毎回スペシャルなゲストをお迎えし、自然にまつわるトークや音楽をお送りする1時間。
生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで幅広く取り上げご紹介しています。

Every Sun. 20:00~

「海とは母親みたいなもの」Micro〜Surf Me To The Ocean! GO NAMINORI JAPAN!

2021/7/25 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、サーフィンが生活の一部になっているDef TechのMicroさんです。

 Microさんは、1980年生まれ。東京都出身。ハワイ出身のshen(シェン)さんとDef Techを結成。名曲「My Way」を収録したファースト・アルバム『Def Tech』を2005年に発表、250万枚を超える大ヒットとなり、インディーズのセールス記録を塗り替えました。その後もコンスタントにアルバムを発表、去年、結成20周年を迎えています。

 Microさんがサーフィンを始めたきっかけは、サーフィン好きなご両親の影響で、幼稚園の頃にはボディボードに立って乗っていたそうです。特にお母さんに見て欲しくて、がんばってサーフィンをやっている少年だったそうですよ。ミュージック・ビデオでも波乗りしているシーンがフィーチャーされていて、プロ級の腕前を披露されていますよね。きょうはそんなMicroさんにサーフィンや海への想いをうかがいます。

☆写真協力:Micro

写真協力:Micro
写真協力:Micro

サーフィンは宇宙旅行!?

※サーフィンのとりこになっているMicroさんにまず、サーフィンの魅力についてお話しいただきました。

「サーフィンの魅力は、こんなに気持ちいい疲れを感じられるスポーツは地球上にただひとつだけだと僕は確信しています! 日焼けもして、皮膚もパンパンに張って、腕とかもパンパンなんですけど、筋肉痛まではいかなくて。なんだけれども頭のてっぺんからつま先までが心地いい疲れで。

 あともうひとつ、やっぱり板の上に立てるということはほぼ無重力というか、陸上の6分の1とか7分の1とか、本当に重力のかからないスポーツなので、たった1本のライディングで数秒しか乗ってないかもしれないですけれど、もしかすると宇宙飛行士と同じような体験、水の上に浮いている状態っていうのは宇宙旅行に似ているのかもしれませんね」

●へ〜〜そうなんですか。よく行くサーフスポットっていうのはどちらになるんですか? 

「僕は2日以上空いたら伊豆の下田に行きます。で、1日のオフとかだと千葉、湘南、鎌倉方面に波をチェックして行きます」

●ちなみに千葉だと、どの辺りに行かれるんですか? 

「まさにオリンピックの会場となっている一宮ですね」

●釣ヶ崎海岸とか? 

「そうです! 九十九里からずっと細かくたくさんポイントがあるので、あとは風向きと波のうねりをチェックして・・・」

●どうですか? 千葉の海は。

「僕、母親が千葉で、父が東京なので、東京と千葉のハーフなんです。なので自分の第二の故郷は千葉っていう感じですね。何かほっとします」

●わ〜! 嬉しいです! Microさんはどんな波がお好みなんですか? 場所によって波は違うと思うんですけれど。

「(波が)でか過ぎちゃうと楽しさを超えて恐怖心も、趣味特技とはいえ、本当に怖いっていう思いもあるので、胸、肩、腰ぐらいでグラッシーな、ガラス細工のような、波の面が綺麗で、それでロングライドしていける波だとずっと楽しいなって感じですね。ファンウェーブかなと思います」

●海外も含めて特に気に入っている場所はどちらになりますか? 

「僕はバリ、カリフォルニア、ハワイ、この3つですね」

●いいですね〜。どんなところがお好きなんですか? 

「毎回なんですけど、ハワイは色んなものを吸収して帰ってきますね。サーフィンのみならず、ファッションもそうですし、情報も早いから、そういう意味では何か自分がすごくたくましくなって、必ず海外に行って帰ってくる時に自分が成長しているのが目に見えて分かるので。ハワイ、バリ、時間軸も変わるし、生活のリズムも逆に海外の方が整いますよね。東京にいるとやっぱり夜が長いですね」

夢と希望の「波乗りジャパン」!

※東京2020オリンピック競技大会の、サーフィン競技の会場が先ほど、Microさんもよく行くとおっしゃっていた千葉の一宮町釣ヶ崎海岸。実はMicroさんは、サーフィンの代表チーム「NAMINORI JAPAN(波乗りジャパン)」には人一倍、強い思い入れがあるんです。そんな波乗りジャパンに期待していることをお聞きしました。

「ここのポイントで育った大原洋人(おおはら・ひろと)選手もここが地元ですし、小っちゃい時からみんな慣れ親しんでというか、仲良くさせてもらっていて、なので嬉しいですよね。

 自分がDef techとしてデビューしていて、当時、大原洋人くんは小学生で、最初に海で会った時に”あれっ!? お兄ちゃん、歌ってる人だよね?”とかって言われて、そうそう、そうだよ、洋人くんって返すと、”上手いよ! 歌、上手い、君! ”とかって言われて(笑)、君いくつ? って言ったら、”小5! 上手いよ、Def techいいよ!”とか言われちゃうくらい、そんな子がいま日本が世界に誇る代表なので、ひいきですけど、これは、身内びいきもありますけれど。

 そしてやっぱり大野修聖(おおの・まさとし)コーチ、僕の同級生で、彼がこの波乗りジャパンを引っ張っていて、必ずメダルは取れると確信しています。彼とは小学校の時から一緒にサーフィンを続けてきているので、本当の親友が今コーチになったという・・・」

Microさんと、親友の大野コーチ
Microさんと、親友の大野コーチ

●家族ぐるみで、幼い頃からのお付き合いなんですよね? 

「そうですね。僕たちが生まれる前から両親が仲良くて、交流があって。まーくん(大野修聖コーチ)のママも日本で初めてサーフィンした女性で、うちのパパも日本で初めてサーフィンをした、10人くらいいたクルーの中のひとりなんですよ。20歳ぐらいからずっとお互いの家族が仲良くてっていう、そんな親子二世代のサーフィンへのこの想い、夢、希望が詰まったオリンピックです!」

●すごいですね! そんな波乗りジャパンの公式応援ソングをDef techが担当されているんですよね。すごいことですよね!

「念願叶ってです! もう3〜4年前くらいからオリンピックがあるやなしやに関わらず、絶対にあると確信した上でこの曲の構成というか、もしオリンピック(の競技)にサーフィンが決まったら、こんな曲! っていう想いも詰めた曲ですね」

●曲名が「Surf Me To The Ocean」ということですけれども、改めてどんな想いを込めてこの曲をお作りになったんですか?

「やっぱり海に行く時の行き帰りのすごく大事な時間。皆さん車だったり、電車で行くサーファーの方もいらっしゃると思うんですけど、必ずそこには僕ら(サーファーには)音楽が必須で、特に行きの車の中はモチベーションが上がったりリラックスしたりしながらっていう、その海に入るまで、そして海に入ってファーストウェーブをキャッチするまでの気持ち、モチベーションが上がるようにあの曲を作りました。なので、選手ひとりひとりが試合前とかにヘッドホンして、ストレッチしながらとかヨガしながら、大会前に聴いてもらえたらなっていうそんな曲です」

「Surf Me To The Ocean」が収録されているDef Techの10作目『Powers of Ten』
「Surf Me To The Ocean」が収録されているDef Techの10作目『Powers of Ten』

ビーチクリーン&サンゴの移植活動

※海に行くと必ずビーチクリーンをやるそうですね?

「はい、父からも教わってきて、東京サーファーなので、自分たちのローカルポイントがないということもあって、ゴミ袋を車に積んでおいて、行って波乗りする前にビーチクリーンをして、入らせていただきますっていう、ビジターなので、どこでも初めましてという思いで。

 で、海から上がったら片手が空いているので、板を持っている反対の手でワンハンド・ビーチクリーン、片手分だけはゴミ拾いをするように。これはプロサーファーの善家尚史(ぜんけ・なおふみ)さんの活動なんですけれども、もう何十年もそのワンハンド・ビーチクリーンを推進してきて、どこの海でも誰かが見てなくても、海上がりに片方の手にいつもゴミを持っていて、その姿に僕はグッと心を打たれて、見よう見まねで実践し続けています」

●海の環境が気になり始めたっていうのはいつ頃からですか?

「沖縄の海に潜って、僕、最初はスキューバのオープンウォーター(ライセンス)を取ったんですけれど、当時27歳、Def techのツアーで沖縄に行ったあとですね。長く沖縄に滞在して潜るようになってから、最初サーフィンしている時はビーチの浜のゴミだけが気になっていたんですけど、潜ってみた時にサンゴたちが死滅して、白化している真っ白なサンゴを見て、これこのまま進行していくとどうなっちゃうんだろうと、ぞっとした記憶が13年前ぐらいですね」

サンゴの移植活動を行なっている仲間たち。金城さん(後列・左からふたりめ)Microさん(同3人め)。
サンゴの移植活動を行なっている仲間たち。
金城さん(後列・左からふたりめ)Microさん(同3人め)。

●沖縄でサンゴの養殖に成功した金城浩二さんの活動も、Microさんは応援されていますよね。

「金城博士!  もう博士です! ドクター金城! 金城さんとの出会いによってこのサンゴの復活に希望が持てたというか・・いま温暖化で様々な気候変動とか、海面の水位が上がって、ハワイのノースショアとかも数十年後、もしかしたらオーシャンフロントの家とかなくなっちゃうんじゃないかってくらい、いま浜がなくなっているんですね。やっぱりこの10〜20年、海を見てきて、確実に鎌倉もそうですけど、どんどん海面が上がってきているなって実感してます。それに対して絶望だけじゃなくて、人間の力で本当にこの地球をより良くしていけるのかって思っていた時に、金城さんが僕にこの一縷の望みを、希望を与えてくださいましたね。

 人間が育てて、人間の手で海に返していく。養殖したサンゴのほうが強くて、海水の温度が上昇しても、それに耐えられるだけのスーパーコーラルっていうめちゃくちゃ強いサンゴたちが金城さんの手によって作られて、いま海に返されている、それが現状、事実ですね」

●金城さんの活動を知って、初めはどんな思いでした? 

「最初、話を聞いているだけでは“本当かよ!?”って思ったんですよ。こんな広大な海に5〜6センチぐらいのサンゴを養殖して、果たしてそれがどれだけの可能性があるんだろうと思っていて、ちょっと僕も斜め45度ぐらいから見ていたんですよ。
 でも実際に僕も自分で養殖をして、自分の名前を付けたサンゴを植えて、数ヶ月後には大きくなっているんですね。そのサンゴが他の魚たちに食べられないように檻をかけてあげて、また数ヶ月するとサンゴたちがその檻よりもパンパンに大きくなっている・・・そうしたら、自分の育てたサンゴに小っちゃい子魚たちが誕生していたんですね。その時、僕はお金持ちじゃないのでマンションは建てられないけど、海の中に初めて大きなマンションを建てたような気分になったんですね」

●素敵ですね〜!

「そう、そこに本当に小っちゃな、見たことないぐらいの子魚たちが誕生して、親魚もみんなでそのサンゴの周りに生活をしているのを見て、初めて僕、人生でこの地球にいいことした! と思えた瞬間だったんです」

写真協力:Micro

波ニケーション!?

※Microさんは、今年からサーフィン仲間で同級生の「Shu Doso(しゅう・どうそ)」さんと新しいプロジェクト「WST」としての活動も行なっています。「WST」は「ストレート・ストリート」の略だそうですが、このユニットを始めるきっかけは何かあったんですか?

「今までは必ず毎年ハワイやカリフォルニアとか、海外に行ってました。コロナ禍の2年目には(海外どころか)日本から出ることも県外に行くことも、みんなから良しとされない、東京から来ないでくださいって言われるこの2年間、何ができるだろうってことをやっぱり考えました。当たり前に過ぎていく時間、当たり前なんてなかったっていうことも皆さん気づいたと思いますし、僕自身もそうなんですけれど。
 そういった時に幼馴染みのshuちゃんに、20〜30代はほとんど会っていなかったんですけれど、ここ5年くらいで急接近、グッと近くなって、人に会えない家族にも会えないっていう中で、ふたりっきりで海に行く機会が増えたんですよね。

 去年は週4日ぐらい一緒に海に行き、お昼には帰ってきてお互い仕事をして、僕も制作に入ってとかっていう中で、Shuちゃんが言うんですよ。社会にメッセージを送る方法ってテレビやラジオあるんですけれど、あとは本と音楽ぐらいしかないっておっしゃっていて・・・。
 そうかな? と思って、SNSもあるじゃんって言ったら、実際SNSも社会的メッセージを伝えられるんだけど、それは写真だったりするから、やはり言葉で伝えられるものは、音楽と活字にした本なんだって言ってたんですね。確かにいま必要なメッセージ、恋愛ソングもたくさんあるけれど、音楽に詰めるべきメッセージ、歌詞っていうのはあるなっていうそんな話を海の行き帰りで、僕は“波ニケーション”と呼んでいるんですけれど」

写真協力:Micro

●波ニケーション!? 

「はい、海に向かう1時間半、海の上で波待ちしている時間、ふたりで会話をし、万般にわたる話をお互いにしながら、やってみようか、1曲作ってみようって言って”Offshore”(1stデジタルシングル)ができたんですね」

●今年の1月から毎月1曲発表されていますよね? それって結構大変なことなんじゃないですか? 

「かなり大変です!(笑)」

●ですよね! 曲のアイデアってふたりで持ち寄って作るっていう感じなんですか? 

「そうですね。大体ふたりで話し合っています。どんなことをテーマにするか、どんなことをコンセプトに、っていうのは話し合って、WSTに関してはShuちゃんのペンが走るので、膨大な詩が出来上がっていく中で、そこにプロデューサーのNagachoと僕がメロディーを生み出していって。いい言葉にはもうすでにいいメロディーが乗っかっているんですよね。

 彫刻じゃないんですけど、(素材の)木が最初からそういう形をしていないじゃないですか。ただでもその物質を見て、その字を見た時にその中にメロディーが眠っているので、あとは削る作業、彫刻の感じに似ていると思います」

●やっぱりサーフィンや海からヒントをもらうことはたくさんあるわけですよね。

「音楽の制作、歌とサーフィンはめちゃくちゃ似ていると思います」

●えっ!? どういうところが似ているんですか? 

「波乗りって立っているだけじゃなくて、やっぱりアップス&ダウンという上下の運動と、シークエンスという流れなので、波に乗っていくっていうのは、人生もそうですけど、やっぱり辛い時もいい時もうまく乗りこなしていく。

 歌でいうと、ギターの上に自分の歌をどう気持ちよくライディングさせていくか。途切れないで、最初だけじゃなく真ん中も終わりもきちっと、いくつビブラートがかかるのかとかも含めてですけど。それを頭でやっていると楽しくなくて(アイデアが)出てこないので、やっぱり心でキャッチしたものを表現していく。意外にメンタルスポーツですね、音楽もサーフィンもしかり。すごく似ていると思います」

海は僕のママ

※これからもずーっとサーフィンを続けていくと思うんですが、最後にMicroさんにとって「海」とは?

「海とはやっぱり怖いし楽しいし、海とは母親みたいなものですかね。教えてくれるものが大きいですし、そこからやっぱり生まれてきたんだなって思いますし、僕は陸上で生まれてきたなって本当思わなくて、カッパのようにシャワーもお風呂も水にずっと浸かっていたいなって(笑)。身体も楽ですし、陸上に上がってこなきゃよかったのにって思うぐらい、海に帰りたいっていう症状と本能がそう呼んでるなって思うんです。

 海によって人間の世界の中で、この傲慢な自分も、人を見下したり見上げたり、本当は人間以上人間以下の人もいないのに、何かすごい人に出会うと、わーすごい。今度はそうじゃないなって思うと見下すような・・・そういうものってサーフィンと対峙していくと本当に自分があまりにも無力でちっぽけで、波がでかいとすぐにギブアップしちゃうし・・・。

 そういう自分の傲慢さでサーフィンの怪我にも繋がるし、やっぱり謙虚でいることも海から教わりましたし、ちゃんと礼節を重んじながら、ふざけないで真剣に楽しむ、真剣に遊ぶっていうことも海から教わって。東京都心に帰ってきて自分の生活に戻ってもそれって活かされているので、人間の世界でも。なので本当に全て教えてくれているのは海、海は僕のママです」


INFORMATION

RUN

 今年の1月から毎月リリースしている新プロジェクトWSTのデジタル・シングル、きょうは今月発表した「RUN」をお届けしましたが、ほかのシングルもぜひ聴いてくださいね。今年12月まで毎月1曲ずつリリースするということですから、今後のデジタル・シングルも楽しみです!

 WST初の有観客ワンマンライヴ「WST Straight Street LIVE 2021」が8月21日(土)に、渋谷eplus LIVING ROOM CAFE & DININGで開催される予定なんですが、全席ソールドアウトだそうですよ。やはり人気がありますよね。

 今後もDef Tech、そしてWSTの活動に目が離せません。

 新作のリリースやライヴ情報についてはDef Tech、そしてWST、それぞれのオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「Def Tech」HP:http://deftech.jp/

◎「WST」HP:https://www.wst-straight-street.com/

ゲッチョ先生と沖縄の自然探検! 〜独自の進化を遂げた「やんばるの森」〜

2021/7/18 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、沖縄大学の学長で、植物や生物などの精密なイラストでも知られる“ゲッチョ先生”こと「盛口 満(もりぐち・みつる)」さんです。

 盛口さんは、1962年生まれ。大学卒業後、埼玉の中学・高校の教諭を経て、2000年に沖縄に移住、現在は沖縄大学の学長としての仕事のかたわら、フリーのライター、イラストレーターとしても活躍、自然や植物、生物などに関する本を数多く出版されています。盛口さんの出身地は実は、千葉県館山で、館山市から「館山ふるさと大使」に任命されています。

 きょうはそんな「盛口」さんに館山や沖縄の自然、そして先頃出された本『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』のお話などうかがいます。

☆写真協力:盛口 満

ボルネオ、手にしているのはウツボカズラ
ボルネオ、手にしているのはウツボカズラ

原点は千葉県館山の貝殻

※盛口さんは、生まれも育ちも千葉県館山、高校卒業まで館山で暮らしていたそうです。いったいどんな少年だったんでしょうね。

「あんまり子供の時の記憶はないんですけども、やっぱり気が付いたら自然の中で、友達とじゃなくても、ひとりでも歩き回ったり、生き物を見ているのが好きだったような覚えがありますね。館山だと家のすぐそばから小っちゃな山はあるし、少し歩けば海もあるしで、今考えれば贅沢な環境だったなとは思いますけどね」

●どんなことにいちばん興味があったんですか?

「最初の記憶は覚えていないんですが、生き物に興味を持ったなと自覚したのは、多分小学校2年生くらいの時に海に行って貝殻を拾った、ある日突然、貝殻がたくさん落ちていることに気が付いたっていうことだと思います。で、むやみやたらに貝を拾って帰っては、そのうち親にねだって図鑑を買ってもらって名前を調べ始める、そういうことから生き物との繋がりがすごく濃くなっていった気がします」

館山の海岸で見つけた貝殻
館山の海岸で見つけた貝殻

●へ〜! 盛口さんの原点は貝殻だったんですね。千葉大学理学部の生物学科で学ばれていますけれども、ご専門は? 

「私は大変うかつというか、あんまりきちんとものを考えられないのかもしれませんが、大学に入る時に生き物を勉強したいとは思ったんです。動物、小っちゃな生き物、虫とか貝とかがいいなと思って大学に行ったら、うちは植物しかないよって言われて、しょうがないなと思って、ただ野外で調べるほうが好きだったので、外で植物の生き様を調べる研究室に入れてくださいって言って、植物生態学っていう勉強をしたんですけど」

●どんな植物を研究されていたんですか? 

