毎回スペシャルなゲストをお迎えし、
自然にまつわるトークや音楽をお送りする1時間。

生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで
幅広く取り上げご紹介しています。

~2020年3月放送分までのサイトはこちら

Every Sun. 20:00~20:54

2021年1月のゲスト一覧

2021/1/31 UP!

◎舘野鴻(絵本作家/生物画家) 『健気な虫の生き様を通して何を伝えられるのか〜絵本『がろあむし』の世界観〜』(2021.1.31)

◎平田美紗子(林野庁の絵師)『日本の木は今が伐りどき〜世代を超えて培う林業〜』(2021.1.24)

◎寺崎美紅(山梨県丹波山村・郷土民俗資料館の学芸員)『ニホンオオカミの伝説〜山梨県丹波山村に残る言い伝え〜』(2021.1.17)

◎五箇公一(国立環境研究所の生物学者)『今こそ「利他行動」「ヒューマニティ」!』(2021.1.10)

◎猪野正哉(日本焚き火協会・会長/焚き火マイスター)『焚き火はコミュニケーション・ツール〜焚き火マイスターを迎えて』(2021.1.3)

健気な虫の生き様を通して何を伝えられるのか〜絵本『がろあむし』の世界観〜

2021/1/31 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、絵本作家、そして生物画家の「舘野鴻(たての・ひろし)」さんです。

 舘野さんは1968年、横浜市生まれ。子供の頃、近くに住んでいた、のちに国際的に有名になる絵本画家「熊田千佳慕(くまだ・ちかぼ)」さんに絵を習うようになったそうです。そして大学進学後、演劇や現代美術、音楽活動を経て、生物調査の仕事から生物画を描くようになり、2009年に『しでむし』で絵本作家としてデビュー。2013年に『ぎふちょう』、2016年に『つちはんみょう』を発表。特に『つちはんみょう』は、ヒメツチハンミョウの観察を通して、明らかになっていなかった生態を解明するなど、高く評価されました。同作は2017年に小学館児童出版文化賞を受賞しています。

 そんな舘野さんが新しい絵本『がろあむし』を出されたということで、番組にお迎えしました。きょうは、長い時間をかけて観察する虫たち、そして緻密に描きあげる絵に込められた想いなどうかがいます。

☆写真&イラスト提供:舘野鴻

写真&イラスト提供:舘野鴻

ガロアムシは特徴がないのが特徴!?

※まずは舘野さんの新しい絵本『がろあむし』について。

●読ませていただきました。街の様子がガラッと変わっている間に、昆虫たちはたくましく生きているんだなという風に感じました。そもそもガロアムシっていう虫を、私は初めてこの絵本で知ったんですけれども、改めてどんな虫なのか教えていただけますか? 

「コオロギとか、ゴキブリとか、そういうのに近い仲間ですよね。絵本に描いてあるガロアムシは、アメ色と言いますかね、ちょっと茶色っぽくて、成虫になるとそういう色になるんですが、幼虫の時は真っ白けでシロアリみたいな感じですよね。だから何の特徴もない。

 昆虫と言いますと頭部と胸部と腹部があって、足が6本あって、そういう定義があるでしょ? 小学校の時に習う、まさに(ガロアムシは)あの図以外何物でもないっていう、何かツノが付いているわけでもないし、羽根もないんですよ。成虫になっても、普通は空を飛んだり移動するために羽根が出てきたりしますけども、この虫の場合は最初からないですね。

 ところがそのガロアムシ、どこに棲んでいるかというと、この絵本では地下間隙と言いまして、ガレ場がありますよね、山の中の沢の源頭部であるとか、そうすると岩盤が出ているところが風化して崩れていきます。何万年とかけて積み重なっていくと、その下はどうなるかっていうと、暗黒多湿の小さい隙間ができてくるんですね。それがどういう環境かというと、洞窟とほぼ同じ環境なんですね。

写真&イラスト提供:舘野鴻

 洞窟にしか棲めないような生き物の世界でもあったり、また、幼虫時代だけその土の中というか、暗いところで過ごすとか、昆虫、動物に関してはそういうのがいたりします。そういう風に適応していったガロアムシなんですけれども、1億5000万年前ぐらいの中生代のジュラ紀あたりにもいて、実は化石があるんですね。

 今はガロアムシ、日本で数種類ぐらいしかいないというか、研究者が分類している最中なんですけども、当時は80種類ぐらいガロアムシの仲間がいたのかな。なぜそんなに多かったかっていうと、繁栄していた時があって、昔は羽根があったんです。その羽根のあるガロアムシの化石がたくさん残っていて、おそらく羽根の形で分類して80種類ぐらいになっていたと思うんです。

 地下のことを考えると、菌類と植物の根っこ以外はほとんど動物質と言いますか、そういったものなので、目に見える範囲では肉食系の世界になっていくので、ガロアムシ自体も肉食なんですね」

●どうして舘野さんはそんなガロアムシを絵本にしようと思われたんですか? 

「まず、今言いましたように、何の特徴もないというのが最大の特徴じゃないですか(笑)。それが面白いというのと、あとやっぱり飛べないということを選んでいったということですね。
 飛べない虫ってたくさんいるんですけど、元々は羽根があった、それがどんどんなくなっていくという、その過程にある虫が、見ていると結構いるんですよ。そういうものを、例えば1億年前はこうだったのに、こういう風になってきたという、そこを想像することがすごく面白いですね」

舘野鴻さん

観察が導いてくれたストーリー

※絵本『がろあむし』を出版するまでに10年かかったということですが、どんな方法でガロアムシを観察していたんですか?

「ガロアムシはガレ場の中に棲んでいます。これは黙って待っていても絶対出てきませんので、常に掘るわけですね。常にガレ場に行って、鍬でガーって掘っているわけです。
 時によっては1メートルくらい掘って、そこをずーっと崩しながら沢の上の方まで行ってということですから。空間的に全体を見て、それの関係性だとか、生物と生物の環境とか、だって見えないでしょ? いつも見えているのは断片しか見えていないので、その断片を繋ぎ合わせる。

 例えば、食物網とかあるじゃないですか。何が何を食ってとか、そういうことは非常に分かりにくいので、一個一個、肉眼で見えるやつだと生きたまま獲ってきて、シャーレの中に入れます。ガレ場の中って温度が安定しているんですね。低い状態で15度から20度ぐらいで安定していたりするんで、外気のところに持ってくると、暖かくて死んじゃう。だからずっと冷蔵庫で飼うんですね。

 それでどうなっているか。なにしろ部屋を寒くして、寒い状態のまま、顕微鏡でずっと動きを見ていたりとか。例えば、きのう入れたシャーレのこれとこれで、これが食われていたとかっていうことを結びつけていくんですね。

 僕は研究者じゃないから、僕がやっているのはただの検証なので、これで合っている? って詳しい人に聞くわけですね。そうすると、意外とそういうことまでは追いついてないのが現状なんですよ。
 土壌動物に関しては分類をしないと。その分類のあとに、こういう種はどういう暮らしているんだっていうことで、その環境との関係を探していって。しかも、この虫がいるってことは、この環境はこうなんだねって評価に繋がるわけでしょ? それのいちばん大事なところが分類なんですね。

 それがまだ追いついていないところで、僕はそのちょっと先の、これとこれの関係がどうなっているんですかね? って。それが分からないと絵にドラマがなくなっちゃうんですよ。ここにこういうのがいたっていう情報はあるんだけど、ここで何かをしていてくれないと、どうにもならないところがあって。そういう難しいところは、今回のガロアムシはありましたよね。

 虫の科学絵本というか、説明をしたいわけじゃないんですよ。その生き様を通して何を伝えられるのかっていうことがいちばん僕の中で大事なことなので。
 (事前に考えた)ストーリーは、現場に行くと、自分の思った通りになんかなっていないですから、絶対そうですね。人間が想像したようになんかできていません。いくら研究成果があって、その通り検証しようと思っても、見る人によって、見る季節によって違う振る舞いをするんですよ。そうなると想定外ってなっちゃうでしょ? だけど自然のことに関してはいつも想定外があるわけですね。

 こういう可能性だってある(って思わないと)、誰かが見て観察したっていうのは全体の中の一点に過ぎないと僕は思うんですよ。そういう姿勢を持っていないと、俺こう見たんだから、こうに違いないみたいな。そんな本が出ていたら僕自身が嫌だからね。自然って分かんないからさ(笑)。 観察していくと逆にストーリーを教えてくれるところがあるんですよ。それを組み込んでいって。ガロアムシも最初は全然違う話でしたけど、ああいう形になったっていうのは、観察が導いてくれたようなところがありますね。だから僕が何か描いたとか、やったとかっていう実感がどの絵本もないですね」

<春の女神「ギフチョウ」>

 今週のゲスト、絵本作家の舘野鴻さんは以前『ぎふちょう』という絵本を発表されていますが、この「ギフチョウ」はアゲハチョウの仲間で“春の女神”と呼ばれ、その羽化は桜前線の移動とともに日本列島を北上、ギフチョウ生息の北限とされている秋田県・鳥海山で終わりを告げるそうです。
 写真愛好家のかたにとっては、春の妖精「カタクリ」の花に留まるギフチョウが絶好の被写体となっています。春の女神と妖精の共演ですね。

 そんなギフチョウは原始的な特徴を備え、氷河時代から生き残っている“生きた化石”とも呼ばれています。さなぎで10ヶ月は寝て過ごすそうで、舘野さん曰く、その生態が絵本を作るきっかけにもなったそうです。ちなみに成虫の寿命はおよそ10日から2週間なんです。

 里山の代表的な蝶々のひとつとされているギフチョウですが、雑木林などが手入れされなくなったことなどからギフチョウが好む生息環境が減ってしまい、環境省のレッドデータブックで絶命危惧種II種に位置付けられています。

純粋で健気な魂

※舘野さんは子供の頃から絵本画家「熊田千佳慕(くまだ・ちかぼ)」さんに絵を習っていたということなんですが、熊田さんからいただいた言葉で特に印象に残っている言葉はありますか?

