2024/2/25 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第19弾! 今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「飢餓をゼロに」
そして「つくる責任 つかう責任」に関係する事例をご紹介します。
ゲストは、カブトムシの力で有機廃棄物を資源化し、世界の食糧不足にも貢献することを目指すスタートアップ企業、株式会社「TOMUSHI」の代表取締役CEO「石田陽佑(ようすけ)」さんです。
石田さんは物心ついたときから、ツノが生えたカブトムシが大好きで、双子のお兄さん建佑(けんすけ)さんと夜、近くの森によく、捕まえに行っていたそうです。ところが、なかなか捕れないので、カードゲーム「ムシキング」で知った憧れのヘラクレスオオカブトを、おじいちゃんやおばあちゃんにお金を借りて購入。そして飼育したら繁殖して増えたので、お兄さんと相談して、売ってみようということに。
そこで、またまた祖父母を説得して、起業のための資金を出してもらい、2019年に地元の秋田県大館市で、TOMUSHIをスタート。実は石田さん、以前、東京で別の事業を立ち上げたんですが、大失敗。TOMUSHIは、再起をかけての出発だったんです。
カブトムシを育てて販売する事業は当初、とてもうまくいき、絶好調! そこで、調子にのって、銀行から資金を調達し、たくさんカブトムシを育て、もっと儲けようとしたところ、大量に発生した害虫がカブトムシのエサを食べる事態が発生、大ピンチに。そんなときに、銀行から地元で出る廃棄物をエサの代わりにできないかと提案され、試してみたら、ビジネスモデルが大転換したそうです。
ちなみに社名の「TOMUSHI」を、株式会社の表記を省略し、「株」だけにして読むと「株 トムシ」になります。
きょうはカブトムシが大好きな石田さんが、双子のお兄さんと立ち上げたカブトムシ・ビジネスの可能性に迫ります。
☆写真協力:TOMUSHI
有機廃棄物をカブトムシのエサに
※TOMUSHIのオフィシャルサイトにもいろいろ説明が載っていますが、事業内容を、ひとことでご紹介すると「有機廃棄物を、カブトムシの力を使って、資源化する」ということですよね。有機廃棄物に目をつけて、最初からうまくいったんですか?
「最初は、とにかくエサをなんとかしなければいけないって必死だったですね。なんとなく昔から、カブトムシは腐葉土を食べるとか、腐ったものを食べるとかあったので、それだったら有廃廃棄物を食べるんじゃないのかなという期待をもとに、そこからいろいろ実験を始めたのがきっかけですよね」
●有機廃棄物といってもいろいろあると思うんですけれど、具体的にどんな廃棄物を
どこから集めてくるんですか?
「いちばん最初に紹介されたのは、いくつかあって、木材廃棄物ですね。それから農業残渣(のうぎょうざんさ)、メインなものでいうと、廃菌床(はいきんしょう)と呼ばれるキノコを育て終わったあとの土台になっている部分で、これも廃棄物になってしまっているので使えないかとか・・・。
あとは畜産糞尿、牛の糞とかそういったものが使えないかとか・・・こういうところから始まったんですけど、結果的にほとんどどれも(カブトムシは)食べられるんですね。最初こういうのがきっかけで、有機廃棄物の中でも廃菌床、畜産糞尿、それからの木質系の廃棄物に目をつけて始めましたね」
●たくさん量が必要だと思うんですけど、どうやって集めるんですか?
「これが、我々が想像していたよりも、はるかに事業者側のほうが量をたくさん排出してしまっていて、調達というところでは、そこまで苦労することなくできていましたね」
●それをカブトムシの幼虫が食べられるエサにする技術を開発されたっていうことなんですよね? どういう技術なんですか?
「カブトムシといえどもなんでも食べられるかというと、非常に難しいところがあって、カブトムシにとって毒性があったりとか、食べられない状態のものがあるんですね。我々食べさせる前にエサを一度発酵という過程を通すんです。
発酵というと、キムチとかを想像されるかもしれないですけれども、あれに近くて、大量に微生物が発生して、それによって熱が放出されて微生物が活発になるわけです。その活発になった微生物が、カブトムシの嫌がるものとかを食べてくれることがわかってきているんですね。
それで最終的には、ある程度熟成させた状態のものを与えると、カブトムシの成長がよりよくなるのがわかって、微生物の組み合わせだとか、カブトムシとの微生物の組み合わせを研究してきていますね」
カブトムシを品種改良!?
※TOMUSHIのもうひとつの特徴として、カブトムシを品種改良したそうですが、どんなカブトムシになったんですか?
「当初、カブトムシを品種改良しようとしたのは・・・いちばん最初、有機廃棄物を食べることがわかった時に、これはもしかしたら、 有機廃棄物をカブトムシが食べるということは、これがタンパク源になるんじゃないかと・・・。そうするとゴミがタンパク質になるんだったら、世界中の食料危機を救えるんじゃないかというのがきっかけですね。
そこの食料の部分に対して、カブトムシを品種改良というか生産効率を考えていた時に、一年でワンサイクルしかしないと、どうしても採れる量が少ないというところで、これの成長速度が速くならないかというのが最初のきっかけです。
いろいろ(カブトムシの)サンプリングをして調べていくと、地域によって成長速度が違ったんですね。簡単にいうと、寒い地域のカブトムシほど成長速度が速かったんです。これは冬眠があるから速いんですね。
冬眠がある期間は成長できないので、早く成長してしまってから冬眠をするという習性があって、この習性を利用できないかっていうので、それとゴミを食べることに特化したカブトムシを掛け合わせて品種改良を行なっていったんです。成長速度が速くて、なおかつゴミを食べられるカブトムシが誕生してきたというそういう背景がありますね」
●もともとのカブトムシ、つまり親はどこから持ってきたんですか?
「あ、これは日本各地のカブトムシを採取してきて、その子孫をとって、成長速度がどのぐらいなのかとか、どれだけ差があるのかとか、そういったものを測定してその中から選抜をして、これとこれを掛け合わせようっていうので、掛け合わせて残してきていますね」
●カブトムシ好きですから、そういう作業も楽しそうですね!
「楽しいですね! もうたまらないんですよ! 趣味の延長線みたいなもんですよね、もうこれは!」
●例えば、外国産のカブトムシが逃げ出して、日本のカブトムシと交雑するとか、自然界に影響を与えるというような心配事はないんですか?
「これは、非常によく聞かれる質問なんですね。基本的にこれも意外と知られてないんですけれども、外国産のカブトムシはそもそも日本の屋外で生活ができるかというと、ほとんどの種類は難しいんです。一部生活できる種類もいるんですけれども、そういったものは特定外来生物みたいなものになっていて、飼育することがそもそも禁止されていたりとか、そういうふうになっています。
ヘラクレスオオカブトとか、よく耳にするようなカブトムシは外に出てしまうと、おそらくすぐ鳥に食べられて死んでしまうんですね。万が一生き残ったとしても、冬が来てしまうとその段階で死んでしまいます。
そもそも種類的にいうと、日本のカブトムシと交雑してしまう可能性はないですね、全くないです。 一部の中国のカブトムシとかは可能性があるかもしれないですけれども、ほとんどのカブトムシは、まずそれは可能性としてはないものになります」
収益の3つの柱
※素朴な疑問なんですが、TOMUSHIはどうやって収益をあげているのか・・・カブトムシを販売しているんだろうな〜という想像をつくんですけど、どうなんでしょう?
「我々の収益の柱は大きく3つあるんですね。まずひとつめが単純にプラントとしての販売。カブトムシを育てて、ゴミを処理しながら育てるというゴミ処理機能をセットにしたような形のプラント、これを販売することがまずひとつ」
●廃棄物処理のプラント!?
「そういうことです。それを販売することがまずひとつで、もうひとつが単純にペットとしての販売の売り上げですね。そのプラントから育ってきたカブトムシを我々がすべて買い上げて販売をするんですけれども、ここでの販売の売り上げがもうひとつの大きいところですね。
もうひとつはイベント事業ですね。廃棄物を食べて育ったカブトムシは、結局高くてなかなか子供たちには手が届かないので、子供たちにも触れ合う機会を提供したいということで、夏の1か月間、夏休みに合わせてイベントをやっているんですね。昆虫展みたいなものです。
ただの昆虫展ではなくて学べる昆虫展っていうので、SDGsについてカブトムシを通して触れ合いながら学ぶというような、そういう事業をやっているんです。これもものすごくたくさんのかたがたにご来場をいただいて、売り上げの柱のひとつになっていますね」
●プラントの販売っていうのは、具体的にどういうことなんでしょうか? プラントそのものを提供する? それともノウハウを提供する? どういう感じなんでしょうか?
「はい、ありがとうございます。これはどちらもありますね。 プラントそのものももちろん提供するんですけれども、それだけでは運営できないので、そこのノウハウだとか、まさに入口から出口のところまで、ノウハウをすべて提供しながら運営をしていますね」
●現在全国で何か所ぐらいTOMUSHIが手がけたプラントが稼働しているんですか?
「全国で北は北海道から、南は沖縄まで大体30か所ぐらい、各地にあります」
●どのくらいの量の有機廃棄物を処理できるんですか?
「全体の量でいくと大体2000トン程度の量を年間処理していますね。個別にいうと年間10トンのものから、1か所で数百トン処理をしているような、規模の違いはそのぐらいありますね」
(編集部注)カブトムシを飼育しているかたは特に、いくらで販売しているのか、気になりますよね。石田さんによると、数千円から高いものでは数十万円もする貴重な外国産のカブトムシもいるそうですが、平均すると1万円前後での販売だそうです。詳しくはTOMUSHIの、外国産を多く扱っているECサイト「昆虫専門店ビーラボ」をご覧ください。
☆昆虫専門店ビーラボ: https://kabuto-mushi.com
カブトムシの魅力を世界に発信!
(編集部注)先ほど、カブトムシを品種改良したというお話がありましたが、石田さんによると、品種改良は研究の段階で、日本のカブトムシを中心に一部、外国産も含め、いろいろな種をかけあわせたそうです。
いまプラント販売で、メインで提供しているのは日本産のカブトムシだそうですが、エサにする有機廃棄物によって、使い分けているので、プラントを販売する際は、先に有機廃棄物のサンプルをもらって、どのタイプのカブトムシが適応するか、試験をして提供しているとのことです。
※世界の人口増加により、食糧不足が懸念されるなか、昆虫食に期待する声も高まっていると思うんですけど、カブトムシの場合、成虫よりも幼虫がタンパク源として活用できるような気がするんですけど、どうなんでしょう?
「タンパク質としては、どちらも近しいような数値にはなると思うんですけれども、生産の効率を考えると幼虫のほうがいいと思っていますね。昆虫食というところでいくと、原料として考えるとやっぱり効率を求められてしまうので、成虫まで育てるよりも幼虫で出荷をしたほうが、生産期間というか製造期間が短くなるので、幼虫のほうが効率がいいっていうことがありますね。
あと、昆虫食に関していうと、これはよく笑われてしまうんですけれども、カブトムシは甲殻類にあたるんですね。僕は甲殻類アレルギーがあってカブトムシもアレルギーで食べられないっていう、なんていうんですかね・・・共食いしないように生まれてきたんですかね(笑)」
●(笑)なるほどそうなんですね!
「そうなんですよね~」
●カブトムシをペットとして飼育する、文化みたいなものは海外にもあるんですか?
「海外にもあるにはあるんですけれども、日本ほどメジャーなものではないですね。日本だと男性のかただと、ほとんど一度は(カブトムシを)飼育したことがあると思うんですけれども、このレベルで飼育する国は世界各国見ても、おそらく日本だけだと思いますね」
●今後、有機廃棄物をカブトムシの力で資源化して、世界の食料不足に貢献するために世界に打って出ようみたいな、そういうお気持ちもあるんですか?
「もちろんです。資源を解決したいっていうよりも、より根本にあるのは・・・我々カブトムシ好きとして創業した当初、カブトムシってペットだけでしょ! って言われて、非常に悔しい思いをしてきているんです。それがようやく、原料としての可能性とか医薬品に使えそうだとか、様々なことがわかってきて、カブトムシはツノが生えてかっこいいだけじゃなくて、これだけ世の中に貢献ができるんだと・・・それが日本国内では、いろんなメディアにも出させていただいただいたおかげで、広く伝わってきて、”頑張ってるね”ってよく言っていただけるんですね。
インドの現地に行って、僕がいつも通り、いろいろカブトムシについて魅力を、ここが素晴らしいんですよ! っていうのを伝えたんですけれども、彼らからすると、ほかの虫と変わらないというか、なんかまあ多くいると言ったらゴキブリとか、そういうのとカブトムシは一緒だよねという、そういう扱いなわけですよ。僕もそれを言われた時に、いやいやこれだけすごいし、ツノも生えているんだと! いうのを話すんですけど、”そんなの知らないぞ”って言われてしまうんですね。
なので、僕らとしては全世界に対して、カブトムシはこれだけ環境にも貢献できて、循環型で資源を循環させられる役割があると、これだけでもものすごく魅力があることだし、それにこれだけのツノがついて立派でしょ! っていうのを全世界に広めていきたいという根本の気持ちとしてはまずあるんですね。そのために、より実際に事業として全世界に向けて提供していきたいという思いがありますね」
日本の文化が作ってくれたビジネス・モデル
※国内での新たな展開はありますか?
「国内のところでいくと、やっぱり先端分野ではカブトムシの、それこそ幼虫の粉末にしたものを原料として、例えば水産飼料とか畜産飼料とか、外国からの輸入に頼っている部分を国産のカブトムシが担えないかというところで、実際に研究だったり実証実験というのが今進められていますね」
●このTOMUSHIのビジネス・モデルはもうオンリーワンですよね?
「そうですね。これもあんまり知られてないんですけど、我々がこうやって事業をやれているのは、本当に日本にこの文化があったおかげですね。
我々はほぼすべての、全世界のカブトムシ、クワガタを入手することができて、それで品種改良することができるんですね。これは、ほかの国にはない日本の文化が作ってくれた、本当に日本が誇るべき財産ですよね。これのおかげで日本から我々みたいなカブトムシ・ベンチャーが出ていますけれども、ほかの国でこれができるかっていうと難しいですね」
●大好きなカブトムシをビジネスにした今、どんなお気持ちでいらっしゃいますか?
「もともと僕は、朝起きるのがすごく苦手で目が覚めなかったんですけれども、今の事業をやるようになってからは、やっぱり好きなことなんで、なんていうんでしょう・・・ワクワクして目が覚めるという、これが個人的にいちばん大きな違いですね。
これは本当に一緒に働く仲間も近いと思うんですけれども、ただのビジネスではなくて、自分の好きなことであって、とにかく楽しく仕事ができるっていうのは、僕にとっては天職だと思いますね、これは!」
●すごくカブトムシへの愛が伝わってきました。では最後にカブトムシを見ていて、どんなことを感じますか?
「そうですね~”カブトムシの魅力はなんですか?”って、よく聞かれるんですけれども、分からないんですよ。逆に僕らからすると、生まれて物心ついた頃からずっと好きなので、なぜカブトムシがかっこよくて、なぜ魅力的なのかわからないんですよ。
逆にみんなそう思っているんじゃないの? と思っているんですけど(笑)、非常に表現が難しいですね。とにかく何か謎の魅力があるんですよ、カブトムシっていうのは・・・見ていてもずっと飽きないというか、フィギュアが動いているようなそんな感覚ですよね」
INFORMATION
TOMUSHIの事業にぜひご注目ください。プラントやペットしての販売、そして子供たち向けのイベントのほかに、昆虫専門の情報サイト「ムシペディア」なども運営。ECサイト「昆虫専門店ビーラボ」では、へラクレスオオカブトなど外国産のカブトムシを多く扱っています。事業内容や販売について、詳しくはTOMUSHIのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎TOMUSHI:https://tomushi.com
◎昆虫専門店ビーラボ:https://kabuto-mushi.com
2024/1/21 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第18弾! 今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「住み続けられるまちづくりを」「質の高い教育をみんなに」「貧困をなくそう」そして「つくる責任 つかう責任」に関係する事例をご紹介します。
今回は業態の異なる、ふたつの会社の取り組みをクローズアップ! 前半はウエブメディアを運営するメディア・カンパニー「ハーチ株式会社」。そして後半は、アップサイクル・ブランドを展開する「ココロインターナショナル株式会社」の、それぞれの事業について、ご担当のかたにお話をうかがいながら、社会や環境に対する思いに迫ります。
まず、お話をうかがうのは、メディア・カンパニー「ハーチ」の「室井梨那(むろい・りな)」さんです。
2015年、創業の「ハーチ」はウエブメディア事業を展開している会社で、スローガンは「パブリッシング・ア・ベター・フューチャー」=「よりよい未来をみんなに届ける」、ということで、サステナビリティ、サーキュラー・エコノミー、教育など幅広い分野でウエブメディアを企画・運営しています。
社名の「ハーチ」は、「ハート」と「アーチ」を組み合わせた造語で、人の心と心をつなぐ 架け橋になりたいという思いが込められているそうです。
☆写真協力:ハーチ株式会社
サステナブルでユニーク!?
●「ハーチ」が運営しているウエブメディアの中から、まずは「IDEAS FOR GOOD」について。これはどんなコンセプトのメディアなんでしょうか?
「コンセプトとしては、社会をもっとよりよくするっていうのが、テーマになっています。例えば、気候変動ですとか海洋プラスチックの問題みたいな、総称して社会課題と呼ばれるようなものを解決するための、ユニークなアイデアを紹介するウエブマガジンになっています」
●拝見させていただいたんですけれども、アートとかファッションとかフード、建築とか、いろんなジャンルに分かれているんですね。具体的にどんな記事があるのか教えていただけますか?
