2008年9月28日

2008年版・環境問題の新・常識 第4回「地球温暖化編」
WWFジャパンの気候変動プログラム・リーダー、山岸尚之さんを迎えて

今週のベイエフエム/ザ・フリントストーンは山岸尚之さんのインタビューです。
山岸尚之さん

 今年は、地球温暖化に関する国際会議が例年より多く開催されています。
 ご存知のように、先進国に温室効果ガスの削減を義務づけた京都議定書の約束期間が、今年2008年から始まり、2012年までの5年間で、数値目標を達成しなければいけません。また、その先の“2013年以降の枠組みをどうするか”ということを、来年2009年までに決めなくてはいけないんです。その為、今年、国際会議が多くなっているわけですが、地球温暖化の問題や対策に関しては、世界各国の立場や利害、経済問題などが複雑にからみあい、次から次へと難しい用語や考え方が登場し、新聞記事などを読んでいても分からないことが多いですよね。とはいえ、私たちの生活に確実に影響を与える問題なので、少しずつ理解を深めることが大事。
 そこで今週は、シリーズ企画『環境問題の新・常識』の「地球温暖化編」をお届けします。NPOやNGOの代表として、国際会議に出向くことも多い、WWFジャパンの気候変動プログラム・リーダー、山岸尚之さんをお迎えし、7月の洞爺湖サミット以降の地球温暖化問題の対策など、うかがっていきます。
 山岸さんにはなるべく分かりやすく解説していただくので、ぜひ皆さんも一緒に学んでいただければと思います。

洞爺湖サミットでの成果は?

●今日はザ・フリントストーンのシリーズ企画、環境問題の新常識の地球温暖化編として、7月の洞爺湖サミット以降の世界各国の動向、そして今後の地球温暖化問題の対策に焦点を当てていきたいと思うのですが、まず、7月に行なわれた洞爺湖サミットのおさらいからしてみたいと思います。結果的にはG8主要宣言の長期目標として、2050年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を少なくとも50パーセント削減するヴィジョンを共有すると発表したわけなんですが、まず、これについてご感想を聞かせていただけますか?

「2050年までに50パーセント削減っていうのは、業界関係者の間では50/50といわれていて、少なくても今回の合意で達せられなければいけない超最低ラインだったんですね。で、なぜ超最低ラインだったかといいますと、昨年、ドイツのハイリゲンダムというところでサミットがあったんですけど、そのときに、すでにアメリカとロシアを除く先進国の間では2050年までに50パーセント削減っていうのは、合意ができていたんですよ。ですから、ハイリゲンダムのときの合意の中にも、カナダと日本とEUが言っている2050年までに50パーセント削減という目標を真剣に検討をするという文言が入っていたんですね。ですから、今回の合意で期待されていた最低ラインは、少なくともアメリカやロシアを含めた形で合意するっていうラインがあったんですね。で、ただ重要なのは、昨年の12月にG8とはまた別に気候変動の国連会議のほうで、バリ・ロードマップという合意ができたんですよ。そこでひとつ重要だったのは、バリ・ロードマップっていうのは基本的に来年、2009年度末までに将来の国際的な温暖化対策の枠組みを合意しましょうというのを合意したんですね。ですから、2009年度末にはコペンハーゲンで会議が開かれる予定になっているんですけど、コペンハーゲンまでのロードマップを敷いたという意味で、バリ・ロードマップと呼ばれるんですね。そこで、もう1つ重要なポイントは、バリのときに途上国が初めて、『我々もその中では一定程度の行動をしなければいけない』っていうことを約束したんですよ。ということは、それに踏まえて、今回のサミットの中では先進国側が『じゃあ、私たちはこれだけやります』ということを宣言することが期待されていたんですね。で、そこへきて、去年のラインをちょっと上回るくらいの合意しかできなかったという意味において、今回の洞爺湖サミットっていうのは、ちょっと期待外れだったと言わざるをえませんね」

●今回のG8の2050年までに50パーセント削減するっていうのに対して、洞爺湖サミットでは途上国が「まず先進国が2020年頃から2030年頃の中期目標を設定し、削減努力を強化すべきだ」という主張をしたじゃないですか。私的には当然かなと思うんですが、これについてはどうでしょうか?