「そうですね、一期一会でしょうね。みんなよく知っている言葉ですけれど。絵描きですから、最後の“会”は絵描きの“絵”なんですよね。

 何を言っているかというと、いつも言うんですけど、虫を見ていると、やっぱりいつ死ぬか分からないっていう中で生きていますよね。僕らだってそうですから。明日何が起こるか、君は明日死ぬんだったら、どういう絵を描きますかっていうつもりで毎日描きなさいと。この絵を描くっていうのは、一生に一度だったらどうしますか。それとか、最低の道具で最高のものを描けっていうこととかね。

 愛するから美しい、とかって言うんだけど、その愛するって言葉って臭くて嫌じゃないですか。でもね、だんだん分かってくるんですよね。僕もだいぶおっさんになってきたんで。そうすると、美しいと思わなければ、美しい絵は描けないわけですね。

 例えば、ツチハンミョウの話をさっきしましたけれども、見苦しいとかね。シデムシだったら死体を食っていて、汚い臭いってなるじゃないですか。ただそれをじっくりもう執拗に追い続けますよね。ずーっと追い続けていくと別のものに見えてきますね。

 それまで見ていた汚いってものじゃなくて、触るの気持ち悪い、臭いとかっていうことじゃなくて、だんだんそういうものが落ちていくんです。そうすると、最後に残るのは、単純に純粋で健気な魂しか残らないですね。

 なんて健気でね。僕は虫を見ていて思うのは、無垢で勇敢で潔いっていう、天真爛漫でね。僕らみたいな、打算とかね、ずるいこととかね、どうやって楽しようとかって考えてないですよ。一瞬一瞬をなにしろ懸命に生きているでしょ? 何考えているか分からない、何もしないでぼーっとしているとかってこともあるけど、そうやって死んでいくんですよ。

 その死体を見た時に、やっぱり生き様っていうのがそこにあるわけでしょ? 生きてきたから死んでいるっていうことですから、そういうことですかね。その美しさって、一言でいうと何になるのかって言ったら、やっぱり接しているうちに愛情を持っちゃうんでしょうね」

絵の中に込められた想い

がろあむし

※最後に、絵本『がろあむし』を通して、伝えたいことを教えてください。

「これクチで言っちゃったりするとすごく鬱陶しいし、でも言いたいことは山ほどあるんだけど、まずは先入観とか、何もなしに読んでいただいてですね。何回読んでも、絵はものすごく情報がいっぱい入ってるんですよね。例えば地質の情報だとか、地域、人文的な歴史のことであるとかね。

 絵を描くってことは全部意図で描くでしょ? 意図しないと描けないわけですよね。意識していることは、かなり僕も細かくやってるつもりなんですよ。実はこんなところにこんなものが描かれていて、それにはこういう意味があるっていう仕掛けが、どの本にもたくさん入っていてですね。

 さっきも言いましたけれど、今僕たちが生きているってこととか。あと、僕は人間ですからね。人間が虫のことを描いて、人に見てもらおうと思って描いているんだから、虫にガロアムシを描いたからガロアムシを見てよって喜ぶわけないでしょ? 結局は人に向けて描いているということですからね。

 人ってどこから来て、どういう風に暮らして、今これでいいのかなって。いろいろ問題があるって世間で言いますよね。資源の問題であるとか、ゴミの問題であるとか、色々ありますけれども。
 虫は僕らみたいにいろんなことで、命をそんなに怖がってない。死ぬということを怖がってない。怖がる機能を持ってないっていうかね。人間は死ぬということが怖い。そこがこういう風な世の中になってきた大きな理由のひとつ。だけど未来を想像することができるでしょ? 人間って。こんなにでかい脳味噌があるんだから。

 だったら未来をどうすればいいのかということを、今僕らは世界を作っているわけですから、子供たちに何を伝えればいいのか。一応これね、こんな絵本だけど、児童書なんですよ。子供たちがこれを読んでどう感じるのかと。親御さんが買うものですから、親御さんはこの絵本の内容をどう子供に説明しますかっていうことですかね」

写真&イラスト提供:舘野鴻

●まずは想像してもらうっていうことですね。

「そうですね。自分の捉え方で、自分の立場で、こういうことがあるけどって。僕は事実をある程度描いたつもりなんですね。ちょっと誇張はしているとは思うんですけど。でもこういう世界があるよっていうことを伝えたい。
 で“あ、あるんだな!”って分かったら、もう知らんぷりはできないですよね。あるって分かったらどう振る舞いますか? っていうところだと思うんですね。でも、自由です」


INFORMATION


がろあむし


がろあむし

 緻密で繊細! 丁寧に描きあげた「がろあむし」の世界に引き込まれます。出版までに約10年かけた力作をぜひご覧ください。どんなストーリーなのかは絵本を読んでのお楽しみです。お子さんと一緒に絵に描き込まれた情報を読み解くのもいいかもしれません。おうち時間にいかがでしょうか。偕成社から絶賛発売中です。 詳しくは偕成社のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎偕成社HP:https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784034370803

オンエア・ソング 1月31日(日)

2021/1/31 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. BOOK OF DAYS / ENYA           

M2. YOU MAKE ME FEEL BRAND NEW / BABYFACE    

M3. BUILDING A MYSTERY / SARAH McLACHLAN

M4. HOT BUTTERFLY / BIONIC BOOGIE

M5. 空と青 / 家入レオ

M6. BEAUTIFUL / CHRISTINA AGUILERA

M7. 生まれ来る子供たちのために / オフコース

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

日本の木は今が伐りどき〜世代を超えて培う林業〜

2021/1/24 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、樹木や生き物、そして山仕事を絵や漫画に描く、林野庁の絵師「平田美紗子(ひらた・みさこ)」さんです。

 札幌生まれの平田さんは、子供の頃から昆虫や森が大好きで、北海道大学・農学部に進学、大学院までキノコなどの菌類を研究しつつ、好きな絵も描き続けていたそうです。そして2004年に林野庁に入り、国有林で働く森林官として群馬ほかの森林事務所に勤務。2019年にふるさと札幌の管理局に移動されています。絵や漫画を描くこともお仕事の一環で、森や林業のことを、ひとりでも多くのかたに伝えたいという思いで日々、絵筆をとっていらっしゃいます。

 「平田」さんがお仕事として絵を描くようになったきっかけは、森林官として初めて赴任した群馬で、イヌワシの保護で有名な「赤谷(あかや)の森」を守るプロジェクトに関わったこと。新人の「平田」さんが自分に出来ることはないかと考え、レポートに、得意のイラストを描いて配ったら、好評を得たそうです。

 そんな平田さんに、北海道の森の特徴や林業の現状についてうかがいます。

☆写真&イラスト 協力:林野庁 北海道森林管理局、平田美紗子

平田美紗子さん

絶対外してはいけないポイント!?

※それでは早速、林野庁公認の「絵師」といってもいい平田さんにお話をうかがいましょう。まずは北海道森林管理局から出した『北の森漫画』について。

●去年出されました『北の森漫画』を拝見させていただいたんですが、すごく淡いタッチで、とっても親しみやすく、それでいて林業のことや樹木のこと、そして北海道の森のことがよく分かりました! そうだったんだ! って思うところもたくさんあって、勉強になりました! 

「嬉しいです。淡いタッチって言っていただけて、全部水彩画で描いているので。色合いを、より自然に近いものを出すのに、水彩画で描くのがすごく好きなので、そう言っていただけてすごく嬉しいです」

●かなり時間もかかったんじゃないですか? 

「見開きを描くのにやっぱり30時間とか、取材とかも含めるともっとかかったりもします」

●植物や生き物を描くときに心がけていることって何かありますか? 

「やっぱりですね、林野庁の職員ですし、嘘を描くわけにはいかないという風にいつも思っています。ただイラストなので、全部完全に描き写すのではないんですけれども、専門家の人が見ても、この人はちゃんと見て描いているなとか、分かって描いているなって思ってもらえて、かつ一般の人が見た時に、可愛いな面白そうだなって思ってもらえる、その落としどころをいつも気を遣って描いています」

●そのバランスってちょっと難しそうですね。

「やっぱり慣れるまでは。大学では私、植物と菌類の研究はやっていたので、樹木と菌類はどこにポイントを置いて描けばいいかっていうのは、なんとなく分かるんですけれども、生き物の、動物だったり鳥だったり、あと林業の実際の作業だったりっていうのは、それをやっている人たち、それを研究している人たちが絶対外しちゃいけないってポイントが何箇所かあるんですね(笑)。そういうところを外さないようにしながら、いつも描くときに気をつけています」

●絵を描くときって、例えば写真をもとにしながらとか、そういうこともされるんですか? 