「うちの先生が森の研究者ではあったんですが、調べる対象を自分で選んでいいよって言われたので、やっぱり地元の館山、沖ノ島っていう小っちゃな離れ小島があって、歩いて渡れるんですが、そこの森をひとりで全部、木の位置とか種類とか太さとかそういうのを測って、この森の中で木はお互いにどんな関係で生きているのかなっていうのを自分なりに考える、そういう研究をやっていました」

●盛口さんって”ゲッチョ先生”って呼ばれていますけれども、その愛称の由来っていうのは? 

「はい(笑)、これもやっぱり生まれ故郷の館山なんですけれども、千葉大学で同じサークルに文学部の学生さんがいて、その友達が方言調査に館山に行くわけですよ。で、おじいさんに色んな生き物の絵を見せて“おじい、これ何て言うの?”っていう風に聞くわけですよね。そうすると、“これはカマゲッチョだっぺ”とかって、おじいが答えるわけじゃないですか。
 カマキリの絵を見せた時にそのおじいさんが“カマゲッチョだっぺ”って答えて、また何枚か絵を見せているうちにトカゲを見せた時に、“カマゲッチョだっぺ”っておじいさんが言って、その友達が“おじいさん、さっきこっちもカマゲッチョって言ってたよ”って言ったら、おじいさんが“あ、それもそうだな〜”って言って、おじいさん全く気にしなかった(笑)。

 実はカマキリとトカゲって面白い関係があって、地域によって名前が逆転したりよく似ていたり、館山はたまたま一緒の名前が付いていたんですね。僕もそれ知らなかったし、僕の世代になるとその言葉を知っているやつもいなかったんですけども、それがサークルで話題になって、お前の生まれた館山って変なところっていうので、カマゲッチョってあだ名を付けられてしまい・・・
 で、僕が勤めた学校は先生をなんとか先生って堅苦しく呼ばないっていう学校だったんですね。でも子供たちに勝手にあだ名を付けさせると、とんでもないことになるので、僕は大学でカマゲッチョって呼ばれていたよって言ったら定着したんですが、長いので切られて下半分だけになりました」

●それでゲッチョ先生だったんですね(笑)。

「それが呼びやすいし、館山という自分の故郷も引きずっていていいなと思って未だに使っています」

●私も館山は大好きで、家族でよく夏は遊びに行くんですけれども、盛口さんから見て千葉県館山の魅力っていうのは何でしょうか?

「実は館山って黒潮の端っこなんですよ。そこからまた黒潮が伊豆諸島のほうに流れていくんですね。だから南から流れてきたものが色々館山に引っかかって、そこから先に行くと半島を回って九十九里とかに行くと、微かにまだ南のものは流れ着きますけれども、やっぱりそういう意味でいうと南の尻尾なんですね。で、僕は貝殻を拾っていて、南のもののこんなものまで拾えるんだっていうのが館山はあって、その憧れが今沖縄に住み着く原動力になっているのかなと思っています」

『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』

宮古島は不思議の島!?

※小さい頃から南への憧れがあって20年ほど前に沖縄に移住した盛口さん、沖縄の自然や文化に関する本も出していらっしゃいます。そんな盛口さんの新しい本が『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』。この本は沖縄に住んでいる親戚のおじさんを訪ねて、東京から高校生と中学生の姪っ子、甥っ子がやってきて、一緒に沖縄を巡りながら、沖縄の自然や生き物を学ぶという展開になっています。

●盛口さん、このストーリー展開にはどんな狙いがあったんですか?

「ひとつは僕が学校の教員を長くやっていたので、学生とか生徒ってそんな生き物に興味を持っていないんですけども、でも実際にこういうのがいるよって言うと面白がってくれる。だから本でも、そんなに生き物に興味がないんだけど、たまたま親戚のおじさんがいるから来たっていうシュチュエーションは、僕が普段接している学生たちとか生徒たちとの感覚とあんまり変わらないです。

 ある種自分にとってはリアルな感覚で書けるなっていうのと、あともうひとつは沖縄は本当に生き物が多様なんで、僕もまだ全然全部見きれていないので、それを偉そうに全部書けないので、ある種切り取った形でリアルにするとしたら、誰かが来て案内するってシュチュエーションだったら、自分の知っているものをあんまり無理せずに出せるかなっていう風に思った次第です。

 本に登場してくるのは一種の架空の子供たちなんですが、実際うちの姉に姪っ子甥っ子がいて、ある日会った時に“おじさんって仕事とかしているの?”っていう風に言われて、あ、そういう風に見られているんだって(笑)、このキャラクターはどこかで使おうとは思っていました。そういうのもあります」

●実体験のような話でもあるんですね(笑)。

「実際、子供たちと一緒じゃないですけど、本に出てくる行程は全部ひとりで実際に歩いて、そこで見た生き物を入れているので、そういう意味で言っても、なるべくリアルな感じにしようかなとは思っていました」

●宮古島も好きで何度か行ったんですけれども、こんな歴史があったんだとか、こういう生き物がいるんだっていう新しい発見があってすごく面白かったです! そもそも不思議の島っていう風に宮古島のことを紹介されていましたよね? 

「僕自身もその沖縄に通うようになって、いちばん最初は西表っていうところだったんですけど、とにかくヤマネコもいるしジャングルが残っている大自然の島。その次に沖縄本島に住み着くようになって、やんばるもいいじゃんとか思ったんですけど、宮古島ってそういう意味で言うと平たくて森がないんですよね。海に潜る人は“宮古ブルー、最高”とか言って行くわけですけど、僕らからしたら、生き物はいないのかなと思っていたんですが、最近徐々に宮古島には宮古島にしかいない生き物が色々いるっていうのが分かってきました。

 本の中にもミヤコカナヘビとかですね、ミヤコヒキガエルっていう宮古にしかいない独自の生き物っていう話を紹介していますけれど、本当にここ最近ですね、宮古で新種のゴキブリが見つかって、これが超珍しいので、すぐ“種の保存法”で即指定されて、誰も捕っちゃいけませんみたいな、そんなものまで新たに見つかるような不思議なところが宮古には残っているということですね」

ミヤコヒキガエル
ミヤコヒキガエル

沖縄本島って面白い!

※ひとくちに沖縄といっても、島によってそれぞれの特徴があると思うんですが、盛口さんが、特にこの島の自然は面白いと思ったのはどこですか?

「いちばん最初、僕が本土に住んでいた時は西表オンリーだったんですよ。もうとにかく暇があれば西表に行って西表すごい! って思っていたんだけれども、西表では流石に仕事がないので沖縄本島に移り住んで、それから20年経ちますけれど、だんだん沖縄本島って面白いなっていう感覚がアップしていますね。
 本当は、色んな島に1年ずつくらい住みたいなって気持ちはあるんですけど、それは難しいし、でも沖縄本島ってこんなに人が住んでいるのにまだまだ自然がいっぱいあるし、分かっていないこともあるんで、沖縄本島だけでも見きれないっていうか、十分だなっていう感じですね」

●観光地というようなところもたくさんある中で、自然もまだまだ残っているってすごいですよね。沖縄でしか見ることができない固有種っていうのも多いと思うんですけれども、代表的な固有種を挙げるとしたら何かございますか? 

「これ困ってしまうというか、あんまり意識してないというか(笑)。でも山に行くと沖縄本島だとヤンバルクイナの声が聴こえたりすると、やっぱりこれ沖縄だよなっていう思いをよくします。あとリュウキュウヤマガメっていう陸生のカメ、川じゃなくて山に住んでいるカメがいて、そんなに珍しいわけではないんですけど、見る度にやっぱりこういう風に山にカメがいるって、沖縄は面白いよな〜って思ったりするんですね。

 ほかにも色々いて、それこそ自然探検の本に紹介させていただきましたけれど、本当にキリがないぐらい、虫とかでもまだまだ沖縄固有とか、固有ではないけど、沖縄に来ないといないとか見られない虫とかそういうのもたくさんいますね。この間もたまたま森で今まであんまり気にしていないハチがいるなと思って捕まえて、知り合いの先生に送ったら、まだこれ2匹目だよって言われて、そんな風に当たり前にそんなことがあるのはやっぱりすごいなと思ったりしました」

●新たな発見があるわけですね! それは何というハチだったんですか? 

「名前は付いていないって言ってました」

●ええっ!? じゃあもうまさに新種なんですね!?

「前に見つかって誰かが標本を持っているんで、存在というのは知られていたんだけれども、きちんと研究が進むほど何匹も見つかっているものではないって言っていました」

●どんなハチなんですか?

「ハチはハチなんですけど、説明が難しいというか・・・まぁ尻尾が長くて、木が倒れたあとに色んな虫が住みつきますよね。その木の中で木材を食べている虫に寄生するために尻尾が長いオナガバチっていうハチの仲間なんですけど」

オナガバチの仲間
オナガバチの仲間

ワクワク ドキドキ 冬虫夏草

※ところで、盛口さんがよく行くフィールドはどこなんですか?

「私がやっぱりいちばん行くのは、やんばると言われている沖縄の北半分のほうですね、そこの森に行きます」

●やんばるの森っていうのはどんな森なんですか? 

「そうですね。なかなか一言では言い難いところになるんですけど、ひとつは沖縄本島のやんばるの特徴は山のてっぺんだけが残っているって感じですよね。例えば奄美大島とか、ほかの南の島もありますけれど、もうちょっと平たいんですね。だから川が流れていて山の中でも平たい部分があってっていうのがあるんですが、沖縄本島はもうちょっと痩せている感じで、山のてっぺんだけちょっと海から出ている、だから割と険しいんです。

 そういう意味で海岸線に沿ってしか集落がなくって、ちょっと入ると森になっちゃうと。で、歩けるところもそう多くないんです。歩こうと思えば歩けますけど、何せ斜面なんで道がなかったりするんですね。南の島なので冬でも葉っぱが落ちない。日本でいちばん大きなドングリを付けるオキナワウラジロガシという木も生えていたりします。

やんばるの森
やんばるの森

 やんばるがもうひとつ面白いのは、沖縄の島々、いちばん北にあるのは屋久島のほうから、いちばん南のほうは与那国島っていうところまで点々と島があって、昔は陸地と繋がっていたから色んな動物が入ってきているんですけど、ちょうど沖縄本島は真ん中にあるんですね。
 そうすると本土からも遠いし、台湾からも遠くて、歴史の中ではかなり昔に両方から切り離されてしまって、大昔に入ってきた生き物が細々と生き残っていたり、独自の進化を遂げていると。ちょっと西表とか屋久島に比べれば地味な感じもするんですが、実は結構タイムカプセルを掘り起こしている感じなんです。そういう意味で言ってヤンバルクイナにしろヤマガメにしろ固有の生き物が見られるっていう、そういう森なんですね」

●フィールドワークしていてどんな瞬間がワクワクしますか? 

「沖縄は梅雨が終わってしまったんですけれども、春から梅雨にかけてがいちばんワクワクするシーズンで、梅雨が終わるとがっかりしてしまうという感じ、また1年お預けだなと思うんですけど、やっぱり湿気が多いほうが生き物はとても豊かなんですね。
 いちばんは雨が多い時期に出てくる虫に取り付く冬虫夏草っていうキノコがあるんですが、これもまだまだ知られていなくて、毎年、これ初めて見るとかこれ名前ついているのかしら? っていうのが見つかったりして、そういうのを見るとひょっとしてこれは世界で初めて僕が見ている生き物ではないかと、ワクワクドキドキが止まらないですね」

●すごいことですよね〜! 今年も何かそういった新しい発見はあったんですか?

「はい。今年はその冬虫夏草の仲間で、セミの成虫からニョキニョキとキノコが生えているのを沖縄本島で初めて見て、西表では見つかったことはあるんですけれども、沖縄本島にあるかなと思っていたら、いくつか見つけることができて、ちょっと森の中でひとり走り回っておりました(笑)」

セミの成虫から生える冬虫夏草
セミの成虫から生える冬虫夏草

生き物の形、知らない世界

※新しい本でもそうなんですが、盛口さんが描くイラストは昆虫でも魚でも植物でも、とても精密で美しい仕上がりになっています。イラストは実物を見ながら描くんですか?

「基本的には見たまんまということなんですけど、できれば実物で、虫とかは実物を見て描いているんですが、カエルとかトカゲは逃げちゃうので、これは写真を撮って写真から描いています」

●細かくてびっくりしました。すごい! と思っちゃいました。イラストを描く時に心掛けていることはありますか? 

「実は僕は芸術系は一切習ったことがないし、本当にそういう意味で言うと器用ではないのでヘタクソなんですけども」

●いやいやいや! 

「いや、下手だから省略ができなくて、上手い人だともっとデフォルメしてすごく生き生きと描けるんですけど、僕は全部ちゃんと描かないとそれっぽく見えないので、すごく面倒臭いと思いながら、自分ではでもしょうがないですね(笑)。で、生き物の色んな形の面白さにやっぱり自分が惹かれているところがあるので、それが伝わればいいなっていうのと、もうひとつは今写真が発達していて僕も写真を撮りますけれども、絵も面白いんだよっていうのもどこかで伝えたいことではありますね」

●そもそもイラスト描いてみようって思われるようになったのは、何かきっかけがあったんですか? 

「3つあるんですけど、ひとつは子供の時から生き物とは別に絵を描くのが好きでした、漫画の模写みたいなのですけど。もうひとつは昔はデジカメがなかったのでカメラが高くて、あと扱いがすごく面倒くさかったんですね。全然分からない、僕、機械音痴なので写真が撮れなかったっていうのがひとつ。
 で、何とか自分で生き物のことを記録したいなとは思っていて、そうすると写真がダメだと絵を描かざるを得ない。たまたま好きだったからそれが全部絡まって生き物の絵を描くようになったっていうことではあります」

●写真でパッと撮るよりも絵で描くほうがすごく観察力が高まりそうですよね。

「やっぱり描くと、描いたものっていう漠然としたイメージで残っています。写真だとやっぱり写真を撮った! って安心してしまって覚えていなかったりするので」

●小さいお子さんとかも観察しながら描いてみるっていうのはいいかもしれませんね。

「そうですね。時々小学生の子からファンレターみたいなのをもらったりするんですけど、やっぱり好きな子は小学校2年生でもよく見て描いていたりしますもんね」

●最後にこの新しい本『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』を通して読者の皆さんにいちばん伝えたいことは何ですか?

「そうですね。沖縄っていうとたくさんの魅力があるし、皆さん色んな目的で来られていると思うんですが、その中に自然というものの素晴らしさもあるんだよっていうのを伝えたくて、自分の知らない見方とかですね、自分の知らない世界が、自分が出かける場所にもっとあるんだってことをまず知っていただけたら・・・皆さんが自然にどっぷり浸かっていただかなくてもいいとは思うんですが、そういう部分もあるんだよっていうのを伝えたくて書かせてもらったという本です」


INFORMATION

ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検


『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』

 ゲッチョ先生の案内で自然豊かな、生き物の宝庫沖縄を探検しましょう。沖縄本島の北部にある「やんばるの森」や、街中で見られる生き物ほか、宮古島や石垣島、西表島や与那国島の、個性的な自然が精密で美しいイラストとともに紹介されています。岩波ジュニア新書シリーズの一冊として絶賛発売中です。詳しくは「岩波書店」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「岩波書店」のオフィシャルサイトHP:https://www.iwanami.co.jp/book/b583373.html

◎ゲッチョ先生の公式サイト:http://kamage.web.fc2.com/

◎ゲッチョのコラム:https://blog.goo.ne.jp/kamage-nomori

“動く自然”砂浜が痩せていく!?〜豊かな砂浜を守れ!「全国砂浜ムーブメント」〜

2021/7/11 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、公益財団法人「日本自然保護協会」NACS-J(ナックスジェー)の「志村智子(しむら・ともこ)」さんです。

 1951年から日本の自然を守るための活動をしている、環境保護団体の草分け的な存在「日本自然保護協会」はこれまでにも重要な役割を果たしてきました。この団体がなければ、日本の自然はもっとひどい状態になっていたかもしれないと言われています。

 そんな「日本自然保護協会」NACS-Jがいま力を入れているキャンペーンが、豊かな日本の砂浜を守るための「全国砂浜ムーブメント」。いったいどんな活動なのか、このあと志村さんにじっくりお話をうかがいます。

☆写真協力:日本自然保護協会

写真協力:日本自然保護協会

砂浜は危機的な状況!

※それでは早速、志村さんにお話をうかがっていきましょう。「日本自然保護協会」では現在「全国砂浜ムーブメント」というキャンペーンを行なっていますが、これはどんな活動なんですか?

「日本自然保護協会はその名前の通り、日本の自然を守る活動をやっているんですけど、ちなみに今年で70周年になるんです!」

●おお〜! 

「今までは比較的、森とか山とか里山とか、陸上の活動が中心だったんですね。ただ本当に世界的に海の自然保護っていうのは遅れているので、NACS-Jも力を入れてやっていこうということで、砂浜ムーブメント自体は3年前から開始しました」

●砂浜ってそんなに危機的な状況なんですか? 

「はい、そうなんです。海自体が本当に今、世界的に早く保護しなければいけない状況っていう風に言われているんです。その中でも砂浜は日本だけではなくて、世界的に危機だと言われている環境なんです」

●何がいちばん問題なんですか? 

「最近、プラスチックゴミがたくさん漂着しているっていうお話は聞かれたことがあると思うんですけど。プラスチックはもちろんなんですけれど、実はもうひとつ、砂浜自体が小さくなっている、痩せていくっていうのが大きな問題になっています」

●海岸自体も減ってきてしまっているっていうこともあるんですよね?

「そうなんです。日本って海岸はすごく長くて、実は世界で6番目の長さがあるんですね。陸地はとっても狭いんですけれど、日本の海岸線はとっても長くて、その海岸線っていうのは、私は日本の財産だと思うんですね。実はそれを結構、改変してきてしまっています。日本全体では約半分は人工的な海岸になってしまっているっていう風に言われています」

写真協力:日本自然保護協会

●自然の海岸ではなくて、人工のコンクリートの海岸っていうことですか? 

「そうですね。いちばん改変されているのが干潟とか砂浜なんですね。遠浅の干潟って埋め立てられてなくなったところがとても多いんです。砂浜も同じように遠浅なので色んな改変がしやすい。あとは波を被ってしまうので護岸工事をされて、陸と海の間にコンクリートの境界線ができてしまっているっていうところが増えています」

●どうしてどんどん自然の海岸って少なくなってしまうんですか?

「ひとつは陸地が狭かったので、遠浅のところは埋め立てやすいから、これは便利だって思って埋め立ててしまったっていうのもあるんですね。あとは砂浜は海のすぐ近くまで、例えば道路を作ったり、建物を作ったりすると、そこに波が被ったり削られたりすると大変なので、道路や町を守るために護岸を作って、砂浜のほうを潰してきたっていうことがあります。その結果、砂浜が減って波の力を弱める力が減ってしまったりして、さらに大きな堤防を作ったりっていうような悪循環になってしまっているというところが結構あるんですね」

全国砂浜ムーブメント、3つの取り組み

※「全国砂浜ムーブメント」の具体的な内容を教えてください。

「はい、砂浜って私たち、とても馴染みのある景色だと思うんですけれど、じゃあ実際にどんな生き物がいるんだろうとか、どんな仕組みを持っている自然なんだろうって、意外にご存知じゃない方が多くいらっしゃるんですね。
 なので、1つは砂浜ノートっていうのを作りました。砂浜のことをもっと知ってもらおうということで、砂浜のことを紹介した冊子を作ったんですね。これをたくさんの子供たちに届けたいというのが1つ目のアクションです。

写真協力:日本自然保護協会

 2つ目のアクションは、砂浜の生き物を調べようっていう取り組みなんですね。砂浜のアプリを使って、砂浜に行って生き物の写真を撮って送っていただくっていうものなんです。砂浜の自然のことはなかなか知られていないので、そうやって全国から砂浜の生き物の情報を集めていただくっていうのが、砂浜を守る第一歩としてとても重要なんですね。

 3つ目のアクションが、砂浜に押し寄せてくる海ゴミを減らそうというものです。これもやはりアプリを使って、どこでゴミを拾ったよっていうのをご報告いただくっていう、その3つのアクションからなっています」

●アプリを使うっていうのはゲーム感覚で取り組めて、お子さんたちも楽しめそうですね! 