「途上国の立場から見てみると、例えば2050年までに50パーセント削減しましょうって目標ができたときに、その中で何もなしに途上国としても『同意します』と言ってしまうと、『じゃあ、あなたたちはこれくらいやってくださいね』と先進国に言われかねないと思っているところがあるんですね。ですから、先ほど申し上げたように先進国としては『引き続き、リーダーシップをとって削減を進めていきます』というのを示すことが、今回、非常に重要だったわけですよ。その意味では今回、2020年の中期目標というものをきちっと出しておくというのは、先進国にとっては重要なステップだったわけですけど、そもそも論に立ち戻れば、G8って先進国の集まりですよね。だから、本来ならば先進国が何をするかっていうのを宣言する場所であって、先ほど言った50/50、2050年までに50パーセント削減っていうのは、世界全体の話ですので、その中で先進国が何をするのかっていうことを宣言して初めてG8としての責任が果たせると思うんですね」

●今回の洞爺湖サミットでは中国、インド、ブラジルなど主要排出国が主要8ヵ国に加えて参加したじゃないですか。これは意義があることだったとお考えですか?

「そこは難しいところで、確かにそういった大きな排出国である中国とかインドとか、ブラジルが一緒に話し合いの場についていたというのはいいことなんですけど、そのお膳立てに問題がありまして、どういうことかといいますと、その気候変動の会合っていうのは最終日に行なわれたんですね。で、通称MEMと呼ばれていて、MAJOR ECONOMIES MEETING(メジャー・エコノミーズ・ミーティング)という会合だったんですね。このMEM、主要経済国会合といわれる会合は、アメリカがやろうと言い出したんですね。で、アメリカの意図っていうのは、そういう会合をやることによって、一種、ブッシュ政権の下で自国がやっていないことを、目くらましするためのポーズみたいなところがあったんですよ。で、そういう会合だというのをみんな知っていますので、途上国の側もその場でそんなに大きなことに合意をできるとは思っていないんですね。ですから、MEMで合意された内容っていうのは、ほとんど中身がなかったですし、それ自体は途上国と先進国が共通の場で、合意ができなかったっていうのは残念なんですけど、そもそも設定の場自体に問題があったという意味では、ある意味、予期された結果だったと言わざるをえないですね」

日本政府が進めていこうとしている“セクター別アプローチ”とは?

●7月に洞爺湖サミットがありまして、その後、地球温暖化に関する国際会議としては8月にガーナの首都、アクラで国連気候変動枠組条約の作業部会、通称アクラ会議が開催されたんですが、この会議ではどんなことが話し合われて、どういった結果が出たんですか?

「アクラ会議は前の会議の続きなんですね。先ほど、ちょっとだけお話しましたけど、バリ・ロードマップが昨年末に採択されたと申しましたけど、バリ・ロードマップに従って、今年もアクラ会議の前に国連会合としてすでに2回の会合が行なわれているんです。その会議で何が話し合われたかというと、一種の準備作業に近い話し合いがされていました。本当はかなり具体的な話をしなければいけないんですけど、例えば、京都議定書の中で使っていいことになっている、京都メカニズムと呼ばれている排出量取引だとか、クリーン開発メカニズムだとか、共同実施っていう京都議定書の中に含まれている仕組みを、2013年以降、京都議定書の第1約束期間が終わって、新しいものに移っていくときに、どうしたらいいのかという論点整理みたいなことをやったりとか、新聞等でも出てきているセクター別アプローチに関するワークショップが開かれたりとか、同じく途上国における森林破壊によって出てくるCO2を、どうやって減らしていくのかっていうことに関するワークショップも開かれたりしましたし、資金援助とか、技術移転といったことについても話し合われました」

●今、お話にあったセクター別アプローチについて、簡単に説明していただけますか?

「これは、言っている人によって意味が全然違うんですね。すごく大雑把に言うと、要するに、セクターというところに着目して、温室効果ガスを減らしていきましょうよという感じなんですね。このときのセクターっていうのはどういう意味かといいますと、例えば、電力部門とか、発電を行なっている事業者さんがいるような部門とか、自動車産業部門とか、あるいは鉄鋼部門とか、あるいはオフィス部門とか、部門っていうのは、そういうイメージですね。で、今までだとそういう個別のセクターの特色に合わせて削減をしましょうっていう議論よりは、どちらかというと、日本だったら日本全体で減らしていきましょうっていう議論が多かったんですけど、セクター別アプローチの時には、例えば国際的な鉄鋼業の横の繋がりを重視しましょうとか、そういう意味合いが出てくるんですね。すごく一般的に言うと、そういう意味なんです。
 けど、例えば、日本政府が言っているセクター別アプローチっていうのはどういう意味かというと、大きく分けて2つ意味があるんですね。1つは京都議定書の第1約束期間が終わるから、今度は新しい温室効果ガスの目標を作らないといけないんですね。そのときにセクターごとのきちんとした分析を行なって、どれくらい削減の可能性があるのかっていうのを1つ1つ調べて、それを下から積み上げて、目標を作りましょうっていうのが1つ目のセクター別アプローチの意味なんですね。もう1つは、同じように個々のセクター毎に分析をして、途上国との協力のあり方っていうのを模索していきましょうっていう考え方なんですね。その2つがドッキングして、提案として語られています」