「もちろんしています。いちばん使うのはやっぱり図鑑関係ですね。図鑑はそういうポイントを外さないように作ってあるので。あと専門書だったり、自分が実際現場に行った時に撮ってきた写真だったり。今はインターネットでいろんな人たちが情報をあげているので、それを見比べながら描くようにしています」

●どんな思いを込めて絵を描いているんですか? 

「いちばんの思いは、山のこと森林のことを、一般の方たちに、たくさんの人たちに知ってもらいたい。面白いな、ちょっと興味を持ってもらいたいな、ということを思いながら描いています」

『北の森漫画』

スパイク付き地下足袋!?

※平田さんは、以前は「森林官」として国有林の管理に携わっていたということなんですが、改めて「森林官」とはどんなお仕事をされるのか、教えてください。

「森林官っていうのは、実は林野庁の職員の中で、いちばん現場に近いところにいる職員の役職名なんですね。実際に、腰に鉈(なた)と鋸(のこ)を下げて、足にはスパイク地下足袋(じかたび)だったり、スパイク付きの長靴だったり、安全靴だったりを履いて、現場に行きます。

 普通の人が山歩きするような場所じゃなくて、森全体を見なきゃいけないので、あちこちの森を歩いてパトロールして、それを記録にとるというのが森林官の、まずいちばん大きな仕事です。そういう仕事を5年間、群馬の森と静岡の森と、あと富士山の麓でやらせていただきました」

●女性としてはかなり体力的にきついんじゃないですか? 

「そうなんですけど、結構私の周り、その当時いた女性は元気な人が多くて(笑)、山を男の人たちと一緒に闊歩していた女性の森林官たちが当時は結構いました。私もやっぱり体力で負けたくないので、体力をつけるのに朝こっそり走ったりとかしていました」

写真&イラスト 協力:林野庁 北海道森林管理局、平田美紗子
写真&イラスト 協力:林野庁 北海道森林管理局、平田美紗子

●この『北の森漫画』に出てくる主人公の女性森林官「リン子」が、まさに平田さんという感じなんですか? 

「そうですね。最初はそういうイメージじゃなかったんですけど、描いていくと、どんどんなんとなく私に似てきてしまって、なんか雑な性格とかが似てきてしまって(笑)」

●でも、ナタとノコギリとかすごいですね。そして足元も大事ですよね?

「絶対、普通の人はスパイク付きの地下足袋なんて見たことないと思うんですけど、1回これで慣れちゃうと・・・。山歩きで、崖みたいなところを登ったりしなきゃいけないところもあって、そういう時に実は、スパイク地下足袋って足首が自由な方向に曲がるんです。
 ただちょっと衝撃とかには弱いので、最近は安全靴を履いている人も多くなっているんですけど、私が森林官をやっていた頃は、結構現場の人たちはみんな、そのスパイク地下足袋を履いて歩いていましたね」

●仕事とはいえ、森の中にいる時間にどんなことを感じていましたか? 

「四季折々の森の表情が見られるのって、とっても幸せだなと思いながら歩いていました。今こんなコロナのご時世なんですけれど、山に行くと、全然そういうことには関係なく、普通に春になったら木は芽吹くし、冬になったら葉は落ちて冬芽になるしっていうのを繰り返してくれていると思うと、なんかちょっと安心するというか、きっといつかこの生活も元通りになるんじゃないかなって元気も貰えるし、そんな感じですね」

森はひとつの生命体!?

写真&イラスト 協力:林野庁 北海道森林管理局、平田美紗子

※平田さんは北海道大学の大学院まで、キノコなどの「菌類」を研究されていたということですが、その「菌類」は、森ではどんな働きをしているんですか?

「森は成長したあと葉っぱを落としたり、枝を落としたり、古くなった木が倒れたりするんですけども、それを最終的に無機物、土にまで分解できるのは、実は自然界の中では菌類しかいないんです。動物とかが葉っぱを噛み砕いたりして細かくはするんですけども、最終的に有機物から無機物に戻せるのは菌類しかいないんですね。

 なので、菌類がもしいなかったら、森の中の葉っぱや枝は積もったまま、どんどん積もって土に戻らないということは、次の植物が成長するための栄養分が土に戻っていかないんです。だからその大きな循環の、ひとつのすごく大切なパーツを、菌類は担っているんですね。

 それ以外に、私が大学で研究していたのが菌根菌というタイプの菌類なんですけれども、聞いたことありますか? 

●きんこんきん!? 

「はい、菌の根っこの菌と書くんですけれども、実は陸上植物のほとんどが、この菌類と根っこの部分で共生しているって言われているんですね。
 昔、植物がまだ海にいた時代に、海から陸に上がった時に、乾燥とか、他の菌から身を守るために、菌と共生して、それで初めて陸上に上がれたんじゃないかって言われているぐらい、実は植物と菌はかなり昔から共生関係を結んでいるんです。

 具体的にその菌根菌がどういうことをやっているかっていうと、植物は光合成をして養分を作り出すんですけれども、それを根の部分にいる菌根菌にあげるんですね。その代わり、その根の部分にいる菌根菌は菌糸を出します。

 植物は根を地中に張って、そこから水分とか養分を吸収しているのは皆さんご存知ですよね。植物はすごく大きい根を張っていると思うんですけど、菌糸はもっと伸びるんですね。アメリカの研究だと、実は1キロ四方ずっと同じ菌が菌糸を出していたっていう研究もあるぐらい、広く菌糸を伸ばせるんです。

 その伸ばした菌糸で、実は植物のために水分だったり養分だったりを吸収して、光合成産物を植物からもらう代わりに、養分だったり水分だったりを、今度は植物にあげているんですね。その共生関係がなかったら、実は木は生きていけないと言われています。

 昔オーストラリアにヨーロッパの松を移植した時に、全部枯れてしまう。でも土ごと持ってくると枯れないで生きている。なんでだろうと思ったら、やっぱり根についている菌が一緒に入らないと、植物自体そこの土地で育てられなかったっていう話があるぐらいなんですね。

 しかも、もうひとつ菌根菌のすごいのは、今ひとつの木と菌が共生しているとお話ししたんですけれども、菌糸で別の木にも結びついて、例えば、右にある大きな木から左にある小さな木に、菌糸を通じてお互いの光合成産物をやり取りさせてあげたりしている。ということは、木が自分の次の世代に対して、養分をやり取りしているっていうこともあり得るんです。

 なので、森全体がひとつの生命体に、土の中の菌糸を通して、ひとつの生命体として成り立っているっていうこともお話できるんです。それがものすごく魅力的だと思って、しかも彼らは健気なんですね。

 日本人ってキノコとか菌っていうとすぐ食べられるの?とか、毒キノコなんでしょ?とか、いっちゃうんですけれど、そうじゃなくて、実はそのキノコは、菌にとっては花に当たる部分で、そこで胞子を作って飛ばしています。本体は土の中にいる菌糸で、菌類は目立たないけれど、それだけ重要なことをやってくれているんです。
 是非皆さんも森の中に行ったら、葉っぱの裏をぺろってめくってみると、結構菌糸が見えたりするので、ちょっと見てみてください!」

原生林は「もののけ姫」の世界!?

※平田さん、北海道は面積の3分の2が森林なんですね?

「そうなんです。日本はもともとすごく森林の多い森林大国って言われていて、国土の約7割は森林と言われているので、北海道も7割、71%ぐらいが森林です」

●北海道の森の特徴っていうと、どんなことが挙げられますか? 

「実はですね、日本は森林大国って言われてはいるんですけれど、原生林といって、誰も手を付けていない、誰の手も入っていない森は、実はほとんど残ってないんです、本州の方は特に。
 というのは、人間が生活していく上で・・・昔は木造建築だったりが主だったり、今でも木造建築はありますけれども、火事が起きたりして、都(みやこ)が焼ける度にどんどん木を伐って、その都を再構築していった。その過程で、西日本を中心に一度は人間の手が入った森がほとんどなんですね。

 北海道の森って実は人間がまだ一度も手を付けていない森が、大雪(たいせつ)だったり知床だったりに残っているんです。本州の方だとおそらく白神山地だったり、あと屋久島ぐらいにしかほとんど残ってないと思うんですけれども、北海道は結構大きい面積で大雪とかが残っているので、それが北海道の森林の大きな特徴なんですね。

写真&イラスト 協力:林野庁 北海道森林管理局、平田美紗子

 私も何度か大雪の森に学生時代、調査とかで入ったことがあるんですけれども、原生林に入ると、もののけ姫の世界みたいな形で、何か神様がいるんじゃないかなって。
 生き生きしているんじゃないんですよ。実は死屍累々していて、古い木がたくさん倒れていて、その上に新しく、倒木更新って言うんですけど、次の世代の木が育っていて、逆に上の木が倒れないと次の世代が育たないっていうような世界なんですね。そういう命がぐるぐる回っている様子を感じられるような原生林が、まだあるっていうのが北海道の森の特徴なんですね」

●そうなんですね〜。北海道を代表する樹木というと? 

