元の森林保全してくださる林業家さん、森林組合さんであることが多いんですけれども、そういうところにも入っていただきます。

 10年以上、都会の記念樹を植えた人たちと、それから地元の主たる人たち、地元の森林行政を司る自治体さん、自治体が市だったら市長さん、それから森林組合さん、もしくは地域に森林組合がない場合は林業家さんに入っていただいて、かつその森の所有者さんと私共と4者で協定を結ぶんです。

写真協力:認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」

 10年ってすごく長いじゃないですか。子供が生まれると10歳になっちゃうし、10歳の子の誕生日プレゼントに記念樹を植えれば、その子が20歳になるわけですからね。その長い年月を共に、記念の木を育てていくというプロセスを通じて、その地域とのつながりを作っていく。そうすることによって森だけでなく、地域まるごと元気にしていこうじゃないかっていう、そんな取り組みです」

(編集部注:鈴木さんがおっしゃるには、地域がうるおわないと、森に人手もお金もかけられない。つまり森林再生と地域振興はセットということです)

里親と木の対面に感動

※一般の方が、この「プレゼントツリー」の活動に参加したいと思ったら、どうすればいいですか?

「簡単です。ググって、 プレゼントツリーって入れていただくと、すぐにうちのサイト出てまいります。そのウェブサイトに、だいたい常時5〜6箇所ぐらい、植えられる場所をご準備させていただいております。その中から好きな場所を選んでいただいて、そこに1本植えようとか2本植えようとかってお申し込みいただくと、お手元に、この地域のこの区画にあなたの木が、何番という管理番号のもとに植えられ育てられますよという植樹証明書というものが届きます」

●植える場所も選べるんですね。

「そうですね。木は残念ながら、いろんな木を植えていますので、選べないんですけれども、場所は受け入れている場所であれば選べます」

●木の里親になるっていう感覚ですよね。

「その通りです。さすが!」

写真協力:認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」

●里親になった方々に現場まで来てもらって、木を植えてもらうっていうことなんですか? 

「基本的に植物は、植える適切な時期って決まっちゃっています。1年間のうちに、例えば雪がたくさん降るような地域は、だいたい雪の降る直前。それ以外の地域は春植えであることが多いんです。
 なので地域によって、春か秋に、その年にお申し込みを受けた人たちの記念樹を、私どもが責任を持って、地域の林業のプロの方々の手で植えていただくんですけれども、年に1回植える、よいタイミングにみなさんをお招きして、参加しませんかってお声がけしますので、その時にもし参加できるようであれば、ご自分で植えられるっていう、そういう仕組みになっています」

※里親になった木がどれくらい大きくなったのか、見てみたい、そう思う方も多いと思いますが、鈴木さんからは、植えられた場所に行くことはできても、どんどん成長して、森のようになっていることが多いので中に入るのは難しいでしょうとのことでした。
 それでも、里親と木の対面が実現した、こんなエピソードを話してくださいました。

「千葉県山武市というところで、プレゼントツリーの森を10年前にスタートして、ちょうど去年10年で満了を迎えたんです。その満了を迎える直前に、やっぱり最後にみなさんに集まっていただこうということで、(コロナ禍で)県をまたぐということ自体が推奨できなかったものですから、県内の方々限定で、プレゼントツリー山武の森に植えてくださった里親の方々にお声掛けして、里山体験イベントっていうのをやらせていただいたんです。

写真協力:認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」

 その時に、10年前に植えてくださった里親の方が、植樹証明書をお持ちになられて、”私のこの木は、今どこでどんなふうに育っているのか見たくてきました!”っておっしゃってくださって・・・。

 その山武エリアは杉の区画もあるんです。山武杉(さんぶすぎ)という有名な地域の杉が、地域資源としてブランドになっているものですから。
 我々は天然林の森に戻していくので、広葉樹であることが多いんです。多くの森はたくさんの種類の広葉樹を植えて、もともとその地にあった自然の森の姿に戻していく活動ではあるんですけれども、(山武エリアは)地元の方々のご要望にお応えして一部、杉を植えていました。

写真協力:認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」

 その里親の方は、山武杉のエリアだったんです。杉はスッとしていて、下のほうに枝があまりありませんので、入っていけたんですよ。山武杉は育ちの早い杉なので、10年経つと相当大きな杉になっていましたね。ご自分の木を確認いただいて、とても喜んでお帰りいただいたというのは、私自身が感動しました」

もともとの姿の森に

※「プレゼントツリー」プロジェクトでは、どんな木を植えているんですか?