●日本政府としては積極的にこれを進めていこうとしているんですよね?

「そうですね。正直、今の話を聞いていても『そんなものかな』っていう程度だと思うんですね。バックグラウンドにある『なぜ、そういうことを言いたいのか』っていうことを言うと分かりやすいのかなと思うんですけど、誤解を恐れずにすごく単純化して言えば、日本政府の側からすれば京都議定書の目標は『えいやっ!』で決まったと。政治的な合意だったと。だから、数字にきちんとした根拠がないし、結果としてみると、日本が不利になっているという思い込みがあるんですね。だから、次期の目標に関しては、日本が不利にならないようにしたいと。そのためにはセクター毎にきちんと分析を行なえば、日本は他国に比べて効率が高いはずだから、日本は有利な目標が持てるという意味で、セクター別に削減しましょうといっているんですね。
 で、2つ目の部分は、途上国とセクター別に協力していきましょうっていうのは、多分、誰も反対しないと思うんですけど、その意図にあるのは途上国にどれくらい削減できるのかっていうのをしっかり見つけていって、途上国にも努力してもらうと。具体的には、例えば中国とかインドをもっと削減に巻き込んでいきたいという意図があるんですね。その2つの意図があるので、それぞれのそういう主張が出てくるというふうに考えていただくと、少しは分かるかなぁと思います。
 ただ、このときに批判を受けるのは、例えば、下から積み上げるというお話がありましたけど、下から積み上げることができるのはどういうことかというと、そういう技術や何なりのデータがあるっていうことですよね。でも、例えばこれから20年先、50年先のことを話し合うときに、『それまでのデータがきちんとあるんですか?』っていう話もあるわけじゃないですか。まして、それが今の知識を基に積み上げたものが、環境的な観点から見たときに、果たして必要な量に達するのかと。要するに、今、自分にできることを目標として掲げてしまって、それで本当に温暖化防止に届くのかどうかっていうところがあるわけですよ。大体、皆さんの私生活を考えてもお分かりの通り、目標を立てるときって、自分ができるラインよりも、もうちょっと上を目指しますよね。でないと、例えば自分ができるラインが50だと思っていて、50のまま目標を掲げたら40しかやらないですよね。そういう懸念があるわけですよ。要するに足りるのか、下から積み上げていって大丈夫なのかっていう問題があるのと、今、途上国の側から見ますと、日本は京都議定書の目標を達成できていないんですね。その現状において、そういう主張をしてくるっていうことは、『自分たちができていないくせに、途上国にもっと削減させようっていう魂胆じゃないのか』っていうふうに見えるわけですよ。だからやっぱり、そういうことで国連会議では批判を受けてきて、今回も受けがあまりよくなかった部分はあるみたいですね」

排出量取引制度のメリット・デメリットは?

●10月から国内で排出量取引制度が実施される予定なんですけど、この排出量取引っていうのはどういうものなのか? メリットは何なのか? 果たしてうまくいくのか? っていうのをまとめてお答えいただけますか?