「私たちは、ユニークに解決するアイデアっていうところをすごく大事にしているんですね。例えば、先ほど海洋プラスチックの問題に触れたんですけど、河川の汚れをきれいにしたいってなった時に、ただゴミを拾いましょう、ではなくて、オンラインゲームの仕組みと合わせて、遠隔で河川の汚れを掃除できるロボットをゲーム感覚で操作して、川をきれいにできるシステムとか。
使い捨てのビニール袋が有料になって、マイバッグを持ちましょうねって世界的になっていると思うんですけど、それもあえてお店で配るビニール袋をすごくダサいデザインにして、そうしたらみんな持ちたくないから、自分の家からかっこいい好きなマイバッグを持ってくるようになるんですよねっていう、ちょっとデザインと掛け合わせているとか、そういう形でワクワクだったりとか、楽しいって気持ちになるようなアイデアをいろいろ紹介しています」
●では、続いて「Livhub(リブハブ)」というものもありました。こちらもウエブマガジンですか?
「はい、“サステナブルな旅”をテーマに情報発信していて、“トラベル・ライフスタイル・マガジン”と呼んでいるんです。どうしたら自分の旅が、よりサステナブルになるかとか、あとそもそもサステナブルな旅ってなんだろう、みたいなものを問いかけて一緒に考えていくような、そういうメディアになっています」
●旅情報を発信するウエブマガジンっていうことになるんでしょうか?
「そうですね。大きく言うと旅情報の発信にはなるんですけれど、Livhubの編集部員は旅を通して、人と自然の関係とか、人同士の関係とか、自分と自分自身との関係、そういったいろんなものとの関係が、バラバラになってしまっているものがつなぎ直される、そういう力が旅にはあると信じて、ウエブメディアを運営しているメンバーなので、世界がよりそういう方向に向かっていくために、旅は何ができるかっていう、そういうことを発信しています」
●具体的にはどのような記事があるんですか?
「いちばんわかりやすいところで言うと、例えばホテルで、コンポストを導入しているホテルはこんなところがありますよっていう紹介とか、サステナブルに旅するためにどうしたらCO2をより少なくできるかとか、そういう具体的な方法を説明している記事もあります。
あと文化的なところに触れて、編集部員が世界各地を旅して、感じたこと、触れたことをコラム的にご紹介しているものとか、あとはサステナブルな活動をしている、例えばホテルとか、実際にサステナブル・トラベルを自分で体現しているかたに取材をして、インタビュー記事を載せたりとかもしています」
(編集部注:紹介する情報は、世界各地にいるスタッフが集めて、それを日本語に翻訳して発信しているそうです)
Circular Yokohama〜横浜を循環型に
※続いて、「Circular Yokohama」について教えてください。
「これは“サーキュラー”と“横浜”、ふたつの言葉がついている通りなんです。サーキュラーは日本語で言うと循環ですね。横浜は神奈川県横浜市の横浜で、横浜という町をより循環型にしていくためのプラットフォームになっています」
●室井さんはこの「Circular Yokohama」を担当されていらっしゃるんですよね。どんなプラットフォームなんですか?
「プラットホームっていうと、結構わかりづらいなと思っているんですけど、テーマが『プレイフル・サーキュラリティ、循環を遊ぼう』っていうふうに言っています。サーキュラーとか循環、最近だとサーキュラー・エコノミー、循環経済とかってニュースでよく聞くと思うんですね。
エコノミーって言葉を聞いた時に、みなさん何を思い浮かべますか? って言うと、どうしても固いイメージとかで、自分の生活に結びついている感覚があるかたは少ないと思うんですね。でも、循環とかサーキュラーって、本当はもっと楽しくかっこよく体験できるものなんだよ! っていうのを訴求したくて、このプラットホームを運営しています」
●どんなことに取り組んでいらっしゃるんですか?
「ウエブの会社なので、ウエブメディアは作っていて、先ほどご紹介したようなほかのメディアと同じように、インタビュー記事とか横浜市内のサーキュラーな情報発信ももちろんしているんですけど、会社の中ですごくユニークなのが、Circular Yokohamaは実際に活動拠点を横浜市内に持っているんですね。
なのでウエブ、いわゆるインターネット上の活動だけじゃなくて、実際に市民のかたがたにサーキュラーなものを見ていただいたり、触れていただいたり、そういう展示会をやったりとか、あとはものづくりするイベントを開催したりとか、顔の見える関係性を保って活動しています」
(編集部注:「Circular Yokohama」では「めぐる星天(ほしてん)」というイベントで、新しく英会話カフェが始まったそうです。興味のあるかたはぜひ、ハーチのサイトをご覧ください。https://circular.yokohama/2023/12/11/englishcafe_circularoctober/)
3つのP〜 PEOPLE. PLANET. PROSPERITY
※「ハーチ」はメディア・カンパニーとして大切にしているテーマがあるそうですね。
「私たち3つのPを大事にしています。それが「PEOPLE(ピープル)PLANET(プラネット)PROSPERITY(プロスペリティ)」の3つですね。日本語で言うと、「人・環境・繁栄」の3つを大事にしています」
●具体的にそれぞれ簡潔に教えていただけますか?
「はい、まずPEOPLE、人っていうのは、やっぱり人がつながり合うことで、個人としての幸せ、あとは組織社会全体としての幸せだったり、その幸せがあるから社会全体、地球全体が持続可能性になるよね、持続可能サステナブルだよねっていうところで、まず人を軸にすごく大事にしています。
その上でやっぱりPLANET、つまり環境とかこの地球上っていうもの・・・人間というと、どうしても人間と自然って別のものみたいに考えがちなんですけど、私たち人間もこの自然の循環の一部だよねっていうことです。
私たちが活動するってことは、まさに自然が循環していくってことなので、自分たちが活動することで生態系とか、地球の循環全体をプラスにしていきたいよねっていうような思いで、PLANETがふたつ目に置かれています。
最後にPROSPERITYってちょっと難しいんですけど、繁栄っていう意味で、人が幸せで、それによって地球も持続可能になって、そうすることで人と自然は分断を起こさずに、お互いがつながり合った状態で持続可能に繁栄できる、つながり合って栄えるよね! っていうことで、最後にPROSPERITYを大事にしています」
●番組としては「PLANET」に関して、どんな活動をされているかをお聞きしたいんですけれども、具体的にご説明いただけますか?
「メディアとしては情報発信を通して、今ご紹介したように、自然と人を切り離すんじゃなくて、あくまで人は自然の、生態系の一部だよねっていうところを軸にして情報発信をしているんですね。それによってどうしたらサステナブルになるかっていうのは、私たちのメディア全体としてのテーマにあります。
実際の行動として、私たち、どんなことしているんですか? っていうところに関しては、オフィスで出てしまうゴミを減らすために、コンポストをもちろん置いていますし、あと捨てるゴミも毎回計量しています。どのぐらいゴミが出てしまっているかを、重さを測って、みんなで改善できるところしていくっていうこともしています。
あと仕組みとして、私たちのメディアに訪れてくださったかたの人数、PVプレビューの数なんですけど、その数、人が訪れるごとに1円とカウントして、毎年訪れてくださったかたの人数分×1円を、社会とか環境に対して働きかける活動をしているかたがたに寄付をしたりとか、そういった形で実際に我々も何か行動を起こす、発信するだけじゃなくてっていうことを意識しています」
●そうなんですね! ゴミを計るっていうのもいいですね。
「実際にやってみると、思ったよりゴミが多かったりとか、あと(ゴミを)計るために一回全部、ゴミ箱に入ったものを出して広げたりするんですね。思いのほかプラスチックが多いねとか、逆にあれ? なんでこんなものが捨てられているんだろうってものが出てきたりだとか・・・ただ計るだけと思うんですけど、侮るなかれで、結構いろんな気づきがあります」
後半はアップサイクル ・ブランド「Coco&K.」を展開されている「ココロインターナショナル」の代表「井上伸子」さんにご登場いいただきます。
「Coco&K.」は、井上さんが2006年に立ち上げたブランドで、製造の拠点はフィリピンにあります。原材料は、捨てられたジュースのアルミパッケージで、それをアップサイクルして、カラフルで可愛いバッグやポーチ、財布などに生まれ変わらせています。井上さん曰く「作る人、使う人、そして子供たちに笑顔と幸せを運ぶ」ハッピーなプロジェクトのブランドだそうです。
☆写真協力:ココロインターナショナル
フィリピンで運命の出会い!?
※そもそもなんですが、フィリピンに行ったのは、どうしてなんですか?
「もともとアジアンテイストの雑貨が好きで、アジア版ソニープラザみたいなのをやりたいなっていう夢が漠然とありました。日本の展示会にも行っていたんですが、フィリピンでも面白い展示会があるよっていうことを聞いて行ったのが、運命の始まりでしたね」
●フィリピンのどのあたりに行かれたんですか?
「フィリピンのマニラの市内で展示会はあったんですね。マニラには初めて行ったんですが、マニラに着いた時、すごくショックを受けたんですね。道路を歩きますとボロボロの服だったり、靴を履いていない子供たち、あと物乞いをしている子供たち、そんな子にたくさん出会ったんですね。
私も当時同じぐらいの子供がいたので、ものすごくショックで、フィリピンっていう国のことは少しは想像していたんですけれども、本当に想像をはるかに超えていて、ショックで悲しくなってしまって・・・。
そんな気持ちのまま、翌日、展示会に行って、そこでこのカラフルなバッグと出会って、一目惚れして、話を聞いてみたら、これは廃材を使って作っている、あと女性の雇用、女性のためになるもの、あと子供たちのためになる活動をしている、そんな話を聞いて、すごく感動したんですね。その時にこれだ! これを日本に連れて帰りたい! って思ってしまったんです」
※井上さんがマニラの展示会で一目惚れしたカラフルなバッグは「キルス・ファウンデーション」という地元のNGOが作ったものだったんです。団体名にある「キルス」には、どんな意味があるんですか?
「キルスっていうのは、KILUSって書くんですが、これはフィリピンのタガログ語で、それぞれの頭文字の意味が込められていて、『愛国心・ひとりひとり・目的・発展・ふるさと』というタガログ語の頭文字を取って付けられているんですね。
自分たちの住む街を世界一美しく緑あふれる街にしようっていう、そんな合言葉で生まれたボランティア団体でした。当時は川の汚れで悪臭もひどくて、そんなことで地区長さんが立ち上げたのがこのボランティア団体だったんですね。
川のゴミを拾って街をきれいにしようということを呼びかけて、それと同時にやっぱり子供たちを学校に行かせる必要性があるよっていうことも呼びかけて、それだけじゃなくて、女性の収入になるためにっていうことで、自宅の脇に小さな工場を建てて、リサイクルバッグを作り始めたっていうのがジュースバッグの始まりでしたね」
(編集部注:マニラの展示会で一目惚れした井上さんは、その場で200個注文したそうなんですが、当時「キルス・ファウンデーション」は小さな団体で、連絡方法もファクスしかなく、注文したものが届かないとか、やっときた商品もサイズがバラバラで汚れていたりなど、日本の市場で販売できるような状態ではなかったそうです。
そこで井上さんは、現地の工場に何度も足を運んで、働いている女性たちにメジャーの使い方を教え、何度もやり直してもらって、やっと商品づくりと仕入れを軌道に乗せることができたそうです。
現在は、廃棄されたアルミのジュースパックの回収、洗浄など、生産工程がしっかり組まれているとのことですが、実は商品づくりは全部手作業なんです。工場では50人ほどが働き、自宅で作業する女性たちを含めるとトータルで200人くらいのかたがバッグやポーチなどを作る仕事についているとのこと。
また「キルス・ファウンデーション」の地道な活動が功を奏し、川も街もきれいになり、工場で働く女性の子供たちは学校に通えるようになっているそうです。「キルス・ファウンデーション」は未来のために子供の教育にも熱心に取り組んでいるとのことです)
丁寧に愛を込めて、使う人も幸せに
※井上さんが現地のスタッフのかたがたを見ていて、いちばん感じることはどんなことですか?
「みんな(私が)行くとすごく笑顔で迎えてくれて、お仕事も楽しそうにしていますね。この仕事にみんな誇りを感じているし、今ではもう私が及ばないぐらい上手に作ってくれる、みなさん素晴らしい技術者になっています。
丁寧に大切に愛を込めて作ってくれているのが感じられるので、だからこのバッグは、使う人も幸せにしてくれているなっていうことをすごく感じます。使っている人から、これを使うと本当に元気になれるよとか、明るい気持ちになるって言ってくださるんですよ。みんなにプレゼントしたくなるわって言って、プレゼントされた人がまた大好きになって、どんどんご縁がつながっていく感じが素晴らしいなって感じています」
●日本でもエシカルっていう考え方がどんどん広まってきていると思うんですけれども、今後特に取り組んでいきたいことってありますか?
「そうですね・・・エシカルとかサステナブルとか、難しいことはわからないですけれども、やっぱりこの活動を長く続けていくことがいちばん大切だなと・・・。一時の流行り廃りで終わらせたくないっていうことはずっと思っていて、長く続けることですね。
あと、若いかたの意識がエシカルとか、昔の私たちよりずっとずっと素晴らしくなっているので、逆に教えてもらいたいこともたくさんあります。このアップサイクルのバッグも、もっともっと可能性があると思っていて、若いかたの力を借りてデザインの面でも、デザインを勉強しているかたのアイデアをお借りしたり、もっともっと新しいものが作り出せたらいいなと思っています」
●最後に今いちばん伝えたいことを教えてください。
「今いちばんは、やはりこのCoco&K.のバッグを日本中のみなさんに使ってもらいたい、手に取ってほしいということですね。まずは可愛いと思ってもらって、それから作られている背景や、環境問題、雇用問題、教育問題にも貢献できるかな、なんてことにも目を向けてもらえたら嬉しいですね。
あとは最後に、私自身もこのバッグのおかげでたくさん素晴らしいご縁をいただいてきました。ハーチさん始め多くの人が支えてくださって、そして長く続けてくることができました。このバッグとこれを始めてくれた『キルス・ファウンデーション』のエルサさんと、キルスのメンバーのみんなに感謝の気持ちを伝えたいです」
INFORMATION
メディア・カンパニー「ハーチ」はきょうご紹介した以外にもユニークなメディアを展開しています。ぜひオフィシャルサイトにアクセスして、体感していただければと思います。
◎ハーチ :https://harch.jp
「ココロインターナショナル」のアップサイクル・ブランド「Coco&K.」では、カラフルで可愛いバッグやポーチなどを販売しています。ほんと気分が上がるし、オフィシャルサイトを見ていると、誰かにプレゼントしたくなるようなアイテムがたくさんあります。ぜひご覧ください。商品は、オンライン・ショップで購入できますよ。
◎Coco&K. :https://www.coco-k.jp
◎Coco&K. オンライン・ショップ:https://www.coco-k.jp/onlineshop/
2023/12/10 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第17弾!今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から、おもに「つくる責任 つかう責任」そして「産業と技術革新の基盤をつくろう」について考える事案をご紹介します。
お話をうかがうのは、100%食品廃棄物から作る新素材を開発し、注目を集めているベンチャー企業「fabula(ファーブラ)」株式会社の代表取締役CEO「町田紘太(まちだ・こうた)」さんです。
町田さんは、お父さんの仕事の関係で小学生の3年間をオランダで過ごし、学校の授業で地球温暖化を研究・発表することがあって、それがきっかけで、環境問題に興味を持つようになったそうです。趣味は海外旅行で、これまでに60カ国以上を訪れているほどの旅好き。
そして東京大学に進学し、卒業研究で食品廃棄物から新素材を作る技術を開発。2021年に幼馴染みの3人で「あらゆるゴミの価値化」を目指し、「fabula」株式会社を設立されています。
町田さんが開発した技術を使えば、捨てられてしまう食材がお皿などの小物から建築用の資材などに生まれ変わるんです。今回は、東京大学生産技術研究所・駒場リサーチキャンパスに町田さんを訪ね、お話をうかがってきました。今回は、食品廃棄物を原料に作る新素材の可能性に迫ります。
☆写真協力:fabula Inc.
fabulaはラテン語で「物語」
※「fabula」のオフィシャルサイトのトップに「ゴミから感動をつくる」というフレーズが載っています。改めて「fabula」ではどんな事業を行なっているのか、ご説明いただきました。
「ひとことでいうと、食品廃棄物から新しい素材だったり、製品を作っているような会社です。もともとは東大の研究室から生まれたというか、私が研究室にいた時に開発したその素材を、実装化するために作った会社で、技術のおおもとは大学で作られています」
●創業は2021年ということですけれども、社名になっている「fabula」には、どんな思いが込められているんですか?
「この言葉自体はラテン語なんですけど、日本語に訳すと、物語とかそんな感じの意味があります。食品廃棄物から、ゴミから、新しい製品とかプロダクトに変えるにあたって、普通の産業で行なわれているようなストーリー性があったりとか、背景に思いのある物作りをしたいなと思って、こういう社名にしています」
●改めて、この会社を起業されたのは、どうしてなんですか?
「シンプルにいうと、面白そうだったからというのがありますけど(笑)」
●面白そうだという理由で起業するって、すごいことですね。
「そうですね。普通にやってみようと思ったのと、ある意味、失敗してもいいんじゃないかなっていうような、わりかし楽観的な気持ちもあった気がしますね」
●そもそもすごくさかのぼって、この分野を研究しようと思ったきっかけは、何だったんですか?
「もともと(私が)いた研究室自体がコンクリートに関する研究室で、コンクリートってものすごく環境負荷が高い素材なんですけど、環境負荷の高いコンクリートをリサイクルしたりとか、コンクリートに代わる素材を作る、そういう研究室にいたんです。
で、そこに入った時に私の指導教官の酒井先生が、それにまつわる研究をずっとやっていて、その中で先生としては、食べられるコンクリートがあったら面白いんじゃないかって、ちょっとファンシーな思いがあったりとか・・・。
僕自身もともと環境問題を含め、社会課題に対してすぐ取り組める研究があったほうがいいなって思っていたのもあって、その辺が合わさって、食品から何か作ろうかなみたいな話になっています」
●この「fabula」は幼馴染みの3人で作られた会社ということですけれども、ほかのメンバーおふたりも同じ思いでいらっしゃるということですよね。
「だと信じていますけど(笑)」
●お誘いしたのは、やはり町田さんですか?