「エゾマツ、アカエゾマツ、トドマツ。カラマツは人工林で結構あるんですけど、実はカラマツはあとから入ってきました。元々カラマツは北海道にはなかったんですよ。 昔、炭鉱が北海道にあった時に、炭鉱の坑道を作る枠にする木として、カラマツの成長がすごく早いというので導入されたのが、北海道にカラマツが入ってきた最初の理由なんですね。

写真&イラスト 協力:林野庁 北海道森林管理局、平田美紗子

 あと広葉樹だとやっぱりシラカバですね。シラカバ林は本州だとなかなか見に行けなくて、皆さん高原とかにわざわざ見に行くんだと知って、私、北海道を出るまでそんなにシラカバ林が本州の人に人気があるって知らなかったんです。
 あれはほんとすごくたくさん種を作って飛ばすんですね。パイオニア種って言われていて、開けた場所にどんどん新しく入っていく木で、一斉にばーっと成長して、木でいうと寿命が短くて、100年とか120年、下手すると60〜70年で次の別の木に取って代わられていくっていう種類の木なんです」

国産材を使ってほしい!

※森林大国・日本の林業が芳しくないのは、どうしてなんでしょうか?

「実はですね、戦後の復興の時に、戦後復興で木をたくさん使わなきゃいけないという風になった時に、その時にも日本の木をかなり伐って、復興のためにいろんなところで使われたんですね。やっぱり足りなくなってきてしまって、そこで外国産材も使おうという流れになりました。そうすると安い外材におされてしまって、その流れで最初は(国産材の)自給率が高かったのが、一時期18%近くまで落ち込んでしまったんです。

 最近はちょうどその戦後に1回伐ったあとに、みんなで頑張ってもう一度、はげ山になってしまった山を復活させようということで、全国各地で造林作業が行なわれまして、その木が今60年〜70年経って、今まさにちょうど成長して使いどきになってきています」

●農産物だと、1年に1回収穫できるという感じですけど、林業ってなると本当に息の長い仕事ですよね。

「そうなんです。やっぱり植えてから最終的に私たちの生活で使えるものになるには、伐採して収穫するまで、今言った通り60年とかかかるので、世代を超えて、3代ぐらい世代を超えて培っていかなきゃいけない産業なんですね。
 ただ、今結構長いって言いましたけど、実は地球の歴史から言えば、50年60年ってそんなに大した時間じゃないんですよ。私たちプラスチックとか鉄とか使っていますけれど、それをゼロから作り上げる時間に比べたら、木を育てる時間っていうのは、地球規模で見たらそんなに大した時間じゃないんです。

 それをやるためには、さっき言った通り、世代を超えてこの森をちゃんと受け継いできちんと使っていく。使ったら、また次の世代に向けて植えて育てていくっていうことをやっていかなければいけないので、その点が他の産業と違っているんです。きちんと林業のことをいろんな人に知ってもらう、もっと知ってもらわなきゃいけないっていう産業だと思っています」

●そういう意味でいうと、漫画だと入り込みやすいですよね〜。

「そう言っていただけるととっても嬉しいです。まさにそこを狙い目にしていて、やっぱり林業って、普段都会で生活をしていると、関係性がすごく少ない産業だと思うんですね。
 どんな風にやっているのか、例えば木を1本育てるのにどれだけの作業があって、どれだけ手がかかるのかとか、それが自分の生活にどういう経緯でやってくるのかって、なかなか分かってもらえないと思うんですよ。それを漫画だとやっぱりひとつの絵としてパッとイメージで捉えてもらえるので、それが漫画の強みだと思っています」

●日本の林業を活性化させるために、個人レベルで出来ることっていうのは何かありますか?

「是非ですね、国産材を使って欲しいなと思います。買う時に、この木がどこから来ているんだろうって、ちょっと興味を持ってくれるだけでもいいと思うんですね。外国産材が全部悪いとは絶対言わないんですけれども、やっぱり外国から来る木は海を渡って来ているので、それだけ移動のための燃料とかも使います。

 あとさっきも言った通り、今せっかく日本の木が、戦後、頑張ってみんなが植えて育てたものが、ちょうど収穫時期に来ているんです。その木を今使ってあげて、さらにその木が売れたお金で次の世代を育てていかなくてはいけない時代に来ているので、是非もし木を使って何かしたいなっていう時は、地元の材だったり、国産材だったりを使ってくれるようになると、私は嬉しいなと思います」

●今後も林野庁の絵師として活躍されていくと思うんですけれども、絵を見る方、漫画を見る方に、改めてどんなことを伝えていきたいですか?

「まず、絵を見て面白いなって思ってもらえるとすごく嬉しいです。面白いなと思ってもらえたら、次に森林とか林業に対して興味を持ってもらえると、とても嬉しいです。さらに次のステップで、じゃあ自分たちがこの森林、林業を応援するために出来ることなんだろうと思ってもらえるともっと嬉しいです!」


INFORMATION


『北の森漫画』


『北の森漫画』

 北海道の森や林業について興味を持ったかたは、平田さんが描いた『北の森漫画』をぜひご覧ください。平田さんが描いた淡いタッチの水彩画が素敵で、漫画とはいえ、樹木や生き物の特徴がしっかり描えがかれています。説明文も分かりやすくて面白く、森や林業のことを知るには打ってつけ。おうち時間に、お子さんと一緒に見るのもいいかもしれません。

 『北の森漫画』は林野庁・北海道森林管理局のオフィシャルサイトから全ページ、ダウンロードしてご覧いただけます。

◎『北の森漫画』HP: https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/square/kinoehon/

シンタローのぼうけん

 また、平田さんが絵とナレーションを担当した『森の紙芝居〜シンタローのぼうけん』が現在、農林水産省のYouTubeで公開されています。こちらもぜひご覧ください。

◎『森の紙芝居〜シンタローのぼうけん』:
https://www.youtube.com/watch?v=HjdoEaKwBfs

オンエア・ソング 1月24日(日)

2021/1/24 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. KNOCK ON WOOD / SEAL

M2. PICTURES OF YOU / THE CURE

M3. CLEAN UP WOMAN / BETTY WRIGHT

M4. TOGETHER AGAIN / JANET JACKSON

M5. 季路 / Aimer

M6. もののけ姫 / 米良美一

M7. STEP BY STEP / WHITNEY HOUSTON

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

ニホンオオカミの伝説〜山梨県丹波山村に残る言い伝え〜 

2021/1/17 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、山梨県丹波山村(たばやまむら)・郷土民俗資料館の学芸員「寺崎美紅(てらさき・みく)」さんです。

 東京都武蔵村山市出身の寺崎さんは、2016年に東京都と山梨県の県境にある丹波山村に移住。現在は学芸員として村に伝わる山岳信仰や風習などを調査されています。もともと登山好きの山ガールだったこともあり、山々に囲まれた、深い森がある村での暮らしを楽しんでいるようです。

 そんな寺崎さんに、村に残るニホンオオカミの伝説や、丹波山村での暮らしについてうかがいます。

☆写真協力:寺崎美紅

写真協力:寺崎美紅

七ツ石神社との出会い

●丹波山村にはニホンオオカミの言い伝えがあるということなんですが、移住するほど、その言い伝えに興味を抱いたのでしょうか?

「なんと言ったらいいのか難しいんですけれども、知らなかったというか、行ったらあったという感じです。場所自体は知ってはいたんですけれども、たまたま登山で訪れてはいる土地だったんです。
 大学でオオカミ信仰とかを専門にやっていて、それで七ツ石神社が丹波山村にあるんですけれども、その時、丹波山村に七ツ石神社があるっていう意識がなかったので、たまたま山で仕事したいなと思って移住したら、そこに七ツ石神社があったっていう感じですね」

●その七ツ石神社というのは、どういう言い伝えがあるんですか? 

「埼玉県秩父市がお隣なんですけれども、そこと同じく、オオカミをお使いとする山の神が祀られていて、7つの大きな岩が御神体として祀られているんですね。

 関東の英雄と言われている平将門公の伝説に基づいていまして、追手から逃げていく最中に七ツ石山に達して、その上で、敵方に向かってどれが本物の将門公か分からないようにするために、7人の従者が影武者として立ちはだかって、それが弓を射られた時に大岩に変化してしまったっていう伝説があります。
 それで7つの大岩は将門公の7人の影武者の化身であるという風に考えられているんですね」

●丹波山村はそもそもどんな村になんですか? 山々に囲まれているんですよね?

「そうですね。山と川に挟まれているというか、人口が540人ぐらいですね。で、山林が97%で、残りの3%ぐらいの平地に人が住んでいるような感じなんです。東京の多摩川の源流域であるので、丹波山村自体は山梨県なんですけれども、東京都の水源地帯であるような場所です」

写真協力:寺崎美紅

●現在は丹波山村の郷土民俗資料館の学芸員でいらっしゃるんですよね? 

「肩書きとしては学芸員なんですけれども、冬場は資料館が閉まっちゃったりするので、主には村の文化財全般の担当として活動させていただいています。調査や研究以外にも観光分野と一緒に、活用だったりとか、その企画の担当をやったりしています」

●村に伝わる言い伝えも調べたりされるわけですか?

「そうですね。名前には残っているんだけれども、どこに今あるか分からないっていうものを探しに行くフィールドワークをしたりします」

山の中で遭遇した大きな白い犬!?

●村に残る言い伝えなどを調べているということですが、これまでにどんな言い伝えに出会いましたか?