山岸尚之さん

「排出量取引制度っていうと、今、一般的に知られているイメージだと、大気を売買するとか、空気を作って権利を取引するとかっていう、ビジネスチックなイメージがあると思うんですね。実際、そういう面があるのは確かなんですけど、環境政策としてなぜ、排出量取引制度っていう話が出てくるのかっていいますと、結局、排出量を減らしたいと思ったら、国全体の排出量をトータルで減らしていかなきゃいけないわけじゃないですか。で、それをどうやって管理するかっていう問題になるわけですよ。
 で、1つの方法は、例えば今日本がやっているみたいに、個々の企業さんに自主的に目標を持ってもらって、自分たちのできる範囲でやってくださいねというふうにお願いしてやってもらう。その結果としてできてくるものを受け入れるっていうタイプがあると思うんですけど、排出量取引制度の場合、もうちょっと強力で、例えば今100排出しているとします。そうしたら、この年までに94に減らさないといけないんです。といったら、排出をしていい権利というものを94に基づいて配るんですね。要するに、この年になったらあなたは排出をしていい権利の範囲内でしか、排出をしてはいけませんよと決めるんですね。その中で、もしダメそうだったら、ほかの人と取引をしてもいいですよというふうにその取引を許してあげる。そうすると、みんながその排出をしていい権利を守っている範囲においては、絶対に94までに管理できるんですよね。要するに温暖化対策の肝として、トータルで排出量が減っていないと意味がないわけで、それをきちんとやろうと思ったときにやりやすい方式っていうのが排出量取引制度なんですね。だから、実は取引の部分に目がいきがちなんですけど、もっと言えば国全体で排出量をどうやって管理するかっていう制度なんですよ。
 そうすることによって、結局何が起きるかっていうと、排出をするっていうことに値段がつくんですよね。1トンのCO2を排出するためにはこれぐらいのお金を払って削減をするか、あるいは別なところから排出する権利、排出枠を買ってこなきゃいけないと。大事なのは、今まで無造作にやっていたCO2の排出に値段がつくと。で、値段がつくと何がいいかというと、取引に発展していくっていうのももちろんあるんですけど、もう1つ大事なのは、やっぱりどんな人でもどんな企業でも値段がついたら気にするんですよね。要するに、温暖化対策っていうのはもはや、良心的で頑張ってくれる人たちだけのものじゃないんですよ。全国民で、全経済で頑張ってやっていかなきゃいけないものだから、そういう形にしないと、現実問題として減っていかないんじゃないかっていう事情もあると思いますね」

●これについて、産業界からはどうなんでしょうか?

「産業界は今のところ、基本的な立場としては『これはダメだ』と。排出量をコントロールする制度なので、『これは経済統制だ』という感じで反対されていたりとか、かかってくるコストが馬鹿にならない業界もあるので、そういう業界とかは『これは国際競争に影響する』と。で、『我々のところに過度にコストがかかってくると、結局、工場は中国に移転して、中国でたくさん排出することになるから、そんなことをやったら地球全体として排出量が増えるじゃないか』という主張もされているんですね。ただ、全部の企業さんがまともに大きな影響を受けるかというとそうでもないはずなんですね。あと、ちゃんとやっているところとやっていないところでは差が出てきますし、この中だと勝者と敗者は絶対に生まれてくるんですね。だから、一概に全部の企業さんにとってマイナスに働くかといったらそうではないんですけど、マイナスに働く可能性が高い人たちも多いので、そういう人たちを中心として、基本的にこの制度を取り入れるべきじゃないという立場をとられていますね」

●排出量取引で本当に温室効果ガスって減るんですか?

「排出量取引制度で温室効果ガスが減るかどうかっていうのは、最初の目標次第なんですよ。先ほどの例で言うと、94まで減らしたいとしたら、94までの許可証しか配らないっていうことが非常に重要なんですね。で、おそらくうまくいかないんじゃないかって言われている人の中には、例えば、EUで行なわれた排出量取引制度において、第一期と呼ばれる2005年から2007年の間に削減が進んでいなかったっていうニュースが出てきて、それを指して言われる方も多いと思うんですけど、第一期はそれを失敗したんですね。許可証を多く発行しすぎたんですよ。『どうして許可証を多く発行しすぎることがありえるの?』と思われるかもしれないんですけど、先ほど、100から94って単純化して言いましたけど、排出量取引って、対象になるのが全国民じゃないんですよね。例えば、大きな企業さんとかになるんです。大きな企業さんの排出量がトータルでどれくらいになるのかっていうのが分からない状態で、EUの場合は始めているので、どれくらい許可証を発行したら減っているのかっていうのを、最初は企業が出してきたデータをそのまま使ってやっていたんですね。そしたら、企業はやっぱり少し多めに出していたみたいで、それをベースに考えていたら、やっぱり失敗しちゃったというところがあるんですね。ただ、EUの政策担当者の賢いところは、そうやって最初は失敗するんですけど、やる過程でちゃんとデータを集めて、『もうこれで自分たちには大きな企業さんたちが排出しているデータはある』と。だから、『もうこれで嘘はつけないね』っていう形のポジションを取っているんですね。そういう手順を踏むと、ちゃんとした削減に繋がるといえるかなと思います」

●排出量取引制度が進んだときっていうのは、例えば、企業が対象ではあるんですけど、一般の私たちへのしわ寄せっていうのは考えられるんですか?

