深夜の切り込み隊長を目指し、タブーに挑みます!

Every Mon. 深夜1:00~

五明一代記 第17章『DM』

2021/2/2 UP!

2017年、ツイッターに1通のDMが知らない男の人から届いた。

「大さん今日品川にいたか聞きたいんですが。今日品川のパチンコ屋でお金を貸しまして」。

相方の大に品川にいたかを確認する前に、この男性に詳細を聞くことにした。

この男性がパチンコを打っていたら、隣に座っていた大が突然話しかけてきたらしい。

男性は「グランジの大さんですよね?」と聞くと大も「そう」と返事をし、お笑い好きな男性はテンションが上がり10分程会話をする。

すると大が、お金を貸してほしいと言ってきた。

「カードを落としてしまいパチンコを打つ金がない。このあと彼女がここに来るからきたら金を上乗せして返す」

相方としては「そんな事を言う訳がない」と男性に返事をしたいところだが、大の場合はない話じゃなさそうなので難しい。

その男性にもどうかと思ったが、大に8万円を貸してしまったらしい。

貸した後に大を見失い、僕にDMを送ってきた。

僕は、この段階ではじめて大に今日品川にいたかをメールで聞いてみた。

すぐに「いないよ」と返信。

男性にそのことを送ると「でも容姿も声も会話の内容も大さんだったんです」と食い下がってくる。

他に何か特徴的なことはなかったかを聞く。

すると『犯人が相方か相方ではないのか』決定的な返事がきた。

「今思えば、右手の指に漢字で『魂』と入れ墨が入ってました」。

僕は指に『魂』と入れ墨を入れた人とお笑いトリオは組まない。

組んだ後に入れたのなら、解散していると思う。

もしかしたら、読み方が『たましい』ではなく『こん』でコントに生涯を捧ぐために入れたのかもしれない。だとしても、その入れ墨はコントの邪魔になるし、動機がこわいから解散すると思う。

相方の疑いは晴れたが、相方を多少なりとも疑った罪悪感が残った。

五明一代記 第16章『成人式』

2021/1/19 UP!

コロナの影響で今年の成人式はリモートだったり、場所によっては中止のところまであるみたいだ。
中止になって落胆している新成人が、もしも読んでいるならば安心してほしい。
この先、成人式に出ていなくて困ることなんてひとつもない。
同級生と会って成人式の話なんてしないし、撮った写真は引っ越しの荷造りしている時くらいしか見返すことはないだろう。
僕自身、成人式に出ていない。
39歳になったいまでも「成人式に出たらよかった」なんて一ミリも思わない。
強いて言うなら「行かなきゃよかった」だ。

ややこしくて申し訳ない。僕は成人式に行ったのだが、参加はしていない珍しいパターンなのだ。

成人式当日の朝、夜勤のバイト明けで眠い目を擦りながら常磐線で柏駅に向かっていた。
そもそも、式に出る予定ではなかった。
当時付き合っていた年上の彼女に出ないことを話すと「絶対に後悔する」と言われた。
スーツを持っていないので出れないと返した。「私服の人も普通にいる」としつこく粘ってきたので、それだけ言うならということでバイト明けに向かうことになった。

会場である柏市民会館の前で何人かの同級生に会った。声を揃えて「どうしたの?」と聞いてくる。
バッシュに、オーバーサイズのパーカー、紫色のキャップを舐め回すように見てくる。会場までの道のりで薄々は気がついてはいた。
道中、スーツを着た新成人しかいない。
「会場に着けば私服組がいるはず!」と淡い期待と彼女の言葉を信じて歩き続けた。が、会場に着いても私服の新成人は1人もいなかった。
恥ずかしい。
他の同級生に見られないよう、隠れるように開場を待った。
スーツの新成人はあっという間に会場に入っていき、外には僕とアカレンジャーの全身タイツを着ているハッピーな新成人の2人きりになった。
アカレンジャーは「キミもコチラ側だね」という目でチラリと僕を見て会場へ入っていった。その背中を見ながら、帰った。

コロナで式がなくなってしまってかわいそうな新成人へ。
付き合っていた彼女に騙され、会場前まで来たのに引き返した19年前のかわいそうな新成人がハッキリと言う。

成人式に出なくても、なにも問題ない。

五明一代記 第15章『2016年、冬のある日』

2021/1/5 UP!