「そうですね、2年くらい前に・・・」
●おふたりも、やろうやろうっていう感じでしたか?
「そうですね。やっぱり素材自体に魅力を感じてくれて、ふたりが働いていたバックグラウンドだったりとか、興味があることとか、そういう中でもともと持っていた思いとかも合わさって、今一緒にやっているようなところです」
●町田さんが声をかけて、おふたりの思いはどんな感じだったんですか?
「松田と大石というふたりなんですけど、松田はもともとコーヒーを輸入する商社に勤めていたんですね。そういう中で、コーヒーってまさしく抽出かすだったりとか、いろんな廃棄物が出て、それは消費する日本でもそうですし、生産するブラジルとか中南米とか、そういうところでも実際にいろんな廃棄物が出ています。
そういうものに対しての課題感をずっと持っていて、そういう課題の解決にもつながるし、この素材の特徴も見て、これは何でもできるって、彼は言っていて、そこがたぶん思いとしてあったのかなと思うのと・・・。
大石はもともと感性工学と言って、音とか光とか、感性的な情報が人の行動にどういう影響を与えるかっていうような研究をしていました。そういう中でこういうちょっと香りがする素材で、人々の行動がどう変わるのかなとか、お皿に見えるけど、香りがしたりとかすることで違う影響とか、カレーの匂いを嗅いだらカレーを食べちゃう、みたいなことに近いかもしれないですけど、そういうようなことを素材を通じてやりたいというふうに言っています」
技術はシンプル、「たこ煎餅」と同じ!?
※ここからは「fabula」が作っている新素材について、具体的にお話をうかがっていきます。まずは、食品廃棄物を新素材にする技術について、なんですが、明かせる範囲内で構わないので、どんな技術なのか教えてください。
「技術自体はとってもシンプルです。例えば、白菜とか野菜のクズみたいなやつを乾燥させて粉末にして、それを熱圧縮成型というような方法で素材化します。乾燥と粉砕までは本当に野菜の粉を作るみたいな感覚に近いので、そこから熱圧縮成型っていう・・・漢字5文字が並ぶと怖いですけど(笑)、簡単にいうと熱と圧力でギュッと潰しているような技術ですね。江ノ島のたこ煎餅とか、ああいうものを工業的にやっているような感覚です」
●その技術ってどうやって開発されたんですか?
「熱圧縮成型っていう技術自体は、かなりトラディショナルなというか古典的な技術です。プラスチックでもずっと使われてきていたりとか、身近なものだとベニヤ板みたいな、ああいう木材の合板でも使われてきた技術で、それを食品のくずというか、こういうものに転用してみたっていうところが新しいポイントなのかなと思います」
●開発までの道のりって、どんな感じだったんですか?
「基本的には一個一個条件を潰していくというか、温度とか時間とか圧力とか、粉の状態とか、綺麗に作るための条件なんですけど、それをいろいろ、何度だったらいいかなとか、これぐらい圧力をかけたらいいかなっていうのを、トライ&エラーで繰り返していった感じです」
●新素材になるまで、どれぐらいの日数がかかるんですか?
「基本的にプレスをする時間は、数分とかそのレベルです。あとは乾燥で結構時間がかかるものなので、 1日かかるのか、機械によっても違いますけど、本当に早ければ、すぐできるくらいです」
脱脂粉乳!? コーヒーかす!?
※開発した技術で作った新素材をもとに、これまでにどんな製品を作ったんですか?
「当初はコースターとか、ちょっとした小物入れとか、雑貨類を作っていたりとか・・・。最近だとお香立てとかも、アーティストさんとコラボして作ったりとかしているんですけど、もともとコンクリートから出発しているのもあって、建材もちょこちょこやっています。
例えば、建築の展示会用に茶室を作る機会があったんですけど、その設計会社さんに、茶室なので、お茶でできた建材みたいなものを少し提供したりとか、今度の(大阪)万博でも使用していただく予定があったりとか、そういうような感じですね」
●今回、コースターと小皿、あと小物入れ、深いお皿も用意していただきました。これが本当に食品廃棄物だったんですね。
「そうですね、もともとは」
●ちょっと触ってみてもいいですか。ツルツルで、見た目もおしゃれですし、これが廃棄物だったとは全く思えないんですけど、え〜〜すごいですね! これはもともとなんだったんですか?
「このちょっと深いお皿は、脱脂粉乳ですね」
●それがこんな立派な小物入れ、深いお皿になるんですね。この緑色のようなカーキのようなコースターは?
「緑茶です」
●緑茶なんですね! 香りとかはしないですよね?
「そうですね。コーティングがしてあるので、たぶん香りが抑えられていると思います」
●なるほど、なるほど・・・。
「もう一個のほうは、香りで判断できる気がしますけど・・・」
●これは、茶色の・・・なんでしょう?
「それはコーヒーですね」
●あっ、コーヒー、確かに! コーヒーがこの平皿になるんですね〜、コーヒーのかすで・・・。
「コーヒーの抽出かすですね」
●確かに濃い茶色と黒色でシックなお皿になっていますけれども、コーヒーのかすからできているんですね〜。この新素材を作るにあたって、いちばん苦心されたのってどんなことですか?
「本当にいろんな条件をいじっていくっていう、数打っていくっていうところですかね、やっぱり」
コンクリートより優れた強度
※「fabula」で開発した新素材の主な特徴を改めてご説明いただけますか。
「今まさしく嗅いでいただいたように香りがあったりとか、色味とかもともとの原料のイメージが残っていたりとか・・・。いわゆる廃棄物から作ったっていうと、イメージだとちょっとグレーで茶色くてとか、もしかしたらそういう感覚で、ちょっと臭い匂いがするかもしれないとか、そういうイメージとは結構逆側の、原料の特徴を活かしながら物作りをしているのがひとつと・・・。
あとは強度がそこそこあるよっていうのがあります。コンクリートと比べても強いものだと4倍ぐらいの、“曲げ強度”って言って曲げる力に対する強度があったりします」
●かなり強いですね!
「そうですね。プラスチックほどではないですけど、まあまあ強いかもしれないです」
●一度作った新素材をまた作り直すっていうこともできるんですか?
「はい、それは可能です。こういうお皿とかを回収して、もう一回、粉々にして作り直すことはできます 」
●先ほどご紹介いただいたコースターやお皿は、原材料が緑茶とかコーヒーとかですけれども、食品廃棄物がなんでも原材料になるわけではないですよね?
「基本的になんでも使えます」
●なんでも大丈夫なんですか?
「例えば、コンビニの廃棄物、いわゆる生ゴミみたいな、ああいうものでも大丈夫です」
● これまでどんなものを原材料にされてきたんですか?
「だいたい80種類か90種類ぐらいやってきていて、食品なので無限にありますけど、カニの殻とかそういうのもやったりとか・・・。脱脂粉乳みたいなちょっと動物性のものとかもやっていますし、なんかいろいろ(使っています)」
●いくつか組み合わせても大丈夫なんですか?
「合わせても大丈夫です。バジルとトマトとパスタを混ぜて、ジェノベーゼとか言ってふざけて作っていたりしました(笑)」
●すごいですね~。そういった食品廃棄物はどこから手に入れているんですか?
「食品加工の工場だったりとか、あとは飲食店、例えばコーヒーチェーンみたいなそういうところだったりとかから買い取っていますね」
価値あるものへ変えていく文化
※「fabula」で開発した新素材は、将来的には食べることも考えているそうですね。どういうことなのか、教えてください。
「食べられなくはないよっていうのが、僕らの伝えていることというか・・・。思い返すと食品だけで、もともとは食べられるものだけで作っているので、食べてもいいかもしれないっていうところはあるんです。
例えば、規格外野菜みたいな、形が悪いだけで美味しいですよっていう、そういうものから作ると、本当に食品から作っていることに近いので、食べたりもできるだろうし・・・。
もっとリアルなところで言うと、本当に最悪の場合、交通が分断して物が届かなくなったりとか、もしくは離島とか砂漠の真ん中なのか宇宙空間なのか、なかなか物流が難しいようなところとかで、最後に生きるために食べても悪くはないかなっていうところですね」
●今後、建築用の資材を作る予定はあるんですか?
「そうですね。基本的に将来的には建材を目指しているので、万博での使用だったり、そういうのを通じて、性能とか強度もそうですし、実際に使っていく事例を増やしていくのが今後かなと思います」
●町田さんが開発した技術を、今後世界でどんどん展開していく予定もあるんですか?
「海外に出ていくってことも考えてはいますね」
●具体的にどこにとか、技術の公開も考えていらっしゃいますか?
「そうですね。まだまだ海外での事例自体はないんですけど、問い合わせベースだと、非常に多いのはヨーロッパからの問い合わせと、また東南アジアからも結構問い合わせが来るので、きっとここら辺の感度が高いだろうというところに対して、アプローチしていこうかなと思います。
例えばですけど、特許の出願をしているので、特許出願をすると必然的に(技術は)公開されるものになるんですね。そういうものはもちろんありますし、技術自体を自分だけのものにするっていうよりは文化として、食品に限らずゴミって呼ばれているものを、新しい価値あるものに変えていく文化を作っていくことが、とても大事かなとは思っています。そういう意味ではいろんな人と協業していくことはとっても大事かなと思います」
INFORMATION
「fabula」で制作している小皿やコースター、タイルなどの商品は、受注生産になりますが、ECサイトから購入できます。100%天然素材なので、風合いが微妙に違う、どれも一点ものです。どんな商品なのか、価格はいくらなのか、ぜひ「fabula」のECサイトをチェックしてください。
◎「fabula」ECサイト:https://store.fabulajp.shop
◎「fabula」:https://fabulajp.com
ちなみに、現在、国立科学博物館で開催されている特別展「和食〜日本の自然、人々の知恵」のショップでも販売しているそうです。
2023/12/3 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第16弾! 今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「働きがいも経済成長も」、そして「つくる責任 つかう責任」に関係する事案をご紹介します。
お話をうかがうのは、慶應大学 環境情報学部の3年生で、合同会社「Uzuri(ウズリ)」を立ち上げた「山岸 成(やまぎし・なる)さんです。
山岸さんはお父さんの仕事の関係で、小学生の3年間をケニアの首都ナイロビで過ごしています。実はこの経験が山岸さんのその後を大きく左右するんです。
ナイロビは、山岸さんいわく、ビルが立ち並ぶ都会ではあるものの、一歩踏み出すと、すぐ隣りに国立公園やサバンナが広がっていて、先日訪れた時も改めて、とてもいい国だと感じたそうです。
そして現在は大学でビジネスに関することを学びながら、会社経営にチャレンジ、さらに陸上競技の選手としても活躍されています。
きょうは、子供の頃に暮らしていたケニアのために、アフリカの海岸や路上に捨てられたビーチサンダルを、スマートフォンケースにアップサイクルするプロジェクトを進めている山岸さんに、起業した思いや、「Uzuri」という会社で進めている事業についてお話をうかがいます。
☆写真協力:Uzuri
スワヒリ語で「Uzuri」とは・・・
※まずは、山岸さんが立ち上げた「Uzuri」という会社では、どんな事業を行なっているのか、教えてください。
「私たちは、途上国のブランドや企業さん、その中でも特に社会貢献性の強い事業を行なっているところと、パートナーシップを締結させていただいて、そのパートナーと共同で日本市場に適用した商品を開発して、それを日本で売ります。
その時にそのブランドとか企業の既存の商品も一緒に販売して、我々が作ったコラボ商品を主軸にしながら、いろんな商品を販売し、彼らが掲げているミッションであったりとか、ブランドストーリーを一緒に広げていくような形の事業です。彼らの雇用状況の改善だったりとか、雇用機会の拡大にもつなげていけたらなという事業内容になっております」
●「Uzuri」を立ち上げたのは、いつ頃なんですか?
「立ち上げたのは本当に最近ですね、8月末とかに・・・」
●今年の、ですか?
「今年の8月です」
●そうなんですね~。おひとりで立ち上げたんですか?
「大学の友人と一緒に立ち上げました」
●じゃあ、今おふたりで「Uzuri」をやっていらっしゃるんですね?
「そうです」
●「Uzuri」という社名ですけど、独特の響きがありますよね? これはどんな意味があるんです?
「これはスワヒリ語です。ケニアの公用語は英語なんですけれど、スワヒリ語も広く使われていて、 “ビューティー”っていう意味です。日本語訳すると“美しい”であったりとか、“華やか”とか“いいこと“みたいな意味合いを持つんです。
先ほど説明した事業内容のところで、パートナーの掲げている“いいこと”、もちろん美しい商品もそうですし、彼らの行なっている活動も美しい、そんなものを広げる会社でありたいなっていうところで、この『Uzuri』っていう名前にしました」
●素敵な名前ですね! 起業されようと思ったのは、何かきっかけがあったんですか?
「きっかけは、大学で経営とかビジネスに関することをたくさん学んでいく中で、なんか自分ができること、ビジネスの視点で何かできることがあるんじゃないかなって思った時に、やっぱりアフリカで、僕が何かする形で、彼らに貢献できるのであればいいなという思いから始まりました。
あと最近の社会貢献性みたいなことの強まりで・・・でも、ただいいことだけしていてもいけないよなっていうところで、社会貢献性と利益の追求の両立みたいなことにチャレンジしてみたいなっていう思いが、大学で学んでいく中で出てきて、やってみよう!と思って立ち上げました」
スマホケースにアップサイクル!
※山岸さんが、現在タッグを組んでいるのは、ケニアで海岸をきれいにする活動を行なっているNPO「Ocean Sole(オーシャン・ソール)」。廃棄されたビーチサンダルをアップサイクルして、ゾウやシマウマなどの動物のオブジェを作っている団体です。
山岸さんはこの団体を、ナイロビで暮らしていた頃から知っていたので、最初に手掛ける事業は「Ocean Sole」と一緒にやっていきたいという強い思いがあったそうです。そして、パートナーシップを結んで開発したのがスマートフォンのケースです。
●きょうはそのサンプルをスタジオにお持ちいただきました! とってもカラフルですね~。
「そうなんですよ(笑)。これ、染色とかも一切していなくて、サンダルそのものの色でできています」
●なんかケニアっぽいって言ったら、あれですけど、ほんとにカラフルで・・・蛍光ピンクとかオレンジとかイエローグリーンも・・・様々な色が溢れていて、いいですね~!
「今ケニアっぽいっておっしゃったかと思うんですけど、アフリカっぽさもありつつ・・・ただなんだろう・・・手に取りづらさみたいなのは、ないデザインかなと思っていて・・・」
●ないです! 可愛い~、老若男女みんなが持てるような感覚ですよね!
「現地のアーティストが全部デザインして制作しているので、そこでもきちんと雇用機会になっています」
●なるほど! これ、しかも裏はコルクになっているんですね!
「はい、裏はコルクで、Ocean Soleのミッション自体が海洋汚染の解決を掲げていますので、プラスチックを使わずに制作したいなという思いで、100%リサイクルのコルクを使用して作っております」
●へえ~、このスマホケースはオリジナル商品っていうことですよね?
「オリジナル商品というよりかは、UzuriとOcean Soleのコラボ商品で、これからはいろんなところとコラボする形でやっていけたらなと思って、その1個目の商品がこのスマホケースになります」
●ボーダーだったり、ドットだったり、四角だったりって、いろんな柄がありますけど、これって唯一無二っていうことなんですか?
「はい! そうなんです。その時にあったサンダルの形とか、削れ具合とかを考慮して、最適なデザインを現地のデザイナーさんがチョイスして制作しているので、同じものは一生作れない、あなただけの1点ものってことになります」
●すごい! そうなんですね~、世界でひとつだけの!
「そう、そうなんです」
●お洒落です! そもそもなぜスマホケースにしようと思われたんですか?
「それがですね・・・いろいろ僕も考えた結果、このスマホケースになっていまして、普段(Ocean Soleは)動物のオブジェを作っているところなんですけど・・・」
●動物のオブジェも持ってきていただきました。可愛いですね! こちらもカラフルです!
「可愛い動物たちなんですけど、これを日本に広めようと思った時に、なかなか難しいハードルもあるんじゃないかなと思っています。まずは、輸送でかさばってしまうものなんですね。
今回は手のひらぐらいのサイズのオブジェをお持ちしたんですけど、ほかにも(人の)身長ぐらいのサイズのもあったりとかします。そういった商品は持ってくるとやっぱり大変ですし、環境負荷もかかってしまうっていうところで、もっとコンパクトで、みんなに使ってもらえるようなものがないかなってすごく考えていました。
その時に思いついたのがiPhone用ケースです。日本はiPhoneのシェア率がめちゃめちゃ高いっていうのもあって、iPhoneなら、いろんな人が手に取ってくれて、いろんな人が手に取ってくれれば、日常生活でいろんな人がこのカラフルなのを見て、“それ、綺麗だね”とか言ってくれるんじゃないかなと思って・・・そんな形で広がってくれればいいなという思いを込めてiPhoneケースにしました」
●これは絶対、友達が使っていたら「何それ、可愛い!」って言うと思いますよ!
「僕も今サンプルを使っているんですけど、本当に知らない人から、“そのスマホケース、可愛いね”ってカフェで言われたりとかもあって、そんな形で広がってくれたら嬉しいなって思っています」
(編集部注:iPhone用のケース、カラフルでとっても可愛いんです。裏の素材はコルクなので軽いし、衝撃吸収性に優れているのも特徴です。また、職人さんがひとつひとつ手作りしているので同じものがほかにない、つまり一点ものなのも魅力ですね。
販売に関しては、年内から始まる予定。またイベントなどでの販売も検討しているそうです。販売価格も含め、詳しくは以下のサイトを見てください)
◎Uzuri 公式オンラインショップ: https://uzuri-japan.square.site
子供たちを学校に行かせたい
※今年、ケニアに行ってきたそうですね。どんなことをされてきたんですか?
