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地球が創り出す神秘「美しい鉱物の世界」

2022/8/28 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、サイエンスコミュニケーターの「渡邉克晃(わたなべ・かつあき)」さんです。

 渡邊さんは1980年、三重県生まれ。子供の頃から石が好きで、家族旅行で海辺や川原に行く度に、綺麗な石を家に持ち帰るお子さんだったそうです。そして、広島大学に進学後は、植物や微生物によって引き起こされる岩石の風化現象を研究。大学卒業後は、東京大学 地球生命圏 科学グループなどで地球科学の研究に従事、その後独立し、現在はサイエンスコミュニケーターとして活躍中。地学博士、そして地質や鉱物の写真家でもいらっしゃいます。

 また、2017年にウェブサイト「地学博士のサイエンス教室 グラニット」を立ち上げ、美しい写真とわかりやすい解説をモットーに運営されています。

☆写真:渡邉克晃

渡邉克晃さん

狙いは美しい写真!

●渡邉さんは先頃『ふしぎな鉱物図鑑』を出されました。私も拝見させていただいたんですけれども、文庫本サイズで、すべてカラー写真なんですよね。とにかく写真が美しくて見入ってしまいました。こんなに色が豊富で多様な鉱物があるんですね。全然知らなかったです。

「ありがとうございます。めちゃめちゃ嬉しいですね。そう言っていただけると」

『ふしぎな鉱物図鑑』

●この本の狙いはどんなところにあるんですか?

「写真の美しさ、写真の綺麗さをいちばんの狙いにして作ったので・・・
嬉しいコメントありがとうございます」

●ほんとに綺麗でしたし美しかったです。

「この鉱物の標本は私の大学時代の恩師で、もう亡くなられた先生なんですけど、広島大学の北川隆司教授が集めていた鉱物コレクションを、ご家族のかたにお願いして、撮影させてもらうことができました。標本も立派ですし、ここを見せたいなというところでアップにしたりとか、角度を変えたり・・・撮り放題、思う存分、写真を撮らせていただきました。

 最高の鉱物の写真を用意して、自分の持っている知識も活かしながら、わかりやすく文章も書いて、そんな感じで作った本なので、いちばんの狙いは写真になります。写真を見てほしいなというところですね」

●鉱物のことは全くの初心者です。なるべくわかりやすく教えていただきたいんですが、まず鉱物とは? 岩や石とは違うんでしょうか?

「ちょっとだけ、定義というか難しい、堅い話なんですけど、鉱物は自然界にあって個体の物質であり、地質作用によってできた物質、これが鉱物の定義としてあるんですね。

石英(水晶)
石英(水晶)

 代表的なものは、皆さんよくご存知の、水晶ってありますよね。尖った六角形の柱みたいな透明な鉱物で自然界のものですよね。人工的に作ったものじゃないので、自然界のものであり、また液体とか気体じゃなくて、かちっとした固体ですね。

 地質作用っていうのがちょっとわかりにくいんですけど、水晶はマグマの熱とか地下水が関係しながらできるものなんです。こういったものは生物的にできたものとか、人工的にできたものじゃなくて、地質作用によってできたものとされるわけです。

 石や岩とは違うのかっていうところなんですけど、ややこしいところで、石ってやっぱりよく使っちゃうんですよね。石はすごく広い意味がある一般的な言葉で、鉱物も石です。岩も石になります。結石とか体の中にできるのも石です。石はすごく意味が広くて、ざっくりとした一般的な呼び名であって、学術的に言えば、石の中の一部が鉱物であり、また岩石である、こういった位置付けになります」

宝石も鉱物!?

ダイヤモンド
ダイヤモンド

●ダイヤモンドやルビーも鉱物ですよね? 宝石になっている鉱物も多いってことですか?

「そうですね。宝石になっている鉱物はすごく多くて、正確なところはわからないですけど、少なくとも代表的なものだけでも20種類以上は知られています。
 ルビーの鉱物名はコランダムって言うんですけど、あとエメラルドの、宝石の鉱物名として緑柱石(りょくちゅうせき)があったり、もちろんダイヤモンドもそうです。あとヒスイという宝石になる翡翠輝石(ひすいきせき)とか、宝石になるものはたくさんありますね」

コランダム
コランダム

●鉱物は何種類くらいに分類されるんですか?

「鉱物種っていう種名としては、今世界中で知られているのは5700種程度ですね」

●5700! そんなにあるんですね。それぞれ何が違うんですか? 