朝、布団の上で目を覚ますと体中が痛い。

顔も痛い。

舌に当たる前歯に違和感がある。

ゆっくりと起きあがり、洗面台の鏡の前に立つ。

前歯が欠けている。

それから数分後に財布がないことに気が付く。

昨夜、何があった?

まだ、かなり酒が残っていて、頭がボーっとしている。

時間と共に、昨夜の記憶がじわじわと蘇ってきた。

下北沢で僕が主催するライブがあった。

終わりに出てもらった後輩と居酒屋へ行きしこたま飲んだ。終電の時間になり、お会計をして店を出た。

後日、後輩から聞いたのだが、駅まで千鳥足のお手本のような歩き方をしていたらしい。

後輩と別れ、駅に着く。時間はギリギリ。

電車が来るホームは地下に2階にあり、長いエスカレーターで降りる。

地下から電車がホームに入ってきた音がした。

僕は、エスカレーターを走って降りた。

道を普通に歩けない人間にとって、エスカレーターで走るなんて自殺行為でしかない。

ホームまであと2,3段のところで足が絡まり、身体が中に浮いた。

身体の前面に強い衝撃が走った。

ホームのコンクリートにダイブしたようだ。酒のお陰か、不思議と痛みはない。だが、動けない。

ホームにいた警備員さんが肩を貸して立たせてくれた。

お礼をした時、口の中に違和感が。

マスクをずらし、掌にペッと異物を出すと、歯だった。

冷静になって現状を把握したかったが、既に最終列車はホームに到着している。

マスクを戻し、欠けた歯を逆の線路に投げて電車に乗った。

走りだす。

車内がザワついている。

乗客の目線はこちらに集まっている。みんな、僕を刺激させないような動きでゆっくりと離れていく。

何故だろう。

電車の窓に反射する自分の姿が目に入った。

大男の肩まである髪の毛はバサバサに振り乱れ、髪の毛の間から覗く白いマスクは真っ赤な血で染まっていた。

人食いのバケモノだ。

バケモノは思考能力が乏しい。

最寄り駅から随分と離れた駅で降り、謎の徘徊をしたのち財布を落とす。

後日、財布は落とした状態で戻ってきた。前歯はセラミックになって戻ってきた。

ありがとう、高円寺の住人。

ありがとう、歯医者さん。

五明一代記 第14章『クリスマス』

2020/12/22 UP!

あと数日でクリスマスだ。
『クリスマス』で頭に思い浮かべるモノはなんだろうか。
恋人・プレゼント・長蛇の列のケンタッキー・きっと君は来ない一人きりの山下達郎。
僕はクリスマスになるとクロのばぁちゃんを思い出す。
クロのばぁちゃんとは父方の祖母の呼び名だ。
何かしらの罪を犯してクロと呼ばれている訳ではない。飼っていた猫の名前がクロだったので、そう呼ばれるようになった。
ちなみに母方の祖母も猫を飼っていたので、猫の名前から取ってチビのばぁちゃん。
チビとクロ。
酷い呼び名だが、物心ついた頃からそう呼んでいたのだから仕方がない。
なぜ、クリスマスになるとクロのばぁちゃんを思い出すのか。
毎年クリスマスプレゼントを贈ってくれたからだ。
可愛い孫のため、その時、小学生の間で流行っているモノをいち早くキャッチして贈ってくれた。
一つだけ問題があった。
毎回、プレゼントが惜しいのだ。
例えば、お腹が空いているとき、友達がピザを注文してくれたとする。届いたピザがハワイアンデライトの様な名前の、パイナップルメインのピザだったらどうだろうか。
肉かシーフードのピザだと思っている所にパイナップル。
ピザで間違っちゃいないが、惜しい。
クロのばぁちゃんのプレゼントはこれに近い。