「特に今コロナで、みんなで集まって、例えば砂浜の生き物を探そうとか、みんなでゴミを拾おうっていうのはなかなかやりづらいと思うんですね。なんですけど、活動がひとりじゃなくて全国みんなでやっているっていうのを、アプリを使って繋がるっていうのは、とっても今の時期にやりやすいものかなと思います」

●砂浜ノートは具体的にどんな内容になっているんですか? 

「砂浜を楽しもう! っていうところから始まって、砂浜でこんなことをすると面白いよっていう、例えば砂でお城を作ってみようっていうのもあるし、砂に隠れてしまったカニを掘るにはどうしたらいい? なんていうものも紹介しています。あとは砂浜でビーチコーミングをしませんかっていうお誘いをしているんですね。ビーチコーミングっていうのは、ビーチは砂浜ですよね、コーミングっていうのはコーム、くしのことを言うんですけど、砂浜をくしですくように色んな探しものをする、砂浜の宝探しみたいなことを言います。

  そうすると実は貝殻とか色んな面白い貝が落ちていたりとか、あとは人工物、例えばビーチグラスであったり陶器の欠片とか、そんな色んな面白い宝物も見つかりますよ、砂浜をそうやって歩きませんかっていうようなことも紹介しています。それ以外にも植物や貝殻のミニ図鑑、あとは砂つぶそのものを見てみようとか、砂浜をどうやったら楽しめるかっていうのをご紹介している冊子です」

写真協力:日本自然保護協会

●ここまで砂浜に焦点を当てたものってなかなかないですよね。

「砂浜を知ってほしい、砂浜を守りたいって言っても、相手を知らないと守れないじゃないですか。なんだけど、今例えば本屋さんに行っても、森の本とか雑木林の本とかお花の本とかはたくさんあると思うんですけれど、海のコーナーって結構ちょっとなんですね。

 その中でさらに砂浜のことを紹介している本って、本当にごく僅かしかないんです。で、自然保護協会としては本を作ろうか、売ろうかって思ったんですけど、今の砂浜の現状を考えると、売っていたら間に合わない、お金を出してまで手に取ってみようかなって思う人に届けているのだと間に合わないので、自分たちで作ってしまおうってことで冊子を作ったんです。

 最初の年、一昨年に作った5千部はほとんどあっという間になくなってしまって、昨年これをもっとたくさんの子供たち、5万人の子供に届けたいってことで、クラウドファンディングで皆さんに協力をお願いして、それが無事達成できたんです。それを今お配りしているところです」

*編集部注:「日本自然保護協会」は千葉県内のイオンモールともコラボして、幕張、木更津、銚子で、貝殻でリースを作るワークショップなどを開催、大変好評だったそうですよ。そしてお話にもあったアプリは「ピリカ」と「バイオーム」のふたつ。

 「ピリカ」はゴミ拾いアプリで、一緒にやっている仲間と交流できたり、お互いに応援のメッセージを送れたりするそうです。そして「バイオーム」は生き物コレクションアプリで、砂浜で生き物を見つけたら、写真を撮って投稿すると、AIがどんな生き物か判定してくれるそうですよ。
 詳しくは「全国砂浜ムーブメント2021」のサイトをチェック!
https://www.nacsj.or.jp/sunahama_movement/

九十九里浜の謎!?

※ところでそもそも砂浜って、どうやってできるんですか?

「面白いですよね。砂浜ってそこから砂が湧くわけでも、勝手に増えてくるわけでもないですよね。千葉県の九十九里浜にはとっても大きい砂浜がありますよね。あそこは結構、特徴的な砂浜のひとつなんですけれど、あまり大きな川が流れ込んでいないんですね。ほかの地域だと大きな川が山から砂を運んできているところっていうのが多いんです。

 山の中から雨や風で削られた砂が川で運ばれてきて浜にやってくる。そこで砂浜ができるっていうのができ方のひとつなんですけれど、大きな川が流れ込んでいない、千葉県の九十九里浜は実は、北と南の崖を削った砂が溜まってできている砂浜なんです。そんな風に砂浜ってその浜ごとによって、どこから砂がやってきたかとかによって全然個性が違うんですね。だから砂の色がちょっと白っぽかったり黒っぽかったり、そういう個性があるのは砂の成り立ちに関係しています」

●いろいろ見比べてみるのもいいかもしれないですね。

「なんですけど、例えば九十九里浜は崖が砂浜を作っているっていうのは分かってはいたんですけれど、崖が削られてしまうとその上の住宅とか施設の、もしかしたら足元が崩れてしまうかもしれないっていうので、崖が削れないように、下に直接、波風が当たらないようにブロックを並べたんですね。そのおかげで崖が減るスピードっていうのは減ったんですけれど、そうしたら砂浜が痩せてきちゃったんですね。要するに砂の供給源が減ってしまったことで、波でさらわれていく需要と供給が合わなくなってしまって砂が減っている、そんなところもあります。

写真協力:日本自然保護協会

 ほかの地域では山の上から運ばれてくる砂がダムで塞き止められたり、途中で砂を取られてしまったりいうので、海にやってくる砂が減ってしまったりっていうこともあります。あとは砂ってそこにずっと居続けるわけではなくて、波で沖に持っていかれたりしますよね。台風で一時的にさらわれていくっていうこともあるんですけれど、結構海の中にまだ残っていて、だんだん砂が戻ってくるっていうこともあるんですね。

 それと同じように大きな砂浜だと海流に乗って、どんどんゆっくり運ばれてきて、隣の湾に運ばれたりとか、隣の浜に少しずつ運ばれていくっていう動きがあるんですけれど、その間に港を作ったり突堤を作ったりすると、隣の浜に砂が行かなくなったりとかっていうこともあるんですね。そんな風に砂がどこからやってきているのか、そういうことをだんだん私たちも分かってきて、これで砂浜が痩せてきてしまったんだなっていうのが分かるようになってきました。

 そういうのは、最近はGoogleマップとかインターネットで地図や航空写真が簡単に見られるようになったので、そういうのを見ると、砂がどこで止まっているかなっていうのが結構簡単に分かるようになってきました。

 実は砂浜のいちばんの大きな特徴は“動く自然”だっていうことなんですね。もちろん森とか草原とかも動きはあるんですけれど、砂浜ってとても動きの激しい自然なんですね。1日の間に干満もあるし、季節的な変動もあるしっていうので、常に動き続けているのが砂浜の自然なんですね。
 なので、さっき自然の海岸っていうのお話があったんですけれど、コンクリートブロックを入れるっていうのが、人工物があるから自然じゃないっていう見方もあるんですけれど、その自然の動きが“どのくらい生きている自然なのか”っていうのが、ひとつ見るポイントなのかなっていう風に思います」

写真協力:日本自然保護協会

約20億本のペットボトルが行方不明!

※志村さんからプラスチック・ゴミが砂浜にたくさん流れ着いているというお話がありましたね。日本は家庭から出るゴミは回収して焼却などされて、ちゃんと処理されていると思うんですが、それでも海洋プラスチックゴミが増えているのは、どうしてなんでしょう?

「海のゴミはみんな海外から流れてきたものっていう風に思っていらっしゃる方も多いんですね。確かに外国のゴミっていうのも相当日本に流れ着いています。そうなんですけど、例えば千葉県っていうのは、太平洋側と東京湾側があるじゃないですか。東京湾みたいな深い湾の場合、湾の奥まで外洋のゴミが入ってくることってそんなにないんです。なんだけど、東京湾の奥のほうに行くとそれでもゴミがいっぱい溜まっているんですね。実は私たちの暮らしの中から海に流れ着いているゴミは相当数あるんです。

 日本は容器包装プラスチック、色んな食べ物とか色んなものを買う時、大抵プラスチックに覆われているじゃないですか。ああいう容器包装プラスチックの、ひとり当たりの使用量がアメリカに次いで世界で2番目に多いんですね。とってもたくさんのプラスチックを日本人は使っているんです。でも一生懸命回収はしていますよね。日本は、ペットボトルの9割は回収してリサイクルしているんです。世界でトップレベルのすごく優秀な回収リサイクルの国なんです。

 ただし、日本のペットボトルの使用量は年間で230億本って言われているんですね。その9割を回収しても、1割の行方不明があるとすると、それだけで20億本以上がどこかに行っているんですね。
 自分はゴミ箱に入れたんだけれど風に飛ばされてとか、うっかりとか、私たちもそんなことはしないようにしようと思っても、ビニール袋が風で飛んで行っちゃったとか、ポケットに入れておいたはずなのになくなっているっていうことがあると思うんです。

 最近はマスクも結構、道に落ちているのを見かけたりするんですけれど、そういうようなうっかりなものもたくさんあるんです。そういうものが回収しきれないで、私たちの手元から逃げ出しちゃっているゴミっていうのも相当数あるんです。なので、回収する、リサイクルする、拾うっていうのもとっても大事なんですけれど、元々の使う量をもうちょっと減らす、世界で2番目よりは、もうちょっと減らしたほうがいいんじゃないかなという風に思っています。

 砂浜に流れ着いている海ゴミの量っていうのは、海ゴミ全体の中で1割、もしくは2割程度じゃないかっていう風に言われているんですね。それ以上の量が海の中や沿岸に流れ出してしまっているっていう風に言われています。海の中だけではなくて本当に今、色んなところの大気中からも、微小なプラスチックが見つかっているんですね。そういうことになってしまっているのは量がたくさんあるっていうのはもちろんなんですけれど、プラスチックって細かくなってもプラスチックなんですよ。

 人工的に作られたとても安定した物質なので、細かくなってもなかなか分解されないんですね。私たちの周りにある落ち葉や木の枝とか、動物の死骸っていうのはだんだん細かくなって最終的には菌類が分解してくれて無機物になって、また次の生き物がそれを肥料にしたり栄養にしたりして循環しているんですけれど、プラスチックっていうのは生物が分解できない構造を持っているんですね。
 バイオプラスチックの研究とかもまだ進んでいるんですけれど、私たちはこの半世紀くらいでプラスチックの使用量がものすごく増えたんですけれど、最後どういう風にしたら分解するとか、ちゃんと循環するかっていうことを知らないまま、実は使い続けているのが今の状況なんです」

写真協力:日本自然保護協会

砂浜ノートを持って海に行こう!

※最後に長年、自然保護の活動に携わってこられて、いまどんなことを感じていますか?

「海の自然保護ってすごく遅れているっていう風に申し上げたんですけれど、本当に陸の自然に比べて海の自然は、半世紀とか30年とかそのくらいは軽く遅れている感じがします。なんだけど、日本の自然って、日本地図を思い浮かべてくださいって言った時に、大抵の方は陸地しか多分思い浮かばないと思うんですね。

 その周りに海があると思う方、海のことまで思い浮かべて日本地図を思い浮かべてくださる方って、なかなか少ないかなって思いますね。でも本当に海と一体になって日本の自然が成り立っているので、海も含めて陸の自然も思い浮かべてくれる人が増えていくといいなっていう風に思っています。

 あと、どういう風に自然を見るかっていうのは、やっぱり時代によって私たちの色んな理解、科学技術も進んできて、理解がどんどん進んできていると思うんですね。壊すほうの技術と言ったら言い過ぎかもしれないですけれど、自然を利用する技術も進んでいるんですね。それと同じように守る技術も進んでいかないと、気が付いたらそのバランスが崩れていたっていうことになると思うんですね。

 本当にこの20〜30年だけ見てみても、例えば白神山地は今世界遺産になっているじゃないですか。日本自然保護協会もブナの森を守るために取り組んでいたんですけれど、30年くらい前、世界遺産になる前は加工技術が発達していなかったので、ブナを伐ってスギに変えることがいいことだったんですね。

 森そのものを守るべきものだっていう認識が最初はなかった。だけど今は森の中に色んな生き物がいて、そこにいると楽しいし、空気も美味しいし、きれいな水ももたらしてくれる場所だっていうイメージが、多分皆さんの頭の中に思い浮かべられるようになったんじゃないかなと思うんですね。そういうことが海に関しても是非、皆さんに感じてほしいなっていう風に思っています」

志村智子さん

●「全国砂浜ムーブメント」、今年は12月31日まで続きますよね。番組を聴いてくださっているリスナーさんに、改めていちばん伝えたいことってどんなことですか? 

「本当に千葉の皆さんは、太平洋側の海と東京湾側の海っていうとっても個性が違う2つの海を持っている、とってもいい県にお住まいだと思うんですね。なので、是非たまには海に行っていただきたいなっていうのが第一です。
 やっぱり現場に行って砂浜に立って、見えてくるものっていうのがいっぱいあると思うので、是非一度砂浜にお出かけいただきたいなと思うし、その時には是非、砂浜ノートをお持ちいただければ、砂浜を見るヒントにもなるんじゃないかなという風に思っています」


INFORMATION

写真協力:日本自然保護協会

 「全国砂浜ムーブメント」に家族やお友達と参加しませんか。「砂浜ノート」があれば、海や砂浜のことを楽しく学べますよ。子供たちの体験にお役立てください。日本自然保護協会のサイトからすぐ申し込めます。

 また、ゴミ拾いアプリ「ピリカ」と、いきものコレクションアプリ「バイオーム」もぜひ活用してください。同じく協会のサイトからダウンロードできます。今年の「全国砂浜ムーブメント」は12月31日までです。

 ほかにも日本自然保護協会では、あと20頭ほどになってしまった「四国のツキノワグマ」を救うための活動も行なっています。また、現在、会報誌「自然保護」の表紙を飾る「フォトコンテスト」の作品を募集中。応募の締め切りは9月30日です。

 そして日本自然保護協会の活動は会費や寄付で支えられています。ぜひご支援いただければと思います。

 いずれも詳しくは「日本自然保護協会」NACS-Jのオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「日本自然保護協会」NACS-JのHP:https://www.nacsj.or.jp

心が優しくなれる、ほどけるような気持ちになれる〜年間180日潜る水中写真家「鍵井靖章」の写真展〜

2021/7/4 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、水中写真家の「鍵井靖章(かぎい・やすあき)」さんです。

 鍵井さんは1971年、兵庫県生まれ。大学在学中の20歳のときに、ある写真家の水中写真展を見て感動し、写真家になることを決意。その後、伊豆やモルディブでダイビング・ガイドとして経験を積みながら、水中撮影のスキルを磨いて、28歳のときに独立。そしておよそ20数年にわたってフリーランスの写真家として第一線で活躍されています。現在は鎌倉に拠点を置き、葉山や岩手など国内の海はもちろん、コロナ禍の前は月2〜3回は海外の海に出かけていたそうです。

 きょうはそんな鍵井さんに、世界の海に潜って感じた日本の海の素晴らしさや、写真展のお話などうかがいます。

☆写真協力:鍵井靖章

写真協力:鍵井靖章

やっぱり感じる海の変化

※それでは鍵井さんにお話をうかがいましょう。国内外のいろいろな海に潜って写真を撮っていらっしゃいますが、特に印象の残っている海はどこですか?

「モルディブ好きですね。行ったことあります?」 

●ないんです〜。行ってみたいです! 

「インド洋に浮かぶ島々なんですよね。僕、25歳〜27歳まで住んでいたこともあるので、ちょっと故郷的な海でもあるんですけれど、やっぱりモルディブの魚影の濃さとか素晴らしい海なので大好きです」

●ほかの海とモルディブの海っていうのは具体的にどう違うんですか? 

「やっぱり魚影の濃さですよね。色んなお魚がいて、あとジンベイザメとかマンタとか、ダイビングをする僕らにとっては、憧れの生き物との出会いを可能にしてくれる海なんですよ」

●長年、海に潜ってらっしゃいますけれども、いちばん感じる海の変化ってありますか? 

「そういう質問されたらやっぱり、最近はよく海洋プラスチックや温暖化現象って言われるじゃないですか。でもそれは本当に感じますよ。多分前回、葉山の佐藤輝さんとの話でもあったかもしれないけど、海藻がなくなったりだとか、環境の変化はやっぱり感じますよね」

●やっぱり長年見てこられて、悪くなっているなという印象ですか? 

「悪くなっているなっていうか、例えば、海外のリゾート地とかもっと昔はゴミが多かったって言うんですよね。でも観光地化されることによって、目に見えるゴミは減るわけじゃないですか、観光地として成立するから。

 でもよく言われているように、実は目に見えないマイクロプラスチックとか、そういう問題があるわけじゃないですか。プラスチックの歴史が始まって、僕たちはそれの問題と向き合っていかなくちゃいけないっていうところに来ていると思うので、目に見えて綺麗になった場所っていうのももちろんあると思うんだけれど、実は目に見えていない部分で何かしら違う問題が進行していったりしているのではないかなっていう懸念はあります」

初の流氷ダイビング!

※コロナの影響でなかなか海外へは行けなくなりましたが、ここ1〜2年はやはり国内の海で撮影していることが多いのでしょうか?

「そうですね。正直言って海外に行きたい気持ちは全くなくて、今は国内の海を十二分に楽しむと言いますか、記録をしていて。
 実は僕、ダイビングを始めて30年くらい経つんですけれど、北海道の流氷ダイビングとかしたことなかったんですよ、外国ばっかり行っていたから。で、今年初めてその流氷ダイビングをやったりして、やっとちゃんと日本人のダイバーっぽく活動しています(笑)」

●流氷ダイビング、いかがでした? 

「実はすごく怖かったんですよ。水温がめっちゃ冷たいんじゃないの、とか思っていて、すごく怖かったんですが、意外と装備をしっかりすると全然ストレスなく、氷の下の世界を楽しむことができました」

●流氷ダイビングは初めてということですけれども、どんなものを撮影されたんですか? 

「いちばんの目標は流氷の下から見上げるっていうことだったので、流氷が持っている造形とか、ちょっと流氷が薄いところから溢れてくる光だとか、まぁ氷の造形ですよね、それを楽しんだかな」

写真協力:鍵井靖章

●どうなっているんですか? 流氷の下って。

「なんとなく想像がつく世界ですよ。氷の下でさ、あれ知ってますよね? 流氷の天使と言われる生き物な〜に?」

●流氷の天使? 

「クリオネ」

●ああ! クリオネ! 

「そうそう、クリオネとかハダカカメガイかな、貝の仲間なんですけれど。もうね、なんか両手じゃないんだけれど、一生懸命泳いでいるの、小っちゃくてすごく可愛かった。やっぱりテレビの映像とかで見るのとは全然違いますよね。寒さ忘れましたから」

●へぇ〜! 

「流氷ダイビングで僕、今回すごくいいなと思ったのが、例えば寒くなったら寒いって一緒に潜っている人に言ったらすぐに上がってくれるんですよ。だから何となくイメージだったら、すごく寒いのを我慢していっぱい潜んなきゃいけないのかなと思ったんだけれど、ちょっともう寒いし、もういいかなと思ったら20分くらいで上がるって言ったら、すぐに上がってもらえるんで、無理なく潜れて、ストレスなく今回、氷の下を楽しむことができたので、それはすごくよかったですね。

 で、結果僕は夢中になって50分くらい潜っていたんですけれどね。僕にとってはやっぱり思っていた以上に寒くなくて、思っていた以上に快適に氷の下の世界を楽しめたので、また来年の2月には行きたいなと思っています」

●初めてご覧になった氷の下の世界はいかがでした?

「もう一回撮りたいな〜! まだちゃんといいの撮れていないんで、もう一回撮りたい。でも素晴らしかったですよ。だからまた行きたいっていう気持ちにさせる・・・もちろん沖縄とか、ああいう海とは全く違う世界が広がっていたので、素晴らしい体験でしたね」

手付かずの海!?

※つい最近も国内の海で撮影されていたと聞いたんですけど、どこの海でどんな生き物を撮ってたんですか?