「9月に行ったのはOcean Soleと、これからどういう形で進めていくかっていうのを詳細に話すのと、今回お持ちしたサンプルを作成するために行ってきました。
工場とオフィスのあとは、サンダルの回収現場にも行って参加してきて、働く人々とコミュニケーションをしっかりとるところまでやってきました」
●具体的にどんな話し合いが行なわれたんですか?
「オフィスのほうでは“こんなデザインがいいよ!”とか、“もうちょっとこうしたほうがいいんじゃない!?“みたいなディスカッションをさせていただきましたね。
工場ではどんな感じで作っているのかを、細かくヒアリングさせていただいたんです。いちばん印象的だったのが・・・(サンダルの)回収現場にも行って、ちょっと都心部から離れて、海岸沿いに行ってきたんです。
いわゆるサプライチェーンの上流、いちばん上で働く人たちともコミュニケーションをとりたいっていう思いと、その現状も見たいっていう思いもあって、行ってきたんですけど、 そこでの出来事がすごく僕の中で印象的でしたね。
働く人たちがすごく幸せそうに働くんですよ。ゴミを拾う作業なんですけど、すごく幸せそうに、みんな楽しそうに拾うんです。
その人たちが最後に僕たちにメッセージをくれて、『私たちの子供は学校に行けていない。だから私たちのこの活動を、君たちが日本にぜひ広げてください。そして私たちの現状を一緒に伝えてほしい。それが世界に広がって、私たちの子供たちが学校に行けるようになる。子供たちには未来があるから、私たちは(子供たちを)学校に行かせてあげたいから、ぜひ伝えてほしい』というメッセージをいただいたんです。
それが僕の中ですごく印象的でした。それこそUzuriが大切にしている、パートナーのミッションとか背景をきちんと、多くの人に伝えることが必要なんだなっていうのをすごく実感した場面でした。
最初(作業現場に)行った時は幸せそうに、すごく楽しそうにやっていたんで、意外と経済的なところもあまり彼らの中では、ネックになってないのかなとも一瞬思っちゃったんですけど、やっぱりそんなことはないんだなということで、我々のできることをやっていきたいなって強く思いました」
●「Ocean Sole」は現地生産ということで、雇用にもつながっていますよね?
「はい、ケニアは雇用機会が少ないのが結構深刻な問題になっていて、職業訓練校もいろんなNPOや NGOがやっているんですけど、そこを卒業しても雇用機会がなくて、職に就けない現状があるので、雇用機会を作るのは非常に重要なことなのかなと思っています」
(編集部注:ケニアで、捨てられたビーチサンダルが目立つは、まだまだ経済的には豊かではないので、価格的に安いサンダルの需要が高く、また壊れやすいこともあるそうです。山岸さんが今年9月に「Ocean Sole」の活動を視察したときも、回収したサンダルが山積みになっていて、その量に驚いたそうですよ)
次の一手! 新しいパートナー!?
※会社として「Uzuri」が大切にしていることはなんですか?
「まずは、社会貢献性っていうバックグラウンドに頼りすぎないっていうのを大切にしたいなと思っています。もちろん近年、社会貢献性が顧客にも浸透してきているのは感じてはいるんですけど、社会貢献性のデメリットとして価格が高くなってしまったりとか、あとは品質の部分がちょっと劣ってしまうみたいなことがあると思うんです。
そこを克服することが大事だなと思っていて、きちんと機能性であったりとか、このスマホケースに関してはデザイン性に注力していて、バックグラウンドを知らずとも手に取ってもらえるみたいなところは、大事にしていきたいなって思っています。
あともうふたつあるんですけど・・・ひとつが、しっかりパートナーのヒアリング・・・パートナーシップを結んだ企業とかブランドの現状とか、掲げているミッションや思いはきっちりヒアリングして、可能であれば現地に足を運んで、直接コミュニケーションをとったりとか、実際に現状を自分の目で見る、それを僕たちが伝えるっていうことは大切にしていきたいなと思っています。
最後は、公正公平な取引、いわゆるフェアトレードなんですけど、きちんとした価格で取引をして、現地にもきちんとお金を落として、働く人たちが満足できる、生活水準を上げていけるような形になればいいなと思っています」
●素晴らしいですね~。今後「Ocean sole」以外に提携していきたい団体はありますか?
「はい、今ちょうどふたつ目の企業さんとお話させていただいていて、まだ具体的なことは言えないんですけど・・・。
9月に(ナイロビに)行ってきた時に、たまたま街中を歩いていて、いいな! って思って、その店員さんに“これはどんな商品なの?”っていろいろ聞いて・・・今回詳しくはご説明できないんですけど、似た感じのアップサイクルの素材で素敵な商品を作っていたので、すぐ“社長の電話番号を教えて”って聞いて、次の日に工場まで行ってきました。
話を聞いて感銘を受けて、日本に帰ってきた時にあっちのかたも“これからコラボしていこう!”って毎日のように連絡くれて、もう嬉しい限りですね。ぜひ一緒にやりたいなと!」
「Uzuri」の未来予想図
●では最後に、未来予想図として、現在、山岸さんは21歳でいらっしゃいますから、29年後、たとえば山岸さんが50歳になった時に「Uzuri」はどんな会社になっていますか?
「そうですね・・・それこそ発展途上国のいろんなブランド、本当にたくさんのブランドとコラボレーションをして、我々とのコラボ商品をたくさん作って、Uzuriとコラボしているから、Uzuriとのコラボ商品がきっかけで、そのブランドを知って好きになりましたとか、Uzuriとコラボしているから、このブランドは信頼できるブランドだ!みたいになっていれば、嬉しいなと思っています。
やっぱり今どうしてもアフリカの商品って、若干の手を出しづらさみたいなところはあると思うんですけど、僕たちが今、最初に目指しているのは、手に取った商品が実はあとから知ったらアフリカ産だった!みたいなのができれば、嬉しいなと思っているんです。
本当に先の未来には、アフリカ産だから買いました!みたいな、日本製だから信頼ができて買いました!みたいなのと同じ感覚で、アフリカ産だから買いました! みたいな形ができれば、すごく嬉しいなと思っています」
INFORMATION
気になるiPhone用のケース、カラフルで本当に素敵です。職人さんがひとつひとつ手作りしたものなので一点ものです。販売に関しては、年内からオンラインサイトで始まる予定。またイベントなどでの販売も検討しているそうです。販売価格を含め、詳しくは以下のサイトをご覧ください。
◎Uzuri 公式オンラインショップ: https://uzuri-japan.square.site
「Ocean Sole」が制作している動物のオブジェはすでに販売されています。ゾウやキリン、シマウマ、ペンギンなどなど、カラフルでほんと可愛いんです。ぜひチェックしてください。
◎インスタグラム @uzuri_japan
https://instagram.com/uzuri_japan?igshid=NGVhN2U2NjQ0Yg%3D%3D&utm_source=qr
2023/11/19 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「SDGs QUEST みらい甲子園」の総合プロデューサー「水野雅弘(みずの・まさひろ)」さんです。
です。
水野さんは、持続可能な環境社会を実現するための事業などを行なう株式会社TREEの代表取締役、そしてSDGs.TVのプロデューサーでもいらっしゃいます。
SDGsはご存知の通り「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS」の頭文字を並べたもので、日本語にすると「持続可能な開発目標」。
これからも地球で暮らしていくために、世界共通の目標を作って資源を大切にしながら経済活動をしていく、そのための約束がSDGs。2015年の国連サミットで採択され、全部で17の目標=ゴールが設定されています。
当番組では17のゴールの中から、おもに自然や環境に関連するゴールを掲げ、定期的にシリーズ企画「SDGs〜私たちの未来」をお送りしていますが、今回は特別編! 高校生が考える社会課題解決のためのSDGsアクション・アイデアコンテスト
「SDGs QUESTみらい甲子園」をクローズアップします。
☆写真協力:みらい甲子園事務局
今回から千葉県大会を開催!
※まずは「SDGs QUESTみらい甲子園」の開催趣旨について教えていただけますか。
「本当に今、時代が大変革の時を迎えています。未来が予測困難な時代なんですけれども、そうした中においても、高校生が自ら未来をちゃんと考え向き合って、特に社会課題をどう解決していくかを起点にしながら探究し、そして、できれば主体的に行動力を高めるような、そんな機会を作ろうと思って始めたのが『SDGs QUESTみらい甲子園』です」
●今年で5回目の開催ということですけれども、開催エリアが年々増えているんですよね?
「そうですね。初年度は北海道と関西から始めまして、今年は19エリア32の都道府県で開催します」
●これまでどれぐらいの高校生たちが参加しているんですか?
「延べでいくと1万人を超えています。年々増えてきまして、昨年は5000人以上、チームでいうと1228チームがエントリーしてくれました」
●今年からは千葉県大会もあるんですよね。
「そうですね。去年までは首都圏大会という形で、千葉県も対象にしていたんですけれども、やはり千葉もたくさんの学校がありますので、千葉県大会をbayfmさんと一緒にやらせていただきます」
●千葉エリアならではのアイデアがどんどん出てくるといいですよね。
「そうですね。千葉は都会でありながらも、房総半島を考えますと本当に多様な社会課題に向き合っていますから、SDGsを起点にした素晴らしいアイデアを期待しています」
●この「SDGs QUESTみらい甲子園」の参加条件を教えてください。
「参加条件は、まずはチーム制です。高校1〜2年生を中心に、今年からリーダーでなければ、3年生も参加可能です。中高一貫校であれば、チームの中に中学生が入っても大丈夫です。2名〜6名で、部活で参加する場合は最大10名までは可能としています」
(編集部注:このコンテストは、競い合うというよりも、ほかの高校の生徒たちと交流してもらうことも目的としていて、応募する生徒たちも、それを楽しみにしているそうですよ。
今回は、各エリアから選ばれた最優秀賞の19チームが全国交流会に進み、最終的にグランプリチームが選ばれることになっています。グランプリチームは、北海道美幌町にある「ユース未来の森」に招待されるそうです)
高校生の柔軟な発想を期待!
※過去の応募作から、特に印象に残っているアイデアを教えてください。
「この番組に若干合わせて、環境的な視点から申し上げると、例えば静岡は卓球、静岡だけでピンポン玉を年間2.5トン廃棄するそうなんですね。それをリサイクルしてスマホケースを作るアイデアを考案した高校生がいたりとか・・・。
あとは滋賀県から琵琶湖、やっぱり琵琶湖を綺麗な淡水にしていきたいっていうことがあって、自分たちで天ぷら油を集めて、粉せっけんにして、そこに”草津あおばな”という地元で採れる植物を入れて液体化すると、すごく綺麗な色になるんですね。それを彼らは“琵琶湖ブルー”と言っています。天然の液体洗剤を通して琵琶湖を守っていく、普及啓発にしていく、そんなチームもありました。
あともうひとつお伝えすると、たぶん千葉でもたくさんの放置林があるんですね。竹です。日本は里山が竹によって、荒廃していく世界が多いんですけれど、その竹を使ったバイオ竹炭であるとか・・・竹問題っていうのは九州のほうが多かったです」
●大人では発想できない、高校生ならではの柔軟な発想だなという感じがありますよね。
「そうですね。高校生はある意味、グローバル意識はすごく高いんですけれども、社会課題となると、行動範囲が数十キロ圏内なので、地域に対する思いがありますね。地域の課題を環境だけではなくて、差別や相対的貧困やジェンダーの問題、様々なところから高校生らしい発想とアイデアが生まれてきています」
※「SDGs QUESTみらい甲子園」の発案は水野さんなんですよね?
「そうですね。ネーミングも含めて考えました」
●どうして始めようと思われたんですか? その辺りの思いをぜひ聞かせてください。
「僕は2007年から『GREEN TV』というイギリス・メディアの日本代表になって、環境に関わる様々な発信をしてきたんですね。2015年にSDGsが国連で採択された時に、これは共通言語になっていくし、それを起点に普及させることで、無関心のかたたちと語り合える、もう行動しなくちゃいけないなと思い立ち、翌年の2016年に『SDGs.TV』という映像メディアを立ち上げたんですね。その映像メディアを視聴しているのが学校の先生が多かったんです。
その学校の先生から、高校生たちが行動できるような発表の場をぜひ作ってくれないかっていう話をいただいて、大会というか野球の・・・全国それぞれの地域の課題や、世界の課題に向き合っていこうと思って組み立てたのが『SDGs QUESTみらい甲子園』です」
●中学生でもなく大学生でもなく、高校生を対象にしたのはどうしてなんですか?
「高校生になりますと、自分の進路をとても真剣に考え始めます。そういった意味では、キャリアとは言いませんけれども、進学や就職ということを考えた時に、社会課題に向き合っていく、いわゆる最初の芽が出る・・・。
小学生中学生ですと知識的なものが多いですね。高校生になると、もうひとつは経済的な視点も入ってくる。だから大人と子供のちょうど中間になった時に、自分の進路がまだ不透明な大学生も多いんですけれど、やはり高校生の時になるべく早く自分のヒントというか、自分のやりたいことのためには、やっぱり未来を見つめることが比較的重要だと思いまして、高校生に絞りました」
(編集部注:「SDGs QUESTみらい甲子園」は、コンテストではあるんですが、実は、応募してくれた高校生には、大学入試などのポートフォリオとして活用できる参加証明書を発行。また、先生にとっては、学習プログラムとして活用できる、そんな側面もあるんです)
自分の心と大地にタネを植える
※「SDGs QUESTみらい甲子園」のオフィシャルサイトに、グランプリチームが北海道の「ユース未来の森」で木を植えている動画がありました。この「ユース未来の森」について教えていただけますか。
「これは実は今、気候危機と呼ばれている中で、気候変動に対して高校生たちが、何か未来に向けて、活動のひとつとして、森を作っていこうっていうことを昨年度から始めました。全国の高校生がなかなか全員は来られないので、地元の高校生たちと一緒に木を植えていくという形で、気候変動行動のひとつとして、みんなで森作りを始めた次第です」
●水野さんも行かれたことはありますか?
「この10月に僕も参加しまして、汗だくになって植えてきました」
●あの動画を見ていて、生徒さんたちもそうなんですけど、参加されている先生たちが、すごく生き生きとされているなっていう印象があったんですけど・・・。
「そうですよね。道内だけではなくて、今回グランプリをとった鹿児島の種子島から来た先生も、本当に汗をいっぱいかいて、楽しそうに活動していましたね。あの映像も僕が植樹しながらiPhoneで撮影した映像です」
●そうだったんですね~。みなさん、本当に楽しそうなのが印象的でした! やはり植樹体験で気づくこともいろいろあるんでしょうね
「そうですね。彼らにインタビューをすると、やっぱり木を植えることは当然初めてなんですね。林業のかたたちがこうして木を育てていく・・・植えることも大変だし、1年2年ではなくて、20年50年100年と、すごく大変な仕事なんだってことがよくわかったと、生徒たちのコメントからは聞けました」
●やっぱり人ごとではなく、自分ごとになることが大事になってきますよね。
「そうですね。植林が大切とか、間伐が大切とか、いろいろ頭で学んでも、やっぱり自ら大地に立って苗を植えるっていうのは、すごく貴重な体験ではないかなと思います。 ほとんどの生徒が、自分が大人になったら20年後30年後には、ぜひ自分が植えた木を見に行きたい!と・・・ある意味、ちょっと大袈裟かもしれないんですけど、環境を含めた地球への何か・・・自分の心と大地にタネを植えるって感じなんでしょうね」
SDGs.TVの多様なコンテンツ
※水野さんの会社TREEのオフィシャルサイトを拝見すると、当初はマーケティングの事業を展開され、現在は持続可能な環境社会を実現するための事業を柱に据えて活動されています。事業内容を変革する、なにかきっかけがあったのでしょうか?
「大企業のマーケティング・アドバイザーのような形で、いろんなマーケティングに関わってきたんですけれど、今から20年ほど前に、やはり株主中心で、ある意味、行き過ぎた利益追求ということが多くなったことによって、ヒューマンエラーだとか、いろんな法的な事件、事故につながることが多かったんですね。
そうした点において、ガバナンスをしっかりするためには、やはり自分自身ももう少し環境や社会、いわゆる企業活動が与えていることを、しっかりとその企業にも提供すべきでしょうし、社会もそれに向かわなくちゃいけない、そういうことが舵を切ったきっかけですかね。
もうひとつきっかけとして、ちょっと長くなってしまうんですけど、2010年に『生物多様性条約会議COP10』っていうのが名古屋でありまして、それの開会式のプロデュースをしたんです。 その時に全世界で生物多様性の危機的な状況がありました。
これは生物多様性の危機的状況は気候変動もあるんですけど、私たちの消費生活、生産と消費にものすごく影響をもたらしているので、ここはやっぱり企業活動自身を、地球や社会のサステナブルのためにも取り組むべきだと考えました」
●今の主な事業としては「SDGsQUESTみらい甲子園」の学習プログラムにもなっているSDGs.TVというメディアになるんでしょうか?
「そうですね。メディア事業というよりも、これはひとつのプラットホームとしての教育ですね。これは小中高だけではなくて、企業の人材育成研修にも軸足を置いて、多くのかたたちがサステナブルな意識啓発になるようにと、研修事業を中心にしています」
●コンテンツはどんなものがあるんですか?
「SDGs.TVは本当に多様ですね。NGOのアクションから各国の政府の活動ですとか、もちろん国連や気象協会、様々な気候から生物多様性からLGBTQ、フェアトレードから途上国の話もあれば、日本国内のローカルな取り組みのものもあれば、課題から取り組みまで、様々なコンテンツを発信しています。
テキストで学ぶよりは、やっぱりエモーショナルですし、映像にはストーリーがありますよね。そういった意味では全く無関心だった子供たちを見ていると、先生から一方的に教えられるものだと下向いているんですけど、映像を見て心が動いて、これは大人もそうです。映像を見た時にやっぱり腹落ちするというか腑に落ちるというか・・・ですから、映像の力は人々の行動を促すには、とても大切かなと思います」
(編集部注:ちなみにSDGs.TVには500タイトル以上の映像があるそうです。どんな作品があるのか、ぜひオフィシャルサイトをご覧ください)
「気候行動探究ブック」を無料配布!