小学生の頃、エアガンが流行った。
友達は持っていたが、僕は持っていなかった。
クリスマス前のある日、クロのばぁちゃんから電話が掛かってきた。流行りに敏感なだけある。エアガンを買って宅急便で送ってくれたらしい。
クリスマス当日、包装紙に包まれた荷物が届いた。興奮しながら包装紙を破ると、電話で言っていた通り、エアガンだった。
周りの友達が持っているエアガンは外国のアクション映画に出てくる、ベレッタ、コルトガバメント、デザートイーグルなど横文字の名前のエアガンが多かった。
クロのばぁちゃんは小学一年生の僕に、旧日本陸軍が使っていた南部十四年式というエアガンをプレゼントしてくれた。
渋すぎる。
僕はみんなと同じ横文字のエアガンが欲しかった。

翌年に流行っていたのがミニ四駆だ。
前の年の同様、クリスマス前にクロのばぁちゃんから「ミニ四駆を買ったから送った」と電話が掛かってきた。
知らない方のために、ミニ四駆がどういうものか説明すると、簡単に言えばモーターの付いた車のプラモデルだ。様々な車種が発売されていて、別売りで売っているパーツを付けて改造する。完成したら、ミニ四駆専用のコースで走らせてスピードを競うのだ。当時は全国各地で大会が開催されていて、0.1秒を縮めるために皆、必死になって改造していた。
ミニ四駆の車種の名前もサンダードラゴン、ファイヤードラゴン、アバンテジュニアなど、いかにも速そうでカッコいい名前が多かった。
クリスマス、クロのばぁちゃんから届いたミニ四駆はミッドナイトパンプキン。和訳すると、真夜中のカボチャ。名前からスピードを感じることはできない。それもそのはず、ジープだった。
送られてきたミニ四駆の箱が、僕の知っている箱の2倍の厚みがあったので、包装紙に包まれているときから、嫌な予感はしていた。
一応、ミッドナイトパンプキンを組み立ててみた。子猫くらいデカかった。いかに軽量化してタイムを縮めるかを競うのに滅茶滅茶重かった。電池を入れて走らせた。ジープだけある。友達が持っているミニ四駆では感じたことのない力強い走りだった。
ある日、友達に誘われて、近所のおもちゃ屋に置いてある専用コースに走らせに行くことになった。ナップサックからミッドナイトパンプキンを出してコースに置こうとした。が、車幅がデカすぎて入らない。それを見た友達が「砂場で走らせたらこれが一番速いよ」と子供にしては上出来すぎるフォローをしてくれた。

次の年、エアガン、ミニ四駆ブームが霞むほど、大流行したのがファミコンだ。
もう、クロからプレゼントが届くまでの描写は割愛する。
僕はアホなのだろう。届いた目の前のプレゼントに興奮し、南部十四年式、ミッドナイトパンプキンの前科を忘れていた。
包装紙を破ると、ファミコン本体の箱が露になった。
本体を家族全員でテレビにセッティングをした。そして、本体と一緒にファミコンソフトも送ってくれていた。
小学生がファミコン本体を手に入れて、最初に買うソフトの相場はスーパーマリオだった。他の地域ではわからないが、近所の同級生たちは皆、マリオ。
クロのばぁちゃんがチョイスしたのは『月風魔伝』というソフトだった。
月に風、悪魔の魔に、伝説の伝で、月風魔伝。もう怖い。
父、母、僕、弟の四人は誰も口に出さなかったが「マリオじゃない…」という少し残念な雰囲気がリビングに流れたのを憶えている。
静寂の中、動き出したのは一家の大黒柱、父だった。僕の手から月風魔伝を取り、ファミコン本体に差してスイッチを入れた。
オープニング画面、BGMは流れない。無音だ。
無音の中、テレビ画面には月風魔伝の文字。
スタートを押すと画面が切り替わる。
骸骨が積んでできた丘の上に、仁王立ちする一人の侍が映った。その侍が刀を抜き、剣先を天に掲げた。すると刀に雷が落ちてきてゲームがスタート。
スーパーマリオのようなポップさは微塵もなかった。
プレイしたが、小学3年生には難易度が高すぎる。親も不憫に思ったのか、すぐにスーパーマリオが買い足された。