「しわ寄せはありますね。逆にいうと、そこは大事なポイントなんですね。しわ寄せっていうと悪い感じですけど(笑)、本当はあるべきところなんですよね。なぜかっていいますと、CO2を無料で排出していい時代は終わったっていうことなんですね。だから、それなりにCO2の排出に繋がることをしている人なり企業なりは、それなりのコストを負担しなければいけないっていうことなんですよ。そういう意味では、排出量取引が個人にどういう影響を及ぼすかというと、例えば、排出量取引制度の中で削減をしなきゃいけなくなった企業さんがいたとすると、その削減をしなくちゃいけなくなった分の余分なコストがありますよね。その余分なコストをどうやって吸収するかっていうと、例えば、その会社が売っている製品とか、その下に卸しているものに上乗せしていくわけですよね。下にコストを転化していくわけですよ。それが、物を作っている企業さんであれば、製品に添加するでしょうし、電力会社さんであれば、電気料金に上乗せしたいと思うんですね。そういう形で一般の消費者の人たちには、物の値段とか、エネルギーの値段という形で影響が出てくるわけですね。でも、逆にいうと、そういうことが出てくることによって、一般の人たちは『これはCO2がたくさん使われている製品なんだ』とか、『CO2をたくさん使ってしまっているんだから、減らさなきゃいけないな』って思うキッカケになるわけですよ。そうすると、減るわけですよね。それが、重要な性質だと思いますね」

アメリカは新政権になってどう変わる?

●温暖化問題の大きな国際会議としては、今年の12月にポーランドで国連気候変動枠組条約第14回締約国会議、通称COP14がありますけど、こちらの焦点というのはどんなところになるんですか?

「先ほど出てきたバリ・ロードマップで来年、デンマークのコペンハーゲンで最終的な合意を達成しないといけないと。で、その1年前ということになりますので、きちっとした交渉のスタートを切れるかっていうのが、非常に重要なポイントです。で、きちっとしたスタートってどういうことかっていいますと、今の交渉の状況っていうのは、色々重要な分野があるんですけど、例えばさっき言った京都メカニズムだとか、あるいは、削減の目標をどうやって決めるかとか、途上国に対する資金援助をどうするのかとか、途上国に必要な技術を移転する仕組みをどうやってやるのかとか、特に途上国において温暖化の影響に対してどうやって対応していくのかとか、そういう色々と大事な分野があるんですね。そのそれぞれの大事な分野の中で、どういうオプションがあるのか。で、それぞれの国がどのオプションを指示しているのかとか、そういうところがきちんと整理されていないんですね。まだ議論が混沌としていて、色々なアイディアはたくさんの国から出てきているんですけど、例えば、このアイディアとこのアイディアは整合性があるけど、このアイディアとこのアイディアだと対立してしまうとか、そういうところがきちんと整理されていないんですよ。だから、ポズナンで開かれるCOP14での重要なポイントっていうのは、そういうきちんとした整理が、あるいはアイディアが、オプションがそれぞれの分野ではあるんですよと。で、これについて来年までの1年間の中で、私たちは合意を図っていかなければいけないんですよということがハッキリして、そこまで達成できたらCOP14は成功といえるんじゃないかなと思います」

●来年1月にアメリカで新しい大統領による政権が誕生するわけですが、それによって大きな変化は生まれそうですか?