「鉱物種は化学組成という成分です。どんな元素でできているかが、ちょっとずつ違うっていうのがひとつ。あとは結晶の形というか、構造って言っているんですけど、鉱物はだいたい元素が規則的に並んだ形をしています。この規則的な並びがちょっとずつ違っても別の鉱物になるという、そういったこともあります」

緑柱石
緑柱石

鉱物はどうやって生まれるのか!?

※初歩的な質問なんですが、鉱物はどのようにして生まれるんですか? 

「いろんな出来方があって、鉱物は主に地下でできます。例えば地下の深いところで、マグマが冷えて固まる時に岩石ができて、その岩石中にできる鉱物がまずあります。岩石はそもそも鉱物の集まりなので、ツブツブしていますよね。岩石にツブツブの模様が見えると思うんですけど、あのひとつひとつの粒が鉱物になるんです。

 花崗岩(かこうがん)という白っぽくて、ごま塩模様の、お墓の石や建物の壁とかに使われている石があるんですけど、あれは地下でマグマが冷えて固まってできた岩石なんです。地下深いところで、ドロドロのマグマがゆっくり冷えて固まると、あの白っぽい岩石になるんです。
 その白っぽい岩石、花崗岩の中には石英とか長石とか黒雲母とか、いっぱいツブツブとした鉱物が入っているわけなんです。というわけで、マグマが冷えることによって鉱物ができる、鉱物の出来方のひとつとして、それが代表的なものになります」

花崗岩
花崗岩

●鉱物が作られる時に必要な条件はあるんですか?

「先ほどの鉱物の出来方は、代表的なものをひとつだけあげましたが、もっといろいろあるんですね。地下だけじゃなくて、地表で酸素とか空気とか水に触れながら変わったりとか、地下深くで圧力と温度が高くて、新しい鉱物ができたりとか、いろいろあるんです。

 条件としては圧力、温度、あと鉱物は固体なので、固体ができる前の液体状態の時の成分の違い、どんな圧力でどんな温度でどんな液体の成分か、これでどういう鉱物ができるかはだいたい決まっていきます」

●この本を読んで、ほんとにいろんな色の鉱物があるんだなって感じたんですけれども、こんなに多彩で多種多様な鉱物の、色や形の違いを決定づけるものは何でしょうか?

「色は主に成分ですね。鉱物がどういった元素でできているのかに主に関わっています。形のほうは、鉱物はだいたい規則正しく原子が並んでいる構造をしています。そのミクロというか目に見えない、小さい小さい微細な構造が、元素の並び方が鉱物の形を決める大きなひとつの要素になっています。

 どういった原子の並び方をしているかによってだいたい外側の形も、どんな形になりやすいかっていうのは決まってきます。成分と原子の並び方で色や形が決まる、そういったことですね」

輝安鉱(きあんこう)
輝安鉱(きあんこう)

日本は鉱物の宝庫!?

※日本で発見された鉱物は何種類くらいあるんですか?

「日本では1300種くらい知られています。世界中で5700種に対して日本で1300種、日本は世界的に見ても、ほんとにたくさんの鉱物種が産出している国になります」

●それはどうしてなんですか?

「日本の地質環境がちょっと特殊であるというか、バラエティに富むことが理由になっています。日本の国がある場所は、プレートっていう、地球の表面を大きな岩盤が覆っていて、その岩盤が何枚かの板になっていて、それをプレートと言っているんですけど、日本があるところは、太平洋側からユーラシア大陸に向かって、プレートが沈みこんでいる場所になるんですね。

 日本は地質が活発だなっていうのがなんとなくあると思うんですけれども、そういった土地柄で、マグマが上がってきたり、いろんな圧力が加わったりしながら、たくさんの種類の岩石、そして地質の環境というものがあります。複雑に複雑に混じり合っているわけなんです。

 そういった影響で岩石の種類が多ければ、それだけ鉱物の種類も多くなりますし、地質作用が多ければ、それだけ鉱物の種類も多くなる、そういった土地柄が日本の鉱物種の多さに関係しています」

●日本だけで採れる鉱物っていうと、具体的にどんなものがあるんですか?