※学校の授業で地球温暖化や環境問題を学んでいる10代のみなさんは、私たち大人以上に危機意識を持っているように思います。その辺りは、いかがですか?
「この5〜6年、中学生高校生と出会っていると驚くのは、やっぱりエシカル意識がすごく高いです。 少し感度の高い子供たちはフェアトレードとかにも関心がありますね。
最近は本当に美容院を選ぶにしても、物を買うにしても、店を選ぶ中において・・・究極は就職、大学生も就職をしていく中において、SDGsにちゃんと取り組んでいるかとか、そういうことに目線がいく若い10代は、私たちの時代とは違って多いなと思います。
ただ気候変動で考えると、欧米と比べると日本人の10代は、まだそれだけの危機意識はちょっと弱いかなとは思います」
●「気候行動探究ブック」というものを全国の高校生に無料で配られたんですよね?
「そうですね。みらい甲子園はSDGsで申し上げると1番〜17番、それは社会課題は多様なもので構わないんですけど、やはり世界の気候変動教育ってすごく重要なんですね。イタリアやイギリスではもう国をあげて行なっているんですが、日本はまだまだ気候変動教育は進んでいませんので、行動を促すような教材を作りまして、全国およそ4300校に進呈しました」
●これはどんなブックになっているんですか?
「世界中の同じ世代の高校生たちの気候行動の情報ですとか、温暖化が与える影響、そして私たちがどういうことに取り組むべきかということをわかりやすく解説しています。
国立環境研究所のかたや国連のかた、スウェーデン・ストックホルムのレジリエンス・センターのかた、そんな専門家からの映像メッセージも入れて、多様な行動をみんなで考えるような探究ブックにしています」
●「SDGs QUESTみらい甲子園」 に応募してくる高校生たちには、どんなことを期待していらっしゃいますか?
「アンケートをとったんですけれど、みらい甲子園に参加してSDGsの意識が高まったっていうかたは大半ですし、行動意識が変わったっていう結果が最も多いんですね。 ですから、エントリーした高校生には未来を切り開く力、そして自分たちが変えるんだと主体的な考え方、そんなことを持っている、ひとりでも多くの次世代が育っていくことを期待しています」
●一方で番組を聴いてくださっている大人のみなさんに、何か伝えたいことがありましたら、ぜひお願いいたします。
「これは高校生から聞いたことなんですけど、自分たちのアイデアを自治体に持っていったら、”こんなこと、できないよ”とか、結構否定されることが多かったらしいんです。 そうではなくて、やっぱり常識が通用しない未来を考えますと、これだけ生成AIも出てきて、本当に新しい社会が今始まろうとしている。そんな時には大人も、高校生や中学生から学ぶことがたくさんありますし、一緒に共創していく思い、それを持って応援していただきたいなと思います」
INFORMATION
現在「SDGs QUESTみらい甲子園」千葉県大会では、高校生のみなさんのアイデアを募集しています。持続可能な社会を実現するために解決したい、あるいは、変えたいと考える「探究テーマ(課題)」をひとつ選び、その解決策となる具体的な「SDGsアクション」のアイデアをお送りください。
参加条件は、千葉県の高校に通う1年生・2年生、ふたりから6人で構成するチーム。高校3年生だけのエントリーはできませんが、チームに入ることはできます。
千葉県大会の応募の締め切りは、12月20日(水)午後1時。エントリー方法など、詳しくは「SDGs QUESTみらい甲子園」のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎SDGs QUESTみらい甲子園 :https://sdgs.ac
水野さんが代表を務める株式会社TREEのサイトもぜひ見てください。
◎株式会社TREE :https://tree.vc
2023/11/5 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第15弾! お話をうかがうのは、水産資源を守り、環境に配慮した持続可能な漁業の普及活動を行なう、一般社団法人「MSCジャパン」の広報担当シニア・マネージャー「鈴木夕子(すずき・ゆうこ)」さんです。
今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「海の豊かさを守ろう」ということでサステナブル ・シーフードにフォーカス! 「MSCジャパン」が取り組んでいる持続可能な漁業のための認証制度やMSC「海のエコラベル」についてうかがいます。
☆写真協力:MSCジャパン
魚の獲りすぎで35,000人もの人たちが失業!?
※まずは「MSC」について教えてください。いつ、どんな目的で設立された団体なんですか?
「MSCは持続可能な漁業を普及する活動を行なっている国際的な非営利団体です。本部はロンドンにあって、1997年に設立されました。MSCが出来たきっかけは、1990年代初頭にカナダのグランドバンクというところで、マダラの漁業が崩壊してしまったということがあるんですね。
どういうことかと言いますと、それまで獲れるだけ獲っていったマダラ漁業なんですけれども、獲りすぎてしまって、全く獲れなくなってしまったということが起きたんですね。それでマダラの漁業が崩壊したことによって、漁業者さんもそうですし、そのマダラを加工して缶詰にしたりとか、そういった加工業者も潰れてしまって、35,000人の漁業者や工場で働く人たちが失業したということが起きました。
そこで魚の獲りすぎが環境や生態系だけではなくて、人の生活にもすごく影響を与えるということが浮き彫りになって、このままではいけないということで、持続可能な漁業に関する認証制度が必要だということになり、MSCの構想が練られ、1997年に設立したということです」
●鈴木さんが所属されている「MSCジャパン」はいつ開設されたんですか?
「それから10年たって2007年に設立されました。当初はまだ持続可能な漁業とかサステナブルといった言葉は、ほとんど聞かれていない時でしたので、日本事務所が設立されて、漁業者さんや企業さんに説明に行ったりしても、なかなか理解していただくことが難しくて、うちは必要ないですっていうような感じだったっていうのは、設立当初からいたメンバーに聞いております。
ただ、最近は魚が獲れなくなったとか、そういった水産資源の危機感が広がっていることですとか、あとは2015年に国連でSDGsが採択されたことですとか、リオデジャネイロ・オリンピックなどで認証の水産物が調達されて、それが東京オリンピックにも続いたりとか、そういったことがあって、設立から10年ぐらい経ってから急速に理解や認証水産物の商品が広がってきたということがあります」
(編集部注:「MSC」は現在、ヨーロッパや南北アメリカ、アジアを含め、世界20カ国に支部があるそうです。毎週のようにオンライン・ミーティングを行ない、世界の水産資源の状況や、漁業に関する最新情報を共有しているそうですよ)
3つの原則と、25の業績評価指標
※ここからは「MSC漁業認証」について、詳しくうかがっていきたいのですが、どんな認証制度なのか、具体的に教えていただけますか。
「MSC漁業認証というのは、持続可能な漁業に与えられる認証なんですね。審査は3つの原則に基づきます。それを漁業者さんが満たす必要があります。
原則のひとつ目が、自然の持続可能性に関するもの。例えば、その漁業者さんが漁獲の対象とする魚種の資源が十分な量があるのかどうか、持続可能なレベルにあるのかどうかというところがチェックされます。その資源が持続可能なレベルにないとなると、もうそこでダメということですね。
ふたつ目が、漁業が生態系に与える影響について。その漁業が対象としている魚以外の魚介類ですとか、あとはウミガメやウミドリとか、ほかの生き物、絶滅危惧種などが間違って網にかかるということがあるんですね。それを最小限に抑えているか。例えば、その網にかかるほかの生き物が多ければ多いほど、生態系に影響があるので、そういった影響を最小限に抑えられているかというところの確認が行なわれます。
3つ目が、漁業の管理システム。ここでチェックされるのが生産資源が豊富にあるか、原則1の生態系への影響ですね。そういった原則を満たすことができるように、きちんと国際ルールや国内法が整備されていて、それが守られているかどうか、この3つの原則のもとで審査されます。
この3つの原則の下に25の業績評価指標というのがあって、その項目に照らし合わせて審査されます。各項目で60点を下回るのがひとつでもあると認証されないということです。
また60点から80点未満の指標についてはOKではあるんですけれども、期限を定めて80点以上になるまで改善するといった条件がついての認証ということになります。なので、かなり厳しい審査が行なわれるということですね」
●たくさんの審査がありますけれども、その審査はどなたがされるんですか?
「審査はMSCがするのではなくて、独立した第三者の審査機関が行ないます。私たちの仕事というのは、その認証制度の規格を設定するんですね。その規格を作った団体が審査まですると、透明性とか公平性が保てないので、第三者がその規格に基づいて、その漁業がきちんと(基準を)満たしているかを審査するということになります」
MSC漁業認証のメリット
※漁業者は、その認証を取得することによって、どんなメリットがありますか?
「まず、サステナブルであるという付加価値をつけることで、ほかの水産物と差別化することもできますし、イメージを向上することができるということですね。あとは新しい市場とか販路の拡大ということもあります。特にMSC認証というのは海外で広がっているので、輸出を考えている漁業者さんにとってはすごく大きいですね。
特に欧米の消費者は、サステナブルな魚でないと買いたくないというかたも多くいらっしゃるので、そういう意味で既存の市場プラス新たな市場を開拓できるということ。
あとは持続可能な漁業を行なうことによって、長期的には漁獲量が増加するということで、自分たちの漁業も持続可能になるというところですね。次世代にも漁業を受け継いでもらえるような、そういったメリットがあります」
●認定されると、認証マークをつけることができるんですよね?
「そうですね。その(認証を受けた)漁業で獲られた水産物がサステナブル(シーフード)として消費者に届くまでに、ラベルを貼るので、消費者が認証を受けた漁業で獲られた水産物ということが分かるようになっています」
●海のエコラベル、ですね。
「はい、MSC『海のエコラベル』という名前です」
●このMSC漁業認証という制度を漁業関係者に広めて理解してもらうためには、大変なパワーがいると思うんですけれども、いかがですか?
「MSC漁業認証の取得は、漁業者さんの自発的な意思によるものなんですね。自分たちがちょっと挑戦してみようかなというふうに興味を持った漁業者さんから問い合わせをいただいて、そこでいろいろ説明をすることになります。
MSC漁業認証の審査がすごく厳しくて、審査項目も多岐に渡るということを、まず知っていただきます。その中でも例えば、漁業者さんが漁獲している以外の生き物とか、その周りの環境までが審査項目に入ったりするので、初めのうちは、なぜそこまで審査の対象になるのかという疑問を持たれることがよくあるんですね。そういった漁業者さんの通常の漁業の中では、あまり馴染みのない部分は丁寧に話すようにしています。
ただ、漁業認証を取得しようと考えている漁業者さんは魚がなくなってしまう、減ってしまうと、漁業そのものが成り立たなくなるという危機感をすでにお持ちです。次世代に水産資源を残したいという使命感も持っていらっしゃるので、こういった話をするとご納得いただいています」
(編集部注:MSC漁業認証を取得した漁業は現在、日本では18件、世界では539件あるそうです。最近では、SDGsの気運の高まりや、水産資源の減少傾向などもあり、MSC漁業認証の取得を目指す漁業関係者からの問い合わせが増えているとのこと。
この認証は、取得すれば、それで終わりではなく、5年ごとに更新の審査が行なわれ、改善の条件が付けられるので、認証を維持すればするほど、持続可能な漁業の質が高まっていく、そんな制度になっているそうです)
MSC漁業認証の質を守る、もうひとつの認証制度
※ここまでお話をうかがってきて、MSC漁業認証については、ある程度、理解できたんですが・・・ふと、素朴な疑問が浮かんできました。認証を取得した漁業の水産物と、そうじゃない水産物が混ざったりすることはないんですか?
「それはないですね。というのは、MSC認証にはふたつの認証があって、そのふたつの認証からなっているんですね。先ほどお話ししたMSC漁業認証と、あとMSC CoC(シー・オー・シー)認証というふたつがあります。この『CoC』っていうのは、英語ですと“Chain of Custody(チェイン・オブ・カストディー)”と言いまして、日本語にすると管理の連鎖、鎖という意味があります。
せっかく漁業者さんが漁業認証を取得しても、その魚が消費者の手元に届くまでに認証ではない水産物が混じってしまったら、全く意味がなくなってしまうので、漁業者さんが水揚げしたあとに卸売業者さんから水産物のパッケージを行なう最終の包装業者までの、サプライチェーン全体に対する認証がCoC認証というものになっています。
そのふたつがセットになって初めてラベルが付けられるということは、その漁業者さんが獲った、認証を取得した水産物が確実に自分たちのところに届いているんだなということの証明になります」
●なるほど。認証水産物が仲介業者とか加工業者にいっても、そこでも認証水産物ではないものと混ざるっていうことはないわけですね?
「そうですね。混ざるということはないです。入荷して加工・保管などすべての段階において認証の商品であるということが、識別できるような管理が求められたりとか、あとは製造ラインを分けるなどしても確実に分別することが求められています」
●漁業者から小売店までの流通ルートの中で、この認証に対する理解と認識がすごく大事になってくると思うんですけれども、その辺りはどうやって広めているんですか?
「MSCとしても、MSC認証制度の重要性を業界のかたがたに発信しているんですけれども、最近では魚が減ってきていることの危機意識ですとか、持続可能な水産資源を管理するという重要性がすごく高まってきているので、水産業界ではこうした取り組みを行なうということが、当たり前という風潮にはなってきているというのを感じています」
MSC「海のエコラベル」、500品目以上!
※私たちが、持続可能な漁業を応援するためにはMSC「海のエコラベル」がついた水産物を積極的に買うことだと思うんですけど、どこで販売していますか?
「よく聞かれる質問で、なかなか見たことがないと言われることがあるんですけれども、実は結構身近なところで手に入ります。
イオングループですとか、生協/コープ、セブン&アイグループ、ライフ、あとはマクドナルドとか、私たちにとって身近なスーパーとかレストランに置いてあったりします。あとはスーパーの店頭だけではなくて、航空会社の機内食とかホテルのレストラン、大学の学食などでもMSC『海のエコラベル』を表示したメニューが提供されています。
どういったものにMSCラベルが貼られているかと言いますと、魚の切り身とかそういった鮮魚だけではなくて、水産加工品、ちくわやカニカマ、からし明太子とか。あとは白身魚のフライなどの冷凍食品ですとか、缶詰めなどもあります。最近新しいところでは猫の餌、猫缶にもMSCラベルが付くようになりました」
●かなり身近にあるわけですね!
「そうなんです。ただ見たことがないという声も大きいのは、やはり日本ですとスーパーの種類がすごくいっぱいあるので、近所のスーパーでは扱ってなかったということもあるかと思います」
●意識してちゃんと見てみます!
「はい、ありがとうございます。意識しないと全然目に入ってこないんですけど、一度意識すると実は結構あるなっていうことに気付くかと思います 」
●では改めて、リスナーのみなさんに伝えたいことを教えてください。
「実はMSC『海のエコラベル』が付いている商品というのは、日本で500品目以上あって、たくさんの種類がいろいろなところで売られています。サステナブルな商品っていうと、ちょっと値段も高いんじゃないの? と思われるかもしれないんですけれども、実はそんなことはなくて、通常の商品とほとんど(値段は)変わらないですね。
なので、商品を選ぶ時にラベルが付いたものを選ぶようにすると、持続可能な漁業を目指す漁業者さんが増えていって、海の環境を守ることにもつながりますので、ぜひ見かけたら選ぶようにしてください。
また、近所のスーパーでもし売ってない場合は(お店のかたに)扱ったりしていますか? というふうに聞いていただくことも、スーパーのかたたちはお客様の声を聞くようにしていますので、それもすごく大きな力になると思いますので、ぜひよろしくお願いします」
INFORMATION
「MSCジャパン」では消費者に、MSC認証制度とMSC「海のエコラベル」をもっと広く知ってもらうために、年3回キャンペーンを行なっているそうです。先月は、この番組のホームページでもご紹介しましたが、「サステナブルシーフード・ウィーク」というキャンペーンが展開されていました。来年1月には「サステナブルなお魚レシピ」を公開するそうです。
ちなみにMSCアンバサダーは、海洋生物好きで知られているココリコの田中直樹さんですよ。MSC認証とMSC「海のエコラベル」、そして活動について詳しくはMSCジャパンのサイトをご覧ください。
◎MSCジャパン:https://www.msc.org/jp
2023/8/20 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」の広報担当「大西亜未(おおにし・あみ)」さんです。
SDGs「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)=持続可能な開発目標」の中から「つくる責任 つかう責任」、そして「海の豊かさを守ろう」ということで、NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」の活動をご紹介します。
2020年12月に発足した「クリーン オーシャン アンサンブル」は海洋ごみゼロの世界を目指し、香川県小豆島で、おもに海洋ごみ回収装置の開発を行なっています。
なぜ小豆島だったのか、回収装置とはどんなものなのか、広報担当、大西亜未さんにいろいろお話をうかがっていきます。
☆写真協力:NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」
海洋ごみをなんとかしたい!
●「クリーン オーシャン アンサンブル」というネーミングには、どんな思いが込められているんでしょうか。
「クリーンはきれいな、オーシャンは海を、なんですけど、アンサンブル っていうのがフランス語で、『より多くの人と一緒に』っていう意味が込められています。代表の江川は英語とフランス語も喋れるので、英語とフランス語を掛け合わせた名前にしたと聞いています」
●代表理事の江川裕基(えがわ・ゆうき)さんは、以前はJICAの海外協力隊として活動されていたということですけれども、やはり海外での活動経験が「クリーン オーシャン アンサンブル」の原動力になっているんでしょうか?
「そうですね。代表の江川はアフリカのブルキナファソっていう国で、廃棄物を処理する仕事をしていたんですね。そこで、ごみをよく見ていたんですけど、本当にごみが道路に積み上がっているような状況をすごく目にしていたそうです。
もともとバックパッカーとして、いろんな国をまわっていて、“あれ? 世界ってごみだらけだな〜、ちょっと壊れてきているな”って思ったみたいで、これは早急に何とかしなきゃいけないと思って、それが原動力になって発足した団体です」
●大西さんは去年から「クリーン オーシャン アンサンブル」で活動されているそうですが、参加する前は何をされていたんですか?