「基本的には、どういう地域からプレゼントツリーのお呼びが掛かるかと言いますと・・・戦後に拡大造林政策っていう、難しい話は端折りますけれども、戦後の復興期に建設ラッシュが起こり、木材が足りなくなってしまって、その時に自然の森はどんどん杉とかヒノキの人工林、要は木材を作るための森に国が主導して変えていったんです。

 そういうところが伐期(ばっき)を迎えると・・・同じ時期にいっぺんに自然の森から人工林に変えて、杉とかヒノキを植えてますから、伐る適切な時期を迎えるタイミングが一斉に、広範囲に広面積に同じ時期に伐らなきゃいけなくなっちゃうんです。

写真協力:認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」

 そうすると一気にハゲ地が広がりますよね。なんとなく想像してわかりますでしょ。そういうところは、本来は山の所有者さんが再植林、もう一度森に戻すという義務を、日本の法規制上は負っているんです。
 でも、プレゼントツリーの活動を始めた2005年頃は、日本の木材自給率がものすごく低くて、20%を切っているか切らないかくらいの頃だったんですね。そういう時は経済的な理由で、(木材を)売ったけれども、そのお金では再植林するコストは賄えませんっていう方々が多かったんです。

 そういう森を我々が、山の持ち主さんがもうお手上げですっておっしゃているような森だから、もともとの姿の森に戻そうよ、そういうところからスタートしていますので、その地域に自然に生えてくる樹種、木の種類というものを少し調べさせていただいて、地元の林業のプロの方々と、それから自治体の方々にご相談させていただきながら進めています。

 それでも地域に還元されないような樹種を植えても、あまりうまくいきませんから、長続きしませんから、プラス、先ほどの千葉県山武市のように、地元にもともと自然に生えている樹種と同時に、山武杉という有名な杉のブランドがあったので、(地元の方から)これも植えたいんです、みたいな話があると、一部そういうのも植えていきましょうという、かなり多様性に富んだ森づくりを行なっています」

(編集部注:「プレゼントツリー」プロジェクトでは現在、国内37箇所で森づくりを行ない、これまでに植えた木は30万本を超えているとのこと)

写真協力:認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」

災害から守ってくれる森

※鈴木さんが森づくりを主な事業にしようと思ったのは 日本の森が荒廃していくという危機感みたいのものがあったんですか?

「ひとつには、もともとNPOを立ち上げた時の背景と同じように、先ほど来、申し上げているように、これだけ森が好きな国民なのに、なぜ森づくりということをしてくれないんだろう。この人たちが森づくりをしてくれれば、森づくりに参加してくれれば、ハゲ地がもっと減るのになと。

 実はハゲ地に再植林できない、なんらかの事情があって、経済的な事情だった時代もあれば、今のように日本全国高齢化していますから、年齢的に森の面倒を見きれません、みたいな事情もあります。

 (日本は)これだけ森が豊かだと言われていて、これだけ森林政策、森林行政も相当テコ入れが進んでいるにもかかわらず、ハゲ地の面積って実は減っていないんです。要は伐った後に再植林するスピードが遅いままなんですよ。常時、伐った面積の3分の2ぐらいは、ずーっと再植林できないまま置かれちゃっているんです。

 これが目立つので、そこで何が起こっているか分かりますよね。今、ハゲ地にしておくと(ここ数年)豪雨の頻度が高まる、台風の勢力が巨大化している、異常気象が頻発する日本では・・・そういうハゲ地が自然のまんま森に戻るのを待つと、何年かかると思いますか。100年かかっちゃうって言われているんですよ。

 だから人の手で木を植えて、森に戻るスピードアップを手伝ってあげないと。その間にどれだけ豪雨が襲いますか。台風が襲いますか。森があれば、そこはそんなに急激に崩れたりとかせずに、土砂災害の被害も小さく抑えられる、阻止することにつながるわけですよね。にもかかわらずハゲ地のままであるから、どんどん崩れていってしまう。

 森をつくっておいたところ、特に天然の形の森、もともとその地にあった、その風土にあった、力強い森に戻していたエリアは崩れていないんですよ。やっぱりハゲ地にしておくとそれだけリスクが高い。だからそのままにしておくことがすごく気になって・・・。