クロのばぁちゃんからのプレゼントは散々だった。
だが、妙な出来事として人に話すことができるので、結果いいプレゼントだったのかもしれない。クロのばぁちゃんありがとう。

五明一代記 第13章『小倉の夜』

2020/11/10 UP!

2014年3月。
僕達グランジは、福岡は小倉にあった吉本の劇場でライブをしていた。
その年にDVDを発売したので、DVD購入者の方々とライブ終わりに握手会があった。
長テーブルを挟んで、お客さんと握手をしていく。
買ってくれたのに、差し入れまでくださるお客様もいて有難い限り。
握手会が終わり、楽屋で会場を出る荷造りをしていた。
差し入れの中に、小さな紙袋があった。袋の上はテープなどで留められておらず、開いている状態で、上から見ると小説が2冊入っているように見えた。
差し入れで小説をいただくことはあまりなかったので、鞄に入れる前に紙袋から何気なく小説を出したら、帯のついた札束が2つ出てきた。
全く理解ができない。
すぐに札束を紙袋に戻し、周りの芸人に見られていないか確認した。
その紙袋を持って、冷静を装いながらトイレへ向かう。個室の鍵を閉め、恐る恐る紙袋からブツを取り出した。
一万円のピン札の束が2つ。
いや、慌てるな。これはユーモラスなお客さんの悪戯かもしれない。だが、どの角度から見ても「こども銀行」の印刷は見当たらない。
お札を束から一枚取り出し、トイレの照明へ掲げた。透かしには、無愛想な福沢諭吉がしっかりと現れた。
僕には、200万円をもらう勇気がなかった。一刻も早く返したい。
中には手紙が入っていたが、名前や連絡先は一切書かれていなかった。
この日は泊まり。
運悪く、ライブに出演した他の芸人達と相部屋だった。地方の仕事でテンションが上がった貧乏若手芸人はバーサーカーとほぼ変わらない。
200万を持っていることがバレたらと、想像するだけで恐ろしい。
打ち上げ中、ホテルで寝る時もリュックを片時も離さなかった(今思えば逆に怪しいが)。
次の日は、小倉でライブを一本やってから帰京。
チェックアウトをして、楽屋へ入る。楽屋で相方と2人っきりの時間があった。特に話すこともなく、無言の時間が流れる。
何気なくTwitterを開いたら、数メートル横にいる相方が呟いていた。

「まとまったお金が欲しい…襲うか…」

200万の事は知らないはずだ。なぜ?
長年の貧乏生活で手に入れた第六感が働いたのだろうか。僕は膝の上に置いたリュックの肩紐を強く握った。
小倉での仕事を全て終わらせて、帰京。

僕は普通の人よりも、ネットを使った検索能力が優れていると自負がある。
様々な検索ワードを使い、200万円を差し入れした可能性のある人をTwitterで見つけた。
確証はない。
が、呟きから小倉でのライブに来ていたことは確実だ。その前後の呟きなどを照らし合わせると可能性は高い。
僕のことはフォローしてくれていたので、こちらもフォローしてDMを送った。その人ではない可能性もあるので、気をつけながら。

結果から言うと、当たり。
僕は丁重にお断りをして、銀行振り込みでお金を返すことにした。

翌日すぐに、銀行窓口で振込の手続きをした。銀行員は、みすぼらしい格好をした大男が、リュックから200万の束を出してきたからビックリしただろう。
こちらもビックリした。
振り込み手数料が値段によって変わるのを知らず、200万振り込むのに1000円近くした。
経験できないスリルを1000円で買ったと思えば安いか。いや、高いか。

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