「小豆島にADDress(アドレス)っていう多拠点生活サービスがあるんですけど、そこの旅人さんを受け入れるお仕事をしていて、小豆島の拠点の管理人をしていました。
小豆島に来てくれる人って、そもそも島の環境に興味がある人がすごく多くて、海洋ごみの話とかでも盛り上がるような方々で、そういう人をおつなぎするような感じで、『クリーン オーシャン アンサンブル』ともおつなぎしたりとか、そういうことを以前からしていたって感じですね」
●出身は小豆島なんですか?
「 私は横浜出身です」
●横浜からどうしてまた小豆島へ・・・?
「その時付き合っている、今も付き合っているパートナーがいるんですけど、一緒に移住先を探しておりまして、多拠点生活サービスADDressを利用して、小豆島に来たことがきっかけで移住を決めました」
●いろんな選択肢がある中で、どうして小豆島だったんですか?
「横浜の海がちょっと濁っている感じの海で、あまり海が好きじゃなかったんですね、正直。だけど、小豆島に来た時に臭いがしないっていうのと、こんなにも穏やかな海があることにすごく感動して、初めて海が好きだなって思ったんですね。
この海のそばに住みたいと思って、小豆島に移住を決めました。歩いて30秒で海なんですね。疲れた時は海を眺めたりとか、(海に)ちゃぽっと足をつけて入ったりとかして、ストレスの発散ができて、幸せな毎日を過ごせています」
●江川さんから何か影響を受けたことはありますか?
「(環境に)興味があるADDressの会員さんとおつなぎした時に、一緒にビーチクリーンをやったんですけど、そのビーチクリーンの内容が分別の徹底だったりとか、こんな行政の事情があってとか、最終処分場の事情があってとか・・・今までビーチクリーンやごみ拾いに参加させてもらったことが、ほかの県でもあったんですけど、ここまでガチな感じのビーチクリーンって初めてだったんですね。
しかも小豆島は観光地なんですけど、移住するきっかけがやっぱり観光がすごく素敵だったからとか、友達がもともと移住していたとか、そういうかたが多い中で、代表の江川だけが海洋ごみを何とかしたいから移住したっていう、そんな理由で移住する人いる!? みたいな、その本気度に影響を受けて、参加したいなって思いましたね」
地元の漁師さんとタッグを組む
※代表の江川裕基さんがおもな活動エリアを香川県小豆島にしたのは、何か理由があったんですか?
「香川県にまず江川は着目しました。なぜかというと、香川県は香川県方式っていうものを作っています。漁師さんがお魚を獲る時にごみが網の中に入ってしまうので、漁師さんたちは自腹で(ごみを)処理していたんですが、香川だけは自治体が無償で処理するようになったんです。そういう画期的なシステムを構築したということで、まずは香川県にしようっていうことになったらしいんですね。
小豆島っていう島は瀬戸内海にあって、ほかの県に囲まれた島なので、日本のごみだけが漂ってくることとか、波がすごく穏やかで、回収装置を作るにあたって壊れるリスクがすごく少ない、そんなことを掛け合わせて、小豆島がいいということになったと聞いています」
●「クリーン オーシャン アンサンブル」では海洋ごみの回収装置を作っていらっしゃいますよね。サイトに掲載されている写真を見ると、漁網のようにも見えるんですけれども、どんな装置なのか説明していただけますか。
「漁師さんが使う網をUの字に広げて(全長が)30メートル、下に垂れている部分が2〜3メートルになっています」
●網を沈めておくと、勝手にごみが入ってくる感じなんですか?
「そうですね。浮きで浮かせている部分と、重りで沈んでいる部分があって、その網はずっと固定されているんですね。その固定されている網に向かって潮が流れてくるので、波の影響を受けて、ごみが自動的にキャッチできるようになっています」
●その回収装置を仕掛けるには、やはり地元の漁師さんの協力も必要になってきますよね?
「そうですね。小豆島を拠点にするっていう時に、江川が片っ端から漁業組合さんに電話をかけたらしいんですけど、やっぱりお断りされたりしたそうです。唯一、小豆島に森組合長さんという方がいるんですけど、その人だけ全面的に協力したいって言ってくれて、ここだったらやりやすいなと思ったそうです。海を使わせていただくということは漁師さんの協力が必須になってくるので、森組合長とタッグを組むということで、小豆島にしたって言ってましたね」
香川大学と連携
●海洋ごみを回収すると言っても、海流とか波とか風とか、いろんな影響を受けて、そう簡単には回収できないようにも思うんですけれども、いかがですか、その辺りは?
「そうですね。ほんとうに波乱万丈な実験というか繰り返しだったんですけど、海洋ごみを回収する際に、どうやったら効率的に回収ができるかっていうことで、やっぱり潮の流れがキー・ポイントになってくるんですね。
なので、香川大学さんと連携させてもらって、今回はそんなに捕れませんでしたとか、今回はすごく捕れましたっていうデータをすべて提出して分析してもらました。その中でごみが流れやすい時期があることがわかったので、その時期に合わせて設置するところから始めていきましたね」
●その時期とはいつ頃なんですか?
「小豆島は夏と冬で、ごみが溜まるエリアが変わってくるのがわかったので、今回私たちが活動しているところは、夏のほうが集まるので、夏に設置するようにしました」
●トライアンドエラーを繰り返しながら改良していったという感じだったんですね。
「そうですね。やっぱり1号機から4号機まで、結構大変だったですけど、ほんとうにビニールのかけら3つとか、そんなレベルでしか捕れなかったんで、すごく大変でしたね」
●今ではどれぐらいの量のごみを回収できるんですか?
「4号機目で初めて1.5キロ回収ができたんですよ! もうみんなで歓喜しました」
海岸に「豆管」がコロコロ!?
※そもそもなんですけど、海洋ごみの回収装置を作ることにしたのは、どうしてなんですか?
「海洋ごみは海に漂っている間と、打ち上げられたごみを比べると、打ち上げられたごみはかなり風化してしまい、紫外線とかでボロボロに細かくなりやすいんですよね。それこそそれが(海に)戻って魚が食べちゃうとか、あとは細かくなりすぎて、風で雑木林まで飛んでいっちゃうとか・・・。そうすると人間が取りに行けなくなっちゃうんですよね、奥にまで行ってしまうと。なので、その前の段階、海の中に漂っている段階で回収したほうが、やっぱり効率がいいんじゃないかっていうことで回収装置を作ることになりました」
●ビーチクリーンの活動も行なっていらっしゃるんですよね?
「そうですね。毎月一般向けにイベントをやらせていただいています」
●どんな海洋ごみが目立ちますか?
「タバコとかペットボトルとか、そういうのはやっぱり当たり前にすごく多いんですけど、瀬戸内海には『豆菅(まめかん)』っていうのがあるんですけど、豆管ってご存知ですか?」
●なんでしょう?
「豆管っていう、お菓子のポテコみたいな、指にはめられるリングのようなもののプラスチックバージョンでありまして、その豆管が牡蠣の養殖でよく使われるんですね。それがコロコロと転がっているのがすごく目立ちますね」
●集めた海洋ごみをご覧になって、どんなことを感じますか?
「はい、やっぱり豆管とか細かいものはもちろんなんですけど、こないだ拾ったペットボトルが結構レトロなパッケージでして、いつのペットボトルか調べたら、なんと40年前のごみだったんですよ。40年前のごみが今漂っているってことは、40年間分のごみは絶対にあると・・・。海の中をずっと漂っているってことは、もっと前のもあるかもしれないし、ずっと蓄積しているんだなと思って、もっと問題視しなきゃいけないなって思いましたね」
(編集部注:先ほどお話に出てきた「豆管」、プラスチック製のパイプを、1.5センチくらいに切って、牡蠣を養殖する際に使うとのこと。嵐などで海が荒れると、たくさんの豆管が海岸に打ち上げられるそうです)
海洋ごみゼロに向けて
※「クリーン オーシャン アンサンブル」では、学校や企業に向けて、環境教育の活動も行なっているそうですが、環境教育はやはり大事なことですか?
「そうですね。最近知ったんですけど、歴史の勉強の時に旧石器時代とか、縄文時代って言うじゃないですか。今の時代って『大プラスチック時代』らしいんですよ。そんなレベルというか、多分きっと教科書に載るべきもの、そういう時代になってきているっていうことで、やっぱり自分たちのためでもあるし、将来の子供のためにも今のこの問題を勉強してもらって、意識を持ってもらうのはすごく大事なことなんじゃないかなと・・・。やっぱりひとりひとりの意識が変えられるような環境教育は大事なんじゃないかなって思っています」
●大西さんのお話を聞いて「クリーンオーシャンアンサンブル」の活動を応援したいと思った方は、どのようにしたらよろしいでしょうか?
「私、SNSの広報部長をやっておりまして、なので今instagramにすごく力を入れているんです。instagramをぜひぜひフォローしてもらいたいですね。それで『クリーン オーシャン アンサンブル』の活動をシェアしてもらいたいなって思っています」
●では今後の目標を教えてください。
「はい、海洋ごみの回収装置を1号機から4号機まで作ってきたんですけど、流木とか自然物もすごく多く回収されたりもしました。今度の5号機目は(自然物ではない)海洋ごみを優先的に拾えるように改良して頑張っていくことを目標にしています」
●「クリーン オーシャン アンサンブル」が掲げているビジョン、海洋ごみゼロの世界が実現したら、私たちの暮らしはどうなっているんでしょうね?
「今なかなか想像がつかないんですけど、やっぱり物だらけの現代っていうことで、プラスチックのものだらけのところから、必要なものを繰り返し使う暮らしだったりとか、減ってしまったお魚が戻って、美味しいお魚が食べられて、世界中にきれいな海が取り戻せる、そんな素敵な暮らしに戻るんじゃないかなって思っています」
☆この他の「SDGs〜私たちの未来」シリーズもご覧ください。
INFORMATION
海洋ごみの回収装置がどんなものなのか、ぜひ「クリーン オーシャン アンサンブル」のオフィシャルサイトを見てください。動画や写真が載っていますよ。
そして活動をサポートしてくださるかたや、寄付も募っています。活動内容も含めて、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「クリーン オーシャン アンサンブル」:https://cleanoceanensemble.com
2023/7/16 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「海の日」を前に、東京湾でコンブを養殖し、活用している「幸海(さちうみ)ヒーローズ」の共同代表「富本龍徳(とみもと・たつのり)」さんです。
東京湾でコンブが育つの!? っと疑問に思ったかたもいらっしゃるかも知れませんが、実は立派に育つそうですよ。
そんなコンブは水中で光合成を行ない、二酸化炭素を吸収。その吸収率は、なんと、杉の木のおよそ5倍の量だそうです。
富本さんは、私たちが直面している地球温暖化などの環境問題にコンブが大きな役割を果たしてくれると期待しています。
きょうは、地球を救うかもしれない、コンブの可能性に迫ります。
☆写真協力:幸海ヒーローズ
横浜市金沢区でコンブ養殖
※SDGsはご存知の通り「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語にすると「持続可能な開発目標」。これからも地球で暮らしていくために、世界共通の目標を作って、資源を大切にしながら経済活動をしていく、そのための約束がSDGsです。2015年の国連サミットで採択され、全部で17の目標=ゴールが設定されています。
今週は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「気候変動に具体的な対策を」、
そして「海の豊かさを守ろう」ということで、東京湾でコンブを養殖し、活用している富本龍徳さんの活動をご紹介します。
富本さんは2016年にコンブの養殖に取り組み、2年ほど前に「幸海ヒーローズ」として活動を再スタートさせました。「幸海ヒーローズ」の「幸海」は、実は「里海」のミスプリントが発端になっているそうです。
富本さんは「幸海」という響きに惹かれたのと、「海の幸」という言葉があるように、海は私たちに海産物という恵みを与えてくれる。その一方で「海にとっての幸せとは何だろう」、そんな思いもあって、「幸海ヒーローズ」と名付けたそうです。
●「幸海ヒーローズ」では、具体的にはどんな活動をされているんですか?
「ひとつはコンブ養殖を通して、温暖化対策とか生態系の保全ということで、神奈川県横浜市金沢区の漁師さんと一緒にコンブ養殖をしながら、作ったコンブを水揚げして、利活用するっていうところまでをやっている団体です。
コンブが海の中にない期間は、たとえば環境教育っていう観点で、小学校中学校に行ってコンブとか海の話をしたり、コンブを取り扱いたいっていうレストランさんがいたら、そこにコンブの説明に行ったりとか、そんな感じですね」
●東京湾でコンブ養殖しようと思っても、そう簡単ではない気がするんですけど・・・。
「そうですね。いろいろ権利関係とか法律関係とか難しいこともあるんですけど、そもそも本当にコンブが東京湾で育つのか、みたいなところは、ずっとドキドキしていたんです。でも意外とすごく豊かに立派なコンブができるんですよね」
●もともとコンブがない場所で、コンブを養殖することに対しては、何かためらいみたいなものはなかったですか?
「もともとコンブの原種は横浜にあるわけではないので、北海道の方たちから、タネを分けていただいて養殖しているんですけど、だんだん年数を重ねていく上で、ほかの環境団体さんから「君たちのやっていること、大丈夫なのか?」とか「いいのか? それで」って厳しく言われた時期もありました。
やっぱりそういう連絡がくると、葛藤っていうのはあるんです。そもそも水温が上がってくると、コンブ自体も海の中で枯れたり、溶けちゃうっていう表現をしているんですけど、枯れたりもしますし・・・。あとはコンブって赤ちゃんを胞子として出すんですけど、胞子が出る前に(コンブを)水揚げしているので、そこは今のところ問題にはなってないという状況ですね」
●自分たちを信じてやり続けてきたっていう感じなんですね
「そうですね」
●養殖しているエリアは、どれぐらいの広さなんですか?
「今やっているのが、僕たち畑とか柵とかって言い方をするんですけど、
今のところ20メートル×20メートルの柵を作って、それが2面分ですね」
●収穫量でいうと、どれぐらいですか?
「コンブの収穫量でいうと、だいたい6トン前後ぐらいが毎年の水揚げになりますね」
(編集部中:海の藻と書く「海藻(かいそう)」の仲間、コンブ。日本で採れるのは10種ほどで、その90%以上が北海道産だそうです。コンブには水溶性食物繊維、ミネラル、そして、うまみ成分のグルタミン酸など、栄養素が豊富に含まれています。さらに、番組の冒頭でもご紹介しましたが、光合成によって、樹木よりもたくさんの二酸化炭素を吸収してくれる特性にも注目が集まっています)
コンブに強い衝撃!?
※東京都出身の富本さんは食のコンサルティング会社を退職したあと、フリーランスとして、地方の産物を東京で販売する営業支援などを行なっていたそうです。
●そもそもなんですが、コンブとは、どうやって出会ったんですか?
「秋田県の三種町っていう町のイベントに参加した時に、東京で物産展をやった時に、たまたま三種町の隣町で、アワビの陸上養殖っていう技術でアワビを販売されていた会社さんがあって、お昼休みに“きょうの売り上げ、どうです?”みたいなそんな世間話をしていたんですね。
その時にアワビがコンブとか海藻を食べるってことも知らなくて・・・(コンブは)アワビが食べるだけじゃなくて、環境にもすごくいいんだよっていうことを言われた時に、なんか雷が落ちてきたような強い衝撃があったんですよ。
で、調べたらコンブって使い方が無限にあって、今自分が遠くの遠くの存在に感じている環境問題に対しても、こんな身近な素材でアプローチできるのかと思ったら、すごくスイッチが入っちゃって、そこからずっとやっていますね」
●具体的にコンブのどんなことがわかったんですか?
「もちろん人間が食べて健康にいい部分もありますし、ミネラルがたっぷりなので、たとえば畜産の牛とか豚とかの飼料にもなったり、肥料として作物にプラスになったりとか・・・。
ほかには銭湯さんとコンブ湯っていう取り組みをやっているんですけど、肌にも良かったりとか、本当にいろんな汎用性があって、すごく面白い素材だなと日々思っています。」
●コンブはすごい! というのを感じたとしても、それに人生をかけようと思うのはなかなかないと思うんですけど、やってみようって思えたのはどうしてなんですか?
「やっぱり今お伝えしたように、可能性がすごく無限にあるなっていうところに携われたら、きっといろんな方とコミュニケーションできて、そんなに楽しい仕事はないんじゃないかなと思って・・・」
●でもすごいですね~、コンブをいちからやってみようって思われたわけですね。で、今につながっているということですね。
「そうですね」
(編集部注:「幸海ヒーローズ」では「ぶんこのこんぶ」というブランド名で、商品展開。生のコンブほか、クッキーやアイスクリームなどを作っているそうです)
コリコリ食感、香りと色味が若い!?
●コンブというと北海道の寒い地域の特産品っていうイメージがあるんですけど、横浜市の金沢漁港で養殖されているコンブには、どんな特徴があるんですか?
「いい質問ありがとうございます。実際、横浜のコンブは種類としては真コンブっていう出汁のよく出るブランド・コンブのタネで養殖しているんです。期間的に北海道のコンブと違うのは、北海道は海がずっと冷たいので2年ぐらい養殖できたりもして、10メートルぐらいの巨大な長さになって、厚みも出てくるんです。
そうすると食物繊維だったりがぎゅっとしてくるので、それは乾燥コンブに適したコンブなんですけど、僕たちがやっているのは11月から12月ぐらいにタネ付けして、水温が上がってくる4月ぐらいには水揚げするので、どちらかというと薄いコンブなんです。
それでも2〜3ミリの赤ちゃんコンブからスタートしたコンブが、4か月後には4メートルにも育つんですね。たとえば食感でいうと、すごくコリコリした歯ごたえのある食感で、若いコンブなんで香りが強かったり・・・あとは色味がとっても鮮やかなところが特徴になりますね」
●自然相手の作業じゃないですか。難しいなって感じることはないですか?