「つい先日までは愛媛県の愛南町って言って、まだダイビング・ポイントとして2年しか経っていない新しいエリアがあるんですけれど、そこで手付かずの海に潜ってみたり・・・手付かずってやっぱりいいですね。残念ながらたくさんダイバーが入ったりすると、そこはちょっとポイントとしては荒れちゃうと言いますか、生き物が少なくなったりもするんだけれど、その愛南町っていう町の海はほとんど誰も入ったことがない海だったので、日本の海って本来の姿はこうなんだ! って思える海がそこに残っていたので大変よかったですね。素晴らしかった」

●具体的に手付かずの海、そういった海っていうのはどんな状況になっているんですか? 

「サンゴとか、ソフトコーラルと言われる海底に付着している生き物、ああいうのがすごくモサモサっと生えていて、すごく色彩も豊かで、魚たちもダイバーを見たことがない魚たちがほとんどなので、割と慌てて逃げ出すというか、それが逆に可愛かったですね(笑)」

●人に慣れていない!?(笑)

「そう、人に慣れていないからその反応がすごく可愛くて、慌てて逃げ出したりして、逃げられるのは嫌なんですけれど、でもそれはそれで可愛かった」

●日本の海の良さって改めて鍵井さんから見てどんなところにありますか? 

「これ、どのカメラマンに聞いても同じだと思うんですけれど、黒潮とか親潮とか色んな海流が混ざり合っている場所なので、色んな海流の影響で生息している生き物も違うし、ほかの国では感じられないぐらいのバリエーションは日本の海にはありますよね。だって考えてもみてください。僕、今年3月に北海道の流氷ダイビングに行ったって言ったじゃないですか。その翌日には僕、沖縄に飛んでザトウクジラと一緒に泳いでいましたから、やばくないですか!?」

●ええ!? すごいですね!(笑)

「だから、日本すごいなと思って」

●また海の状況も全く違いますよね?

「ね! でも氷の下であれ、クジラであれ、計り知れない感動を与えていただけるので、ありがたいですね、ありがたい仕事!(笑)」

●鍵井さんにとって天職ですね!

「どうでしょう・・・まぁきっと適職ですね」

海は平等!

写真協力:鍵井靖章

※海の中で撮影していて、いちばん嬉しい瞬間はどんな時ですか?

「嬉しい瞬間は・・・ちょっとカメラマンっぽいこと言っていいですか?」

●はい! 

「僕、別に自分のために写真は撮っていないので、誰かに見ていただけるっていうことを前提に撮っているっていうか、このシーンを撮影したらどんな人に届くかなって思いながら撮影しているのですよ。だからやっぱりみんなの気持ちに届いてくれそうなシーンに出会ったり、そういうのが撮れたりした時はやっぱり嬉しいかな」

●ただ自然が相手ですから、相手は生き物ですし、なかなか思い通りにいかないことも多いんじゃないですか? 

「そうですね。でも長年やっているから割と折り合いというか、会えなかったとしても、今僕は会えるタイミングじゃなかったんだ、まだその役割じゃなかったんだと思う時もあるし、かと思えば、とてもたくさん貴重な生き物に出会える時もあるし、色々、海は平等平等(笑)」

●ベスト・ショットを収める極意っていうのは? 

「あんまり無理しないことじゃないですか。僕お魚が逃げてもあんまり追っかけないし、あんまりお魚にストレスを与える撮影はしたくないし。あとやっぱりちゃんと自分の命を守りながら撮影したらいいんじゃないかな、海から帰ってくることが大前提でね」

●生き物の生態とかもちゃんと勉強していないと、いい写真は撮れないのかなとも思うんですけれど・・・。

「僕あんまり詳しくないんですよ、生き物の生態」

●あれ? そうなんですか? 

「もちろん一般の方よりは知っているけれど、僕どちらかというと海の中で、色とかデザインとか、そっち系で見ちゃっている人間なので・・・そうなんですよ、ちょっと厄介なんですよ(笑)」

●だから鍵井さんの写真はパーッと明るい色鮮やかな感じで、気持ちがいいんですね! 

「なんかやっぱり僕の写真を知ってくれている人は、鍵井さんはそんなに生態に興味がないからこの写真が撮れるんですよ、っていう言い方をする人もいるし・・・“あ、はい”って思いながら聞いているんですけれどね(笑)」

●鍵井さんならではの、こだわりはどんなところなんですか?

「コロナになってみんな疲れているし、僕も疲れているし、それは気が付いていないような傷が付いているような・・・何かのタイミングで自分ってやっぱり疲れているんだなって思う時もあるし、今は何か日々のSNSの発信もそうかもしれないし・・・今度の写真展もそうかもしれないけれど、今日本に生きていて疲れを感じている人に自然の持っている癒しとか、写真という芸術、エンターテイメント、分からないけれど、そういうものが持っている力で皆さんに何か違う、もう少し優しい感情を持ってもらえればいいかなとか思ったりするかな」

心が優しくなれる写真展

※現在、外苑前の「Nine Gallery」で写真展を開催しているそうですが、どんな写真展ですか?

「ここの写真展のお話をいただいた時に、やりたいなって思ったのが疲れている人が逃げ込める都会のオアシスみたいな場所を作ってみたいと思って。自分の作品がすごいでしょ! 自然がすごいでしょ! っていうような写真展ではなくて、そこに来てくれた人がほんのひと時でも、別に全ての写真の前じゃなくて、ただ1枚の写真の前でもいいから、その前に来た瞬間にふと心が優しくなれるというか、ほどけるような気持ちになれる展示会を作りたいなと思ってやっているのが今のそれです」

●都会ど真ん中ですよね、外苑前は。そこにいながら自然を体感できるっていうのは素晴らしい機会だなと思うんですけれども、別の写真展ももうすぐ開催されるんですよね?

「そうなんですよ。銀座でもうひとつ『Blue+(ブルー・プラス)』っていう写真展をやるんですよ。写真を撮るダイバーさんってすごい多いんですよ。で、僕が先頭に立って、写真を撮るダイバーさんを100何名集めて、みんなで写真展しようって音頭を取ってやっている写真展を富士フォトギャラリー銀座で開催します」

●具体的にどんな写真になるんですか? 

「今回で6回目か7回目なんですけれど、今回は趣向を変えて、1枚の写真を上下左右反転させて、ちょっと万華鏡のような世界を作って、100何点を会場にわーっと並べて、ちょっとおかしな写真展です」

●へぇ〜! 素敵ですね! 万華鏡、ちょっと想像つかない世界なので興味深いです! 改めて鍵井さんの海への想いを聞かせていただけますか? 

「海への想いですか!?」

●ちょっと壮大になっちゃいますけど(笑)

「海、いいね! ダイビングって割と敷居が高いじゃないですか、ライセンスを取ったりしなくちゃいけないし・・・もちろんダイビングをされるのはいいと思うけれど、シュノーケリングとかあるじゃないですか、されますか?」

●はい! シュノーケリングはよくします! 

「シュノーケリングも海の魅力を感じることが十二分にできるので、まぁ海水浴は海水浴でいいけれど、ちょっとマスクとフィンを付けて、お魚の姿を探してみたりするのはいいんじゃないかなと思います」

●潜りながら水中カメラとかで写真を撮っている方も多いと思うんですけれども、私たちが水中カメラで撮影する時のコツとかがあれば、是非教えてください。

「わーっと(海に)入っていっても魚は逃げていくから、ちょっと待っていたら、次は魚のほうから寄ってきてくれるので、自分の思いだけで写真は撮れないですよね、自然の中では。だから海の中に入っていって写真を撮ろうと思う前に、ちょっとだけそこに馴染んでいたら、次は魚のほうから挨拶してきてくれるので、そういうのがいいタイミングじゃないかなと思います」

●では最後に鍵井さんにとって海とは?

「仕事場かな(笑)・・・まだ分からない、あまりにも身近すぎて。僕がもう引退間近になったら何か違う感情になるかもしれないけれど、今は海にどっぷり浸かっているし、あるのが当然だし、まだ分からない。もちろん大切なものには変わりはないし、愛おしいものでもあるし、はい」

☆この他の鍵井靖章さんのトークもご覧下さい


INFORMATION

青い庭

 現在、鍵井さんの写真展が外苑前の「Nine Gallery」で開催されています。
「青い庭」と題されたこの写真展は、都会の中の癒しの空間をイメージし、
およそ25点の新作が展示されているそうですよ。開催は7月11日まで。
期間中は、毎日夜7時から鍵井さんのギャラリートークが予定されています。
 詳しくは「Nine Gallery」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「Nine Gallery」のオフィシャルサイト:https://ninegallery.com/exhibition/1089

Blue+(ブルー・プラス)

 そして7月9日からは写真展「Blue+(ブルー・プラス)」が銀座の富士フォトギャラリーで開催される予定です。ダイバー100数名のかたが撮った、万華鏡のような作品が展示されるそうです。開催は7月15日まで。
 詳しくは富士フォトギャラリーのサイトを見てください。

◎富士フォトギャラリーHP:http://www.prolab-create.jp/gallery/ginza/

新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第3弾! 草ストローに注目!〜ひとりひとりがちょこっとできるエコな選択〜

2021/6/27 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、東京農業大学の学生で、ベトナムから草ストローを輸入し、販売する会社を起こした「大久保夏斗(おおくぼ・なつと)」さんです。

 「SDGs」は、「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。地球の資源を大切にしながら経済活動をしていくための約束で2030年までに達成しようという世界共通の目標=ゴールが全部で17設定されています。

 今週は17あるゴールの中から、主にゴール12の「つくる責任 つかう責任」、そしてゴール1の「貧困をなくそう」について。

 去年「HAYAMI」という会社を起こした大久保さんに、草ストローの普及活動を行なう思いなどうかがいます。

☆写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI
大久保夏斗さん

運命のいたずら!? 草ストローとの出会い

 大久保さんが草ストローを販売するようになったいきさつが、ミラクルなんです。

 高校生の頃にSNSで、ウミガメの鼻にストローが刺さった映像を見た大久保さんは、ショックを受け、環境のために何か自分にできることはないか、探していたそうです。そんな中、世界をバックパッキングで旅をしていたお兄さん、迅太(はやた)さんが、たまたま飛行機の隣の席だったベトナムの方から、ベトナムには草で作ったストローがあると教えてもらい、そのことを、帰国した際に、弟の夏斗さんに伝えます。

 東京農業大学の国際農業開発学科で学んでいる夏斗さんは、海洋プラスチックゴミの削減だけでなく、発展途上国の農業支援にもつながると考え、ベトナムの草ストローを日本に広めることを決意、会社を起業します。

 メンバーは大久保迅太さん、夏斗さん兄弟と、草ストローの存在を教えてくれたベトナム人のミンさんの3人。実はミンさんは2年間、日本に留学していたんです。そして去年の5月に、合同会社「HAYAMI」を創業し、草ストローの普及に邁進しています。

 “飛行機の座席がたまたま隣りだった”ことが、ミラクルを生んだ、まさに運命の出会いだったんですね。もしかしたら、神様が環境問題に関心の高い若者を引き合わせた、と言っていいかもしれませんね。

左から大久保迅太さん、ミンさん
左から大久保迅太さん、ミンさん

草ストローの3つの特徴

※それでは大久保夏斗さんにお話をうかがっていきましょう。プラスチック・ストローの代替品になる草ストロー、その特徴を教えてください。

「特徴としては3つあるんです。1つ目は環境保護。脱プラスチックの観点からもプラスチック・ストローではない草ストローを使うことで、環境保護に繋がっているだけでなく、完全生分解性、無農薬、無添加っていう特徴もあるので、使用後にゴミ削減のために、資源として活用するっていう特徴もあるかなと思っています。

 で、2つ目にベトナムの農村、ホーチミンという都市から離れた農村で栽培されているので、ベトナムの農村地帯の雇用も創出していて、発展途上国支援にも繋がっているかなという風に思っております。

 3つ目には、やはり紙ストローより耐久性に優れていて、紙ストローは長時間使用できなかったり、口に張り付いてしまうっていう感触があると思うんですけど、そういったことはなく、長時間使用していただけるところが草ストローの大きな特徴かなと思います」

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

●見た目はどんな感じなんですか? 

「見た目は、本当に草の茎そのものです。何か草と聞くと葉っぱを丸めているイメージを持つ方が多いんですけど、草の茎をそのまま使っています。緑色で、自然のものなので多少、色や大きさにばらつきがあるんですけど、本当に自然本来の、草の茎そのままを使った製品になっています」

●じゃあ草ストローの素材は、茎を持つ植物っていうことなんですか? 

「そうですね。植物名でいうと、カヤツリグサ科のレピロニアという植物なんですけど、イネ科に近い植物ですね」

●そのレピロニアっていうのは、ベトナムで栽培されている植物なんですね? 

「そうですね」

●じゃあ珍しい植物ではないっていう感じですね。

「主に東南アジアの熱帯地域で栽培されていますね」

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

●それが草ストローになるまでにはどんな工程があるんですか? 

「本当に草の茎をそのまま利用しているので、工程としてはシンプルです。洗浄して、あとはカットして殺菌してみたいな、本当にシンプルな過程で作ることができるので、そこで大型の機械を利用してCO2排出みたいなこともない製品です」

●製品化するまでに何か大変だったこととかありますか?

「やはりベトナムと日本の衛生基準っていうのはどうしても異なるものがあったので、現地に向けてゼロから衛生マニュアルを作成してお送りしたり、あとは日本での残留農薬検査だったり、衛生基準の食品分析センターというところで衛生の検査を行ないました」

草ストローを資源にする!?

※草ストローは実際、どれくらいの耐久性がありますか?

「基本的には紙ストローよりは耐久性があります。草の茎を乾燥させているので、初めは潰すとパリッと割れてしまうこともあるんですけど、植物の茎なので(飲み物を)飲んでいるうちに茎が水分を含んで柔らかくなって、潰しても割れにくくなる、耐久性が増すといったような特徴があるんですね。本当にふやけたりすることはないので、長時間使用していただくことは可能です」

●洗えば何回でも使えるってことですか? 

「無添加なので基本的に使い捨てを推奨しています。防腐剤などは添加していないので、植物の劣化だったり衛生面の観点から使い捨てを推奨して販売しています」

●なるほど〜。廃棄処分する時は元々は植物ですから土に返したりとかするんですか? 

「現在、導入店舗から具体的な回収方法っていうのはまだ構築できていないんですけど、今後はその使用後のストローを資源として活用するために、家畜の飼料であるとか、農家の堆肥として活用できないかっていうことは現在検討しています」

●確かに草ストローを砕いていくと家畜のエサになったりもしそうですよね。

「そうですね 。やはり一度、人間の口に付けたものなので、それを動物に与えても大丈夫かっていうところだったり、あとはストローでコーラを飲んだものと、コーヒーを飲んだものを一緒にして、餌にしちゃっても動物に影響がないかっていうところは、ちゃんと考えないといけないなと思っています」

●確かに環境にもいいですけど、ベトナムで栽培したものを適正な価格で輸入したら、栽培農家さんの支援にもなりますね。実際ベトナムの皆さんからの反響とかはありますか?

「やはりコロナ禍で雇用だったり、経済が停滞している中で始めた事業だったので、日本で草ストローを売ることができて、助けられているっていう風には言ってもらえて、すごく嬉しいなと思います」

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

草ストロー、評判は上々!

※大久保さんは草ストローを広めるために、学業の合間をぬって、主にメールや電話で営業活動を行なっているそうですが、いま全国で何店舗くらいのお店が草ストローを使っていますか?

「全国で現在、約160店舗で使っていただいております」

●あ、そうなんですね! 千葉でも使っているところはありますか? 

「千葉も何店舗かありまして、木更津にある”KURKKUFIELDS(クルックフィールズ)”さんだったり、佐倉市にある”笑みごはん”さんだったり、4店舗〜5店舗ほど、ホームページにも導入店舗リストっていう風にして記載させていただいてるんですけど、導入していただいております」

●じわじわと広がっている状況なんですね! お客さんの評判を聞かれることはありますか? 

「飲食店の方から言っていただける言葉でいうと、環境問題にお客さんが興味を持ってくれて、これ何のストロー? っていう質問をしてくれたっていう声だったり、珍しい見た目のストローでコミュニケーションのツールに繋がったであったりとか。あとは見た目もすごく自然で、紙ストローよりも長時間使えるっていうことで、環境に優しいっていうことがダイレクトに伝わって、いい商品だなという風に言っていただきました」

●小さなお子さんはお家でもストローを使う機会は多いですよね。

「そうですね。高齢者の方だったり小さなお子さんは、やっぱりストローを使う機会がどうしてもあると思うので、ストローを使わないっていう選択肢ももちろんありだと思うんですけど、それでも使っていただく必要があるお客様には、ぜひ草ストローを利用して欲しいなと思います」

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

<草ストローを使ってみた>

 実際に草ストローを使った、この番組のスタッフの感想としては、第一印象は見た目も手触りも素朴な感じで、これはいいな! と思ったそうです。植物の、空洞になった茎なので、色味も太さも微妙に異なりますが、ストローとしての機能は申し分ないとのこと。水分を含むと柔らかくなり、耐久性が増すことも確認。

 ただし、乾燥した状態のまま、指ではさんで押すと、パキッと割れてしまうので要注意! 特に幼児はストローを噛んでしまうので、事前に必ず水分を含ませ、柔らかくした草ストローを使うようにしたほうがいいと言ってました。草ストローの箱に使用上の注意が書いてありますので、事前に確認してから使ってくださいね。

サボテンの皮でサイフ!?

※草ストローのほかに何か新商品はありますか?

「今年の3月からサボテンの皮で作ったヴィーガンレザーのサイフの販売を開始しました」

●サボテンの皮からサイフができるんですか? ちょっと想像がつかないんですけれども、どういう風にどうなったらサイフになるんですか? 

「メキシコで有機栽培されているサボテンを使って、そのサボテンを皮にする技術を持ったメーカーがメキシコにあって、それを日本に輸入して、その皮から日本の長年続いている皮職人さんの手でサイフにしていただくっていったような工程で販売しています」

●サボテンで皮を作る技術やメーカーは、どういうところから情報を得るんですか? 

「インターネットなどで、サボテンから皮を作っているっていうのは、以前から知っていたんですけれども、日本にはなかなか普及していないっていうのもあって、ぜひサステナブルな生活の中の選択肢のひとつとして、日本に普及させたいなっていう風に思って販売を開始しました」

●サボテンの皮を使うことで、どうやってサステナブルになっていくわけですか? 

「まず、サボテンであれば水の量も少ないですし、そこまで豊かな土地でなくても育つっていうところがあるんですね。そこから本来、動物の皮で作られているものを植物性のもので作ることで、動物愛護だったり。
 あとは動物性の皮を作る時に、家畜もメタンガスを出していたり、その動物たちの飼料を育てる時に農業を大規模に行なわないといけないので、そういった観点から、サボテンから作ったレザーのサイフを長く使っていただくことで、環境にもいい影響があるのかなという風に思います」

●見た目はどんなおサイフなんですか?

「本当に皮は動物性の皮と同じような手触りで、耐久性もそこまで差異はないです。無駄のないシンプルなデザインで、今現在は黒の一色のみで男女両方に利用していただけるような形になっています」

ミッションは、エコな選択を提供すること

※それでは最後に大久保さんにうかがいます。去年、先行して始めた草ストローの輸入販売、今後はどのような展開を考えていますか?

「そうですね。今いちばん目指しているのは、やはり循環システムの構築ですね。草ストローを使ったあとに、ただゴミにするのではなく、それを資源として活用してゴミを出さないシステムを構築したいなと思っています。ただそこには、どうやってお店から草ストローを回収するのかっていう課題はまだまだあるので、そこもしっかり考えて、導入店舗を増やしつつやっていけたらなと思っています」

●大久保さんが思い描く理想の未来っていうのはどんな未来ですか?