 森の役割は生き物のため、地球温暖化防止にもなる、それから綺麗な水とか美味しい水も作ってくれるとかいろいろあるんですけれども、やっぱり日本で大事なのは、災害から守ってくれる、地域を守ってくれるっていうのがいちばん大事なんじゃないかなと思います」

●先ほども天然林に近い森にするのが目標だというお話もありましたけれども、やっぱりそれは自然災害にも強いっていう思いがあるってことですね。

「そうですね。その地に昔からあった形に戻すわけですから、やっぱり強い森になります」

写真協力:認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」

全都道府県、100万人100万本

※「プレゼントツリー」プロジェクトの森づくりは、現在、国内37箇所ということですが、今後の目標としては、何箇所くらいまでを見据えているのでしょうか?

「もうね、全都道府県でやりたいなと。というのは、やっぱりそれぞれ人生にはいろいろとストーリーがあって、それぞれの人たちがそれぞれの地域にそれぞれの思い入れがあるので、自分ゆかりの地域の森を応援したいっていうお声もたくさんいただきます。
 なので、全都道府県でやりたいなというひとつ大きなビジョンがありますし、もうひとつは100万人100万本、ここまで早く到達できたら嬉しいなと思っています」

●鈴木さんが環境リレーションズ研究所を設立して20年近くが経とうとしています。その間、地球温暖化の影響が顕著なものとなって、その一方でSDGsの達成が私たちには課せられています。最後に鈴木さんに今どんな思いがあるか、改めて聞かせていただけますか。

「はい、ありがとうございます。ありがたいことにSDGsって、いろいろなところで、国連さんが旗を降り始めて、次にESG投資なんていう言葉も、お聞きになったことがある方は多いんじゃないかなと思います。その時々に社会的な背景で、森林ブームとか森づくりブームっていうのがくるんですけれども、一過性のブームで終わらせたくないなっていうのはあります。

 2005年にスタートさせた直後も、第一期森づくりブームっていうのが、我々のプレゼントツリーの活動の中で起きたんです。すごくたくさんの人たちが入ってきてくださったんですけども、それが一段落すると一気にいなくなるっていう現象にも悩まされています。
 森は100年のビジネス、100年の事業、100年の活動なんです。そのうちの冒頭の10年だけ、みんなで分担し合いましょうよ。11年目以降から100年まで地元の方々に頑張っていただきたいっていう、そういう思いと長期のビジョンを、ぜひみなさんと共有していただけるような、様々なお伝えの仕方をこれから頑張っていきたいなって思っています」


INFORMATION

 「環境リレーションズ研究所」が進めている「プレゼントツリー」プロジェクトにぜひご参加ください。あなたの記念日にご自身に、または大切なかたの結婚や出産、誕生日などに木を贈りませんか。鈴木さんもおっしゃっていましたが、それが地域の森や、ひいては地球へのプレゼントになります。

 苗木の里親になると、植樹証明書やメッセージカードなどが送られてきます。植える場所、植栽地については、オフィシャルサイトを見ると、現在は8箇所から選べるようになっています。その中には、今年から始まった東京都の檜原村や、首都圏に近い場所として山梨県笛吹市がありますよ。

写真協力:認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」

 1本の苗木の里親になる料金は、苗木代や、苗木を守る防護ネット、そして下草刈りの費用などを入れて、1本5000円前後だそうです。ただし、木のオーナーになるわけではないので、10年経ったら地元に戻すことになります。鈴木さんはぜひ、里親として見届けてほしいおっしゃっていました。

 「プレゼントツリー」プロジェクトについて詳しくは認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎認定NPO法人「環境リレーションズ研究所」HP:https://www.env-r.com/

◎「プレゼントツリー」プロジェクト専用サイト:https://presenttree.jp/

オンエア・ソング 8月7日(日)

2022/8/7 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. WILD WOOD / PAUL WELLER
M2. IN THE FOREST / THE CORAL
M3. TEN YEARS TIME / GABRIELLE
M4. FOREST OF MY HEART / DANA AND SUSAN ROBINSON
M5. 美しく燃える森 / 東京スカパラダイスオーケストラ
M6. BLACK FOREST (LORELEI) / MERCURY REV
M7. NEXT 100 YEARS / BON JOVI

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

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