「そうですね。マケインさんにしても、オバマさんにしても、どっちが勝つにしても、温暖化問題に関して、今よりマシな政策が出てくるだろうっていうのは、誰も反論する人が出てこないくらい明確なんですね。で、日本にとって重要なポイントは、そのときに日本がどういうポジションをとれるかっていうことですね。例えば、先ほど出てきた排出量取引だと、来年以降の新政権ができたときに、アメリカが排出量取引を取り入れる可能性が非常に高いんですね。そのときに、アメリカは取り入れました。EUも取り入れました。オーストラリアも取り入れますし、ニュージーランドも取り入れるんですね。で、主要先進国のほとんどに排出量取引を入れるんですよ。で、日本はそれでもなおかつ、『独自の道を歩みます』って胸を張って言えるのでしょうかっていうところがあって、別に他の国が取り入れたから入れなきゃいけないっていう道理はないんですけどね。でも、今グローバル化している世界の中で、環境政策の中でもその波は来ているんですよね。で、日本だけが違う政策をとって、他の国と違う歩調をとるっていうことに関しては、当然、それなりにデメリットも出てくると思うんですよ。そういうのをどう考えるのかっていうのも、日本的な観点から言えば、重要なポイントになってくると思いますし、いずれにしてもアメリカの次期政権は絶対、今よりは前向きな温暖化対策が出てくると。で、どこまで前向きになってくれるのかは分からないですけど、非常に注目をしたいと思います。あと、先ほど言ったように、来年末にきちっと合意が達成できてないといけないっていうことは、アメリカの新政権が誕生してかなり早い段階から、交渉のポジションをちゃんと取ってくれないと困るんですよね。そこが達成できるかどうかっていうところがポイントですね。
 日本の中だと、ひょっとしたら日本は温暖化対策が進んでいるかのように感じるかもしれないんですけど、政策という面ではあまり進んでいない部分もあるんですね。だから、例えば、今度また総選挙がありますよね。そのときに立候補される候補の方々が、ちゃんと温暖化対策に対して考え方を持っているかどうかっていうのを見るっていうのも、一般の我々有権者が果たすべき責任なんじゃないかなって僕個人としては考えています」

●地球温暖化問題は、食糧問題やエネルギー問題、経済の動向ともすごく密接な関係があるので、そういう意味でも、分かりやすくすることが大変な問題ではあるんですけど、今後もこの番組でどんどん取り上げて皆さんと一緒に考えていきたいなと思うので、山岸さんには今後ともご協力いただければと思います。

「よろしくお願いします」

●今日はどうもありがとうございました。

送信フォームこのシリーズ『2008年版・環境問題の新・常識』ではリスナーの皆さんからも色々と教えていただきたいと思っています。特に、お住まいの市町村ではどうなのかなど含めて、ご意見やご感想、また、今さら聞けないと思っているような疑問なども、お寄せください。

COP13について総括していただいた、WWFジャパン、小西雅子さんのインタビューもご覧ください。
このほかのシリーズ『環境問題の新・常識』もご覧ください。
『環境問題の新・常識』ホームページ
AMY'S MONOLOGUE〜エイミーのひと言〜

 地球温暖化問題はあまりにも色々なものが絡み合っていて、本当に難しくてわかりにくいですよね。温室効果ガスの代表、二酸化炭素の削減といっても、普段の生活でどれくらい出しているのか、実感するのは難しいですけど、ある商品が生まれて捨てられるまでに、どれほどの二酸化炭素を排出するかを計算して数値を表示する「カーボン・フットプリント(炭素の足跡)」を来年度から導入しようという動きもあるそうです。そうすればより排出量の少ない商品やサービスを私たち消費者が選べるようになり、企業は環境にいい商品などの開発に力を入れるようになるという期待もあるそうです。確かに、実際に数字として見えた方が実感しやすいですよね。
 また、以前スタッフが見つけたサイト(http://www.myco2.net/eco-pro/index.php)で、自分の1年間のCO2排出量を計算できるんです。皆さんもチェックしてみてはいかがですか?
 それにしてもやっぱりこの問題は難しい・・・。番組ではこれからも定期的に取り上げていくので、皆さんもめげずに、ぜひ私たちと一緒に学んでいっていただければと思っています。

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 尚、WWFジャパンのホームページには地球温暖化に関することも詳しく載っているので、ぜひご覧ください。

 WWFジャパンのホームページhttp://www.wwf.or.jp/

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オープニング・テーマ曲
「ACOUSTIC HIGHWAY / CRAIG CHAQUICO」

M1. EMERGENCY ON PLANET EARTH / JAMIROQUAI

M2. MAKE IT HAPPEN / MARIAH CAREY

M3. DRIVEN TO TEARS / THE POLICE

ザ・フリントストーン・インフォメーション・テーマ曲
「THE CARRIAGE ROAD / JIM CHAPPELL」

M4. I NEED TO WAKE UP / MELISSA ETHERIDGE

M5. ONE / U2

油井昌由樹ライフスタイル・コラム・テーマ曲
「FLASHES / RY COODER」

エンディング・テーマ曲
「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
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