「我々の活動ではひとつミッションのようなものを掲げています。それは”ひとりひとりがちょこっとできるエコな選択を提供し続けること”で、誰かひとりが100環境に優しいことをするんではなくて、ひとりひとりが少しずつ環境に優しいエコな選択をすることで、大きな環境問題を解決できるような未来になったらいいなと思っています」 


INFORMATION

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

 「HAYAMI」で輸入販売している草ストローは、完全生分解性・無農薬・無添加なので環境だけでなく人間にも優しく、日本の衛生検査も通過しています。

 販売価格は、20センチ20本入りで一箱400円、13センチ20本入りで一箱280円。「HAYAMI」のサイトから購入できます。ご家庭はもちろん、飲食店などを営まれているかた、プラスチックゴミを減らすために、ぜひ一度、草ストローを試してください。

 詳しくは「HAYAMI」のオフィシャルサイトをご覧ください。草ストローを導入している店舗のリストも載っていますよ。

◎「HAYAMI」オフィシャルサイト:https://www.hayamigrassstraw.com/

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

 大久保さんが草ストローとは別にこの3月から販売を開始した、サボテンの皮を使ったおサイフは「Re:nne(リンネ)」というブランドの新商品です。名前の由来は「輪廻転生(りんねてんしょう)」の「輪廻」で、「生まれ変わり続ける」がコンセプトになっています。

 動物の皮を使わずに作った製品で特に植物系の素材で作った「ヴィーガンレザー」は、サステナブルで動物愛護にもつながるエコ素材として、いまとても注目されています。原料は、木の皮のほか、キノコやパイナップルの葉っぱ、りんごの皮などでサボテンの皮を使っているのはとても珍しいそうです。

 「Re:nne」ではデザイン性、機能性、そしてサステナビリティを重視して、おサイフを開発。メキシコで製造されたサボテンレザーを輸入し、日本の熟練した皮職人さんがひとつひとつ丁寧に仕上げ、現在は黒の長ザイフと、ふたつ折りサイフの2種類を販売しています。

 詳しくは「Re:nne」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「Re:nne」のオフィシャルサイト:https://rennetokyo.thebase.in

新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第2弾!〜SDGsをお笑いにのせて、わかりやすく〜

2021/6/20 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、吉本興業所属の芸人さん「黒ラブ教授」です。

 「SDGs」とは、「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。地球の資源を大切にしながら経済活動をしていくための約束で2015年の国連サミットで採択され、2030年までに達成しようという世界共通の目標=ゴールが全部で17設定されています。その範囲は飢餓や貧困、環境問題、経済成長、そしてジェンダーに関することまで、いろいろな課題が入っています。

 きょうお話をうかがう黒ラブ教授は、東京大学大学院の研究員のほか、理系の大学講師、そして国立科学博物館認定のサイエンス・コミュニケーターとしても活躍していて、理系や科学系、そしてSDGsをネタにしたライヴで大人気の芸人さんなんです。いったいどんな活動をされているのでしょうか。後ほど、吉本興業のSDGsへの取り組みも含め、お話いただきます。

☆写真協力:黒ラブ教授

写真協力:黒ラブ教授

「世界をどんどんグッドにしたい!」

※それでは黒ラブ教授にお話をうかがっていきましょう。吉本興業のSDGsサイトのトップに、教授の講演会情報が載っていました。まずは、吉本興業がSDGsに取り組むようになったのはなにかきっかけがあったのでしょうか。

「もともと吉本興業って、“住みます芸人”とか、地域活性で都道府県に一芸人を置いて、色々と地域を盛り上げるみたいなことをやっていたんですよね。SDGsは基本的に地域活性の意味もあるので、当初からSDGsに関わってきていましたね。関わってきたというか、やっていたら(あとから)SDGsがきたみたいな感じですかね。

  それで『ジャパンSDGsアワード』っていう国の賞ですか、あれで特別賞をいただいたりとか、そうやって吉本興業はSDGsに関わってきているんですけど、黒ラブ教授自体はまた全然違うところからSDGsに関わってきていて」

●どういうことですか? 

「M1グランプリってあるじゃないですか、あれってお笑いで優勝するやつですよね。で、『サイエンスアゴラ』っていうイベントがあって、これは科学を分かりやすく伝える大会なんですね。そこで優勝させてもらったんです。

 僕がやっていることが、すごく難しい大学の科学を分かりやすく一般の人たちに伝えるみたいな芸風なので、それで優勝したので、国の組織から、SDGsって結構難しい内容なので、SDGsを伝えるのをやってくれないかって言われて、それならやりますって言って、それで僕の方は始まったんですよね、全然違うところから。
 で、たまたま吉本興業に所属しているので、“やろうよ! やろうよ!”ってなって、今に至るという、すごくわけの分からないストーリーでございました(笑)」

●普及活動っていうと黒ラブ教授は講演活動を主にされているっていうことですか? 

「そうですね。SDGsを笑って学べるようなイベントを今作っているんですけど、もともと科学のお笑いライブをやっていたんです。それよりも今SDGsの方が多く呼ばれるようになっているかもしれないですね。そのぐらいSDGsがメインになってきてはいますね」

●SDGsとお笑いってなかなか交わることのない2つの要素だと思うんですけれども、どうやって組み合わせているんですか? 

「SDGsって何の略か知ってる? って言った時に、結構多くの人が間違えていたので、間違えた例を紹介しますとか言いながら、例えば“スマブラ、ドラクエ、ガンダム、すげー、いや違うその略じゃないよ! SDGsってそういう略じゃないよ!”とか、

 “SDGsって何の略? そろそろお昼、どうする、ガストか、サイゼリア”とか、“いやいや女子高生の皆さんですか? 違う違う、世界の話だからね!”とか言って(笑)、

 そういう色んなところから、“サンマ、ダイコン、50%オフなら、即買い!”とか“よく言われるよね〜! 奥さんに言われたんだろうね〜”みたいな(笑)、“違うんだって! SDGsっていうのは〜”みたいな感じで、ボケとお笑いを混ぜながらしていて。

 その中でいいのを発見したんですよ、これは笑いではないですけどね。“SDGsって何の略? 世界をどんどんグッドにしたい!”、世界のS、どんどんのD、グッドがGで、したいがSなのでSDGs。“世界をどんどんグッドにしたい!”ってすごくいい、本物より分かりやすくないですか?」 

●分かりやすいです! 

「これはね、あ! と思っちゃいました(笑)」

写真協力:黒ラブ教授

誰でもできるSDGs。

※黒ラブ教授はSDGsをネタに講演会も数多く行なっていらっしゃいますが、なにか気をつけているってことありますか?

「誰でもSDGsって聞いちゃうとわけ分からなくなっちゃうので、これ誰でもできることだよ。例えば環境に気を使っているメーカーのお菓子を買うとか、そういう小っちゃなところから実はできるんだよとか。そこが実は相当な攻撃能力じゃないですけど、地球を動かすパワーになっていると思ってます。

 消費者が今SDGsに関していちばんパワーを持つ時代になってきていると思うので、そこら辺をお伝えすることと、あといかに、僕が環境系のことを喋っていると、なんか意識高い系の方なんだなぁみたいな、全然私と違うんだわと思われがちなので・・・僕がSDGsの講演とか逆に見ると、講演している方をそういう風に思えてしまうので、そうじゃないよみたいなことを伝えるのがメインかもしれませんね。自分が意識高いとかそういうような人間じゃないよ的な感じでやっていますね」

●みんなに関わってくることですよね。

「そうですね。みんなに関わってきて、みんながやらないと実は意味がないので。これまでの環境系の教育というか、運動ってどうしても意識高い系が出ちゃいますよね(笑)。なんかちょっと関係ないかなとか、そうやって随分、多分1987年ぐらいからサステイナブルっていう言葉は、持続可能なっていう言葉は作られているのにも関わらず、どんどん地球がやばいことになってきて、異常気象を起こしたり、結構やばいことになっているじゃないですか。でも環境活動は結構やっていたはずなんですよね、皆さん。やっている方はですけどね。

 それだとやっぱり進まないので、いかに全然普通というか、僕とかもそんな意識は高くないので、そういう人が実はやれるんだよとか。そういうところを目指したいので、わざと講演中、これよくないんですけど、ペットボトルを持っていきます、マイボトルじゃなくて(笑)。こいつ全然できてないじゃん! こいつ大丈夫か? って思わせるような、俺がやったほうがいいんじゃないか? というような感じに思わせたほうが多分やれると思う、印象深くなりますしね。

 SDGs講演っていうと真面目な話を今から聞かされるんだろうなって、思ってないかもしれないですけど、ちょっとあると思うんですよね。前ふりでインパクトや面白さも与えながら、こいつ全然ダメだな、みたいな(笑)結構意図的にやっていて。そんな人でも少しこういうこともできるんだ、みたいな。SDGsを全部守れって言ったらできなくなっちゃいますので、一部でもいいから、まずはそういうようなところを伝えられればいいなって思っていますね」

写真協力:黒ラブ教授

<「SDGs」の前身「MDGs」とは>

 さて、今回、黒ラブ教授から教えてもらったことがあります。それは「MDGs」。この「MDGs」は「MILLENNIUM DEVELOPMENT GORLS(ミレニアム・デベロップメント・ゴールズ)」の略で「ミレニアム開発目標」と呼ばれています。「SDGs」の前に定められた目標で、2000年に国連で採択され、2015年までに8つの目標を達成しようというものでした。

 その目標のなかで、貧困の撲滅や初等教育の普及などには大きな成果があったとされていますが、解決できなかった課題や、新たな環境問題などに対応するため、「SDGs」が誕生し、17の目標が設定されたということなんです。

 「MDGs」と「SDGs」の違いは、目標の数だけではありません。前身の「MDGs」は国連や国の政府が取り組みの主体だったのに対し、「SDGs」は国や自治体に加え、民間企業や一般の人々も取り組むことになっています。また、目的は「MDGs」が発展途上国の課題を解決することでしたが、「SDGs」は先進国の課題を解決することも含まれています。

 「SDGs」の17の目標=ゴールは2030年までに達成することになっています。私たちひとりひとりに、何ができるのか、「黒ラブ教授」もおっしゃっていましたが、お菓子を買うにしても環境のことを考えて作っているメーカーのお菓子を選ぶなど、消費者に出来ることってたくさんあるのではないでしょうか。

いかに続けるのかが、いちばん大事

※黒ラブ教授はSDGsの講演会で、こんなことを感じているそうです。

「講演をやりながらお客様からも学べるので。よく肥料を土に返すみたいな、生ゴミを肥料に返してみたいなのあるじゃないですか。そういうキットを売っていたりする地域があるんですけど、意識高い系の人ですら続かないんですって、大変で。それだとやっぱり一過性のものになって、SDGsムーブメント! みたいになるんだなっていうのを勉強して、やっぱりいかに続けるのかっていうのがいちばん。

 意識が高い人でもそういう行動が続かない人もいるんだから、そこをどうにか変えたいなと思ったりして、色々そういうことも言ったりしながら。結構裏のところをみんな言わないですよね、やっぱり恥ずかしいっていうか。 そういうありのままの声を聞けるのもやっぱり芸人の特質だろうなと、そういうところがありますね」

●17の目標の中で黒ラブ教授がいちばん気になっている目標っていうのはありますか? 

「これはですね〜何にしようかな(笑)。まぁ自分も貧困ちゃ貧困なので〜と思ったんですけど(笑)、いちばん大事なのは13番の気候だと思うんですよね。気候がダメになったら家も壊れたりとか、森も壊れたりとか、結構すごい力なので、そしたら貧困にもなりますし、台風とか異常気象とかで教育もできなくなる場合もありますし、なのでやっぱり13番、芸人としてはちょっとつまんない答えですね〜(笑)。

 なので! 気候をなおすには、多分住み続けられる街づくりをっていう11番があるんですけど。もともと僕たちは住み続けられちゃっているんですけど、そういう意味じゃないですけどね。すごく長い目で見た住み続けられる街づくりをなんですけど、それをしっかりできると多分気候もよくなると思うので、この住み続けられる街づくり、例えば小さな環境で世の中を回すというか地産地消というか、そういうようなところができると多分環境も汚さなくなると思うので、11番にします!」

写真協力:黒ラブ教授

難しい内容を分かりやすく

※教授は東京大学大学院の研究員、理系の大学講師、そして国立科学博物館認定のサイエンス・コミュニケーターの顔もありますが、なぜ芸人さんになろうと思ったんですか?

「昔から笑わせていた天才的な少年だったんですよ、まさかこんなに全然売れないとは思いませんでしたけど(笑)。じゃなくて、本当に昔から笑わせていたのは事実で、それでM1グランプリに行ったんですよね。その時まだ素人だったんですけど、たまたま新聞に載ったりして、やっぱりお笑いってすごいなって思ってやっていたんです。そのあと大学に行った時に、大学の授業すごくつまんなかったんですよ。大学の授業を見たら、すごくつまんなくさせる技術がてんこ盛りだったんですよね(笑)。

 ある意味すごく才能的な授業で、どんなに興味を持っていても眠くなるっていう魔法の性質があるんですよ、みんながみんなじゃないですけどね。で、お笑いもやっていたんで、いかに引きつけるか、笑わせるか、楽しくさせるかっていう技術も片一方で学んでいたので、もしかして難しい内容でも、こっちの面白い技術を入れればできるんじゃないかっていうのが、今の黒ラブ教授なんですよね。だからSDGsも実は難しい内容を話してるんですけど、おもしろおかしく簡単に見させるというか」

●東京大学の大学院では研究もされているっていうことですけど、それはどんな? 

「黒ラブ教授の活動が難しいものをどう分かりやすく伝えるかっていうことなんですけど、これって科学コミュニケーションっていう学問なんですね。研究は、黒ラブ教授自身をというか(笑)、それを論文にするというか、いかにみんなに伝えるか、他の方にもそのノウハウを伝えて、難しい内容でもいかに伝えるかとか。

 結構、科学コミュニケーターっていっぱいいるんですけど、多くが難しいものをわかりやすく伝えるには難しいものを省いちゃって、中身のない、へ〜だから何? っていうような説明になっちゃっていて、魅力がなくなっちゃうんですよね。その難しさに魅力があったりするところもあって、そこを加えながら、僕の場合、難しいことをうまく入れながらも分かりやすくするように努力するんですけど」

●そのバランスってちょっと難しそうですね? 

「もう本当それもさじ加減で、よく失敗もしますね。失敗するんかい!(笑)そんな感じですけど」

●サイエンスコミュニケーターっていう肩書きもありまして、すごいですよね。これも認定されるものですよね。

「そうなんですよ。これ国立科学博物館で、超勉強するんですよ(笑)。すごく時間がかかるんですよ。ずっと試験ばっかりあって、結構な難易度で、選りすぐりの人たちが集まってくるので」

●黒ラブ教授がこのサイエンスコミュニケーターってことは、すごいことなんですね。

「ちょっと自慢しておきました、ありがとうございます! 売れない芸人だからとりあえずそういうこと言っとかないと(笑)」

写真協力:黒ラブ教授

理系が地球を助ける!?

※最後に世界はまだまだコロナ禍のなかにいますが、2030年までにSDGsの17の目標を達成するためには、どんなことが大切だと思いますか。

「そうですね。職とかも失っている方が多くなってきちゃっていると思うので、まずはウイルスを抑えて、社会の混乱を減らすというか、完全にどうなるか分からないですけど、それがないと、余裕がないままだと人間ってやっぱり環境のことなんて気にしてられないですよね、正直言って。もう自分の環境が悪くなってきちゃっているので、まずはウイルスを抑える。まずそこが始まんないと多分SDGsが、今回コロナ禍になってプラスチックのゴミがすごく増えちゃったんですよね、ギュイーンって上がったんですよ」

●コロナ禍でどうしてプラスチックが? 

「梱包材が増えたじゃないですか、それですごいらしいんですよ、今、ゴミの業界に聞いたら。まずはそこら辺をもとに、巻き戻っているところが多いので。意外にロックダウンしても気候が少し直っただけで、やっぱり悪かったんですよね。
 少しだけしか直っていないというのは、ロックダウンしても駄目ってことは、じゃあどうするんだって話ですけど。相当社会の仕組みを変えなきゃいけないなっていうようなレベルになっているんですけど、ちょっとそう思いましたね」

●黒ラブ教授さんが思い描く未来像があれば是非教えてください。

「やばい、今のところ芸人なのに真面目なことしか喋ってない! やばいこれはやばいですよ!(笑)思い描く未来ですよね。やっぱり科学コミュニケーターで科学をやっている人間なので、科学っていい面もあるけども、やっぱり環境を壊した張本人のひとつでもあるんですよね、技術っていうのは。
 なのでやっぱり理系をもっと増やして、いい意味の理系の技術が少しでも上がって、今度は地球を助ける技術の発展を促したいので、そういう理系が増えればいいかなっていう、そういう未来を描いている真面目な黒ラブ教授でございます」


INFORMATION

 「黒ラブ教授」の活動についてはオフィシャルブログやTwitterをぜひご覧ください。
吉本興業が行なっているSDGsの活動にもご注目を!

◎「黒ラブ教授」オフィシャルブログHP:https://kurolovekyouzyu.web.fc2.com

◎吉本興業が行なっているSDGsの活動のHP:https://www.yoshimoto.co.jp/sdgs/

新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第1弾!〜ビニール傘をアップサイクル「プラスティシティ」〜

2021/6/13 UP!

 今週から番組放送30年特別企画として新シリーズがスタートします。シリーズ名は「SDGs〜私たちの未来」。この番組ではおもに「環境」や「自然」に関する項目にしぼって、SDGsについて、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。そして今月6月は「環境月間」ということで、3週にわたって新シリーズをお届けします。

 第1弾の今週は「SDGs」をひもときつつ、雨のシーズンということで、廃棄されるビニール傘を、トートバッグなどの製品にアップサイクルして販売するブランド「プラスティシティ」にフォーカス! ファウンダーでデザイナーの「齊藤明希(さいとう・あき)」さんにお話をうかがいます。

☆写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

齊藤明希さん

<SDGsとは?>

 きょうのゲスト、齊藤さんはバッグの専門学校在学中に「プラスティシティ」を設立、現在はトートバッグをメインにブランド展開、おもに自社のオンラインストアで販売しています。齊藤さんにお話をうかがう前に「SDGs」とはなにか、おさらいしておきましょう。

 SDGsは「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。

 私たちがこれからもこの星「地球」で暮らしていくために、世界共通の目標を作って、地球の資源を大切にしながら経済活動をしていこう、そのための約束がSDGsなんですね。

 2015年の国連サミットで採択され、2030年までに達成しようという目標=ゴールが全部で17設定されています。その範囲は飢餓や貧困、環境問題、経済成長、そしてジェンダーに関することまで、いろいろな課題が入っています。

 きょうはSDGsの、17設定されているゴールの中から「つくる責任 つかう責任」について考えていきましょう。

年間8000万本!?

●それでは齊藤さんにお話をうかがっていきましょう。ビニール傘のビニール部分をアップサイクルの素材に選んだのは、どうしてなんですか?

「もともとバッグの専門学校に入りたいって思ったのも、なるべく環境に優しい素材を使ってバッグを作ってみたいと思って専門学校に入ったんですね。だから何か素材をと思って、日頃から何が使えるかっていうのは探していて。東京の学校だったんですけど、通学している時にもよく雨の日には捨てられた傘を見ることも多かったですね。

 最初は例えばコルクとかも環境にいい素材だし、使えるかなって思ってちょっと試してみたり、ヴィーガン素材っていうのも市場に出始めてはいたので気になってはいたんですけど、そういうものを取り寄せて試すのがちょっとハードルが高く感じたっていうのもあったり、見たことある製品だったり、何かもうちょっと新しいものを探したいなとは思っていて。

 環境にいい素材って見る観点によってすごく意見が分かれるというか、難しいものだと思うので、どのみちゴミにされるものを再利用できるのが、いちばんのエコな素材なんじゃないかなっていう風に考え始めて、それから普段の生活で身近なところで何かないかなって探し始めました」

●国内で1年間に廃棄されるビニール傘がおよそ8000万本ということですけれども、それは齊藤さんはどのようにお考えですか?