「オオカミ関係で言いますと、オオカミは塩が好きだっていう風に言われているんですけれども、夜中に夕飯とか作る時に、家に塩がないって、もしなったとしても、夜中には塩を人の家に借りに行かないっていう話があります。

 外で塩を夜中に持ち歩くと、オオカミがそれを食べに来ちゃうっていう話を聞いた時に、昔そういう風に言われていた、夜中に塩を持ち歩くなと言われていたって聞いた時は、生活にかなり近いところにある考え方というか、かなりオオカミの存在が身近に語られてるんだなっていう風には思いました」

●へ〜! そうなんですね! ニホンオオカミは絶滅したとされてるんですよね? ニホンオオカミについてもいろいろ調査はされてるんですか? 

「私が興味ある分野っていうのが概念的な文化としてのオオカミなので、動物学的に現在どうかとか、生態がどうかっていうことはあまり詳しくはないんですけれども、結構、目撃情報は未だにあったりしますね」

●え!? 未だにですか? 

「未だに、もう令和ですけれども、平成に入ってからも目撃情報、それらしきっていうのはあります。私も大学生の時に、秩父市の三峰神社の奥の院に登っている道中で、でっかい白い犬が道の向こうに立っていたことがありました。

 それが近づいてきたら真上にぴょーんってジャンプして、音もなく横の草むらにサッと入ったのを見たことがあって、それがオオカミかどうかは分からないんですけれども、ロマンがあるなっていう風に思っています」

●その大きな白い犬は普通の犬とはまた違ったわけですか? 

「そうですね。動けなかったというか、急に大きな動物が現れるとちょっとパニックというか、よく分からなくなっちゃうと思うんですけど、(山道を)登ろうと思っていたら、道の先に結構、大型犬サイズというか、毛がすごく白くてフサフサで、『もののけ姫』に出てくる山犬みたいな感じの雰囲気だったんです。

 それがじっと見ていて、どうしようってこっちも思っている時に、真上に飛び上がって、横の草むらにスッと入ったので、慌ててそれを、友達も一緒にいたんですけど、追いかけて行って。

 で、辺りを見回しても、あれだけ大きな動物が飛び上がって草むらに入ったのにも関わらず、特に何も倒れていないというか、草が踏まれてもいないし、音も何もしない。すぐ目の前にいたので、そんなに遠くに行ってないと思うんですけど、森の中も特にガサガサという音もしなくて、シーンとした山のままだったので、今のは一体何だったんだろうっていうような感じでしたね」

●すごい! そんな経験をされていたわけですね!

「そうですね。それが本格的に今後もオオカミ信仰をやっていこうっていうきっかけにもなりましたね」

七ツ石神社を再建!

●丹波山村にはニホンオオカミにまつわる行事はあるんですか?

「丹波山は特に行事ということはないんですけれども、先ほどの七ツ石山は、東京都最高峰の雲取山の手前にある山なんですけれども、その山頂よりちょっと下がったところに七ツ石神社があります。そこにオオカミ信仰があるので、毎年11月の7日に小さな祭礼が麓の神社の方で行なわれて、オオカミの絵が描かれている御札が配られる行事はありますね」

写真協力:寺崎美紅
写真協力:寺崎美紅

●その神社を再建したのは寺崎さん? 

「そうです。移住して、移住する前から知ってはいたんですけれども、登山をしていた時に、ボロボロの神社に偶然通りかかって。その時はほかの所の人間なので、特に何もしてあげられないなと思って、落ちている物とか写真を撮ったりして、記録だけしていたんです。

 たまたま、山で仕事したいと思ったら丹波山村を紹介していただいて、移住しますってことになったら、七ツ石神社が丹波山村にあるっていうことをそこで知りました。じゃあ何かしてあげられるかもしれないということで、地域おこし協力隊としてまず3年間、移住して着任したんです。

 その3年間を使って、まず村の文化財に指定をして、そこから村のお金だったり協力金をいただいたりとかして、下でお宮を作って、ヘリコプターで山まで上げて、上でもう一回組み立ててっていうような形で(再建しました)」

●山で暮らしたいっていう思いがあったということですけど、どうして山で暮らしたいっていう風に思われたんですか? 

「どうしてですかね(笑)。なんか山が好きだからとしか言いようがないというか、難しいですけど」

●それまでずっと東京で暮らされていて、山は登山で行くっていう感じだったんですか?

「そうですね。趣味と、あとは山岳信仰っていう御山の宗教文化とかが、大学の自分の専門だったので、そのためのフィールドワークがてら登山もして、っていうような形で行っていたんですけど、どうしても(東京に)帰って来る度に山がまた遠くなるというか、早く次の山に行きたいなっていうような感じでしたね」

写真協力:寺崎美紅

背負った命の温かさ

●狩猟免許を取得されたと聞いたんですが、そうなんですか?

「移住してもう次の年ぐらいに取りました」

●どうして取ろうと思ったんですか? すごいですね! 

「なんでですかね〜。気づいたらなんかもう始まっていたというか(笑)。興味は元々あったんですけれども、山の感覚により近づきたいっていう気持ちがあったかなという気はしています。
 お肉を得るために命と命のやり取りをするっていうのがやっぱり自然で、山は全ての命に等しく厳しいっていうことを体感しているところです」

●実際、寺崎さんも狩猟に出るわけですよね。どんなものを狙うんですか? 

「主に鹿とか猪ですね。鹿が多いかな? 今、鹿がすごく増えているので」

●今月1月は、ちょうどシーズンなんですか? 

「そうですね。11月から3月まではシーズンです」

●へ〜! じゃあ例えば、鹿を狙って獲ったとして、その鹿のお肉はどうなるんですか? 

「その鹿の肉は自分たちで持って帰って食べるか、それか衛生の基準に則って、獲れてから2時間以内に加工施設に運び込んだものじゃないと、お肉として販売は出来ないっていう縛りがあるので。それをクリアしていれば、加工施設に持って行って解体、お肉に分解しています。

 それで村外のお店だったりとか、村内のお店に渡っていって、道の駅で食べることが出来たり、ふるさと納税などのネットで購入できたりっていう感じになっています」

●(狩猟は)すごく緊張感のある現場ですよね? 

「やっぱり命が絶える間際の様子っていうのは、ちょっと心苦しくはあるんですけども、解体が一旦始まると、なんかちゃんと肉に見えてくるというか、こういう風に出来ているんだなっていうのがあったりします。

 持って帰るためにみんなで背負うんですけど、背負っている時に、当たり前なんですけど、すごく温かいんですよ、そのお肉が。そうすると何か本当に、温かいご飯って美味しさのイメージそのものだと思うんですけれども、でも自然界において温かい食事っていうのは命の温かさなわけで。

 改めて食事っていうのは命をいただくことなんだなっていうのを、当たり前ではあるんですけれども、背負った命が、そのお肉が温かいっていうことが、何かすごく実感としてありましたね」

●まさに命をいただくっていうことですね。

ニホンオオカミのイラスト、そのこだわり

写真協力:寺崎美紅

●あのニホンオオカミのイラストは、どなたが描いたんですか?

「このイラストを描いたのは、画家の玉川麻衣さんっていう方なんです。SNSで偶然見かけて、彼女が描かれているオオカミの絵を。たまたまネットを見ている時に見かけて、この人に是非描いてもらいたいなって思って、連絡をさせていただきました。

 初めて会った時から割と意気投合して、朝まで飲んだりしたんですけど(笑)。その時にお互い、オオカミとか七ツ石神社を再建するっていう熱い思いみたいなのが共鳴して、未だにずっと一緒に仕事をやらせていただいてるっていう感じです」

●手拭いに描かれた星たちもすごく綺麗だなと思ったんですけれども、あれ北斗七星ですよね? 

「そうですね。星の位置も実際に近づけようということで、ご本人にも調べていただいたりとかして。やっぱり自分たちが欲しいものを全力で作ろうということで、七ツ石山に何度かご一緒していただいて、登山しながら打ち合わせなんていうことも結構ありました。

 現地をよく知っている人から見られても恥ずかしくないような、実際にこうなってるよね、みたいな感じに思ってもらえるような仕上がりを目指して、山の形だったり、空の感じは結構こだわって作っているんです。

 オオカミと言ったらやっぱり満月のイメージがあると思うんですけど、満月にしちゃうと、それだと普通、星は見えないはずなんです。でも月も入れたいっていうことで、できるだけ月を細く小さくして、だから星が見えるんですよっていうような感じにしたりとか。空も一色じゃなくて、夜の暗さにもいろんな段階があるっていうことで、グラデーションにして見せようと、かなりこだわって作っていただきました」

●改めて日本にまつわる文化に、寺崎さんはどんなことを感じますか? 