「それがですね、お陰さまでコンブの収穫量は結構安定しています。畑と違って海がコンブ育ててくれるので、草むしりする時間もいらないですし、肥料を与えることもないんですね。なので、ほとんど手がかからないっていう・・・」
●そうなんですね! コンブに人生かけてみようって思われて、初めて収穫した時はどんなお気持ちでした?
「やっぱりすごく嬉しかったですね、純粋に。それでこんなにも巨大な、生で見るのもその時が初めてだったんですけど、すごいフォルムというか、形には圧倒されました」
●どんな感じなんですか? 収穫の時のコンブって見たことがないので・・・。
「そうですよね。僕たちが多分一般的に見ているのは、スーパーに並んでいる緑色のワカメとかだと思うんですけど、まず(コンブの)色は茶色なんですよね。海の中に入っている間っていうか・・・その茶色の物体が目の前に現れた時には、本当になんかクマが目の前に現れたぐらいの衝撃でしたね」
コンブのお風呂!?
※都内の銭湯で「コンブ湯」というのを展開されているそうですね。これは、湯船にコンブが入っているんですか?
「まさしく、そういうことです。なので見方によっては、おでんの具材になったみたいとか(笑)、出汁の気分になったみたいっていうこともあるんですけど・・・」
●たしかに!(笑)
「いちばん最初にコンブ湯をやったきっかけは、ヨーロッパに行くと、タラソテラピーっていう海水とか海の泥とか海藻とかと人間とで、長いお風呂の歴史があるんですけど、日本でタラソテラピーをやろうと思ったら、多分高級ホテルのエステでとか、すごくお金も高いですよね。
そういうことをもっともっと身近に感じられることはないかなと思って、スタートしたのがきっかけで、日本には公衆浴場の文化があると思って、それで(銭湯の)門を叩いたのがコンブ湯のきっかけですね」
●お湯加減とかってどういう感じなんですか?
「わかりやすくいうと、たとえば中華料理の、あんかけのチャーハンとか、あんかけのラーメンっていつまでも熱いじゃないですか」
●熱いです!
「それと一緒で、コンブのヌルヌルのとろみというか、ヌルヌル成分がお湯に溶けた時に、あんかけと一緒でお湯が冷めにくいというか、そんなこともあって保温効果があるんじゃないかと思います」
●そうなんですね~、みなさんの評判はどうでした?
「SNSを見ても、みなさん面白いリアクションをしてくださって、本当に出汁になったみたいとか、結構ポジティヴな反応があって、結構、常連さんもできてきたような企画になっています」
(編集部注:お風呂つながりでいうと、富本さんは繊維会社と一緒にコンブを練り込んだ繊維を開発、なんと「サウナハット」を作っちゃったんです。このサウナハット、吸水性と保湿性に優れているので、サウナ室で髪の毛をしっかり保護してくれるそうですよ)
コンブのバスボム!?
※ほかにも、海外のブランドとのコラボレーションが実現したそうですね?
「みなさんがわかりやすいブランドさんとコラボレーションさせていただいた、いい事例なんじゃないかなと思っているんですけど、イギリスの大手コスメ・ブランドのLUSHさん」
●あの入浴剤とかバスボムとかの? え~、私、使っています!
「使っていますか! 香りもすごくあっていいですよね! LUSHさんの入浴剤に今回コンブの原料を採用していただいています。LUSHさんもサステナブルの素材を探されていらっしゃる中で、僕たちの環境保全だったりっていうところの観点が共鳴したというか、そういったところもあって、今回使っていただいたんじゃないかと思いますね」
●そのバスボムもスタジオにも持ってきていただきましたけれども、とってもいい香りですね!
「本当に(お風呂に)入っているだけで、すごく心地良くなります。ここにもコンブが含まれていて、やっぱりお風呂に使っていただくと、ヌルっとしたような感触がありますね」
●とってもカラフルでこれがコンブというのは、全く見た目ではわからないですけれども、原料としてコンブが使われているということなんですね。
「はいそうですね」
コンブは地球を救う
※次のコンブの収穫はいつ頃なんですか?
「次は、また来年の4月に予定しています」
●一般の方が収穫に参加できたりするんですか?
「そうですね。みなさん北海道に行ったりしないと、コンブの収穫の時期も限られていますし、行かないと多分そういう体験とか見ることってできないと思います。それを逆に一般の方に、今海って大変な状況だよとかっていうことも伝えつつ、実際に採れたてのフレッシュなコンブを、しゃぶしゃぶにして一緒に食べたりとか、そういうことをしながら、ちょっと海について考えてみようっていう時間を設けて、一般の方に来てもらえるような、開けた収穫の場になっています」
●いいですね! 富本さんはコンブと出会って人生がガラリと変わりましたけれども、やっぱりコンブで世界は変わりますか?
「そうですね。本当にこのコンブの素晴らしさ、可能性に気づいてくれる人が増えて、一緒にコンブは面白いから何かやろう!っていう方が増えていけば、海の問題も解決していきますし、僕たちにとって健康的にもいいですし、地球がどんどん良くなっていくんじゃないかなと思います」
●コンブは地球を救ってくれますか?
「そうですね! コンブは地球を救うと思います」
☆この他の「SDGs〜私たちの未来」シリーズもご覧ください。
INFORMATION
富本さんが英国のナチュラル・コスメ・ブランドLUSHと開発したバスボム、一箱に3個入っていて、そのひとつに富本さんたちが養殖したコンブが使われています。商品名は「涼の一服」。販売価格は1,400円です。お買い求めはLUSHのサイトから、どうぞ。
◎LUSH:https://www.lush.com/jp/ja/p/ippuku-ryo-gift
富本さんの活動については「幸海ヒーローズ」のサイトをご覧ください。
◎幸海ヒーローズ:https://sachiumi.com
2023/4/23 UP!
SDGsという言葉、ここ数年で随分浸透してきたように思いますが、いかがでしょうか。SDGsはご存知の通り「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。
これからも地球で暮らしていくために、世界共通の目標を作って資源を大切にしながら経済活動をしていく、そのための約束がSDGs。2015年の国連サミットで採択され、全部で17の目標=ゴールが設定されています。
この番組、ベイエフエム / ザ・フリントストーンでは「SDGs〜私たちの未来」というシリーズ企画を立ち上げ、これまでにSDGsに取り組んでいる事例をいろいろご紹介してきました。
今週は、そんなシリーズの第12弾! SDGsの17の目標=ゴールから「つくる責任 つかう責任」ということで、「ロスを減らす、なくす」をテーマにお花の「ロスレスブーケ」、そしてカラーコスメをアップサイクルしたクレヨン「ハロヨン」をクローズアップ!
今までにないシステムを作り、イノベーションを起こした、ふたりの女性起業家、「FLOWER」の小室美佳(こむろ・みか)さん、「COSME no IPPO」の大澤美保(おおさわ・みほ)さんにご登場いただきます。
☆写真協力:FLOWER、COSME no IPPO
可愛くてお得!
※まず、ご紹介するのは「FLOWER」という会社が提供している「ロスレスブーケ」です。このサービスはいろんな種類のお花の、可愛くてヴォリュームのあるブーケがお手頃な価格で利用できる、とても優れたサービスです。
それでは、このサービスを企画し、展開している「FLOWER」の小室美佳さんにお話をうかがっていきます。
この「ロスレスブーケ」というネーミング、ポイントは「ロスレス」なんですよね。そのことも含め、どんなサービスなのか、ご説明いただけますか。
「ロスレスブーケは、私たちが作った新しいワードなんですけども、端的に言いますと、数量限定で売り切り販売をすることで、そもそも破棄とかロスになる花を生み出さずに販売するサービスです。なので、ロスゼロブーケでもいいんですけど、ゼロに近づける努力をするっていう意味でも、ロスレスブーケと名付けております。
一般的にはお花屋さんは、やはり(お花は)生物ですし、仕入れた時に花の状態も個体差、人間と同じで生き物なので、個体差がありますし、すべてが売り切れる前提で販売はしていないのが当たり前の業界なんですね。
いちばん(お花が)綺麗な状態でお客様に届けるって意味でも、仕入れたお花の中でも綺麗なものを選ぶし、かつ売り切れなかった場合に関しては、その分も考慮して売価にちょっと転換させて、お花を売るのが業界の、そういうものだよねっていう考え方があったんです。
もっと手軽に、もっと新鮮に、もっと可愛いものを人に届けるにはどうしたらいいのかなっていうところを、私たち含めて改めて考えた時に、じゃあ仕入れた分を数量限定で売り切っちゃって販売をすることで、何か新しい仕組みにならないかなって考えた上で、このロスレスブーケが誕生しました」
●確かにサイトに載っている、ロスレスブーケのいろんな種類のお花を見ると、残りわずかっていう表示が出ていますよね。
「そうですね」
●いちばんのセールスポイントは、どんなところにあるんですか?
「いちばんのセールスポイントは、やはり可愛いっていうところなんですけど、もうひとつ・・・いちばんがふたつあるんですけど(笑)、お得っていうところです。可愛いブーケがお得に手に入るっていうのがセールスポイントです」
(編集部注:気になる販売価格は、10本前後のお花のブーケが送料込みで2,200円くらいから。ほかで購入すると3,500円から4,000円ほどのお値段になるブーケだそうです)
お得だけじゃダメ!?
※もともとお花の業界とは無縁だった小室さんが、なぜこのサービスを始めるに至ったのか、それは以前、在籍していた会社の仕事が多忙を極め、深夜、家に帰って寝るだけという生活を送っていた頃、ある時、友人の結婚式でお花をいただき、持ち帰って部屋に飾ったところ、そのお花に癒され、「自分の時間」を取り戻すことにつながったそうです。
そこで「小室」さんは、お花のある暮らしを多くのかたに、手軽にリーズナブルに提供できないかと考え、試行錯誤のすえ、1年半ほど前に「ロスレスブーケ」のサービスを始めたそうです。
●小室さんは、お花の仕入れにも関わっているんですか?
「はい、そうです。もともと定期便(*)も含めて、別の会社のフローリストさんにも入ってもらったりしたんですけど、今回のロスレスブーケってお得だけじゃダメなんですよね。やっぱり可愛くてお得! それを私がなんとなく抱いている、可愛いみたいなものを言語化して、実際に売るところを別の方にやってもらった時期もあったんです。
でも、うまく伝わらなかったり、やっぱり(花は)生き物なので、実際に思うようにいかなかったりしたこともありましたね。
私も割とぱっと行動しちゃいたい人間なので、私やってみるか、みたいな感じで・・・経験はなかったんですが、それまでもずっと毎日、花のことを考えているような人だったので、気づいたら知識とかも増えていたこともありまして(やるようになりました)。
私が仕入れとあと、当日の撮影ですとか、実際に(お客様に)アプリを見てもらう時に、ブーケの(写真に添える)タイトルにも、とてもこだわっているんですけど、そういう編集まわりも含めてやっています」
(編集部注:小室さんの会社「FLOWER」では「ロスレスブーケ」のほかに「ポストに届く定期便」(*)というサービスも行なっています。「ロスレスブーケ」に関しては、毎週90種ほどの新作が登場しているそうですよ)
お花のある暮らし
※部屋にお花があるだけで、ぱ〜っと明るくなるというか気持ちまで晴れやかになりますよね。
「いちばん気軽に自分のテンションを高めてくれるというか、花が目に入った瞬間、風速早く、可愛い! ってなるのって、実は花しかないんじゃないかなと思っています。花か私だったら自分の子供か、みたいな・・・ケーキとかコスメとかも含めて、私のまわりは可愛いものに溢れているんですけど、手軽にかつ可愛いキュン! って思うものは、もしかすると花の力なのかなって最近思っています」
●リスナーさんたちがロスレスブーケが欲しいと思ったら、どのようにしたらよろしいですか?
「嬉しいお言葉です。その場合は、今『FLOWER』というアプリをiOSとandroidでダウンロードできるようになっていますので、検索していただいてアプリをダウンロードいただくか、あとは最近WEBでも注文ができるようになりましたので、まずはちょっとWEBからやってみようかなという、そういう方に関してはインターネットで検索していただいて、そこからご注文いただけます」
●ロスレスブーケのサービスを通して、いちばん伝えたいことを教えてください。
「いちばん伝えたいこと・・・いっぱいあるんですけど(苦笑)、やっぱり私、1ユーザーとして思うのは、花がきっかけで、花のある暮らしを続けることで、自分の時間が好きになるというか、今の私いいじゃん! じゃないですけど、自分の暮らしが好きになるなと思っています。
それのいちばん手軽な存在で、かつロスレスブーケの場合はお得っていうところもあるので、ハードル低く、自分の理想的な状態を実現できる素敵なツールだと思っています。
みなさんがなんとなく抱いているお花のある暮らしっていいよね! っていうものを続けることが、もし『FLOWER』で出来るのであれば、すごく素敵な時間を毎日生活の中で続けられるんじゃないかなって、今信じてやっているので、そういう時間がみなさんに増えたら嬉しいなと思っています」
<食品ロスの現状>
私たちの生活を見てみると、「食品ロス」も大きな課題ですよね。農林水産省のホームページによると、日本では1年間におよそ612万トンもの食料が捨てられているそうです。これは東京ドーム5杯分とほぼ同じ量で、国民ひとりあたりに換算すると、毎日お茶碗一杯分の食料を捨てていることになるとか。
一方、世界では、まだ食べられる食料が年間およそ13億トンも廃棄されているそうです。
日本での食品ロスの原因は、大きく分けてふたつ。ひとつはスーパーマーケットやコンビニなど、小売店の売れ残りや返品、飲食店での食べ残し、売り物にならない規格外品などの事業系食品ロスが328万トン。
もうひとつは、家での料理の作りすぎや、買ったのに使わずに捨ててしまうなど、家庭系食品ロスが284万トンとなっています。
環境への影響や、世界的な人口の増加による食糧危機を考えると、食品ロスの削減は緊急な課題といっても過言ではありませんね。
そんな中、日本でも自治体や企業での取り組みが広がりつつありますが、私たちにもすぐできることがあります。例えば、買い物に行く前に冷蔵庫の中やストックしている食材を確認し、無駄な買い物をしない。
それから、お腹が空いている時やイライラしている時に買い物に行くと、買う予定になかったスイーツやお惣菜など、余分な物を買ってしまうので買い物に行くタイミングを見計らうのも大事かもしれません。
ほかにもご家庭で、そしてひとりひとりが出来ること、たくさんありますよね。ひとりの小さなことでも、1000人が、10000人が続ければ、大きな削減につながるはずです。
カラーコスメをアップサイクル!
※ここからは、カラーコスメをアップサイクルしたクレヨン「ハロヨン」をご紹介します。この「ハロヨン」は、大澤美保さんが進めているプロジェクト「COSME no IPPO」から生まれたアイテムで、使われなくなったカラーコスメを回収し、クレヨンに生まれ変わらせた画期的な商品なんです。
一箱に5色入っていて、持つと手に馴染む独特なフォルム、そして、箱ごとにクレヨンの色が違うのも特徴なんです。見た目も可愛いし、発色もいいし、中にはラメが入っているクレヨンもあるんです。さらに一般的なクレヨンは1本1本を紙で巻いていますが、「ハロヨン」は巻紙がないのでゴミにならないのもいいな〜と思いました。
そんな「ハロヨン」を開発した大澤さんにお電話でお話をうかがいました。まずは「ハロヨン」というネーミングに、どんな思いが込められているのか、お聞きしました。
「大好きなコスメをアップサイクルして、クレヨンという新しい価値に変えていくっていうことで、その新しいクレヨンに、こんにちは、っていうような意味で、ハロー、それにクレヨンをくっつけた造語です」
●ハローとクレヨンで、ハロヨンなんですね〜。
「はい! そうなんです」
●改めてCOSME no IPPOとは、どんなプロジェクトなのか教えていただけますか?
「美容業界のゴミゼロを目指して活動しているんですけれども、具体的にはお役目を終えた、もう使わなくなったアイシャドウとかチークとか口紅などのカラーコスメを、クレヨンにアップサイクルしてお届けしているというプロジェクトになります」
ワクワクの循環
※カラーコスメをクレヨンにするという発想が素晴らしいなと思っているんですが、そのアイデアはどこからきたのか、お話しいただきました。
「私自身、すごくコスメが大好きなんですけども、やっぱりカラーコスメは何にワクワクするかっていうと、色や発色だったりすると思うので、それを捨ててしまって、さよなら! にしてしまうのではなくて、何かに活かしたいなと思ったんですね。
(私には)娘がふたりいるんですけれども、娘たちが絵を描いていることとか、世の中を見渡してもアートという業界が盛り上がっていることなどもあって、絵を描くものに変えたいなと考えまして、そこからいろいろ試行錯誤した結果、あの形になっています」
●コスメは、例えばアイシャドウとか最後の最後まで使い切ることって、私自身はなかなかなくって、かといって捨てるのもっていう感じで、どんどん溜まっていってしまうんですけど、悩ましいですよね〜。
「そうなんです。ワクワクして買ったものをワクワクした形に変換するという『ワクワクの循環』というふうに呼んでいるんですけれども、喜んでくださるお客様も多くいらっしゃるので、まだまだもっと多くの方に知っていただきたいなと思って活動しているところです」
(編集部注: カラーコスメの回収方法なんですが、「COSME no IPPO」の公式インスタグラムからコンタクトしていただくか、百貨店のイベントでも回収しているそうです。
「ハロヨン」はプレゼントとして、とても人気で、お子さんだけでなく、大人の女性も使っているそうですよ。大澤さんは今後「ハロヨン」で描いた絵の展覧会を開催したいとおっしゃっていました)
INFORMATION
<「ロスレスブーケ」「ハロヨン」情報>
「ロスレスブーケ」を取り寄せてみたいと思われたかたは専用のアプリ、またはサイトからご注文いただけます。お値段はブーケによって異なりますが、送料込みで2,200円ほどから購入できます。詳しくは「FLOWER」のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「FLOWER」:https://flowr.is
「ハロヨン」は一箱5色入り、箱ごとにクレヨンの色が違うのでどんな色が入っているか、開けるときのワクワク感もあります。価格は一箱税込で1,980円。ご注文は「COSME no IPPO」のオフィシャルサイトから、どうぞ。
◎「COSME no IPPO」:https://cosmenoippo.official.ec
「ハロヨン」を抽選で3名のかたにプレゼントいたします。
応募はメールでお願いします。
件名に「プレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。
メールアドレスはflint@bayfm.co.jp
あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。
番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。
応募の締め切りは4月28日(金)。
当選発表は発送をもって代えさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしています。
応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
2023/2/5 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第11弾!バレンタインデーを前に環境や人にも配慮したチョコレートをクローズアップ!