「なんか想像つかない数だなって。私は最初こういう問題をテレビのニュースで知ったんですけど、でも8000万本って集まっているのを見たこともないし。ただブランドを始めて実際に回収した傘、3000枚のビニールが山積みにされているところを見た時に、私より背が高いくらい山積みにされていたんですけど、これでも3000枚なんだっていう、すごくそれは衝撃的ですよね」

写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

試行錯誤を経て開発した「グラス・レイン」

●ビニール傘のビニール部分はどうやって集めているんですか?

「ビニールの部分は、専門学校の時は本当にゴミを回収している方に直接“譲っていただいてもいいですか?”って聞きに行ったり、確実にゴミにされているっていうのが分かる傘を1本1本回収してましたね。

 道ばたで見つける傘や置いてある傘は、明らかにゴミに見えても、一応。所有権が分からないものなので勝手に取ってはいけないらしくて、なのでもう本当にゴミとして回収されたものだけを集めていたんですけど、ブランドになってからは、商業施設や鉄道会社さんのほうで回収された傘を大量に買い取っています」

●大体、ひと月でどれぐらい集まるものなんですか? 

「毎月集めているっていうわけではなくて、まとめて最初3000本分を一気に買い取って。だから定期的に回収するっていう感じですね」

●一般の方々からもビニール傘を集めているんですよね? 

「はい。数ヶ月前に始めた企画なんですけど、直接メッセージでお客様から、家にある傘を回収していただくことは可能ですか? っていう連絡がいくつかあったり、そういったこともあったので始めたプロジェクトです。1枚ビニール部分をある程度洗浄していただいて、ポストで投函していただいて、1枚につきオンラインストアで使える100ポイントと交換するっていうようなシステムになっています」

●どのくらい集まっていますか? 

「まだ100枚はいってないかなって感じなんですけど、でも徐々に集まってきて、今はトートバッグ1つ分ぐらいは集まっています」

●ビニール傘は、家にあるっていう方きっと多いと思います。

「気づいたら溜まっているっていう方がすごく多いので、どんどん送っていただきたいです!」

●廃棄されるビニール傘のビニールの部分を、独自の技術を使って新たな素材に生まれ変わらせて、「グラス・レイン」という風に名付けられましたけれども、そこに辿り着くまでも色々な試行錯誤があったんじゃないですか? 

「そうですね。最初は1枚のビニールで縫製をしてみたり、異素材と縫い合わせたり、色々試したんですけど、何をしてもやっぱりビニール傘のチープさから抜け出せなくて。

 いい素材と組み合わせてバッグを作っても、他の素材に頼っていたら、もはやビニール傘を使う意味がなくなってしまうって思って、そのビニール部分だけで、単体でもっと価値をあげないといけないなっていう風に考え始めて、そこからこのビニールだけで何ができるかっていうのを色々と実験し始めました。

 色々と塗ってみたりとか、のりを塗って何枚か重ねたりとか、どうやったらもうちょっと強度を上げて、見た目もよくするかっていうので、色々試行錯誤はしました」

*補足:齊藤さんは素材になるビニールの強度をあげるために、何枚か重ねていろいろ試したそうです。そして熱すれば硬くなる性質に気づき、アイロンで圧着すれば、接着剤を使わなくてもくっつくことを発見。そして独自の技術を施して、新たな素材「グラス・レイン」を開発されました。

写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

<傘をゴミにしないために>

 今週は新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第1弾! SDGsの17ある目標から「つくる責任 つかう責任」について。ということで、廃棄されるビニール傘をアップサイクルしているブランド「プラスティシティ」の取り組みをご紹介しています。

 さて、雨の季節、急に降られて、仕方なくビニール傘を買って家に帰ったことってありますよね。どのご家庭でも2〜3本をあるであろうビニール傘を一般家庭で廃棄する時は、多くの自治体では不燃ゴミとして回収しているようですが、持ち手の部分のプラスチック、金属の骨、そしてビニール部分があるので、とてもリサイクルしにくい、やっかいなゴミになってしまいます。

 では、傘をゴミにしないコツはないのでしょうか。

 まず、番組としてご提案したいのが、国産の良質な傘を購入して大事に使う。

 日本の、傘を作る技術は優れていますが、海外で生産された安い傘におされて国内のシェアは激減しているそうです。国産の傘を購入することで、傘を作っている会社や職人さんを守ることにもつながりますよね。

 そして、大事な傘がもし壊れたら、ホームセンターやショッピングモールにある修理屋さんで直してもらいましょう。愛着のある傘は修理して長く使いたいですよね。

 続いて、徐々に広がり始めている、傘のシェリングサービスを利用する。

 駅前、商業施設、コンビニなどにある傘スポットからレンタルし、使わなくなった傘は返却するシステムで、1日70円で借りられるとのこと。

 詳しくは「アイカサ」のサイトをチェック! https://www.i-kasa.com/

 そしてご家庭にある、いまは使わなくなった傘は捨てずにリユースしてもらう。

 地域によっては傘の貸し出しサービスを行なっているところもありますし、発展途上国の支援物資として受け入れている団体もありますので、そこに寄付するのはいかがでしょうか。

 そして、これは傘本体ではないんですが、雨の日に、百貨店やショッピングセンターなどの入り口に設置してある、濡れた傘を入れるビニール袋、これもゴミになっちゃいますよね。

 そこで提案したいのが、自分だけの傘カバー。

 くるくる丸めてコンパクトになるので持ち運びが苦にならないし、傘を収納して肩にかけたりできる、機能的な傘カバーが市販されています。一度チェックしてみてくださいね。

 傘をゴミにしない究極のコツは、やはり私たちの意識を変えること、ではないでしょうか。

 仕方なく買ってしまったビニール傘を処分するときには、齊藤さんのお話にもあった「プラスティシティ」の一般家庭向けリサイクル・プログラムをぜひご利用ください。ビニール部分1枚で100円分のポイントがつきます。ビニール傘からビニール部分を取り外す方法や、送り方などは「プラスティシティ」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎プラスティシティ:https://plasticity.co.jp/

写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

便利さが無駄を生む!?

●実は齊藤さんは3年間、イギリスの大学に留学されていたそうですよ。イギリスでの生活が今の活動に何か影響を与えたことってあるのでしょうか?

「大学にいた頃は何も考えていなかったというか(笑)、今関心あるものを当時は感心が特になかったりしたんですけど、後々、変わったかなって思うのは、東京からイギリスのロンドンではなくてちょっと田舎の方に行ったんですけど、すごく色んなことが不便に感じてましたね。

 日本ってその便利さが、例えば何かが不便だったなって思ったら、それに対してのソリューションが製品っていう形であることが多いと思うんですけど、イギリスはそうではなくて、何か不便だなって感じたことは自分なりに受け入れないといけなくて。

 その時はめんどくさいなとか、何でもうちょっと東京みたいに進んでないだろうって思っちゃったりとかしたんですけど、でも逆に(日本に)帰ってきて、こんなに便利じゃなくてもいいんじゃないかなって。その便利さが結局色々な無駄を出している要因でもあるので、帰ってきてからやっと気付かされたことだと今は思います」

●具体的にイギリスで不便だったことって、どんなことなんですか? 

「それこそビニール傘はそんなに売っていないし、雨が降ったら、イギリスはよく雨が降るし、1日でもすごく変化が多いので、別に雨に打たれてもいいし(笑)、何かそういったことがあったり。

 あと傘とかは関係なく、例えば自動販売機があまりなかった町で、お店がすごく早く閉まってしまう、そういうのに不便さを感じたんですけど、お店が開いてる時に行けばいいし、自分がその環境に合わせて行動すればいいだけであって、何もかも今欲しいからっていう風に考えなくてもいいのかなって思いました。 お店が閉まっている分、そこで働いている人たちは早く家に帰って家族と過ごせているんだなとか、そういったことを考え始めました」

なくなるのが目標のブランド!?

●今週は新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第1弾! SDGsの17ある目標のなかから「つくる責任 つかう責任」。

「プラスティシティ」のスローガンに「10年後はなくなるべきブランド」とありますが、これにはどんな思いがありますか?

「それは色々な思いがあるんですけど、私たちがこんなに簡単にビニールの素材が手に入ってしまうっていうのは、きっといいことじゃないし、10年後にはこんなに簡単に手に入らない素材であってほしい、それがブランドとしての目標かなって思います」

●このブランドを初めて何か意識の変化みたいなものってありました? 

「購入してくださった方のコメントとかを読んでいて、意識の変化っていうか分からないんですけど、気付かされたことは、こんなにも共感してくれている人が多いんだっていうこと。自分が関心があったり、気になっていたことが、こうやってブランドっていう形でローンチした時に、みんなも同じことを感じているんだっていう風に思ったことですね。

 あとはお客様の中で、SNSで投稿してくださった方で、私たちの製品ってもともと廃棄されている傘なので、どうしても取れない汚れだったりもあるんですけど、私はむしろそのサビの汚れがかっこよくデザインになるなって思って、それも取り入れたいと思っていて。

 それはすごくお客様によって反応が色々で、好む方もいれば、もうちょっと白いものがほしいっていう方もいらっしゃるんですけど、買ってくださった方の中で、透明なものを想像していて、届いた製品を見たら、サビが付いていてショックを受けたって言っていたんですね。

 でもそのショックを受けた、何でも新品で何でも新しいものを期待してしまっている自分の考え方を、意識することができたっていう風にコメントしてくださって、私も想像していなかった反応だったので嬉しいなと思って」

●最後に、この番組のリスナーに伝えたいことをお話いただきました。

「私は個人的に物を買うときは、購入することは一種の投票と同じようなもので、貢献したい会社だったり、こういうプロダクトが増えてほしいなっていうものに対して、なるべくお金を使うようにはしています」

●その製品を購入するだけじゃなくて、その背景も知ってもらいたいっていうことですか? 

「そうですね。ちょっと意識するだけでなくせる無駄だったり、ゴミになるものをちょっとでも減らせるのかなって。だからきょうあすからでも始められることって、きっと気にしていないとできないけど、ちょっとでも意識するとすぐに変えられることとか、行動に移せることってあるのかなっていう風に思います」

写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

INFORMATION

 齊藤さんは、廃棄されるビニール傘をアップサイクルするブランド「プラスティシティ」を立ち上げました。これは「つくる責任」の一翼を担っていると思います。「10年後にはなくなるべきブランド」という思いにも共感しました。みなさんは、どう感じたでしょうか。

 「プラスティシティ」で販売しているトートバッグなどの製品情報や、一般家庭向けのビニール傘のリサイクル・プログラムについて、詳しくは「プラスティシティ」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎ 「プラスティシティ」HP:https://plasticity.co.jp

生き物の営みを通して、人間のあり方を問う〜TV自然番組名物プロデューサーの視点〜

2021/6/6 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、テレビの人気自然番組「生きもの地球紀行」や「ホットスポット 最後の楽園」、そして「ダーウィンが来た!」などを手がける名物プロデューサー「岡部 聡(おかべ・さとし)」さんです。

 岡部さんは1965年、大阪府生まれ。子供の頃からテレビの自然番組が大好きで、将来は海洋生物学者になりたいという夢を持つ少年だったそうです。そして進学した琉球大学ではサンゴ礁生物学を専攻、主に魚の分類に関する研究をされていたそうです。

 そして自然番組の制作を希望し、NHKに入局。その後、手がけた番組が海外の映像関係の賞を受賞するなど、その手腕は高く評価されています。現在はNHKエンタープライズ・エグゼクティヴ・プロデューサーとして活躍。また、先頃出版した本『誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち』でも注目されています。

 きょうはそんな岡部さんに、生き物の、不思議で奇妙な驚くべき生態、そして「ホットスポット 最後の楽園」のプレゼンターをおよそ10年務めた、福山雅治さんとの取材エピソードなどうかがいます。

☆写真協力:岡部 聡

岡部聡さん

イルカが漁を手伝ってくれる!?

※新刊『誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち』には、岡部さんが世界の取材先で目撃した、生きものたちの、不思議で奇妙な生態が、体験談とともに全部で14編掲載されています。まずはその中から、私が特に気になったお話をうかがっていきましょう。

●まず、人間の漁を手伝うイルカがいるということで、岸にいる人間には魚の群れがいつ、自分たちの前に来るのか分からない、どのタイミングで網を投げるのか、それを教えてくれるのがイルカ、ということですけれども、イルカが合図してくれるっていうのはどういうことなんでしょうか? 

「そんなことがあるのかとやっぱり思いますよね。ブラジルのラグーナっていうところの話なんですけれども、非常に特殊な地形をしているんですね。人間が立てるぐらいの砂浜があって、そこからちょっと行くと、もう20メートルくらいまで落ち込んでいるような地形になっているんです。

 そこに夏になるとボラが回遊してくるんですけれども、水が結構濁っているので人間からはどこにボラの群れがいるかは、同じ水面に立っている限りは分からないんですね。で、人間が(ボラを)獲る方法は投網ですから、自分の目の前、5〜6メートルぐらいまでしか投網って届かないので、何も見ずに投げると何も獲れないと。

 イルカはイルカで闇雲に追いかけてもやっぱり、獲れるでしょうけど、体力を使いますよね。で、人間が立てるくらいの浅瀬があるので、(ボラを)追いかけてもそこにザーッと逃げ込まれちゃうとイルカも獲れないと。それをどうやって解消しているかって言うと、イルカが(ボラを)人間の方に追い込んで、人間が網を投げるとそれでびっくりして、イルカの方に戻ってくるんですよね。それをイルカが獲っているっていう漁の方法で、両方にメリットがあると。

 だから人間からするとイルカが追い込んでくれる。イルカからすると人間が沖の方にボラを追い出してくれるっていうような関係があって、確かにボラの群れを追いかけている時のイルカの動きっていうのは、普通の動きとはちょっと違うんですよね」

●どんな動きになるんですか?

「背中を高く上げるような動きになるんですけれども、普通の呼吸とはちょっと違うような動きをするんですね。素人が見ていても言われないと分からないんですけれども、よくよく見ていると、背びれだけが上がるのか、背中全体が上がるのかっていうところで、確かにその1回だけは、全然それまで泳いでいる呼吸のための泳ぎとは違うような動きをするので、ベテランはすぐに、今イルカがこっちに魚を追い込んだっていうのが分かるそうです」

『誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち』

空中の葉っぱに産卵する魚!?

※岡部さんが先頃出された本『誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち』には、こんなお話も載っています。

●熱帯魚のコペラ・アーノルディという魚。魚という生き物の常識を超えた、世界で唯一のとびっきり変わった方法で産卵するという風に書かれていますけれども、これは一体どんな方法で産卵するんですか? 

「魚って基本的には卵に殻がないので、水中で卵を産むっていうことが前提になっているんですね。それは両生類までは卵に殻がないので、どうしても産卵は水中でやらないといけないと。
 爬虫類とか鳥類になってくると殻があるので、陸上に進出できるっていうのが普通の考え方なんですけれども、コペラ・アーノルディっていうのは水面の上にある葉っぱに産卵するんですよね。それは本当にオスとメスが上手く同調して、一緒に飛び上がって、ペタッと葉っぱに引っ付くんですね、2秒とか3秒ぐらい。

 その間にパパッと1回あたり多分10個ぐらいの卵を産むんです。その卵もメスが産卵する時にジェル状のものに包まれて乾きにくくはなっているんですね。ただ、そのまま置いておくと乾いてしまうので、オスが下にずっといて1分に1回ぐらいですかね、尾っぽで水を弾いてその葉っぱに、水面の上10センチぐらいの葉っぱに、狙いすましたように水をかけて、卵が乾かないようにします。大体2日くらい孵化するまでかかるんですけれど、ずーっとオスが水をかけ続けるという非常に変わった生態を持っている魚ですね」

●魚なのに水から飛び出して卵を産むってことですね。しかもちょっと上がったところじゃなくて、10センチってかなりピョーンって飛ばないといけないですよね。

「そうですね。体長4〜5センチぐらいの大きくない魚なので、自分の身体の2倍ぐらいの距離を飛んで、しかもピタッとくっ付きますからね。あれはやっぱり初めて見た時はびっくりしましたね。こんなこと本当にするんだと思って(笑)」

●面白いですね〜! なんで水中じゃなくて空中の葉っぱに産卵するんですか? 

「コペラ・アーノルディはコペラっていう種類の魚なんですけれども、コペラは他にも何種類かいて、他のやつは水中の葉っぱに産卵するんですよね。水中の葉っぱに産卵してオスが守るっていう生態を持っているんですけれども、アーノルディだけが水面の葉っぱに産卵するっていう方法をとっているんです。

 それはもちろん水中にあると当然外敵に食べられる危険が高くなりますから、水面より上に卵を産むことは合理的ではありますよね、外敵のことを考えれば。そんなところまで行って卵を食べようとする奴はいませんから、合理的ではあるけれども、じゃあどうやって乾燥っていうものを解決するのかっていうことが、普通の魚には、こういう言い方するとあれですけれど、思い付かないと思うんですよね。  

 彼らは、思っているわけじゃないですけれども、普通そんなことはやっぱり考えないですよね。魚って別に水面より上に卵を産むことを前提としてないですから、そんなこと考える必要もないわけですよね。それをどうやって、卵が上にあったら乾くから水をかけないといけないなっていう風なことを、思うことはないんですけど、なんでそういう生態が身に着いたのか、生まれたのかっていうのは本当に不思議で、いくら考えても分からないですね」

岡部聡さん

福山雅治さんとの撮影秘話!

※岡部さんが手がけた「NHKスペシャル ホットスポット 最後の楽園」では福山雅治さんがプレゼンターをおよそ10年担当されました。長いお付き合いになったんですね?

「そうですね。お互いこんなに長く続くとは思ってなかったんじゃないですかね(笑)」

●福山さんとの撮影で思い出に残っていることなどありますか? 

「大スターですから色々思い出はありますけれど、やっぱり第1シリーズで初めて行ったマダガスカルでの腸炎事件ですかね。お腹を壊して福山さんが寝込んでしまったという(苦笑)、ちょっとあれは本当に焦りましたね」

●どうしてお腹が痛くなっちゃったんですか? 何かに当たったとかですか? 

「原因はよく分からないんですけどね。インドリっていうサルを見に行ったんですけれども、明日から見に行くぞーって言って、泊まったロッジで朝起きて来なかったと。それでどうしたんですか? って聞いたら、どうもマラリアになったんじゃないかと思うくらい高熱が出ているっていう風に言われて、それはそれは焦りましたね。

 結局2本撮りだったんですね。ブラジルの真ん中の草原セラドっていうところに行ったのと、そこから南アフリカ経由でマダガスカルに行くっていう非常にハードスケジュールなロケで、疲れも溜まっていたんでしょうね。

 ブラジルを経験していたからちょっと安心っていうか、割と大丈夫かなっていうことがあって。レストランで出た飲み物に入っていた、氷に当たったんじゃないかなと思うんですけどね。結局あの時は福山さんチームとこちらのチーム合わせて7人ぐらいで行っていたんですけれども、その内の5人がもう大変なことになって(苦笑)」

●ええっ!? 