「物理的に失われたりしても、そこで終わりにならないっていうものが文化だと思っているんです。でも、残そうと思う人だったり、タイミングが合わないと残らないものってたくさんあると思うんですね。

 でもオオカミは昔から、自然と動物と人の間を繋いできた存在だと思うんです。それは彼らの姿を、実際になかなか山で見かけなくなった今でも、その文化的な痕跡が、一種の絆のように自然と人間を繋いでいるような気がするので、私にとってオオカミ信仰というか、オオカミの文化っていうのは、人が今でも探してる、見えない自然とのやり取りの答えの最前線を、いつも走っているような感覚ですね 」


INFORMATION

写真協力:寺崎美紅

 寺崎さんが丹波山村のPRのために作ったニホンオオカミのグッズ、是非チェックしてください。玉川麻衣さんのイラストが素敵です。実際に登山しながら打ち合わせもされていたなんてお話もありましたが、かなり忠実に描かれています。

 手拭いやマグカップ、お猪口や焼酎など、地元の道の駅「たばやま」で販売していますが、特産品を買える「丹波山村オンラインショップ」でもお買い求めいただけます。

◎丹波山村オンラインショップ:https://tabayama.shop-pro.jp/

◎丹波山村 郷土民俗資料館のHP:https://www.vill.tabayama.yamanashi.jp/kanko/kyoudo.html

オンエア・ソング 1月17日(日)

2021/1/17 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. HUNGRY LIKE THE WOLF / DURAN DURAN

M2. SEVEN WONDERS / FLEETWOOD MAC

M3. White Wolf / 大貫妙子

M4. I SEE THE GREAT MOUNTAINS / CECILE CORBEL

M5. REFEREE / KARL WOLF

M6. VIVA LA VIDA〜美しき生命 / COLDPLAY

M7. Remember Me / MAN WITH A MISSION

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

今こそ「利他行動」「ヒューマニティ」!

2021/1/10 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、国立環境研究所の生物学者「五箇公一(ごか・こういち)」さんです。

 五箇さんは1965年生まれ。富山県出身。京都大学大学院を経て、宇部興産株式会社で農薬の研究・開発に従事。1996年に国立環境研究所に入り、外来生物の研究などをされています。ご専門は保全生態学、農薬科学、ダニ学。

 テレビなどのマスコミを通じて、環境科学の普及に力を入れていらっしゃいます。黒いファッションとサングラスでお馴染みですよね。

 そんな五箇さんが去年、新しい本『これからの時代を生き抜くための 生物学入門』を出されました。きょうは、地球規模の問題に直面している私たちが、これからの時代をどうやって生き抜いていけばいいのか、生物学の視点でお話いただきます。

写真提供:五箇公一
写真提供:五箇公一

生きていけるのは、生物多様性があるから

●この番組「ザ・フリントストーン」を担当してから「生物多様性」という言葉をよく聞くようになりました。五箇さん、この「生物多様性」はだれがいつ頃、提唱したのでしょうか。

「誰がいちばんの提唱者かっていうのはちょっとはっきりしないというか、割と1980年代くらいからアメリカ国内の生物学者たちの間で提唱され始めた概念とされています。生物多様性は英訳すると、バイオダイバーシティですね。

 この言語がパブリッシュされたのが、1988年にアメリカの昆虫学者エドワード・オズボーン・ウィルソンが記したバイオダイバーシティに関する本ですね。この本でこの言葉がある意味、オーソライズされたとされていますね」

●人間が生きていく上で必須の環境要素だという風に、『これからの時代を生き抜くための 生物学入門』でも書かれてましたけれども、多様性があるから生き物、そして私たち人間が繁栄したと言ってもいいということなんですか? 

「そうですね。要は生物多様性っていうのは階層性のある概念で、最初は遺伝子の多様性から始まって、いろんな遺伝子があることで、いろんな種が進化して種の多様性があります。いろんな種が集まることで、今度は生態系ができます。

 生態系にも多様性があって、言ってみれば、山には山の生き物が集まって山の生態系、川には川の生き物が集まって川の生態系という具合に、ですね。そういった遺伝子や種、生態系というバリエーションが、いろんな機能を生みだしてくれるわけです。

 生物学的な機能、あるいは生態的な機能が、水や空気、あるいは温度を一定にするといったような形で、我々人間も含めて生き物が生きていける環境を創ってくれます。生物圏と言われる、地球上にある生き物が生きていける空間の、環境の安定性というものは、そういった様々な機能が集まることで維持されている。

 ということは、いろんな生き物がいるからこそ、この地球環境というのは安定していて、いろんな生き物もまた進化を繰り返すことができ、人間もその中で生かされているということですね。本当に端的に言えば、生物多様性があるから人間も生きていけるということになります」

五箇さんの研究室。フィギュアの多様性!?  写真提供:五箇公一
五箇さんの研究室。フィギュアの多様性!? 写真提供:五箇公一

●生態系のバランスが崩れて環境が変化していくと、いつか人間も絶滅する可能性はありますか?

「この地球上で最も環境変化に脆弱で、危機的状況に立たされるのはむしろ人間だということになりますね。率直に言って、この地球上の生き物はもっと酷い目にあってきたというか、大絶滅という時代が5回くらい繰り返されていて、下手すると地球上の生き物95%が死滅したという時代もあるわけですね。

 それは本当に地球環境の大きな変化で、地殻変動とか火山の大噴火、あるいは隕石の衝突といったような、避けがたい大きな変動がある中で、それだけ生物が減ってもまたちゃんと回復する。
 要は微生物しか生き残れなかったとしても、生き物はまた進化して回復することができるという、抵抗力というか回復力を持っている。そういうことを繰り返しながら、この地球環境にずっと生き物が生き続けてきているということですね。

 ただその大変動に人間が耐えられるかっていうと、絶対耐えられないですね。我々はすごく弱い動物で、生物学的に言ってもいちばん脆弱な、環境変化に弱い動物なんですね。皆さんも寒い冬の中で当然、服を着てないと生きてられないし、住居がないと生きていけないという動物であって。

 ただ、他の動物だったら環境という変化に対して、進化して適応しているのに、人間はそうじゃなくて、自分たちの技術で周りの環境を変えて、生き長らえてきたわけですね。要は家や暖房を作ってみたり、あるいは都市環境を作るという中で、自分たちが進化しなくても、周りの環境を安定させるということで、人間は繁栄するということができた。それが文明であり、文化であるということで、人間が作り出してきた環境ですね。

 その中でしか生きられないから、そういうものが取っ払われてしまうと、まず人間が生き残るチャンスは非常に低くなる。で、今の環境変化っていうのはまさにそういったことがじわじわと近づいてきていると。地球温暖化であったり、それがもたらす異常気象、あるいは大地震であったりとか、そういったことが起こると、人間という生き物はおそらく、いとも簡単に地球上から消えてなくなるかもしれないということを、我々はちょっと考えておかないといけないということですね」

『これからの時代を生き抜くための 生物学入門』

地産地消、ローカリゼーション

●生物多様性を維持するために、私たちが取り組むべきことは何でしょうか?

「基本的にこの生物多様性っていうのが劣化しているとはいえ、やっぱり身近なところに生き物がいる環境にほとんどの人はいない中では、あんまり身近に感じられる問題ではなく、なおかつそういった絶滅が大きく進行している、例えば熱帯雨林といったような、遠い外国の、言ってみれば自然界で破壊が続く中で起きているということなんですよね。

 熱帯雨林の破壊ひとつ取っても、そういう生物多様性の重要なところが今急速に減っているいちばんの原因っていうのは、南北の経済格差という中で生み出される、南から北へと資源が搾取され続けるグローバル資本主義が大きなバックボーンにあります。

 あとは先進国でじゃんじゃん石油化学を使って、いわゆるプラスチックなんか作って、それを垂れ流しにしてしまって、海洋汚染を引き起こすという具合に、基本的には物質文明といったものにどっぷり我々自身が浸かって、日本人自身が非常に豊かで、便利な生活を送るということ自体が大きな環境負荷を与える。

 結果的に私たち自身が輸入している安い農産物、そういうものを作るためには大きな畑が必要であり、そのために生物の住処が奪われる。あるいは木材とか鉱物資源、日本ではほとんど採れないからじゃんじゃん輸入して使う。
 そういったものを採掘する、伐採するという過程で生じる大きな自然破壊、それと水質汚染、そういったようなことが海外で起こって、結局大きな負荷が与えられて、我々の生活が潤っているという状況を考えると、結果的に私たちがこれだけ便利で、安心して豊かに生活できるという背景に、実は生物多様性の劣化があるということも思いを馳せなくてはならない。

 そうした中で何をするかっていうことは、やっぱり個人レベルでライフスタイルをどんどん見直していかなきゃいけない。やっぱり無駄な消費を抑えるべきだろうし、無駄なエネルギーというものの消費も抑えなきゃいけないということを考えていく。そういうことをまず考えることが第一歩になってくる。

 そういった意味で我々がよく口にしているような“地産地消”というライフスタイル。できるだけ地域レベルで生産されたものを地域で循環し、エネルギーも地域レベルで生産して、地域レベルで消費していくというような、ローカリゼーションですね。グローバリゼーションというものから脱却してローカリゼーションに持っていくということが、これからの地球環境、及び生物多様性と共生していく上での重要なひとつの行動、生活変容という方向になる。

 個人でまずできることとしては、まず地産地消というライフスタイルを心がける。それと同時に身近な自然に目を向けて、元々何が棲んでいたか、今何がその身近な自然で起こっているか。要は外来種ばっかりになっているとか、あるいはあったはずの川や雑木林がなくなっている、そういったことに思いを馳せながら、どういう地域環境を取り戻していくかということを地域レベルで考え、個人レベルで考えていくというところから、生物多様性との共生はスタートするという風に思っています」

ハダニのオスはドラマティック!?