今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「貧困をなくそう」「働きがいも経済成長も」そして「人や国の不平等をなくそう」ということで、フェアトレード専門ブランド「ピープルツリー」の活動をご紹介したいと思います。
先日、ピープルツリーの自由が丘店にお邪魔して、広報・啓発担当の「鈴木啓美(すずき・ひろみ)」さんにおすすめのオーガニック・チョコや、フェアトレードの取り組みなど、いろいろお話をうかがってきました。
「ピープルツリー」に込めた思い
ピープルツリーは、1991年に発足したNGO「グローバル・ヴィレッジ」を母体に、フェアトレード専門ブランドとして、誕生。ものづくりに関して「森を壊さない」「水を汚さない」「空気を汚さない」「人と命を守る」「無駄にしない」という5つの環境ポリシーを掲げ、活動。フェアトレード・アイテムのお買い物を提案しています。
そんなピープルツリーの広報・啓発担当の鈴木さんは、もともとはピープルツリーの商品が大好きな、いちファンだったそうですが、もっとみんなに知って欲しい、そんな熱い思いが募り、スタッフとして働くようになったそうです。
※まずは、ピープルツリー というネーミングにどんな思いが込められているのか、お話しいただきました。
「そのままズバリなんですけど、ピープルは人、ツリーは木。でもそれだけじゃなくて、地球環境とか動物とか、生きとし生けるものという括りで考えていただけたら、人も地球もみんなが幸せに暮らせるように、そんな思いを込めて作られたブランドです」
●改めて「フェアトレード」とは、どういうことなのか説明していただいてもよろしいですか?
「フェアなトレード、直訳すると公正な貿易とか、公平な取引と訳すことができるんですけれども、簡単に説明する時は、人と地球に優しい取り組みです、とお伝えしています。
今、フェアなトレードでないことがありますので、どうやったら関わる人たちがみんな幸せになれるのかを考えて活動しているんですね。なので、貧困問題と環境問題を、ビジネスの仕組みによって解決したいという取り組みが、フェアトレードだと考えています。
例えば問題は、たくさんの解決策があったほうが早く解決するので、解決方法、手段はいっぱいあっていいと思うんですよね。だからビジネスじゃなくて、例えば寄付とかボランティアとか、そういうことで解決したいっていう取り組みがあってもいいし、あったほうがいい。フェアトレードは物を作って販売するビジネスの中で、貧困問題と環境問題を解決したい取り組みになっています」
●フェアトレードで大事にしていることだったり、実践していることはありますか?
「やはり人を大切にすることですね。環境も大事なんですけれども、働く人たちがちゃんと生活ができて、幸せに希望を持って生きていけることがすごく大事ですので、フェアであること、公平であること、公正であることが、人と人との関係性も作って物作りをしていくこと、そのためにも自然がないと続けることができませんから環境も大事にしていく・・・」
●まさにピープルツリーですね!
「そうですね!」
手仕事で作られたこだわりの商品
※続いて、自由が丘店で販売している商品について。現在、どんなファッションや雑貨のアイテムを扱っているのか、教えていただきました。
「今この寒い冬のシーズンですので、イチオシは手編みのニットですね。あとはオーガニック・コットンの肌に心地いいウエアですとか、雑貨もザルもあったりカゴもあったりしますし、可愛い動物のモチーフのアイテムがあったりとか、バッグとかアクセサリーとかいろいろあります」
●楽しいですね。いろんな商品があって・・・。主にどこから輸入された商品が多いんですか?
「今ピープルツリーでは18カ国145の団体と、いろいろやり取りをしながら物作りをしています」
●18カ国、例えばどんな国がありますか?
「主にお洋服だとインド、バングラデシュで作っていただいていて、あと編み物だとネパールですね」
●こだわりはやはり自然素材?
「そうですね。環境を大切にするっていうところで自然の素材を、なるべくオーガニックの素材を、としているんですけれども、大事なのはやっぱり入手しやすこともあると思うんですよね。
流通するのにいろいろ負担がかかるわけですから、入手しづらいと生産が滞ってしまうので、現地で手に入りやすくて、あとは例えば成長が早いとか、環境への負荷がかからないとか、そういう要素も入れて、その土地土地で手に入りやすい天然素材を使っています」
●一点一点、手で作られているんですよね?
「そうなんです。手仕事をやはり大事にしています」
●判子のようなもので押して作ったウエアもありましたけれども・・・。
「はい、ブロックプリントという手法なんですね。柄を作り出すのに判子でポンポン押すように模様を作っていくんですけど、あれも1色につき、ひとつの判が必要なので、多色刷りする時にはその木の判がいくつも必要になる、本当に手間がかかっていますね」
●すごいですね〜! あとスカーフも手で描かれているんですよね?
「そうなんです。職人さんがアーティストのように筆運びをしてくださって、素敵な絵を描いてくださっていますね」
●味がありますよね〜! 唯一無二ですよね。
「そうですね。手仕事の場合、途上国で物を作っていただいているんですね。フェアトレードでは途上国に住んでいる経済的に立場の弱い方が、ちゃんと自立して生活できるように、仕事の機会を提供することも大事にしています。そういう方々が住んでいる地域は、例えば電気が通ってないとか社会的なインフラが整ってないケースがあるんですよね。
そんな中ですぐに仕事になる、手を生かすことが大事。手編みだったりとか手刺繍だったりとか、そういうことなんですね。だから大規模な設備投資をしなくても大きな工場を作らなくても、すぐ現金収入が得られる仕事を作り出すためにも、手仕事を大事にしています」
●手仕事だからこそ、ファストファッションとは違った味わいみたいなものがありますよね。
「そう言っていただけると本当に嬉しいです。やっぱり作って、物として販売している以上、素敵だなと思っていただかないと手に取っていただけないので、そこはやっぱり欲しくなる魅力的なものを作る、そこもとても大事、それがピープルツリーの役目でもありますね」
大人気! ピープルツリーのチョコレート
※もうすぐ「バレンタインデー」ということで、ピープルツリーで販売しているフェアトレード・チョコレートをご紹介したいと思います。
いつ頃からチョコレートの販売を始めたのか、お聞きしました。
「(販売を始めたのが)1994年から1995年にかけてなので、もう30年近くもなります」
●そうだったんですか! きっと見たことあるっていう方も多いと思うんですけれども、何種類くらい販売されているんですか?
「業務用のチョコチャンクも含めて、今25種類販売をしております」
●見た目もパッケージも可愛くて、食べ比べしたいな〜なんて思うんですけれども、それぞれどんな特徴があるのか教えてください。
「わかりました。オーガニックでフェアトレードの素材を使っているのは、もちろん全部共通する特徴になっています。そして美味しさの秘密はココアバターですね。口に入れるとすぐとろけるココアバターを贅沢に使っているので、とてもなめらかな口どけを楽しんでいただけます。
それぞれにフレーバーがあって、フレーバーによって黒糖と砂糖を使い分けたりしているので、味わいを楽しんでいただけます。作っているのはスイスなんですけれども、ミルクチョコレートとか、すごいクオリティなんですね。
材料は世界中からやってきていて、黒糖はフィリピン、砂糖はパラグアイ、カカオはボリビアやペルーといったところからやってきます」
●さまざまな国から材料を集めているわけですね。どんな味があるんですか?
「定番のミルク、これは本当に30年前のスタートからあります。ミルクベースのチョコレートでもオレンジ・フレーバーだったり、ヘーゼルナッツやレーズン&カシューがあったりとか・・・あとはカラメル・クリスプ、キャラメルじゃなくて、わざわざカラメル、カリカリしているんですよ。その食感も楽しんでいただけます。
ミルクを使わないビター・ベースのものもありますし、あとはレモンピールが入っていたりですとか、アーモンドが入っていたり、ザクロのゼリーが入っている甘酸っぱいのもありますよ。ビターは58%カカオのものと、75%のハイカカオのものもあります。珍しいところでは牛乳は使ってないんですけれども、ヘーゼルナッツのミルクを使った植物性のミルク・ベースのチョコレートもありますよ」
●見た目も可愛いからギフトにもピッタリですよね。
「ありがとうございます。フェアトレードのチョコレートだと知らなくても、可愛いって手に取っていただけたり、可愛いから友達にあげるっていうふうにして広まっていくので、ピープルツリーの名刺代わりのチョコレートだと思っております」
チョコレート試食レポ!
●ではなにか試食させていただいてもよろしいでしょうか?
「ぜひ! 何か気になるフレーバーはおありですか?」
●なんだろう・・・おすすめをいただいてもいいですか。ビターだとハイカカオが気になりました。
「ぜひ食べていただこうと思うんですけれども、普通(カカオ)75っていうと、かなりハイカカオなので、苦いぞって思われると思うんです」
●そんなイメージがありますけど・・・。
「ピープルツリーのカカオは、その中ではマイルドな味わいになっているので、ぜひ食べていただきたいです」
●板チョコのような感じなんですね、長方形で・・・では、いただきます。
「いかがですか?」
●苦みはあるんですけど、でも苦すぎないっていうか、ちゃんとまろやかで美味しい〜!
「嬉しいです!」
●これ、ハイカカオですよね! もっとすごく、うわっ、苦い! っていう感じなのかと思っていました。
「マイルドに作られております」
●ビターじゃないものもいただいてみてもいいですか?
「定番のミルクを」
●牛さん(のイラスト)がパッケージにありますね。それぞれイラストが描かれていて本当にパッケージが可愛いですね。
「何が入っているのか、中のフレーバーがわかるようなイラストを描いていただいています」
●ではミルクですね。
「ダントツのいちばん人気です」
●そうなんですね(チョコレートを割る音があって)
「お〜〜、いい音です(笑)」
●いただきます。う〜ん、甘い! ほっとする味ですね。
「まさにそのほっとするっていうのが、人気の秘密だと思うんです。 いっぱいフレーバーがあって、中身にナッツだったりとかレーズンだったり、いろいろ入っているものもあって、つい私もいっぱい入っているほうがお得感があるわって、そっちばっかり選んでしまった時期もあるんですけど、やっぱり王道のミルクに戻ってくる・・・黒糖のコク! 美味しいですよね」
●甘いです!
「甘いんだけど、余韻はあるんだけれども、嫌な甘さじゃないですよね」
●そうなんです。すっきりしていて・・・。
「これを食べて、コーヒーを飲んでほっとするのが、私はこの寒い冬の待ち遠しい時間ですね(笑)」
●本当に癒されます〜。
(編集部注:鈴木さんによると、72時間練り上げるスイスの伝統技法により、 ココアバターやカカオなど、チョコの材料が均質に混ざり合うので滑らかさを味わえるし、香りもよくなるとのことでした。
そしてもうひとつ「ホワイトアーモンド」というホワイトチョコも試食させていただきました。鈴木さんからは、ココアバターの品質がストレートに出てくるので、ホワイトチョコはまずなめて、ココアバターが溶ける感触を味わってから食べるといいですよ、というアドバイスをいただきましたよ)
「カカオ・ポイント」農家支援
※ピープルツリーでは「カカオ・ポイント」というプロジェクトを進めています。どんなプロジェクトなのか、ご説明いただきました。
「もともとスタートしたのは、ボリビアでカカオの木の病気が蔓延したことが理由なんです。病気なので、ほかのカカオにうつっちゃうんですよ。だから伐採して焼却処分しなきゃいけなくなっちゃうんですね。そうすると1割とか2割しか育たなくなって、カカオの収穫がどんどん減ってしまったっていうことが、2012年ぐらいに起きました。
それで産地をサポートするために始めたのがカカオ・ポイント、板チョコ1枚につき1ポイントにして、10ポイント集めてピープルツリーに送っていただいたら、1本苗木を産地に送るプロジェクトとしてスタートしました。
で、何年も続けて、今は やっと落ち着いたかなと・・その時に植えたカカオの木がすくすくと育っているので、今度は違うプロジェクトにしようということで、今はコスタリカのカカオ農家を支援するような取り組みにしています。
ピープルツリーのチョコレートは、すべてオーガニックな素材を使っているんですけれども、 オーガニックにするには様々な条件があるんですよね。 今まで普通の作り方をしていたのを、ちゃんとオーガニックの作り方にしようって切り替えることがやっぱり必要になってくるので、どうやったらちゃんとオーガニックで育てられるのかとか、そういうこと学びながら(カカオの木を)育ててもらうので、その支援をするようにしています」
(編集部注:ピープルツリーのチョコの購入は、ピープルツリーの通販サイトをご利用くださいとのことです。ちなみに千葉県内でも扱っているお店はありますので、いずれも詳しくは、ピープルツリーのオフィシャルサイトを見て、チェックしていただければと思います)
エシカルウエディング!?
●ほかにもピープルツリーでは、エシカルウエディングも提案されています。お店に白いドレスが飾られていて、私も新婚なので気になったんですけれども・・・。
「気になりますよね」
●これはどんなことなんですか? エシカルウエディングというのは?
「はい、結婚式はやっぱり人生の中でも最大級に幸せなことだと思うんですよね。だから幸せのお裾分けではないんですけれども、作ってくれた人も幸せなアイテムを使ってほしいなと思います。
式の会場に来てくださった方も、結婚されるおふたりの幸せももちろんのこと、それに関わる人たちを広げてみると、ウエディング・ドレスであったりとか、いろんな小物とか、そういうものを作ってくれた人がちゃんと幸せになれる、そんなアイテムを使っていただきたいなっていうのが、エシカルウエディングですね」
●ドレスだけじゃなくて、引き出物とか・・・。
「はい、カードとか手すき紙の、味のあるカードがありますので、そういうのを使っていただいたりとか・・・。あとは例えば食材として、ピープルツリーのココアパウダーとかコーヒーとかチョコレートとかを使っていただいて、それを式の時に出してくださるカップルの方もいたりとか・・・。最後にプチギフトを出口でお渡ししたりしますよね。そういうのにチョコレートを使っていただいたりしています」
●いいですね〜!
フェアトレードは1枚のチョコレートから
※では最後に、環境や経済、人権など幅広い分野にかかわるフェアトレードに関して、私たちはどんなことを心がければいいのか、お話しいただきました。
「まずはそういうことを知ったら、なにかアクションに起こしてほしいと思っています。 例えば今回のフェアトレード・チョコレートも、フェアトレードを知ったらまず食べてみる、フェアトレードのチョコってどんななんだろう、誰が作ってくれたんだろう、どんなふうに作られたんだろう、そういうことに思いを馳せるところからスタートしていただけたら嬉しいなと思います。
社会的な課題は続けていくのがしんどくなっちゃうというか、自分ひとり何ができるんだろうとか、自分ひとりが頑張っても意味がないんじゃないか、みたいな無力感を感じることがもしかしたらあるかもしれないんですけれども、やっぱりひとりひとりの力ってすごいものがあると思うので、続けるっていうのも大事ですよね。
そのためには自分自身も楽しいっていうことがすごく大事だと思うので、美味しいとか可愛いとかおしゃれとか、そういうところから始まって、生活の中に取り入れていただけたらいいかなって思っています。
●フェアトレードの商品は、お値段的にちょっと高いんじゃないかって思う方もいらっしゃると思うんですけれども、そんな方にはどんなお声がけをされますか?
「そうですね。高いというのが何と比べて高いのかって言った時に、安すぎるものと比べて高いと思っていないかってことをまずお伝えしたいなって思います。
安く売ることができる背景に、例えば作っている人たちが生活できないような搾取をされているんじゃないかとか、安全面とか健康面とかでの配慮がされてないんじゃないかっていう、そういう可能性もあるわけですよね。だからどうしてこの値段で成り立つんだろうって、ちょっと疑問を持っていただきたいなっていうふうにも思います。
いきなりすべてをフェアトレードのものにっていうのはなかなか無理だし、すべてのアイテムを賄えているわけではないので、それだと息が詰まっちゃうと思うんですね。ぜひご自身の関心のあるところからスタートしていただくのがいいのかなと。
1枚、本当に味わえるチョコレートを食べてみる、そうなると物との付き合い方が変わってくると・・・自分の生活も、チョコレートの枚数は減ったかもしれないけど、豊かさは増すかもしれないですよね。そういうふうにして工夫するといいのかなって思います」
INFORMATION
ピープルツリーは、発展途上国の生産者=パートナーのスキルアップや資金、さらには現地の学校運営など様々な支援をしている「世界フェアトレード連盟」に加入しています。
フェアトレードの商品かどうかを見極めるポイントとしては「世界フェアトレード連盟」の認証マークがあるか、ないかがお買い物をするときのひとつの目安になるとのことです。ほかにも、認証マークがなくても、フェアトレードの商品が販売されているケースもありますので、鈴木さんのアドバイスとしては、確かめる意味でもお店の人に、どこでだれが作った商品かを尋ね、そのストーリーを知ると、大事にしたい気持ちが生まれてくるのでは、ということでした。
ピープルツリーでは、フェアトレードをひとりでも多くのかたに広めるために、「フェアトレードの学校」というプログラムを実施しています。今月2月は26日の開校予定です。
ピープルツリーで販売されているオーガニックチョコはチョコレートのほんとうの美味しさを味わえますし、パッケージが可愛いので、プレゼントにぴったり! おすすめですよ。詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎ピープルツリーHP:https://www.peopletree.co.jp/