「僕とヘアメイクさんだけが何ともないっていうような感じで。あの時は、ああもうないなと、今後はないなと思いましたけど(笑)、結局(福山さんは)回復されてインドリにも無事にご対面いただいて、その後もバオバブを見に行ったり、ロケはほぼほぼ予定通り。
 2日くらい寝込んでいらっしゃったんですけれども、予定通りロケは終わって帰ってきたら、『笑っていいとも!』でネタにして笑っていました、本人も(笑)」

●福山さんって、画面からはすごく楽しんでいるように見えるんですけれども、やはり福山さんご自身も生き物や自然がすごくお好きなのかな? って印象があったんですが。

「どうでしょうね。僕もそうですけど、多分福山さんは、取り立てて生き物や自然が大好きっていうわけではないと思うんですよね。僕も30年も(自然番組の制作を)やっていたら生き物が好きなんですよね? って言われますけど、いや別に生き物ってそんなに大して好きとかっていうような対象ではないなと思っていて・・・。
 その代わり福山さんがよく言われるのは、生き物に対してはやっぱり畏敬の念とか、畏怖の念があるっていう風によくおっしゃっているんですよね。

 自然が好きって、多分このラジオのリスナーさんとかはそうだと思うんですけれど、自然が好きっていうのはちょっと語弊があって、それはものすごくよく知っている場所だったり、管理された自然は好きなんでしょうけれども、例えばアマゾンのジャングルの中に裸で放り出されて、でも俺は自然が好き! って言える人っていないと思うんですよね。

 自然っていうのは、本来はものすごく恐ろしい場所で、現代人が何の道具も持たずに行って、そこで生きていけるような場所では当然ないわけで、その中で生き物って何の道具も持たずに身体ひとつで生きていますよね。だからそういうところでやっぱり、人間はどうやっても敵わないなっていう思いが、福山さんは、畏怖とか畏敬の念っていう言葉になってくると思うんですよね。

 福山さんは非常に言葉を大切にされる方なので、気軽にそんな軽々しく、生き物や自然が好きです! みたいなことは言わないですね。言ってくれって言っても言わないです、全然。それを踏まえた上で、やっぱり原生の自然の中で生き物が生きていること、あるべきものがあるべき場所にあるっていうことの居心地の良さっていうのがある。それを人間が壊していってるんだっていう問題意識は共有できているという風に思っています」

岡部聡さん

野生のトラに襲われた!?

※新刊『誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち』に掲載されている中から、もうひとつ、とんでもない体験談をうかがいましょう。

●地球上で最も怖い生き物ということで、岡部さんがインドのトラをこの本で挙げていらっしゃいますけれども、野生のトラと対峙したことが3回もあるんですよね。しかもその内の1回はトラとの距離が1メートルもなかったと本に書かれていましたけれど、どういう状況だったんですか? 

「あれはいつだったかな・・・1993年だったと思うんですけれど、インドの真ん中にバンダウガルっていう国立公園があって、そこにメスのトラを撮りに行ったんですね。動物写真家の飯島(正広)さんがその7年前に撮影に行ってました。

 シータっていう名前が付いたメスのトラがいて、その時、やはりトラって、今でもそうですけれど、絶滅の危機にあって・・・国立公園の中にいるんですけれど、人間がどうしてもそこに入っていて、人間との衝突が起こっているっていうことがよく言われていたので、飯島さんが7年前にあったシータが、どういう運命を辿っているのだろうかっていうのを見に行くドキュメンタリーの『生きもの地球紀行』だったんですけれども。

 そのシータを見に行くと当然周りにはオスのトラもいるわけですよね。その中でチャージングタイガーって言われている、その時にいちばん若くて大きなトラがいて、それがシータの縄張りと重なっている場所にいたんですね。
 シータを追いかけていると当然そのチャージングタイガーとも出くわすわけですよね。メスのトラは割と大人しくて、もちろん怖いんですけど、テレビ的に見るとガオーってこないんですよね、優しいから。

 オスのトラはやっぱり獰猛ですから、なんかするとこっちに向かって威嚇してくるので、そういうシーンも必要でしょうと。それだけではないんですけれども、たまたまそのチャージングタイガーがいるっていうことを聞いて、草むらの中にいたんですね。非常に高い2メートルぐらいある草むらの中にいて、この辺にいるって言われたんですけど、どこにいるか分からなかったんです。

 でも行かないと向こうから出てくるわけがないので、こっちからゾウの背中に乗って近づいていったんですね。基本的にはトラはゾウには襲いかからないと言われていたので、それを信じて安心して行ってたら、草むらの中から突然、トラが飛びかかってきたというようなことですね(笑)」

●でも、実際襲いかかってきて、岡部さんはどうされたんですか? 

「いやもうね、多分人生で初めて気を失っていましたね、記憶がないんです。いわゆるホワイトアウトしていましたね。目の前で、1メートルのところにトラの大きな顔があって、そこで僕の記憶はもうなくなっている。多分10秒ぐらい気を失っていたんじゃないですかね、あまりの恐怖に」

●ええっ〜!? でも本には、二度と会いたくないと思う一方で、どうしようもなくもう一度、野生のトラを見てみたいと思わせる魔力があるという風に書かれていましたけれども、その魔力っていうのは何なんですか? 

「僕の中ではトラってやっぱり地上でいちばん怖い生き物、いちばん強い生き物っていうイメージが今でもありますね。だってオスのトラって頭から尻尾の先まで入れると2メートル50センチぐらいあるんですよね。体重も200キロぐらいあって、その巨体で3メートルぐらい平気で飛ぶんですよね。ゾウの上を飛び越えていくって言いますから、本気出せばね。

 そんな身体能力、大型力士が3メートル飛ぶんですよ。そんな生き物、ほかにいないですよね。多分体重200キロですから、あの時僕はゾウに乗っていて、足は下に降ろしていましたから、足にかぶって噛み付かれて引きずり下ろされたら絶対敵わないですよね、もう絶対耐えられないと思います。

 それだけすごい生き物が、この地球に一緒に同時代に生きているっていうのはやっぱりすごいことだなと。多分ジュラシックパークじゃないですけど、ティラノサウルスがいたらやっぱり見てみたいと思うじゃないですか。現代で言ったらトラってそれに近いものがあるし、やっぱり簡単に見られないですからね、野生のトラは。あれだけ勇猛果敢な生き物っていうのは、ほかにはちょっと思い浮かばないですね。そういう生き物は、また会いたくないと思う反面、また見てみたいという気持ちは何処かにはあります」

生き物の魅力を伝える

※岡部さんは30年以上、自然番組の制作に携わっていらっしゃいます。海外の辺境や秘境と言われる場所に行って撮影するのは、大変な労力を必要とすると思いますが、その原動力は何ですか?

「やっぱり楽しいっていうのはありますよね。生き物の姿を間近で見るっていうのは楽しいっていうのもありますけれど、原動力っていうとやっぱり、子供の頃からずっと違和感を感じていたのは、この地球上にある土地って誰かのものっていう風に決まっていますよね、大体、国があるところって。地球上で誰のものでもない土地って、南極大陸ぐらいしかなくて。所有者がいますよね、国でも何でも。

 土地が所有されているからには、その所有者がどうするか次第で開発されたりしてしまいますよね。でもそこには元々生き物が棲んでいたわけで、じゃあその生き物ってどうすればいいの? っていう風なことを、子供の頃からずっと思っていたんですね。
 やっぱり生き物は環境の中で必死になって生きていて、役割があるわけですね。人間だけです、地球上で何の役割も持っていない生き物っていうのは。

 環境に対して何の貢献もしていないし、やっぱり自分は人間は生きていたいから生きているだけで、それで環境破壊しているっていうのは、ちょっとおかしなことだなってずっと思っていて・・・生き物の魅力を伝えることで、もうちょっと考えた方がいいなと僕は個人的には思っているので、そういうことをちゃんと伝えたいなということですかね」

●改めて岡部さんが制作する自然番組で、いちばん伝えたいことってどんなことですか?

「伝えたいことは、やっぱり生き物っていうのは長い時間をかけて進化してきたというか、それがどういう風に生きているか。その生き様っていうのは、環境の中で必死になって生きるために、人間が思い付かないような進化を遂げているので、その面白さを伝えたいっていうことですね。そこから後のことはもう見ている人が考えることであって、いちばんやりたいのは、生き物の魅力をどうやったら伝えられるのかっていうことを考えますね 」


INFORMATION

誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち


『誰かに話したくなる 摩訶不思議な生きものたち』

 岡部さんが世界の取材先で目撃した、生きものたちの、不思議な生態が体験談をまじえて14編掲載されています。改めて生物や自然の奥深さを思い知らされました。ぜひ読んでください。文藝春秋から絶賛発売中です。

◎「文藝春秋」HP:https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163913155

農家さんの思いとともに〜茨城県那珂市「地域おこし協力隊員」の活躍〜

2021/5/30 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、茨城県那珂市(なかし)地域おこし協力隊の「入江紫織(いりえ・しおり)」さんです。

 入江さんは地元の農家さんや飲食店、農業関係者のみなさんと一緒に、コロナ禍で販路を失った農産物を、マルシェを開催して販売するなど、農業の活性化に力を入れていらっしゃいます。

 きょうはそんな入江さんに地元の農家さんの支援活動や、農業への想いなどうかがいます。

☆写真協力:入江紫織

入江紫織さん

自然に溶け込んで農業がある那珂市

※それではさっそくお話をうかがっていきましょう。

●入江さんは茨城県那珂市の、地域おこし協力隊のメンバーとしてご活躍されていますけれども、まず、この地域おこし協力隊とはどういったものなんでしょうか? 

「地域おこし協力隊は総務省が主体となって実施している事業です。全国47都道府県に地域を盛り上げるっていうことをしたい方が、たくさん隊員として派遣されているんですけれども、皆さんそれぞれ、自分たちの得意分野を活かしながら、町おこしの活動を3年間限定でするっていう事業ですね」

●何人ぐらいメンバーっていらっしゃるんですか? 

「メンバーは、今は全国で5500人ぐらいが活躍されていますね」

●そうなんですね。全国色々な地域おこし協力隊があって、入江さんは那珂市の地域おこし協力隊ということなんですね。茨城県の那珂市のご出身でいらっしゃるんですか? 

「あ、全然出身じゃないですね」

●あれ? じゃあどうして那珂市の地域おこし協力隊に応募されたんですか? 

「私の前職が日本農業新聞という新聞社に勤めておりまして、その時は農家さんに農業の最新情報を発信する立場だったんですけれども、それとはまた別に、一般の消費者の方に農業の魅力をお伝えすることにすごく興味を持ち始めて、それをちょうど募集されていたのが那珂市だったので、エントリーして、ご縁をいただいて採用いただきました」

●今は那珂市に移住されているということですか? 

「そうですね」

●那珂市ってどんなところですか? 行ったことないんですけれども。

「那珂市はすごく景色が豊かで、例えば白鳥が冬になったらシベリアから飛来してきて、色んな湖に白鳥がいたりとかして、あとは、干し芋の大産地なので、季節になると色んな所で農家さんが干し芋を干している風景が見られたりですとか。お蕎麦も花がすごく真っ白で綺麗なので、そういう景色が見られたりですとか、すごく自然に溶け込んで農業があるっていう地域ですね」

●たくさんの農産物が作られている場所なんですね。入江さんのご実家も農家さんでいらっしゃるんですか? 

「そうですね。農業関係者で実家が京都市なんですけれども、九条ネギの卸売の仕事を実家がしておりまして」

●じゃあもう昔から農業に対する思いというのは強かったわけなんですね。

「そうですね。生まれた頃からそんな感じですね」

ドライブスルー形式でセット販売!?

※具体的にどんな活動をされているのか、教えてください。

「地元にフェルミエ那珂というチームがあるんです。だいたい40人ぐらいがいらっしゃるんですけれども、地元の農家さんですとか、あと飲食店ですとか、JAさんが集まって農業を盛り上げようというので色んな活動しています。私はその団体のPRですとか、マルシェのお手伝いですとか、それを通した農産物の販売促進等をさせていただいています」

写真協力:入江紫織

●具体的にどんなことをされているんですか? 

「具体的には月に1回マルシェを開催したりですとか、あとは法人化をしたので、これから色々積極的にPRしていきたいっていう方のブランディングをお手伝いさせてもらったりしています」

●マルシェってどういう形で開催されているんですか? 

「1箱のダンボールに野菜を10品目程度入れて、2000円で販売させてもらっております」

●どれぐらい用意されているんですか? 

「だいたいいつも50箱用意させてもらっています」

●次のマルシェの開催は、どのように皆さん把握されるんですか? 

「公式のインスタグラムを作っておりまして、そこで最新情報を更新しております」

●なるほど!

「マルシェは地元の農産物直売所の、ふれあいファーム芳野っていうところがあるんですけれども、そこの駐車場をお借りして開催しています」

写真協力:入江紫織
写真協力:入江紫織

●先ほどの、PRっていうのは農家さんのPRっていうことなんですか? 

「そうですね! 主にインスタグラムを通して情報を発信させてもらっていますね」

●今はインスタグラムを使って色々PRされているわけですね〜。例えばどんな風にPRされるんですか? 

「例えば今月入るお野菜の、このトマトを作っている農家さんはこういう方ですよとか、こういうところにこだわりを持って普段栽培されていますっていうのを、野菜と農家さんの顔写真とセットで紹介したりですとか、そういう取り組みをさせてもらっています」

●ドライブスルー形式で農作物の販売も以前されていたんですよね? 

「そうですね。私が着任したのが去年の4月1日だったので、ちょうどコロナってなんだろうみたいな、みんなが分からない時期だったんですね。農家さんたちもマルシェを中止されていたので、何かいい方法ないかなと思って、ドライブスルー形式でダンボールに野菜を詰め合わせて、セット販売するっていう方法を提案して、それが少しずつ形を変えて、今ではテイクアウト形式(マルシェ)で野菜を販売するっていうのをさせてもらっています」

●珍しいですよね! ドライブスルーで販売っていうのは。お客さんたちの反応はいかがですか? 

「やっぱり当時はなかなかイベントもないし、ずっと家にいがちで、スーパーにもやっぱり買い物に行くの怖いわっていう方が多かったと思うんですけれども、こうやってちょっと外に出て行くきっかけが出来てよかったですとか、那珂市ってこんなに新鮮な野菜をたくさん作っている農家さんがいるんだねとか、色々お声がけをいただいて、農家さんのことを紹介できていたのかなっていう風にその話を聞いて嬉しかったですね」

写真協力:入江紫織
写真協力:入江紫織

フードロスと、脱プラへの取り組み

※入江さんは活動の一環としてフードロスを減らす取り組みもされていますよね?

「そうですね。これは茨城県のイチゴ農家さんで梅原農園さんっていらっしゃるんですけれども、その農家さんの捨ててしまっていたイチゴを、地元の生パスタ専門店で生パスタに加工してもらって販売したいっていうのを、地元の水戸農業高校の生徒さんが企画されていたんですね。ただ販売先がないっていう相談を受けて、それだったら是非マルシェで販売してくださいってお話をして、先月初めて販売させてもらいました」

●高校生たちとコラボっていうのもいいですね! 地域全体で盛り上がっていく感じがしますよね。あと「粉活プロジェクト」というのもちょっと気になったんですけれども、これは何でしょう? 

「これもやっぱり廃棄される野菜ですとか、質はいいけれど、まだ食べられるのに捨ててしまわないといけないっていう野菜が結構日本にはたくさんあると思うんですけれども、そういう野菜を買い取って粉末化します。粉末化するとやっぱり栄養分がすごく高まったりとかするので、それを日々、スープに入れたり、お味噌汁に入れたりして、手軽に栄養補給しましょうっていうプロジェクトを始めました」

●新しい発想ですね! パウダー状にするっていうのは。そういうことをしながらフードロスを減らしていこうという取り組みなんですね。地元の農家さんたちと脱プラスチックの取り組みも始められたということですけれども。

「本当につい最近始めて、まだ色々打ち合わせ中なんですけれども、農業の現状っていうのが、例えばトマトを作る時に、大きなハウスを建てるのにたくさんのプラスチックを使わなきゃいけなくて、ビニールハウスなのでそれを止めることって、やっぱりどうしてもできないんですね。

 ほかで何かプラスチックを捨てずに取り組むことができないかなっていうので、皆さんも多分スーパーとかで袋に入った野菜を見たことあると思うんですけれども、あの袋を少し再利用したものにできないかなとか。あとはあれを半分だけでも紙にできないかなとか、少しずつなんですけれども、打ち合わせを進めているところです」

●農家さんご自身も皆さん変わろうという努力をされているわけなんですね!

「そうですね!」

高齢化で毎年、栽培面積が増える!?

※入江さんは、以前、日本農業新聞の記者として、全国の農家さんを取材されていたということですが、現在、多くの農家さんが抱えている問題はなんでしょうか。

「やっぱりいちばん大きいのは、もう皆さん多分もうご存知かと思うんですけれども、高齢化がどんどん進んできていて、これから農業を始めようとか、まだ農業できるっていう農家さんに、耕してほしいっていう農地がどんどん集まってきているのが結構問題で、やっぱり毎年毎年、栽培面積を増やさなきゃいけないっていう農家さんが出てきていますね」

●どうして栽培面積って増えていっちゃうんですか? 

「毎年高齢化してきて、今年からもう畑を耕すのをやめるっていう農家さんがいるので、そういう方の農地を引き受ける農家さんや、これから営農するっていう農家さんの使命みたいな形になっていますね」

●そのまま放置するっていうのは出来ないっていうことですか? 

「放置すると隣の畑に影響を及ぼして、草がぼうぼうだと隣の畑も同じような影響を受けたりするので、耕し続けないといけないっていうのがありますね」

●新しい農業の形っていうのは生まれてきているものなんでしょうか? 

「少しずつ農業もデジタル化ですとか、農業DXと言って、どんどん国も推進している事業があるんです。例えば栽培管理を、昔ながらの天候を見て、野菜の葉っぱの様子を見て、勘で分かるっていう風な栽培は結構もう難しくなってきています。
 それをデータ化して見える化するとか、あとは最近ドローンを使って農業を始めたいっていう農家さんも増えてきていて、ドローンが実際に動いてるところを見ましょうかってことで、ドローン飛ばしてくれるメーカーさんに見学会を開いていただいたりしました。これから那珂市の農業もどんどんDX化していくのかなっていう風に思っています」

●入江さんご自身も農園を借りて野菜を育てていらっしゃるとうかがったんですけれども、どんなものを育てているんですか? 

「去年はサツマイモを植えて、地元の子供たちの収穫体験として使わせてもらったり、あとはトマトとかナスとかオクラを栽培したりしましたね」

●実際育ててみていかがですか? 畑にいる時ってどんなことを感じますか?

「やっぱり安定して野菜をいつも収穫して出荷している農家さんってすごいなって思いますね。大雨が降ったあとに天候がよくなると、すごく草がぼうぼうになったりするんですけれども、毎日栽培管理を丁寧にしているから、私たちって食べ物を安定して食べられるんだなって。栽培して失敗することすごく多いので、それを体験しているからこそ余計に食べ物を大切にしなきゃいけないなと思う気持ちが強くなっていきましたね」

写真協力:入江紫織
写真協力:入江紫織

農家さんの思いも一緒に

※最後に、入江さんが「地域おこし協力隊」の活動で、特に心がけていることを教えていただけますか。

「特に心掛けているのは、農家さんの思いと共に農産物を届けたいなっていつも思っているので、農業を始めたきっかけや、どういうところにこだわって日々農作業をしているのかを、きちんと情報として自分も入れておくことと、最近どういうこと困っていますかとか、そういうことはいつも頭の中に入れて活動していますね」

●じゃあ結構頻繁にコミュニケーションを取られているんですね。

「そうですね」

●これまでの活動でいちばん喜びを感じた時ってどんな時ですか? 

「初めてドライブスルー・マルシェって開いた時に、消費者のお客様から、”那珂市に新しい風を吹かせてくれてありがとう”って言っていただいたのがすごく嬉しくって。やっぱり県民性なのか市民性なのか分からないんですけれども、どうしてもPR下手だったりとか、すごく魅力があるのにそれを露出するのが苦手な方がすごく多くて、それをうまく出せた瞬間なのかなと思って、それがすごく嬉しかったですね」

●日本全国の方に那珂市の魅力をもっともっと知ってもらいたいですよね! 

「そうですね!」

●改めて、この番組を聴いてくださっているリスナーさんに伝えたいことがあれば、是非お願いします! 