カンザワハダニ 写真提供:五箇公一
カンザワハダニ 写真提供:五箇公一

※続いて「五箇」さんのご専門、ダニの学問についてお話いただきました。

「ダニ学、まあ昆虫学と一緒でダニの種類を調べてみたり、新種を探してみたり、あるいはダニがどういう生活をしているか、生態なのか、どんなところ棲んでいるか、あるいはどういった繁殖様式をとっているかということ。

 それと、そのダニ自体が自然界においてどういう役割をしているか、あるいはそのダニが人間社会にとって有害なのか、それとも有益なのかといったようなそういう働き。そういったことを調べているのがこのダニ学といった学問分野になります。

 私自身は、いろんな種類のダニをやってきたんですけど、学生時代からやってきたのはハダニという、いわゆる植物に付く農業害虫になるダニです。植物の葉っぱに付いて、植物の汁を吸って生きているというダニ、これをハダニと言います。こういったものを研究してきました」

●どうしてハダニを研究することになったんですか? 

「大学が京都大学の農学部なんで、農学部ということは農学の一環として害虫学が研究講座としてあって、その中で農業害虫としてハダニというものが研究されていたので、その講座に入ってこのハダニを対象に研究を始めたということになります」

●この本にも、今でもダニは見ているだけでかっこいいと書いていますけれども、どんなところがいちばん面白いですか? 

「普通に肉眼で見ても見えない世界で、それを顕微鏡で覗くと初めて、形であったり、行動であったりっていう生き様が見えるという、そのSFチックな感覚がやっぱり面白い(笑)。

 顕微鏡の下でしか見えない、すごくミクロなのにそこにはやっぱりちゃんと進化もあり、競争もあり、ドラマがちゃんと展開されている。多様性もある。いろんな生き様もあって、いろんな形もあるという、そういった部分が、見えない多様性っていうんですかね。そういうのが魅力ですよね。まあ見えないものを覗くという感覚が楽しいということですね(笑)」

●ハダニのオスが自分の子孫を残す方法というのもまた、面白いんですよね? 

「ハダニはちゃんとオスとメスがいて、メスの取り合いをちゃんとするんですよ、あいつら。ハダニのメスっていうのは最初に交尾したオスの精子で、精子の貯蔵タンクがいっぱいになっちゃうんで、最初の交尾をしたオスの精子しか子孫を残せないんですね。

 未交尾のメスというものをオスは探さないと自分は子孫を残せない。遺伝子が残せないっていうので、その未交尾のメスっていうのは普通に歩いているメスを見てても見分けがつかない。どれが未経験かって分からないっていうことで、そこで進化したオスの行動っていうのが、大人になる前、成虫になる前のメスのさなぎの上に乗っかって待つという“ガーディング”という行動が進化しているんですね。

 メスのさなぎを見つけたら、三日三晩飲まず食わずでオスは一生懸命そのさなぎの上で待ち構えて、ガーディングして、他のオスに取られまいと一生懸命守ってやって、メスが脱皮し始めたらすぐに脱皮を手伝ってその場で交尾すると。ちょっと人間社会では例えようもない行動様式をとるんですが(笑)。

 そうすると、メスのさなぎに乗っかっているオスに喧嘩を売ってくるオスもいたりして、取り合いするわけですよ。取り合いしている内に、メスが脱皮を始めたところで全然関係ない間男がやってきて、それで交尾しちゃうとか。見ていて非常に滑稽でもあり、ドラマティックというか、オスの必死さっていうんですかね。そういったものが伝わってくるということで、それを最初に見てダニ学にハマっちゃったというところもありました」

五箇さん制作のCG「クワガタナカセ」。クワガタムシの背中に寄生して ゴミやカビを食べている掃除屋、クワガタと共生している善良なダニ。 画像提供:五箇公一
五箇さん制作のCG「クワガタナカセ」。
クワガタムシの背中に寄生して ゴミやカビを食べている掃除屋、
クワガタと共生している善良なダニ。
画像提供:五箇公一

今こそ、利他意識、利他行動!

*五箇さんが去年出された本『これからの時代を生き抜くための 生物学入門』の中から、番組が特に気になった点についてお話をうかがっていますが、やはりいま、最も気になる感染症についても触れていらっしゃいます。生物学的に見ると環境破壊が感染症を招いていると言ってもいいのでしょうか?

「方程式としてはそういった形になると思うんですが、結局、感染症の原因となる病原体ウイルスっていうのはどこにいるかというと、自然界の中で、いろんな野生動物の中で、ある意味大人しく共進化して生きているという状態です。

 自然界の奥深くまで今、人間の活動というものが侵食してしまっているから、そういったウイルスとの接触も起こってスピルオーバーしてしまっているということが、今の新興感染症のひとつの大きな原因とされるわけですね。

 むしろウイルスも込みで生態系のバランスが取れている中に、人間がそれを壊すという行動をするから、ウイルスが吹き出してしまうということで、起こって当然と言えば起こって当然ということですね。

 自然界でも感染症といった問題は過去から現在に至るまで、人間の歴史の中で何回も繰り返されていることなんですけど、今まではローカルなエリアに収まっていたんですね。人間活動がそこまで広く動き回っていたわけじゃない時代では、それほど地球レベルで大きな問題にはなることはなかった。

 ところが今回の新型コロナは、現代のグローバル経済の中で、あるいはグローバルサプライチェーンという中で、人と物の動きがものすごい勢いで、まあ世界が繋がっちゃっているという状態だからこそ、世界的なパンデミックが起こっている。ということは、自然破壊と同時にこのグローバル経済という社会構造、これ自体が新興感染症を深刻化させている原因となっているということです」

●新型コロナウイルスを制するためには「利他行動」にかかっているとこの本に書かれていますけれども、具体的にどんなことなんでしょうか? 

「このウイルスは非常によくできていて、感染力は高いんだけど、ほとんど若い人中心に、不顕性感染と言って、かかっても全然発症しないという状況で潜伏しているわけですね。そういった元気な人たちが動き回るということで確実に感染が広がり、結果的に病気を持っている人や、あるいは高齢者といった免疫が弱っている人にたどり着くことで発症して重症化してしまうという、非常に効率よく社会の中で巡り続けるシステムを、このウイルスはとっているという状態です。

 こういったウイルスに対抗するにはどうしたらいいかって言うと、基本的に誰が持っていてもおかしくないということを前提に、感染を広げないようにすることがいちばん大事。

 特に今の段階では、このウイルス自体が新型、まさに新興感染症の最先端ということで、まだ未知な部分も多い上に、治療法というものが確立していない。最近ワクチンも出てきたところではありますが、これから世界中にデリバリーするにも時間かかる中で、いちばん守るべきはまさに医療現場ですね。

 ここを守るためには、感染を広げないということが最優先になってきます。自分が(ウイルスを)持っているかもしれないという前提に立つと、自分がかかるかもしれないっていう以前に、自分が持っているとして相手に感染させない、相手や社会を思いやるところから行動を見直さざるを得ないということです。

 利他意識や利他行動というものが、このウイルスを管理する上では今最優先な方策ということになるということですね。だからこそ皆さんマスクをしてください、あるいはソーシャルディスタンスで距離を取ってくださいということが、今一生懸命うたわれているということになります」

弱いから寄り添いあう

●この本『これからの時代を生き抜くための 生物学入門』で、いちばん伝えたいことはどんなことでしょうか?

「そうですね。一言でいうっていうのは難しいところだけど、人間も生き物、動物だけど、生物だけど、でも人間は他とは違うというところなんですよね。先ほどもお話ししましたけれども、人間という生き物はすごく脆弱で、本来自然淘汰という形で、自然界の中で生き残ろうとすると、まあ生き残れないわけですね、動物学的なケースからすれば。

 とにかく力は弱い、環境適応力も低いという、そういった生き物で、それが生き残ったのは、他の動物と違う決定的なポイントとして、“ヒューマニティ”という助け合いの精神を持っている。要は弱いものだからこそ、寄り添いあって生きてきたというそのヒューマニティという特質。

 この特質によって生き残っているということは、ヒューマニティというものを今見直さないと人間の未来というものはないかもしれない。現代社会に入って本当にみんな豊かになって、自分ひとりで生きているように、特に東京みたいな都会だと感じてしまう。

 でも今回の新型コロナというのはそういう部分で大きな影響が出た。知らず知らずのうちにどんどん感染が広がってしまう。要は相手のことを思いやるという余裕もなければ意識もない。
 まさに都市部を中心に感染が広がってしまったということから考えても、やっぱり今改めてこのヒューマニティというものを考えないと、新型コロナも含めて、環境の変化というものには人間自身が追いついていけなくなるかもしれない。

 だからやっぱり人間性ってなんだろうっていうことを改めて感じてほしいっていうのがこの本で言いたかったことかなと思います」

※過去の五箇公一さんのトークもご覧下さい


INFORMATION


これからの時代を生き抜くための 生物学入門


『これからの時代を生き抜くための 生物学入門』

 ぜひ五箇さんの本を読んでください。私たちが直面している地球規模の問題を解決するヒントがあると思います。ほかにもオスとメスの性の仕組みや、生物学から見る人間社会、そして五箇さん自身の生い立ちや研究など、面白い話が満載です。
  詳しくは辰巳出版のオフィシャルサイトを見てください。

◎辰巳出版のHP: http://www.tg-net.co.jp/item/4777820548.html?isAZ=true

◎国立環境研究所のHP:http://www.nies.go.jp/

オンエア・ソング 1月10日(日)

2021/1/10 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. PAINT IT, BLACK / THE ROLLING STONES

M2. PEOPLE GET READY / CURTIS MAYFIELD

M3. ONCE IN A LIFETIME / KENNY LOGGINS FEAT. HUMAN NATURE

M4. FAMILY AFFAIR / SLY & THE FAMILY STONE

M5. 想うた 〜姉妹を想う〜/ thea

M6. SAVE YOU / KELLY CLARKSON

M7. 瑠璃色の地球 / 松田聖子

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

焚き火はコミュニケーション・ツール〜焚き火マイスターを迎えて

2021/1/3 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、日本焚き火協会・会長、そして焚き火マイスターの「猪野正哉(いの・まさや)」さんです。

 猪野さんは1975年、千葉市生まれ。「メンズノンノ」の専属モデルを務めたあと、独立。雑誌のモデルやライターとして活動。その後、山登りに目覚め、アウトドアの分野に徐々にシフトし、2015年、千葉市内に「焚き火ヴィレッジ<いの>」を開設。焚き火をメインに、アウトドアのプランニングなどを行なっています。そして、去年秋に『焚き火の本』を出されました。

 きょうは焚き火を囲んでいる気分で、ゆったり楽しんでいただければと思います。

☆写真協力:猪野正哉

写真協力:猪野正哉
猪野正哉さん

焚き火台選びは、シューズ選びに似ている!?