「例えば、千葉石、辺見石、糸魚川石とか、そういったいかにも日本ぽい名前がついている鉱物がありまして、こういったものが日本でしか採れない鉱物として、いくつか知られています」

(編集部注:世界ではおよそ5700種の鉱物が発見されているということでしたが、渡邉さんによると、新しい鉱物は年間100種ほど見つかっているそうです。

 また、先ほどお話の中で、日本だけで発見された鉱物として「千葉石(ちばせき)」の名前が出ましたが、日本地質学会のサイトによれば、産出されたのは房総半島の南部で、きっかけは1998年にアマチュアの研究家が見つけた鉱物、そのときは内部が変質していたので正体がわからなかったそうです。その後2007年に別のアマチュア研究家が同じ場所から変質していない千葉石を見つけ、新発見につながったそうですよ)

鉱物は傑作品!?

※実際に鉱物を見てみたいと思ったかた、渡邉さんのおすすめは日本全国にある博物館。多くの博物館に石や鉱物の展示コーナーがあるそうです。また、全国46地域にある「ジオパーク」もおすすめだそうですよ。

 ほかにも海岸や川原でも鉱物を見つられますか?

「見つかります(笑)。ただ見るだけじゃなくて、やっぱり自分で拾いたいとか、探したいっていうのはありますよね。楽しいですよね」

●コツはありますか?

「だいたい石は鉱物の集まりでできているので、川原とか海岸に行ってきれいな石を探せば、それが鉱物なんですよね。その鉱物を拾った人が、魅力的だと思うかどうかなので(笑)、コツっていうかなんというか、きれいな自分の好きな石をまず見つけることですよね。

 色がきれいなのか、形がきれいなのか透明感があるのか、自分が実際に行って、あっ、これ、きれい! っていうのをまず見つけてもらいたいと思いますね。そのきれいな石を図鑑で、どんな石なのか、この石にどんな鉱物が含まれているのかを、ぜひ調べていただきたいなっていうのがあります。

 きれいな石を拾ってくるだけだったら、いろんな人がやると思うんですけれども、拾ってきた石がなんていう石なのか岩石なのか、なんていう鉱物を含んでいるのか、これを図鑑とかで調べて、自分なりにでも名前がわかるとすごく楽しくなるんですよね。
 これ、めっちゃきれいだなとか、この緑の石なんだろうな〜って拾ってきて、これ、緑泥石(りょくでいせき)っていうのか! 例えばですけど(笑)、わかったらもう俄然楽しくなるんじゃないかなと思います。石拾いが、鉱物採集が楽しくなると思います」

(編集部注:川原や海岸での石拾い、国立公園や国定公園などでは、持ち帰りは禁止されています。ご注意ください)

●では、最後に渡邉さんが思う鉱物の魅力とは、なんでしょうか?

「鉱物の魅力・・・鉱物は自然界が生み出した、創り出した傑作品であると私は思っています。鉱物を見ていると、色ももちろんきれいなんですけど、形がすごくシャープだったり、きれいなんですね。原子がものすごく規則正しく並んでいる、なんでこんなものが自然界にできるのかなって。自然界は放っておいたら、物はどんどん乱雑な方向、無秩序な方向に進んでいくわけなんですよ。部屋は放っておいたら散らかるみたいな感じなんです(笑)

 でも秩序だったもの、高度に創り上げられたものができるためには、何かしらわざわざエネルギーを使うわけで、わざわざ創り出さないと絶対無理なんです。生物もそうやって自然界に生まれてきたと思いますし、鉱物もあの美しさ、あの規則正しさは、そうやって生み出された、わざわざ創り出されたものなんですよね。そこがほんとに神秘的で、鉱物の魅力だなって感じています」

玻璃長石(はりちょうせき)
玻璃長石(はりちょうせき)

INFORMATION

『ふしぎな鉱物図鑑』

『ふしぎな鉱物図鑑』

 渡邉さんの新しい本をぜひご覧ください。写真家でもある渡邉さんが撮影した鉱物写真、どれも美しい写真で見とれてしまいます。色や形が多種多様で、その多彩さに驚きの連続です。鉱物の不思議をわかりやすく解説しています。オールカラーでポケットサイズなので、フィールドワークや鉱物の展示会のお供にいかがでしょうか。おすすめです。
 「大和書房」から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎「大和書房」HP:https://www.daiwashobo.co.jp/book/b605966.html

 渡邉さんが主宰するウェブサイト「地学博士のサイエンス教室 グラニット」も、ぜひご覧ください。

◎「地学博士のサイエンス教室 グラニット」HP:https://watanabekats.com/

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