「多分この番組を聴いている方も、地域おこし協力隊と付き合う機会っていうのも多分あると思うんです。皆さん色々思いを持って、首都圏からはるばるその地域に根付こうと思って活動している方なので、是非優しく接していただきたいと思います。
 あとは日本の農業って結構マイナスに言われることもすごく多いんですけれども、個々の農家さんはすごく努力して日々農産物を作っていらっしゃるので、是非スーパーとか直売所に行かれた時には、なかなか難しいかもしれないけど、その思いと共に一緒に購入して、家で料理していただきたいなって思います!」


INFORMATION

 入江さんの活動については那珂市「地域おこし協力隊」のサイトをご覧ください。

◎那珂市「地域おこし協力隊」HP:https://www.city.naka.lg.jp/iinakakurashi/page/dir000068.html

 個人的な活動として入江さんは、仲間と一緒に一般社団法人「ベジタブル漢方協会」を設立。不足している栄養素を野菜などの粉末で、毎日の食事に効果的に取り入れましょうということで、「ベジタブル漢方アドバイザー」を養成する講座を立ち上げました。

 詳しくは「ベジタブル漢方協会」のオフィシャルサイトを見てください。

◎「ベジタブル漢方協会」HP:https://vegekanpo.com/

 「粉活プロジェクト」については以下のサイトをご覧ください。

◎「粉活プロジェクト推進委員会」HP:https://kona-project.jp/

ツキノワグマの知られざる生態〜クマはタネの運び屋!?〜

2021/5/23 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、東京農工大学大学院・教授「小池伸介(こいけ・しんすけ)」さんです。

 小池さんは1979年、名古屋市生まれ。東京農工大学卒業後、日本生態系協会などを経て、現職の東京農工大学大学院・教授に。専門は生態学など。現在は東京の奥多摩、栃木、群馬などの山林で、ツキノワグマの生態や、森との関係などを調査・研究されています。

 きょうはそんな小池さんにツキノワグマの知られざる生態や、クマの視点で見る日本の森のお話などうかがいます。

☆写真協力:小池伸介、横田 博

小池伸介さん

ツキノワグマ=アジアクロクマ

※それではさっそく小池さんにお話をうかがっていきましょう。

●そもそも小池さんは、ツキノワグマの研究者と言ってよろしいんでしょうか? 

「そうですね。実はツキノワグマだけじゃなくて、私は森林の研究をしているので、森林に生活している色んな生き物を対象にはしているんですけれども、ツキノワグマに関してはもう20年以上研究対象としていますね」

●去年『ツキノワグマのすべて〜森と生きる。』という本を出されましたけれども、この本はこれまでの研究の集大成といってもいい本ですよね。

「そうですね。22年ぐらいツキノワグマと関わっていて、その間、学んだこととか、現場で撮った写真を、写真家の方の写真と併せて掲載したものになりますね」

●第4章に、ツキノワグマがわかるQ&Aというのがあって、ツキノワグマ初心者の私でもすごく楽しく読めました。まず「ツキノワグマは世界のどこにいるの?」という問いがあったんですけれども。

「日本だとツキノワグマっていう名前なんですけれども、世界的に見るとアジアクロクマっていう名前なんですね。その名前の通りアジアに広く分布していて、西はイランあたりで、東南アジア、東の端が日本っていうように、アジアの広い地域の森林に生息するクマの種類になります」

●日本の固有種ではないっていうことなんですよね?

「固有種ではないですけれども、ただやっぱり大陸にいるツキノワグマに比べると、日本のツキノワグマはちょっと体が小さいって特徴はあったりします」

『ツキノワグマのすべて〜森と生きる。』

●続いて「ツキノワグマに天敵はいるの?」という問いもありました。

「今、日本ではツキノワグマを襲って食べたりするような野生動物はいないですね。ところが、海の向こうのロシアなんかですと、ちょうど沿海州と言って、北海道の対岸あたりを我々も調査しているんですけれども、そこだとツキノワグマの天敵は実はトラだったりするんですね。ツキノワグマはやっぱり冬眠しますので、そうするとその冬眠中のツキノワグマがトラに襲われたりするっていうのが結構知られています」

●この問いにも書いてありましたけど、「冬眠中に筋力は落ちないの?」というのがありまして、確かに人間は動かないと筋力って落ちちゃうイメージありますよね。

「そうですね。よく宇宙に行った宇宙飛行士が帰ってくると、筋力が弱くなっていたりとか、骨が弱くなっていたりとかしますね。
 冬眠は3ヶ月から長いと半年ぐらいにわたって穴の中でじっとしているんですけれども、その間に骨も弱くならないですし、筋力も大きく落ちることはないんですね。

 まだ分かっていないところは非常に多いんです。例えば筋力に関しては、冬眠中のエネルギーっていうのが秋の間に溜めた脂肪なんです。それをうまく使っているわけですね。それで命を維持しているんですけれども、その過程で出てくるタンパク質を上手く筋肉の方に回しているんじゃないかってことが知られています」

●へ〜! じゃあ冬眠を終えた後も、何事もなかったかのように動き回る生活が始まるっていうことですか? 

「そうですね。春になったら動きますし、実は冬眠中でもずっと寝ているわけではなくて、うとうとしているんですね。我々が朝、布団から出たくても出られないようなあんな感じで、うとうとしていて。
 近くを人が通るとか、何か人が作業をしたりすると、パッと起きて、穴から(匂いを)嗅いだりするんですね。いきなり走って逃げていったりとか、そんなこともできたりするので、やっぱり何かあった時のために、行動できる筋力を失わないんじゃないかって言われたりしています」

撮影:横田 博
撮影:横田 博

ツキノワグマの生態

※改めてツキノワグマの特徴といえば、なんでしょうか?

「色々あるんですけれども、やっぱりひとつは名前の由来になっている月の輪というところです。本にも色々写真がありますけれども、首もとにある三日月のような白い模様がツキノワグマの特徴のひとつですね。
 ただ、ほかのクマでも、例えば東南アジアにいるマレーグマとか、あとヒグマの中でもそういう模様を持つ個体はいるんですね。その中でもツキノワグマは白が非常に美しい三日月のような模様があるというのはひとつ特徴になりますね」

●その月の模様っていうのは個体によって、大きさとか形も異なってくるんですか? 

「そうなんですよ。我々の指紋と同じように個体によって模様が違うんですね。非常に綺麗な三日月のような模様のクマの写真がよく見られるんですけれども、中には真っ黒のもいたりとか、あとはエプロンのようにすごく大きい白い模様があったりとか、右半分しかない、左半分しかないとかっていうように、個体によって違うので、その模様の違いを使って個体を識別して、山の中に何頭いるかを数える取り組みも行なわれたりしています」

●なるほど〜。日本にだいたい今、ツキノワグマって何頭ほどいるんですか? 

「実はそれは誰にも分からないんですよ。日本のツキノワグマで分かっているのは、どこにいるかっていう生息範囲って言いますけれども、範囲、場所と、あとは人為的に獲った数ですね。狩猟だったりとか、有害駆除なんかで、人間が捕獲した数は分かるんですけれども、実は山の中に何頭いるかは全く分かってないんですね。

 北海道にはヒグマと言われる別の種類のクマがいて、ツキノワグマはいないんですね。ツキノワグマがいるのは本州と四国です。九州は以前は生息していたんですけれども絶滅してしまいましたね。四国も実はもう残り数十頭で、すぐ絶滅してもおかしくないような状況になっているんですね」

(注釈:九州ではツキノワグマは絶滅、四国では絶滅の危機にあるというお話がありましたが、その原因は、九州では戦後まもなく絶滅してしまい、記録がほとんどなく、わからないとのこと。また、四国はスギやヒノキの皮をはいでしまうので、林業の害獣としてたくさん駆除されてしまい、そのため、減ったままで数がもどらず、絶滅するのではないかと危惧されているそうです。
 小池さんいわく「先進国で大きな動物が絶滅するのは、恥ずかしいことだ」とおっしゃっていました)

●ツキノワグマって1年をどう過ごしているんですか?

写真協力:小池伸介

「ツキノワグマは、場所によって多少違うんですけれども、3月か4月ぐらいに冬眠が終わって出てきます。冬眠する場所は木の大きな穴だったりとか、地面の窪みだったりとか、そういった隠れられるようなところで冬眠をするんですね。
 3月、4月ぐらいに冬眠を終えて出てきたクマは、最初やっぱりそんなに活発じゃないんですね。寝たり起きたりを繰り返しながら徐々に活発になっていって、5月ぐらいになると繁殖期になります。

 5月、6月、7月ぐらいが繁殖期で、この時期はもうオスはひたすらメスを探す生活で、食べるよりもメスを探すっていうような生活をしています。メスの方は実は冬眠中に子供を産むんです。冬眠中に子供を産んで、子供を連れて出てきている母親は、この間は育児をしているんですね。メスの場合は育児をしているか、子供がいない場合はオスと繁殖行動したりするわけですけれども、それが7月まで続いて、8月ぐらいになると一旦ちょっとクマの活動も落ち着きます。

 暑いっていうのもあるんですけれども、山の食べ物も少ないので、それほど活発じゃない時期が8月ぐらいにあって、9月ぐらいになるとまた活動がさらに活発になるんです。それはなぜかというと、秋の9月、10月っていうのは、そのあとに控えている冬眠に向けて食い溜めをするんですね。

 冬眠中っていうのは飲まず食わずなんですね。飲まず食わずで過ごすために、そこで必要なエネルギーを秋の2ヶ月か3ヶ月の間に全部食べ蓄えるんですね。それを脂肪という形にして、食べ蓄えて、だいたいこの秋の間に体重を30%とか、場合によっては50%くらい増やして、それで冬眠に入る。なので結構1年間忙しい生活を彼らはしていますね」

成功体験が行動を変える!?

※小池さんは、どんな方法でツキノワグマの調査を行なっているんですか?

「色々クマを調査する方法があるんですけれども、私たちのグループがずっと行なっているのは生体捕獲と言って、野生のクマを山で捕獲をして麻酔で眠らせている間に、GPS受信機というクマの行動を追跡する装置を装着して、クマがどうやってどこでどう行動してるか、というような行動調査を行なうのがまずひとつです。

写真協力:小池伸介

 あとはやはり彼らの食生活に迫ったりするためには、山に行って彼らの糞を拾ったりとか、食べた痕跡を探して何を食べているのか、そういった調査をするのがクマの調査の基本ですかね。

 シカとかサルとかと違って、クマって観察が非常に難しいんですね。シカやサルだと、テレビ番組にもあるように直接観察して、何をしているとか何を食べているっていうことを記録できるんですけれども、クマは群れは作らず、単独で行動していますし、森の中でひっそりと暮らしているので、なかなかクマに近づくのは難しいんですね。ですので、色んな道具とか方法を使って、クマに近づいてみるということを行なっていますね」

●調査や研究を積み重ねていく中で、どんなことが分かってきましたか? 

「色々分かってきていることはあるんですけれども、やっぱりここ20年ぐらいで色んな調査技術が発達してきたんですね。例えば、ここ何年かもそうですけれど、秋にクマが出没しましたってニュースがあると思うんですけれども、実は昔から秋に出没するっていう現象はあったんですね。

 ところが、何で秋にクマがよく出没するのかっていうのは、はっきりしたことはよく分からなかったんですね。おそらくドングリが不作だからなんじゃないかっていうことを言われていたんですけれども、はっきりとした関係は分かんなかったんですね。

 ところがここ20年ぐらいで、先ほど言ったGPSを使ってクマの行動を追跡する装置が飛躍的に技術が向上して、クマの追跡がかなり、楽ではないんですけれども、はっきり分かるようになってきたんですね。

 そういった調査をしていくと、やはりドングリがない時にクマは行動のパターンを変えて、普段生活しているところから遠くまで遠征して、ドングリを探したりとか代わりの食べ物を探すということは分かってきて、ドングリがないことがクマの行動を変える、それが出没に関係しているんじゃないかってことが、分かってきたことのひとつですね」

●じゃあドングリさえ手に入れば、人里には降りて来ないっていうことなんですか? 

「基本的にはそうなんですけれども、実はドングリがないからといって、簡単にクマは人里に出るわけじゃないんですね。先ほど言ったようにドングリがないときは、普段行かないところまでドングリとか、ほかの食べ物を探しに行くんですけれども、そこに行った時に何もなければ、また次のところに彼らは行くんですね。

 ところが普段行かない人里近くまで行った時に、ちょっと人里を見た時に例えば、収穫していない柿があるとか生ゴミがあるとか。彼らにとってはやっぱり人里に出るっていうのはすごいプレッシャーだし、リスクがあるわけですよね。でもそのプレッシャーとかリスクを上回る魅力的な誘引物があると、それに引き寄せられるように人里に出てしまう。

 なので、いつもドングリがないから出没しますって言われてしまうんですけれど、実はその間にもうワンクッションあって、さらに人里に誘引するようなものがあると出てしまうということなんですよね。簡単に手に入るような食べ物があると、やっぱりそれに恐る恐るチャレンジして、簡単に食べられたっていう成功体験が彼らの行動を変えていくんですよ」

クマはタネの運び屋さん!?

※今までツキノワグマの視点で森を見ることって、あまりなかったのでしょうか。

「やっぱり先ほど言ったように、クマに迫る方法っていうのはなかなかなくて、先輩方が色んな調査をしたりして、やっとクマの姿っていうのが分かってきたっていうのがちょっと前までだと思うんですね。

 で、色んな技術が発達して、クマの調査が色々出来るようになってきたっていうのと、たまたま私はどっちかというと、森林にかなり興味があって、どうしても最初は森に色んな生き物が棲んでいますので、その棲んでいる生き物のひとつとしてクマを見ようっていう感じで見ていたんですね。

 実は私、昔は、今もそうなんですけれども、クマと植物、森林との関係をずっと研究してきていて、クマは実はベジタリアンなんですね。ほぼ9割ぐらいが植物を食べていて、特に果実が大好きなんですね。

 ドングリを始め、森にある色んな果実が非常に大好きで食べているんですね。その中でも例えば、野生のさくらんぼとか、野生のぶどうとか、ちょっとタネの周りにジューシーな果肉が付いている果実って山にもあるんですけれども、ああいった果実を食べた時にクマってほぼ丸呑みなんですね。丸呑みした果実を糞として出すとどうなるかっていうと、実はタネがそのまま出てくるんです。

    つまりクマは森にある色んな果実を食べながら、山の色んなところを動くことで、その木の実のタネを山中にばらまいている、種子を散布しているってことを私は研究していたんですね。

 そんなところからも、やっぱりクマと森の関係というのは非常に大事で、もちろんクマは森を住処として暮らしているんだけれども、森の植物がクマをタネの運び屋として使っている、そういう言い方はよくないんですけれども、お互いにウィンウィンの関係にあるんじゃないかっていうことが、ひとつの分かってきたことになりますね」

●ちゃんとツキノワグマは森に貢献しているっていうことなんですね! 

「そうですね。クマだけじゃないんですけれども、色んな動物が植物のタネを運んでいるんです。中でもクマはほかの動物が運べないような遠くまで、ものすごく行動力があるので、すごく遠くまで、何十キロも遠くまでタネを運ぶことができる役割を果たしているっていうのが分かってきましたね」

●今、ツキノワグマが置かれている状況はどうなんでしょうか? 

「世間一般ですとやっぱりここ数年、特に秋になると(人里に)出没しましたとか、人間が怪我しましたとか、そういったニュースが非常に目立ってですね、世間一般のクマに対する印象とかイメージはあんまりよくないのかなと私は思っています。

 一方で、本当に山の中に棲んでいるクマをちゃんと見たことがある人ってほとんどいないんですよね。ほとんどの人が人間に囲まれて街中走っているクマか、柿の木に登っているクマか、檻に入っているクマか、動物園のクマで、でもそれはクマの極々一面で、ほとんど山にいる多くのクマは一生に1回も人間に会わずに森の中でひっそり暮らしているんですよね。

 そういう本当のクマの姿が知られていない中で、悪い印象ばかりが増えちゃったなっていうのが、最近の私のクマに対する、世間一般に対するイメージかなと思っています」

撮影:横田 博
撮影:横田 博

クマの個性はどう決まる!?

※小池さんは今後もツキノワグマの研究を続けられると思うんですが、今いちばん関心のあることって、なんですか?

「私は20年近くクマの調査をしてきて、先ほど言ったように捕獲をして、捕獲した時に血液を取ったりとかするんですね。そうするとその遺伝情報から例えば、人間の家系図みたいな、このクマとこのクマの子供があのクマで、このクマとこのクマの子供がまたこのクマで、っていうような家系図が出来てくるんですね。

 クマって非常に個性の強い動物で、例えばクマと言っても非常にアクティブなクマもいるし、非常にオドオドしているクマもいたりとか、実はひとつの山の中でもクマの一頭一頭が食べ物って実は違うんですね。

 我々人間を考えれば当たり前なんですけれども、やっぱりこれが好きなクマもいるし、あれが好きなクマもいるっていう感じで個性が非常にあるんですね。そういった個性が、どうやって決まっていくのかなっていうところに興味があって、ひとつはやっぱり親子関係というのも関係しているのかなと思っています。

 子供は生まれてから母親と1年半ずっと一緒にいるんですね。その間に子供は母グマから、これは食べられるよ、これは食べられないよとかですね、ここに行けば食べ物があるよとか、ないよとか、色んな生きていく上で大事なことを教わって、1年半経つと子供と母親が別れるんですね。

 そのあとはもうクマは単独なので、ほかのクマと接することが基本的になくて、例えば、あそこに行けば美味しいものがあったよとか、そういうやりとりは基本的にはないと考えられているんですね。

 ですので、やっぱり最初の1年半の母親との行動が、おそらくそのクマの一生の行動とか個性を決めるんじゃないかなっていう気がしていて、そのあたりが生物学的には興味があるし、今各地で起きている人間との間の不幸な事故がいっぱいあるんですけれども、そういったクマが何で生まれてしまうのか、何でそういう状況になったのか、その個性が何で決まるかというところが分かれば、人間とクマとの間の不幸な事故を減らす、ひとつのきっかけになるんじゃないかなっていう気はしています」

●では最後に、小池さんの本『ツキノワグマのすべて〜森と生きる。』を手にする読者の皆さんにどんなことを読み取って欲しいですか? 

「先ほどQ&Aのクマはこんな生き物だっていうところもあったんですけれども、やはりこの本のいちばんは、前半部分の写真家の澤井さんの素敵な写真がいちばんだと思うんですね。

 先ほど言ったように皆さんが知っているクマっていうのは、ちょっと変わったというか、街に出てしまったクマとか、動物園のクマなんですけれども、でも実はこの狭い日本にこんな大きなクマが森の中にいるんだっていうあたりを、澤井さんの写真から感じ取っていただけるだけでも私は嬉しいなと思います」

●すごく大型のクマであっても、山を背景にするとこんなに小っちゃいんだっていう感じで、すごく雄大な壮大な写真ですよね!

「しかもやっぱりクマがいる風景っていうのが結構落ち着くんですよね。何か普通に自然な感じがするんですよね。でもそれが日本の自然だっていうところを知っていただけるといいなと思います」 


INFORMATION

ツキノワグマのすべて〜森と生きる。


『ツキノワグマのすべて〜森と生きる。』

 ツキノワグマの基礎知識から知られざる生態まで、わかりやすくて面白く、写真家「澤井俊彦(さわい・としひこ)」さんの写真も見どころいっぱいです。この本でツキノワグマのイメージが変わると思います。小池さんの20年以上の研究成果がまとめられた本、ぜひ読んでください。文一総合出版から発売中です。

 詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎文一総合出版HP:https://www.bun-ichi.co.jp/tabid/57/pdid/978-4-8299-7232-8/Default.aspx

◎小池伸介さんの研究室HP:http://web.tuat.ac.jp/~for-bio/top-2jp.html

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