*この本には焚き火のハウツーなども掲載されています。そこで、改めて初心者の私に、基本的な手ほどきをお願いします。まず用意するものはなんでしょう?

「今はいちばん大事なのは焚き火台。で、これから定番になるのが防火マット、防火シート。芝生の上とかで焚き火をやると、芝生が焦げちゃったりするんで、その防火マットとかを敷くと自然に優しいっていう感じになるんで、これからは焚き火台を買うんだったら防火シートも一緒に買うみたいな。あとはいちばん大事な薪ですね」

●薪にはいろんな種類があるんですよね? どんな薪がいいんでしょうか? 

「いちばん初めは、着火時は針葉樹のスギやヒノキとか。すごく油分を含んでいるんでそれを燃やして、炎が安定してきたら、紅葉樹のナラやクヌギとかを燃やすと、ゆっくり燃えていくんで、お財布にも優しいです」

写真協力:猪野正哉

●タイミングによって変えていくんですね? 

「そうですね。初めは針葉樹を燃やして、ちゃんと炎が安定したら紅葉樹って覚えてもらえればいいと思います」

●あとは着火剤とかマッチとか? 

「そうですね、はい」

●焚き火台選びはシューズ選びに似ているという風に本に書かれていましたけれども、それはどういうことなんでしょうか?

「やっぱり焚き火をする上で本当に焚き火台が大事なんで、シューズ選びと似ているっていうのは、やっぱりいちばんよく使うものなので、そこがしっかりしてないと、全てが崩れていくのかなみたいな感じです」

写真協力:猪野正哉

あえて冬にサンダル!?

※焚き火をしていると火の粉が飛んできて、ウエアがちょっと焦げちゃった、なんて話を聞いたことがあるんですが、焚き火をするとき、どんなウエアがいいでしょうか?

「今、難燃素材でできた洋服が増えていて、ちょっと火の粉が飛んでも燃え移らないで、すぐ炭化しちゃうんですよ。なので安心して焚き火を楽しめるっていう感じですかね。でも基本的には、僕はとりあえず暖かい格好をしてほしいなって思います」

●この本にも猪野さんがモデルとして、季節毎の服装を着こなされていましたけれども、冬がソックス+サンダルだったんですけど、寒くないですか? 

「寒いんですけど、やっぱり靴を履いたまま、焚き火に炎に足を近づけても、そこまで暖かさって感じないじゃないですか。靴下だとすぐ熱も伝わるんで、逆にサンダルの方がいいのかなと思って」

●ブーツとかがいいのかな、なんて思っていたんですけど、意外とそこは違うんですね。

「そうですね。あえて夏場をブーツにしました。やっぱり夏場だと地面が濡れていたりだとか、急な雨だったりとか、そういうことが多いんで」

●なるほど〜! マナーとして焚き火の後始末も大事なことですよね? どんなところに注意すればいいんでしょうか。

「炭は100年経っても残っているんですよ。だから、炭だから自然に返せばいいやっていう考えもあるんですけど、炭って何気に自然に返らないので、燃やすんだったら灰になるまで燃やしてくれるとありがたいなって思います」

『焚き火の本』

文化として残って欲しい

※ここ数年、キャンプブームの影響もあって、焚き火がテレビ番組や動画メディアで人気ですよね? どうしてなんでしょう?

「本当ですよね、僕も不思議です(笑)。でも変な話、誰でもできるじゃないですか、多分そこかなと思います。今まではハードルが高いのかなっていう風に、多分先入観があったと思うんですけど、薪に火を付けるだけっていうすごくシンプルなことなんで」

●そうですよね〜。やはり焚き火マイスターとしてはこのブームは喜ばしいことですか? 

「そうですね。嬉しいですけど、これが本当にブームだけでなく、文化としてこのまま残っていって欲しいですね」

●そんな中、2019年に猪野さんが創設した日本焚き火協会で、去年12月に第1回焚き火検定を、千葉市の泉自然公園で実施されました。これはいかがでしたか? 

「大盛況でしたね! いちばん遠い方は石垣島から来てくださって」

●え〜! 何名ぐらいの方が参加されたんですか? 

「20名です。男性19名女性1名、この比率はもうちょっと変わって欲しいなと思ったんですけど」

●焚き火検定ってどんなことをするんですか? 

以前(小尾さんに)薪割りとかやってもらったじゃないですか。ああいう薪割りからスタートして、着火準備、着火、後片付けまで全部やってもらうって感じです」

●筆記はあるんですか? 

「筆記あるんですけど、合格不合格とか、上級中級初級とか、そういうのに僕はあまり興味がないので、覚えていってもらえればいいなっていう感じでやりました」

●へ〜〜! では実技がメインということなんですね! 焚き火検定を受験すると「焚き火スト」に認定されるっていうことですね。 

「そうです」

※猪野さんは去年秋に出版した『焚き火の本』の中で、高層ビルや高層マンションの屋上で焚き火をしたいと書いています。そんな未来はやってくるのでしょうか?

「やってくると思います。多分、屋上とかだと煙があんまり問題にならないじゃないですか。なので、いいのかなとちょっと思っていて。今、石橋貴明さんの、”石橋、薪を焚べる ”っていう番組の監修をさせてもらっているんですけど、そういうのからちょっとヒントを得たっていうか。
 こういう使われてないスペースがあるんだと思ったんです。(屋上に)ビアガーデンとかあるじゃないですか、バーベキューが食べられますみたいな。そういうところがあるのであれば、そこは焚火スペースになってもいいのかなって。仕事帰りにちょっと焚き火していくみたいな」

(注:猪野さんが監修されている、屋上で収録している焚き火番組は、各方面に許可を取って行なっています。無闇にできるものではありません。ご留意ください)

焚き火を見ながらコミュニケーション

写真協力:猪野正哉

*最後に、猪野さんがプライベートで焚き火をするときに、いちばん楽しみにしていることをお聞きしました。

「僕結構、星空っていうか、上を見ますね。やっぱり焚き火しているとずっと下ばっかり向いているじゃないですか。なので、なんかプライベートだと上を見てのんびりしていますね」

●いいですね、癒されそうですね。ご自身の焚き火体験で忘れられない場面とかってありますか? 

「最近気づいたんですけど、人にやってもらう焚き火っていいなって思ったんです(笑)」

●人にやってもらう焚き火? 

「薪が燃えてなくなったら違う人がくべてくれるみたいな。なんかすごくいいと思っちゃったんですよ」

●いつもは猪野さんご自身で全部やりますからね。そもそも猪野さんが焚き火に惹きこまれた、いちばんの理由ってなんだと思われますか? 

「いちばんの理由はやっぱり、親とコミュニケーションが取れるようになったってことですかね」

●焚き火を囲んでコミュニケーションを? 

「多分、前回もお話ししたと思うんですけど、いろいろやらかした時に、両親からちょっと話があるって言われて、火の前に連れていかれて、今の自分の状況を説明したんです。親と喋るのってやっぱり嫌じゃないですか。それと目を見て喋るってすごく嫌なんですよ。
 そこに焚き火があると、焚き火を見ながら話しても、会話って成立するんですよね。これで話しても怒られないんだとか、変な話、今話をしてるんだからこっち見ろとか言われないんですよ、焚き火があることによって。そこから親とはちゃんとよく話すようになりましたし、本当にコミュニケーション・ツールとして僕は使っています」

●前回も聞かせていただいたんですが、猪野さんにとって焚き火とは? 

「前回は、もう一度、表舞台に立たせてもらった、だと思うんですけど、今は多分、受け継いでいくもの、なのかなっていう風な感じですかね。次世代に」

※過去の猪野正哉さんのトークもご覧下さい


INFORMATION

焚き火の本


『焚き火の本』

 焚き火のハウツーや解説が載っている実用書。イラストも豊富に掲載、初心者にもわかりやすい内容です。写真も美しいですよ。ぜひこの本を参考にあなたらしい焚き火ライフを楽しんでみてはいかがでしょう。山と渓谷社から絶賛発売中です。
 詳しくは山と渓谷社のオフィシャルサイトを見てください。

◎山と渓谷社のHP:https://www.yamakei.co.jp

◎日本焚き火協会のHP:https://www.takibi-japan.jp

1 2
サイトTOPへ戻る
WHAT’s NEW